特許第6016784号(P6016784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016784活性エネルギー線硬化性コーティング用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016784
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性コーティング用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20161013BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20161013BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20161013BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161013BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20161013BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C08L33/14
   C08K5/00
   C08K5/5415
   C09D183/00
   C09D7/12
   B05D7/24 301T
   B05D7/24 302P
   B32B27/30 A
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-507631(P2013-507631)
(86)(22)【出願日】2012年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2012057986
(87)【国際公開番号】WO2012133443
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-73341(P2011-73341)
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-107930(P2011-107930)
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 陽一
(72)【発明者】
【氏名】南部 俊郎
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−013634(JP,A)
【文献】 特開2002−196494(JP,A)
【文献】 特開2005−275380(JP,A)
【文献】 特開2010−202704(JP,A)
【文献】 特許第5685407(JP,B2)
【文献】 特開2002−265865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖が(メタ)アクリル系共重合体であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):
−SiR(OR3−a (I)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。aは0〜2の整数。)
で表される加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する重合体(A)と、(B)光酸発生剤および/または(C)光塩基発生剤と、(D)顔料を含有することを特徴とするコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物(ただし、エマルジョンを除く)。
【請求項2】
(D)顔料のpHが8以下であることを特徴とする請求項に記載のコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
(B)光酸発生剤が、芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩である請求項1または2に記載のコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
(B)光酸発生剤のカウンターアニオンが、フルオロフォスフォネート系若しくはフルオロスルフォネート系である請求項に記載のコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
主鎖が(メタ)アクリル系共重合体であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):
−SiR(OR3−a (I)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。aは0〜2の整数。)
で表される加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する重合体(A)と、(C)光塩基発生剤であるO−アシルオキシム化合物を含有することを特徴とするコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物(ただし、エマルジョンを除く)
【請求項6】
主鎖が(メタ)アクリル系共重合体であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):
−SiR(OR3−a (I)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。aは0〜2の整数。)
で表される加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する重合体(A)と、(B)光酸発生剤および/または(C)光塩基発生剤と、(E)下記一般式(II)で示されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物および/またはその変性物
(RO)4−bSiR (II)
(式中、Rは同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、Rは同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜10のアラルキル基、bは0〜2の整数。)を含有するコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物(ただし、エマルジョンを除く)
【請求項7】
(E)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物および/またはその変性物が、オルガノシリケート(下記一般式(III)で示される化合物および/またはその部分加水分解縮合物)および/またはその変性物である請求項に記載のコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物。
(RO)Si (III)
(式中、Rは同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基である。)
【請求項8】
主鎖が(メタ)アクリル系共重合体であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):
−SiR(OR3−a (I)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。aは0〜2の整数。)
で表される加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する重合体(A)と、(B)光酸発生剤および/または(C)光塩基発生剤と、(F)光増感剤を含有するコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物(ただし、エマルジョンを除く)
【請求項9】
(F)光増感剤が、アントラセン誘導体若しくはチオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体である請求項に記載のコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載のコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化被膜を形成する硬化塗膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載のコーティング用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材表面に形成された積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成型体やフィルムなど過度に熱をかけることができない材料に対して、付着性がよく、耐溶剤性や耐薬品性に優れ、さらには良好な指紋拭取り性を有する一液型の活性エネルギー線硬化性コーティング用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属やガラスの代替としてアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、PET樹脂等のプラスチック材料が広く使用されている。しかしながら、これらプラスチック材料は表面硬度が低く、耐薬品性が充分ではないという問題がある。そこで、プラスチック材料の表面に種々のコーティング材料を塗布し、性能を向上させるという手法が取られてきた。
【0003】
例えば、熱硬化型のウレタン塗料を塗布し、プラスチック基材の耐熱温度以下で塗膜を形成する方法がある(特許文献1)。しかしながら、表面硬度と耐薬品性を得るためには、架橋密度を上げる必要があり、水酸基価を高く設計することとなる。これにより、ポリカーボネート等のプラスチックに対する付着性が低下する問題がある。
【0004】
また、表面硬度と耐薬品性を上げる別の手法として、アルコキシシリル基を含有する共重合体を塗布し、加熱条件下で有機錫化合物をはじめとする有機金属化合物で硬化膜を得る方法がある(特許文献2)。ところが、プラスチック基材の耐熱温度以下の条件では、充分な硬化膜を得るために長時間の加熱を必要とし、生産性で問題がある。
【0005】
一方、多官能性モノマーやオリゴマーを主な構成成分とし、光ラジカル発生剤を用いてUV硬化する方法も報告されている(特許文献3)。本方法では、硬化に熱乾燥を必要としないため、プラスチック基材を傷めることがなく、また短時間で高硬度の膜が得られる利点がある。しかしながら得られる膜が硬くなりすぎプラスチック基材への付着性が充分でなかったり、顔料等を配合したエナメル(着色)では、顔料とラジカル開始剤の吸収波長重なりが大きいために、開始剤が充分に活性化されず、硬化不良となるなどの問題点がある。
【0006】
このため、良好な耐溶剤性と耐薬品性を有し、さらに着色可能なコーティング剤の開発も併せて求められていた。
【0007】
また近年では、プラスチックの更なる機能性向上として、指紋拭取り性の良好なコーティング剤の開発も求められており(特許文献4)、その目安として親水・親油性の表面が有効であると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−296539号公報
【特許文献2】特開2003−231223号公報
【特許文献3】特開平5−230397号公報
【特許文献4】WO2008/108153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、着色可能なコーティング剤であって、耐溶剤性と耐薬品性が良好で、さらにプラスチック基材への付着性に優れた硬化塗膜が形成可能であり、また活性エネルギー線等で短時間硬化が可能な1液型のコーティング用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系共重合体、特定の光酸発生剤および/または特定の光塩基発生剤、顔料を含有するコーティング用樹脂組成物が、高圧水銀灯などを用いたUV照射により、コーティング剤が顔料等により着色されていても、短時間で硬化塗膜が形成され、得られた塗膜は表面硬度が高く、優れた耐溶剤性と耐薬品性が良好で、さらにプラスチック材料への優れた付着性を示すことを見出した。さらには得られた塗膜が親水・親油性の性質を有することも見出した。
本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、主鎖が(メタ)アクリル系共重合体であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):
−SiRa(OR3-a (I)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。aは0〜2の整数。)で表される加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する重合体(A)と、(B)光酸発生剤および/または(C)光塩基発生剤を含有することを特徴とする。
さらに(D)顔料を好適に用いることができる。
(D)顔料としては、pHが8以下の顔料を好適に用いることができる。
(B)光酸発生剤としては、芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩を好適に用いることができる。
(B)光酸発生剤のカウンターアニオンとしては、フルオロフォスフォネート系若しくはフルオロスルフォネート系を好適に用いることができる。
(C)光塩基発生剤としては、O−アシルオキシム化合物を好適に用いることができる。
さらに、(E)下記一般式(II)で示されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物および/またはその変性物
(R3O)4-bSiR4b (II)
(式中、R3は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R4は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜10のアラルキル基、bは0〜2の整数。)を好適に用いることができる。
(E)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物および/またはその変性物としては、例えば、オルガノシリケート(下記一般式(III)で示される化合物および/またはその部分加水分解縮合物)および/またはその変性物を好適に用いることができる。
(R3O)4Si (III)
(式中、R3は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基である。)
さらに、(F)光増感剤を好適に用いることができる。
(F)光増感剤としては、アントラセン誘導体若しくはチオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体を好適に用いることができる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成することができる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物を基材表面に塗布し硬化させることによって、硬化皮膜が基材表面に形成された積層体を作製することができる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、一液型硬化性組成物として好適に使用することができる。
本発明による活性エネルギー線硬化性組成物を用いた場合、塗装後、高圧水銀灯やメタルハライドランプ、発光ダイオードなどを用いたUV照射により、短時間で、表面硬度が高く、耐溶剤性と耐薬品性に優れ、さらにはプラスチック材料への良好な付着性を有する塗膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング用樹脂組成物は遮光下で貯蔵安定性が高いため、1液型の塗料形態が可能である。また本発明の組成物は、顔料等による着色が可能でありながら、UV光をはじめとする活性エネルギー線等で短時間硬化が可能で、表面硬度が高く、良好な耐溶剤性と耐薬品性有し、さらにプラスチック基材への付着性に優れた着色硬化塗膜を形成し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
(A)加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系共重合体
本発明で使用可能な共重合体(A)は、加水分解性シリル基が炭素原子に結合した形式で含有されていればよい。
【0013】
前記加水分解性基と結合したシリル基は、共重合体(A)成分の主鎖の末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖の末端および側鎖に結合していてもよい。加水分解性基と結合したシリル基の導入方法としては、加水分解性基と結合したシリル基を含有する単量体をその他単量体と共重合する方法、シリケート化合物を反応させる方法、または水酸基含有共重合体にシリケート化合物を反応させる方法等がある。なかでも簡便な方法は、加水分解性基と結合したシリル基を含有する単量体とその他単量体を共重合する方法である。
【0014】
前記加水分解性基と結合したシリル基における加水分解性基とは、ハロゲン基やアルコキシ基等がある。その中で、反応制御の簡便さから下記一般式(I)で表されるアルコキシ基が有用である。
−SiRa(OR3-a (I)
式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。これらの中では、Rは本発明の組成物の硬化性が優れるという点から炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0015】
前記一般式(I)において、(OR3-aは3−aが1以上3以下になるように、即ちaが0〜2になるように選ばれるが、本発明の組成物の硬化性が良好になるという点から、aが0または1であることが好ましい。従って、Rの結合数は0または1であることが好ましい。ORまたはRの数が複数個の場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。前記一般式(I)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基の具体例としては、例えば後述の共重合体(A)成分に共重合される加水分解性シリル基含有ビニル系単量体に含有される基が挙げられる。
【0016】
次に、共重合体(A)成分の製法の一例について説明する。
共重合体(A)成分は例えば、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分とその他の共重合可能な単量体(b)成分をアゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いて溶液重合法などにより共重合することによって製造することができる。
【0017】
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分は、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用しても良い。
【0018】
取扱いの容易さ、価格および重合安定性、得られる組成物の硬化性が優れるという点から、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が特に好ましい。
【0019】
加水分解性シリル基含有単量体(a)成分は、全単量体100重量部中に0.1〜80重量部、より好ましくは5〜70重量部、さらにより好ましくは10〜60重量部用いて共重合されることが望ましい。0.1重量部未満では、充分な低汚染性が発現しなかったり、耐候性が向上しない場合がある。一方、80重量部を越えると貯蔵安定性が悪化する傾向にある。
【0020】
その他共重合可能な単量体(b)成分の具体例としては、(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンや2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシスチレンビニルトルエン、東亞合成化学工業(株)製のアロニクス5700、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製のHE−10、HE−20、HP−1およびHP−2(以上、何れも末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマー)、日本油脂(株)製のブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート誘導体、水酸基含有化合物とε―カプロラクトンとの反応により得られるε―カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物PlaccelFM−1、FM−4(以上ダイセル化学工業(株)製)、TONEM−201(UCC社製)、HEAC−1(ダイセル化学工業(株)製)等のポリカーボネート含有ビニル系化合物などの水酸基含有ビニル系単量体および/またはその誘導体が挙げられる。
【0021】
さらに(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物などのリン酸エステル基含有(メタ)アクリル系化合物、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの塩;無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物、これら酸無水物と炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖を有するアルコールまたはアミンとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;(メタ)アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他ビニル系化合物などが挙げられる。
【0022】
これらのその他単量体(b)成分は、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用しても良い。
【0023】
このようにして得られた共重合体(A)成分は、本発明の組成物を用いて形成される塗膜の硬化性や耐溶剤性、耐薬品性などの物性が優れるという点から、数平均分子量が3000〜25000なかんずく5000〜20000であることが好ましい。この際、必要に応じて、例えば、n−ドデシルメルカプタンやγ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の連鎖移動剤を使って、分子量を調整してもよい。
【0024】
共重合体(A)は加水分解性シリル基を1分子中に平均2個以上、100個以下有することが好ましくは5個以上、80個以下有することが特に好ましい。シリル基が2個未満の場合には、硬化が遅く硬度や耐薬品性が発現しない傾向があり好ましくない。100個を超えるとクラックが発生しやすく、反りも強くなる傾向があり好ましくない。
【0025】
尚、前記共重合体(A)成分の主鎖がアクリル系共重合体鎖であるとは、共重合体(A)成分の主鎖を構成する単位のうちの50%以上、さらに好ましくは70%以上が(メタ)アクリル系単量体単位(メタ)アクリル系単量体単位から形成されていることを意味する。なお本発明において(メタ)アクリル系とはアクリル系およびメタクリル系の総称である。
【0026】
(B)光酸発生剤
本発明における(B)成分である光酸発生剤は、活性エネルギー線に暴露されることにより酸を発生する化合物であり、たとえばトルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素などの強酸、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩またはセレニウム塩などのオニウム塩類;鉄−アレン錯体類;シラノール−金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類などのスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類など、特開平5−134412号公報に示される放射線の照射により酸を発生する化合物があげられる。
【0027】
上記の光酸発生剤の中で、芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩が共重合体(A)との組成物の安定性が高く入手しやすいという点から好ましい。スルホン酸誘導体としては、たとえば米国特許第4618564号公報に示されるベンソイントシレート、ニトロベンジルトシレート、コハク酸イミドトシルスルホネートなどのスルホン酸エステル類;米国特許第4540598号公報、特開平6−67433号公報に示されるα−(4−トシルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニドなどのオキシムスルホネート類;特開平6−348015号公報に示されるトリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼンなど;特開昭64−18143号公報に示される9,10−ジアルコキシアントラセンスルホン酸ニトロベンジルエステルなど;N−(p−ドデシルベンゼンスルホニルオキシ)−1,8−ナフタルイミドなどがあげられる。有機ハロゲン化合物類としては、たとえば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどの特開昭55−32070号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭63−238339号公報に示されるハロゲン含有トリアジン化合物;特開平2−304059号公報に示される2−ピリジル−トリブロモメチルスルホンなどのハロゲン含有スルホン化合物;トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートなどのハロゲン化アルキルリン酸エステル;2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジンなどのハロゲン含有へテロ環状化合物;1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィンなどのハロゲン含有炭化水素化合物などがあげられる。
【0028】
中でも芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩のカウンターアニオンがフルオロフォスフォネート系、フルオロアンチモネート系若しくはフルオロスルフォネート系であることが、硬化が速く、プラスチック基材への付着性に優れるという点から好ましい。安全性を考慮すると、フルオロフォスフォネート系若しくはフルオロスルフォネート系であることが特に好ましい。
【0029】
(B)の添加量は、生成する酸の発生量、発生速度に応じて調整が必要だが、共重合体(A)の固形分100重量部に対し、0.05〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部となる量である。0.05重量部未満では生成する酸が不足し、得られる塗膜の耐溶剤性や耐薬品性が充分ではない傾向にあり、30重量部を越えると塗膜外観の低下や着色などの問題が発生する傾向にある。
【0030】
(C)光塩基発生剤
本発明における(C)成分である光塩基発生剤は、活性エネルギー線に暴露されることにより塩基を発生する化合物であり、例えばコバルトアミン錯体、O−アシルオキシム、カルバミン酸誘導体、ホルムアミド誘導体、第4級アンモニウム塩、トシルアミン、カルバメート、アミンイミド化合物などを挙げることができる。具体的には、2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、N−シクロヘキシル−4−メチルフェニルスルホンアミド、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカルバメート等が挙げられる。光塩基発生剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0031】
光塩基発生剤として、好ましくはO−アシルオキシム化合物が好適に用いられる。例えば、下記の一般式(IV)で表される化合物があげられる。
【0032】
【化1】
【0033】
(R5、R6、R7は独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアリール基または炭素数1〜10のアラルキル基等が挙げられ、いずれかにアリール基を有する。)
(C)の添加量は、生成する塩基の発生量、発生速度に応じて調整が必要だが、共重合体(A)の固形分100重量部に対し、0.05〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部となる量である。0.05重量部未満では生成する塩基が不足し、得られる塗膜の耐溶剤性や耐薬品性が十分ではない傾向にあり、30重量部を越えると塗膜外観の低下や着色などの問題が発生する傾向にある。
【0034】
(D)顔料
本発明における(D)成分である顔料としては、特に限定はなく、また、その使用量についても特に制限はない。通常塗料に用いられるたとえば酸化チタン、群青、紺青、亜鉛華、ベンガラ、黄鉛、鉛白、パライト、白亜、透明酸化鉄、アルミニウム粉などの無機顔料、アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノリン系顔料、フタロシアニン系顔料などの有機顔料などの顔料が選ばれる。
【0035】
中でもpHが1以上8以下の顔料が特に好ましく、さらにはpH6以下の顔料がより好ましい。pHが8以下の顔料としては、塩素法や硫酸法で製造された酸化チタンや酸化鉄系顔料、酸化処理されたカーボンブラックが挙げられる。また顔料の表面にpHが8以下の樹脂をグラフトした有機系顔料やプラズマガスで処理した有機系顔料が挙げられる。
【0036】
(D)の配合量は、目的とする色味や隠蔽性により適宜調整が必要だが、共重合体(A)の固形分100重量部に対し、0.5〜100重量部、好ましくは1〜70重量部となる量である。0.5重量部未満では隠蔽性が低く、得られる塗膜の美粧性が充分ではない傾向にあり、100重量部を越えると、光透過性が悪いため(B)光酸発生剤や(C)光塩基発生剤の反応性が低下し、塗膜の硬化に時間がかかりすぎる。
【0037】
また(D)成分との組み合わせとしては、活性エネルギー線照射直後の硬化性が優れる点から(B)光酸発生剤を使用することが好ましい。
【0038】
顔料(D)を配合した際には、活性エネルギー線照射時に架橋が完全に形成されない場合があるが、そのような場合でも架橋は数日から1、2週間掛けて徐々に進行する傾向がある。
【0039】
(E)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
本発明における(E)成分であるシリコン化合物は、塗膜表面の硬度を向上させたり、表面を親水性とする目的で使用できる。
【0040】
(E)成分としては、一般式(II)で示される。
(R3O)4-bSiR4b (II)
(式中、R3は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R4は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜10のアラルキル基、bは0〜2の整数。)。
【0041】
シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物としては、たとえば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケート、テトラ−i−ブチルシリケート、テトラ−t−ブチルシリケートなどのテトラアルキルシリケート類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類などのシランおよび/またはこれらのシランから選択される1種または2種以上の部分加水分解縮合物があげられる。また、これらは1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。
【0042】
上記のシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物の中で、下記一般式(III)で示される化合物および/またはその部分加水分解縮合物であるオルガノシリケートおよび/またはその変性物が、塗膜に硬度を付与し、表面に親水性を発現せしめる効果に優れることから好ましい。
(R3O)4Si (III)
(式中、R3は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基)。
【0043】
オルガノシリケートとしては、たとえば上記のテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケート、テトラ−i−ブチルシリケート、テトラ−t−ブチルシリケートなどテトラアルキルシリケート類、これらから選択される1種または2種以上の部分加水分解縮合物があげられる。
【0044】
オルガノシリケートのR3は、炭素数が多い、また分岐のあるもので加水分解・縮合の反応性が低下するため、得られる塗膜の硬度や硬化性を考慮すれば、炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
【0045】
また部分加水分解縮合物とすれば、塗膜表面の親水性を向上させることができる。その縮合度は2〜20、好ましくは3〜15である。
【0046】
(E)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対して0〜200重量部、好ましくは、1〜100重量部、より好ましくは3〜50重量部である。オルガノシリケート化合物(E)成分の量が200部を超えると、該コーティング剤組成物からなる塗膜が濁ったり、初期の硬化性が低下したり、また得られる塗膜の柔軟性が不足し脆くなることがあるため好ましくない。
【0047】
(A)成分の加水分解性シリル基の個数を多くすることにより、(E)成分の使用量を減らすことができ、(E)成分をほとんど使用しなくてもある程度の硬度を持つ塗膜を得ることができる。ガラス板上で2H程度の硬度の塗膜であれば、(E)成分を3重量部以下や、1重量部以下、実質的に使用しなくても塗膜を得ることができる。
【0048】
また本発明のコーティング剤組成物には、(B)成分と(C)成分の感光性を向上させる目的で、必要に応じて(F)光増感剤を使用することができる。光増感剤としては、特に限定されないが、例えば、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられ、より詳しくは、9,10−ジアルコキシアントラセン、2−アルキルチオキサントン、2,4−ジアルキルチオキサントン、2−アルキルアントラキノン、2,4−ジアルキルアントラキノン、p,p′−アミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシー4−アルコキシベンゾフェノン、ベンゾインエーテル等が挙げられる。さらに具体的には、アントロン、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9−エトキシアントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、フェナントレン、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイル安息香酸ブチル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−i−ブチルエーテル、9−フルオレノン、アセトフェノン、p,p′−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p′−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フェノチアジン、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3′−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン等が挙げられる。光増感剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0049】
中でも、アントラセン誘導体若しくはチオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体が顔料との吸収波長域の重なりが少なく、(B)成分や(C)成分への増感効果が高いという点から好ましい。
【0050】
(F)光増感剤の使用量は、使用する(B)成分や(C)成分への増感作用により適宜調整することが必要であるが、(B)成分と(C)成分の総量100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは30〜300重量部である。5重量部未満では、期待する光増感作用が得られない傾向にあり、500重量部を越えると、得られる塗膜が着色する傾向にあったり、コスト的な負荷も大きくなるため好ましくない。
【0051】
また活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などをあげることができるが、反応速度が速く、エネルギー線発生装置が比較的安価であるという点からは、紫外線が最も好ましい。活性エネルギー線の照射量としては、波長310〜390nmの積算照射量として50〜10,000mJが好ましく、100〜5,000mJがさらに好ましい。
【0052】
得られた着色活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて脱水剤、可塑剤、溶剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤などの通常塗料に用いられる添加剤を添加することもできる。
【0053】
活性エネルギー線硬化性組成物を硬化して得られる硬化被膜の厚みとしては、0.1〜1000μmが好ましく、1〜100μmがさらに好ましく、2〜50μmが特に好ましい。
【0054】
得られた活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系基材、プラスチック、フィルム、シート、木材、紙、繊維などからなる建築物、家電用品、産業機器などの塗装に好適に使用できる。特に、活性エネルギー線の照射しやすさから、PMMAやポリカーボネートなどのプラスチック、フィルム、シートに好適に使用できる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0056】
(使用した材料)
(加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する重合体(A))
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器に表1の(イ)成分を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、表1の(ア)成分の混合物を滴下ロ−トから5時間かけて等速滴下した。次に、(ウ)成分の混合溶液を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、110℃で2時間攪拌した後に、室温まで冷却した。最後に表1の(エ)成分を加えて攪拌し、重合体(A)を合成した。
【0057】
得られた重合体(A−1、2)の固形分濃度、GPCで測定した数平均分子量を表1に示した。尚、重合体(A−1、2)は、重合溶剤で固形分濃度が50%となるように一旦希釈して次の配合へと進めた。
【0058】
また比較製造例として(A−3)に示した単量体混合物を作成した。
【0059】
【表1】
【0060】
(コーティング用樹脂組成物の作成方法)
表2に示すようにミルベースとして、重合体(A−1、2)および単量体混合物(A−3)に顔料(D)および脱水剤を添加し、ガラスビーズを用いて、ペイントコンディショナーで120分間分散した。続いてカットバックとして表2に示す重合体(A)、シリコン化合物(E)を混合した後にミルベースに添加、ディスパーを用いて1000rpmで20分間攪拌し、白エナメルコーティング用樹脂組成物(AE−1〜7)を得た。
【0061】
【表2】
【0062】
なお、表2中の化合物の記号は次のとおりである。
MS51:三菱化学(株)製テトラメトキシシランの縮合物(SiO2含有量:51重量%)
MS56:三菱化学(株)製テトラメトキシシランの縮合物(SiO2含有量:56重量%)
CR−95:石原産業(株)製酸化チタン系顔料
MA−100:三菱化学(株)製カーボンブラック系顔料
4966:大日精化(株)製シアニンブルー系顔料。
【0063】
(物性評価:クリアー)
厚さ1mmのポリカーボネート板、PMMA板およびABS板に、表3で作成したコーティング用樹脂組成物をバーコーターを用いて、乾燥膜厚が約15μmとなるように塗布し、80℃で3分間溶剤除去のため乾燥した。次いで、空気中で高圧水銀ランプを用い、240mWで、波長310〜390nmの積算光量が1000mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することで硬化させ、試験片とした。
【0064】
一方比較例として、従来の金属触媒等を用い、80℃で30分熱乾燥し、試験片とした。
ポリエチレンシートに同様の方法にて塗布し、硬化性(ゲル分率)測定用の試験片(1日後)とした。
【0065】
【表3】
【0066】
(物性評価:エナメル)
厚さ1mmのポリカーボネート板、PMMA板およびABS板に、表4の配合に従って作成したコーティング用樹脂組成物をバーコーターを用いて、乾燥膜厚が約15μmとなるように塗布し、80℃で3分間溶剤除去のため乾燥した。次いで、空気中で高圧水銀ランプを用い、240mWで、波長310〜390nmの積算光量が2000mJ/cm2となるようにエネルギー線を照射することで硬化させ、試験片とした。
【0067】
一方比較例4、5として、従来の金属触媒等を用い、80℃で30分熱乾燥し、試験片とした。
【0068】
ポリエチレンシートに同様の方法にて塗布し、硬化性測定用(1日後、14日後)の試験片とした。
【0069】
【表4】
【0070】
なお、表3、表4中の化合物の記号は次のとおりである。
CPI−100P:サンアプロ(株)製トリアリールスルホニウム・PF6塩の50%プロピレンカーボネート溶液
CPI−101A:サンアプロ(株)製トリアリールスルホニウム・SbF6塩の50%プロピレンカーボネート溶液
MPI−105:みどり化学(株)製ジアリールヨードニウム・CF3SO3
U−ES:日東化成(株)製ジオクチル錫塩とシリケートの反応物
ALCH−TR:川研ファインケミカル(株)製アルミキレート化合物
・硬化性(ゲル分率)
照射1日と14日後、硬化性測定用試験片から遊離のフィルムを約50×50mmの大きさに切断し、予め精秤した200メッシュのステンレス製の金網(W0)に包み精秤した(W1)。ついで、アセトン中に24時間浸漬して抽出を行ない、乾燥・精秤し(W2)、式:
ゲル分率(%)=
{((W2)−(W0))/((W1)−(W0))}×100
に基づいてゲル分率(%)を求めた。
・鉛筆硬度
ポリカーボネート板およびPMMA板に塗布した試験板を7日後にJIS K5600に準拠して、750g荷重負荷にて試験を行った。3回試験を実施し、3回ともに傷がつかなかったときの鉛筆硬度を読み取った。
・碁盤目密着性試験
照射7日後にJIS K5600に準拠して、1mm間隔の碁盤目密着性試験を行った(一次密着)。さらに、23℃の水に1週間浸漬し、取り出し直後の密着性も評価した(二次密着)。
・接触角
照射7日後、協和界面科学(株)製接触角測定機CA−S150を使用し、純水の接触角を測定した。値が低いほど表面親水性が高いことを示している。同様にオレイン酸の接触角についても測定した。値が低いほど表面親油性が高いことを示している。
・耐溶剤、耐薬品性
PMMA塗装板を用い、照射14日後、表に示す溶剤、薬品をスポットし、耐溶剤性の場合は、常温で溶剤が揮発するまで、耐薬品性の場合は、80℃で1時間静置した後、脱脂綿で拭取り塗膜の状態を観察した。
○:変化なし
△:スポット跡が残る
×:塗膜が膨潤(溶解)している
コパトーン、ニベアとしては、下記のものを使用した。
コパトーン:コパトーンSPF50
ニベア :ニベアSPF47
・安定性
表4で作成したコーティング用樹脂組成物を遮光ガラス容器に入れ、窒素封入後、常温にて静置した。2週間後、組成物の状態を観察した。
○:変化なし
×:著しい増粘若しくはゲル化。
【0071】
実施例1〜6では、照射後すぐに高い硬化性を示し、耐溶剤性や耐薬品性も非常に優れた結果が得られた。光塩基発生剤を使用した実施例7は、照射直後の硬化性は高くないものの、7日養生後には充分な耐溶剤性と耐薬品性が認められた。付着性についても、ポリカーボネートやABSなどのプラスチック基材に対して、良好な付着性が認められた。さらに水に対する接触角、オレイン酸に対する接触角ともに低く、親水親油の塗膜表面であることが確認された。親水親油という性質から、耐指紋拭取り性のよい表面であることが期待できる。
【0072】
一方、熱乾燥により作成した比較例1および2では、耐溶剤性や耐薬品性が充分ではなく、特に耐薬品性では、塗膜の溶解が観察された。また基材への付着性も充分ではなく、プラスチック基材表面の機能性向上に適したコーティング剤とは言い難い。
【0073】
またエナメルにて評価を行った実施例8〜15では、照射直後の硬化性は高くないものの、14日の養生後には高い硬化性を示し、耐溶剤性や耐薬品性も非常に優れた結果が得られた。付着性についても、ポリカーボネートやABSなどのプラスチック基材に対して、良好な付着性が認められた。さらに水に対する接触角、オレイン酸に対する接触角ともに低く、親水親油の塗膜表面であることが確認された。親水親油という性質から、耐指紋拭取り性のよい表面であることが期待できる。また作成したコーティング用組成物は、遮光し窒素封入した条件下、非常に安定であり、一液としても使用可能である。
【0074】
一方、多官能単量体などと光ラジカル開始剤を組み合わせた比較例3では、照射直後の硬化性が得られず、14日間の養生を行っても改善は見られず塗膜の評価が出来なかった。また熱乾燥により作成した比較例4および5では、焼付け直後から高い硬化性を示しているものの、耐薬品性が充分ではない結果であった。また基材への付着性も充分ではなく、プラスチック基材表面の機能性向上に適したコーティング剤とは言い難い。さらにコーティング用組成物の一液としての安定性は高くなく、窒素封入下でも常温2週間後には塗装できない状態となっていた。
【0075】
以上のように本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、過度に熱をかけることなく短時間で硬化が可能で、耐溶剤性と耐薬品性に優れた塗膜を与えることが確認され、プラスチック基材に対して、充分な付着性を有しているため、プラスチック基材の機能性向上に適したコーティング剤であることが確認された。さらに、耐指紋拭取り性に有効であると言われる親水親油性の塗膜表面を形成することも確認された。また、遮光し窒素封入した条件であれば、充分な一液安定性も有していることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系基材、プラスチック、フィルム、シート、木材、紙、繊維などからなる建築物、家電用品、産業機器などの塗装に好適に使用できる。特に、活性エネルギー線の照射しやすさから、プラスチック、フィルム、シートに好適に使用できる。