特許第6016801号(P6016801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016801感圧型粘着フィルムまたはシート、表面保護フィルムまたはシート、および感圧型粘着フィルムまたはシートを物品の表面を保護するために使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016801
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】感圧型粘着フィルムまたはシート、表面保護フィルムまたはシート、および感圧型粘着フィルムまたはシートを物品の表面を保護するために使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20161013BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20161013BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20161013BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J123/08
   C09J131/04
   C09J11/06
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-544116(P2013-544116)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2012007185
(87)【国際公開番号】WO2013073142
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2011-249318(P2011-249318)
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・デュポンポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣中 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】森本 厚司
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/098976(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/02
C09J 11/06
C09J 123/08
C09J 131/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニル含有量が7.5質量%以上20質量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体と、
水素化率が50%以上90%未満の範囲内にある粘着付与剤と
を含む粘着層を備え
前記粘着付与剤のJIS K2207−1996環球法に準拠して測定した軟化温度が100℃以上150℃以下であり、
前記粘着付与剤が脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物を含む、感圧型粘着フィルムまたはシート。
【請求項2】
請求項1に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体と前記粘着付与剤との合計量を100質量部としたとき、
前記粘着付与剤の含有量が0.1質量部以上5.0質量部以下である、感圧型粘着フィルムまたはシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体のJIS K7210−1999に準拠して測定したメルトフローレート(190℃、2160g荷重)が、1g/10分以上50g/10分以下である、感圧型粘着フィルムまたはシート。
【請求項4】
請求項1乃至いずれか一項に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記粘着層が基材の少なくとも一方の面に形成された、感圧型粘着フィルムまたはシート。
【請求項5】
請求項に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記基材がポリエチレンまたはポリプロピレンを含む、感圧型粘着フィルムまたはシート。
【請求項6】
請求項1乃至いずれか一項に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートを含む、表面保護フィルムまたはシート。
【請求項7】
請求項1乃至いずれか一項に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートを、物品の表面を保護するために使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧型粘着フィルムまたはシート、表面保護フィルムまたはシート、および感圧型粘着フィルムまたはシートを物品の表面を保護するために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着フィルムまたはシートは、製品の表面を塵の付着、汚れ、傷などから保護するための表面保護フィルムとして用いられてきた。
近年、精密電子部品の表面保護フィルムとしても用いられている。
【0003】
粘着フィルムまたはシートには、粘着層と被着体との粘着力は適度に強いことが求められる。この適度な強さとは、自然に自己剥離したり軽い振動や衝撃で脱落したりすることが無い強さであり、かつ、剥離するときには被着体表面に粘着層を残すことなくスムーズに剥離できる強さをいう。
【0004】
このような要求特性を満たす粘着フィルムまたはシートには、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルムまたはシートがある。
【0005】
特許文献1(特開平6−145616号)には、粘着層が、酢酸ビニル含有量3〜7重量%およびメルトフローレート2〜20g/10分を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して粘着付与剤を0.5〜2重量部含ませたものからなることを特徴とする表面保護フィルムが記載されている。この表面保護フィルムは、適度の初期粘着力が発揮され、加熱処理、特にUV照射が施されたとしても、粘着力が著しく上昇することがなく、また、被保護物への汚染性もないとされている。
【0006】
特許文献2(特開2008−255233号)には、ポリプロピレン樹脂基材層(A)と酢酸ビニル単位含量が7.5〜50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる粘着層(B)とからなる粘着フィルムまたはシートが記載されている。
この粘着フィルムまたはシートは、基材層と粘着層との層間接着強度が高く、粘着層は被粘着対象物品面に対し適度な粘着力を有し、かつ、その基材層は軟化温度、熱変形温度などの熱的特性、引張強度、耐衝撃性、スティフネスなどの機械特性、ヘイズ、グロス、光透過度などの光学特性に優れ、加えてフィッシュアイの発生がほとんど無く、表面平滑で外観も極めて良好であるとされている。
【0007】
一方、特許文献3(特開2010−171419号)には、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、及び、(A)との相溶性が高い(B)C9系芳香族炭化水素樹脂の水素化物を含み、上記(B)C9系芳香族炭化水素樹脂の水素化物の水素化率が40%以上である太陽電池用封止材シートが記載されている。
この太陽電池用封止材シートは、溶融・加工等の処理を行う際の加工性に優れ、さらに高い透明性を有しつつ耐光性および耐熱性に優れ、安定性が高いとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−145616号公報
【特許文献2】特開2008−255233号公報
【特許文献3】特開2010−171419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1(特開平6−145616号公報)に記載の酢酸ビニル含有量3〜7重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルムは、被着体に対して粘着力が十分ではなかった。そのため、所望の粘着力を得るために、粘着付与剤を多く含有させる必要があった。
しかしながら、粘着付与剤を粘着層に多く含有させると、粘着フィルムを剥離するときに被着体表面に粘着層が残りやすくなってしまった。つまり被着体に対する耐汚染性が低下してしまう。
また、粘着付与剤は比較的高価であり、さらに世界的な需要増加に伴う供給不安の懸念もあるため、粘着付与剤の使用量を減らしたいという要望もあった。
【0010】
また、特許文献2(特開2008−255233号公報)に記載の酢酸ビニル単位含量が7.5〜50重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体も、被着体に対して粘着力が十分ではなかった。また、粘着力が初期粘着力よりも経時的に強くなっていくという経時的昂進の傾向が強かった。
【0011】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、粘着層を積極的に加熱することなく室温条件下で被着体に圧着した場合、所望の粘着力を有しながら、粘着付与剤の使用量が低減された感圧型粘着フィルムまたはシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
酢酸ビニル含有量が7.5質量%以上20質量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体と、
水素化率が50%以上90%未満の範囲内にある粘着付与剤と
を含む粘着層を備え
上記粘着付与剤のJIS K2207−1996環球法に準拠して測定した軟化温度が100℃以上150℃以下であり、
上記粘着付与剤が脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物を含む、感圧型粘着フィルムまたはシートが提供される。
【0013】
さらに本発明によれば、
上記感圧型粘着フィルムまたはシートを含む、表面保護フィルムまたはシートが提供される。
【0014】
この発明によれば、酢酸ビニル含有量が7.5質量%以上20質量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体と、水素化率が50%以上90%未満の粘着付与剤とを含むことにより、粘着剤付与樹脂の添加量が少なくても、所望の粘着力を有する感圧型粘着フィルムまたはシートを得ることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、
上記感圧型粘着フィルムまたはシートを、物品の表面を保護するために使用する方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所望の粘着力を有しながら、粘着付与剤の使用量が低減された感圧型粘着フィルムまたはシートを提供することができる。
【0017】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態によってさらに明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明における実施の形態について説明する。
本実施形態における感圧型粘着フィルムまたはシートは、酢酸ビニル含有量が7.5質量%以上20質量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体と、水素化率が50%以上90%未満の粘着付与剤とを含む粘着層を備えている。
なお、本発明における粘着層と被着体との粘着力は、ホットメルト接着剤のような接着剤の融点以上の加熱条件下で被着体に粘着層を圧着して接着するものではなく、融点未満の温度雰囲気下で被着体に粘着層を圧着して接着したときの層間剥離強度のことを表す。
【0019】
(粘着層)
はじめに、本実施形態における感圧型粘着フィルムまたはシートを構成する粘着層の各成分について説明する。
【0020】
「エチレン・酢酸ビニル共重合体」
本発明の必須成分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体である。
本発明のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル成分の単位含有量が7.5質量%以上20質量%以下であり、好ましくは8質量%以上15質量%以下であり、とくに好ましくは9質量%以上12質量%以下である。酢酸ビニル含有量が上記範囲内であると、適度な初期粘着力を有する感圧型粘着フィルムまたはシートが得られる。
酢酸ビニル含有量が上記下限値以上であると、初期粘着力がより一層優れる感圧型粘着フィルムまたはシートが得られる。一方、酢酸ビニル含有量が上記上限値以下であると、粘着力の経時的昂進が抑制された感圧型粘着フィルムまたはシートが得られる。つまり被着体に対する耐汚染性がより一層優れる。
【0021】
また、本実施形態のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、とくに限定はされないが、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)(JIS K7210−1999に準拠)が好ましくは1g/10分以上50g/10分以下であり、とくに好ましくは2g/10分以上30g/10分以下である。
MFRが上記下限値以上であると、フィルムの平滑性および初期粘着力がより一層優れる。一方、MFRが上記上限値以下であると、低分子成分が少なくなるため、フィルムのブロッキング性や保護基材への耐汚染性がより一層優れる。
【0022】
「粘着付与剤」
本発明の必須成分である粘着付与剤は、粘着層の粘着力を向上させるために配合する。
【0023】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族−芳香族共重合体系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂などの石油系樹脂の水素添加物;ピネン樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂などのテルペン系樹脂の水素添加物;重合ロジン系樹脂の水素添加物;(アルキル)フェノール系樹脂の水素添加物;キシレン系樹脂の水素添加物;スチレン系樹脂の水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、石油系樹脂の水素添加物が好ましく、脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物(脂環族飽和炭化水素樹脂とも呼ぶ。)がとくに好ましい。
これらの粘着付与剤には、オレフィン樹脂が含まれていてもよい。
石油系樹脂の水素添加物としては、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC8〜C10のビニル芳香族炭化水素を主成分とする樹脂の水素添加物などが挙げられる。
テルペン系樹脂の水素添加物としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体などの水素添加物が挙げられる。
重合ロジン系樹脂の水素添加物としては、例えば、水素化ロジン、水素化ロジンのグリセリンエステルまたはその重合体、および水素化ロジンのペンタエリスリットエステルまたはその重合体などが挙げられる。
スチレン系樹脂の水素添加物としては、例えば、スチレン系モノマーの単独重合体、スチレン・オレフィン共重合体、ビニルトルエン・α−メチルスチレン共重合体などの水素添加物が挙げられる。
【0024】
本発明の粘着付与剤は、水素化率が50%以上90%未満の範囲内であり、好ましくは55%以上80%以下の範囲内であり、とくに好ましくは60%以上70%以下の範囲内である。
水素化率が上記範囲内にあると、より少量で所望の粘着力を有する感圧型粘着フィルムまたはシートが得られるため、粘着付与剤の使用量を低減できる。
【0025】
なお、上記水素化率は、上記特許文献3(特開2010−171419号公報)に記載のNMR測定法により測定できる。具体的には、粘着付与剤の1H−NMRの7ppm付近に現れる芳香環のH−スペクトル面積から以下の(1)式に基づいて計算する。
水素化率={1−(粘着付与剤の水素添加物のスペクトル面積/未水素化粘着付与剤のスペクトル面積)}×100(%)・・・(1)
【0026】
粘着付与剤は、とくに限定はされないが、JIS K2207−1996環球法に準拠して測定した軟化温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上である。軟化温度が上記下限値以上であると、得られる感圧型粘着フィルムまたはシートの初期粘着力がより一層優れ、かつハンドリング性にも優れる。
また、粘着付与剤は、とくに限定はされないが、JIS K2207−1996環球法に準拠して測定した軟化温度が、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは140℃以下である。軟化温度が上記上限値以下であると、得られる感圧型粘着フィルムまたはシートの粘着昂進をより一層抑制することができる。
【0027】
本実施形態における粘着付与剤の含有量は、とくに限定はされないが、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体と、上記粘着付与剤との合計量を100質量部としたとき、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.3質量部以上であり、とくに好ましくは0.5質量部以上である。粘着付与剤の含有量が上記下限値以上であると、初期粘着力がより一層優れた感圧型粘着フィルムまたはシートを得ることができる。
また、上記粘着付与剤の含有量は好ましくは5.0質量部以下であり、より好ましくは3.0質量部以下であり、更に好ましくは2.2質量部以下であり、とくに好ましくは1.5質量部以下である。粘着付与剤の含有量が上記上限値以下であると、粘着力の経時的昂進の抑制と、被着体への耐汚染性とのバランスがより一層優れた感圧型粘着フィルムまたはシートを得ることができる。
【0028】
「他の添加剤」
また、本実施形態における粘着層には、粘着層の特性を損なわない程度に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、およびアンチブロッキング剤などの高分子分野で通常使用される添加剤をさらに配合してもよい。
【0029】
(感圧型粘着フィルムまたはシートの製造方法)
本実施形態における感圧型粘着フィルムまたはシートは、例えば上記エチレン・酢酸ビニル共重合体と、上記粘着付与剤とを含む樹脂組成物を単層フィルムまたはシート状に成形することによって得られる。この場合は、得られた単層フィルムまたはシートが本実施形態の粘着層に相当する。また、上記樹脂組成物を用いて基材の少なくとも一方の面に粘着層を形成させることによっても得ることができる。
通常は、後者の上記樹脂組成物を用いて基材の少なくとも一方の面に粘着層を形成させる方法が用いられる。
【0030】
「基材」
上記樹脂組成物からなる粘着層を基材の少なくとも一方の面に形成させる場合、使用する基材としては、とくに限定されないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を1種または2種以上用いてなる、延伸または未延伸の各種熱可塑性樹脂フィルムまたはシートが挙げられる。
ここで、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、エチレン成分を共重合成分とするブロック系やランダム系のプロピレン系ポリマー;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度や超低密度のポリエチレンなどのエチレン系ポリマー;エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。
また、基材としては、紙;金属箔;不織布なども用いられる。
本実施形態においてはこれらの中でポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを含む基材がとくに好ましい。
ポリオレフィンを含む基材を用いた場合、粘着層と基材との層間接着性が良好であり、また、透明性に優れたフィルムまたはシートが得られる。
【0031】
基材に熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合には劣化防止などを目的に、例えば、酸化防止剤;紫外線吸収剤;ヒンダードアミン光安定剤などの光安定剤;帯電防止剤;カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタンなどの充填剤や顔料などの添加剤を必要に応じて基材となる熱可塑性樹脂中にさらに配合してもよい。
【0032】
基材の厚さは、とくに限定されないが、通常は1μm以上500μm以下であり、好ましくは10μm以上200μm以下である。
【0033】
「樹脂組成物の調製方法」
本実施形態の粘着層の形成に用いる上記樹脂組成物は、例えば、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体と、上記粘着付与剤と、必要に応じて他の添加剤と、を同時または逐次的にドライブレンドまたはメルトブレンドすることにより得られる。
ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサーなどの各種ミキサーを用いることができる。
また、メルトブレンドする場合は、1軸または2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどの混練装置を用いることができ、例えば、140℃以上230℃以下程度の温度で溶融混練する。
【0034】
「粘着層の基材への形成方法」
本実施形態の樹脂組成物からなる粘着層を基材へ形成させる方法は、例えば、樹脂組成物の溶液もしくは熱溶融液を基材に塗布する溶液コート法;溶液コート法に準じセパレータ基材上に塗布後、形成した粘着層を移着転写する方法;樹脂組成物を基材上に押出し形成塗布するホットメルトコーティング法;基材と樹脂組成物を二層または三層以上の多層にて共押出し成形する方法;基材上に樹脂組成物を単層で押出ラミネートする方法;接着層と樹脂組成物を二層で押出ラミネートする方法;粘着層とフィルムやラミネート層などの支持基材形成材とをサーマルラミネートする方法;などの公知の方法に準じておこなうことができる。
【0035】
これらの中でも、熱可塑性樹脂からなる基材とともに樹脂組成物を、インフレーション法やTダイ法による二層または三層以上の多層にて共押出し成形する方法が好ましい。
【0036】
本実施形態において、基材に形成する粘着層の厚さは粘着力などに応じて適宜に決定されるが、一般には1μm以上250μm以下、さらには5μm以上100μm以下とするのが好ましい。
また基材を有しない単層フィルムまたはシートの場合は5μm以上300μm以下、さらには10μm以上200μm以下とするのが好ましい。
【0037】
本実施形態における感圧型粘着フィルムまたはシートは、硬い(リジッドな)被着体の表面に粘着層が対向するように積極的に加熱することなく圧力だけで貼り付けられる。不要時には手で容易に引き剥がされて被着体の表面には汚染物が残らない。被着体として例えば、合成樹脂板、化粧板、金属板、塗装鋼板などの製品表面保護用などが挙げられる。
また、窓ガラス表面保護用、自動車の焼付塗装時やプリント基板のハンダ浸積時の表面保護用などが挙げられる。
さらには、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機薄膜EL装置などの構成部材である液晶パネル板;反射板、位相差板、プリズムシート、導光板、偏光板、プラズマ表示パネル板、有機蛍光体薄膜、透明電極、フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板などの精密電子部品が挙げられる。本実施形態における感圧型粘着フィルムまたはシートは、これらの表面保護用のフィルムまたはシートとしてとくに好適に用いられる。
【0038】
別の本実施形態としては、上記の感圧型粘着フィルムまたはシートを、物品の表面を保護するために使用する方法が提供できる。表面保護の対象となる物品は、例えば、上記の被着体が挙げられる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
酢酸ビニル含有量が7.5質量%以上20質量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体と、
水素化率が50%以上90%未満の範囲内にある粘着付与剤と
を含む粘着層を備える、感圧型粘着フィルムまたはシート。
2.
1.に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体と前記粘着付与剤との合計量を100質量部としたとき、
前記粘着付与剤の含有量が0.1質量部以上5.0質量部以下である、感圧型粘着フィルムまたはシート。
3.
1.または2.に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記粘着付与剤のJIS K2207−1996環球法に準拠して測定した軟化温度が80℃以上150℃以下である、感圧型粘着フィルムまたはシート。
4.
1.乃至3.いずれか一つに記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体のJIS K7210−1999に準拠して測定したメルトフローレート(190℃、2160g荷重)が、1g/10分以上50g/10分以下である、感圧型粘着フィルムまたはシート。
5.
1.乃至4.いずれか一つに記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記粘着層が基材の少なくとも一方の面に形成された、感圧型粘着フィルムまたはシート。
6.
5.に記載の感圧型粘着フィルムまたはシートにおいて、
前記基材がポリエチレンまたはポリプロピレンを含む、感圧型粘着フィルムまたはシート。
7.
1.乃至6.いずれか一つに記載の感圧型粘着フィルムまたはシートを含む、表面保護フィルムまたはシート。
8.
1.乃至6.いずれか一つに記載の感圧型粘着フィルムまたはシートを、物品の表面を保護するために使用する方法。
【実施例】
【0040】
以下に、本実施形態を実施例および比較例により説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0041】
[原料]
実施例および比較例では以下の原料を使用した。
EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=9g/10min、エチレン含量=90質量%、酢酸ビニル含量=10質量%)
粘着付与剤1:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製、アルコンM−90、軟化温度90℃、水素化率60%以上70%以下)
粘着付与剤2:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製、アルコンM−100、軟化温度100℃、水素化率60%以上70%以下)
粘着付与剤3:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製、アルコンM−115、軟化温度115℃、水素化率60%以上70%以下)
粘着付与剤4:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製、アルコンM−135、軟化温度135℃、水素化率60%以上70%以下)
粘着付与剤5:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製、アルコンP−100、軟化温度100℃、水素化率90%以上)
・MFR:JIS K7210−1999(190℃、2160g荷重)
・軟化温度:JIS K2207−1996(環球法)
【0042】
[評価サンプル作製]
40mmφTダイ成形機(ナカタニ機械社製)を用いて表1に記載の配合割合(質量部)の樹脂組成物を厚み90μmにて押出加工し、評価用フィルムを作製した。押出加工は、樹脂温度を約180℃、加工速度を10m/minの条件下でおこなった。
【0043】
[評価方法]
(1)粘着力評価
JIS Z0237に準拠し、評価用フィルム(25mm幅)と被着体であるアクリル板(30mm幅、150mm長、2mm厚)を重ねて、手動式ローラー(45mm幅、重量2Kg)で2往復圧着し、評価用サンプルを得た。これを、23℃×50%RH雰囲気下で30分間静置後、引取り速度=300mm/min、180度の角度で剥がし、粘着力の評価をおこなった。なお、本評価においては、測定バラツキの影響を少なくするため、測定を各5回実施し、最大値と最小値を除外した3回分の測定値を平均した値を粘着力として用いた。
【0044】
[評価結果]
以上の評価結果を表1にまとめた。
【0045】
【表1】
【0046】
この出願は、2011年11月15日に出願された日本出願特願2011−249318号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。