特許第6016799号(P6016799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016799
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】呼吸器合胞体ウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/155 20060101AFI20161013BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20161013BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20161013BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20161013BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20161013BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20161013BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20161013BHJP
   A61K 39/12 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   A61K39/155
   A61P31/14
   A61K39/395 N
   A61K35/16 Z
   C07K16/10ZNA
   !C12N15/00 A
   !C12P21/08
   !A61K39/12
【請求項の数】15
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-538235(P2013-538235)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2013-543860(P2013-543860A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】EP2011070161
(87)【国際公開番号】WO2012065997
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月11日
(31)【優先権主張番号】1019240.9
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/458,012
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】BCCM/LMBP  6818
【微生物の受託番号】BCCM/LMBP  6817
【微生物の受託番号】BCCM/LMBP  7796CB
【微生物の受託番号】BCCM/LMBP  7795CB
(73)【特許権者】
【識別番号】509333933
【氏名又は名称】フエー・イー・ベー・フエー・ゼツト・ウエー
(73)【特許権者】
【識別番号】500454046
【氏名又は名称】ウニベルズィタイト・ヘント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サレンス,グザビーアー
(72)【発明者】
【氏名】スケペンス,ベルト
(72)【発明者】
【氏名】フイエールス,ワルテル
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/133663(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/106980(WO,A1)
【文献】 Protein Science,2008年,17,p.813-820
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
WPI
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の低分子量疎水性タンパク質の外部ドメイン、及び担体を含む免疫原性組成物であって、前記外部ドメインは、
(a)配列番号1、
(b)配列番号2、
(c)(a)又は(b)に少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列、
(d)4番目のシステイン残基がセリン残基に置換された配列番号1、
(e)配列番号4〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は
(f)配列番号17及び19〜30からなる群から選択されるアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する、免疫原性組成物。
【請求項2】
外部ドメインがオリゴマーとして提示される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
担体が非タンパク質性担体又はリポソームである、請求項1又は2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
外部ドメインが担体と遺伝子的に結合した、請求項1又は2に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
外部ドメインが担体と化学的に結合した、請求項1又は2に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
担体がオリゴマーである、請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
オリゴマーがペンタマーである、請求項6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
担体が軟骨オリゴマー基質タンパク質(comp)、Lpp−56、及びウイルス様粒子からなる群から選択される、請求項1、2及び4〜7のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
ワクチンとして使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
呼吸器合胞体ウイルス感染の防御用又は治療用ワクチンを製造するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項11】
RSV感染を予防又は治療するための医薬の製造における、RSVの低分子量疎水性タンパク質(RSV−SH−タンパク質)の外部ドメインに対するヒト型抗体を含む血液、血清及び/又は血漿の使用であって、前記外部ドメインは、
(a)配列番号1、
(b)配列番号2、
(c)(a)又は(b)に少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列、
(d)4番目のシステイン残基がセリン残基に置換された配列番号1、又は
(e)配列番号4〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する、使用。
【請求項12】
RSV感染を予防又は治療するための医薬の製造における、RSV−SH−タンパク質の外部ドメインに対するモノクローナル抗体の使用であって、前記外部ドメインは、
(a)配列番号1、
(b)配列番号2、
(c)(a)又は(b)に少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列、
(d)4番目のシステイン残基がセリン残基に置換された配列番号1、
(e)配列番号4〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は
(f)配列番号17及び19〜30からなる群から選択されるアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有する、使用。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を含む、RSV感染の治療又は予防のためのワクチン。
【請求項14】
ヒトに使用するための、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
獣医学的使用のための、請求項13に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対するワクチンに関する。より具体的には、本発明は、RSVによりコードされる低分子量疎水性(SH)タンパク質の外部ドメインを含む組換えサブユニットワクチンに関する。SHの外部ドメインはSHeと呼ばれる。前記外部ドメインはオリゴマーとして提示されることが好ましく、ペンタマーとして提示されることがさらに一層好ましい。さらに本発明は、前記外部ドメインに対して産生された抗体または前記外部ドメインに特異的な抗体、ならびにRSV感染に対して対象を防御するためおよび/または感染した対象を治療するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
RSV感染は、工業国における幼児入院の主な原因である。2歳未満で一般に起こる一次RSV感染後、RSVに対する免疫は依然として不完全であり、再感染が起こる可能性がある。さらに、RSVは年配者において重度の疾患を引き起こす可能性があり、非流行年におけるインフルエンザAより高い死亡率と一般に関連している(Falseyら、1995)。WHOの推定する、世界全体の人間母集団における年間感染率は6400万の症例と推定され、米国のみで160000の死亡数であり、85000から144000の幼児がRSV感染の結果として毎年入院している(http://www.who.int/vaccine_research/diseases/ari/en/index2.html 2009年更新)。
【0003】
RSVはパラミクソウイルス科(family Paramyxoviridae)、ニューモウイルス亜科(subfamily Pneumovirinae)、ニューモウイルス属(genus Pneumovirus)に属し、ヒトでは2つの亜群、AとBが存在する。ヒトRSV以外に、ウシ型変異体が存在する。ヒトRSVのゲノムは約15200ヌクレオチド長であり、ネガティブセンスRNA分子である。RSVゲノムは、11の周知のタンパク質、糖タンパク質(G)、融合タンパク質(F)、低分子量疎水性タンパク質(SH)、核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)、巨大タンパク質(L)、基質タンパク質(M)、M2ORF−1タンパク質(M2−1)、M2ORF−2タンパク質(M2−2)、非構造タンパク質1(NS1)および非構造タンパク質2(NS2)をコードする。G、FおよびSHは膜貫通型表面タンパク質であり、N、P、L、M、M2−1はヌクレオカプシド関連タンパク質であり、NS1とNS2は非構造タンパク質である。構造または非構造タンパク質としてのM2−2の状態は知られていない。(Hacking and Hull、2002)。RSVの亜群はG、F、NおよびPタンパク質の抗原特性の違いを示す(Ogra、2004)。
【0004】
RSV感染に、血清およびいくつかの他の体液において検出可能な特異的IgGおよびIgA抗体の形成が続く。いくつかの研究は、抗体応答は主に主要RSV膜貫通型タンパク質FおよびGに対するものであることを実証しており、FおよびG特異的抗体のみがインビトロRSV中和活性を有することが知られている。Fタンパク質に対する抗体応答はA亜群とB亜群の間で交差反応性であることが多く、一方Gタンパク質に対する抗体応答は亜群特異的である(Ogra、2004)。FおよびGとは対照的に、膜貫通型タンパク質SHは非免疫原性として考えられており(Gimenezら、1987;Tsutsumiら、1989)、いくつかのワクチン候補の中で、不可逆弱毒ワクチンを得るためSHさえ削除されている(Karronら、2005)。
【0005】
RSV感染を予防するためのワクチンの開発は、宿主免疫応答が、疾患の病因において有意な役割を果たすように思われるという事実により複雑になっている。ホルマリン不活化RSVを子供に予防接種した初期の試みは、予防接種した子供が、非予防接種対照と比較して、後のウイルスへの曝露時により重度の疾患を経験したことを示した(Kapikianら、1969)。弱毒生ワクチンが試験されているが、臨床試験において過剰または不十分な弱毒化を示すことが多い(Murata、2009)。
【0006】
1つの免疫原性タンパク質または免疫原性タンパク質の組合せを使用するサブユニットワクチンは、安全であると考えられる。それらは、毒性ウイルスに復帰するまたは突然変異することができないからである。精製Fタンパク質に基づく候補ワクチンが開発されており、げっ歯類、コットンラット、およびヒトにおいて試験され、安全であるが、ごくわずかに免疫原性であることが示された(FalseyおよびWalsh、1996;FalseyおよびWalsh、1997;Groothuisら、1998)。同様の形式で、F−、G−およびM−タンパク質の混合物を用いた臨床試験はフェーズIIで中断された(ADISinsight臨床データベース)。代替手法は、レンサ球菌Gタンパク質のアルブミン結合ドメインのC末端とヒトRSV Gタンパク質の抗原ドメインの組換え遺伝子融合からなっていた(BBG2Na;Powerら、2001)。BBG2Naは健常ボランティアにおいて臨床試験のフェーズIIIまで調べられたが、何人かの免疫処置済みボランティアにおける予期せぬ3型過敏症副作用(紫斑病)の出現が原因で試験は止めなければならなかった(Meyerら、2008)。
【0007】
近年の進展は、RSV抗原用ベクターとしてのキメラ組換えウイルスの使用である。キメラ組換えウシ/ヒトパラインフルエンザウイルス3型(rB/HPIV−3)が、BPIV−3ゲノムにおいてFおよびHN遺伝子とHPIBV−3由来の相同遺伝子を置換することによって操作された。生成したキメラrB/HPIV−3株を次いで使用してHRSV FおよびG遺伝子を発現させた(Schmidtら、2002)。このワクチンは現在臨床研究下にある。
【0008】
RSVによって引き起こされる重度の疾患に利用可能な、ごく限られた数の予防および治療オプションが存在する。最も広く使用されている介入は、マウスモノクローナル抗体1129に由来するヒト化モノクローナル抗体を用いた受動免疫防御に基づく(Beeler and van Wyke Coelingh、1989)。この抗体はRSV Fタンパク質に特異的であり、亜群AおよびBウイルスを中和する。組換えヒト化抗体1129はパリビズマブとして知られており(シナジスとしても知られる)、RSV感染時に合併症を発症するリスクが高い幼児の予防療法に使用される。この抗体を1ヶ月単位で筋肉内投与して、未熟児、慢性肺疾患、または血行動態が重大な先天性心疾患が原因のリスクがある幼児においてRSV感染のリスクを低下させる(Bocchiniら、2009)。いくつかの研究が、パリビズマブを用いたRSV予防に関する許容可能なコスト効率比を報告している(Prescottら、2010)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://www.who.int/vaccine_research/diseases/ari/en/index2.html 2009年更新
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
市販されている承認されたワクチンはないので、安全で有効なRSVワクチンの開発および利用性に関する満たされていないニーズが依然として存在する。驚くことに、本発明者らは、SHeと呼ばれる低分子量疎水性タンパク質SHの細胞外部分(外部ドメイン)は、特にそれが担体においてオリゴマーとして、好ましくはペンタマーとして現れるとき、RSV感染に対する予防接種に安全に使用することができることを発見した。さらに、SHeに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、それぞれRSV感染を予防または治療するために、予防的または治療的に使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の低分子量疎水性(SH)タンパク質の外部ドメイン、および担体を含む免疫原性組成物である。好ましい一実施形態では、RSVはヒト亜群Aまたはヒト亜群B株のいずれかであり、別の好ましい実施形態では、RSVはウシRSVである。SHタンパク質は当業者に知られており、64(RSV亜群A)、65(RSV亜群B)個のアミノ酸残基、またはウシRSVに関して81、77もしくは72個のアミノ酸残基を含有する。好ましい一実施形態では、SHの外部ドメイン(SHe)は、亜群Aに関して23のカルボキシ末端アミノ酸(配列番号1)、および亜群Bに関して24のカルボキシ末端アミノ酸(配列番号2)からなる。外部ドメインの配列は、配列番号1(外部ドメイン亜群A)および配列番号2(外部ドメイン亜群B)、またはそれらの変異体からなる群から選択されることが好ましい。本明細書で使用する変異体は、配列が欠失、挿入または置換などの1つまたは複数の突然変異を有し得ることを意味する。前記突然変異は置換であることが好ましい。さらにより好ましくは、前記変異体は、BLASTpアラインメント(Altschulら、1997)で測定して、80%の同一率、好ましくは85%の同一率、さらにより好ましくは90%の同一率、最も好ましくは95%の同一率を有する。前記変異体は、配列NKL C/S E Y/H K/N XF(配列番号3)を含むことが好ましい。好ましい変異体は配列番号4−配列番号16で列挙する。別の好ましい実施形態では、外部ドメインは、前に定義したように配列番号17(ウシRSV SHの外部ドメイン)またはその変異体からなる。前記変異体は、配列NKLCXXXXXHTNSL(配列番号18)を含むことが好ましい。好ましい変異体は配列番号19−30で列挙する。担体分子はSHタンパク質とは異種である分子であり、担体は抗原提示に適した当業者に知られている任意の担体であってよく、HBcore(Whitacreら、2009)などのウイルス様粒子、および集合体ウイルスカプシドまたはコートタンパク質由来の他のVLPを含むが、これらだけには限られない。それが免疫系に対して抗原を有効に提示することができるという条件で、ペンタマー軟骨オリゴマー基質タンパク質(comp;McFarlaneら、2009)、トロンボスポンジン3および4(Malashkevichら、1996)、細菌AB5型毒素のBサブユニット(例えば、コレラ毒素のサブユニットまたはE.コリ(E.coli)熱不安定性毒素;Williamsら、2006)、ペンタマートリプトファン−ジッパー(Liuら、2004)、ペンタマーフェニルアラニン−ジッパー(Liuら、2006)またはテトラマーGCN4由来ロイシンジッパー(tGCN4、De Filetteら、2008)およびLpp−56(Shuら、2000)などの、任意の他の分子構築物を使用することもできる。担体はタンパク質性、および非タンパク質性であってよい。非タンパク質性担体の例は、非制限的な例として、リポソーム、CLIPS(商標)構築物(Timmermanら、2007)およびトリメチルキトサン(Slutterら、2010)である。前記担体は、1つの足場上に複数のSHe分子を提示することによって、多量体化した足場上に1つのSHeを提示することによって、または両方の組合せによって、SHeを好ましくはオリゴマーとして提示し、さらに一層好ましくはペンタマーとして提示する。SHeオリゴマーは線状反復構造として、またはオリゴマー複合体を形成する個々のSHe単位として、または両方の組合せとして提示され得る。前記担体は、オリゴマー担体(ダイマー、デカマーまで)であることが好ましい。さらに一層好ましくは、前記担体はペンタマー担体である。具体的な一実施形態では、細胞質ドメインを好ましくは含まないSHの膜貫通ドメインを、場合によってさらに担体と融合または結合させて、オリゴマードメインとして使用することができる。全ての担体分子がSHeによって負荷されるはずはなく、実際非制限的な例として、ヘキサマー担体のわずか5単位がSHeで負荷され、それによってヘキサマー担体複合体上にペンタマーSHe複合体が提示されることは想像可能である。外部ドメインを担体と遺伝学的に結合させ、融合タンパク質を形成することが可能であり、両ドメインは直接融合することが可能であり、またはそれらはヒンジ配列もしくはスペーサー配列によって結合させることが可能である。本明細書で使用するように、遺伝学的に融合した構築物では、ヒンジ配列は2つのドメインを1つに結合させるアミノ酸配列であり、前記配列は柔軟な形式で2つのドメインを結合させることが好ましい。前記ヒンジ配列は好ましくは150アミノ酸より短く、さらに一層好ましくは100アミノ酸より短く、さらに一層好ましくは50アミノ酸より短く、最も好ましくは20アミノ酸より短い。本明細書で使用するスペーサーは、15アミノ酸より短い、短いヒンジ配列を示す。好ましい実施形態では、ヒンジ配列は、nが1、2、3、…20に等しい配列(Gly−Ser)を含む。別の好ましい実施形態では、ヒトIgG1のヒンジ領域などの免疫グロブリン遺伝子のヒンジを、ヒンジ配列として使用する。遺伝的結合の場合、前記結合はSHeのアミノ末端、およびカルボキシ末端で起こり得る。
【0012】
あるいは、外部ドメインは担体と化学的に結合する。化学結合は当業者に知られており、担体表面上の反応部位とペプチドの共有結合により担体と結合したペプチドを含むがこれだけには限られない。生成する構造は結合体である。担体表面上の反応部位は、化学的に活性がある、または活性化することができ、ペプチドとの共有結合に立体的にアクセス可能である部位である。好ましい反応部位はアミノ酸リシンのε窒素である。共有的に結合は、生理的条件下において加水分解に対して安定である共有結合の存在を指す。共有結合は、付加体形成、酸化、および還元を含めた生理的条件下において起こり得る他の反応に対して安定であることが好ましい。担体と抗原ペプチドの結合は、二官能性試薬を使用して得ることが多い(Hermanson、1996)。SHeにおける任意の適切な残基は化学的担体との結合に使用することができ、SHeはそのアミノ末端またはカルボキシ末端付近で担体と結合することが好ましい。
【0013】
さらに別の実施形態では、疎水性相互作用、協同的H−結合相互作用、またはファンデルワールス相互作用などであるがこれらだけには限られない非共有結合的相互作用によって、外部ドメインと担体を結合させる。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明による免疫原性組成物のワクチンとしての使用である。本発明のさらに別の態様は、RSV感染に対する防御用ワクチンを調製するための、本発明による免疫原性組成物の使用である。前記RSVは、RSV亜群AおよびRSV亜群Bからなる群から選択されることが好ましい。鼻腔内、腹腔内、筋肉内および皮内投与を含むがこれらだけには限られない当業者に知られている任意の経路により、治療する対象にワクチンを投与することができる。予防接種後、RSV感染による疾患症状の増大がないことが好ましい。ワクチンは動物またはヒト使用のためであってよい。好ましい動物用途は、ウシRSVなどであるがこれだけには限られないヒトRSVと関係があるウシ呼吸器ウイルスに対する予防接種による、畜牛または他のウシ科動物の防御である。RSV感染に対する防御は、予防用途と治療用途の両方を含む。より具体的には、ワクチンの好ましい用途は予防目的である。本明細書で使用する「ワクチンの調製」は、本発明による免疫原性組成物を適切な賦形剤の添加により最適化することができること、または非制限的な例として、貯蔵寿命の増大もしくはワクチンの医薬的特性の改善のために、本発明による免疫原性組成物を製剤化することができることを意味する。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明による免疫原性組成物、または本発明による免疫原性組成物の組合せを含むワクチンである。実際、非制限的な例として、RSV亜群AのSHeおよびRSV亜群BのSHeを含む免疫原性組成物を混合して、より広い特異性を有するワクチンを得ることができる。前記ワクチンはヒトまたは獣医学的使用のためであってよい。免疫原性組成物以外に、ワクチンはアジュバントなどの1つまたは複数の他の化合物を含むことができる。ワクチンは、RSV感染に対してヒトを防御するためのワクチン、またはウシRSVなどであるがこれだけには限られないヒトRSVと関係がある動物呼吸器ウイルスに対して動物を防御するためのワクチンであることが好ましい。
【0016】
本発明の別の態様は、RSVの外部ドメインに対する抗体を検出および/または精製するための、本発明による免疫原性組成物の使用である。このような抗体は、本発明の免疫原性組成物を対象に予防接種した後に単離することができ、あるいは、同様の抗体および/または抗体産生細胞をRSV感染したヒトまたは動物対象から得ることもでき、当技術分野で知られている適切な開発後、前に記載した予防または治療目的に使用することができる、SHe特異的抗体、好ましくはヒト型抗体の産生に使用することができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、動物から血液、血漿および/または血清を生成するための方法であり、前記血液、血漿および/または血清はRSVのSHeドメインに対する1つまたは複数の抗体または抗体産生細胞を含み、前記方法は(a)本発明による免疫原性組成物を前記動物に送達することおよび(b)前記動物から血液、血漿および/または血清を得ることを含み、前記血液、血漿および/または血清はRSVのSHeドメインに対する1つまたは複数の抗体または抗体産生細胞、または前記抗体を産生する細胞を含む。前記動物は非ヒト動物であることが好ましい。本明細書で使用するように、血漿は血液細胞除去後の血液の液体分画であり、血清はフィブリノゲンおよび他の血液凝固因子除去後の血漿である。前に示したように、本発明による免疫原性組成物を使用して特異的抗SHe抗体を単離することができる。
【0018】
本発明のさらなる態様は、RSV感染に対する防御および/またはRSV感染の治療のための、RSV抗体を含有する血液、血漿および/または血清ならびに本発明による方法で得られる血液、血漿および/または血清の使用である。前述のように、RSV感染に対する防御は予防用途と治療用途の両方を含む。実際、抗体を含む血清をヒトまたは動物に投与し、それによってRSV感染に対する受動免疫をもたらすことができる。前記血清は血清を含む医薬組成物の一部であってよく、この場合血清は適切な賦形剤と製剤化および/または混合する。したがって、本発明の別の態様は、本発明による方法によって得られる血清を含む医薬組成物である。
【0019】
本発明の別の態様は、RSV SH−タンパク質の外部ドメインに対するRSV阻害性モノクローナル抗体である。本明細書で使用するRSV阻害は、感染時に、適切な動物モデルで測定して、未治療動物と比較して、肺中ウイルス力価が治療動物においてより低いことを意味する。前記モノクローナル抗体は、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、本発明によるRSV SH−タンパク質の外部ドメインに対するモノクローナル抗体を含む医薬組成物である。実際、免疫処置済み非ヒト動物の臓器、好ましくは前記動物の脾臓、または免疫処置済み動物またはヒト対象由来の血液サンプルは、単鎖抗体、多価抗体、または抗ウイルス化合物と結合した抗体などであるがこれらだけには限られないモノクローナル抗体および誘導体を産生するための出発物質として使用することができる。前記モノクローナル抗体および誘導体は受動免疫処置、またはRSV感染の治療に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】Aは亜型AヒトRSV(hRSV)SH外部ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)、亜型BヒトRSV SH外部ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)、およびウシRSV(bRSV)SH外部ドメインのアミノ酸配列(配列番号17)の図である。BはFlag−COMPcc−Sheのアミノ酸配列(配列番号35)の図である。最初の9個のアミノ酸はN末端Flagタグを表す。イタリックフォントのアミノ酸(AA)はラットCOMP(AA25−72)のコイルドコイルドメインを表す。下線を引いたAAはRSVのA低分子量疎水性タンパク質の外部ドメイン(SHe)を表す。CはFlag−COMPcc−SHeペンタマータンパク質の概略図である。DはCOMPcc−SHeペンタマータンパク質の概略図である。
図2-1】AはFlag−COMPcc−SHeの精製および相対分子量の決定の図である。superdex75カラムでのゲル濾過時のアルドラーゼ(1)、コンアルブミン(2)、アルブミン(3)、キモトリプシノーゲン(4)、リボヌクレアーゼA(5)およびFlag−COMPcc−SHe(6および7)の溶離曲線の図である。
図2-2】BはFlag−COMPcc−SHeの精製および相対分子量の決定の図である。ゲル濾過後のFlag−COMPcc−SHeのSDS−PAGE解析のクーマシーブルー染色の図である(パネルAのピーク6)。CはFlag−COMPcc−SHeの精製および相対分子量の決定の図である。ゲル濾過用カラムを測定するため使用したタンパク質、それらの相対分子量(Mr)、カラムから溶離した容積(Ve)および計算したKav(V0=カラム空隙容積=9.05およびVtot=カラム床容積=19.816で、Kav=(Ve−V0)/(Vtot−V0))の概略図である。ピーク6中に存在したFlag−COMPcc−SHeのMrは、そのVeおよびパネルD中に示す較正曲線に基づいて計算した。
図2-3】DはFlag−COMPcc−SHeの精製および相対分子量の決定の図である。ペンタマーFlag−COMPcc−SHeを精製するため使用したsuperdex75ゲル濾過用カラムの較正曲線の図である。
図3-1】LTR192Gと組み合わせたFlag−COMPcc−SHeによるBalb/cマウスの予防接種は、She特異的抗体を誘導することを示す図である。示したワクチンによる第一、第二または第三の免疫処置後の、マウスの血清プール中に存在したSHeペプチド特異的IgG抗体の力価の、ELISAベースの決定の図である。BはLTR192Gと組み合わせたFlag−COMPcc−SHeによるBalb/cマウスの予防接種は、She特異的抗体を誘導することを示す図である。示したワクチンによる第一、第二または第三の免疫処置後の、マウスの血清プール中に存在したSHeペプチド特異的IgG抗体の力価の、ELISAベースの決定の図である。
図3-2】CはLTR192Gと組み合わせたFlag−COMPcc−SHeによるBalb/cマウスの予防接種は、She特異的抗体を誘導することを示す図である。示したワクチンによる第一、第二または第三の免疫処置後の、マウスの血清プール中に存在したSHeペプチド特異的IgG抗体の力価の、ELISAベースの決定の図である。DはLTR192Gと組み合わせたFlag−COMPcc−SHeによるBalb/cマウスの予防接種は、She特異的抗体を誘導することを示す図である。PBS、M2e−tGCN4/LTR192GまたはFlag−COMPcc−SHe/LTR192Gで予防接種したマウスの血清プール中に存在したSHeペプチド特異的IgG、IgG1およびIgG2a抗体の図である。
図4】Aは図3の凡例と同様のFlag−COMPcc−SHeの予防接種が、細胞表面上のSH外部ドメインを認識することができる抗体を誘導することを示す図である。Flag−COMPcc−SHe予防接種マウスの異なる希釈の血清により染色したGFPおよびRSV SH発現HEK293T細胞のフローサイトメトリー解析の図である。Bは図3の凡例と同様のFlag−COMPcc−SHeの予防接種が、細胞表面上のSH外部ドメインを認識することができる抗体を誘導することを示す図である。Flag−COMPcc−SHeまたはM2e−tGCN4(陰性対照)予防接種マウス由来の血清により染色したGFPおよびRSV SH発現HEK細胞のフローサイトメトリー解析の図である。Cは図3の凡例と同様のFlag−COMPcc−SHeの予防接種が、細胞表面上のSH外部ドメインを認識することができる抗体を誘導することを示す図である。Flag−COMPcc−SHeまたはM2e−tGCN4予防接種マウス由来の血清により染色したGFPおよびルシフェラーゼ発現HEK細胞のフローサイトメトリー解析の図である。
図5】Flag−COMPcc−SHe予防接種が、RSV複製を阻害することを示す図である。攻撃後4日で、示したグループのマウスを屠殺しプラークアッセイにより肺中ウイルス力価を決定した。グラフは、各マウスの肺当たりのプラーク形成単位の数を示す。プラークアッセイの検出限界は肺当たり10PFUである。Flag−COMPcc−SHe予防接種マウスとM2e−tGCN4予防接種マウスの間のRSV肺中力価の差は非常に有意であった(***p≦0.0005)。
図6】Flag−COMPcc−SHe予防接種が、RSV感染による疾患の増大を誘導しないことを示す図である。グラフは、100を掛けて屠殺日(感染後4日)の重量とウイルス感染日の重量の間の比として計算した、各マウスの相対体重を示す。
図7】mHBcウイルス様粒子の免疫優性ループとSHe(cc4s)ペプチドの化学結合の図である。ゲル上に示した、異なる段階の化学結合におけるmHBcのクーマシーブルー染色SDS−PAGE解析。mHBc=精製mHBc、mHBc−SMBS+sMBS=化学リンカーSulfo−MBSの付加後のmHBc、mHBc−SMBS=サイズ排除クロマトグラフィー後のmHBc−SMBS、mHBC−SHe(cc4s)+SHe(cc4s)=SHe(cc4s)ペプチドとのインキュベーション後の精製mHBc−SMBS、mHBC−SHe(cc4s)=サイズ排除クロマトグラフィーによる精製後にmHBc VLPと結合したSHe。
図8】mHBc−SHe(cc4s)がそのVLP立体配座を保持することを示す図である。グラフはmHBc−SHe(cc4s)の大きさ分布を表し、動的光散乱法により決定したM2e−mBHc VLP1604を十分に記載する。大きさ分布は容積の関数で表す。
図9】SHe−tGCN4の精製の図である。一連のカラムクロマトグラフィーステップ:アニオン交換、疎水性相互作用およびゲル濾過クロマトグラフィーによる精製後の、SDS−PAGE解析、次にSHe−tGCN4のクーマシーブルー染色。左パネルと右パネルは、それぞれ還元下(β−メルカプトエタノールの存在下)または非還元下(β−メルカプトエタノールの不在下)におけるSDS−PAGE解析を表す。矢印はモノマーおよびダイマーSHe−tGCN4タンパク質を示す。
図10】AはSHe−tGCN4とmHBc−SHe(cc4s)の両方の予防接種が、SHeペプチド特異的抗体を誘導することを示す図である。SHeペプチドELISAにより解析した、第一回免疫処置、第一回追加抗原刺激免疫処置(追加抗原刺激)および第二回追加抗原刺激免疫処置(追加抗原刺激2)後の、示したグループのマウスの血清プール中に存在したSHe特異的IgG抗体の力価を表す図である。BはSHe−tGCN4とmHBc−SHe(cc4s)の両方の予防接種が、SHeペプチド特異的抗体を誘導することを示す図である。ペプチドELISAにより決定した、第二回追加抗原刺激免疫処置後の、示したグループのマウスの血清プール中に存在したSHe特異的IgG、IgG1およびIgG2a抗体の力価を表す図である。
図11】AはSHe−tGCN4とmHBc−SHe(cc4s)の両方の予防接種が、肺におけるRSV複製を低下させることを示す図である。攻撃後3日で、マウスを屠殺しQRt−PCRにより肺中ウイルス力価を決定した。上のグラフは、示したグループ中の各マウスのサンプル中に存在したGADPH mRNAレベルに標準化した、ゲノムRSV RNAの相対的発現を表す。予防接種群間の統計学的差を示す。下パネルBは上パネルAと同一であるが、PBS予防接種マウスからの結果も含む。
図12】mHBc−SHe(cc4s)もtGCN4−SHe予防接種も、RSV感染による疾患の増大を誘導しないことを示す図である。この図は、100を掛けて示した日の重量と感染日(第0日)の重量の間の比として計算した、それぞれ示したマウスのグループの平均相対体重を示す。
図13】3D11および3G8が、それぞれIgG1およびIgG2a亜型の、2つのSHe特異的モノクローナル抗体であることを示す図である。グラフは、マウスIgG1またはマウスIgG2a特異的二次抗体のいずれかによって検出した、ELISAアッセイにおける1μg/μl希釈系列のSHeペプチドに対する3D11および3G8モノクローナル抗体の結合を示す。
図14】Aは3D11および3G8モノクローナル抗体が、それらの細胞表面上でRSV SHタンパク質を発現する生きた細胞におけるRSV SH外部ドメインと結合することを示す図である。GFPおよびRSV SHタンパク質を発現するHek293T細胞と、3D11および3G8モノクローナル抗体および各アイソタイプ適合対照抗体の結合のフローサイトメトリー解析の図である。Bは3D11および3G8モノクローナル抗体が、それらの細胞表面上でRSV SHタンパク質を発現する生きた細胞におけるRSV SH外部ドメインと結合することを示す図である。RSV SHタンパク質または対照タンパク質(ルシフェラーゼ)のいずれかと組み合わせた、GFPを発現するHek293T細胞と3D11および3G8モノクローナル抗体の結合のフローサイトメトリー解析の図である。
図15】RSV感染細胞の細胞表面と3D11および3G8モノクローナル抗体の結合の図である。Vero細胞を0.5MOIのRSV A2で感染させた。トランスフェクション後24時間で、細胞を固定、透過処理、およびポリクローナル抗RSV血清と組み合わせた3D11または3G8で染色し、感染および非感染細胞を同定した。上パネルは、感染および非感染細胞を含めた、免疫染色(DAPI核染色、3D11およびポリクローナルRSV血清)の概要を表す。下パネルは、上パネルで示した感染細胞の共焦点画像を表す。
図16】SHe特異的モノクローナル抗体を用いた受動免疫処置が、マウスにおけるRSV感染を低減したことを示す図である。Balb/cマウスは、RSV攻撃1日前と1日後に鼻腔内投与により、PBS、SHe特異的3G8モノクローナル抗体またはアイソタイプ対照抗体で処理した。それぞれの記号は、RSV攻撃後第4日での、個々のマウスの肺中ウイルス力価を表す(**p≦0.01)。
図17-1】Aはフロイント不完全アジュバントと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの腹腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。示したワクチンによる第三回免疫処置(追加抗原刺激2)後に個々のマウスの血清中に存在した、She特異的IgG抗体のELISAベースの決定の図である。Bはフロイント不完全アジュバントと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの腹腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。KLH−SHeで予防接種したマウスの血清プール中に存在したSHe特異的IgG、IgG1およびIgG2a抗体のELISAベースの決定の図である。
図17-2】Cはフロイント不完全アジュバントと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの腹腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。KLH−SHe予防接種が、RSV感染による疾患の増大を誘導しないことを示す図である。グラフは、100を掛けて屠殺日(感染後5日)の重量とウイルス感染日の重量の間の比として計算した、各マウスの相対体重を示す。KLH−SHe予防接種マウスとKLH予防接種マウスの間の相対体重の差は有意である(p≦0.005、マンホイットニーのU検定)。Dはフロイント不完全アジュバントと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの腹腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。KLH−SHe予防接種が、RSV複製を妨害することを示す図である。10のPFU RSVによる攻撃後5日で、示したグループのマウスを屠殺し、肺ホモジネートを調製して、プラークアッセイにより肺中ウイルス力価を決定した。グラフは、各マウスの肺当たりのプラーク形成単位の数を示す。プラークアッセイの検出限界は肺当たり20PFUである。KLH−SHe予防接種マウスとKLH予防接種マウスの間のRSV肺中力価の差は有意である(p≦0.005、マンホイットニーのU検定)。
図17-3】Eはフロイント不完全アジュバントと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの腹腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。KLH−SHe予防接種マウスに関して、SHe特異的血清抗体の高い力価が、RSV複製の低下と強く相関関係があることを示す図である。グラフは、それぞれのKLH−SHe予防接種マウスに関する、感染後5日で検出可能であったSHe特異的血清IgG抗体の力価およびPFU/肺の数を示す。グラフ中に、最適曲線(累乗数)およびそのR2(決定係数)を示す。
図18-1】AはLTR192Gと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの鼻腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。示したワクチンによる第三回免疫処置(追加抗原刺激2)後に個々のマウスの血清中に存在した、SHe特異的IgG抗体のELISAベースの決定の図である。
図18-2】BはLTR192Gと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの鼻腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。KLH−SHeで予防接種したマウスの血清プール中に存在したSHe特異的IgG、IgG1およびIgG2a抗体のELISAベースの決定の図である。CはLTR192Gと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの鼻腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。示したワクチンで予防接種しBAL液回収5日前にRSVを感染させた個々のマウスのBAL液中に存在した、SHe特異的IgGおよびIgA抗体のELISAベースの決定の図である。
図18-3】DはLTR192Gと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの鼻腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。示したワクチンで予防接種しBAL液回収5日前にRSVを感染させた個々のマウスのBAL液中に存在した、SHe特異的IgGおよびIgA抗体のELISAベースの決定の図である。EはLTR192Gと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの鼻腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。KLH−SHe予防接種が、RSV複製を妨害することを示す図である。10のPFU RSVによる攻撃後5日で、示したグループのマウスを屠殺し、プラークアッセイにより肺中ウイルス力価を決定した。グラフは、各マウスの肺当たりのプラーク形成単位の数を示す。プラークアッセイの検出限界は肺当たり20PFUである。KLH−SHe予防接種マウスとKLH予防接種マウスの間のRSV肺中力価の差は有意である(p≦0.05、マンホイットニーのU検定)。FはLTR192Gと組み合わせたKLH−SHeによるBalb/cマウスの鼻腔内予防接種はSHe特異的抗体を誘導し、RSV複製を低減することを示す図である。KLH−SHe予防接種マウスに関して、BAL液中に存在したSHe特異的IgG抗体の高い力価が、RSV複製の低下と強く相関関係があることを示す図である。グラフは、それぞれのKLH−SHe予防接種マウスに関する、感染後5日で検出可能であったSHe特異的BAL IgG抗体の力価およびPFU/肺の数を示す。グラフ中に、最適曲線およびそのR2(決定係数)を示す。
図19-1】AはKLH−SHe免疫血清を用いた受動免疫処置が、マウスにおけるRSV感染を低減することを示す図である。示したワクチンによる第三回免疫処置(追加抗原刺激2)後に個々のマウスの血清中に存在した、SHe特異的IgG抗体のELISAベースの決定の図である。BはKLH−SHe免疫血清を用いた受動免疫処置が、マウスにおけるRSV感染を低減することを示す図である。KLH−SHeもしくはKLH予防接種マウス由来の血清またはPBSを、RSV攻撃1日前と1日後にマウスに鼻腔内投与した。10のPFU RSVによる攻撃後5日で、示したグループのマウスを屠殺し、肺ホモジネートを調製して、プラークアッセイにより肺中ウイルス力価を決定した。グラフは、各マウスの肺当たりのプラーク形成単位の数を示す。プラークアッセイの検出限界は肺当たり20PFUである。KLH−SHe予防接種マウスとKLH予防接種マウスの間のRSV肺中力価の差は有意である(p≦0.05、マンホイットニーのU検定)。
図19-2】CはKLH−SHe免疫血清を用いた受動免疫処置が、マウスにおけるRSV感染を低減することを示す図である。KLH−SHe血清を用いた受動免疫処置は、RSV感染による疾患の増大を誘導しない。グラフは、100を掛けて指定日の重量と第一回受動免疫処置日の重量の間の比として計算した、各マウスの平均+/−SEM相対体重を示す。KLH−SHe血清で処理したマウスとKLH血清で処理したマウスの間の、相対体重の差は有意である(p≦0.005、マンホイットニーのU検定)。
図20】mHBcウイルス様粒子の免疫優性ループとSHeBペプチドの化学結合の図である。mHBc VLP、SMBSヘテロ二官能性クロスリンカーと結合したmHBc VLP(mHBc−SMBS)および化学結合SHeBペプチドで精製されたmHBc−SMBS VLP(mHBc−SHeB)のクーマシーブルー染色SDS−PAGE解析。
図21】AはRSV B感染細胞の表面とmHBc−SHeB予防接種マウスの血清の結合の図である。Vero細胞にはRSV B臨床分離株を感染させたか、または擬似感染させた。感染後72時間で、細胞を固定し透過処理または非透過処理した。感染および擬似感染細胞は、示したように、mHBc−SHeB予防接種マウスの血清またはKLH予防接種マウスの血清で染色した。細胞とmHBc−BまたはKLH血清抗体の結合は、Alexa488結合抗マウスIgG抗体を使用することにより分析した。顕微鏡分析用に、核染色液DAPIでも細胞を染色した。BはRSV B感染細胞の表面とmHBc−SHeB予防接種マウスの血清の結合の図である。Vero細胞にはRSV B臨床分離株を感染させたか、または擬似感染させた。感染後72時間で、細胞を固定し透過処理または非透過処理した。感染および擬似感染細胞は、示したように、mHBc−SHeB予防接種マウスの血清またはKLH予防接種マウスの血清で染色した。細胞とmHBc−BまたはKLH血清抗体の結合は、Alexa488結合抗マウスIgG抗体を使用することにより分析した。フローサイトメトリー解析用に、非透過処理細胞もヤギ抗RSV血清で染色して、RSV B感染細胞を同定した。細胞とヤギ抗RSV血清抗体の結合は、Alexa633結合抗ヤギIgG抗体を使用することにより決定した。グラフは示した細胞のAlexa488強度/Alexa633強度等高線プロットを表す。
図22-1】AはmHBc−SHeBの予防接種がSHeB特異的抗体を誘導し、RSV B誘導型肺炎症を減らすことを示す図である。第一回(im.)、第二回(追加抗原刺激1)および第三回mHBc−SHeB免疫処置(追加抗原刺激2)後にマウスの血清プール中に存在した、SHeBおよびSHeA特異的IgG抗体のELISAベースの決定の図である。BはmHBc−SHeBの予防接種がSHeB特異的抗体を誘導し、RSV B誘導型肺炎症を減らすことを示す図である。KLH−SHeを予防接種したマウスの血清プール中に存在した、SHe特異的IgG、IgG1およびIgG2a抗体のELISAベースの決定の図である。
図22-2】CはmHBc−SHeBの予防接種がSHeB特異的抗体を誘導し、RSV B誘導型肺炎症を減らすことを示す図である。示したワクチンで予防接種した個々のマウスの血清中に存在した、SHeB(C)およびSHeA特異的(D)IgG抗体のELISAベースの決定の図である。DはmHBc−SHeBの予防接種がSHeB特異的抗体を誘導し、RSV B誘導型肺炎症を減らすことを示す図である。示したワクチンで予防接種した個々のマウスの血清中に存在した、SHeB(C)およびSHeA特異的(D)IgG抗体のELISAベースの決定の図である。
図22-3】EはmHBc−SHeBの予防接種がSHeB特異的抗体を誘導し、RSV B誘導型肺炎症を減らすことを示す図である。示したワクチンで予防接種したRSV感染マウスのBAL液中に存在した細胞の合計数の図である。mHBcで予防接種したマウスのBAL液と比較して、mHBc−SHeで予防接種したマウスのBAL液中には有意に少ない細胞が存在する(p≦0.05、マンホイットニーのU検定)。FはmHBc−SHeBの予防接種がSHeB特異的抗体を誘導し、RSV B誘導型肺炎症を減らすことを示す図である。BAL液中に存在したCD4+T細胞、CD8+T細胞、単球、好中球および好酸球の数を示す図である。mHBcで予防接種したマウスのBAL液と比較して、mHBc−SHeで予防接種したマウスのBAL液中には有意に少ないCD8+T細胞が存在する(p≦0.05、マンホイットニーのU検定)。
図23】AはLPP(5)−SHeタンパク質の発現および精製の図である。LPP(5)−SHeタンパク質の発現の図である。pLH36−HisDEVD−LPP(5)−SHe形質転換E.コリ(E.coli)細胞は1mMの1−チオ−β−d−ガラクトピラノシド(IPTG)で刺激した、または無刺激のいずれかであった。4時間後、粗製抽出物は超音波処理、次に遠心分離(13000×g、30分、4℃)によって調製した。SHe特異的3G8モノクローナル抗体を使用したSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングにより上清を分析した。BはLPP(5)−SHeタンパク質の発現および精製の図である。精製LPP(5)−SHeタンパク質の分析の図である。精製後、SHe特異的3G8モノクローナル抗体を使用したSDS−PAGE、クーマシーブルー染色(左)およびウエスタンブロット(右)解析によりLPP(5)−SHeタンパク質を分析した。
図24】コットンラットの予防接種スケジュールの図である。グループの数字は以下のことを指す: グループ1:6匹のコットンラット(CR)、第63日過ぎまでRSVによる予防接種および攻撃なし(感染対照) グループ2:6匹のCR、第0日に2.04×10PFU/CRでRSV−Tracyを鼻腔内接種 グループ3:6匹のCR、KLH−SHe+IFAをそれぞれ腹腔内(IP)予防接種 グループ4:6匹のCR、KLH+IFAをそれぞれ腹腔内(IP)予防接種(賦形剤対照) グループ5:6匹のCR、Vero細胞で増殖した1:10ホルマリン不活化(FI)RSV−Bernettをそれぞれ筋肉内(IM)予防接種(攻撃による免疫悪化の陽性対照)
【実施例】
【0022】
実施例の材料および方法
クローニングおよびプラスミド構築。
pLT32Flag−COMPcc−SHe発現プラスミドの構築。Flag−COMPcc−SHeのコード配列(図1.B)を含有するプラスミドはGenscript(配列番号31)でオーダーした。Flag−COMPcc−SHeコード配列は、NdeI/NotIで開いたpLT32H細菌発現ベクターにおいてNdeI/NotI断片として連結させた(Mertensら、1995)。
【0023】
pCAGGS−Etag−SH発現ベクターの構築。RSV A2感染Hep−2細胞の全RNAは、製造者の説明書に従い高純度RNA組織キット(Roche、Mannheim)を使用して調製した。cDNA合成後、RSV A2 SHコード配列を、以下のフォワードプライマーとリバースプライマー(5’ATAAGAAAGCGGCCGCTATGGAAAATACATCCATAACAATAG3’;5’GAAGATCTCTATGTGTTGACTCGAGCTCTTGGTAACTCAAA3’)を使用して増幅した。PCR産物はNotIおよびBgIIIで消化し、NotI/BgIIIで開いたpCAGGS−PTB−Etag発現ベクターにおいて連結させた(Cornelisら、2005)。生成したベクターpLT32−Flag−COMPcc−SHeは、2010年11月8日に寄託番号LMBP6817の下、BCCM(BCCM/LMBP:Technologiepark 927、9052 Zwijnaarde、ベルギー)においてブダペスト条約下で寄託された。
【0024】
pCAGGS−Luc発現ベクターの構築は以前に記載された(Schepensら、2005;pCAGGS−HIF−RLucと呼ばれる)。
【0025】
pLT32mHBc発現ベクターの構築。「ab1」プラスミドの一部としてJegerlhenerらにより以前に記載されたmHBcのコード配列はGeneart(配列番号32)でオーダーした(De Filetteら、2005;Jegerlehnerら、2002)。このコード配列は、NdeI/NotIで開いたpLT32H細菌発現ベクターにおいてNdeI/NotI断片としてクローニングした。
【0026】
pLT32SHe−tGCN4−Flag発現ベクターの構築。pLT32SHe−tGCN4を構築するため、SHeコード配列を融合pcrによりtGCN4−Flagコード配列と融合させた。融合pcr用のSHe断片は、プライマー:5’GGAATTCCATATGAACAAGTTATGTGAGTACAACG3’および5’GATTTGTTTTAAACCTCCTGTATTTACTCGTGCCCGAGGCAA3’、およびGeneart(配列番号33)でオーダーしRSV A2 SH外部ドメインのコード配列(NKLCEYNVFHNKTFELPRARVNT)(配列番号40)を含有する鋳型プラスミドを使用して増幅した。融合PCR用のGCN4断片は、プライマー5’CCCAAGCTTCTAACATTGAGATTCCCGAGATTGAGA3’および5’TATTAACCCTCACTAAAGGGAAGG3’、およびtGCN4コード配列を含有し、3連続Flag−tag配列(配列番号34;De Filetteら、2008)のコード配列とC末端融合した鋳型プラスミドを使用して増幅した。この2つのPCR断片は、プライマー:5’GGAATTCCATATGAACAAGTTATGTGAGTACAACG3’および5’TATTAACCCTCACTAAAGGGAAGG3’を使用して融合させた。この融合PCR産物は、NdeI/HindIIIで開いたpLT32H細菌発現ベクターにおいてNdeI/HindIII断片としてクローニングした。生成したpLT32SHe−tGCN4−Flagは、2010年11月8日に寄託番号LMBP6818の下、BCCM(BCCM/LMBP:Technologiepark 927、9052 Zwijnaarde、ベルギー)においてブダペスト条約下で寄託された。
【0027】
PLT32M2e−tGCN4発現ベクターの構築は以前に記載された(De Filetteら、2008)。
【0028】
pLH36−HisDEVD−LPP(5)−SHe発現プラスミドの構築。GlyGlyリンカーのコード配列により隔てられたSH外部ドメインのコード配列と融合したLPP(5)トリプトファン−ジッパーのコード配列を含有するプラスミドは、Genscriptでオーダーした。このコード配列は、以下のフォワードプライマーとリバースプライマー(5’GCGAAATGGGATCAGTGGAGCAGC−3’;5’AATATAGGATCCCTAGGTCGCCCAGTTATCCCAGCG−3’)を使用して増幅し、リン酸化しBamHIで消化した。pLH36−HisDEVD−LPP−SHeは、記載したPCR断片、BamHI/PstI消化型pLT32プラスミド断片およびEcoRV/PstI消化型pLH36断片を使用しツリーポイントライゲーションによって構築した。構築したpLH36−HisDEVD−LPP(5)−SHeプラスミドの配列は配列番号49で示す。
【0029】
SHe−tGCN4、M2e−tGCN4、Flag−COMPcc−SHe、mHBcおよびLPP(5)−SHeの発現および精製。
pLT32SHe−tGCN4形質転換E.コリの30ml前培養物をLuriaブロス内で28℃において増殖させ、これを使用して1リットルの新たな培地を接種した。0.6−0.8のA600において、細胞を1mmのイソプロピル1−チオ−β−d−ガラクトピラノシドで処理し、さらに4時間インキュベートし、次いで遠心分離(6000×g、20分、4℃)によって回収した。細菌のペレットは20mlのトリス−HClバッファー(50mMのトリス−Hcl、50mMのNaClおよび1mMのEDTA)、pH8中に再縣濁し、超音波処理した。細菌の残骸は遠心分離(20,000×g、1時間、4℃)によってペレット状にした。上清を、50mMのNaClを含有するトリス−HClバッファー(バッファーA)で予め平衡化したDEAEセファロースカラムにかけた。洗浄後、0−40%バッファーB(50mMのトリス−Hcl、1MのNaCl)から40−100%バッファーBまでの2ステップ勾配により結合タンパク質を溶離した。SHe−tGCN4を含有する分画をプールし、25%硫酸アンモニウム飽和状態に調節し、25%硫酸アンモニウム、50mmのトリス−HCl、pH8で予め平衡化したフェニル−セファロースカラムにかけた。結合タンパク質は2ステップ勾配で溶離した。2ステップの溶離は、0−40%および40−100%の50mMトリス−HClバッファー、pH8(バッファーA)で実施した。SHe−tGCN4を含有する分画はSuperdex75カラムに充填した。ゲル濾過はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で実施し、SHe−tGCN4を含有する分画はプールし−70℃で保存した。
【0030】
flag−COMPcc−SHeの発現および精製は、DEAEセファロースカラムの代わりにアニオン交換クロマトグラフィー用のQセファロースカラムを使用したこと以外、SHe−tGCN4と同一であった。
【0031】
M2e−tGCN4の発現および精製は以前に記載された(De Filetteら、2008)。mHBcの発現および精製は、Superdex75カラムの代わりにゲル濾過クロマトグラフィー用Sephacryl S400カラムを使用したこと以外、SHe−tGCN4と同一であった。
【0032】
LPP(5)−SHeの発現および精製。pLH36−HisDEVD−LPP(5)−SHe形質転換E.コリの30ml前培養物を、アンピシリンを含むLuriaブロス内で28℃において増殖させ、これを使用して3リットルの新たな培地を接種した。0.6−0.8のA600において、細胞を1mMのイソプロピル1−チオ−β−d−ガラクトピラノシドで処理し、さらに4時間インキュベートし、次いで遠心分離(6000×g、20分、4℃)によって回収した。細菌のペレットは、20mMのNaHPO/NaHPO、300mMのNaClおよび5mMのイミダゾールを含有する300mlバッファー、pH7.5中に再縣濁し、超音波処理した。細菌の残骸は遠心分離(20,000×g、1時間、4℃)によってペレット状にした。5mMイミダゾールを含有するバッファーで予め平衡化したニッケル−セファロースカラムに、上清を充填した。洗浄後、段階的(50mM、100mM、200mMおよび400mM)イミダゾール勾配により結合タンパク質を溶離した。LPP(5)−SHeを含有する分画をプールし、脱塩し、Q−セファロースカラムでさらに精製した。サンプルを、50mMのNaClを含有するトリス−HClバッファー(バッファーA)で予め平衡化したDEAEセファロースカラムにかけた。洗浄後、0−40%バッファーB(50mMのトリス−Hcl、1MのNaCl)から40−100%バッファーまでの2ステップ勾配により結合タンパク質を溶離した。LPP(5)−SHeを含有する分画はSuperdex75カラムに充填した。ゲル濾過は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、およびLPP(5)−SHeを含有する分画で実施した。
【0033】
アジュバント
熱不安定性E.コリエンテロトキシンの解毒変異体、LTR192Gを鼻腔内(i.n.)投与に使用した。この調製物は寛大なことにDr.J.Clements(Department of Microbiology and Immunology、Tulane University Medical Center、New Orleans、LA、USA)によって提供された(Nortonら、2010)。
【0034】
She−HBc粒子の化学結合および特徴付け。
その中で天然由来のシステインがセリンに置換されN末端にシステインが付加された、SHe(cc4s)、化学合成したHPLC精製SHeペプチドを、Pepscan(Pepscan、Lelystad)でオーダーした。SHe(cc4s)ペプチドは、そのN末端システイン残基を介して、製造者の説明書に従いヘテロ二官能性スルホ−MBS(Pierce)を使用した化学結合により、HBc VLP表面上のmHBcの免疫優性ループ中のリシンと融合させた。わずか400μgのmHBcを溶かした200μlのPBSをスルホ−MBSと1時間、(1mg/mlの最終濃度で)インキュベートした。サイズ排除クロマトグラフィーによる非結合スルホ−MBS分子の除去後、スルホ−MBS結合mHBc VLPは2mlのH2Oに希釈した。後に、(100mlのPBSに溶かした)100μlのSHe(cc4s)ペプチドを加え、室温で1時間インキュベートして、mHBc VLPとペプチドの架橋を可能にした。最後に、遊離SHe(cc4s)ペプチドをサイズ排除クロマトグラフィーにより除去した。純度および架橋効率は、SDS−PAGE、次にクーマシー染色によって試験した。
【0035】
細胞
Hep−2細胞(ATCC、CCL−23)、Vero細胞(ATCC、CCL−81)、HEK293T細胞(Dr M.Hallからの進物)およびA549細胞ATCC、CCL−185)を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FCS)、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、非必須アミノ酸(Invitrogen、Carlsbad、カリフォルニア)、および1mMのピルビン酸ナトリウムを補充したDMEM培地中で増殖させた。
【0036】
マウスおよびウイルス。
特定病原体を含まない、メスのBALB/cマウスをCharles River(Charles River Wiga、Sulzfeld、ドイツ)から得た。動物は12時間光/暗サイクルで温度調節した環境中に収容し、食物および水は制限せず与えた。動物実験室内で1週間適応させた後、マウスは8週齢で免疫処置した。
【0037】
動物実験施設は、Flemish Government License Number LA1400091下に管理される。全ての実験は、法律(1993年11月14日のEuropean Directive and Belgian Royal Decree)によって指定され動物実験倫理審査委員会によって認可された条件下で行った。
【0038】
RSV A2、RSVのA亜型(ATCC、Rockville)を、1%FCSを含有する増殖培地の存在下における0.1MOIでの単層Vero細胞の感染により増殖させた。感染後5から7日で、細胞および増殖培地を回収、プールし遠心分離(450×g)によって浄化した。ウイルスを濃縮するため、浄化した上清を、10%ポリエチレングリコール(PEG6000)の存在下において4℃で4時間インキュベートした。遠心分離(3000×gで30分間)後、20%スクロースを含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中にペレットを再縣濁し、アリコートにし−80℃で保存した。
【0039】
鼻腔内免疫処置および感染。
鼻腔内免疫処置または感染用に、マウスにイソフルランによって軽く麻酔をかけた。ワクチン+アジュバントまたはウイルスの投与に使用した最終容積は50μlであった(鼻孔当たり25μl)。ワクチン+アジュバントはPBSで製剤化し、一方ウイルス接種原はHBSSで製剤化した。
【0040】
プラークアッセイによる肺中ウイルス力価の決定。
攻撃後3日または4日でマウスを屠殺した。マウス肺は無菌状態で除去し、10%スクロースを含有する1mlのHBSSにおいて30秒間Heidolph RZR2020ホモジェナイザーを用いて均質にした。肺ホモジネートは4℃での遠心分離により後に浄化し、Hep−2細胞におけるウイルス滴定に使用した。単層のHep−2細胞には、96ウエルプレート中、ペニシリンとストレプトマイシンを補充した無血清OPTIMEM培地(Invitrogen)中で、50μlの連続1:3希釈肺ホモジネートを感染させた。4時間後、2%FCSを含有するDEMEM培地で2回細胞を洗浄し、50μlのオーバーレイ培地(1%FCS、0.5%アガロースを含有する完全DEMEM培地)において37℃で5日間インキュベートした。アガロースオーバーレイの上部に50ulの4%パラホルムアルデヒド溶液を加えることにより、細胞を固定した。4℃での一晩の固定後、オーバーレイ培地およびパラホルムアルデヒド溶液を除去し、細胞はPBSで2回洗浄し、1%BSAを含有するPBS(PBS/BSA)でブロッキングした。その後、ポリクローナルヤギ抗RSV血清(AB1128、Chemicon International)を加えた(1/4000)。PBS/BSAで3回洗浄した後、細胞はhrp結合抗ヤギIgG抗体(SC2020、Santa Cruz)と共に30分間インキュベートした。非結合抗体は、0.01%トリトン−X100を含有するPBS/BSAでの4回の洗浄、およびPBSでの1回の洗浄によって除去した。最後に、TrueBlueペルオキシダーゼ基質(KPL、Gaithersburg)の使用によって、プラークを目に見える状態にした。異なる希釈のプラークを計数し、それぞれの希釈に関して、肺(1ml)当たりのPFU数は、希釈中に存在したプラークの数×希釈×20(=合計1000μlの上清容積/希釈系列の第一ウエルの感染に使用した50μlの上清容積)として計算した。次いでPFU/肺の数を、異なる希釈に関して計算したPFU/肺の平均数として計算した。ホモジナイズした肺の各上清は二連で試験したので、最終的なPFU/肺の数はこれら二連の平均として計算した。
【0041】
qRT−PCRによる肺中ウイルス力価の決定。
qRT−PCRによって肺RSV負荷を決定するため、前に記載したのと同様に肺ホモジネートを調製し浄化した。これらの肺ホモジネート由来の全RNAは、製造者の説明書に従い高純度RNA組織キット(Roche、Mannheim)の使用によって調製した。ヘキサマープライマーおよびTranscriptor First Strand cDNA合成キット(Roche、Mannheim)の使用によってcDNAを調製した。ゲノムRSV M cDNAの相対レベルは、RSV A2 M−遺伝子のゲノムRNAに特異的なプライマー(5’TCACGAAGGCTCCACATACA3’および5’GCAGGGTCATCGTCTTTTTC3’)、ならびに5’末端をフルオレセイン(FAM)および3’末端付近を黒色消光色素で標識したヌクレオチドプローブ(#150 Universal Probe Library、Roche)の使用によって、qRT−PCRにより決定した。GADPH mRNAの相対量は、マウスGADPHに特異的なプライマー(5’TGAAGCAGGCATCTGAGGG3’および5’CGAAGGTGGAAGAGTGGGAG3’、ならびにLightCycler480 SYBR Green I Maseter Mix(Roche)の使用により、qRT−PCRにより決定した。肺ホモジネート当たりのゲノムRSV RNAの相対量は、RSV M−遺伝子RNAの相対量とマウスGADPHm RNAの相対量の間の比として計算した。
【0042】
ペプチドELISA
各免疫処置後2週間で、血液サンプルを外側尾静脈から回収した。アベルチンで麻酔した動物の心臓穿刺により最終出血を実施した。血液を37℃で30分間凝固させ、その後の2回の遠心分離から上清を得ることにより血清を入手した。
【0043】
血清抗体力価を、グループからプールした血清を使用してELISAにより決定した。M2eまたはSHe特異的抗体力価を決定するため、マイクロタイタープレート(タイプII F96 MaxiSorp、Nunc)を、それぞれ50mM重炭酸ナトリウムバッファー、pH9.7中50μlの2μg/mlのM2e−ペプチド溶液または2μg/mlのSHe−ペプチド溶液でコーティングし、37℃で一晩インキュベートした。洗浄後、PBS中1%200μlのBSAで1時間、プレートをブロッキングした。1時間のインキュベーション後、プレートを再度洗浄した。1/100希釈で始めた異なる血清サンプルの1/3希釈系列を、ペプチドコーティングプレートに充填した。結合抗体は、マウスアイソタイプIgG1またはIgG2aに対するペルオキシダーゼ標識抗体(Southern Biotechnology Associates,Inc.、Birmingham、AL、USA)で検出し、PBS+1% BSA+0.05% Tween20中に1/6000に希釈した。洗浄後、マイクロタイタープレートをTMB基質(テトラメチルベンジジン、Sigma−Aldrich)と5分間インキュベートした。反応は等容積の1M H3PO4を加えることにより停止させ、450nmで吸光度を測定した。終点力価は、バックグラウンド(免疫前血清)の2倍のO.D.値をもたらす最高希釈として定義する。
【0044】
フローサイトメトリー解析。
Hek293T細胞を示した発現ベクターでトランスフェクトした。24時間後、酵素を含まない解離バッファー(Invitrogen、Carslbad、カリフォルニア)を使用して細胞を剥離し、PBSで1回洗浄し、1%BSAを含有するPBS(PBS/BSA)中で1時間インキュベートした。その後、示した濃度で示した血清または抗体と共に、細胞をインキュベートした。1時間後、細胞はPBS/BSAで3回洗浄し、抗マウスIgG alexa633二次抗体と共に30分間インキュベートした。PBS/BSAで4回およびPBSで1回細胞を洗浄した後、Becton Dickinson LSR IIフローサイトメーターを使用して細胞を分析した。一種のGFP発現細胞を、側方散乱シグナルのピーク表面、前方散乱シグナルのピーク表面およびピーク高、および緑色蛍光シグナルのピーク表面に基づいて選択した。最後に、これらのGFP陽性単細胞の中で、alexa633蛍光シグナルを測定した。
【0045】
免疫染色。
Vero細胞を擬似感染、または無血清培地の存在下において0.5MOIのRSV A2で感染させた。4時間後、遊離ウイルスは洗浄除去し、1%FCSを含有する増殖培地中で細胞をインキュベートした。16時間後、細胞をPBSで1回洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで20分間固定した。その後、細胞をPBSで2回洗浄し、5分間0.2%トリトン−X100洗剤で透過処理した。PBSで1回洗浄した後、細胞はPBS/BSAでブロッキングした。1時間後、She特異的3G8モノクローナル抗体またはアイソタイプ対照抗体を5μg/mlの最終濃度で加えた。PBS/BSAで2回細胞を洗浄した後、ポリクローナル抗RSVヤギ血清を加えた。1時間後、細胞をPBS/BSAで3回洗浄した。細胞と示した抗体の結合は、それぞれalexa488とalexa568蛍光色素で標識した抗マウスと抗ヤギIgG抗体の使用により分析した。染色細胞の共焦点画像はZeiss共焦点顕微鏡で記録した。
【0046】
SHeモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作成。
SHe特異的モノクローナル抗体(mAb)を産生する安定的ハイブリドーマ細胞を、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein 1975)によって作成した。簡単に言うと、SHe特異的ハイブリドーマを、オールハイドロゲルを補充した10μgのSHe−tGCN4ワクチン(Brenntag Biosector)を用いて3週間間隔で3回腹腔内免疫処置した個々のマウスから誘導した。融合3日前に、マウスを同じ製剤でもう1回追加抗原刺激し、脾臓細胞を単離し、次いでPEG1500(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ)の存在下でSP2/0−Ag14ミエローマ細胞と融合させた。融合した細胞は、10%ウシ胎児血清、10%BMコンディムドH1(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ)、2mMのL−グルタミン、および24μMのβ−メルカプトエタノールおよび1×HATサプリメント(Invitrogen、Carlsbad、カリフォルニア)を補充したRPMI1640培地中で増殖させた。SHe特異的抗体を分泌するハイブリッドはSHeペプチドElisaスクリーニングによって同定し、モノクローナル抗体産生ハイブリッドは、限界希釈手順による2ラウンドのサブクローニング後に得た。モノクローナル抗体は、プロテインA−セファロースカラム(electrical engineering biosciences)で精製した。
【0047】
生成したハイブリドーマは、それぞれ2010年11月8日に3G8に関して寄託番号LMBP7795CB、および2010年11月10日に3D11に関して寄託番号LMBP7796CBの下、BCCM(BCCM/LMBP:Technologiepark 927、9052 Zwijnaarde、ベルギー)においてブダペスト条約下で寄託された。
【0048】
[実施例1] Flag−COMPcc−Sheの設計、発現および精製
SHタンパク質は、RSVビリオンの表面、およびRSV感染細胞の原形質膜で、ペンタマーとして発現される。SHのペンタマー構造は、5パラレルα−ヘリックスのコイルドコイルとしてオリゴマー化するSH膜貫通型ドメインによって構造化される。その本来の立体配座を模倣するペンタマーとしてRSV AのC末端SH外部ドメイン(SHe)を提示するために、これも5パラレルα−ヘリックスで構成されるラット軟骨オリゴマー基質タンパク質の短いペンタマーコイルドコイルドメイン(COMPcc)と、SHeを遺伝学的に融合させた(Malashkevichら、1996;図1)。Flag−タグをCOMPのN末端と融合させ、Flag−COMPcc−SHeにした。Flag−COMPcc−SHeはpLT−32(Mertensら、1995)発現ベクターにおいてクローニングし、E.コリ中で発現させ精製した。ゲル濾過分析によりFlag−COMPcc−SHeが55−60kDa複合体として溶離したことを明らかにし、11kDaのFlag−COMPcc−SHeタンパク質は実際ペンタマーとしてオリゴマー化することを示した(図2)。
【0049】
[実施例2] Flag−COMPcc−SHeの予防接種は、SHe特異的抗体およびRSV感染に対する防御を誘導する
Flag−COMPcc−SHeを用いた予防接種が、RSV感染に対する防御を誘発し得るかどうか試験するために、本発明者らはBALB/cマウスRSV感染モデルを使用した。BALB/cマウスは、1μgのE.コリ熱不安定性エンテロトキシンLTR192Gアジュバントと組み合わせた25μgのFlag−COMPcc−SHeで3回鼻腔内免疫処置した。テトラマーGNC4足場と融合したPBSおよびインフルエンザA M2外部ドメインは(M2e−tGNC4)(De Filetteら、2008)は陰性対照として使用した。免疫処置は2週間毎に実施した。1つのRSV感染(5×105PFU)は陽性対照として使用した。各免疫処置後の第一週と第二週の間に、血液を回収してSHe特異的IgG抗体の誘導を調べた。SHe特異的抗体の存在は、最初にSHeペプチドELISAによって試験した。M2eペプチドELISAは陰性対照として使用した。図3は、SHeペプチド特異的IgG抗体を誘導し、それぞれFlag−COMPcc−SHeによる第二および第三免疫処置後に追加抗原刺激することを実証する。3連続のFlag−COMPcc−SHe/LTR192G免疫処置は高レベルのIgG2a SHe特異的抗体、ただしごく低レベルのIgG1SHe特異的抗体をもたらし、Th1指向型/誘導型免疫応答を示した。PBSまたはM2e−tGCN4/LTR192G予防接種マウスにおいて、SHe特異的IgG抗体を検出することはできなかった(図3A、BおよびC)。予想通り、Flag−COMPcc−SHe/LTR192GまたはPBS予防接種マウスデータの血清において、M2e特異的抗体を検出することはできなかった。以前の結果(De Filetteら、2008)に従い、M2e−tGCN4で免疫処置したマウスは高力価のM2e特異的IgG2a抗体を蓄積した。
【0050】
次に本発明者らは、フローサイトメトリーにより、Flag−COMPcc−SHe免疫血清中に存在したSHe特異的抗体が、それらの表面でRSV−SHタンパク質を発現する細胞と結合可能であるかどうか調べた。SH発現ベクター(pCAGGS−Etag−SH)または陰性対照としてルシフェラーゼ発現ベクター(pCAGGS−Luc)のいずれかと組み合わせたGFP発現ベクターで、HEK−293T細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間で、細胞を剥離し、異なる希釈のFlag−COMPcc−SHeまたはM2e−tGCN4免疫血清で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。図4は、M2e−tGCN4免疫血清とは対照的に、Flag−COMPcc−SHe予防接種マウス由来の血清は、生きた細胞の表面で発現されるSHタンパク質と特異的に結合することを示す。
【0051】
Flag−COMPcc−SHe/LTR192G予防接種が、RSV感染に対する防御を誘導することができるかどうか試験するために、最後の免疫処置後9週間で、1×10のPFU RSV A2でマウスを攻撃した。感染後4日でマウスを屠殺し、プラークアッセイにより肺中ウイルス力価を決定した。図5は、PBSおよびM2e−tGCN4予防接種マウスと比較して、Flag−COMPcc−SHeを用いた予防接種がRSV複製を低下させたことを示す。攻撃前に生きたRSVを感染させたマウスにおいて、ウイルスは検出されなかった。
【0052】
ホルマリン不活化ウイルスまたはRSV Gタンパク質を用いた予防接種は感染時に疾患の増大を誘導し、不均衡なTh2免疫応答の誘導により相当な罹患率をもたらし得ることはよく知られている(Princeら、1986)。Flag−COMPcc−SHe予防接種も疾患の増大を誘導し得るかどうか試験するために、本発明者らは、RSV攻撃前後に体重をモニタリングした(図6)。RSV攻撃後いかなるマウスのグループにおいても、体重の減少は観察されなかった。これは、Flag−COMPcc−SHe予防接種がRSV感染時に疾患の増大をもたらさないことを強く示唆する。
【0053】
[実施例3] mHBc−SHeの設計、構築および精製
B型肝炎ウイルスコアタンパク質(HBc)ウイルス様粒子(VLP)は、密なアレイとして抗原を提示することができる。このようにしてHBc−VLPは、提示抗原に対する強力な液性免疫応答を誘導することができる(Boisgeraultら、2002)。したがって、ペンタマーとしてのSHeの提示に対する代替として、mHBc−VLPの免疫優性領域ループにSH外部ドメインを提示した。HBc−SHe−VLPは、リシンがHBc免疫優性領域の上部に導入されたHBcの変異体であるmHBcとSHeペプチドの化学結合によって得られた(De Filetteら、2005)。化学結合を可能にするため、システイン残基をSHeのN末端に加えた。加えて、SHeペプチドの位置4に存在するシステイン残基をセリン残基に置換した。このペプチドをSHe−CC4Sと呼んだ。サイズ排除クロマトグラフィーによるmHBc−SHe−VLPの精製後、架橋の程度をSDS PAGEによって調べた。図7は、約50%のHBcタンパク質がSHe−CC4Sペプチドと化学結合したことを示す。ゆっくり移動したバンドは、2または3個のSHe(cc4s)ペプチドが結合したmHBcモノマーを表し得る。SHeCC4S結合mHBcタンパク質が依然予想される大きさ(30−34nm)のVLPに構築するかどうか試験するために、動的光散乱法による分析を、生成されたmHBc−SHe粒子および完全に機能的な参照物である1604M2e−HBc VLPに実施した。図8は、mHBc−SHe−CC4Sの大きさ分布は1604M2e−HBc対照のそれと重複し、30nmにおいて最大値であり、それはHBc VLPの報告された大きさ(Clarkeら、1987)に相当することを示す。
【0054】
[実施例4] SHe−tGCN4−Flagの設計、構築および精製
mHBc VLPの表面上でのSHeペプチドの提示に次いで、融合ペプチド(Refmarina GCN4)に対する強力な液性応答を誘導することが知られているtGCN4とも、SHeを融合させた。SHeとFlag−タグは、それぞれtGCN4コード配列の5’末端と3’末端で遺伝学的に結合させ、PLT32発現ベクターにクローニングした。E.コリにおける発現後、アニオン交換、疎水性相互作用およびゲル濾過クロマトグラフィーにより組換えSHe−tGCN4−Flagを精製した(図9)。
【0055】
[実施例5] mHBc−SHe(CC4S)およびSHe−tGCN4の予防接種は、SHe特異的抗体およびRSV感染に対する防御を誘導する
mHBc−SHe(CC4S)およびSHe−tGCN4を用いた予防接種が、RSV感染に対する防御を誘発し得るかどうか試験するために、1ugのLTR192Gアジュバントと組み合わせた10μgのmHBc−SHe(CC4S)およびSHe−tGCN4で、Balb/cマウスを3回鼻腔内予防接種した。PBSおよび空mHBcを、後者は1ugのLTR192Gと組み合わせて、陰性対照として使用した。免疫処置は3週間毎に実施した。1つのRSV感染(5.10PFU)は陽性対照として使用した。各免疫処置後の第二週と第三週の間に、血液を回収してSHe特異的IgG抗体の誘導を調べた。She特異的抗体の存在は、SHeペプチドELISAによって試験した。図10Aは、SHeペプチド特異的IgG抗体を誘導し、それぞれmHBc−SHe(CC4S)およびSHe−tGCN4による第二および第三免疫処置後に追加抗原刺激することを実証する。3連続のFlag−COMPcc−SHe/LTR192G免疫処置は高レベルのIgG2a SHe特異的抗体、および幾分低いレベルのIgG1SHe特異的抗体をもたらし、Th1指向型/誘導型免疫応答を示した(図10B)。
【0056】
mHBc−SHe(CC4S)またはSHe−tGCN4を用いた予防接種が、RSV感染を妨げることができるかどうか試験するために、最後の追加抗原刺激による免疫処置後3週間で、5.10PFUのRSV−A2でマウスを攻撃した。攻撃後3日でマウスを屠殺し、QPCRにより肺中RSV−A2レベルを決定した。図11は、mHBc−SHe(CC4S)またはSHe−tGCN4で予防接種した全てのマウス、またはRSVを事前に感染させたマウスは、mHBcで予防接種したマウスより低い肺中レベルのゲノムRSV RNAを有することを示す。これらのデータによって、粘膜SHeベースの予防接種はRSV複製に対してマウスを部分的に保護することができるという、本発明者らの以前の観察結果を確認する。特に、LTR192Gアジュバントと組み合わせた空mHBcで予防接種した全てのマウスは、LTR192GアジュバントなしのPBSで免疫処置したマウスより低レベルのRSVを示した。マウスの先天性免疫系に対するLTR192Gの影響によって、これを説明することができる。E.コリ熱不安定性エンテロトキシンは、先天性インプリンティングにより、RSVを含めた肺中ウイルス感染に対して一般的な防御をもたらすことが示されている(Williams and Hussel 2004参照)。肺中ウイルス複製に対するLTR192Gによる先天性インプリンティングの影響は一過性であると思われる。RSV複製に対するTLR192Rの影響は、最終LTR192G投与後9週でウイルス感染が起こると、大幅に低減するからである。再度いずれのマウスも有意な体重減少を示さず、SHeの予防接種は、VLPまたはtGCN4により提示されるとき、攻撃による疾患の増大を誘導しないことが示された(図12)。
【0057】
[実施例6] SHe特異的モノクローナル抗体の産生および試験。
感染細胞と相互作用することができるSHe特異的抗体が、RSV感染に対する防御をもたらし得るかどうか調べるために、本発明者らは、SHe−TGCN4免疫処置マウスに基づきRSV SHe特異的モノクローナル抗体を開発した。ELISA中でSHeペプチドと効率よく結合する抗体を産生した1つのIgG1(3D11)と1つのIgG2a(3G8)亜型ハイブリドーマを選択し、サブクローニングし抗体産生に使用した。3D11および3G8はプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、ELISAによりSHeとの結合効率に関して試験した。図13は、3D11および3G8はコーティングSHeペプチドと結合することができ、それぞれIgG1およびIgG2a亜型であることを示す。
【0058】
抗体は(ADCC)またはCDCによる感染細胞の認識および殺傷を介してウイルス感染を防御することができるので、本発明者らは、SHe特異的モノクローナル抗体3D11および3G8が、細胞の表面上のSHを認識することができるかどうか調べた。したがって、Hek293T細胞を、いずれもGFP発現ベクターと組み合わせて、RSV SH発現ベクターまたは対照ホタルルシフェラーゼベクター(Schepensら、2005)でトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間で、異なる濃度のSHe特異的モノクローナル抗体(3D11および3G8)またはアイソタイプ適合インフルエンザM2e特異的抗体(14C2IgG1およびIG2a M2e特異的モノクローナル抗体)で、生きた細胞を染色した。Flag−COMPcc−SHe免疫処置マウス由来のポリクローナル血清は陽性対照として使用した。図14は、Flag−COMPcc−SHeポリクローナル血清だけでなく、3D11モノクローナル抗体と3G8モノクローナル抗体の両方も、対照細胞ではなくSH発現細胞と容易に結合することができることを実証する。対照的に、IgG1およびIgG2aインフルエンザM2e特異的抗体はいずれも、SH発現細胞と結合することができなかった。これらのデータは、3D11と3G8の両方が細胞表面で発現されるSHの外部ドメインを認識することができることを、明らかに実証する。
【0059】
感染中、RSV SHタンパク質は、ER、ゴルジおよび細胞膜で主に発現される。したがって、RSV SH特異的抗体が、これらの細胞表面で発現されるSHを介して感染細胞を認識することができるかどうかより直接的に調べるため、本発明者らは、RSV感染および擬似感染細胞の免疫染色を実施した。ヒトA594肺上皮細胞を、0.05MOIのRSVまたは擬似感染のいずれかで感染させた。感染後24時間で、細胞を固定し、ポリクローナル抗RSV免疫血清と組み合わせたSHe特異的モノクローナル抗体3D11または3G8で染色した。
【0060】
図15は、SHe特異的モノクローナル抗体3D11および3G8は、感染細胞の細胞膜および核付近(おそらくERおよびゴルジに相当)でSHを容易に認識することができることを示す。これは、SHeモノクローナル抗体が、RSV感染細胞を認識することによりRSV感染に対して防御することを示す。このように、本明細書に記載するSHeモノクローナル抗体3D11および3G8は予防または療法治療剤として使用することができる。
【0061】
[実施例7] SHe特異的モノクローナル抗体3G8を使用する受動免疫処置はRSV複製を低減する。
SHe特異的抗体がインビボでRSV複製を低減することができるかどうか試験するために、SHe特異的モノクローナル抗体でマウスを受動免疫処置した。SHe特異的3G8モノクローナル抗体、アイソタイプ対照抗体またはPBSを、RSV攻撃の1日前と1日後にマウスに鼻腔内投与した。RSV攻撃後3日で、血液を回収し、治療マウスの血清中のモノクローナル抗体の存在に関して試験した。RSV攻撃後4日で、マウスを屠殺し肺中ウイルス力価を決定した。ペプチドELISAは、各抗体で治療したマウス血清中の低濃度のSHe特異的およびアイソタイプ対照抗体の存在を実証した(データ示さず)。図16は、SHe特異的モノクローナル抗体を与えたマウスは、PBSまたはアイソタイプ対照モノクローナル抗体で治療したマウスと比較して、低い肺中RSV力価を有することを示す。これらのデータは、SHe特異的抗体の鼻腔内投与は、マウスにおけるRSV感染を低減することができることを示唆する。
【0062】
[実施例8] SHe−KLHの構築
SHeベースのワクチンも、代替アジュバントおよび異なる担体と共に、代替経路によりこのワクチンを投与するとき、RSV感染に対して防御することができるかどうか試験するために、担体としてのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と共に腹腔内でワクチンを試験した。マレイミド活性化KLH(Pierce)を、RSV A SH外部ドメインに対応するペプチド(CGGGSNKLSEYNVFHNKTFELPRARVNT(配列番号50);RSV A SH外部ドメイン(She)に対応する配列に下線を引く)と化学結合させた。直接的化学結合を助長するため、CysGlyGlyGlySerリンカーをRSV A SHeペプチドのN末端に加えた。さらに、本来のRSV A SHe中に存在したシステイン残基をセリン残基に置換した。化学結合は製造者(Pierce)の説明書に従い実施した。架橋KLH−SHeタンパク質はサイズ排除クロマトグラフィーによって単離した。
【0063】
[実施例9] KLH−SHeを用いた腹腔内予防接種はマウスにおけるRSV複製を低減する。
SHeベースのワクチンを用いた腹腔内(I.P.)予防接種が、RSV感染に対する防御を誘発し得るかどうか試験するために、50μlのフロイント不完全アジュバント(Milipore)とそれぞれ組み合わせた20μgのKLH−SHeまたはKLHで、Balb/cマウス(グループ当たり6匹のマウス)を3回腹腔内予防接種した。アジュバントなしのPBS予防接種を追加の陰性対照として使用した。予防接種後の第二週と第三週の間に、血液を回収してSHe特異的IgG抗体の誘導を決定した。SHe特異的抗体の存在を決定しSHeペプチドELISAにより定量化した。図17(A−B)は、KLH−SHeを用いた3連続予防接種は、IgG1亜型とIgG2a亜型の両方の、高レベルのSHe特異的IgG抗体を誘導することを実証する。PBSまたはKLH予防接種マウス由来の血清において、SHe特異的IgG抗体を検出することはできなかった。さらにフローサイトメトリー分析は、KLH−SHeを腹腔内予防接種したマウス由来の血清は、それらの表面でRSV SHタンパク質を発現するHEK293T細胞と特異的に結合することができ、一方で免疫前血清はできなかったことを明らかにした。
【0064】
腹腔内KLH−SHe予防接種がRSV感染を低減し得るかどうか試験するために、最後の予防接種後4週で1.10PFUのRSV−A2を予防接種マウスに感染させた。攻撃後5日で、マウスを屠殺しプラークアッセイにより肺中RSV−A2力価を決定した。図17Dは、KLH予防接種マウスの肺中よりSHe−KLH予防接種マウスの肺中で、有意に少ないウイルスを検出することができたことを示す(P>0.005、マンホイットニーのU検定)。KLH−SHe予防接種マウス間で、血清SHe特異的IgG抗体の高い力価が感染後5日で低レベルの肺中RSVと強く相関関係があったという観察結果(R=0.95)は、KLH−SHe予防接種によるRSV複製の低減がSHe特異的抗体によって仲介されることを示唆する(図17E)。全てのマウスの体重は、感染日および屠殺日にモニタリングした。図17Cは、KLH−SHeで予防接種したマウスは、KLHで予防接種したマウスより有意に体重が増大したことを示す(P>0.005、マンホイットニーのU検定)。これらのデータは、SHeベースのワクチンを用いた腹腔内予防接種は、罹患状態を誘導せずにRSV複製を低減することができることを実証する。さらにこれらのデータは、mHBcに次いで、tGCN4およびCOMPccさらにKLHをSHeペプチドベースワクチン用のタンパク質担体として使用することができることを示す。さらにこれらのデータは、Titermaxに次いで、フロイント不完全アジュバントも、SHe特異的免疫を誘導するのに適したアジュバントとして使用することができることを示す。
【0065】
[実施例10] KLH−SHeを用いた鼻腔内予防接種はマウスにおけるRSV複製を低減する。
KLH−SHeを用いた鼻腔内予防接種が、RSV感染に対する防御を誘発し得るかどうか試験するために、1μgのLTR192Gアジュバントとそれぞれ組み合わせた20μgのKLH−SHeまたはKLHで、Balb/cマウス(グループ当たり6匹のマウス)を3回鼻腔内予防接種した。アジュバントなしのPBS予防接種を追加の陰性対照として使用した。予防接種後の第二週と第三週の間に、血液を回収してSHe特異的IgG抗体の誘導を調べた。SHe特異的抗体の存在はSHeペプチドELISAにより試験した。図18(A−B)は、KLH−SHeを用いた3連続予防接種は、IgG1亜型とIgG2a亜型の両方のSHe特異的IgG抗体を誘導することを実証する。PBSまたはKLH予防接種マウス由来の血清において、SHe特異的IgG抗体を検出することはできなかった。さらにフローサイトメトリー分析は、免疫前血清ではなく、KLH−SHe血清を鼻腔内予防接種したマウス由来の血清が、それらの表面でRSV SHタンパク質を発現するHEK293T細胞と特異的に結合することができることを明らかにした。
【0066】
腹腔内KLH−SHe予防接種がRSV感染を低減し得るかどうか試験するために、最後の予防接種後9週で1.10PFUのRSV−A2を予防接種マウスに感染させた。攻撃後5日で、マウスを屠殺しBAL(気管支肺胞洗浄)液(3ml)を回収した。プラークアッセイにより回収したBAL液中のRSV−A2力価を決定した。図18Eは、KLH予防接種マウスの肺中よりKLH−SHe予防接種マウスの肺中で、有意に少ないウイルスを検出することができたことを示す(P>0.05、マンホイットニーのU検定)。回収したBAL液中のSHe特異的IgAおよびIgG抗体の存在は、SHeペプチドELISAによって分析した。この分析は、PBSおよびKLH予防接種マウスと対照的に、KLH−SHeを予防接種したマウスのBAL液は、IgGとIgA SHe特異的抗体の両方を含有していたことを明らかにした(図18C−D)。KLH−SHe予防接種マウスのBAL液中に存在したIgG SHe特異的抗体のレベルは、各マウスの血清中のIgG SHe特異的抗体のレベルと相関関係があった。KLH−SHe予防接種マウス間で、BAL液中に存在したSHe特異的IgG抗体の高い力価が感染後5日で低レベルの肺中RSV力価と強く相関関係があったという観察結果(R=0.97)は、KLH−SHe予防接種によるRSV複製の低減がSHe特異的抗体によって仲介されることを示唆する(図18F)。これらのデータは、SHeベースのワクチンを用いた鼻腔内予防接種は、罹患状態を誘導せずにRSV複製を低減することができることを実証する。さらに、これらのデータによって、mHBcに次いで、tGCN4およびCOMPccさらにKLHをSHeペプチドベースワクチン用のタンパク質担体として使用することができることを確認する。
【0067】
[実施例11] KLH−SHe免疫血清の受動輸送はマウスにおけるRSV感染を防御する。
SHeベースワクチンで予防接種したマウスにおけるRSV複製の低減が、RSV SHe特異的抗体により仲介され得るかどうかさらに調べるために、受動輸送の実験を実施した。いずれも75μlのフロイント不完全アジュバントと組み合わせたKLH−SHeまたはKLHのいずれか20μgで、Balb/cマウスを腹腔内予防接種した。追加の陰性対照として、アジュバントなしのPBSでマウスを予防接種した。SHeペプチドELISAは、KLH−SHeで予防接種した全てのマウスの血清が、高レベルのSHe特異的IgG抗体を含有することを示した。最後の出血後、各グループのマウスの血清をプールし、56℃で30分間熱失活させた。KLH−SHe血清はRSV感染を防御することができるかどうか試験するために、40μlのKLHまたはKLH−SHe血清を、RSV攻撃(2.10PFU)(第0日)1日前(第−1日)と1日後(第1日)にマウスに鼻腔内投与した。PBSで治療したマウスは追加の対照として含めた。全てのマウスの体重を毎日モニタリングした(図19C)。感染後5日で、マウスを屠殺し肺ホモジネートを調製した。プラークアッセイによる分析は、KLH−SHe血清で治療したマウスの肺ホモジネートは、KLH血清で治療したマウス由来の肺ホモジネートより、約40倍少ない複製ウイルス(ウイルス力価の平均の比)を含有していたことを実証した(図19B)。KLH血清で治療したマウスの肺中RSV力価が、PBSで治療したマウスの肺中RSV力価と違わなかったという観察結果は、対照血清の投与はマウスにおける肺中RSV複製に影響を与えないことを示す。
【0068】
[実施例12] mHBc−SHeBの構築
それらの亜型内で高度に保存されているにもかかわらず、RSV BウイルスのSHeアミノ酸配列は、RSV A亜型ウイルスのそれと異なる。したがって、RSV Bウイルスに対して防御するため、SHeベースワクチンはRSV BのSHeアミノ酸配列を含むことが最も必要とされ得る。
【0069】
RSV B SHeワクチンを、mHBcウイルス様粒子とコンセンサスRSV B SHeペプチド(SHeB:CGGGSNKLSEHKTFSNKTLEQGQMYQINT(配列番号51)の化学結合によって構築した。化学結合を助長するため、CysGlyGlyGlySerリンカーをRSV B SHeペプチドのN末端に加えた。さらに、本来のRSV B SHe中に存在したシステイン残基をセリン残基に置換した。mHBcとRSV B SHeペプチドの化学結合から生じた免疫原はmHBc−SHeBと名付けた。サイズ排除クロマトグラフィーによるmHBc−SHeB VLPの精製後、SDS−PAGEゲル電気泳動およびクーマシー染色により架橋の程度を分析した。図20は、半分より多くのHBcモノマーが少なくとも1つのSHeペプチドと架橋することを示す。
【0070】
[実施例13] mHBc−SHeBを用いたマウスの免疫処置は、RSV B感染細胞の表面と結合するSHeB特異的抗体を誘導する。
mHBc−SHeB VLPが免疫原性であるかどうか試験するために、50μlのTitermax(Sigma)と組み合わせた20μgのmHBc−SHeBで、1匹のBALB/cマウスを3回皮下免疫処置した。3回の免疫処置は2週間間隔で実施した。各免疫処置1日前および最終免疫処置後2週間で、出血を実施した。mHBc−SHeB免疫血清が、感染細胞の表面上で発現されるRSV B SHタンパク質を認識し得るかどうか試験するために、Vero細胞には、(親切なことにDr.Marc van Ranst、University of Leuven、Leuven、ベルギーにより提供された)RSV Bウイルスの臨床分離株を擬似感染させたか、または感染させた。感染後72時間で、細胞を固定し、0.2%トリトンX−100を使用して透過処理、または非透過処理した。フロイント不完全アジュバントと組み合わせたmHBc−SHeB免疫血清(1/100希釈)またはKLH(KLH血清)で予防接種したBALB/cマウス由来の対照免疫血清(1/100希釈)のいずれかで、細胞を次いで染色した。サンプルは免疫蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーによって分析した。図21AおよびBは、mHBc−SHeB免疫血清は、非感染細胞ではなく、透過処理と非透過処理RSV B感染細胞の両方と結合することができることを示す。対照的に、対照免疫血清はRSV B感染細胞と結合しなかった。これは、mHBc−SHeBによるマウスの予防接種は、おそらく大部分はRSV B感染細胞の表面上で発現されるRSV B SHタンパク質との結合によって、RSV B感染細胞を認識することができる血清抗体を誘導することを実証する。
【0071】
[実施例14] mHBc−SHeBを用いた免疫処置はマウスにおけるRSV複製を低減する。
mHBc−SHeBを用いた予防接種は、RSV B感染からマウスを防御することができるかどうか試験するために、6匹のマウスの2グループを、50μlのフロイント不完全アジュバントを補充したmHBcまたはmHBc−SHeB VLPで免疫処置した。追加の対照として、6匹のマウスをPBSで予防接種した。3週間間隔で3回、腹腔内予防接種した。各免疫処置後2週間で出血を実施した。SHe特異的抗体の誘導は、コーティングペプチドとしてSHeAまたはSHeBを使用したペプチドELISAにより決定した。この分析は、全てのマウスにおいて、3連続のmHBc−SHeB免疫処置が、IgG1亜型とIgG2a亜型の両方の高力価のRSV B She特異的IgG抗体を誘導することを実証した(図22A−C)。mHBc−SHeB免疫血清も、はるかに低い程度ではあるがSHeAペプチドと結合した(図22A、BおよびD)。
【0072】
本発明者らおよび他の研究室における以前の実験は、RSV B感染マウスから、全くまたはほとんど複製ウイルスを奪還することができないことを示している。それにもかかわらず本発明者らは、RSV B臨床分離株の感染がBALB/cマウスにおいて肺炎症および体重減少を誘導することを、観察することができた(データ示さず)。したがって本発明者らは、mHBc−SHeBを用いた予防接種が、RSV B誘導型肺炎症からマウスを防御することができたかどうか試験した。2.10PFUのRSV B臨床分離株によるマウスの鼻腔内攻撃後6日で、気管支肺胞洗浄(BAL)を実施した。擬似感染マウスは、BAL細胞浸潤の分析用の陰性対照として使用した。Bogaertら、2011中に記載されたように、フローサイトメトリーにより免疫細胞浸潤に関してBAL液を分析した。図22E−Fは、RSV B感染が免疫細胞、特にCD8Tリンパ球の肺浸潤をもたらすことを示し、これはマウスにおけるRSV誘導型罹患の原因であることが知られている。しかしながら、PBSまたはmHBc予防接種マウスと比較して、mHBc−SHeB予防接種マウスは有意に少ない肺細胞浸潤を示した。これらのデータは、mHBc−SHeB予防接種がRSV関連の免疫学的病状を低減することを実証する。
【0073】
[実施例15] LPP(5)−SHeタンパク質の設計、発現および精製。
ペンタマーとしてSHeを提示するための代替のタンパク質足場として、本発明者らは、E.コリLPP−56リポタンパク質(Liuら、2004)由来のLiuらによって記載されたペンタマートリプトファン−ジッパー(LPP(5))を使用した。Mertensら、1995によって記載されたように、LPP(5)トリプトファン−ジッパーのコード配列はSHeコード配列と遺伝学的に融合させ、ヘキサヒスチジンペプチドおよびカスパーゼ切断部位を含有するE.コリ発現ベクター(pLH36)にクローニングした。この発現プラスミドはpLH36−HisDEVD−LPP−SHe(配列番号49)と名付けた。このプラスミドからの発現によってキメラLPP(5)−SHeタンパク質(配列番号52)が生じる(MHHHHHHPGGSDEVDAKWDQWSSDWQTWNAKWDQWSNDWNAWRSDWQAWKDDWARWNQRWDNWATGGNKLCEYNVFHNKTFELPRARVNT、ヒスタグ配列には下線を引き、リンカーはイタリック体であり、DEVDカスパーゼ切断部位はイタリック体および下線であり、ペンタマーLPPトリプトファン−ジッパーは太字であり、RSV A SH外部ドメインは太字およびイタリック体である)。E.コリにおける発現の誘導後、二次的ニッケルアフィニティー、アニオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィーによりLPP(5)−SHeタンパク質を精製した。図23は、粗製細胞抽出物中で(23A)および精製タンパク質として(24B)、両方で、She特異的3G8モノクローナル抗体によりLPP(5)−SHeタンパク質を認識することができることを実証する。
【0074】
[実施例16] コットンラットの免疫処置
独立した動物モデルにおけるワクチンの有効性を証明するため、コットンラットを使用する。コットンラット(サイグモンドンヒスピダス(Sigmondon hispidus))はRSV感染の影響を受けやすい(Princeら、1978)。それぞれ6匹のコットンラットの5グループを使用する。100μgのKLH(賦形剤対照)または100μgのKLH−SHe(すなわち、RSV−A由来のSHeペプチドと担体としてのKLHの化学結合体)で、2グループの動物を腹腔内(i.p.)免疫処置した。KLHおよびKLH−SHeワクチン抗原はフロイント不完全アジュバントで製剤化し、これらを使用して第0日、21日、および42日にコットンラットを免疫処置する。第三グループの動物には、アラムアジュバントの存在下においてホルマリン不活化RSV(FI−RSV)で筋肉内免疫処置する。後者のグループは、RSVによる二次攻撃により明らかとなるワクチン増大型疾患の誘導に関する陽性対照として働く。第四グループの動物には、第0日にコットンラット当たり2.04×10プラーク形成単位のRSV−Tracyを感染させ、二次攻撃に対する防御に関する陽性対照として働く。第五グループのコットンラットは攻撃の日まで未治療状態に保ち、RSV攻撃に関する対照として働く。予防接種のスケジュールは図24中に示す。
【0075】
各免疫処置前および攻撃の日に血清を回収する。第63日に、2.04×10プラーク形成単位のRSV−Tracyでコットンラットを鼻腔内攻撃する。攻撃ウイルスは100マイクロリットルの容積で鼻腔内投与し、一方動物にはイソフルランで軽く麻酔をかける。第68日に、血清を回収し、全ての動物を屠殺して、ウイルス滴定および病理組織学的解析用に肺を回収する。それぞれの肺を2つに分けて、病理組織学的解析およびウイルス滴定を実施する。左肺の血行を止め病理組織学的解析に使用する。15%グリセリンを含む3mlのイスコフ培地を使用して、右肺の葉を洗浄する。洗浄液は滴定まで氷上に保存する。さらに、同じ培地中に2ml(各鼻孔用に1ml)で鼻腔洗浄液を調製する。
【0076】
肺および鼻腔洗浄液中のウイルス負荷は、HEp2細胞におけるプラークアッセイによって決定する。連続希釈した洗浄液サンプルで90分間、細胞を感染させる。接種原の除去後、抗生物質を含むMEMにおいて2%メチルセルロースを細胞に塗布する。COインキュベーターにおける37℃でのインキュベーションの6日後、プラークは0.1%クリスタルバイオレット/10%ホルマリン溶液で対比染色し、24時間室温で放置する。
【0077】
病理組織学的解析用に、10%中性緩衝ホルマリンで左肺を灌流させる。固定した肺組織はミクロトームで後に処理し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する切片を得て、病理組織学的病変の程度を記録する。
【0078】
ペプチドELISAおよびマイクロ中和アッセイにより、抗SHeおよび抗RSV中和抗体の存在に関して血清サンプルをアッセイする。ペプチドELISA用に、50μlの0、1M炭酸バッファー、pH9.6中の2μgのSHe−ペプチドで、37℃において一晩プレートをコーティングする。コーティング後、PBS中3%(w/v)乳粉末でプレートをブロッキングし、次にコットンラット血清の3倍連続希釈液をかける。保持されたSHe特異的コットンラットIgGは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体およびテトラメチルベンジジン基質を使用して検出する。サンプル中の終点抗SHeペプチドIgG力価は、その吸光度が免疫前血清のそれより少なくとも2倍高い最高希釈として定義する。
【0079】
HEp2細胞を含む96ウエルマイクロタイタープレートにおいて、RSV−Aおよび−Bに関する中和抗体力価を決定する。血清サンプルの連続希釈液は一定量の接種原ウイルスと混合する。50%を超える低減が細胞変性効果である血清希釈として定義する、中和抗体力価を観察する。この細胞変性効果は細胞の破壊を指し、細胞を10%中性緩衝ホルマリンで固定しクリスタルバイオレットで染色した後に目視により決定する。これらの結果は、フロイントアジュバント中KLH−SHeを予防接種した動物が中和抗体を発色し、明らかに防御されることを示し、一方で賦形剤対照は全く防御を示さない。
【0080】
【表1】
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図19-1】
図19-2】
図20
図21
図22-1】
図22-2】
図22-3】
図23
図24
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]