【実施例1】
【0017】
図1は、本実施例に係る脱硝装置を備えたボイラ装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る排ガス脱硝システムを備えたボイラ装置100は、ボイラ101からの燃焼排ガス(以下「排ガス」という)102中に還元剤(例えばアンモニア:NH
3)を供給する還元剤供給手段であるアンモニア注入装置104と、還元剤が含まれた窒素酸化物(NOx)を脱硝する区画された脱硝触媒106を備えた脱硝装置105と、前記脱硝装置105の出口側に設けられ、前記脱硝装置105のガス流れに直交する区画された脱硝触媒106に対応する領域における排ガス102中のガス成分(NH
3、NOx)濃度分布をレーザ計測手段によりアンモニア濃度を測定するガス成分濃度分布測定装置10と、を具備し、前記ガス成分濃度分布測定装置10A(10B、10C)のアンモニア濃度の計測結果より、区画された領域のアンモニアの濃度分布を求めるものである。なお、
図1中、符号107は空気予熱器、108は煙突を図示する。
【0018】
また、本実施例では、求めたアンモニア濃度分布より、脱硝不十分な区画を求める制御装置20と、この脱硝不十分な区画に対応する還元剤供給手段からの還元剤供給量を調節する調節手段である開度設定部109を備えている。
【0019】
図2は、脱硝装置に設置するガス成分濃度分布測定装置の全体構成を示す斜視概略図、
図3は、
図2のプローブ手段の側面概略図である。
図2及び3に示すように、ガス成分濃度分布測定装置10Aは、排ガス102が通過する煙道103と、煙道103の燃焼排ガス102のガス流れ方向と直交する方向に設置され、コの字状のクランク部21を有するクランク状支持体22と、クランク部21に一体に設けられ、レーザ光11を通過する送光筒12と、該送光筒12の一部が所定距離区切られ、煙道103の計測場に晒される計測領域Lと、煙道103の外部からレーザ光11を、送光筒12内に出射させるレーザ発光部13と、計測領域Lを通過したレーザ光11を、煙道103の外部で受光し、レーザ光11の光強度を検出するレーザ受光部14と、クランク状支持体22の軸部を中心として回転させる回動部23と、を備えてなり、燃焼排ガス102のガス成分濃度を計測する際、回動部23の回転により、クランク部21に設けた送光筒12が、軸部から所定距離離れた領域を回転することにより、各回転箇所における所定間隔を持った計測領域Lにおける排ガス102中のガス組成(アンモニア)濃度をレーザ光11の吸収により測定するものである。
【0020】
本実施例では、回転部23により回転される軸部を中心として、回転し、軸部から所定距離離れたクランク部22が回転する箇所において、所定距離離れた領域Lを有する送光筒12が回転することで、排ガス102のガス組成の濃度を計測することができる。
【0021】
図3に示すように、レーザ発光部13からのレーザ光11は、送光筒12内を送光し、レーザ発光端部12aから所定間隔の計測領域Lを通過し、レーザ受光端部12bにおいて送光筒12内に導入され、レーザ受光部14で計測される。なお、図中符号16は反射ミラーである。
なお、レーザ発光部13及びレーザ受光部14と回動部23までは各々光ファイバ17により接続されている。
【0022】
図2では、煙道103が長尺方向と短尺方向とからなる矩形形状の場合であり、複数(本実施例では3本)のプローブを設置している。
この場合において、計測領域Lを、送光筒12の長手方向に沿って異なるようにして、区画された領域の一部に位置するようにしてもよい。
すなわち、図中左側の送光筒12では、図中、手前側に計測領域L
1を形成し、図中真ん中の送光筒12では、図中、中心側に計測領域L
2を形成し、図中右側の送光筒12では、図中、奥側に計測領域L
3を形成し、各々回転させることで、複数領域の計測が可能となる。
【0023】
これにより、従来では、複数個所の濃度分布を計測する場合には、レーザ光11の送光筒に1本に対して個別にレーザ光の送光器と受光器とを設けて、個別に計測し、複数セットの送光器と複数セットの受光器とを必要としていたが、本発明によれば、1台のレーザ発光部13及びレーザ受光部14を設けるだけで良いので、レーザ装置の簡素化を図ることができる。
【0024】
次に、本実施例に係る濃度分布測定の原理について、図を参照して説明する。
図10は、吸収分光計測の概念図である。
図11は、吸収分光計測の吸収チャート図である。
レーザ光の光強度と測定対象の濃度との関係を示す関係式として、ランベルト・ベール(Lambert−Beer)の法則が知られている。
【0025】
ランベルト・ベールの法則は、
図10に示すように、レーザ光11の送光点(レーザ発光端部12a)と受光点(レーザ受光端部12b)との間の、レーザ経路の距離である計測領域をLとし、レーザ光11の照射強度をI
0、レーザ光11の受光強度をI(L)、距離L中に存在する測定対象(アンモニア)の濃度をC
0とした場合、以下の(1)式の関係が成立するというものである。
I(L)=I
0exp(−kC
0L) ……(1)
ここで、kは測定対象の吸光度に応じて設定される比例係数である。
【0026】
測定対象の濃度を測定する分割領域の濃度平均値をC
1、分割領域におけるレーザ経路の距離(送光筒の区切れた場所である計測領域L)をL
1とすると、上記(1)式は、以下の(2)式のように表すことができる。
I(L)=I
0exp(−kC
1L
1) ……(2)
【0027】
予め設定されたレーザ経路ごとにレーザ光11を照射する際、分割領域におけるレーザ経路の距離(送光筒の区切れた場所である計測領域)L、レーザ光11の照射強度I
0及びレーザ光の受光強度Iは、既知であるから、上記(2)式によって、未知数である分割領域の濃度平均値C
1を算出できる。
【0028】
そして、上記構成を備えるガス成分濃度分布測定装置10Aにおいては、以下のような手順により、濃度測定領域のアンモニアの濃度分布が取得される。
【0029】
また、ボイラ101からの排ガス102には、煤塵が含まれているので、計測領域Lであるレーザ光11の光路長さを長くすると、煤塵の影響により光透過率が減衰することとなる。
図12は、排ガス中の煤塵濃度とレーザ光透過率との関係を示す図である。
図12では、波長が1.5μmの場合、煤塵濃度が6g/Nm
3程度の石炭灰中に2.0mの光路長で計測が可能であることを確認している。
よって、煤塵濃度がそれ以上の場合には、1.5m、より好適には1m前後の光路長で計測することが良好である。
【0030】
ここで、本実施例のように、排ガス中のアンモニア(NH
3)濃度を計測するには、半導体レーザ(半導体素子:InGaAsを例示することができる。波長:1.5μm、出力:1mW程度のものを例示することができる)を用いることができる。
【0031】
図13は、本実施例に係る脱硝装置のアンモニア注入装置の概略構成例を示す系統図である。
図13に示すように、アンモニア注入装置104は、アンモニア供給源に接続された流路配管のアンモニア主系統31に総流量制御弁32を備えている。このアンモニア主系統22は、総流量制御弁23の下流において、ヘッダ24から分岐させた複数本(図示の例では6本)のアンモニア供給系統26を備えている。
【0032】
また、
図13に示すように、アンモニア供給系統26は、各々が流量制御元弁25及び複数個(図示の例では3個)の注入ノズル27を備えており、排ガス102を流す流路である煙道103の内部に注入ノズル27が格子状の配置となるように設置されている。注入ノズル27は、流路配管のアンモニア主系統22、ヘッダ24及びアンモニア供給系統26を通ってアンモニア供給源から供給されたアンモニアを煙道103の内部に液滴又はガスの状態で流出させ、燃焼排ガス中に還元剤としてのアンモニアを注入するものである。なお、液滴の状態で注入されたアンモニアは、高温の燃焼排ガスから吸熱してガス化する。
【0033】
こうして煙道103の内部に注入されたアンモニアのガスは、混合器を通過することにより燃焼排ガス102と撹拌混合される。この結果、アンモニアは窒素酸化物と反応して脱硝装置105内の脱硝触媒106を通過するので、水と窒素とに分解されることで窒素酸化物が燃焼排ガス中から除去される。
【0034】
開度設定部109には、ガス成分濃度分布測定装置10Aで測定したアンモニア(NH
3)濃度の測定値が制御装置20を介して入力される。このようなアンモニア濃度の入力を受けた開度設定部109は、アンモニア濃度の平均値に基づいて総流量制御弁23の開度の設定(開度制御)を行うとともに、複数個所のアンモニア濃度に基づいて各流量制御元弁25の開度の設定(開度制御)を行う。すなわち、開度設定部109は、総流量制御弁23及び流量制御元弁25の開度制御信号を出力する。
【0035】
この場合、開度設定部109による流量制御元弁25の開度制御は、予め定めたアンモニア濃度と流量制御元弁25毎の開度との相関関係を定めた制御マップに基づいて行われる。すなわち、脱硝装置105は、ボイラ101毎に諸条件(煙道103の流路系統や流路断面積、燃料の種類等)が異なるため、事前に相関関係のデータを実験等により入手して制作した制御マップを開度設定部109に記憶しておく。なお、この制御マップでは、煙道103内のアンモニア濃度を区画された面内で測定した複数位置のアンモニア濃度に対して、複数系統のアンモニア供給系統26毎に異なる流量制御元弁25の開度を個別に設定するものである。
【0036】
ガス成分濃度分布測定装置10Aは、上述したように、脱硝触媒106の出口側における煙道103内の濃度測定領域のアンモニア濃度分布を作成し、このアンモニア濃度分布を開度設定部109に出力する。
【0037】
このような脱硝装置105によれば、ガス成分濃度分布測定装置10Aによって、煙道103における脱硝触媒106の出口側におけるアンモニア濃度分布が検出され、この検出結果が開度設定部109に出力される。開度設定部109では、アンモニア濃度の平均値に基づいて総流量制御弁23の開度制御が行われ、かつ、ガス成分濃度分布測定装置10Aによって得られたアンモニア濃度分布に基づいて流量制御元弁25の開度制御が行われる。これにより、脱硝装置105の運転を継続しながら、時定数の短いアンモニア濃度の測定値に応じ、複数のアンモニア供給系統26毎に分配されるアンモニア注入量を自動的に調整することができる。
【0038】
このとき、流量制御元弁25の開度制御は、予め定めたアンモニア濃度と流量制御元弁25毎の開度とのマップに基づいて行われるので、アンモニア濃度により総供給量が規定されたアンモニアは、流量制御元弁25の開度に応じてアンモニア供給系統26に対するアンモニア分配量が調整される。
【0039】
このように、アンモニア濃度分布が脱硝触媒106の性能劣化と関連しているので、アンモニア濃度分布に基づいてアンモニア注入装置104によるアンモニア注入量の分布制御を実施すれば、脱硝装置105の後流側に余剰に排出されるリークアンモニアの分布をコントロールすることができる。また、リークアンモニアは、空気予熱器107を閉塞させる原因でもあるから、濃度検出に基づいてアンモニア注入装置104によるアンモニア注入量の分布制御を実施すれば、空気予熱器107の閉塞頻度低減に寄与することも可能になる。
【0040】
本実施例に係る脱硝装置105によれば、脱硝装置105の運転を継続しながら、時定数の短いアンモニア濃度の測定値に応じて、複数の還元剤供給系統毎に分配される還元剤注入量を自動的に調整することが可能になる。これにより、還元剤注入の分配最適化による脱硝触媒106の寿命延長や脱硝触媒106の更新の効率化を達成することができる。この結果、脱硝装置105においては、脱硝触媒106の更新に伴うコストの低減やアンモニア消費量の最適化を実現できる。
【0041】
本実施例では、脱硝装置105の出口側で、ガス成分濃度分布測定装置10A(10B、10C)を設置し、アンモニア濃度を計測しているが、脱硝装置105の入口側と出口側とにガス成分濃度分布測定装置A(10B、10C)、A(10B、10C)を設け、脱硝触媒106に供給するアンモニア濃度と脱硝後のリークアンモニア濃度を計測することで、供給アンモニア濃度に対するリークアンモニア濃度の分布を測定することもできる。
【0042】
また、本実施例では、脱硝装置105の出口側でアンモニア濃度を計測しているが、脱硝装置105の出口側でのガス成分の計測に限定されず、ボイラ出口から脱硝装置105に至る煙道103のいずれかにおいて、入口側のガス成分を図るようにしてもよい。
【0043】
本実施例では、
図1に示すように、半導体レーザを制御するための制御装置20が設置されている。この制御装置20は、例えば、コンピュータであり、CPU、CPUが実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)、通信ネットワークに接続するための通信インターフェース、及び外部記憶装置が装着されるアクセス部などを備えている。これら各部は、バスを介して接続されている。更に、制御装置20は、キーボードやマウス等からなる入力部及びデータを表示する液晶表示装置等からなる表示部などと接続されていてもよい。
【0044】
上記CPUが実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROMに限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。なお、本実施例では、制御装置20を一つのコンピュータによって実現する構成としているが、複数のコンピュータによって実現してもよい。
【0045】
まず、測定を行うレーザ経路に対応するように、制御装置20によって半導体レーザのレーザ発光部13が起動され、更に、レーザ光の出力が安定した後に、レーザ経路における測定が行われる。
【0046】
このレーザ経路における測定が終了した後、次のレーザ経路における測定を開始する。このようにして、レーザ経路ごとの測定を順次行う。その後、レーザ発光部13からレーザ光が照射され、レーザ光が所定のレーザ経路を通過することで測定対象により吸光されたレーザ光がレーザ受光部14によって受光される。
【0047】
レーザ受光部14は、受光した光によって光強度を検出する。レーザ光の検出値は、制御装置20に出力される。このとき、制御装置20は、レーザ受光部14による検出値とその検出値に対応するレーザ経路の識別情報(P
1〜P
8)とを関連付けることができる。
【0048】
制御装置20に入力された検出値とレーザ経路の情報は、互いに関連付けられて制御装置20にて記憶される。更に、上記レーザ照射の際のレーザ発光部13からのレーザ光の照射強度も制御装置20にて記憶される。そして、制御装置20では、記憶されたデータに基づいてNO濃度分布が作成される。
【0049】
具体的には、各レーザ経路上の分割領域の距離や、入力された検出値及びレーザ光の照射強度が読み出されて、上記(2)式で表わされる濃度演算式を用いることにより分割領域ごとの測定対象の濃度が算出される。そして、各分割領域の濃度が補間されることにより、濃度測定領域の濃度分布が作成される。これにより、濃度測定領域における測定対象の濃度分布が得られることとなる。
このようにして得られた濃度測定領域の濃度分布は、例えば、制御装置20と接続された表示装置(図示略)に表示されることによって、ユーザに提示される。
【0050】
そして、リークするアンモニア濃度分布の全てが所定値以下であれば、そのままの条件で運転を継続する。この場合、アンモニア注入装置104の注入量の調整は行わない。
【0051】
これに対し、アンモニア濃度分布の一部に濃度が高い場所があると、制御装置20の判断部で判断された場合には、開度設定部109にその情報信号を送る。そして開度設定部109において、その特定されたアンモニア濃度分布の高い場所に対応するアンモニア注入装置104からのアンモニアが注入できるように、流量制御元弁25の開度制御が行われる。これにより、脱硝装置105の運転を継続しながら、アンモニア濃度の測定値に応じ、複数のアンモニア供給系統26毎に分配されるアンモニア注入量を自動的に調整することができる。
【0052】
この結果、脱硝装置105の出口側で、ガス成分濃度分布測定装置10Aによりアンモニア濃度分布を各々計測することで、リアルタイムにおいて、一様に脱硝されているかを確認することができる。
【0053】
排ガス中の窒素酸化物(NOx)の変動は、ボイラ負荷の変動やボイラ101に供給する燃料の種類等が変更した場合、ボイラ立ち上げの際に発生する。
よって、本装置を用いて、負荷変動等があった場合には、通常の計測回数よりも頻繁に濃度分布の計測を行うようにして、窒素酸化物の脱硝が確実になされているかを判断するようにしてもよい。