(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トリプシン切断可能部分を含んでなるプロモイエティにエノール酸素を介して共有結合したオキシコドンを含んでなるプロドラッグであって、トリプシンによる前記トリプシン切断可能部分の切断がオキシコドンの放出を仲介し、前記プロドラッグがN−l−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン]−アルギニン−グリシン−マロン酸であるプロドラッグと、
組成物の摂取後に前記プロドラッグからのオキシコドンの酵素制御放出を仲介する前記トリプシンと相互作用するトリプシンインヒビターと
を含んでなる組成物。
前記予め選択されたPKプロファイルが、インヒビターの非存在下で等価投薬量の前記プロドラッグを摂取した後に放出されるオキシコドンのPKパラメータ値より低い少なくとも1つのPKパラメータ値を含んでなる、請求項20に記載の用量単位。
【発明を実施するための形態】
【0007】
用語
他で示さない限り、以下の用語は以下の意味を有する。任意の定義されていない用語は、それらの認識された意味を有する。
【0008】
本明細書で使用される「用量単位」は、トリプシン切断可能なプロドラッグ(例えば、トリプシン切断可能なプロドラッグ)とトリプシンインヒビターとの組み合わせを指す。「単一用量単位」は、トリプシン切断可能なプロドラッグ(例えば、トリプシン切断可能なプロドラッグ)とトリプシンインヒビターとの組み合わせの単一の単位であり、ここで単一用量単位は薬物の治療有効量(即ち、治療効果を生じさせるのに十分な量の薬物、例えば、それぞれの薬物の治療ウィンドウ、即ち治療域の範囲内の用量)を提供する。「複数用量単位(multiple dose units)」または「複数の用量単位(multiples of a dose unit)」またはある「複数の用量単位(multiple of a dose unit)]」は、少なくとも2つの単一用量単位を指す。
【0009】
「胃腸酵素」または「GI酵素」は、口から肛門に至る解剖学的部位を包含する胃腸(GI)管にある酵素を指す。トリプシンはGI酵素の例である。
【0010】
「胃腸酵素切断可能部分」または「GI酵素切断可能部分」は、GI酵素による切断を受け易い部位を含んでなる基を指す。例えば、「トリプシン切断可能部分」は、トリプシンによる切断を受け易い部位を含んでなる基を指す。
【0011】
「胃腸酵素インヒビター」または「GI酵素インヒビター」は、胃腸酵素の基質に対する作用を阻害することが可能な任意の因子を指す。この用語はまた、胃腸酵素インヒビターの塩も包含する。例えば、「トリプシンインヒビター」は、トリプシンの基質に対する作用を阻害することが可能な任意の因子を指す。
【0012】
「患者」には、ヒト、また他の哺乳動物、例えば、家畜、動物園の動物およびネコ、イヌまたはウマなどの伴侶動物が含まれる。
【0013】
「医薬組成物」は少なくとも1つの化合物を指し、さらに、それと共に化合物が患者に投与される薬学的に許容できるキャリアを含んでなってもよい。
【0014】
「薬学的に許容できるキャリア」は、それと共に、またはその中にあって化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを指す。
【0015】
「薬学的に許容できる塩」は、化合物の所望される薬理活性を有する化合物の塩を指す。そのような塩として:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸によって形成されるか;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸によって形成される酸付加塩;または(2)化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置き換えられるか;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合する場合に形成される塩が挙げられる。
【0016】
「薬力学的(PD)プロファイル」は、患者(または対象または使用者)における薬物の効力のプロファイルを指し、これはPDパラメータにより特徴付けられる。「PDパラメータ」には、「薬物Emax」(最大薬物効力)、「薬物EC50」(Emaxの50%での薬物濃度)および副作用が含まれる。
【0017】
「PKパラメータ」は、血中または血漿中における薬物濃度の尺度を指し、例えば:1)「薬物Cmax」、血中または血漿中で達成される薬物の最高濃度;2)「薬物Tmax」、摂取後Cmaxに達するまでの経過時間;および3)「薬物曝露量」、特定の期間にわたり血中または血漿中に存在する薬物の総濃度(これは特定の期間(t)にわたる薬物放出の経時変化の曲線下面積(AUC)を使用して計測することができる)である。1つ以上のPKパラメータを改変することにより、改変されたPKプロファイルがもたらされる。
【0018】
「PKプロファイル」は、血中または血漿中における薬物濃度のプロファイルを指す。このプロファイルは、時間に対する薬物濃度の関係(即ち、「濃度−時間PKプロファイル」)または摂取した用量数に対する薬物濃度の関係(即ち、「濃度−用量PKプロファイル」)であり得る。PKプロファイルはPKパラメータにより特徴付けられる。
【0019】
「予防する」または「予防」または「予防法」は、疼痛などの病態の発生リスクを低減することを指す。
【0020】
「プロドラッグ」は、活性薬剤を放出するために体内での転換を必要とする活性薬剤の誘導体を指す。特定の実施形態では、転換は酵素転換である。特定の実施形態では、転換は環化転換である。特定の実施形態では、転換は、酵素転換と環化反応との組み合わせである。プロドラッグは、必ずではないが、多くの場合に活性薬剤に変換されるまで薬理学的に不活性である。
【0021】
「プロモイエティ」は、活性薬剤中の官能基を遮蔽するために使用する場合、活性薬剤をプロドラッグに変換する保護基の形態を指す。典型的には、プロモイエティは、生体内で酵素的または非酵素的手段により切断される1つ以上の結合を介して薬物に結合し得る。
【0022】
本明細書で使用される「溶媒和物」は、溶質、例えばプロドラッグまたはその薬学的に許容できる塩の1つ以上分子と、溶媒の1つ以上の分子とによって形成される複合体または凝集体を指す。かかる溶媒和物は、典型的に、実質的に一定のモル比の溶質と溶媒とを有する結晶性固体である。代表的な溶媒として、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0023】
「治療有効量」は、疼痛などの病態を防止または治療するために患者に投与する場合の化合物の量(例えばプロドラッグ)が、そのような治療を生じさせるのに十分であることを意味する。「治療有効量」は、化合物、患者の病態およびその重症度ならびに年齢、重量などに依存して、変動する。
【0024】
疼痛などの任意の病態を「治療する」または「治療」は、特定の実施形態において、病態を改善すること(即ち、病態の発達を阻止または低減すること)を指す。特定の実施形態では、「治療する」または「治療」は、患者が認識できないこともある少なくとも1つの身体パラメータを改善することを指す。特定の実施形態では、「治療する」または「治療」は、身体的に(例えば、認識可能な徴候の安定化)、生理学的に(例えば、身体パラメータの安定化)のいずれか、またはその両方について病態を抑制することを指す。特定の実施形態では、「治療する」または「治療」は、病態の発生を遅らせることを指す。
【0025】
詳細な説明
本発明についてさらに詳細に説明する前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、当然のことながら多様であり得ることは理解されたい。また、本明細書において使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、特定の実施形態に限定されることを意図していないことも理解されたい。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、別段文脈が明示しない限り、複数の指示対象も含むことが留意されなければならない。特許請求の範囲は、任意の随意的要素を除外するために起案され得ることもさらに留意される。従って、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙と関連して、「単に」、「唯一の」などのような排他的用語を使用するため、または「消極的な」限定を使用するための前提として働くように意図される。
【0027】
本明細書において使用する用語「a」実体または「an」実体は、その実体の1つ以上を指すことを理解すべきである。例えば、化合物(a compound)は、1つ以上(one or more)の化合物を指す。従って、用語「a」、「an」、「1つ以上(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」は、同義的に使用することができる。同様に、用語「含んでなる」、「含む」および「有する」も、同義的に使用することができる。
【0028】
本明細書において考察する刊行物は、本出願の出願日前に開示されたもののみ提供している。本明細書には、先行本発明に基づいて、本発明がそのような刊行物に先行する権利を有さないものと承認するように解釈されるものは含まれていない。さらに、提供した公開日は、実際の公開日とは異なることもあるため、独立して確認する必要があり得る。
【0029】
別段定義しない限り、本明細書において使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当該技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価なあらゆる方法および材料は、本発明の実践または試験にも使用することができるが、ここで、好適な方法および材料について説明する。本明細書において言及するすべての刊行物は、引用する刊行物に関連する方法および/または材料を開示および説明するために、本明細書において参考として援用される。
【0030】
別段留意する場合を除いて、本実施形態の方法および教示内容は、一般的に、当該技術分野において周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書を通して引用および考察した様々な一般的および特定の参考文献において記載のとおりに、実施される。例えば、Loudon,Organic Chemistry,Fourth Edition,New York:Oxford University Press,2002,pp.360−361,1084−1085;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley−Interscience,2001を参照のこと。
【0031】
主題化合物を命名するために本明細書において使用する命名法を、本明細書の実施例に例示する。特定の場合、この命名法は、一般的に、市販のAutoNomソフトウェア(MDL,San Leandro,Calif.)を使用して誘導した。
【0032】
明確にするため個別の実施形態との関連において説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするため単一の実施形態との関連において説明される本発明の様々な特徴が、個別に、または任意の好適な部分的組み合わせで提供されてもよい。可変基により表現される化学基に関する実施形態のあらゆる組み合わせが、本発明に具体的に包含され、および一つ一つの組み合わせが安定な化合物(即ち、分離し、特性決定し、および生物活性について試験することができる化合物)である化合物を包含する限りにおいて、かかる組み合わせがまさに個々にかつ明示的に開示されたものとして本明細書に開示される。加えて、かかる可変基を説明する実施形態に列挙される化学基のあらゆる部分的な組み合わせもまた、具体的に本発明に包含され、および化学基の一つ一つのかかる部分的な組み合わせがまさに個々にかつ明示的に本明細書に開示されたものとして本明細書に開示される。
【0033】
一般的合成手順
開示される化合物の合成に有用な一般に公知の化学合成スキームおよび条件を提供する一般的な参考文献が多く利用可能である(例えば、Smith and March, March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley−Interscience,2001;またはVogel,A Textbook of Practical Organic Chemistry,Including Qualitative Organic Analysis,Fourth Edition,New York:Longman,1978を参照のこと)。
【0034】
本明細書に記載されるとおりの化合物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分取薄層クロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフ手段を含め、当該技術分野において公知の手段のいずれかにより精製することができる。順相および逆相ならびにイオン性樹脂を含む任意の好適な固定相を使用することができる。例えば、Introduction to Modern Liquid Chromatography,2nd Edition,ed.L.R.Snyder and J.J.Kirkland,John Wiley and Sons,1979;およびThin Layer Chromatography,ed E.Stahl,Springer−Verlag,New York,1969を参照のこと。
【0035】
本開示物の化合物の調製方法のいずれかの間、対象の分子のいずれかにおける感受性または反応性の基を保護することが必要となる、および/または望ましいことがあり得る。これは、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Fourth edition,Wiley,New York 2006などの標準的な著書に説明されるとおりの従来の保護基を用いて達成することができる。保護基は、好都合な後続の段階で当該技術分野により公知の方法を用いて取り除くことができる。
【0036】
本明細書に記載される化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含んでもよく、従って、二重結合異性体(即ち、幾何異性体)、エナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体として存在してもよい。従って、立体異性的に純粋な(例えば、幾何学的に純粋、エナンチオマー的に純粋またはジアステレオマー的に純粋な)形態を含む化合物のすべての可能なエナンチオマーおよび立体異性体ならびにエナンチオマーおよび立体異性混合物が、本明細書における化合物の説明に含まれる。エナンチオマーおよび立体異性混合物は、当業者に周知の分離技術またはキラル合成技術を使用して、それらの成分のエナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。化合物はまた、エノール型、ケト型およびそれらの混合物を含むいくつかの互変異性型で存在してもよい。従って、本明細書において示す化学的構造は、例示される化合物のすべての可能な互変異性体型を包含する。
【0037】
記載される化合物はまた、同位体標識化合物を含み、ここで1個以上の原子は、天然において従来見出される原子質量とは異なる原子質量を有する。本明細書に開示される化合物に組み入れられ得る同位体の例として、
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
15N、
18O、
17Oなどが挙げられるが、これらに限定されない。化合物は、非溶媒和形態、ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在してもよい。一般に、化合物は水和または溶媒和されていてもよい。特定の化合物は複数の結晶質形態または非晶質形態で存在してもよい。一般に、すべての物理形態は、本明細書で考慮される使用について等価であり、本開示物の範囲内にあることが意図される。
【0038】
代表的な実施形態
ここで様々な実施形態を詳細に参照する。本発明はこれらの実施形態に限定されないことは理解されるであろう。むしろ、認められる特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれ得るとおりの代替例、変形例、および均等物を網羅することが意図される。
【0039】
本実施形態は、以下に示す化合物KC−8、N−1−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン]−アルギニン−グリシン−マロン酸:
【化3】
またはその許容できる塩、溶媒和物、および水和物を提供する。
【0040】
本実施形態は、以下に示すN−1−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン]−アルギニン−グリシン−マロン酸、化合物KC−8:
【化4】
またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物、および水和物を含んでなる組成物を提供する。
【0041】
本開示物は、オキシコドンの制御放出を提供するケトン修飾オピオイドプロドラッグである化合物KC−8を提供する。ケトン修飾オピオイドプロドラッグでは、プロモイエティがオキシコドンのエノール酸素原子を介してオキシコドンに結合する。ケトン修飾オピオイドプロドラッグでは、オキシコドンの対応するエノール基の水素原子がプロモイエティとの共有結合に置き換えられている。
【0042】
化合物KC−8では、プロモイエティは、環化可能なスペーサー脱離基と切断可能部分とを含んでなる。化合物KC−8では、ケトン修飾オキシコドンプロドラッグは、酵素切断可能部分で保護された窒素求核種を有するスペーサー脱離基でエノール酸素原子が置換されている対応する化合物であり、スペーサー脱離基および窒素求核種の配置は、切断可能部分が酵素切断されると窒素求核種が環状尿素を形成し、スペーサー脱離基から化合物が遊離してオキシコドンを提供することが可能であるような配置である。
【0043】
酵素切断可能部分を切断することが可能な酵素は、プロテアーゼとも称されるペプチダーゼであってもよい−酵素切断可能部分を含んでなるプロモイエティは、アミド(例えばペプチド:−NHC(O)−)結合を介して求核性窒素に連結されている。一部の実施形態では、酵素はタンパク質の消化酵素である。本開示物では、トリプシンなどのGI酵素である酵素、およびトリプシン切断可能部分などのGI酵素切断可能部分である酵素切断可能部分が提供される。
【0044】
対応するプロドラッグは、投与後に活性化される制御されたオキシコドン放出を提供する。このプロドラッグは、オキシコドンの放出を惹起するのに酵素切断を必要とし、従って、オキシコドンの放出速度は、酵素切断の速度および環化の速度の双方に依存する。化合物KC−8は、速い酵素切断速度と速い分子内環化速度との組み合わせにより、効率的なオキシコドン制御放出を提供する。このプロドラッグは、それが不適切に投与された場合に過剰に高い血漿中活性薬物濃度を提供せず、および酵素切断と、それに続く制御された環化による以外には容易に分解されず、活性薬物を提供することができないように構成される。
【0045】
オキシコドンが放出されるときに形成される環状の基は、好都合には薬学的に許容できるものであり、特に薬学的に許容できる環状尿素である。環状尿素は概して極めて安定しており、毒性が低いことは理解されるであろう。
【0046】
化合物の一般的合成手順
本明細書に開示される化合物の代表的な合成スキームを以下に示す。化合物KC−8は、本開示物の方法を用いて合成することができる。
【0047】
代表的な合成スキーム
化合物S−104の代表的な合成をスキーム1に示す。スキーム1では、化合物KC−8について、nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;およびPG
1はアミノ保護基である。
【化5】
【0048】
スキーム1において、化合物S−100は市販の出発物質である。あるいは、化合物S−100は、市販の出発物質および/または従来の合成方法により調製された出発物質を使用して、様々な異なる合成経路を経て合成することができる。
【0049】
引き続きスキーム1を参照すると、化合物S−100のアミノ基がトリフルオロアセチル基により保護されて、化合物S−101が形成される。トリフルオロアセチル基は、トリフルオロ酢酸エチル、塩化トリフルオロアセチル、または1,1,1−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトンなどの試薬を使用した反応で形成することができる。
【0050】
化合物S−101の他方のアミノ基が保護されて化合物S−102が形成され、ここでPG
1はアミノ保護基である。アミノ保護基については、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Fourth edition,Wiley,New York 2006に見出すことができる。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル基;アシル基、例えばアセチルなどのアルカノイル基;tert−ブトキシカルボニル(Boc)などのアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などのアリールメトキシカルボニル基;ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)、および1,1−ジ−(4’−メトキシフェニル)メチルなどのアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert−ブチルジメチルシリル(TBS)などのシリル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
特定の実施形態では、PG
1はBocである。化合物S−102上にBoc基を形成するための条件は、Greene and Wutsに見出すことができる。一つの方法は、化合物S−101のジ−tert−ブチルジカーボネートとの反応である。この反応は、場合により、DMAPなどの活性化剤の存在下で実行されてもよい。スキーム1において、特定の実施形態では、トリフルオロアセチル保護基とPG
1、例えばBocとは、直交する保護基である。
【0052】
引き続きスキーム1を参照すると、化合物S−102上のトリフルオロアセチル基が脱保護されて化合物S−103が形成される。トリフルオロアセチル基を除去する条件は、Greene and Wutsに見出すことができる。トリフルオロアセチル基を除去する方法には、化合物S−102の加水分解が含まれる。加水分解の特定の条件には、水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムとの反応が含まれる。
【0053】
引き続きスキーム1を参照すると、R
5基が化合物S−103に付加されて化合物S−104が形成される。化合物S−103のアミノ基へのR
5基の付加は、保護基/活性化基を用いることにより促進することができる。特定の実施形態では、化合物S−103のアミノ基にノシル基が付加されてから、R
5基が付加される。ノシル基は、塩化ノシルを用いることにより付加することができる。
【0054】
特定の実施形態では、R
5基はメチルであり、ヨウ化メチルを用いることにより付加される。R
5基を付加した後、保護基/活性化基を取り除くと、化合物S−104を得ることができる。例えば、ノシル基の除去は、チオフェノールによって実施することができる。
【0055】
化合物S−202の代表的な合成をスキーム2に示す。スキーム2では、化合物KC−8について、R
aはヒドロキシルであり;nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;およびPG
1はアミノ保護基である。
【化6】
【0056】
スキーム2において、化合物S−200は市販の出発物質である。あるいは、化合物S−200は、天然材料から半合成的に誘導してもよく、または市販の出発物質および/または従来の合成方法により調製された出発物質を使用して、様々な異なる合成経路を経て合成してもよい。
【0057】
引き続きスキーム2を参照すると、化合物S−200が化合物S−104と反応して化合物S−201が形成される。この反応では、化合物S−200が、カルバメート形成試薬により化合物S−104のアミノ基と反応して、化合物S−201が生じる。好適なカルバメート形成試薬としては、4−ニトロフェニルクロロホルメートなどのクロロホルメートが挙げられる。
【0058】
引き続きスキーム2を参照すると、化合物S−201から保護基PG
1が除去されて化合物S−202が形成される。アミノ基を除去する条件は、Greene and Wutsに見出すことができる。PG
1がBoc基である場合、保護基は、塩酸またはトリフルオロ酢酸による処理など、酸性条件で除去することができる。
【0059】
化合物S−303の代表的な合成をスキーム3に示す。スキーム3では、化合物KC−8について、R
aはヒドロキシルであり;nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;R
6はアルギニンの側鎖であり;およびPG
2は任意選択のアミノ保護基である。
【化7】
【0060】
スキーム3を参照すると、化合物S−202が、ペプチドカップリング反応において化合物S−301と反応して化合物S−302が形成される。特定の実施形態では、R
6はアルギニンの側鎖であり、場合により保護されている。アルギニンの側鎖に対する保護基は当業者に公知であり、Greene and Wutsに見出すことができる。場合によっては、アルギニンの側鎖に対する保護基は、スルホニル型の保護基、例えば2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン(Pbf)である。他の保護基としては、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン(Pmc)および1,2−ジメチルインドール−3−スルホニル(MIS)が挙げられる。
【0061】
ペプチドカップリング反応は、典型的には従来のペプチドカップリング試薬を用い、従来のカップリング反応条件下、典型的にはトリアルキルアミン、例えばエチルジイソプロピルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下で行われる。使用するのに好適なカップリング試薬としては、例として、カルボジイミド、例えば、エチル−3−(3−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)など、および他の公知のカップリング試薬、例えば、N,N’−カルボニルジイミダゾール、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)などが挙げられる。場合により、公知のカップリング促進剤、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAT)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)などを、この反応に用いることができる。典型的に、このカップリング反応は、THFまたはDMFなどの不活性希釈剤中、約0℃〜約60℃の範囲の温度で約1〜約72時間行われる。場合によっては、化合物S−202は、HATUの存在下で化合物S−301と反応させて化合物S−302を形成する。
【0062】
引き続きスキーム3を参照すると、化合物S−302は、アミノ保護基の除去により化合物S−303に変換される。アミノ基を除去する条件は、Greene and Wutsに見出すことができる。PG
2がBoc基である場合、保護基は、塩酸またはトリフルオロ酢酸による処理など、酸性条件で除去することができる。
【0063】
化合物S−401の代表的な合成をスキーム4に示す。スキーム4では、化合物KC−8について、R
aはヒドロキシルであり;nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;R
6はアルギニンの側鎖であり;R
7はグリシンの側鎖であり;およびR
8はマロニル基である。
【化8】
【0064】
スキーム4において、化合物S−400は市販の出発物質である。あるいは、化合物S−400は、市販の出発物質および/または従来の合成方法により調製された出発物質を使用して、様々な異なる合成経路を経て合成することができる。
【0065】
スキーム4を参照すると、化合物S−303を化合物S−400と反応させることにより、ペプチドカップリング反応で化合物S−401が形成される。ペプチドカップリング反応は、典型的には従来のペプチドカップリング試薬を用い、典型的にはエチルジイソプロピルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などのトリアルキルアミンの存在下で、従来のカップリング反応条件に基づき行われる。使用に好適なカップリング試薬として、例えば、エチル−3−(3−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などのカルボジイミド類、およびN,N’−カルボニルジイミダゾール、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)などの他の周知されているカップリング試薬が挙げられる。場合により、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAT)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの周知のカップリングプロモーターがこの反応に用いられてもよい。典型的には、このカップリング反応は、約0℃〜約60℃の範囲の温度で約1〜約72時間にわたりTHFまたはDMFなどの不活性希釈剤中で行われる。ある場合には、HATUの存在下で化合物S−303を化合物S−400と反応させて化合物S−401が形成される。
【0066】
場合によってはスキーム4において、R
8が水素として化合物S−400が化合物S−303と反応する場合、アミノ酸カップリング反応後にマロニル基としてのR
8基が付加される。マロニル基は、マロン酸モノ−tert−ブチルとの反応により結合させることができる。マロン酸モノ−tert−ブチルを使用する反応は、活性化試薬、例えば、対称無水物、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)を使用して促進することができる。マロニル基はまた、N−カルボキシメチルマロン酸tert−ブチルエステルを使用して結合させることもできる。
【0067】
引き続きスキーム4を参照すると、R
6部分に存在する保護基などの他の保護基が用いられた場合には、他の保護基の除去が実施され得る。他の保護基を除去するための条件はその保護基のアイデンティティに依存し、当業者には公知である。それらの条件はまた、Greene and Wutsにも見出すことができる。
【0068】
さらなる代表的な合成スキーム
化合物S−503の代表的な合成をスキーム5に示す。スキーム5では、化合物KC−8について、nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;およびPG
1およびPG
2は任意選択のアミノ保護基である。
【化9】
【0069】
スキーム5において、化合物S−500は市販の出発物質である。あるいは、化合物S−500は、市販の出発物質および/または従来の合成方法により調製された出発物質を使用して、様々な異なる合成経路を経て合成してもよい。
【0070】
引き続きスキーム5を参照すると、化合物S−500のアミノ基が保護されて化合物S−501が形成され、ここでPG
1およびPG
2はアミノ保護基である。アミノ保護基は、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Fourth edition,Wiley,New York 2006に見出すことができる。代表的なアミノ保護基として、ホルミル基;アシル基、例えばアセチルなどのアルカノイル基;tert−ブトキシカルボニル(Boc)などのアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などのアリールメトキシカルボニル基;ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)、および1,1−ジ−(4’−メトキシフェニル)メチルなどのアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert−ブチルジメチルシリル(TBS)などのシリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
特定の実施形態では、PG
1およびPG
2はBoc基である。化合物S−501上にBoc基を形成するための条件は、Greene and Wutsに見出すことができる。一つの方法は、化合物S−500のジ−tert−ブチルジカーボネートとの反応である。この反応は、場合により、DMAPなどの活性化剤の存在下で実行されてもよい。
【0072】
引き続きスキーム5を参照すると、化合物S−501上のカルボキシベンジル基が脱保護されて化合物S−502が形成される。カルボキシベンジル基を除去する条件は、Greene and Wutsに見出すことができる。カルボキシベンジル基を除去する方法として、化合物S−501の水素化分解またはHBrによる化合物S−501の処理が挙げられる。カルボキシベンジル基を除去する一つの方法は、化合物S−501の水素およびパラジウムとの反応である。
【0073】
引き続きスキーム5を参照すると、化合物S−502がホスゲンと反応して化合物S−503が形成される。ホスゲンとの反応により、化合物S−502のアミノ基に塩化アシルが形成される。ジホスゲンまたはトリホスゲンなどの他の試薬が、ホスゲンの代わりとして働き得る。
【0074】
化合物S−602の代表的な合成をスキーム6に示す。スキーム6では、化合物KC−8について、R
aはヒドロキシルであり;nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;およびPG
1およびPG
2は任意選択のアミノ保護基である。
【化10】
【0075】
スキーム6において、化合物S−600は市販の出発物質である。あるいは、化合物S−600は、天然材料から半合成的に誘導してもよく、または市販の出発物質および/または従来の合成方法により調製された出発物質を使用して、様々な異なる合成経路を経て合成してもよい。
【0076】
引き続きスキーム6を参照すると、化合物S−600が化合物S−503と反応して化合物S−601が形成される。この反応では、化合物S−600のエノラートが化合物S−503の塩化アシルと反応してカルバメートが形成される。
【0077】
引き続きスキーム6を参照すると、化合物S−601から任意選択の保護基PG
1およびPG
2が除去されて化合物S−602が形成される。アミノ基を除去する条件は、Greene and Wutsに見出すことができる。PG
1および/またはPG
2がBoc基である場合、保護基は、塩酸またはトリフルオロ酢酸による処理など、酸性条件で除去することができる。
【0078】
化合物S−602をスキーム3および4などの上記のスキームで使用して、化合物KC−8を調製することができる。
【0079】
本明細書においてさらに詳細に記載するとおり、本開示物は、本開示物の化合物またはその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体の調製に有用な方法および中間体を提供する。従って、本開示物は、本開示物の化合物の調製方法を提供し、この方法は:
カルバメート形成試薬の存在下で、式:
【化11】
の化合物を、式
【化12】
の化合物と接触させる工程を含み、式中、R
aはヒドロキシルであり;nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;およびPG
1はアミノ保護基である。
【0080】
従って、および本明細書でさらに詳細に記載するとおり、本開示物は、本開示物の化合物の調製方法を提供し、この方法は:
式:
【化13】
の化合物を、式
【化14】
の化合物と接触させる工程を含み、式中、R
aはヒドロキシルであり;nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;R
6はアルギニンの側鎖であり;およびPG
2はアミノ保護基である。
【0081】
従って、および本明細書でさらに詳細に記載するとおり、本開示物は、本開示物の化合物の調製方法を提供し、この方法は:
式:
【化15】
の化合物を、式
【化16】
の化合物と接触させる工程を含み、式中、R
aはヒドロキシルであり;nは3であり;第1および第3のジェミナルなR
1およびR
2は水素であり;第2のジェミナルなR
1およびR
2はメチルであり;R
5はメチルであり;R
6はアルギニンの側鎖であり;R
7はグリシンの側鎖であり;およびR
8はマロニルである。
【0082】
ある場合において、上記の方法は、本開示物の化合物の塩を形成する工程をさらに含み得る。実施形態は本明細書に記載される他の方法に関し;および本明細書に記載される方法のいずれかにより調製された生成物に関する。
【0083】
トリプシンインヒビター
本明細書に開示されるとおり、本開示物はまた、医薬組成物、およびその使用方法も提供し、ここで医薬組成物は、酵素切断後の分子内環化によるオキシコドンの制御放出を提供するプロドラッグである化合物KC−8と、プロドラッグからの酵素仲介性のオキシコドン放出を仲介する酵素と相互作用することによりプロドラッグの酵素切断を減弱させるトリプシンインヒビターとを含んでなる。このような開示物では、トリプシンである酵素が提供される。
【0084】
本明細書で使用する用語「トリプシンインヒビター」は、トリプシンの基質に対する作用を阻害することが可能な任意の因子を指す。用語「トリプシンインヒビター」はまた、トリプシンインヒビターの塩も包含する。トリプシンを阻害する因子の能力は、当該技術分野において周知のアッセイを用いて測定することができる。例えば、典型的なアッセイでは、1単位が、1ベンゾイル−L−アルギニンエチルエステル単位(BAEE−U)だけトリプシン活性を低減するインヒビターの量に対応する。1BAEE−Uは、pH7.6および25℃における253nmの吸光度を1分間あたり0.001だけ増加させる酵素の量である。例えば、K.Ozawa,M.Laskowski,1966,J.Biol.Chem.241,3955およびY.Birk,1976,Meth.Enzymol.45,700を参照のこと。ある場合において、トリプシンインヒビターは、S1ポケットおよびS3/4ポケットなどのトリプシンの活性部位と相互作用することができる。S1ポケットはアスパラギン酸残基を有し、この残基は正に帯電した部分に対して親和性を有する。S3/4ポケットは疎水性ポケットである。本開示物は、特異的トリプシンインヒビターおよび非特異的セリンプロテアーゼインヒビターを提供する。
【0085】
当該技術分野において公知のトリプシンインヒビターは、トリプシンに特異的なインヒビターならびにトリプシンおよびその他のキモトリプシンなどのプロテアーゼを阻害するインヒビターの双方とも、多く存在する。本開示物は、タンパク質、ペプチド、および小分子であるトリプシンインヒビターを提供する。本開示物は、不可逆的インヒビターまたは可逆的インヒビターであるトリプシンインヒビターを提供する。本開示物は、競合的インヒビター、非競合的インヒビター、または不競合的インヒビターであるトリプシンインヒビターを提供する。本開示物は、天然、合成または半合成トリプシンインヒビターを提供する。
【0086】
トリプシンインヒビターは様々な動物または植物供給源から誘導することができる:例えば、ダイズ、トウモロコシ、ライマメおよび他のマメ、カボチャ、ヒマワリ、ウシならびに他の動物の膵臓および肺、ニワトリおよびシチメンチョウの卵白、ダイズベースの調製粉乳、および哺乳動物の血液。トリプシンインヒビターはまた微生物起源であってもよい:例えば、アンチパイン;例えば、H.Umezawa,1976,Meth.Enzymol.45,678を参照のこと。トリプシンインヒビターはまた、アルギニンミミックまたはリジンミミックまたは他の合成化合物:例えばアリールグアニジン、ベンズアミジン、3,4−ジクロロイソクマリン、ジイソプロピルフルオロホスフェート、メシル酸ガベキサート、フェニルメタンスルホニルフルオリド、またはその置換型もしくは類似体であってもよい。特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、クロロケトン部分、アルデヒド部分、またはエポキシド部分などの共有結合的に修飾可能な基を含んでなる。トリプシンインヒビターの他の例は、アプロチニン、カモスタットおよびペンタミジンである。
【0087】
本明細書で使用されるとき、アルギニンまたはリジンミミックとは、トリプシンのP
1ポケットに対する結合能および/またはトリプシン活性部位機能の阻害能を有する化合物である。アルギニンまたはリジンミミックは、切断可能な部分であっても、または切断不可能な部分であってもよい。
【0088】
一実施形態において、トリプシンインヒビターはダイズから誘導される。ダイズ(Glycine max)から誘導されるトリプシンインヒビターは容易に入手可能であり、ヒトが摂取するのに安全であると考えられる。これには、トリプシンを阻害するSBTI、ならびにトリプシンおよびキモトリプシンを阻害するBowman−Birkインヒビターが含まれるが、それらに限定されない。このようなトリプシンインヒビターは、例えばSigma−Aldrich,St.Louis,MO,USAから入手可能である。
【0089】
これらの実施形態に係る医薬組成物が、1つ以上の他のトリプシンインヒビターをさらに含んでなり得ることは理解されるであろう。
【0090】
前述のとおり、トリプシンインヒビターは、アルギニンまたはリジンミミックまたは他の合成化合物であってもよい。特定の実施形態では、トリプシンインヒビターはアルギニンミミックまたはリジンミミックであり、ここでアルギニンミミックまたはリジンミミックは合成化合物である。
【0091】
特定のトリプシンインヒビターは、式:
【化17】
の化合物を含み、式中:
Q
1は−O−Q
4または−Q
4−COOHから選択され、式中Q
4はC
1−C
4アルキルであり;
Q
2はNまたはCHであり;かつ
Q
3はアリールまたは置換アリールである。
【0092】
特定のトリプシンインヒビターは、式:
【化18】
の化合物を含み、式中:
Q
5は−C(O)−COOHまたは−NH−Q
6−Q
7−SO
2−C
6H
5であり、式中
Q
6は−(CH
2)
p−COOHであり;
Q
7は−(CH
2)
r−C
6H
5であり;
Q
8はNHであり;
nは0〜2の数であり;
oは0または1であり;
pは1〜3の整数であり;かつ
rは1〜3の整数である。
【0093】
特定のトリプシンインヒビターは、式:
【化19】
の化合物を含み、式中:
Q
5は−C(O)−COOHまたは−NH−Q
6−Q
7−SO
2−C
6H
5であり、式中
Q
6は−(CH
2)
p−COOHであり;
Q
7は−(CH
2)
r−C
6H
5であり;かつ
pは1〜3の整数であり;かつ
rは1〜3の整数である。
【0094】
特定のトリプシンインヒビターは以下を含む:
【0096】
化合物101、化合物102、化合物103、化合物104、化合物105、化合物107、および化合物108の調製方法の説明が、全体として参照により本明細書に援用される2010年4月22日に公開された国際公開第2010/045599A1号パンフレットに提供される。化合物106、化合物109、および化合物110は、例えばSigma−Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
【0097】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、SBTI、BBSI、化合物101、化合物106、化合物108、化合物109、または化合物110である。特定の実施形態では、トリプシンインヒビターはカモスタットである。
【0098】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは式T−I:
【化20】
の化合物であって、式中、
Aは、以下の式の群を表し:
【化21】
R
t9およびR
t10は、各々が独立して水素原子またはC
1−4アルキル基を表し、
R
t8は、以下の式から選択される群を表し:
【化22】
式中、R
t11、R
t12およびR
t13は、各々が独立して、
(1)水素原子、
(2)フェニル基、
(3)フェニル基により置換されたC
1−4アルキル基、
(4)C
1−10アルキル基、
(5)C
1−10アルコキシル基、
(6)1〜3個の二重結合を有するC
2−10アルケニル基、
(7)1〜2個の三重結合を有するC
2−10アルキニル基、
(8)式:R
t15−C(O)XR
t16の群、
式中、R
t15は単結合またはC
1−8アルキレン基を表し、
Xは酸素原子またはNH基を表し、かつ
R
t16は、水素原子、C
1−4アルキル基、フェニル基またはフェニル基により置換されたC
1−4アルキル基を表す、または
(9)C
3−7シクロアルキル基;
を表し、
構造
【化23】
は、1〜2個の窒素原子または酸素原子を含む4〜7員単環式へテロ環を表し、
R
t14は、水素原子、フェニル基により置換されたC
1−4アルキル基または式:COOR
t17の群を表し、式中R
t17は、水素原子、C
1−4アルキル基またはフェニル基により置換されたC
1−4アルキル基を表し;
ただし、R
t11、R
t12およびR
t13が同時に水素原子を表すことはない、化合物
またはその非毒性の塩、酸付加塩もしくは水和物である。
【0099】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、以下から選択される化合物である:
【化24】
【0100】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、式T−II:
【化25】
の化合物であり、式中、
XはNHであり;
Nは0または1であり;かつ
R
t1は、水素、ハロゲン、ニトロ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アシル、アミノアシル、グアニジン、アミジノ、カルバミド、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、シアノおよび−(CH
2)
m−C(O)−O−(CH
2)
m−C(O)−N−R
n1R
n2から選択され、ここで各mは独立して0〜2であり;かつ;R
n1およびR
n2は、水素およびC
1−4アルキルから独立して選択される。
【0101】
特定の実施形態では、式T−IIにおいてR
t1は、グアニジノまたはアミジノである。
【0102】
特定の実施形態では、式T−IIにおいてR
t1は、−(CH
2)
m−C(O)−O−(CH
2)
m−C(O)−N−R
n1R
n2であり、ここでmは1であり、かつR
n1およびR
n2はメチルである。
【0103】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは式T−III:
【化26】
の化合物であり、式中、
XはNHであり;
nは0または1であり;L
t1は、−C(O)−O−;−O−C(O)−;−O−(CH
2)
m−O−;−OCH
2−Ar
t2−CH
2O−;−C(O)−NR
t3−;および−NR
t3−C(O)−から選択され;
R
t3は、水素、C
1−6アルキル、および置換C
1−6アルキルから選択され;
Ar
t1およびAr
t2は、独立して置換または非置換アリール基であり;
mは1〜3の数であり;かつ
R
t2は、水素、ハロゲン、ニトロ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アシル、アミノアシル、グアニジン、アミジノ、カルバミド、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、シアノおよび−(CH
2)
m−C(O)−O−(CH
2)
m−C(O)−N−R
n1R
n2から選択され、ここで各mは、独立して0〜2であり;かつR
n1およびR
n2は、水素およびC
1−4アルキルから独立して選択される。
【0104】
特定の実施形態では、式T−IIIにおいて、R
t2はグアニジノまたはアミジノである。
【0105】
特定の実施形態では、式T−IIIにおいて、R
t2は、−(CH
2)
m−C(O)−O−(CH
2)
m−C(O)−N−R
n1R
n2であり、ここでmは1であり、かつR
n1およびR
n2はメチルである。
【0106】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、式T−IV:
【化27】
の化合物であり、式中、
各XはNHであり;
各nは、独立して、0または1であり;L
t1は、−C(O)−O−;−O−C(O)−;−O−(CH
2)
m−O−;−OCH
2−Ar
t2−CH
2O−;−C(O)−NR
t3−;および−NR
t3−C(O)−から選択され;
R
t3は、水素、C
1−6アルキル、および置換C
1−6アルキルから選択され;
Ar
t1およびAr
t2は、独立して、置換または非置換アリール基であり;かつ
mは1〜3の数である。
【0107】
特定の実施形態では、式T−IVにおいて、Ar
t1またはAr
t2はフェニルである。
【0108】
特定の実施形態では、式T−IVにおいて、Ar
t1またはAr
t2はナフチルである。
【0109】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは化合物109である。
【0110】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは
【化28】
である。
【0111】
特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは化合物110またはそのビス−アリールアミジンバリアントである;例えば、J.D.Geratz,M.C.−F.Cheng and R.R.Tidwell(1976) J Med.Chem.19,634−639を参照のこと。
【0112】
本発明はまた、化合物KC−8と組み合わせて使用することによりプロドラッグからのオキシコドンの放出を減弱させることのできるタンパク同化に関わる他の酵素のインヒビターも含むことが理解されるべきである。
【0113】
プロドラッグとトリプシンインヒビターとの組み合わせ
上記に考察されるとおり、本開示物は、トリプシンインヒビターと、切断されるとオキシコドンの放出を促進するトリプシン切断可能部分を含んでなるプロモイエティを含んでなるケトン修飾オキシコドンプロドラッグである化合物KC−8とを含んでなる医薬組成物を提供する。化合物KC−8とトリプシンインヒビターとを含有する組成物の例を以下に記載する。
【0114】
本実施形態は、式T−I〜T−IVの化合物および化合物KC−8、またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供する。本実施形態は、化合物109および化合物KC−8、またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0115】
特定の実施形態は、化合物KC−8とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここでトリプシンインヒビターは以下の表に示される。
【0117】
化合物KC−8と他の薬物との組み合わせ
本開示物は、医薬組成物中に含まれる化合物KC−8とさらなるプロドラッグまたは薬物とを提供する。このようなプロドラッグまたは薬物は、さらなる鎮痛または他の利益を提供し得る。例として、オピオイド、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)および他の鎮痛薬が挙げられる。一実施形態では、化合物KC−8が、オピオイド拮抗プロドラッグまたは薬物と組み合わされ得る。他の例として、鎮痛以外の、または鎮痛に加えて利益を有する薬物またはプロドラッグが挙げられる。本実施形態は、化合物KC−8およびアセトアミノフェン、またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0118】
このような組成物はまた、トリプシンインヒビターも含んでなることができる。特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、SBTI、BBSI、化合物101、化合物106、化合物108、化合物109、および化合物110から選択される。特定の実施形態では、トリプシンインヒビターは化合物109である。特定の実施形態では、トリプシンインヒビターはカモスタットである。
【0119】
特定の実施形態では、医薬組成物は、化合物KC−8と、非オピオイド薬物と、少なくとも1つのオピオイドまたはオピオイドプロドラッグとを含んでなり得る。
【0120】
医薬組成物および使用方法
本明細書に開示されるとおり、本実施形態は、化合物KC−8、N−1−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン]−アルギニン−グリシン−マロン酸を含んでなる組成物を提供する。本実施形態に従う医薬組成物は、薬学的に許容できるキャリアをさらに含んでなり得る。組成物は、例えば、錠剤、カプセル、薄フィルム、粉末、懸濁液、溶液、シロップ、分散液またはエマルジョンとして経口(バッカルおよび舌下を含む)投与に適切な形態で簡便に製剤化される。組成物は、製剤における従来の成分、例えば、1つ以上のキャリア、結合剤、潤滑剤、賦形剤(例えば、制御放出の特徴を付与するため)、pH調整剤、甘味剤、充填剤、着色剤またはさらなる活性薬剤を含有することができる。
【0121】
患者は、ヒトであっても、また他の哺乳動物、例えば、家畜、動物園の動物、ならびにネコ、イヌまたはウマなどの伴侶動物であってもよい。
【0122】
別の態様において、本実施形態は、疼痛の治療に使用される上記のとおりの医薬組成物を提供する。本実施形態に係る医薬組成物は、例えば、疼痛を患う、または疼痛を患うリスクがある患者の治療において有用である。従って、本開示物は、対象において疼痛を治療または予防する方法を提供し、この方法は、本開示物の組成物を対象に投与する工程を含む。本開示物は、治療もしくは予防において使用される、または医薬品として使用される本開示物の組成物を提供する。本開示物はまた、医薬品を製造するための、特に疼痛の治療用または予防用医薬品を製造するための本開示物の組成物の使用も提供する。
【0123】
本開示物の組成物は、限定はされないが、急性痛、慢性痛、神経因性疼痛、急性外傷痛、関節炎痛、骨関節炎痛、関節リウマチ痛、筋肉骨格痛、口腔外科術後痛、歯痛、筋筋膜痛、癌性疼痛、内臓痛、糖尿病性疼痛、筋肉痛、ヘルペス後神経痛、慢性骨盤痛、子宮内膜症痛、骨盤内炎症性疼痛および分娩関連疼痛を含む疼痛の治療または予防において使用することができる。急性痛として、急性外傷痛または術後痛が挙げられるが、これらに限定はされない。慢性痛として、神経因性疼痛、関節炎痛、骨関節炎痛、関節リウマチ痛、筋肉骨格痛、歯痛、筋筋膜痛、癌性疼痛、糖尿病性疼痛、内臓痛、筋肉痛、ヘルペス後神経痛、慢性骨盤痛、子宮内膜症痛、骨盤内炎症性疼痛および背痛が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0124】
本開示物はまた、疼痛の治療における化合物KC−8の使用も提供する。本開示物はまた、疼痛の予防における化合物KC−8の使用も提供する。
【0125】
本開示物は、疼痛の治療用医薬品の製造における化合物KC−8の使用を提供する。本開示物は、疼痛の予防用医薬品の製造における化合物KC−8の使用を提供する。
【0126】
別の態様において、本実施形態は、必要とする患者において疼痛を治療する方法を提供し、この方法は、上記のとおりの医薬組成物の有効量を投与する工程を含んでなる。別の態様において、本実施形態は、必要とする患者において疼痛を予防する方法を提供し、この方法は、上記のとおりの医薬組成物の有効量を投与する工程を含んでなる。
【0127】
本明細書に開示される組成物が患者に投与されて有効となる(即ち、疼痛の治療または予防に有効であるのに十分なオキシコドンの血中濃度を提供する)ための量は、特定の組成物のバイオアベイラビリティ、特定の組成物の消化管における酵素活性化に対する感受性、ならびに患者の人種、年齢、体重、性別および状態、投与方法および処方医師の判断などの他の要因に依存し得る。組成物がトリプシンインヒビターも含んでなる場合、患者に投与されるべき本明細書に開示される組成物の量は、組成物中に存在するトリプシンインヒビターの量および効力にも依存し得る。一般に、組成物用量は、化合物KC−8がプロドラッグ0.01ミリグラム毎キログラム体重〜プロドラッグ20ミリグラム毎キログラム(mg/kg)体重の範囲であるような用量であってもよい。例えば、化合物KC−8を含んでなる組成物は、0.02〜0.5mg/kg体重または0.01mg/kg〜10mg/kg体重または0.01〜2mg/kg体重の範囲の遊離オキシコドンを投与するのと等価な用量で投与することができる。一実施形態において、組成物は、血中で達成されるオキシコドンのレベルが0.5ng/ml〜10ng/mlの範囲であるような用量で投与することができる。
【0128】
上記に開示されるとおり、本開示物はまた、トリプシンインヒビターと、切断されるとオキシコドンの放出を促進するトリプシン切断可能部分を含んでなるプロモイエティを含んでなるフェノール修飾オキシコドンプロドラッグである化合物KC−8とを含んでなる医薬組成物も提供する。このような医薬組成物では、トリプシンインヒビターが患者に投与されて有効となる(即ち、化合物KC−8単独での投与がオキシコドンの過剰曝露をもたらし得る場合にオキシコドンの放出が減弱される)ための量は、化合物KC−8の有効用量および特定のトリプシンインヒビターの効力、ならびに患者の人種、年齢、体重、性別および状態、投与方法および処方医師の判断などの他の要因に依存し得る。一般に、トリプシンインヒビターの用量は、1mgの化合物KC−8あたり0.05mg〜50mgの範囲であってもよい。特定の実施形態では、トリプシンインヒビターの用量は、1mgの化合物KC−8あたり0.001mg〜50mgの範囲であってもよい。一実施形態において、トリプシンインヒビターの用量は、1マイクロモルの化合物KC−8あたり0.01ナノモル〜100マイクロモルの範囲であってもよい。
【0129】
所望の薬物動態プロファイルを有するプロドラッグ化合物KC−8およびトリプシンインヒビターの用量単位の代表的な実施形態
本実施形態は、(a)トリプシン切断可能部分を含んでなるプロモイエティにエノール酸素を介して共有結合したオキシコドンを含んでなるプロドラッグであって、トリプシンによるトリプシン切断可能部分の切断がオキシコドンの放出を仲介し、プロドラッグが化合物KC−8である、プロドラッグと(b)組成物の摂取後にプロドラッグからのオキシコドンの酵素制御放出を仲介するトリプシンと相互作用するトリプシンインヒビターとを含んでなる組成物を含む。
【0130】
本実施形態は、ケトン修飾プロドラッグである化合物KC−8と、トリプシンインヒビターとを含んでなる組成物、例えば医薬組成物を含んでなる用量単位を含み、ここで化合物KC−8およびトリプシンインヒビターは、摂取後に予め選択された薬物動態(PK)プロファイルをもたらすのに有効な量で用量単位中に存在する。さらなる実施形態において、予め選択されたPKプロファイルは、インヒビターの非存在下で等価投薬量の化合物KC−8を摂取した後に放出されるオキシコドンのPKパラメータ値より低い少なくとも1つのPKパラメータ値を含んでなる。さらなる実施形態において、PKパラメータ値は、オキシコドンCmax値、オキシコドン曝露値、および(1/オキシコドンTmax)値から選択される。
【0131】
特定の実施形態では、用量単位は、少なくとも2用量単位を摂取した後に予め選択されたPKプロファイルをもたらす。関連する実施形態において、そのような用量単位の予め選択されたPKプロファイルは、インヒビターなしに等価投薬量の化合物KC−8を摂取した後のPKプロファイルと比べて改変される。関連する実施形態において、そのような用量単位は、漸増数の用量単位の摂取により線形性のPKプロファイルがもたらされることを提供する。関連する実施形態において、そのような用量単位は、漸増数の用量単位の摂取により非線形性のPKプロファイルがもたらされることを提供する。関連する実施形態において、そのような用量単位のPKプロファイルのPKパラメータ値は、オキシコドンCmax値、(1/オキシコドンTmax)値、およびオキシコドン曝露値から選択される。
【0132】
本実施形態は、患者を治療する方法を含み、この方法は、本明細書に記載される化合物KC−8とトリプシンインヒビターとを含んでなる組成物、例えば医薬組成物、または用量単位のいずれかを、それを必要とする患者に投与する工程を含んでなる。本実施形態は、治療法の副作用を低減する方法を含み、この方法は、本明細書に記載されるそのような組成物、例えば医薬組成物、または用量単位のいずれかを、それを必要とする患者に投与する工程を含んでなる。本実施形態は、臨床医により処方された治療法に関する患者コンプライアンスを向上させる方法を含み、この方法は、本明細書に記載されるそのような組成物、例えば医薬組成物、または用量単位のいずれかの、それを必要とする患者への投与を指示する工程を含んでなる。この実施形態は、インヒビターを伴うプロドラッグと比較したときの、インヒビターを伴わず薬物を使用するおよび/またはプロドラッグを使用する処方の治療法に関する患者コンプライアンスの向上をもたらすことができる。
【0133】
本実施形態は、オキシコドンの偶発的過量服用のリスクを低減する方法を含み、この方法は、本明細書に記載されるそのような組成物、例えば医薬組成物、または用量単位のいずれかの、治療を必要とする患者への投与を指示する工程を含んでなる。
【0134】
本実施形態は、用量単位を作製する方法を含み、この方法は、化合物KC−8とトリプシンインヒビターとを用量単位に組み合わせる工程を含んでなり、ここで化合物KC−8およびトリプシンインヒビターは、化合物KC−8からのオキシコドンの放出を減弱させるのに有効な量で用量単位中に存在する。
【0135】
本実施形態は、複数用量単位の化合物KC−8の誤用または乱用を防止する方法を含み、この方法は、化合物KC−8とトリプシンインヒビターとを用量単位に組み合わせる工程を含んでなり、ここで化合物KC−8およびトリプシンインヒビターは、患者が複数の用量単位を摂取しても比例したオキシコドン放出をもたらさないように化合物KC−8からのオキシコドンの放出を減弱させるのに有効な量で用量単位中に存在する。さらなる実施形態において、薬物の放出は、インヒビターの非存在下での等価投薬量のプロドラッグによる薬物の放出と比較して減少する。
【0136】
一実施形態は、用量単位に製剤化するのに好適なトリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8を同定する方法である。この方法は、例えば、インビトロアッセイ、インビボアッセイ、またはエキソビボアッセイとして実施することができる。
【0137】
本実施形態は、用量単位に製剤化するのに好適なトリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8を同定する方法を含み、この方法は、プロドラッグ化合物KC−8とトリプシンインヒビターとトリプシンとを反応混合物に組み合わせる工程と、プロドラッグ変換を検出する工程とを含んでなり、トリプシンインヒビターの非存在下でのプロドラッグ変換と比較したときのトリプシンインヒビターの存在下でのプロドラッグ変換の減少は、そのトリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8が用量単位に製剤化するのに好適であることを示す。
【0138】
本実施形態は、用量単位に製剤化するのに好適なトリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8を同定する方法を含み、この方法は、トリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8を動物に投与する工程と、プロドラッグ変換を検出する工程とを含んでなり、トリプシンインヒビターの非存在下でのオキシコドン変換と比較したときのトリプシンインヒビターの存在下でのオキシコドン変換の減少は、そのトリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8が用量単位に製剤化するのに好適であることを示す。特定の実施形態では、投与する工程は、選択された一定用量のプロドラッグと同時投与される漸増用量のインヒビターを動物に投与する工程を含んでなる。プロドラッグ変換を検出する工程は、予め選択された薬物動態(PK)プロファイルをもたらすインヒビターの用量およびプロドラッグの用量の同定を促進し得る。この方法は、例えば、インビボアッセイまたはエキソビボアッセイとして実施することができる。
【0139】
本実施形態は、用量単位に製剤化するのに好適なトリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8を同定する方法を含み、この方法は、トリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8を動物組織に投与する工程と、プロドラッグ変換を検出する工程とを含んでなり、トリプシンインヒビターの非存在下でのプロドラッグ変換と比較したときのトリプシンインヒビターの存在下でのプロドラッグ変換の減少は、そのトリプシンインヒビターおよびプロドラッグ化合物KC−8が用量単位に製剤化するのに好適であることを示す。
【0140】
所望の薬物動態プロファイルを有するプロドラッグ化合物KC−8およびトリプシンインヒビターの用量単位
本開示物は、所望の薬物動態(PK)プロファイルを提供することができるプロドラッグおよびインヒビターの用量単位を提供する。用量単位は、本明細書に開示されるとおりの基準PKプロファイルと比較して改変されたPKプロファイルを提供することができる。改変PKプロファイルが改変された薬力学的(PD)プロファイルをもたらし得ることは理解されるであろう。そのような用量単位の複数の摂取もまた、所望のPKプロファイルを提供し得る。
【0141】
特に具体的に明記されない限り、本明細書において使用される「用量単位」は、トリプシン切断可能なプロドラッグとトリプシンインヒビターとの組み合わせを指す。「単一用量単位」は、トリプシン切断可能なプロドラッグとトリプシンインヒビターとの組み合わせの単一の単位であり、ここで単一用量単位は薬物の治療有効量(即ち、治療効果を生じさせるのに十分な量の薬物、例えば、それぞれの薬物の治療ウィンドウ、即ち治療域の範囲内の用量)を提供する。「複数用量単位(multiple dose units)」または「複数の用量単位(multiples of a dose unit)」またはある「複数の用量単位(multiple of a dose unit)」は、少なくとも2つの単一用量単位を指す。
【0142】
本明細書で使用されるとき、「PKプロファイル」は、血中または血漿中における薬物濃度のプロファイルを指す。そのようなプロファイルは、時間に対する薬物濃度の関係(即ち、「濃度−時間PKプロファイル」)または薬物濃度の摂取用量数に対する関係(即ち、「濃度−用量PKプロファイル」)であり得る。PKプロファイルはPKパラメータにより特徴付けられる。
【0143】
本明細書で使用されるとき、「PKパラメータ」は、血中または血漿中における薬物濃度の尺度を指し、例えば:1)「薬物Cmax」、血中または血漿中で達成される薬物の最高濃度;2)「薬物Tmax」、摂取後Cmaxに達するまでの経過時間;および3)「薬物曝露量」、特定の期間にわたり血中または血漿中に存在する薬物の総濃度(これは特定の期間(t)にわたる薬物放出の経時変化の曲線下面積(AUC)を使用して計測することができる)である。1つ以上のPKパラメータを改変することにより改変されたPKプロファイルがもたらされる。
【0144】
本開示物の用量単位の特徴を説明するため、PKプロファイルを定義する「PKパラメータ値」は、薬物Cmax(例えば、オキシコドンCmax)、全薬物曝露量(例えば、曲線下面積)(例えば、オキシコドン曝露量)および1/(薬物Tmax)(1/Tmaxの低下が基準Tmaxに対するTmaxの遅延を示すように)(例えば、1/オキシコドンTmax)を含む。従って基準PKパラメータ値に対するPKパラメータ値の低下は、例えば、薬物Cmaxの低下、薬物曝露量の低下、および/またはTmaxの遅延を示し得る。
【0145】
本開示物の用量単位は、改変PKプロファイル、例えば、インヒビターの非存在下で(即ち、インヒビターなしで)所与の用量のプロドラッグを投与することにより達成されるものと異なるPKプロファイルを提供するように適合され得る。例えば用量単位は、同じ量だがインヒビターが存在しない場合のプロドラッグ用量の摂取と比較して、薬物Cmaxの低下、薬物Tmaxの遅延および/または薬物曝露量の低下のうちの少なくとも1つをもたらし得る。このような改変は、用量単位にインヒビターを含めることによるものである。
【0146】
本明細書で使用されるとき、「薬力学的(PD)プロファイル」は、患者(または対象または使用者)における薬物の効力のプロファイルを指し、これはPDパラメータにより特徴付けられる。「PDパラメータ」には、「薬物Emax」(最大薬物効力)、「薬物EC50」(Emaxの50%での薬物濃度)、および副作用が含まれる。
【0147】
図1は、一定用量のプロドラッグについての、インヒビター濃度の増加がPKパラメータ薬物Cmaxに対して及ぼす影響の例を示す概略図である。低濃度のインヒビターでは、薬物Cmax(Y軸)のインヒビター濃度(X軸)に対するプロットのプラトー部分により示されるとおり、薬物放出に対する検出可能な影響はないこともある。インヒビター濃度が上昇すると、プロドラッグからの薬物放出が減弱される濃度に達して薬物Cmaxが低下し、または抑制される。従って、本開示物の用量単位についてのインヒビターのプロドラッグPKパラメータに対する影響は、検出不能から中程度、完全阻害(即ち、検出可能な薬物の放出がない)までの範囲をとり得る。
【0148】
用量単位は、単一用量の摂取後に所望のPKプロファイル(例えば、濃度−時間PKプロファイル)をもたらすように適合され得る。用量単位は、複数用量単位(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4またはそれ以上の用量単位)の摂取後に所望のPKプロファイル(例えば、濃度−用量PKプロファイル)を提供するように適合され得る。
【0149】
改変PKプロファイルを提供する用量単位
用量単位におけるプロドラッグとインヒビターとの組み合わせは、単一用量の摂取後に所望の(または「予め選択された」)PKプロファイル(例えば、濃度−時間PKプロファイル)を提供することができる。そのような用量単位のPKプロファイルは、予め選択された薬物Cmax、予め選択された薬物Tmaxまたは予め選択された薬物曝露量のうちの1つ以上により特徴付けることができる。用量単位のPKプロファイルは、インヒビターの非存在下でプロドラッグの等価投薬量(即ち、インヒビターを欠いていることを除いては用量単位と同じである用量)により達成されるPKプロファイルと比較して改変されたものであり得る。
【0150】
改変PKプロファイルは、基準PKパラメータ値(例えば、インヒビターを含まないことを除き用量単位と等価なプロドラッグ投薬量を摂取した後のPKプロファイルのPKパラメータ値)と比べて低下したPKパラメータ値を有し得る。例えば用量単位は、薬物Cmaxの低下、薬物曝露量の低下、および/または薬物Tmaxの遅延をもたらすことができる。
【0151】
図2は、単一用量単位の改変濃度−時間PKプロファイルの例を示す概略的なグラフを提示する。パネルAは、インヒビターの非存在下または存在下におけるプロドラッグの摂取からある期間(X軸)経った後の血中または血漿中薬物濃度(Y軸)の概略図である。パネルAにおける上側の実線は、インヒビターなしでプロドラッグを摂取した後の薬物濃度の例を提供する。パネルAにおける下側の破線は、同じ用量のプロドラッグをインヒビターと共に摂取した後の薬物濃度を表す。インヒビターをプロドラッグと共に摂取すると、インヒビターの非存在下で同量のプロドラッグを摂取して得られる薬物Cmaxと比べ、薬物Cmaxの低下がもたらされる。パネルAはまた、プロドラッグをインヒビターと共に摂取した後の全薬物曝露量もまた、インヒビターを伴わない同量のプロドラッグの摂取と比べて低下することも示す。
【0152】
図2のパネルBは、改変濃度−時間PKプロファイルを有する用量単位の別の例を提供する。パネルAと同じく、上側の実線が、インヒビターなしにプロドラッグを摂取した後の経時的な血中または血漿中薬物濃度を表し、一方、下側の破線が、同量のプロドラッグをインヒビターと共に摂取した後の薬物濃度を表す。この例では、用量単位は、薬物Cmaxの低下、薬物曝露量の低下、および薬物Tmaxの遅延(即ち、インヒビターを伴わない同用量のプロドラッグの摂取と比べたときの(1/薬物Tmax)の低下)を有するPKプロファイルを提供する。
【0153】
図2のパネルCは、改変濃度−時間PKプロファイルを有する用量単位の別の例を提供する。パネルAと同じく、実線が、インヒビターなしにプロドラッグを摂取した後の経時的な血中または血漿中薬物濃度を表し、一方、破線が、同量のプロドラッグをインヒビターと共に摂取した後の薬物濃度を表す。この例では、用量単位は、薬物Tmaxの遅延(即ち、インヒビターを伴わない同用量のプロドラッグの摂取と比べたときの(1/薬物Tmax)の低下)を有するPKプロファイルを提供する。
【0154】
改変されたPKプロファイル(例えば、薬物のPKプロファイルまたはインヒビターを伴わないプロドラッグのPKプロファイルと比較したときの薬物Cmaxの低下および/または薬物Tmaxの遅延)をもたらす用量単位は、患者の必要性に合わせた薬物用量の調整(例えば、特定の用量単位の選択および/または投薬レジメンの選択による)、副作用の低減、および/または患者コンプライアンスの向上(薬物またはインヒビターを伴わないプロドラッグに関連する副作用または患者コンプライアンスと比較したとき)に利用が見出される。本明細書で使用されるとき、「患者コンプライアンス」は、処方された用量を著しく上回ることも、または著しく下回ることもない用量の摂取を含め、患者が臨床医(例えば、医師)の指示に従うかどうかを指す。かかる用量単位はまた、患者による誤用、乱用または過量服用のリスクを、薬物またはインヒビターを伴わないプロドラッグに関連するそのようなリスクと比較して低減する。例えば、薬物Cmaxが低下した用量単位は、摂取に対する報酬が、同量の薬物、および/またはインヒビターを伴わない同量のプロドラッグの用量がもたらす報酬と比べて少ない。
【0155】
複数用量単位の摂取時に改変PKプロファイルを提供する用量単位
本開示物の用量単位は、複数の用量単位(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、またはそれ以上の用量単位)を摂取した後に所望のPKプロファイル(例えば、濃度−時間PKプロファイルまたは濃度−用量PKプロファイル)をもたらすように適合され得る。濃度−用量PKプロファイルは、選択されたPKパラメータと摂取される単一用量単位の数との間の関係を指す。このプロファイルは用量に比例して線形(線形性のPKプロファイル)または非線形(非線形性のPKプロファイル)であり得る。改変濃度−用量PKプロファイルは、単一用量単位中に含まれるプロドラッグとインヒビターとの相対量を調整することにより、および/または異なるプロドラッグおよび/またはインヒビターを使用することにより、提供することができる。
【0156】
図3は、本開示物の用量単位(X軸)を複数摂取することにより提供され得る濃度−用量PKプロファイル(薬物Cmaxにより例示される、Y軸)の例の概略図を提供する。各プロファイルは、漸増用量の薬物単独によって提供される濃度−用量PKプロファイルと比較することができ、ここでは1用量による血中または血漿中薬物量が、本開示物の1用量単位によって血中または血漿中に放出される薬物量と等価な治療有効量に相当する。このような「薬物単独」PKプロファイルは、典型的には用量に比例し、45度の正の直線の傾きを有する。また、本開示物の用量単位を複数摂取して得られる濃度−用量PKプロファイルはまた、他の基準、例えばインヒビターなしでプロドラッグの漸増用量数を摂取することにより提供される濃度−用量PKプロファイルと比較してもよいことも理解されるべきであり、ここでは、インヒビターの非存在下で単一用量のプロドラッグにより血中または血漿中に放出される薬物量が、本開示物の1用量単位によって血中または血漿中に放出される薬物量と等価な治療有効量に相当する。
【0157】
図1におけるプロドラッグおよびインヒビター濃度間の関係によって示されるとおり、用量単位はインヒビターを、摂取後の薬物放出に検出可能な影響を及ぼすことのない量で含むことができる。そのような用量単位の複数の摂取により、例えば漸増量のプロドラッグ単独の用量比例性PKプロファイルと同様の、摂取される用量単位数とPKパラメータ値との間の関係が正の傾きの直線となるような濃度−用量PKプロファイルを提供することができる。
図3のパネルAがそのようなプロファイルを示す。プロドラッグ単独のプロファイルと比較して、インビボでそのような薬物Cmaxの変化を検出不能な濃度−用量PKプロファイルを提供する用量単位は、酵素切断可能なプロドラッグのそのそれぞれの酵素によるインビトロでの切断を低減または防止するのに十分なインヒビターを有する用量単位からのプロドラッグの酵素変換を妨げることに利用が見出され得る。
【0158】
図3のパネルBは、摂取される用量単位数とPKパラメータ値との間の関係が正の傾きの直線となるような濃度−用量PKプロファイルを表し、ここでこのプロファイルはパネルAと比べて小さい傾きを呈する。この用量単位は、用量比例性を呈する基準PKパラメータ値と比べて低下したPKパラメータ値(例えば、薬物Cmax)を有するプロファイルを提供する。
【0159】
複数の用量単位を摂取した後の濃度−用量PKプロファイルは非線形性であってもよい。
図3のパネルCは、非線形性で二相性の濃度−用量PKプロファイルを表す。この例では、二相性の濃度−用量PKプロファイルは第1の相を含み、この相にわたっては濃度−用量PKプロファイルは正の上昇を有し、次に第2の相を含み、この相にわたっては摂取される用量単位数とPKパラメータ値(例えば、薬物Cmax)との間の関係は比較的平坦(実質的に傾きがゼロの直線)である。このような用量単位について、例えば、薬物Cmaxは選択された用量単位数(例えば、2、3、または4用量単位)に対しては増加し得る。しかしながらそれ以上の用量単位を摂取しても、薬物Cmaxの大幅な上昇はもたらされない。
【0160】
図3のパネルDは、非線形性で二相性の濃度−用量PKプロファイルの別の例を表す。この例では、二相性の濃度−用量PKプロファイルは、濃度−用量PKプロファイルが正の上昇を有する第1の相と、摂取される用量単位数とPKパラメータ値(例えば、薬物Cmax)との間の関係が下降する第2の相とにより特徴付けられる。この濃度−用量PKプロファイルを提供する用量単位は、選択された数の摂取用量単位(例えば、2、3、または4用量単位)に対しては薬物Cmaxの増加をもたらす。しかしながら、それ以上の用量単位を摂取しても、薬物Cmaxの大幅な上昇はもたらされず、むしろ薬物Cmaxの低下がもたらされる。
【0161】
図3のパネルEは、摂取される用量単位数とPKパラメータ(例えば、薬物Cmax)との間の関係が、傾きがゼロの直線である濃度−用量PKプロファイルを表す。このような用量単位は、複数の用量単位の摂取によっても薬物Cmaxの大幅な上昇または低下はもたらされない。
【0162】
図3のパネルFは、摂取される用量単位数とPKパラメータ値(例えば、薬物Cmax)との間の関係が負の傾きの直線である濃度−用量PKプロファイルを表す。従って摂取する用量単位数が増加するほど薬物Cmaxは低下する。
【0163】
複数の用量単位が摂取されたときに濃度−用量PKプロファイルを提供する用量単位は、過量服用、誤用、または乱用のリスクを低減する一方で治療レベルの薬物放出を提供するように投薬レジメンを調整することに利用が見出される。このようなリスクの低減は、基準、例えば薬物単独またはプロドラッグ単独での投与と比較することができる。一実施形態では、比例性の濃度−用量PKプロファイルを提供する薬物またはプロドラッグの投与と比較してリスクが低減される。濃度−用量PKプロファイルを提供する用量単位は、処方投薬量を上回る用量単位を不注意に摂取することによる患者の過量服用のリスクを低減することができる。このような用量単位は、患者の誤用(例えば、セルフメディケーションによる)のリスクを低減することができる。このような用量単位は、複数用量単位を意図的に摂取することによる乱用を抑止することができる。例えば、二相性の濃度−用量PKプロファイルをもたらす用量単位は、限られた数の摂取用量単位については薬物放出の増加を許容し得るが、その後さらなる用量単位を摂取しても、薬物放出の増加は実現されない。別の例において、傾きがゼロの濃度−用量PKプロファイルをもたらす用量単位では、摂取される用量単位数にかかわらず同様の薬物放出プロファイルを維持することが可能となり得る。
【0164】
複数の用量単位の摂取は、例えば、選択された数(例えば、2、3、4またはそれ以上)の単一用量単位の摂取により、インヒビターの非存在下での同じ数の用量の摂取と比較してPKパラメータ値の低下がもたらされるように、インヒビターの非存在下で同じ用量の複数を(薬物単独として、あるいはプロドラッグとして)摂取する場合と比べてPKパラメータ値の調整を提供することができる。
【0165】
医薬組成物には、治療化合物がGI管で分解されないよう保護を提供するインヒビターを有するものが含まれる。インヒビターを薬物(即ち、プロドラッグでない)と組み合わせることにより、薬物がGI系で分解されないよう保護をもたらすことができる。この例では、インヒビターと薬物との組成物が、PKパラメータを増加させることによって改変PKプロファイルをもたらす。インヒビターはまた、GI酵素によって分解され易く、かつGI管外に作用部位を有するプロドラッグと組み合わせてもよい。この組成物では、インヒビターは摂取されたプロドラッグを、それがGI管外に分布して所望の作用部位で切断されるまでのGI管内で保護する。
【0166】
用量単位中のプロドラッグとインヒビターとの相対量を確定するために用いられる方法
所望のPKプロファイル、例えば所望の濃度−時間PKプロファイルおよび/または所望の濃度−用量PKプロファイルをもたらす用量単位は、プロドラッグとインヒビターとを、患者が摂取した後に所望の薬物PKプロファイルをもたらす薬物の放出を提供するのに有効な相対量で用量単位中に組み合わせることにより作製され得る。
【0167】
プロドラッグは、プロドラッグのトリプシン仲介性薬物放出能力を決定することにより、用量単位中での使用に好適なものとして選択することができる。これは、インビトロ、インビボまたはエキソビボで達成することができる。
【0168】
インビトロアッセイは、プロドラッグをトリプシンと反応混合物に組み合わせることにより行われ得る。トリプシンは、プロドラッグの切断を触媒するのに十分な量で反応混合物中に提供され得る。アッセイは好適な条件下で行われ、場合により、対象、例えばヒトのGI管内に認められる条件を模倣する条件下であってもよい。「プロドラッグ変換」は、プロドラッグからの薬物の放出を指す。プロドラッグ変換は、プロドラッグ変換の生成物(例えば、放出された薬物)のレベルを検出することにより、および/またはトリプシンの存在下で維持されるプロドラッグのレベルを検出することにより評価することができる。プロドラッグ変換はまた、プロドラッグ変換の生成物が生じる速度、またはプロドラッグが消失する速度を検出することによっても評価することができる。放出薬物の増加、またはプロドラッグの減少は、プロドラッグ変換が起こったことを示す。許容できる期間内にトリプシンの存在下で許容できるレベルのプロドラッグ変換を呈するプロドラッグが、トリプシンインヒビターと組み合わせて用量単位中に使用するのに好適である。
【0169】
インビボアッセイは、プロドラッグを動物(例えば、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、ラット、イヌ、ブタ等)に投与することにより、そのプロドラッグが用量単位中に使用するのに適切かどうかを評価することができる。この投与は経腸(例えば経口投与)であってもよい。プロドラッグ変換の検出は、例えばプロドラッグ変換の生成物(例えば、放出された薬物または放出された薬物の代謝物)を検出するか、または投与後の1つ以上の所望の時間点における動物の血中または血漿中のプロドラッグを検出することにより行うことができる。
【0170】
エキソビボアッセイ、例えば腸ループ(gut loop)または逆腸ループ(inverted gut loop)アッセイは、例えばプロドラッグを動物の腸の結紮部分に投与することにより、あるプロドラッグが用量単位中に使用するのに適切かどうかを評価することができる。プロドラッグ変換の検出は、例えば、プロドラッグ変換の生成物(例えば、放出された薬物または放出された薬物の代謝物)を検出するか、または投与後の1つ以上の所望の時間点における動物の結紮した腸ループ中のプロドラッグを検出することにより行うことができる。
【0171】
概してインヒビターは、例えば、それと共にインヒビターが同時投与されるプロドラッグからの薬物の放出を仲介する1つ以上のトリプシンとの相互作用における活性に基づき選択される。このようなアッセイは、酵素の存在下でプロドラッグと共に、またはプロドラッグなしで行われ得る。インヒビターはまた、GI系での半減期、効力、アビディティ、アフィニティ、分子の大きさおよび/または酵素阻害特性(例えば、酵素活性アッセイにおける阻害曲線の傾き度、阻害開始速度)などの特性に従い選択することができる。プロドラッグ−インヒビターの組み合わせに使用されるインヒビターは、インビトロ、インビボおよび/またはエキソビボアッセイを用いて選択することができる。
【0172】
一実施形態は、用量単位に製剤化するのに好適なプロドラッグおよびトリプシンインヒビターを同定する方法であり、この方法は、プロドラッグ(例えば化合物KC−8)とトリプシンインヒビターとトリプシンとを反応混合物に組み合わせる工程と、プロドラッグ変換を検出する工程とを含んでなる。このような組み合わせは、プロドラッグとインヒビターと酵素との間の相互作用について試験され、即ち、プロドラッグからの薬物の酵素制御放出を仲介する酵素とインヒビターがどのように相互作用するかを決定するために試験される。一実施形態において、トリプシンインヒビターの非存在下でのプロドラッグ変換と比較したときのトリプシンインヒビターの存在下でのプロドラッグ変換の減少は、そのプロドラッグおよびトリプシンインヒビターが用量単位に製剤化するのに好適であることを示す。このような方法はインビトロアッセイであってもよい。
【0173】
一実施形態は、用量単位に製剤化するのに好適なプロドラッグおよびトリプシンインヒビターを同定する方法であり、この方法は、プロドラッグ(例えば、化合物KC−8)およびトリプシンインヒビターを動物に投与する工程と、プロドラッグ変換を検出する工程とを含んでなる。一実施形態において、トリプシンインヒビターの非存在下でのプロドラッグ変換と比較したときのトリプシンインヒビターの存在下でのプロドラッグ変換の減少は、そのプロドラッグおよびトリプシンインヒビターが用量単位に製剤化するのに好適であることを示す。このような方法はインビボアッセイであってもよい;例えば、プロドラッグおよびトリプシンインヒビターは経口投与され得る。このような方法はまた、エキソビボアッセイであってもよい;例えば、プロドラッグおよびトリプシンインヒビターは、経口投与されるか、または腸などの、少なくとも一時的に露出される組織に投与されてもよい。検出は、血中または血漿中またはそれぞれの組織において行われ得る。本明細書で使用される組織とは、組織それ自体を指し、また組織内の内容物を指すこともある。
【0174】
一実施形態は、用量単位に製剤化するのに好適なプロドラッグおよびトリプシンインヒビターを同定する方法であり、この方法は、プロドラッグおよびトリプシンインヒビターを動物から取り出された動物組織に投与する工程と、プロドラッグ変換を検出する工程とを含んでなる。一実施形態において、トリプシンインヒビターの非存在下でのプロドラッグ変換と比較したときのトリプシンインヒビターの存在下でのプロドラッグ変換の減少は、そのプロドラッグおよびトリプシンインヒビターが用量単位に製剤化するのに好適であることを示す。
【0175】
インビトロアッセイは、プロドラッグとトリプシンインヒビターとトリプシンとを反応混合物に組み合わせることにより行われ得る。トリプシンは、プロドラッグの切断を触媒するのに十分な量で反応混合物中に提供されてもよく、およびアッセイは好適な条件下で、場合により対象、例えばヒトのGI管内に認められる条件を模倣する条件下で行われてもよい。プロドラッグ変換は、プロドラッグ変換の生成物(例えば、放出された薬物)のレベルを検出することにより、および/またはトリプシンの存在下で維持されるプロドラッグのレベルを検出することにより評価することができる。プロドラッグ変換はまた、プロドラッグ変換の生成物が生じる速度、またはプロドラッグが消失する速度を検出することにより評価することもできる。インヒビターの非存在下におけるプロドラッグ変換のレベルと比較したときインヒビターの存在下での改変されたプロドラッグ変換は、そのインヒビターが、プロドラッグ変換を減弱させ、かつ用量単位中に使用するのに好適であることを示す。一定量のプロドラッグと漸増量のインヒビターとを有するか、または一定量のインヒビターと漸増量のプロドラッグとを有する反応混合物を使用して、プロドラッグ変換の所望の改変をもたらすプロドラッグとインヒビターとの相対量を同定することができる。
【0176】
インビボアッセイは、プロドラッグとインヒビターとを動物に同時投与することによりプロドラッグとインヒビターとの組み合わせを評価することができる。そのような同時投与は経腸であってもよい。「同時投与」は、プロドラッグとインヒビターとの別個の用量としての、または組み合わせた用量としての(即ち、同じ製剤中での)投与を指す。プロドラッグ変換の検出は、例えば、プロドラッグ変換の生成物(例えば、放出された薬物または薬物代謝物)を検出することによるか、または投与後の1つ以上の所望の時間点における動物の血中または血漿中のプロドラッグを検出することにより行うことができる。例えばインヒビターを伴わないプロドラッグと比較したときに所望のPKプロファイルをもたらすプロドラッグ変換レベルを提供するプロドラッグとインヒビターとの組み合わせを同定することができる。
【0177】
所望のPKプロファイルをもたらすプロドラッグとインヒビターとの相対量の組み合わせは、動物に一定量のプロドラッグと漸増量のインヒビターとを、または一定量のインヒビターと漸増量のプロドラッグとを投与することにより同定することができる。次に、1つ以上のPKパラメータ、例えば、薬物Cmax、薬物Tmax、および薬物曝露量を評価することができる。所望のPKプロファイルをもたらすプロドラッグとインヒビターとの相対量は、用量単位中に使用されるプロドラッグおよびインヒビターの量として同定される。プロドラッグとインヒビターとの組み合わせのPKプロファイルは、例えばインヒビターを伴わないプロドラッグと比べたときのPKパラメータ値の低下により特徴付けることができる。インヒビターを伴わずプロドラッグを投与した後の対応するPKパラメータ値と比べたインヒビター対プロドラッグの組み合わせのPKパラメータ値の低下(例えば、薬物Cmaxの低下、1/薬物Tmaxの低下(即ち、薬物Tmaxの遅延)または薬物曝露量の低下)は、所望のPKプロファイルを提供することのできるインヒビター対プロドラッグの組み合わせを示し得る。アッセイは、インヒビターとプロドラッグとの種々の相対量で行うことができる。
【0178】
インビボアッセイを使用して、複数(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4またはそれ以上)の用量単位を摂取した後に所望の濃度−用量PKプロファイルをもたらす用量単位を提供するプロドラッグとインヒビターとの組み合わせを同定することができる。エキソビボアッセイは、プロドラッグおよびインヒビターを、結紮した腸の管腔内への注入による導入(例えば、腸ループ、または腸管ループアッセイ、または逆腸アッセイ(inverted gut assay))によることを含め、腸などの、動物の組織および/またはその内容物に直接投与することにより行うことができる。エキソビボアッセイはまた、動物から組織および/またはその内容物を切除し、かかる組織および/または内容物にプロドラッグおよびインヒビターを導入することにより行うこともできる。
【0179】
例えば、単一用量単位に望ましいプロドラッグの用量(例えば、効果的な血漿中薬物レベルを提供する量)が選択される。次に、単一用量単位の複数であって、当該の複数とPKパラメータとの間の関係が試験されるべき複数が、選択される。例えば、濃度−用量PKプロファイルが2、3、4、5、6、7、8、9または10用量単位の摂取に対して設計される場合、当該の同じ用量単位数の摂取と等価なプロドラッグの量が決定される(「高用量」と称される)。用量単位の複数は、単一用量単位の摂取と比べて薬物Cmaxが改変される時点で摂取された丸薬数に基づき選択されてもよい。例えば、プロファイルが乱用の抑止をもたらすべき場合、複数としては例えば10が選択され得る。インヒビターとプロドラッグとの異なる相対量を用いて様々な異なるインヒビター(例えば、インヒビターのパネルからの)を試験することができる。アッセイを用いることにより、治療上有効な単一用量単位を達成するのに好適なインヒビターとプロドラッグとの1つ以上の組み合わせを同定することができ、ここでかかる組み合わせは、複数の用量単位として摂取されるとき、同じ複数の薬物またはプロドラッグ単独での摂取と比較して改変されたPKパラメータを提供する(ここで薬物またはプロドラッグ単独のいずれかの単一用量は、単一用量単位により放出される量と同量の薬物を血中または血漿中に放出する)。
【0180】
次に漸増量のインヒビターが動物に対して高用量のプロドラッグと同時投与される。高用量のプロドラッグの摂取後に所望の薬物Cmaxを提供するインヒビターの用量レベルが同定され、得られるインヒビター対プロドラッグ比が決定される。
【0181】
次にプロドラッグとインヒビターとが、高用量のプロドラッグで所望の結果を提供したインヒビター対プロドラッグ比と等価な量で同時投与される。次に対象のPKパラメータ値(例えば、薬物Cmax)が評価される。単一用量単位等価量の摂取後に所望のPKパラメータ値が得られた場合、次に所望の濃度−用量PKプロファイルをもたらす単一用量単位が同定される。例えば、ゼロ用量線形プロファイルが所望される場合、複数の数の単一用量単位を摂取した後にも単一用量単位摂取後の薬物Cmaxが著しく増加することはない。
【0182】
用量単位の製造、製剤化、および包装方法
本開示物の用量単位は、当該技術分野において利用可能な製造方法を用いて作製することができ、例えば、錠剤、カプセル、薄フィルム、粉末、懸濁液、溶液、シロップ、分散液またはエマルジョンとして経腸(経口、口腔および舌下を含む)投与に好適な様々な形態であり得る。用量単位は、医薬製剤における従来の成分、例えば1つ以上のキャリア、結合剤、潤滑剤、賦形剤(例えば、制御放出特性を付与するため)、pH調整剤、香味剤(例えば、甘味剤)、充填剤、着色剤またはさらなる活性薬剤を含有することができる。本開示物の用量単位は、望ましい場合には、胃酸からの保護を促進する腸溶性コーティングまたは他の1つ以上の成分を含むことができる。
【0183】
用量単位は任意の好適なサイズまたは形状であってよい。用量単位は、経腸投与に好適な任意の形状、例えば、楕円体、レンズ形、円形、矩形、円柱形などであってよい。
【0184】
乾燥用量単位として提供される用量単位は、約1マイクログラム〜約1グラムの全重量を有することができ、約5マイクログラム〜1.5グラム、約50マイクログラム〜1グラム、約100マイクログラム〜1グラム、50マイクログラム〜750ミリグラムであることができ、約1マイクログラム〜2グラムであってもよい。
【0185】
用量単位は、成分を任意の相対量で含んでなることができる。例えば用量単位は、用量単位の全重量あたり約0.1重量%〜99重量%の活性成分(即ち、プロドラッグおよびインヒビター)(単一用量単位の全重量あたり0.1%〜99%のプロドラッグとインヒビターとを合わせた総重量)であってもよい。いくつかの実施形態において、用量単位は、用量単位の全重量あたり10重量%〜50重量%、20重量%〜40重量%、または約30重量%の活性成分であってもよい。
【0186】
用量単位は、様々な異なる形態で提供されてもよく、場合により保存に好適な方法で提供されてもよい。例えば用量単位は、医薬組成物の収容に好適な容器内に配置することができる。容器は、例えば、瓶(例えば、キャップなどの密閉手段を備える)、ブリスターパック(例えばこれは、1つ以上の用量単位をブリスターごとに封入することを提供し得る)、バイアル、軟質包装材(例えば、封着式マイラー(Mylar)またはプラスチック袋)、アンプル(溶液状の単一用量単位用)、ドロッパー、薄フィルム、チューブなどであってもよい。
【0187】
容器はキャップ(例えば、スクリューキャップ)を含んでもよく、これは容器内に配置された用量単位にアクセスできるようにするための開口部に被せる形で容器に着脱可能に連結される。
【0188】
容器は開封明示要素および/または不正開封防止要素として機能し得るシールを備えてもよく、このシールは容器内に配置された用量単位にアクセスした時点で破損する。このようなシール要素は、例えば、容器内に配置された用量単位にアクセスした時点で壊れるか、または他の形で改変される易壊性要素であってもよい。そのような易壊性シール要素の例として、容器の開口部を覆って配置されたシールであって、容器内の用量単位にアクセスするには破損させる必要があるシール(例えばシールを剥がす、および/またはシールに穴を開けることにより)が挙げられる。易壊性シール要素の例として、容器の開口部を囲み、かつキャップと接続した状態で配置された易壊性リングであって、容器内の用量単位にアクセスするためキャップを開けたときに壊れるリングが挙げられる。
【0189】
乾燥および液体用量単位は、用量単位が投薬ごとに分注される期間にわたり用量単位の安定性を維持するように適合されたサイズおよび構成の容器(例えば、瓶またはパッケージ、例えば軟質バッグ)に入れることができる。例えば容器は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上の単一の乾燥または液体用量単位を収容するサイズおよび構成であってもよい。容器は密封することができるか、または再密封可能であり得る。容器はカートンに包装されてもよい(例えば、製造者から薬局または他の調剤所に出荷するため)。そのようなカートンは、箱、筒、または他の構成であってよく、任意の材料(例えば、厚紙、プラスチックなど)で作製され得る。包装システムおよび/またはそこに配置される容器は、1つ以上の添付ラベルを(例えば、ロット番号、用量単位の種類、製造者などの情報を提供するため)有し得る。
【0190】
容器は、例えば防湿層および/または遮光層を備えてもよく、それによりそこに収容される用量単位中の活性成分の安定性の維持が促進される。用量単位が乾燥用量単位である場合、容器は、容器内に配置された乾燥剤パックを含んでもよい。容器は単一用量単位または複数の用量単位を収容するように適合され得る。容器は、投与レジメンの管理を促進するロックアウト機構などの分注制御機構を含んでもよい。
【0191】
用量単位は固形または半固形の形態で提供されてもよく、および乾燥用量単位であってもよい。「乾燥用量単位」は、完全に液状の形態である以外の用量単位を指す。乾燥用量単位の例として、例えば、錠剤、カプセル(例えば、固形カプセル、液体を収容するカプセル)、薄フィルム、微粒子、顆粒、粉末などが挙げられる。用量単位は液体用量単位として提供されてもよく、ここで用量単位は、液状形態でプロドラッグとインヒビターとを含有する製剤の単一用量または複数用量として提供され得る。乾燥または液体用量単位の単一用量が密封容器内に配置され、場合により密封容器が、例えば処方された用量数を提供する包装システムに提供されてもよく、それにより用量単位の出荷が提供されるなどしてもよい。
【0192】
用量単位は、プロドラッグとインヒビターとが同じキャリアに、例えば同じマトリックス中に可溶化または懸濁されて存在するように製剤化されてもよい。あるいは、用量単位は2つ以上の部分から構成されてもよく、ここでプロドラッグとインヒビターとは同じ部分または異なる部分に提供されてもよく、および隣接する部分または隣接しない部分に提供されてもよい。
【0193】
用量単位は、それらが配置される容器に提供することができ、包装システムの一部として(場合により使用説明書付きで)提供されてもよい。例えば、異なる量のプロドラッグを含有する用量単位を別個の容器に提供することができ、それらの容器をより大きい容器に配置する(例えば、それにより出荷のため用量単位の保護を促進する)ことができる。例えば、本明細書に記載されるとおりの1つ以上の用量単位を別個の容器に提供することができ、ここでは異なる組成の用量単位が別個の容器に提供され、かつ別個の容器を分注用のパッケージの中に配置することができる。
【0194】
別の例において、用量単位は2チャンバ型ディスペンサーに提供されてもよく、ここで第1のチャンバがプロドラッグ製剤を収容し、かつ第2のチャンバがインヒビター製剤を収容する。このディスペンサーは、摂取前にプロドラッグ製剤とインヒビター製剤との混合をもたらすように適合され得る。例えば、ディスペンサーの2つのチャンバは取り外し可能な壁(例えば、易壊性の壁)により隔てられていてもよく、その壁が投与前に壊されるか、または取り外されることで2つのチャンバの製剤を混合することが可能となる。第1のチャンバおよび第2のチャンバは終端が、場合により共通のチャンバを介して、分注出口に至り得る。製剤は乾燥形態または液状形態、またはそれらの組み合わせで提供することができる。例えば、第1のチャンバの製剤が液体であってもよく、かつ第2のチャンバの製剤が乾燥体であってもよく、双方が乾燥体であってもよく、または双方が液体であってもよい。
【0195】
プロドラッグの制御放出、インヒビターの制御放出、またはプロドラッグとインヒビターとの双方の制御放出をもたらす用量単位が本開示によって企図され、ここで「制御放出」は、用量単位からのプロドラッグおよびインヒビターの一方または双方の、選択された期間にわたる、および/または予め選択された形での放出を指す。
【0196】
用量単位の使用方法
用量単位は、例えば本明細書に開示されるとおりのPKパラメータを抑制することによる、薬物を必要とする患者に対する薬物の副作用を低減し、および/または耐容性を向上する方法において利用が見出され、そのため有利である。従って本開示物は、薬物の投与に関連する副作用と比較したとき、および/またはインヒビターを伴わないプロドラッグの投与と比較したとき副作用の低減を提供するために、必要がある患者に本開示物の用量単位を投与することによる副作用の低減方法を提供する。本開示物はまた、薬物の投与と比較したとき、および/またはインヒビターを伴わないプロドラッグの投与と比較したとき耐容性の向上を提供するために、必要がある患者に本開示物の用量単位を投与するこによる薬物の耐容性の向上方法も提供する。
【0197】
用量単位は、臨床医により処方された治療法に対する患者の患者コンプライアンスを向上させる方法において利用が見出され、この方法には、薬物の投与が関わる治療法と比較したとき、および/またはインヒビターを伴わないプロドラッグの投与と比較したとき患者コンプライアンスの向上をもたらすために、本明細書に記載される用量単位の投与を、治療法を必要とする患者に指示する工程が含まれる。この方法は、臨床医により指定された治療法が処方どおりに行われる可能性を高めることに役立つ。
【0198】
用量単位は、患者コンプライアンスおよび臨床医の管理の亢進をもたらすことができる。例えば、複数(例えば、2以上、3以上、または4以上)の用量単位が摂取されるときのPKパラメータ(例えば、薬物Cmaxまたは薬物曝露量など)を制限することにより、より高用量の薬物を必要とする患者は臨床医の助力を求めざるを得ない。用量単位は、患者が容易に行うことのできる「セルフメディケーション」の程度の管理をもたらし得るとともに、さらには患者による用量の調整が許容範囲内の用量となることをもたらし得る。用量単位は、例えば、例えばPKパラメータの低下(例えば、薬物Cmaxの低下、薬物曝露量の低下)により定義されるとおりの、有効用量ながらPKプロファイルが改変された薬物の送達を治療期間にわたってもたらすことにより、副作用の低減をもたらし得る。
【0199】
用量単位は、同時に、または短期間で服用される複数用量の摂取に伴い起こり得る薬物の偶発的過量服用のリスクを低減する方法において利用が見出される。本開示物のこの方法は、薬物の偶発的過量服用のリスクと比較したとき、および/またはインヒビターを伴わないプロドラッグの偶発的過量服用のリスクと比較したとき、偶発的過量服用のリスクの低減をもたらし得る。この方法には、プロドラッグの変換により放出される薬物を必要とする患者に対し、本明細書に記載される投薬量の投与を指示する工程が含まれる。この方法は、意図的な、または意図的でない用量単位の誤用による偶発的過量服用を回避することに役立ち得る。
【0200】
本開示物は、薬物の誤用および乱用を低減し、ならびに例えば同時に摂取された、複数の薬物用量の摂取に伴い起こり得る過量服用のリスクを低減する方法を提供する。これらの方法には、概して、プロドラッグと、プロドラッグからの薬物の放出を仲介するトリプシンインヒビターとを用量単位中に組み合わせる工程が含まれ、ここでインヒビターは、例えば患者が複数の用量単位を摂取した後の、プロドラッグからの薬物の放出を減弱させるのに有効な量で用量単位中に存在する。これらの方法は、改変された濃度−用量PKプロファイルをもたらす一方で、処方臨床医が指示したとおりの単一用量単位からの治療上有効なレベルを提供する。これらの方法は、特にプロドラッグの変換が麻薬または他の乱用薬物(例えば、オピオイド)の放出をもたらす場合に、例えばプロドラッグの誤用および/または乱用に伴い起こり得るリスクの低減をもたらし得る。例えば、プロドラッグが乱用薬物の放出をもたらすとき、用量単位は乱用薬物の用量単位を複数摂取した後に生じ得る報酬の低減をもたらし得る。
【0201】
用量単位は、臨床医の薬物処方における柔軟性の亢進を提供し得る。例えば臨床医は、異なる用量強度を含む投薬レジメンを処方することができ、これには、プロドラッグの相対量が異なるか、インヒビターの量が異なるか、またはプロドラッグおよびインヒビターの双方の量が異なる2つ以上の異なる用量単位のプロドラッグおよびインヒビターが関わり得る。このような異なる強度の用量単位は、異なるPKパラメータ(例えば、本明細書に記載されるとおりの薬物曝露量、薬物Cmaxなど)に従う薬物の送達をもたらし得る。例えば、第1の用量単位が摂取後に第1の用量の薬物の送達をもたらすことができ、かつ第2の用量単位が摂取後に第2の用量の薬物の送達をもたらすことができる。これらの用量単位の第1のプロドラッグ用量と第2のプロドラッグ用量とは異なる強度であってよく、例えば第2の用量が第1の用量より高くてもよい。従って臨床医は、異なる強度の2用量単位以上、または3用量単位以上の一群を処方することができ、これは、例えば患者の疼痛治療の必要性に従いオピオイド薬物の送達を増加させるため、セルフメディケーションの程度を促進する指示を伴い得る。
【0202】
プロドラッグからのオキシコドンのトリプシン仲介性放出による不正変換の防止
本開示物は、化合物KC−8とトリプシンインヒビターとを含んでなる組成物であって、薬物乱用の可能性を低減する組成物を提供する。トリプシンインヒビターは、使用者がインビトロでケトン修飾オキシコドンプロドラッグの化合物KC−8からのオキシコドンの放出を生じさせるためにトリプシンを適用することができないよう妨げ得る。例えば、乱用者が、化合物KC−8とトリプシンインヒビターとを含む本実施形態の組成物と共にトリプシンをインキュベートしようと試みた場合、トリプシンインヒビターが添加されたトリプシンの作用を低減し得るため、乱用目的でオキシコドンを放出させようとする試みが妨げられ得る。
【実施例】
【0203】
以下の実施例は、当業者に、本実施形態をどのように作製し、そして使用するかについて完全な開示および説明を提供するように記載されており、本発明者らが自らの発明と考えている範囲を限定することを意図するものではなく、また下記の実験が、実施されるすべてまたは唯一の実験として表すことを意図するものでもない。使用する数字(例えば、量、温度など)に関して、正確性を確実にする努力は行ってきたが、いくつかの実験誤差および偏差は考慮されるべきである。別段示さない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセルシウス度であり、そして圧力は大気またはその付近におけるものである。標準的な略称を使用し得る。
【0204】
ケトン修飾オピオイドプロドラッグの合成
実施例1:オキシコドン6−(N−メチル−N−(2−アミノ)エチルカルバメート(化合物KC−19)の合成
【化29】
【0205】
化合物Aの調製
2−(アミノエチル)−メチル−カルバミン酸ベンジルエステル(2.0g、9.6mmol)を室温でジクロロエテン(DCE)(20mL)に溶解した。トリエチルアミン(NEt
3)(1.40mL、11.5mmol)を添加し、続いてジ−tert−ブチルジカーボネート(BOC
2O)(10.5g、48mmol)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)(120mg)を添加した。反応混合物を窒素(N
2)下に室温で2時間、撹拌し、次いで、60℃で16時間、加熱した。次いで、反応混合物を濃縮した。残渣を、4/1のヘキサン/EtOAcを使用してシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、86%収率で化合物A(3.4g、8.3mmol)を得た。MS:(m/z)計算値:408.2、実測値(M+Na
+)431.9。
【0206】
化合物Bの調製
化合物A(1.3g、3.18mmol)をメタノール/EtOAc(それぞれ10mL/3mL)に溶解した。混合物を脱気し、N
2で飽和させた。パラジウム炭素(Pd/C)(330mg、炭素上5%)を添加した。混合物をParrハイドロジェネーターフラスコ(50psi H
2)において4時間、振盪した。次いで、混合物をセリットパッドで濾過し、そして濾液を濃縮して、化合物B(1.08g、収量が定量値を超えた)を得た。化合物Bを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0207】
化合物Cの調製
化合物B(500mg、1.82mmol)およびNEt
3(0.4mL、2.74mmol)をジクロロメタン(4mL)中に共に混合した。混合物を、予め0℃に冷却したホスゲン溶液(5.5mL、トルエン中0.5M)に添加した。反応混合物を0℃で1時間、撹拌し、続いてエーテル(20mL)で希釈し、そして濾紙で濾過した。濾液を濃縮し、そしてショートシリカゲルカラム(10cm×3cm)に通過させ、3/1のヘキサン/EtOAcで溶離した。画分を濃縮して、無色の固体として定量的収率(615mg、1.82mmol)でN,N−ビス(tert−ブチル)N’−2−(クロロカルボニル(メチル)アミノ)エチルカルバメート(化合物C)を得た。MS:(m/z)計算値:336.1、実測値(M+Na
+)359.8。
【0208】
オキシコドン6−(N−メチル−N−(2−アミノ)エチルカルバメート(化合物KC−19)の合成
【化30】
オキシコドン遊離塩基(6.5g、20.6mmol)を、脱気した乾燥テトラヒドロフラン(120mL)に溶解し、そしてドライアイス/アセトン浴を使用して混合物を−10℃に冷却した。カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(KHMDS)(103.0mL、51.6mmol、トルエン中0.5M)を、カニューレを用いて添加した。混合物をN
2下に−5℃未満で30分間、撹拌した。次いで、THF(30mL)中N,N−ビス(tert−ブチル)N’−2−(クロロカルボニル(メチル)アミノ)エチルカルバメート(8.0g、23.7mmol)(化合物C)を、カニューレを用いて15分間で添加した。混合物を−5℃で30分間、撹拌した。THF(10mL)中塩化カルバモイル(4.0g、11.9mmol)のもう一つの分量を添加した。反応物を室温で2時間、撹拌した。重炭酸ナトリウム(10mL、飽和水溶液)を添加した。混合物を、その最初の容積の半分まで減圧下で濃縮した。EtOAc(50mL)を添加し、そして層を分離した。有機相を水(3×20mL)および塩水(40mL)でさらに洗浄し、次いで濃縮した。残渣を、DCM/MeOH(勾配100/1〜100/15)を使用してシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、白色の泡を55%収率(7.0g、13.4mmol)で得た。この物質を、室温でDCM/トリフルオロ酢酸(TFA)(20mL/20mL)の1:1混合物に溶解し、そして1時間、撹拌した。次いで、溶液を減圧下で濃縮して、濃厚なオイルとしてオキシコドン6−(N−メチル−N−(2−アミノ)エチルカルバメートのTFA塩(化合物KC−19)を得た(7.3g、11.4mmol、99%純度)。MS:(m/z)計算値:415.2、実測値(M+H
+)416.5。
【0209】
実施例2:N−1−[2−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−エチルアミン]−アルギニン−マロン酸(化合物KC−3)[別名:N−{(S)−4−グアニジノ−1−[2−(メチル−[(5R,9R,13S,14S)−4,5a−エポキシ−6,7−ジデヒドロ−14−ヒドロキシ−3−メトキシ−17−メチルモルフィナン−6−オキシ]カルボニル−アミノ)−エチルカルバモイル]−ブチル}−マロン酸]の合成
【化31】
【0210】
化合物Dの調製
ACN(350mL)および水(7.8mL、436mmol)の混合物中N−メチルエチレンジアミン(27.0g、364mmol)およびトリフルオロ酢酸エチル(96.6mL、812mmol)の溶液を、一晩、撹拌しながら還流した。溶媒を減圧下でエバポレートした。残渣を、i−PrOH(3×100mL)と共に再エバポレートし、続いて加熱−冷却によりDCM(500mL)から結晶化させた。形成した結晶を濾過し、DCMで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、白色の固体粉末として化合物D(88.3g、85%)を提供した。
【0211】
化合物Eの調製
THF(350mL)中化合物D(88.2g、311mmol)およびDIEA(54.1mL、311mmol)の溶液を氷浴で冷却し、続いてTHF(150mL)中N−(ベンジルオキシカルボニル)スクシンイミド(76.6g、307mmol)の溶液を、滴下で20分間の期間、添加した。反応混合物の温度を周囲温度にまで上昇させ、そして撹拌をさらに30分間継続した。次いで、溶媒をエバポレートし、そして得られた残渣をEtOAc(600mL)に溶解した。有機層を5%NaHCO
3水溶液(2×150mL)および塩水(150mL)で抽出した。有機層をエバポレートして、黄色がかったオイルとして化合物Eを提供した。LC−MS[M+H]305.1(C
13H
15F
3N
2O
3+H、計算値:305.3)。化合物Eを、MeOH溶液として、精製を伴わずに次の反応で直接使用した。
【0212】
化合物Fの調製
MeOH(1.2L)中化合物E(約311mmol)の溶液に、水(120mL)中LiOH(14.9g、622mmol)の溶液を添加した。反応混合物を周囲温度で3時間、撹拌した。溶媒を最初の容積の75%にまでエバポレートし、続いて水(400mL)で希釈した。溶液をEtOAc(2×300mL)で抽出した。有機層を塩水(200mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、そして減圧下でエバポレートした。残渣をエーテル(300mL)に溶解し、そして2NのHCl/エーテル(200mL)で処置した。形成した沈殿物を濾過し、エーテルで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、白色の固体として化合物Fの塩酸塩(67.8g、89%)を提供した。LC−MS[M+H]209.0(C
11H
16N
2O
2+H、計算値:209.3)。化合物Fを、DMF溶液として、精製を伴わずに次の反応で直接使用した。
【0213】
化合物Gの調製
DMF(150mL)中Boc−Arg(Pbf)−OH(16.0g、約30.4mmol)、化合物F塩酸塩(8.2g、33.4mmol)およびDIEA(16.9mL、97.2mmol)の溶液を、氷浴で冷却し、続いて、HATU(13.8g、36.4mmol)の溶液を、滴下で20分間で添加した。反応混合物の温度を周囲温度にまで上昇させ、そして撹拌をさらに1時間、継続した。反応混合物をEtOAc(1L)で希釈し、そして水(3×200mL)および塩水(200mL)で抽出した。有機層をMgSO
4で乾燥し、そしてエバポレートして、黄色がかったオイルとして化合物G(24.4g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]717.4(C
35H
52N
6O
8S+H、計算値:717.9)。化合物Gを、ジオキサン溶液として、精製を伴わずに次の反応で直接使用した。
【0214】
化合物Hの調製
化合物G(24.4g、約30.4mmol)をジオキサン(150mL)に溶解し、そして周囲温度で1時間、4NのHCl/ジオキサン(150mL、600mmol)で処置した。次いで、溶媒をエバポレートした。残渣をi−PrOH(100mL)に懸濁し、そして混合物をエバポレートした(手順を2回反復した)。次いで、残渣を減圧下で乾燥して、黄色がかった固体として化合物H(21.1g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]617.5(C
30H
44N
6O
6S+H、計算値:617.8)。化合物Hを、DMF溶液として、精製を伴わずに次の反応で直接使用した。
【0215】
化合物Iの調製
DMF(100mL)中化合物H(21.1g、約30.4mmol)、マロン酸モノ−tert−ブチル(5.9mL、36.7mmol)、BOP(16.2g、36.7mmol)およびDIEA(14.9mL、83.5mmol)の溶液を周囲温度で1時間、維持した。反応混合物をEtOAc(1L)で希釈し、そして水(500mL)、5%NaHCO
3水溶液(500mL)、水(3×500mL)および塩水(500mL)で抽出した。有機層をMgSO
4で乾燥し、濾過し、次いでエバポレートして、黄色がかった無定形固体として化合物I(24.5g、97%)を提供した。LC−MS[M+H]759.6(C
37H
54N
6O
9S+H、計算値:759.9)。化合物Iを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0216】
化合物Jの調製
化合物I(12.3g、16.7mmol)をメタノール(100mL)に溶解し、続いて、水(2mL)中Pd/C(5%wt、2.0g)懸濁液を添加した。反応混合物を周囲温度で1時間、水素化(Parr装置、70psi H
2)に供した。次いで、触媒を濾過し、そしてメタノールで洗浄した。濾液を減圧下でエバポレートして、無色の無定形固体として化合物J(10.0g、99%)を提供した。LC−MS[M+H]625.5(C
29H
48N
6O
7S+H、計算値:625.8)。化合物Jを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0217】
オキシコドン遊離塩基の調製
塩酸オキシコドン(10.0g、28.5mmol)をクロロホルム(150mL)に溶解し、そして5%NaHCO
3水溶液(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥し、そしてエバポレートした。残渣を、一晩、減圧下で乾燥して、白色の固体としてオキシコドン遊離塩基(8.3g、93%)を提供した。
【0218】
化合物Kの調製
THF(400mL)中オキシコドン遊離塩基(6.6g、21.0mmol)の溶液を−20℃にまで冷却し、続いて、トルエン中KHMDSの0.5M溶液(46.3mL、23.1mmol)を添加した。次いで、得られた溶液を、THF(100mL)中4−ニトロ−クロロギ酸フェニル(4.3g、21.0mmol)の溶液に−20℃において滴下で20分間の期間、添加した。反応物を−20℃でさらに1時間、維持し、続いて、−20℃でTHF(200mL)中化合物J(10.0g、16.1mmol)の溶液を添加した。反応混合物を周囲温度にまで加温させ、そして一晩、撹拌した。溶媒を減圧下でエバポレートした。得られた残渣をEtOAc(20mL)に溶解し、そしてエーテル(1L)で沈殿させた。形成した沈殿物を濾過し、エーテルで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、オフホワイトの固体として化合物K(13.6g、87%)を提供した。LC−MS[M+H]966.9(C
48H
67N
7O
12S+H、計算値:966.2)。
【0219】
N−1−[2−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−エチルアミン]−アルギニン−マロン酸(化合物KC−3)の合成
化合物K(13.6g、14.1mmol)を、5%m−クレゾール/TFA(100mL)混合物に溶解した。反応混合物を周囲温度で1時間、維持し、続いてエチルエーテル(1L)で希釈した。形成した沈殿物を濾過し、エーテルおよびヘキサンで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、オフホワイトの固体として化合物KC−3のTFA塩(11.4g、81%)を提供した。LC−MS[M+H]658.6(C
31H
43N
7O
9+H、計算値:658.7)。
【0220】
粗化合物KC−3のTFA塩(11.4g、11.4mmol)を水(50mL)に溶解した。得られた溶液をHPLC精製に供した。[Nanosyn−Pack YMC−GEL−ODS A(100−10)C−18カラム(75×500mm);流速:250mL/min;注入容積50mL;移動相A:100%水、0.1%TFA;移動相B:100%ACN、0.1%TFA;4分における0%Bでの均一濃度溶離、20分における0%〜10%Bでの勾配溶離、30分における10%Bでの均一濃度溶離、41分における10%B〜30%Bでの勾配溶離;254nmでの検出]。化合物KC−3を含有する画分を合わせ、そして減圧下で濃縮した。そのTFA対イオンを、0.1NのHClを使用した凍結乾燥によってHCl対イオンに置き換えて、白色の固体として化合物KC−3のHCl塩(4.2g、41%収率)を提供した。LC−MS[M+H]658.6(C
31H
43N
7O
9+H、計算値:658.7)。
【0221】
実施例3:N−1−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン](化合物KC−22)およびN−1−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン]−アルギニン−グリシン−マロン酸(化合物KC−8)の合成
【化32】
化合物Mの調製
THF(1.0L)中2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(化合物L)(48.0g、470.6mmol)の溶液を、氷浴で冷却した。トリフルオロ酢酸エチル(56mL、471mmol)を、シリンジを用いて30分間で添加した。混合物を周囲温度にまで上昇させ、そして撹拌をさらに14時間継続した。次いで、混合物を、その最初の容積の半分まで減圧下で濃縮すると、THF溶液として粗化合物Mが得られ、それを、次の反応においてさらなる精製を伴わずに使用した。LC−MS[M+H]199.6(C
7H
13F
3N
2O+H、計算値:199.1)。
【0222】
化合物Nの調製
THF(500mL)中の、かつ氷浴で冷却した(前の工程からの)化合物Mの粗溶液に、(Boc)
2Oを少しの部分量ずつ15分間で添加した。混合物を周囲温度で15時間、撹拌した。次いで、反応物を減圧下で濃縮して、84%収率(2工程にわたる)(120.0g、402.4mmol)で、粘着性のオイルとして中間化合物Nを得た。LC−MS[M+H]299.2(C
12H
21F
3N
2O
3+H、計算値:299.2)。化合物Nを、さらなる精製を伴わずに次の反応において直接使用した。
【0223】
化合物Oの調製
化合物N(120g、403mmol)をCH
3OH(500mL)に溶解し、そして周囲温度で撹拌した。NaOH(100mL、10N水溶液)を滴下で添加した。次いで、混合物を、予め加熱した油浴において50℃で3時間、撹拌した。混合物を周囲温度に冷却し、そして水(500mL)で希釈した。次いで、溶媒を減圧下で取り除いた。残渣をCHCl
3(3×100mL)で抽出した。合わせたCHCl
3溶液をNa
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濾過および濃縮して、95%収率(77.0g、381mmol)で粗化合物Oを得た。LC−MS[M+H]203.8(C
10H
22N
2O
2+H、計算値:203.2)。化合物Oを、さらなる精製を伴わずに次の反応において直接使用した。
【0224】
化合物Pの調製
化合物O(97.0g、480mmol)をCH
2Cl
2(750mL)に溶解した。これに、一分量でK
2CO
3(75.0g、542.6mmol)を添加し、続いて、部分量ずつ2−塩化ノシル(108.0g、487.3mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度で15時間、撹拌した。次いで、水(200mL)を添加し、そして層を分離した。水層を、再びCH
2Cl
2で抽出した。合わせたCH
2Cl
2溶液をNa
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濾過および濃縮した。残渣を、3/1ヘキサン/EtOAcを使用してシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、83%収率(155.0g、400.5mmol)で白色固体として中間化合物Pを得た。LC−MS[M+H]388.8(C
16H
25N
3O
6S+H、計算値:388.1)。
【0225】
化合物Rの調製
化合物P(155.0g、400.5mmol)を周囲温度でDMF(500mL)に溶解した。K
2CO
3(83.0g、600mmol)を一分量で添加した。次いで、混合物を氷水浴で冷却した。MeI(37.0mL、593mmol)を、シリンジを用いて少しの部分量ずつ10分間で添加した。次いで、混合物を周囲温度にまで上昇させ、そしてこの温度でさらに2時間、撹拌した。混合物を、残りが約50mLになるまで、減圧下で濃縮した。中間化合物Qを含む残りの混合物を氷水浴で冷却した。撹拌しながら、シリンジを用いて、チオフェノール(100mL、978mmol)を添加した。得られた混合物を、周囲温度で6時間、撹拌した。水(500mL)を添加した。混合物をEtOAc(100mL、次に2×500mL)で抽出した。合わせたEtOAc抽出物を、2N HCl(400mL、次に2×200mL)で抽出した。HCl抽出物をプールし、そしてDCM(500mL)で洗浄した。次いで、酸性溶液を氷水浴で冷却し、そして、pHが約13になるまで、10N NaOHを添加して塩基性化した。次いで、CHCl
3(400mL、次に2×200mL)を使用して水溶液を抽出した。合わせたCHCl
3溶液をNa
2SO
4で乾燥し、そして濾過した。溶媒を減圧下でエバポレートさせて、67%収率(58.0g、268.5mmol)で、やや黄色がかったオイルとして化合物Rを得た。LC−MS[M+H]217.6(C
11H
24N
2O
2+H、計算値:217.2)。
【0226】
【化33】
化合物Sの調製
オキシコドン遊離塩基(10.0g、31.75mmol)を乾燥THF(150mL)に溶解し、そしてドライアイス/アセトン浴を使用して混合物を−70℃に冷却した。KHMDS(64.0mL、128.0mmol、トルエン中0.5M)を、シリンジを用いて15分間で添加した。混合物をN
2下でさらに30分間、撹拌した(浴温−70℃)。別のフラスコに、4−ニトロフェニルクロロホルメート(6.4g、31.75mmol)およびTHF(10mL)を添加した。この混合物もまた、ドライアイス/アセトン浴を使用して−70℃に冷却した。次いで、第1のフラスコ(脱プロトン化されたオキシコドンを含む)の混合物を、カニューレを用いて第2のフラスコ(4−ニトロフェニルクロロホルメートを含む)に移した。移すのは、約30分間で行い、移している間、双方のフラスコの温度は−70℃に維持した。得られた反応混合物を、−70℃で30分間さらに撹拌した。次いで、THF(15mL)中化合物R(6.9g、31.94mmol)の溶液を、シリンジを用いて添加した。混合物を、−70℃で30分間、撹拌させ、次いで減圧下で濃縮して、ゲル様残渣を得た(約90%溶媒除去)。この残渣を、周囲温度で15時間、静置した。次いで、それをEtOAc(200mL)の中にとり、飽和NaHCO
3水溶液(5×50mL)、水(3×40mL)および塩水(50mL)で洗浄した。次いで、濃縮EtOAc層からの残渣を、10/1のCH
3Cl/MeOHを使用してシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、62%収率(11.0g、19.7mmol)で化合物Sを得た。LC−MS[M+H]559.1(C
30H
43N
3O
7+H、計算値:558.3)。
【0227】
N−1−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン](化合物KC−22)の調製
化合物S(11.0g、19.7mmol)の溶液を、TFAおよびDCM(30mL/30mL)の混合物により周囲温度で2時間処理した。次いで、残り約5mLの容積になるまで、溶媒を減圧下で取り除いた。Et
2O(250mL)を添加して、生成物を沈殿析出させた。得られた沈殿物を濾過し、Et
2O(50mL)で洗浄し、そして乾燥させて、97%収率(11.0g、19.2mmol、90%純度)で、白色固体として粗化合物KC−22を得た。LC−MS[M+H]458.9(C
25H
35N
3O
5+H、計算値:458.3)。化合物KC−22を、さらなる精製を伴わずに次の反応において直接使用した。
【0228】
化合物Uの調製
DMF(80mL)中Boc−Arg(Pbf)−OH(9.4g、17.8mmol)、化合物KC−22(11.0g、19.7mmol、90%純度)およびNEt
3(10.0mL、71.7mmol)の溶液を、氷浴で冷却し、続いて、HATU(6.8g、17.9mmol)を部分量ずつ10分間で添加した。次いで、氷浴を除去し、そして反応混合物を、さらに1時間、周囲温度で撹拌した。混合物をEtOAc(150mL)で希釈し、そして水(3×50mL)および塩水(50mL)で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、そして濾過した;溶媒を減圧下で取り除くと、粗化合物Uが得られた。化合物Uを、CH
2Cl
2およびMeOHを使用してフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、79%収率(13.7g、14.2mmol)で、泡状固体として化合物Uを得た。LC−MS[M+H]967.5(C
49H
71N
7O
11S+H、計算値:966.5)。
【0229】
化合物Vの調製
化合物U(13.7g、14.2mmol)の溶液を、HCl(1,4−ジオキサン中4.0M溶液、40mL)により周囲温度で90分間、処理した。溶媒を減圧下で取り除き、そして残渣をEt
2O(100mL)で処理した。得られた沈殿物を濾過して取り出し、Et
2O(2×25mL)で洗浄し、そして乾燥させて、91%収率(12.1g、12.9mmol)で、白色固体として粗化合物Vを得た。LC−MS[M+H]867.8(C
44H
63N
7O
9S+H、計算値:866.4)。化合物Vを、さらなる精製を伴わずに次の反応において直接使用した。
【0230】
化合物Xの調製
0℃のDMF(500mL)中化合物V(73.3g、78.14mmol、HCl塩として)、N−カルボキシメチル−マロン酸tert−ブチルエステル(化合物W)(17.0g、78.34mmol)、およびNEt
3(33.0mL、236.7mmol)の溶液に、HATU(30.6g、80.47mmol)を部分量ずつ10分間で添加した。反応混合物を周囲温度で1時間、撹拌した。水(500mL)を添加し、そして混合物をEtOAc(750mL)で抽出した。EtOAc抽出物を、水(2×250mL)、NaHCO
3(2×200mL)および塩水(250mL)で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、そして濾過した。溶液を濃縮し、そして残渣を、CH
2Cl
2中勾配1〜10%MeOHを使用してシリカゲルカラムにより精製し、43%収率(36.0g、33.8mmol)で、白色固体として化合物Xを提供した。LC−MS[M+H]1067.2(C
53H
76N
8O
13S+H、計算値:1065.5)。
【0231】
N−1−[3−(オキシコドン−6−エノール−カルボニル−メチル−アミノ)−2,2−ジメチル−プロピルアミン]−アルギニン−グリシン−マロン酸(化合物KC−8)の調製
化合物X(36.0g、33.8mmol)を、TFA(60mL)およびm−クレゾール(2.0mL)の混合物により周囲温度で処理した。LC/MSにより反応の進行をモニタリングした。4時間後、混合物を減圧下で濃縮して、揮発分のほとんどを取り除いた(約90%溶媒除去)。残渣をエチルエーテル(1L)で処理し、そして白色の沈殿物が形成された。透明な上清を取り除き、そして沈殿物をエチルエーテル(1L)で洗浄した。次いで、固体を濃縮し、HPLC精製に供した。[Nanosyn−Pack Microsorb(100−10)C−18カラム(50×300mm);流速:100mL/分;注入容積15mL;移動相A:100%水、0.1%TFA;移動相B:100%ACN、0.1%TFA;30分における0%〜20%Bの勾配溶離、30分における20%Bでの均一濃度溶離、35分における20%B〜45%Bの勾配溶離;254nmでの検出]。所望の化合物を含有する画分を合わせ、そして減圧下で濃縮した。残渣をACN(60mL)および0.1N HCl(200mL)に溶解し、そして凍結乾燥して、69.6%収率(19.5g、23.5mmol、99.4%純度)で、白色の泡として化合物KC−8を提供した。LC−MS[M+H]758.5(C
36H
52N
8O
10+H、計算値:757.4)。
【0232】
生物学的データ
実施例4:ラットへのPO投与後の化合物KC−8の薬物動態
この例は、ラットに化合物KC−8を経口(PO)投与したときの血漿中へのオキシコドンの放出を示す。
【0233】
化合物KC−8(本明細書の例に記載のとおり調製することができる)の生理食塩水を、表1に示すとおり、経口投与前に16〜18時間絶食させた内頸静脈カテーテルを挿入した雄性Sprague Dawleyラット(1群あたり4匹)に強制経口投与によって投与した。特定の時間点で血液サンプルを採取し、5,400rpm、4℃で5分間遠心して血漿を回収し、各サンプルから100マイクロリットル(μl)の血漿を、2μlの50%ギ酸が入った新しいチューブに移した。チューブを5〜10秒間ボルテックス撹拌し、直ちにドライアイス中に置き、次いでHPLC/MSによる分析まで−80℃のフリーザーに貯蔵した。
【0234】
表1および
図4は、異なる用量の化合物KC−8を投与したラットについてのオキシコドン曝露の結果を提供する。表1の結果は、ラット群ごとに、(a)オキシコドン(OC)の最大血漿中濃度(Cmax)(平均±標準偏差)、(b)化合物KC−8の投与後に最大オキシコドン濃度に達するまでの時間(Tmax)(平均±標準偏差)および(c)0〜24時間の曲線下面積(AUC)(平均±標準偏差)として報告する。
【0235】
【0236】
図4は、漸増用量の化合物KC−8をラットにPO投与した後のオキシコドン放出の経時的な平均血漿中濃度を比較する。
【0237】
表1および
図4の結果は、オキシコドンの血漿中濃度が、ラットにおける化合物KC−8用量に比例して増加することを示す。
【0238】
実施例5:イヌにPO投与した後の化合物KC−8の薬物動態
この例は、化合物KC−8をイヌに経口(PO)投与したときの血漿中へのオキシコドンの放出を示す。この例はまた、そのような放出を、化合物KC−3の放出と比較する。化合物KC−3は、化合物KC−8と異なり、その環化可能なスペーサー脱離基にジェミナルなジメチル基を含まず、かつそのトリプシン切断可能部分にグリシンを欠くオキシコドンプロドラッグである。また、オキシコドンまたはOxyContin(登録商標)錠剤を投与したイヌにおけるオキシコドン血漿中濃度も比較する。
【0239】
試験A
純血種雄若年成犬/成犬ビーグルを一晩絶食させた。漸増用量の化合物KC−8(表2Aに示すとおり)、4.15mg/kg(5.7μmol/kg)の化合物KC−3(各々、本明細書の例に記載のとおり調製することができる)、または2mg/kg(5.7μmol/kg)のオキシコドンHCl(Johnson Matthey Pharmaceutical Materials,West Deptford,NJ,USA)を、水での強制経口投与によって投与した(表2Aは、群あたりのイヌの数を示す)。加えて、4匹のイヌの1群に、イヌ1匹につき20mgのOxyContin(登録商標)錠剤(オキシコドンHCl制御放出)C−II(NDC 59011−420−10、Purdue Pharma,Stamford,CT,USA)を1錠投与した。錠剤投与の後、約5mLの水により嚥下を促進した。オキシコドンおよびOxyContin(登録商標)錠剤の用量は、ほぼ等量を提供するように選択した。各動物から、24時間の期間中の様々な時点で頸静脈から血液を採取し、遠心し、0.8mLの血漿を、8μLギ酸が入った新しいチューブに移した;サンプルをボルテックス撹拌し、次いで直ちにドライアイス中に置き、HPLC/MSによる分析まで−80℃のフリーザーに貯蔵した。
【0240】
表2Aおよび
図5は、示される化合物を投与されたイヌについてのオキシコドン曝露の結果を提供する。表2Aの結果は、イヌの群ごとに、(a)オキシコドン(OC)の最大血漿中濃度(Cmax)(平均±標準偏差)、(b)化合物の投与後に最大オキシコドン濃度に達するまでの時間(Tmax)(平均±標準偏差)および(c)0〜24時間の曲線下面積(AUC)(平均±標準偏差)として報告する。
【0241】
【0242】
図5は、化合物KC−8、化合物KC−3、OxyContin(登録商標)錠剤またはオキシコドンHClをイヌにPO投与した後のオキシコドンの経時的な平均血漿中濃度を比較する。
【0243】
表2Aおよび
図5の結果は、化合物KC−8のイヌへの経口投与が、オキシコドンの投与と比較して、オキシコドンCmaxの抑制、オキシコドンTmaxの遅延およびオキシコドン曝露時間(AUC)の延長をもたらすことを示す。化合物KC−8はまた、化合物KC−3と比べて、イヌ血漿中へのオキシコドンの放出の著しい亢進も提供する(より高いCmaxおよびAUC)。イヌに経口投与された化合物KC−8によるオキシコドン放出の血漿中PKプロファイルは、オキシコドンのものより、OxyContin(登録商標)錠剤のものにより類似している;少なくとも化合物KC−8の薬物曝露時間がOxyContin(登録商標)錠剤と同程度に長い。
【0244】
試験B
また化合物KC−8を、個別の実験において、表2Bに示す用量でイヌに投与し、48時間の期間中の様々な時点でサンプルを採取した。その他の点では、手順は試験Aについて記載した手順と同じであった。
【0245】
表2Bは、漸増用量の化合物KC−8を投与されたイヌについてのオキシコドン曝露の結果を提供する。結果は表2Aの記載のとおり報告され、但しAUCは0〜48時間を計算する。
【0246】
【0247】
表2Bの結果は、化合物KC−8が、イヌにおいて再現性のある用量比例的な経口PKプロファイルを有することを示す。
【0248】
実施例6:化合物KC−8のインビトロトリプシン仲介性プロドラッグ切断およびスペーサー脱離基環化速度
この例は、オキシコドンプロドラッグ化合物KC−8を切断するトリプシンの能力を評価する。この例はまた、化合物KC−22による環化およびオキシコドン放出の速度も評価する。化合物KC−22がトリプシン切断可能部分を欠いていることを除き、化合物KC−22は化合物KC−8と同じである。
【0249】
化合物KC−8を、ウシ膵臓由来のトリプシン(カタログ番号T8003、タイプI、約10,000BAEE単位/mgタンパク質、Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)と共にインキュベートした。具体的には、この反応には、0.761mMの化合物KC−8・2HCl、22.5mMの塩化カルシウム、40〜172mMのトリスpH8および0.25%DMSOが含まれ、トリプシンの活性は様々であった。反応は、37℃で24時間行った。サンプルを特定の時間点で回収し、アセトニトリル中0.5%ギ酸に移してトリプシン活性を停止させ、LC−MS/MSによる分析まで−70℃未満で貯蔵した。
【0250】
環化放出速度は、20℃の50mM pH7.4リン酸緩衝液中における化合物KC−22(初期濃度2.18mM)の消失速度を追うことで計測した。
【0251】
表3は、化合物KC−8をトリプシンに曝露した結果を示す。結果は、トリプシンに曝露したときのプロドラッグの半減期(即ち、プロドラッグトリプシン半減期)として時間単位で表され、およびオキシコドン形成速度としてμモル毎時毎BAEE単位(μmol/h/BAEE U)トリプシンで表される。表3はまた、化合物KC−22の環化可能なスペーサー脱離基の環化速度も示す。結果は、化合物消失の半減期として表される。
【0252】
【0253】
表3の結果は、化合物KC−8がトリプシンにより切断され得ること、および化合物KC−8のスペーサー脱離基が環化し得ること(この結果は化合物KC−22の環化速度により直接示される)を示している。
【0254】
実施例7:トリプシンインヒビター化合物109と同時投与される化合物KC−8のラットへの経口投与
この例は、化合物KC−8がラットに経口投与されたときにオキシコドンを血漿中に放出する化合物KC−8の能力に作用するトリプシンインヒビターの能力を示す。
【0255】
プロドラッグ化合物KC−8(本明細書の例に記載のとおり調製することができる)の生理食塩水を、表4に示すとおり投与した。ラットには、経口投与前に16〜18時間絶食させた内頸静脈カテーテルを挿入した雄性Sprague Dawleyラット(1群あたり4匹)に対する強制経口投与によって、漸増濃度のトリプシンインヒビター化合物109(カタログ番号3081、Tocris Bioscience,Ellisville,MO,USA、またはカタログ番号WS38665、Waterstone Technology,Carmel,IN,USA)を同時投与した。特定の時間点で血液サンプルを採取し、5,400rpm、4℃で5分間遠心して血漿を回収し、各サンプルから100マイクロリットル(μl)の血漿を、2μlの50%ギ酸が入った新しいチューブに移した。チューブを5〜10秒間ボルテックス撹拌し、直ちにドライアイス中に置き、次いでHPLC/MSによる分析まで−80℃のフリーザーに貯蔵した。
【0256】
【0257】
図6Aおよび
図6Bは、化合物109の存在下または非存在下で異なる用量の化合物KC−8を投与したラットについてのオキシコドン曝露の結果を提供する。
【0258】
図6Aは、5mg/kg(6μmol/kg)のプロドラッグ化合物KC−8を、漸増量の同時投与トリプシンインヒビター化合物109と共にラットにPO投与した後の、オキシコドン放出の経時的な平均血漿中濃度を比較する。
【0259】
図6Bは、50mg/kg(60μmol/kg)プロドラッグ化合物KC−8を、漸増量の同時投与トリプシンインヒビター化合物109と共にラットにPO投与した後の、オキシコドン放出の経時的な平均血漿中濃度を比較する。
【0260】
図6Aおよび
図6Bの結果は、Cmaxの抑制および/またはTmaxの遅延によって示されるとおり、ラットにおいてオキシコドンを用量依存的に放出する化合物KC−8の能力を減弱させる化合物109の能力を示している。
【0261】
実施例8:ラットにおけるプロドラッグ化合物KC−8とトリプシンインヒビター化合物109とを含んでなる組成物の単一用量単位および複数用量単位の経口投与
この例は、プロドラッグ化合物KC−8とトリプシンインヒビター化合物109とを含んでなる単一および複数用量単位のラットに対する経口投与の効果を示す。
【0262】
化合物KC−8(本明細書の例に記載のとおり調製することができる)の生理食塩水を、5〜50mg/kg(6〜60μmol/kg)の範囲の漸増濃度でラット(1群あたり4匹)に経口投与した。ここで単一用量は、トリプシンインヒビターの非存在下における5mg/kg(6μmol/kg)の化合物KC−8に相当した。
【0263】
第2のセットのラット(1群あたり4匹)に、以下に記載し、かつ表5に示すとおり、プロドラッグ化合物KC−8およびトリプシンインヒビター化合物109(カタログ番号3081、Tocris Bioscience、またはカタログ番号WS38665、Waterstone Technology)を同時に経口投与した。具体的には、単一用量単位に相当する5mg/kg(6μmol/kg)化合物KC−8と0.5mg/kg(1μmol/kg)化合物109とを含んでなる組成物の生理食塩水を、4匹のラットの群に強制経口投与によって投与した。トリプシンインヒビター対プロドラッグ(109対KC−8)のモル対モル比が0.17対1であることは注記されるべきである;従ってこの用量単位は、本明細書では109対KC−8(0.17対1)用量単位と称される。109対KC−8(0.17対1)用量単位の2用量単位、3用量単位、4用量単位、6用量単位、8用量単位、および10用量単位に相当する生理食塩水(即ち、表5に示すとおり)も同様に、4匹のラットの別の群に投与した。
【0264】
すべてのラットは、経口投与前に16〜18時間絶食させた内頸静脈カテーテルを挿入した雄性Sprague Dawleyラットであった。投与、サンプル採取および分析の手順は、実施例4において記載した手順と同様であった。
【0265】
表5(上半分)および
図7Aは、トリプシンインヒビターの非存在下で化合物KC−8を1、2、3、4、6、8および10用量投与したラットについての血漿中のオキシコドン曝露の結果を提供する。表5(下半分)および
図7Bは、109対KC−8(0.17対1)用量単位を1、2、3、4、6、8および10用量単位投与したラットについての血漿中のオキシコドン曝露の結果を提供する。オキシコドンCmax値、Tmax値およびAUC値は、実施例4に記載されるとおり報告する。
【0266】
【0267】
図7Aは、トリプシンインヒビターの非存在下で投与される化合物KC−8の単一用量および複数用量をPO投与した後のオキシコドン放出の経時的な平均血漿中濃度を比較する。
【0268】
図7Bは、プロドラッグ化合物KC−8とトリプシンインヒビター化合物109とを含んでなる組成物の単一用量単位および複数用量単位をPO投与した後のオキシコドン放出の経時的な平均血漿中濃度を比較する。
【0269】
表5、
図7Aおよび
図7Bの結果は、複数用量単位(1、2、3、4、6、8および10用量単位の109対KC−8(0.17対1)用量単位により例示されるとおり)を投与しても、血漿中オキシコドン濃度−時間PKプロファイルは単一用量単位の血漿中オキシコドン濃度−時間PKプロファイルに用量比例しないことを示している。加えて、複数用量単位のPKプロファイル(例えば、
図7B)は、トリプシンインヒビターの非存在下における等価投薬量のプロドラッグのPKプロファイル(例えば、
図7A)と比較して改変された。
【0270】
実施例9:トリプシンインヒビター化合物109と同時投与される化合物KC−8のイヌへの経口投与
この例は、化合物KC−8がイヌに経口(PO)投与されたときにオキシコドンを血漿中に放出する化合物KC−8の能力に作用するトリプシンインヒビターの能力を示す。
【0271】
純血種雄若年成犬/成犬ビーグルを一晩絶食させた。表6に示すとおり、1.8mg/kg(3.3μmol/kg)化合物109(カタログ番号3081、Tocris Bioscience、またはカタログ番号WS38665、Waterstone Technology)の同時投与有りで、または無しで、18.2mg/kg(22μmol/kg)の化合物KC−8(本明細書の例に記載のとおり調製することができる)を、水で強制経口投与によって投与した。実施例5のとおり血液を採取し、処理し、分析した。
【0272】
表6および
図8は、化合物109の存在下または非存在下で化合物KC−8を投与されたイヌについてのオキシコドン曝露の結果を提供する。表6の結果は、実施例5に記載されるとおり、4匹のイヌの群ごとに報告する。
【0273】
【0274】
図8は、トリプシンインヒビター化合物109の同時投与有りで、または無しで、化合物KC−8をイヌにPO投与した後のオキシコドン放出の経時的な平均血漿中濃度を比較する。
【0275】
表6および
図8の結果は、CmaxおよびAUCの抑制とTmaxの遅延との双方によって化合物KC−8のオキシコドン放出能力を減弱させる化合物109の能力を示している。
【0276】
本発明について、その特定の実施形態を参考にして説明してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよく、かつ同等のものと置き換えてもよいことが、当業者によって理解されるべきである。加えて、本発明の対照、趣旨および範囲に特定の状況、材料、組成物、プロセス、処理工程または工程を適応するために、多くの改変がなされ得る。そのような改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。