特許第6016839号(P6016839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016839
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】接合部材
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/02 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   E04F11/12
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-66434(P2014-66434)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-190136(P2015-190136A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−207059(JP,A)
【文献】 特開平7−324449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00−11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段上端部が連結される上層階床の骨組みに対して使用される接合部材であって、
該接合部材は、上層階床梁の上面に固定される梁接続部と、
該梁接続部から上方に起立し、前記上層階床の床材を支持する調整部と、
該調整部から前記階段方向へと延出し、前記上層階床の前記階段側を規定するとともに前記階段の上端部を規定する階段フレームが取付けられる廊下梁に固定される階段側接続部と、を有して構成されており、
前記調整部の、前記上層階床梁から軒の出に向かう方向の距離は、前記階段側接続部が前記廊下梁に接続可能な距離と整合するように規定されていることを特徴とする接合部材。
【請求項2】
前記調整部の上端部の前記梁接続部からの距離は、前記上層階床梁に対して前記上層階床の前記床材が支持可能となるように、前記調整部の直上に位置する前記上層階床の前記床材の下面と、前記上層階床梁の上面と、の距離と整合するように規定されていることを特徴とする請求項1に記載の接合部材。
【請求項3】
前記梁接続部及び前記調整部は平板状鋼板であるとともに、前記上層階床梁はH型鋼であり、
前記梁接続部には、前記上層階床梁へとボルト固定するためのボルト孔が複数形成されており、
前記梁接続部は、前記上層階床梁のフランジ部上面に固定されるとともに、複数の前記ボルト孔は、前記上層階床梁のウエブ部に対して両側へ分配されて穿孔されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合部材。
【請求項4】
前記廊下梁は溝型鋼であり、側面視コ字形状開口を前記上層階床内部方向に向けて配設されており、
前記側面視コ字形状開口部分には、上部内面壁と下部内面壁とを架橋するように側面内壁に溶接された平板状の接続プレートが少なくとも一数配設されており、
前記階段側接続部は、対応する前記接続プレートに固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載の接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段が設置された建物構造において、階段の端部を床に接続する際の接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物において、下階床と上階床とを連結し、上下階への移動経路とする階段が設置されることは一般的である。
このように階段を設置するに際して、階段の端部を床に接続する必要がある。
例えば、2階床であれば、1階から立ち上がる階段の上端部と、3階へと立ち上がる階段の下端部とを接続する必要がある。
このような、階段の端部を床への接続を簡易化する方法として、様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1においては、階段の接続構造が開示されている。
この技術では、階段を接続するためのブラケットが突設された固定部材を、H型鋼で形成された床梁の階段側に固定する。
床の外装パネルには、このブラケットが貫通する孔が形成されており、固定部材が床梁に固定された状態で、このブラケットはこの外装パネルの孔を貫通して階段上端側に持ち出される。
そして、このブラケットに階段上端部を固定することにより、固定部材を介して床梁に階段上端部が固定されることとなる。
同様に、特許文献2及び特許文献3では、取付金物の一部を上階床を構成するコンクリートに埋設するとともに、取付金物を構成する(複数の)固定金物片を階段上端部側へ持ち出し、この取付金物に階段上端部が取り付けられる構成をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3229494号公報
【特許文献2】特許第3959517号公報
【特許文献3】特許第4650757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術においては、簡易に階段上端部と上階床とを接合する技術が開示されている。
一方、床梁を重量鉄骨で構成する場合、軒の出のサイズが異なったり、様々なサイズの鋼材(例えば、H型鋼)のサイズが想定されるため、床梁に接続される階段もまた、これらにあわせて様々なサイズの階段が必要となる。
しかし、従来では、階段サイズのバリエーションを増やす以外に、軒の出のサイズや床梁等のサイズ変更に対応できる技術がなく、既存の階段を使用して、これら様々なサイズ変更に対応できる技術の開発が望まれていた。
つまり、仕様に伴い、各サイズが変更されたとしても、階段のサイズを変更することなく対応することができる部材の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、軒の出や床梁等の躯体側骨組みのサイズに応じて、階段サイズが影響されることを回避することが可能な接合部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1に係る接合部材によれば、階段上端部が連結される上層階床の骨組みに対して使用される接合部材であって、該接合部材は、上層階床梁の上面に固定される梁接続部と、該梁接続部から上方に起立し、前記上層階床の床材を支持する調整部と、該調整部から前記階段方向へと延出し、前記上層階床の前記階段側を規定するとともに前記階段の上端部を規定する階段フレームが取付けられる廊下梁に固定される階段側接続部と、を有して構成されており、前記調整部の、前記上層階床梁から軒の出に向かう方向の距離は、前記階段側接続部が前記廊下梁に接続可能な距離と整合するように規定されていることにより解決される。
また、このとき、請求項2に記載のように、前記調整部の上端部の前記梁接続部からの距離は、前記上層階床梁に対して前記上層階床の前記床材が支持可能となるように、前記調整部の直上に位置する前記上層階床の前記床材の下面と、前記上層階床梁の上面と、の距離と整合するように規定されているとよい
【0008】
このように構成されていることにより、軒の出のサイズが異なっても、調整部の上層階床梁から軒の出に向かう方向(つまり、水平方向)のサイズを変更することにより、簡易に対応することが可能となる。
よって、軒の出のサイズが変更されても、対応するサイズの調整部を有する接合部材に変更することにより、容易に対応することができる。
このため、階段のサイズ変更等の大がかりな変更を行うことなく、躯体側のサイズ変更に柔軟に対応することができる。
同様に、調整部は、調整部の上端部が上層階床の床材を支持した状態で、上層階床梁に固定された梁接続部と床材との間を突っ張り架橋するように配設されることとなるため、調整部の梁接続部からの距離(つまり、鉛直方向の距離)を変更することにより、床材と上層階床梁との間の距離の変更に対応可能となる。
このように、上層階床梁のサイズが変更されても、対応するサイズの調整部を有する接合部材に変更することにより、容易に対応することができる。
このため、上記と同様に、階段のサイズ変更等の大がかりな変更を行うことなく、躯体側のサイズ変更に柔軟に対応することができる。
【0009】
このとき、請求項3に記載のように、前記梁接続部及び前記調整部は平板状鋼板であるとともに、前記上層階床梁はH型鋼であり、前記梁接続部には、前記上層階床梁へとボルト固定するためのボルト孔が複数形成されており、前記梁接続部は、前記上層階床梁のフランジ部上面に固定されるとともに、複数の前記ボルト孔は、前記上層階床梁のウエブ部に対して両側へ分配されて穿孔されると好適である。
このようにウエブを避けるようなボルト孔位置構成をとると、様々な梁幅サイズに対応することができる。
また、ウエブを挟んで等間隔の位置にボルト孔を形成して当該位置でボルト締結することとすると、荷重が偏ることを防止し、適切にウエブに荷重を負担させることができるため好適である。つまり、偏りなくウエブに荷重が流れることとなる。
【0010】
このとき、具体的には、請求項4に記載されたように、前記廊下梁は溝型鋼であり、側面視コ字形状開口を前記上層階床内部方向に向けて配設されており、前記側面視コ字形状開口部分には、上部内面壁と下部内面壁とを架橋するように側面内壁に溶接された平板状の接続プレートが少なくとも一数配設されており、前記階段側接続部は、対応する前記接続プレートに固定されるよう構成されていると、必要箇所に適宜接合部材を配設することができるため好適である。
【0011】
また、このとき、接合部材は、設置後コンクリートに埋設されるものであり、上層階床梁は、防火部材により被覆されるものであると好適である。
このように防火ラインが構成されていると、より高い防火性を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、躯体側の骨組みと階段を連結する際に、アダプタとして機能する接合部材を提供することができる。
このため、本発明に係る接合部材(調整部)のサイズを変えるのみで、軒の出や床梁等の躯体側骨組みのサイズによって、階段サイズを変更する必要がなくなる。
よって、階段のサイズを変更することを余儀なくされていた従来技術に比して、コスト面において有利であるとともに、アダプタとして機能するため作業性においても良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る接合部材の適用箇所である屋外階段を示す側面説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合部材の二面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る屋外階段の上面説明図である。
図4図3のA−A線断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る接合部材の高さ調整機能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、均等範囲を含むことはもちろんのこと、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、床梁等の躯体側骨組みのサイズに影響されることなく、簡易に階段を接続可能な接合部材に関するものである。
【0015】
図1乃至図5は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、図1は接合部材の適用箇所である屋外階段を示す側面説明図、図2は接合部材の二面図、図3は屋外階段の上面説明図、図4図3のA−A線断面図、図5は接合部材の高さ調整機能を示す説明図である。
【0016】
本実施形態においては、図1に示すように、各階床、踊り場、地表面、側面ジグザグ状に連絡する屋外階段Rを例にして、本発明を適用した例を示す。
しかしながら、これに限られるものではなく、階層はどのような階層を連絡するものでよいことはもちろんのこと、屋内に設置された階段においても好適に使用することも可能である。
つまり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、どのような階段、梯子等の接続に使用されていてもよい。
【0017】
図1に、本実施形態に係る階段接合部材1が使用される場所の外観側面図を示す。
図1に示すように、本実施形態においては、上階床P1から、踊り場P2を介して(ここで方向転換されて)、地表面に形成された基礎P3にアクセスできるように階段Rが側面視く字形状に架け渡されている。
基礎P3は、土間コンクリートの上に仕上げモルタルを積層して形成されており、この基礎P3から上端が突出した状態で埋設された複数のアンカーボルトP4により、階段Rの最下端部が固定されている。
【0018】
本実施形態は、図1のX部に適用されるものであるため、当該部分について詳述する。
つまり、本実施形態は、上階床の床梁H1と階段Rの端部を連結部に係るものであり、この連結を行うための接合部材1に関して説明を行う。
図2に本実施形態に係る接合部材1を説明する。
本実施形態に係る接合部材1は、梁接続部11、調整部12、階段側接続部13を有して構成されている。
本実施形態に係る梁接続部11は、矩形鋼板であり、短辺に沿って2個並列するボルト孔V1,V1と、このボルト孔V1,V1から他方の短辺側に(短辺に沿って)2個並列して形成されたボルト孔V2,V2と、が形成されている。
【0019】
なお、本実施形態においては、床梁H1は、H型鋼で形成されており、図4に示すように、床梁H1の上方のフランジH11に梁接続部11が固定された際、ボルト孔V1とボルト孔V2の位置は、当該ボルト孔V1とボルト孔V2の間に、床梁H1のウエブH12が配置されるよう構成されている。
このように、ウエブH12を避けるように、ボルト孔V1,V2位置を規定すると、様々な梁幅サイズに対応することができる。
また、ウエブH12を挟んで等間隔の位置にボルト孔V1,V2を形成して当該位置でボルト締結することとすると、荷重が偏ることを防止し、適切にウエブH12に荷重を負担させることができるため好適である。つまり、偏りなくウエブH12に荷重が流れるよう構成することが可能となる。
【0020】
本実施形態に係る調整部12は、梁接続部11から略垂直に起立する矩形鋼板である。
調整部12は、梁接続部の両短辺の中央部を連結するとともに長辺に平行となる位置に立上っている。
調整部12の上方部(梁接続部11から離れる方向側)には、根太接続用のボルト孔V3,V3が並列して形成されている。
本実施形態に係る階段側接続部13は、調整部12から梁接続部11外部へと延出している略矩形状部分である。
階段側接続部13は、調整部12よりも高さ(梁接続部11からの距離)が若干小さく形成された矩形状部分であり、高さ方向(梁接続部11面と垂直な方向)に並列して廊下梁H3接続用(直接的には、接続プレートH31接続用)のボルト孔V4,V4が形成されている。
【0021】
このように構成された接合部材1の配設状態を図4により説明する。
図4に示すように、梁接続部11は、梁H1に接続される。
なお、梁H1には、ボルト孔V1,V1,V2,V2に整合するボルト孔が形成されており、これらにより梁接続部11がボルトにより固定される。
また、調整部12の上方のボルト孔V3,V3は、根太H2にボルトにより固定される。
そして、階段側接続部13のボルト孔V4,V4は、廊下梁H3に接続プレートH31を介して取付られる。
本実施形態においては、廊下梁H3は、溝型鋼で構成されており、この溝型鋼の側面コ字の上内壁面と下内壁面とを架橋するように、矩形鋼板の接続プレートH31が溶接されており、階段側接続部13は、この接続プレートH31に取付けられる。
【0022】
なお、この接続プレートH31は、複数の接合部材1が使用されている場合には、これら複数の接合部材1に対応する所定の箇所に適宜配設されている。
この状態で、調整部12の上端部である天辺12aは、上階床P1を構成する床材P11を支持するよう構成されている。
また、この廊下梁H3の外側(接続プレートH31が配設される側と反対側)には、階段フレームH4が取り付けられる。
【0023】
このように、本実施形態に係る接合部材1は、廊下梁H3、梁H1、根太H2にボルト固定された状態で、床材P11を支持している。
この各接続が成された状態で、コンクリートKが打設され、接合部材1は、このコンクリートKに埋設される。
なお、梁H1は、防火材Mにより被覆されているため、このコンクリートKと併せて、より確実な防火ラインを確保することができる。
【0024】
次いで、図5により、調整機能について説明する。
図5(a)及び図5(b)に示すように、梁H1として使用されるH型鋼の高さが変わったとしても、接合部材1を構成する調整部12の高さを変更することにより、高さの差を吸収することができる。
つまり、梁H1の高さ差(Δt)を、調整部12の高さ差(t1−t2)とすることにより、同じ上階床P1のラインを保ち、双方同じ階段Rを使用することが可能となる。
このように、本実施形態に係る接合部材1は、調整部12の高さを変更したバリエーションにより、梁H1の高さの差を調整することができる。
よって、梁H1のサイズが変わる毎に階段R自体のサイズを変更する必要がなく、接合部材1のサイズを変更するのみで対応できるため、コストを大幅に抑えることができるとともに作業性もよくなる。
【0025】
また、図5(a)及び図5(c)に示すように、軒の出のサイズが異なっても対応することが可能となる。
つまり、図5(c)に示すように、軒の出がt3長くなった場合であっても、接合部材1の調整部12の長さをt3長くすることにより、両者の差を調整することができる。
よって、軒の出のサイズが変わる毎に階段R自体のサイズを変更する必要がなく、接合部材1のサイズを変更するのみで対応できるため、コストを大幅に抑えることができるとともに作業性もよくなる。
以上のように、本実施形態に係る接合部材1は、アダプタとして機能することとなる。
【符号の説明】
【0026】
1 接合部材
11 梁接続部
12 調整部
12a 天辺
13 階段側接続部
H1 梁(上層階床梁)
H11 フランジ
H12 ウエブ
H2 根太
H3 廊下梁
H31 接続プレート
H4 階段フレーム
K コンクリート
M 防火材
P1 上階床(上層階床)
P11 床材
P2 踊り場
P3 基礎
P4 アンカーボルト
R 階段
V1,V2,V3,V4 ボルト孔
図1
図2
図3
図4
図5