(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
広くは、水性系溶媒中で溶解性を有する複数個の粒子の溶解速度は、疎水性表面改質ナノ粒子を複数個の粒子に添加し、複数個の粒子を水性系溶媒にさらすことによって、変更することができる。
【0007】
用語「水性系溶媒」は、水を含む粒子のための溶媒を指す。水性系溶媒は、完全に水であり得るか、又は水との混和性がある極性有機溶媒を含有することもできる。いくつかの実施形態では、極性有機溶媒は、水性系溶媒中の粒子の溶解性を増加させるために添加してもよい。好適な極性有機溶媒としては、アルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、アセトン、及びテトラヒドロフランが挙げられる。いくつかの実施形態では、極性有機溶媒は、最大6個の炭素原子、最大5個の炭素原子、最大4個の炭素原子、最大3個の炭素原子、又は更には最大2個の炭素原子を有するアルコールである。いくつかの実施形態では、水と極性有機溶媒との体積比は、1:10〜1:0.1の範囲である。例えば、水と極性有機溶媒との体積比は、1:5〜1:0.5又は1:2〜1:0.2の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、水性系溶媒中の水の体積%は、少なくとも75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%、又は更には少なくとも0.1%であり得る。本記載の粒子は、水性系溶媒中で溶解性を有し、水性系溶媒中に含まれる最小量の水は、水性系溶媒中の粒子材料の溶解性に依存する。溶解性は、一般に、当該技術分野において溶解度積(「K
SP」)の値として表される。水と極性有機溶媒とが混合される実施形態では、水の量は、極性有機溶媒中での水の混和性を超えない。
【0008】
粒子は、相対的サイズによりナノ粒子と区別され得る。本粒子は、ナノ粒子より大きい。
【0009】
粒子は、少なくとも100nm(すなわち、0.1マイクロメートル)、200nm、300nm、400nm、又は500nmのメジアン一次粒径又は粒塊粒径(一般に、有効直径として測定される)を有する。メジアン粒径は、典型的には、最大約1,000マイクロメートルであり、更に典型的には、最大500マイクロメートル、400マイクロメートル、300マイクロメートル、又は更には最大200マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、粒子は、多重モード(例えば、二峰性又は三峰性)分布を有している。
【0010】
用語「凝塊」は、電荷又は極性により保持一体化されている可能性があり、かつより小さい構成要素に分解され得る、一次粒子又は一次ナノ粒子間の弱い結合を指す。用語「一次粒径」及び「一次ナノ粒径」は、それぞれ、単一の(非凝集、非粒塊)粒子又はナノ粒子の平均直径を指す。
【0011】
疎水性表面改質ナノ粒子は、最大100ナノメートルの平均一次又は粒塊ナノ粒径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、最大75ナノメートル又は更には最大50ナノメートルの平均ナノ粒径を有する。ナノ粒子は、典型的には、少なくとも3ナノメートルの平均一次又は粒塊ナノ粒径を有する。いくつかの好ましい実施形態では、平均一次又は粒塊ナノ粒径は、最大20nm、15nm、又は更には最大10nmである。ナノ粒子の測定値は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)に基づくことができる。
【0012】
粒子は、典型的には、疎水性表面改質ナノ粒子の平均ナノ粒径より少なくとも50、60、70、80、90、又は更には少なくとも100倍大きいメジアン一次粒径を有する。いくつかの実施形態では、より大きい粒子は、疎水性表面改質ナノ粒子の平均ナノ粒径より少なくとも200、300、400、500、600、700、又は少なくとも800倍大きいメジアン一次粒径を有する。より大きい粒子は、疎水性表面改質ナノ粒子の平均ナノ粒径より最大5,000又は更には最大10,000倍大きいメジアン一次粒径を有してもよい。
【0013】
広くは、本記載の粒子は、無機粒子、有機粒子、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、無機粒子材料としては、水性系溶媒中で溶解性を有する金属リン酸塩類、スルホン酸塩類、及び炭酸塩類(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシ−アパタイト)が挙げられる。いくつかの実施形態では、無機粒子材料は、ホウ砂、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及びそれらの無水又は水和粒子形態のいずれかを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、粒子は、ポリマー、化粧用薬剤、薬剤、及び賦形剤(すなわち、薬物治療の活性成分のための担体として使用される不活性物質)等の水性系溶媒中で溶解性を有する有機材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機粒子材料は、ラクトースを含む。
【0016】
薬剤は、抗アレルギー剤、鎮痛剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、治療的タンパク質及びペプチド、鎮咳剤、狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、利尿薬、ホルモン、又はスルホンアミド(例えば、血管収縮性アミン、酵素、アルカロイド、若しくはステロイド)、並びにそれらのうちのいずれかの1つ以上の組み合わせを含むことができる。薬剤の特定の例は、アセトアミノフェンである。
【0017】
表面処理剤を欠く無機ナノ粒子は、おおむね親水性であり、疎水性表面処理剤を用いた表面の改質方法が公知である。表面改質とは、表面改質剤を無機酸化物粒子に付着させて表面特性を改質することを伴う。広くは、表面処理剤は、ナノ粒子の表面に(共有結合的に、イオン的に、又は強い物理吸着を通して)付着する第1の末端部と、恒久的に融合する等の粒子が凝集することを防止する立体的安定化を付与する第2の末端部とを有する。表面改質を含むことにより、粒子の他の材料との相溶性も改善することができる。例えば、オルガノシラン有機基等の有機末端基は、重合可能な熱可塑性樹脂等の有機マトリックス材料との、粒子の相溶性を改善することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本記載の疎水性表面改質ナノ粒子は、疎水性表面処理剤を有する無機ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、無機ナノ粒子は、金属酸化物等の無機材料を含む。種々の無機ナノ粒子が、市販されている。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、シリカ、ジルコニア、又はそれらの混合物を含む。市販のシリカナノ粒子源は、例えば、Nalco Co,Napervillle,ILから入手可能である。無機ナノ粒子はまた、当該技術分野において既知の技法を使用して作製することもできる。ジルコニアナノ粒子はまた、例えば、2009年7月9日に公開された国際公開第2009/085926号(Kolbら)に記載される、水熱技術を使用して調製することもでき、この説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、(非表面改質された)ナノ粒子は、コロイド状分散液の形態であり得る。コロイド状シリカ分散液は、例えば、商品名「NALCO 1040」、「NALCO 1050」、「NALCO 1060」、「NALCO 2327」、及び「NALCO 2329」でNalco Co.から入手可能である。ジルコニアナノ粒子分散液は、例えば、商品名「NALCO OOSSOO8」でNalco Chemical Co.から、及び商品名「BUHLER ZIRCONIA Z−WO」でBuhler AG Uzwil,Switzerlandから入手可能である。特に、表面改質ナノ粒子のいくつかのコロイド状分散液は、乾燥させて、乾式粉砕プロセスのためにナノ粒子を得ることができる。
【0020】
表面処理剤の例としては、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シラン、及びチタネートが挙げられる。好ましい種類の処理剤は、一部、(例えば、金属酸化物)ナノ粒子表面の化学的性質により決定される。シランがシリカとして、及びその他のシリカ系充填剤として好ましい。ジルコニアのような金属オキシドに対しては、シラン及びカルボン酸が好ましい。オルガノシラン表面処理剤が金属酸化物ナノ粒子に塗布されるとき、シラン末端部は、一般にナノ粒子により吸着される。カルボン酸がジルコニアナノ粒子に塗布されるとき、酸の末端部は、一般にジルコニアにより吸着される。
【0021】
例示的なシランとしては、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、及びヘキシルトリメトキシシラン)、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン又はアクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン)、メタクリルオキシアルキルアルキルジアルコキシシラン及びアクリルオキシアルキルアルキルジアルコキシシラン(例えば、3−(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、及び3−(アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン)、メタクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン及びアクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン(例えば、3−(メタクリルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン)、メルカプトアルキルトリアルコキシルシラン(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、アリールトリアルコキシシラン(例えば、スチリルエチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、及びp−トリルトリエトキシシラン)、ビニルシラン(例えば、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
カルボン酸表面改質剤は、例えば、水酸基を有する有機化合物との無水フタル酸の反応生成物を含むことができる。好適な例としては、フタル酸モノ−(2−フェニルスルファニル−エチル)エステル、フタル酸モノ−(2−フェノキシ−エチル)エステル、又はフタル酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステルが挙げられる。いくつかの実施例においては、水酸基を有する有機化合物は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。例としては、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、グルタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、及びフタル酸モノ−(2−アクリロイル−ブチル)エステルが挙げられる。更に他のものとしては、モノ−(メタ)アクリルオキシポリエチレングリコールコハク酸エステル及び無水マレイン酸、無水グルタル酸、及び無水フタル酸から形成されるその同族体が挙げられる。別例では、表面改質剤は、2010年7月1日に公開された国際公開第2010/074862号(Jonesら)に記載されるように、ポリカプロラクトン及び無水コハク酸の反応生成物であり、この説明は、参照により本明細書に組み込まれる。種々の他の表面処理剤は、2007年2月15日に公開された国際公開第2007/019229号(Baranら)に記載されるように、当該技術分野において既知であり、この説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
表面処理剤は、2つ以上の疎水性表面処理剤のブレンドを含むことができる。例えば、表面処理剤は、比較的長い置換又は非置換炭化水素基を有する、少なくとも1つの表面処理剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、表面処理剤は、少なくとも6個又は8個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素基(例えば、イソオクチルトリメトキシシラン)と、疎水性がより小さい第2の表面処理剤(例えば、メチルトリメトキシシラン)とを含む。
【0024】
表面処理剤はまた、疎水性表面処理剤と、(例えば、低濃度の)親水性表面処理剤とのブレンドも含み得るが、但し、そのようなものを含むことにより、疎水性表面処理剤に起因する溶解速度の変更を損ねないものとする。
【0025】
広くは、ナノ粒子は、ナノ粒子を粒子と混合する前に表面改質剤と混合される。表面改質剤の量は、ナノ粒径、ナノ粒子の種類、表面改質剤の分子量、及び改質剤のタイプのようないくつかの要素に依存する。一般的には、ほぼ単層の改質剤をナノ粒子の表面に付着させることが好ましい。付着手順又は反応条件もまた、使用する表面改質剤に依存する。シランの場合、酸性又は塩基性の条件の下、高温で約1〜24時間表面処理することが好ましい。カルボン酸のような表面処理剤では、高温又は長時間を必要としない。
【0026】
コロイド状分散液中のナノ粒子の表面改質は、種々の方法で実現できる。そのプロセスは、無機分散液と表面改質剤との混合物を伴う。任意に、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、及びそれらの混合物等の共溶媒がこの時点で添加され得る。共溶媒は、表面改質剤の溶解度及び表面改質されたナノ粒子の分散性を向上させることができる。無機ゾル及び表面改質剤を含む混合物は、その後、室温又は高温で、混合あり又はなしで、反応される。
【0027】
いくつかの実施形態では、疎水性表面改質ナノ粒子は、個別の疎水性表面改質ナノ粒子として複数個の粒子に添加される。いくつかの実施形態では、疎水性表面改質ナノ粒子は、個別の疎水性表面改質ナノ粒子として添加される。いくつかの実施形態では、疎水性表面改質ナノ粒子は、最大100ナノメートルの一次ナノ粒径を有する。
【0028】
多くの実施形態では、疎水性(例えば、表面改質)ナノ粒子は、粒子及びナノ粒子の総混合物の最大10重量%固体の量で存在する。いくつかの実施形態では、疎水性ナノ粒子は、最大約5、4、3、又は更には最大約2重量%固体の量で存在する。疎水性ナノ粒子の量は、典型的には、少なくとも0.01重量%、0.05重量%、又は更には少なくとも0.1重量%固体である。いくつかの実施形態では、疎水性ナノ粒子の量は、少なくとも0.2重量%固体、0.3重量%固体、0.4重量%固体、又は更には少なくとも0.5重量%固体である。しかしながら、粒子が濃縮マスターバッチである場合、疎水性ナノ粒子の濃度は実質的により高くてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、本方法は、水性系溶媒中で溶解性を有する複数個の粒子を提供する工程と、粒子に対して溶媒ではない揮発性不活性液体を添加しないで、疎水性表面改質ナノ粒子を添加する工程と、を含む。いくつかの別の実施形態では、本方法は、水性系溶媒中で溶解性を有する複数個の粒子を含む混合物を提供する工程と、粒子に対して溶媒ではない揮発性不活性液体中のコロイド状分散液として疎水性表面改質ナノ粒子を添加する工程と、を含む。コロイド状分散液として利用され得る典型的な液体としては、トルエン、イソプロパノール、ヘプタン、ヘキサン、及びオクタンが挙げられる。混合物中の液体の濃度は、最大5重量%である。いくつかの実施形態では、混合物中の液体の濃度は、最大4重量%、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、又は更には最大0.5重量%である。混合物中の液体の濃度は、十分に低いため、液体が混合中に蒸発する。高濃度の液体が利用される場合、本方法は、典型的には、例えば疎水性表面改質ナノ粒子と結び付いた複数個の粒子の自由流動性の乾燥粉末を回収するために、濾過及び/又は蒸発により、混合物から液体を除去する工程を更に含む。
【0030】
粒子と疎水性表面改質ナノ粒子の混合物は、任意に、粉砕された粒子が、2010年6月10日に出願された国際特許出願第PCT/US2010/038,132号(Shinbachら)に記載される、減少した粒径を有するように粉砕され得、この説明は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0031】
本説明の複数個の粒子の溶解における安定状態に必要とされる期間は、約1又は2秒、最大数分間、最大数時間、又は最大数日間まで様々であり得る。本説明の範囲を限定することなく、本説明の複数個の粒子の溶解における安定状態に必要とされる期間は、水性系溶媒、粒径及び粒子形状、温度、混合、音波処理、並びに酸性、塩基、及び/又は電解質の含有物の選択を含む変数に依存し得る。当業者は、例えば、実施例1(以下に論じられる)において、溶解の安定状態が1分以内で生じる複数個の粒子の溶解に必要とされる正当な期間を選択することができる。本説明の粒子材料を有する疎水性表面改質ナノ粒子を含むことにより、結果として生じる組成物に種々の有益な特性、特に、水性系溶媒中の微粒子材料の溶解速度の変更を提供することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、水性系溶媒中の変更された溶解速度は、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度よりも高い。いくつかの実施形態では、水性系溶媒中の変更された溶解速度は、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度より少なくとも1%高いか、少なくとも5%高いか、又は更には少なくとも10%高い。いくつかの他の実施形態では、水性系溶媒中の変更された溶解速度は、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度よりも低い。いくつかの実施形態では、水性系溶媒中の変更された溶解速度は、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度より少なくとも1%低いか、少なくとも5%低いか、又は更には少なくとも10%低い。
【0033】
水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度は、導電率又は紫外線吸収の変化のモニタリング等の当該技術分野において既知の方法によってモニタリングされてもよい。水性系溶媒中のアスピリン、イブプロフェン、及びアセトアミノフェンの溶解速度をモニタリングするために紫外線吸収を使用する例は、2008年3月17日に公開された第USP30−NF25号に記載されている。
【0034】
例示的実施形態
1.複数個の粒子の溶解速度の変更方法であって、
水性系溶媒中で溶解性を有する複数個の粒子を提供する工程と、
疎水性表面改質ナノ粒子を添加する工程と、
複数個の粒子を水性系溶媒にさらす工程と、を含み、
疎水性表面改質ナノ粒子と結びついた複数個の粒子は、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度に対して、水性系溶媒中で変更された溶解速度を有する、方法。
【0035】
2.水性系溶媒が、水である、実施形態1に記載の方法。
【0036】
3.水性系溶媒が、水と水混和性極性有機溶媒との混合物を含む、実施形態1又は実施形態2のいずれかに記載の方法。
【0037】
4.水混和性極性有機溶媒が、極性有機プロトン性溶媒、極性有機非プロトン性溶媒、及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
【0038】
5.極性有機プロトン性溶媒が、最大6個の炭素原子を有するアルコールである、実施形態4に記載の方法。
【0039】
6.極性有機非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態4に記載の方法。
【0040】
7.水性系溶媒中の変更された溶解速度が、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度よりも高い、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
【0041】
8.水性系溶媒中の変更された溶解速度が、サンプルの導電率を測定するための方法に従って試験されたとき、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない水性系溶媒中の複数個の粒子の溶解速度よりも少なくとも10%高い、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
【0042】
9.水性系溶媒中の変更された溶解速度が、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない、比較可能なサンプル中の複数個の粒子の溶解速度よりも低い、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
【0043】
10.水性系溶媒中の変更された溶解速度が、サンプルの導電率を測定するための方法に従って試験されたとき、疎水性表面改質ナノ粒子の存在しない、比較可能なサンプル中の複数個の粒子の溶解速度より少なくとも10%低い、実施形態1〜9のいずれかに記載の方法。
【0044】
11.疎水性表面改質ナノ粒子が、個別の疎水性表面改質ナノ粒子として添加される、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
【0045】
12.疎水性表面改質ナノ粒子が、疎水性表面処理剤を有する金属酸化物を含む、実施形態1〜11のいずれかに記載の方法。
【0046】
13.金属酸化物が、シリカを含む、実施形態12に記載の方法。
【0047】
14.粒子が、ホウ砂、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を含む、実施形態1〜13のいずれかに記載の方法。
【0048】
15.粒子が、ホウ砂を含む、実施形態1〜14のいずれかに記載の方法。
【0049】
16.粒子が、薬剤を含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
17.粒子が、賦形剤を更に含む、実施形態1〜16のいずれかに記載の方法。
【0051】
18.粒子が、最大200マイクロメートルのメジアン粒径を有する、実施形態1〜17のいずれかに記載の方法。
【0052】
19.粒子が、最大75マイクロメートルのメジアン粒径を有する、実施形態1〜18のいずれかに記載の方法。
【0053】
20.粒子が、最大45マイクロメートルのメジアン粒径を有する、実施形態1〜19のいずれかに記載の方法。
【0054】
21.疎水性表面改質ナノ粒子が、最大100ナノメートルの一次粒径を有する、実施形態1〜20のいずれかに記載の方法。
【0055】
22.疎水性表面改質ナノ粒子が、平均ナノ粒径を有し、粒子が、少なくとも1マイクロメートルのメジアン一次粒径を有し、メジアン一次粒径が、疎水性表面改質ナノ粒子の平均粒径よりも10〜10,000倍の範囲で大きい、実施形態1〜21のいずれかに記載の方法。
【0056】
23.疎水性表面改質ナノ粒子が、オルガノシラン表面処理剤を有するシリカを含む、実施形態1〜22のいずれかに記載の方法。
【0057】
24.オルガノシラン表面処理剤が、イソオクチルトリメトキシシランを含む、実施形態23に記載の方法。
【実施例】
【0058】
これらの実施例は、例示のためだけのものであり、添付の「特許請求の範囲」を限定することを意味しない。特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、及び比率はすべて、重量に基づく。具体的には、用語「重量%」は、「重量パーセント」又は「重量パーセンテージ」と同じことを意味する。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis))から入手した。
【0059】
材料
以下の材料は、下述の実施例及び比較例において使用された。
【0060】
【表1】
【0061】
疎水性表面改質シリカナノ粒子を調製するための方法
100グラムのシリカゾル(5ナノメートル粒径、水中16.6%固体、商品名「NALCO 2326」でNalco Company,Naperville,ILから入手)を、3口丸底フラスコ(Ace Glass,Vineland,NJから入手)に入れた。ポリテトラフルオロエチレンパドルを搭載したガラス製攪拌棒を、丸底フラスコの中央の口に装着した。フラスコを油浴中に入れ、次いで、コンデンサを装着し、次いで、内容物を攪拌した。112.5グラムの80:20重量/重量のエタノール(EMD Chemicals,Gibbstown,NJから入手)とメタノール(VWR International,West Chester,PAから入手)との混合物を、250ミリリットルのガラスビーカーの中で調製した。150ミリリットルのビーカーに、以下の構成要素を、以下の順序で入れた:80:20重量/重量のエタノール:メタノールの混合物の半分、7.5グラムのイソオクチルトリメトキシシラン(Gelest Inc.,Morrisville,PAから入手)、及び0.8グラムのメチルトリメトキシシラン(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MOから入手)。溶液を十分に混合した後、シリカゾル(「NALCO 2326」)を含有する3口丸底フラスコに添加した。80:20重量/重量のエタノールとメタノールとの混合物の残りの半分は、150ミリリットルのビーカーから反応物中にいくらかの残りのイソオクチルトリメトキシシラン又はメチルトリメトキシシランをすすぎ入れるために使用した。80℃に設定した温度の油浴中で、反応物を4時間攪拌した。結果として生じる表面改質ナノ粒子を結晶皿に移し、150℃に設定したオーブンで約1.5時間乾燥させた。結果として生じる乾燥した白色生成物を手ですりつぶし、ガラス瓶に移した。
【0062】
疎水性表面改質シリカナノ粒子の調製
調製例1〜11のそれぞれについて、溶解すべき所定量の指示された粒子材料を、第1に、疎水性表面改質シリカナノ粒子(上記のように調製)と混合して、指示された標的重量%レベルを得、続いて、実験室用ミキサーシステム(商品名「FLACKTEK SPEEDMIXER DAC 150FVZ」でFlackTek Inc.,Landrum,SCから入手)を用いて、3000rpmで1分間混合し、木製棒を用いて手で混合し、次いで実験室用ミキサーシステム上で3000rpmで1分間再度混合した。次いで、結果として生じる混合物を、80℃のオーブン中で6日間乾燥させた。表1(下記)は、実施例1〜11のそれぞれについて、疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した粒子材料の種類及び量並びに疎水性表面改質シリカナノ粒子の重量%を要約する。
【0063】
【表2】
*SMNP=表面改質ナノ粒子
【0064】
比較例A〜J(下述)における粒子材料のそれぞれについて、粒子材料サンプルを、疎水性表面改質シリカナノ粒子(SMP)を添加しないことを除いては、上の調製例における対応する材料に対するものと同一の様式で調製した。
【0065】
サンプルの導電率を測定するための方法
下述の実施例及び比較例のそれぞれについて、125グラムの指示された水性系溶媒を、磁気攪拌棒で連続的に攪拌しながら、攪拌プレート上のビーカー中に入れた。導電率プローブ(商品名「ORION CONDUCTIVITY PROBE NUMBER 012210」でThermo Scientific,Waltham,MAから入手)を有する導電率計(商品名「MODEL 122 ORION CONDUCTIVITY METER」でThermo Scientific,Waltham,MAから入手)を使用して、粒子材料の添加前に、初期温度を記録し、水性系溶媒の初期導電率を測定した。次いで、予め秤量した量(特に指示がない限り、1グラム)の試験すべき指示された材料を、連続的に攪拌しながら水性系溶媒に添加し、導電率を、導電率の読取りが安定するまで約5秒間隔で測定した。導電率が15〜30秒の期間変化しなかったとき、それが安定したと見なされた。導電率測定の終了時、最終温度を記録した。それぞれの実施例についての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、下記の表2に要約する。
【0066】
【表3】
*SMNP=表面改質ナノ粒子
【0067】
実施例1及び比較例A
実施例1については、1グラム分の、無水塩化カルシウム粒子材料と0.1重量%の表面改質疎水性シリカナノ粒子(調製例1のように調製)との混合物を、125グラムの脱イオン水に添加し、この試験混合物の導電率を、上記の「サンプルの導電率を測定するための方法」を用いて時間と共に測定した。実施例1についての初期導電率、初期温度(「初期温度(Initial Temp.)」)、及び最終温度(「最終温度(Final Temp.)」)を上記の表2に示す。
【0068】
比較例Aについては、上述の実験室用ミキサーシステムを使用するが、疎水性シリカナノ粒子の不在下で、無水塩化カルシウム粒子材料を混合プロセスに供することを除いては、実施例1に使用したプロセスを繰り返した。比較例Aについての初期導電率、初期温度、及び最終温度の溶液を、上記の表2に示す。
【0069】
実施例1及び比較例Aについての導電率対時間のプロットを
図1に示す。
【0070】
実施例2及び比較例B
実施例2及び比較例Bはそれぞれ、粒子材料として無水硫酸マグネシウムを使用するが、実施例1及び比較例Aのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例2については、無水硫酸マグネシウムを、0.1重量%のレベルで疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例2を参照)。実施例2及び比較例Bについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0071】
実施例2及び比較例Bについての導電率対時間のプロットを
図2に示す。
【0072】
実施例3及び比較例C
実施例3及び比較例Cはそれぞれ、粒子材料として塩化ナトリウム及び水性系溶媒として蒸留水を使用するが、実施例1及び比較例Aのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例3については、塩化ナトリウムを、0.1重量%のレベルで疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例3を参照)。実施例3及び比較例Cについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0073】
実施例3及び比較例Cについての導電率対時間のプロットを
図3に示す。
【0074】
実施例4、5、及び6、並びに比較例D
実施例4〜6及び比較例Dはそれぞれ、粒子材料としてホウ砂を使用するが、実施例1及び比較例Aのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例4、5、及び6については、ホウ砂を、0.04重量%、0.1重量%、及び0.5重量%のそれぞれのレベルで、疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例4、5、及び6をそれぞれ参照)。実施例4〜6及び比較例Dについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0075】
実施例4〜6及び比較例Dについての導電率対時間のプロットを、
図4A及び4Bに示す。
図4Bは、
図4Aに含まれない実施例6についての後半の時点を含む。
【0076】
実施例7及び比較例E
実施例7及び比較例Eは、粒子材料として水酸化カルシウムを使用するが、実施例1及び比較例Aのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例7については、水酸化カルシウムを、0.05重量%のレベルで疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例7を参照)。実施例7及び比較例Eについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0077】
実施例7及び比較例Eについての導電率対時間のプロットを
図5に示す。
【0078】
実施例8及び比較例F
実施例8及び比較例Fは、粒子材料として塩化マグネシウム6水和物及び水性系溶媒として蒸留水を使用するが、実施例1及び比較例Aのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例8については、塩化マグネシウム6水和物を、0.01重量%のレベルで疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例8を参照)。実施例8及び比較例Fについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0079】
実施例8及び比較例Fについての導電率対時間のプロットを
図6に示す。
【0080】
実施例9〜10及び比較例G
実施例9〜10及び比較例Eは、粒子材料として無水亜硫酸ナトリウムを使用するが、実施例1及び比較例Aのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例9及び10については、無水亜硫酸ナトリウムを、0.01重量%及び0.05重量%のそれぞれのレベルで、疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例9及び10をそれぞれ参照)。実施例9、実施例10、及び比較例Gについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0081】
実施例9、実施例10、及び比較例Eについての導電率対時間のプロットを
図7に示す。
【0082】
実施例11及び比較例H
実施例11及び比較例Hは、粒子材料としてラクトースを使用するが、実施例1及び比較例Aのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例11については、ラクトースを、0.01重量%のレベルで疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例11を参照)。実施例11及び比較例Hについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0083】
実施例11及び比較例Hについての導電率対時間のプロットを
図8に示す。
【0084】
実施例12〜13及び比較例J
実施例12、13、及び比較例Jは、水性系溶媒が、25重量%のイソプロピルアルコール(IPA)と75重量%の脱イオン水との混合物であることを除いては、粒子材料としてホウ砂を使用し、実施例4、5、及び比較例Dのそれぞれと同じ様式で実行された。実施例12及び13については、ホウ砂を、0.04重量%及び0.1重量%のそれぞれのレベルで、疎水性表面改質シリカナノ粒子により処理した(調製例12及び13のそれぞれを参照)。実施例12、実施例13、及び比較例Jについての初期導電率、初期温度、及び最終温度を、上記の表2に示す。
【0085】
実施例12、実施例13、及び比較例Jについての導電率対時間のプロットを
図9に示す。
【0086】
アセトアミノフェンを使用する実施例
以下の手順(2008年3月17日のUSP30−NF 25と同様)を使用して、ミリポアH
2O(すなわち、DIW)中のアセトアミノフェンとアセトアミノフェン/ナノ粒子との混合物の溶解速度及び強度を測定した。
【0087】
3つのサンプルのアセトアミノフェンを秤量した。1つのサンプルを、対照サンプル(比較例K)として使用した。所定量の表面改質ナノ粒子を、他のサンプルのそれぞれに添加した。サンプル14を1重量パーセントのナノ粒子(0.013g)と混合し、サンプル15を0.5重量パーセントのナノ粒子(0.0065g)と混合した。それぞれの混合したサンプルを、ナノ粒子をアセトアミノフェンに添加することによって調製した。それぞれの混合したサンプルを、スピードミキサー(商品名「SPEEDMIXER」でFlakTeck,Landrum,SCから入手)中で2×3000rpmで1分間回転させた。
【0088】
【表4】
【0089】
次いで、それぞれの混合したサンプルを、1000mLのDIW及び磁気攪拌棒をそれぞれ備えた異なるガラスビーカーに入れることによって別々に測定した。それぞれのガラスビーカーを攪拌プレート上に置き、同じ設定で攪拌した。0.013gの混合したサンプルを測定し、攪拌したDIWに入れた。
【0090】
アセトアミノフェンがDIW中に溶解されたとき、DIWとアセトアミノフェンとの混合物の1.5mLのサンプルがピペットで2分間おきに取り除かれた。サンプルの紫外線/ビススペクトルは、特に、243nmの吸光度に焦点を合わせる紫外線/ビス分光光度計(商品名「LAMBDA 35 UV/VIS SPECTROPHOTOMETER」でPerkinElmer,Waltham,MAから入手)を用いて直ちに測定された。
【0091】
対照サンプルKは、243nmで約0.86の吸光強度を示した。これは、続く実験に必要とされる最終測定値であると判定された。0.86の値が得られ、吸光度が少なくとも2つの間隔で一定のままであった時点で、サンプリングは中止された。
【0092】
次いで、
図10にあるように、吸光度対時間としてデータをプロット化した。初めの2つの時点間の直線の傾斜(243nmでの吸光度の変化/秒内の時間の変化)が、サンプル間の溶解速度を比較するために使用された。これらの傾斜を表4に一覧にする。
【0093】
【表5】
【0094】
傾斜値が小さいほど、アセトアミノフェンがより高速に溶解されたことを示した。
【0095】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。