(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016858
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】金属基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20161013BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
B32B15/08 J
B32B15/08 Q
H05K3/00 R
H05K3/00 L
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-165273(P2014-165273)
(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公開番号】特開2015-168261(P2015-168261A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2014年8月14日
(31)【優先権主張番号】103107985
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514209308
【氏名又は名称】佳勝科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(74)【代理人】
【識別番号】100107560
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】李 弘榮
【審査官】
中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/093427(WO,A1)
【文献】
特開2010−125794(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/004520(WO,A1)
【文献】
特開2011−020399(JP,A)
【文献】
特開2002−353582(JP,A)
【文献】
特開2003−338671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H05K 3/00− 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の改質表面及び前記第1の改質表面に対向する第2の表面を有する第1の絶縁基材であって、前記第1の改質表面は15〜25ダイン/cmの表面エネルギーを有する、前記第1の絶縁基材と、 前記第2の表面に対面する第1の金属層と、 前記第1の改質表面に貼り合わせられ、前記第1の絶縁基材が離型層と前記第1の金属層との間に位置するようにする離型層と、 前記離型層の片側に位置し、前記離型層が前記第1の改質表面と第2の絶縁基材との間に位置するようにする第2の絶縁基材と、 前記第2の絶縁基材の片側に位置し、前記第2の絶縁基材が前記離型層と第2の金属層との間に位置するようにする第2の金属層と、 を備え、 前記第1の絶縁基材と前記第2の絶縁基材の材質は、それぞれポリイミド(Polyimide;PI)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate;PET)、テフロン(登録商標)(Teflon)、液晶高分子(Liquid Crystal Polymer;LCP)、ポリエチレン(Polyethylene;PE)、ポリプロピレン(Polypropylene;PP)、ポリスチレン(Polystyrene;PS)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride;PVC)、ナイロン(Nylon or Polyamides)、アクリル(Acrylic)、アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック(Acrylonitrile‐Butadiene‐Styrene)、フェノール樹脂(Phenolic Resins)、エポキシ樹脂(Epoxy)、ポリエステル(Polyester)、シリコーン(Silicone)、ポリウレタン(Polyurethane;PU)、ポリアミド‐イミド(polyamide‐imide;PAI)及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれたものである金属基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁基材と前記第1の金属層との間に位置する第1の接着剤層を更に備える請求項1に記載の金属基板。
【請求項3】
前記第2の絶縁基材と前記第2の金属層との間に位置する第2の接着剤層を更に備える請求項1に記載の金属基板。
【請求項4】
前記第1の絶縁基材と前記第1の金属層との間に位置する第1の接着剤層と、 前記第2の絶縁基材と前記第2の金属層との間に位置する第2の接着剤層と、 を更に備える請求項1に記載の金属基板。
【請求項5】
前記第2の絶縁基材の前記離型層に対面する側に、前記第1の改質表面と同様な第2の改質表面を有する請求項1に記載の金属基板。
【請求項6】
前記離型層は、エラストマー系感圧接着剤又は樹脂系感圧接着剤を含む請求項1に記載の金属基板。
【請求項7】
前記第1の改質表面は、‐CH3、‐COOH、‐COOCH3、‐COOC2H5、‐NH2、‐NO2、‐OH、‐CONH2及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を含む請求項1に記載の金属基板。
【請求項8】
前記第1の金属層と前記第2の金属層は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、錫(Sn)、鉛(Pb)、鉛−錫合金(Sn−Pb Alloy)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ステンレス(stainless steel)又は上記の任意の組み合わせを含む請求項1に記載の金属基板。
【請求項9】
第1の表面及び前記第1の表面に対向する第2の表面を有する第1の絶縁基材と、第1の金属層とを含み、前記第2の表面が前記第1の表面と前記第1の金属層との間に位置する第1の片面基板構造を提供する工程と、 前記第1の表面に対して第1の改質プロセスを行う工程であって、改質された前記第1の表面は15〜25ダイン/cmの表面エネルギーを有するよう前記第1の表面が形成される工程と、 離型層を提供する工程と、 第2の絶縁基材と、第2の金属層とを含む第2の片面基板構造を提供する工程と、 前記第1の片面基板構造、前記第2の片面基板構造及び前記離型層の3つを、前記離型層が前記第1の改質表面と前記第2の絶縁基材との間に位置し、前記第2の絶縁基材が前記離型層と前記第2の金属層との間に位置するように貼り合わせる工程と、 を備え、 前記第1の絶縁基材と前記第2の絶縁基材の材質は、それぞれポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、テフロン(登録商標)、液晶高分子、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド‐イミド及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれたものである金属基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1の片面基板構造を提供する工程は、前記第1の絶縁基材と前記第1の金属層との間に、第1の接着剤層を提供する工程を更に含む請求項9に記載の金属基板の製造方法。
【請求項11】
前記第2の片面基板構造を提供する工程は、前記第2の絶縁基材と前記第2の金属層との間に、第2の接着剤層を提供する工程を更に含む請求項9に記載の金属基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1の片面基板構造、前記第2の片面基板構造及び前記離型層の3つを貼り合わせる前に、前記第2の絶縁基材の前記離型層に対面する表面に対して第2の改質プロセスを行う工程を更に含む請求項9に記載の金属基板の製造方法。
【請求項13】
前記第1の改質プロセスは、プラズマ処理プロセス、紫外線照射プロセス、又はアルカリ性溶液浸潤プロセスを含む請求項9に記載の金属基板の製造方法。
【請求項14】
前記離型層は、エラストマー系感圧接着剤又は樹脂系感圧接着剤を含む請求項9に記載の金属基板の製造方法。
【請求項15】
前記第1の表面は、‐CH3、‐COOH、‐COOCH3、‐COOC2H5、‐NH2、‐NO2、‐OH、‐CONH2、及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を含む請求項10に記載の金属基板の製造方法。
【請求項16】
前記第1の金属層と前記第2の金属層は、銅、アルミニウム、金、銀、錫、鉛、鉛−錫合金、鉄、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、亜鉛、マンガン、コバルト、ステンレス又は上記の任意の組み合わせを含む請求項9に記載の金属基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板及びその製造方法に関し、特に、金属基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板は、電子製品において不可欠な材料であり、消費電子製品に対する需要の成長に従って、プリント回路基板に対する需要も日増しに増えている。フレキシブルプリント回路基板は、可撓性及び3次元配線可能性等の特性を有するため、科学技術的電子製品が軽量化、薄型化、小型化及び可撓性を強調する発展傾向において、現在、コンピュータ及びその周辺機器、通信製品及び消費電子製品等に幅広く適用されている。
【0003】
典型的なプリント回路基板としては、樹脂(Resin)、ガラス繊維(Glass fiber)又は他の可塑化材質のような誘電体基板、及び銅箔(Copper foil)又は他の金属材料層のような高純度の導体層によって形成された複合構造(Composite material)のものである。フレキシブル銅箔基板(Flexible Copper Clad Laminate)を例にして、ポリイミド(Polyimide;PI)基材を誘電体基板の主成分とし、塗布法(Casting)又は熱ラミネート法(Lamination)によって、ポリイミド基材の表面に接着剤無しの片面銅箔を塗布又は貼り合わせたものである。
【0004】
現在、電子システムは軽量化、薄型化、小型化、且つ低コスト化の方向へ発展しているため、フレキシブルプリント回路基板の選用も、超薄、高密度及び多機能化の方向へ発展する。しかしながら、単層のポリイミド基材で超薄のフレキシブルプリント回路基板を製造する技術を採用するため、基材の剛性が不足し、加工プロセスにおいて、折り傷、衝突損傷又はデラミネーション(delamination)の問題を引き起こしやすく、生産の歩留まりとサイズの安定性に影響を与えてしまう。これに鑑みて、現在では、更に塗布又は転写法によって接着層を単層のポリイミド基材の表面に形成し、補強層で接着層を貼り合わせて覆い、ラミネートして当該補強層をポリイミド基材に緊密に接着させて、超薄の銅箔基板へ補強作用を与え、超薄のフレキシブルプリント回路基板の歩留まりを向上させる複合構造を得ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高圧高温の熱ラミネートの作用で、接着剤は、ポリイミド基材と少し溶接作用を生じ、後で補強層を剥離する場合、接着剤が残りやすく、製品の不良率が高くなってしまう。補強層を保留すると、更にフレキシブルプリント回路基板の厚さを増加するにすぎない。このため、従来の技術の面する問題を解決する先進的なプリント回路基板及びその製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、第1の改質表面及び第1の改質表面に対向する第2の表面を有する第1の絶縁基材と、第2の表面に対面する第1の金属層と、第1の改質表面に貼り合わせられ、第1の絶縁基材が離型層と第1の金属層との間に位置するようにする離型層と、離型層の片側に位置し、離型層が第1の改質表面と第2の絶縁基材との間に位置するようにする第2の絶縁基材と、第2の絶縁基材の片側に位置し、第2の絶縁基材が離型層と第2の金属層との間に位置するようにする第2の金属層と、を備え、第1の絶縁基材と第2の絶縁基材の材質は、それぞれポリイミド(Polyimide;PI)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate;PET)、テフロン(登録商標)(Teflon)、液晶高分子(Liquid Crystal Polymer;LCP)、ポリエチレン(Polyethylene;PE)、ポリプロピレン(Polypropylene;PP)、ポリスチレン(Polystyrene;PS)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride;PVC)、ナイロン(Nylon or Polyamides)、アクリル(Acrylic)、アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック(Acrylonitrile‐Butadiene‐Styrene)、フェノール樹脂(Phenolic Resins)、エポキシ樹脂(Epoxy)、ポリエステル(Polyester)、シリコーン(Silicone)、ポリウレタン(Polyurethane;PU)、ポリアミド‐イミド(polyamide‐imide;PAI)及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれたものであり、第1の改質表面は、初期表面粗さを有し、離型層と分離した後、第1の改質表面の初期表面粗さの変化量が実質的に10%よりも小さい金属基板を提供することにある。
【0007】
本発明の一実施例において、金属基板は、第1の絶縁基材と第1の金属層との間に位置する第1の接着剤層を更に備える。本発明の一実施例において、金属基板は、第2の絶縁基材と第2の金属層との間に位置する第2の接着剤層を更に備える。本発明の一実施例において、金属基板は、第1の絶縁基材と第1の金属層との間に位置する第1の接着剤層と、第2の絶縁基材と第2の金属層との間に位置する第2の接着剤層と、を更に備える。
【0008】
本発明の一実施例において、第2の絶縁基材の離型層に対面する側に、第1の改質表面と同様な第2の改質表面を有する。
【0009】
本発明の一実施例において、離型層は、エラストマー系感圧接着剤、樹脂系感圧接着剤又は両者の組み合わせを含む。
【0010】
本発明の一実施例において、第1の改質表面は、‐CH
3、‐CH
2、‐O‐、‐COOH、‐COOHCH
3、‐COOHC
2H
5、‐NH
2、‐NO
2、‐OH、‐CONH
2、‐CONH、‐SiO
2及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を含む。
【0011】
本発明の一実施例において、第1の改質表面の表面エネルギー(surface energy)は、実質的に3ダイン/cm(dyn/cm)よりも大きい。
【0012】
本発明の一実施例において、第1の金属層と第2の金属層は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、錫(Sn)、鉛(Pb)、鉛−錫合金(Sn−Pb Alloy)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ステンレス(stainless steel)又は上記の任意の組み合わせを含む。
【0013】
本発明の別の側面は、まず、第1の表面及び第1の表面に対向する第2の表面を有する第1の絶縁基材と、第1の金属層とを含み、第2の表面が第1の表面と第1の金属層との間に位置する第1の片面基板構造と、離型層と、第2の絶縁基材と、第2の金属層とを含む第2の片面基板構造と、を提供する工程と、同時に、第1の表面に対して第1の改質プロセスを行う工程と、次に、第1の片面基板構造、第2の片面基板構造及び離型層の3つを、離型層が第1の改質表面と第2の絶縁基材との間に位置し、第2の絶縁基材が離型層と第2の金属層との間に位置するように貼り合わせる工程と、を備え、第1の絶縁基材と第2の絶縁基材の材質は、それぞれポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、テフロン(登録商標)、液晶高分子、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド‐イミド及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれたものであり、前記第1の表面は、初期表面粗さを有し、前記離型層と分離した後、前記初期表面粗さが実質的に10%よりも小さい変化量を有する金属基板の製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の一実施例において、第1の片面基板構造を提供する工程は、第1の絶縁基材と第1の金属層との間に、第1の接着剤層を提供する工程を更に含む。
【0015】
本発明の一実施例において、第2の片面基板構造を提供する工程は、第2の絶縁基材と第2の金属層との間に、第2の接着剤層を提供する工程を更に含む。
【0016】
本発明の一実施例において、第1の片面基板構造、第2の片面基板構造及び離型層を貼り合わせる前に、第2の絶縁基材の離型層に対面する表面に対して第2の改質プロセスを行う工程を更に含む。
【0017】
本発明の一実施例において、改質プロセスは、プラズマ処理プロセス、紫外線照射プロセス、又はアルカリ性溶液浸潤プロセスを含む。
【0018】
本発明の一実施例において、離型層は、エラストマー系感圧接着剤又は樹脂系感圧接着剤を含む。
【0019】
本発明の一実施例において、第1の表面は、‐CH
3、‐CH
2、‐O‐、‐COOH、‐COOHCH
3、‐COOHC
2H
5、‐NH
2、‐NO
2、‐OH、‐CONH
2、‐CONH、‐SiO
2及び上記の任意の組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を含む。
【0020】
本発明の一実施例において、第1の表面は、実質的に3ダイン/cmよりも大きい表面エネルギーを有する。
【0021】
本発明の一実施例において、第1の金属層と第2の金属層は、銅、アルミニウム、金、銀、錫、鉛、鉛−錫合金、鉄、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、亜鉛、マンガン、コバルト、ステンレス又は上記の任意の組み合わせを含む。
【0022】
上記実施例によれば、本発明は、それぞれ絶縁基材と金属層を含む2つの片面基板構造の金属基板を、離型層で貼り合わせた金属基板であって、一方の片面基板構造の金属基板の絶縁基材の離型層との貼り合わせ界面に、改質プロセスを行うことにより、改質表面を有するようにし、この絶縁基材を離型層(又は別の絶縁基材)と分離した場合、この絶縁基材の改質表面の表面粗さは、離型層と貼り合わる前の初期表面粗さに比べて、その変化量が実質的に10%よりも小さい金属基板を提供する。
【発明の効果】
【0023】
このような二重金属基板によってプリント回路基板を製造する場合、片面基板構造の金属基板の構造強度を補強して、プリント回路基板のプロセスでの折り傷、衝突損傷又はデラミネーションの発生を防止し、プリント回路基板の歩留まりを向上できることに加えて、絶縁基材の改質表面の表面エネルギーが低く、離型層と貼り合わせられた後、接着剤を残さずに容易に分離できる特性を利用して、2つの片面基板構造の金属基板を一時的にラミネートし、プリント回路基板の全プロセスを経た後で更に分離することにより、2つの片面基板構造を有するプリント回路基板を同時に製造することができ、このように、一層にプリント回路基板プロセスの効率と生産能力を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明の一実施例に基づいて示されたプリント回路基板の製造プロセスの構造断面模式図である。
【
図1B】本発明の一実施例に基づいて示されたプリント回路基板の製造プロセスの構造断面模式図である。
【
図1C】本発明の一実施例に基づいて示されたプリント回路基板の製造プロセスの構造断面模式図である。
【
図1D】本発明の一実施例に基づいて示されたプリント回路基板の製造プロセスの構造断面模式図である。
【
図1E】本発明の一実施例に基づいて示されたプリント回路基板の製造プロセスの構造断面模式図である。
【
図1F】本発明の一実施例に基づいて示されたプリント回路基板の製造プロセスの構造断面模式図である。
【
図2】本発明の別の実施例に基づいて示された両面基板構造の金属基板の構造断面図である。
【
図3】本発明のまた他の実施例に基づいて示された両面基板構造の金属基板の構造断面図である。
【
図4】本発明の更に別の実施例に基づいて示された両面基板構造の金属基板の構造断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、離型層で互いに貼り合わせられた2つの片面基板構造の金属基板を備える両面基板構造の金属基板を提供することにある。一方の片面基板構造の金属基板で採用された絶縁基材が一時的に絶縁貼付層と貼り合わせ/離型(bond/debond)可能な特性を有することで、プロセスで基材が折り傷、衝突損傷又はデラミネーション等が発生しやすい問題を解決し、更にプロセスの歩留まりと効率を大幅に向上させることができる。本発明の前記又は他の目的、特徴、及びメリットをより分かりやすくするために、以下では、特に、複数の金属基板及びその製造方法を好ましい実施例として挙げて、添付の図面に合わせて、下記のように詳しく説明する。
【0026】
図1A〜1Eを参照されたい。
図1A〜1Eは、本発明の一実施例に基づいて示された両面基板構造の金属基板100の製造プロセスの構造断面模式図である。両面基板構造の金属基板100を製造する方法は、まず、互いに対向する第1の表面101aと第2の表面101bを有する第1の絶縁基材101(
図1Aに示すように)を提供する工程を備える。
【0027】
本発明のある実施例において、第1の絶縁基材101は、ベーク板、ガラス繊維板又は様々なプラスチック板材であってもよい。例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、テフロン(登録商標)、液晶高分子、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド‐イミド及び上記の任意の組み合わせがある。
【0028】
本発明の一実施例において、第1の絶縁基材101は、ガラス繊維、不織布材料、及び樹脂からなる絶縁部分によって、更にエポキシ樹脂と銅箔によってプレスされてなるプリプレグ(prepreg)であってもよい。本発明の別の実施例において、第1の絶縁基材101は、フレキシブルポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はテフロン(登録商標)フィルムであってもよい。本実施例において、好ましくは、第1の絶縁基材101は、厚さが実質的に5μm〜200μmにあるポリイミドフィルムである。第1の絶縁基材101は、100℃〜200℃での熱線膨張係数が実質的に5ppm/℃〜60ppm/℃にあり、ガラス転移温度(Glass transition temperature;Tg)が実質的に200℃〜450℃にある。
【0029】
このポリイミドフィルムを形成する方式としては、二無水物化合物、ジアミン化合物モノマー及びポリアミド酸溶液を含有する溶剤によって合成する。二無水物化合物としては、2,2‐ビス(3,4‐ジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4‐(2,5‐ジオキソテトラヒドロフラン‐3‐イル)‐1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン‐1,2‐ジカルボン酸二無水物(TDA)、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(benzophenone tetracarboxylic dianhydride;BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(Biphenyltetracarboxylic dianhydride;BPDA)、4,4,‐オキシジフタル酸二無水物(4,4,‐Oxydiphthalic dianhydride;4,4,‐ODPA)、3,4,‐オキシジフタル酸無水物(3,4,‐Oxydiphthalic dianhydride;3,4,‐ODPA)、ビス‐ジカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(bis dicarboxyphenyl dimethylsilane dianhydride、SiDA)、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(Bis(dicarboxyphenoxy)diphenyl sulfide dianhydride;BDSDA)、1,4,5,8‐ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8‐Naphthalenetetracarboxylicdianhydride;NTCDA)、ハイドロキノンジフタル酸無水物(hydroquinnone diphtalic anhydride;HQDA)、ビスフェノールA二無水物(4,4′‐bisphenol A dianhydride;BPADA)、1,3‐ジヒドロ‐1,3‐ジオキソ‐5‐イソベンゾフランカルボン酸フェニレンエステル(1,3‐dihydro‐1,3‐dioxo‐5‐isobenzofurancarboxylic acid phenylene ester;TAHQ)、3,3′,4,4′‐ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3′,4,4′‐Diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(sulfonyldiphthalic anhydride、SO 2 DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane‐1,2,3,4‐tetracarboxylic dianhydride;CBDA)、(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(isopropylidene di‐phenoxy)bis(phthalic anhydride)、6HBDA)等の1種類又は複数種類を含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
ジアミン化合物としては、4,4‐ジアミノジフェニルエーテル(4,4′‐oxydianiline;4,4′‐ODA)、3,4‐ジアミノジフェニルエーテル(3,4′‐Oxydianiline;3,4′‐ODA)、3,3′‐ジヒドロキシ‐4,4′‐ジアミノビフェニル(3,3′‐dihydroxy‐4,4′‐diamino‐biphenyl;HAB)、パラフェニレンジアミン(para‐phenylenediamine;p‐PDA)、m‐フェニレンジアミン(m‐PDA)、p‐メチレンジアミン(pMDA)、m‐メチレンジアミン(mMDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(Bis aminophenoxy benzene、133APB、134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(bis aminophenoxy phenyl hexafluoropropane、4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(bis aminophenyl hexafluoropropane、33‐6F、44‐6F)、ジアミノジフェニルスルホン(bis aminophenyl sulfone、4DDS、3DDS)、2,2‐ビス(4‐[4‐アミノフェノキシ]フェニル)プロパン(2,2‐Bis(4‐[4‐aminophenoxy]phenyl)propane;BAPP)、2,2‐ビス(4‐[3‐アミノフェノキシ]フェニル)スルホン(2,2‐Bis(4‐[3‐aminophenoxy]phenyl)sulfone;m‐BAPS)、1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4‐Bis(4‐aminophenoxy)benzene、TPE‐Q)、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3‐Bis(4‐aminophenoxy)benzene、TPE‐R)、1,3‐ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3‐Bis(3‐aminophenoxy)benzene;APB)、4,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ビフェニル(4,4′‐Bis(4‐aminophenoxy)biphenyl;BAPB)、1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)‐2,5‐t‐ブチルベンゼン(1,4‐Bis(4‐aminophenoxy)‐2,5‐di‐t‐butylbenzene;DTBAB)、4,4′‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(4,4′‐Bis(4‐aminophenoxy)benzophenone、BAPK)、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)、シクロヘキサンジアミン(Cyclohexanediamine、13CHD、14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(bis aminophenoxy phenyl propane、6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(Bis aminohydroxyphenyl hexafluoropropane、DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(bis aminophenoxy diphenyl sulfone、DBSDA)等の1種類又は複数種類を含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
ポリアミド酸溶液を含有する溶剤としては、N‐メチル‐2‐ピロリドン(N‐methyl‐2‐pyrrolidone;NMP)、N,N‐ジメチルアセトアミド(N,N‐dimethylacetamide;DMAc)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone、GBL)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide;DMF)、2‐ブトキシエタノール(2‐Butoxyethanol)、2‐エトキシエタノール(2‐Ethoxyethanol)等の1種類又は複数種類の溶剤の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明のある好ましい実施例において、ポリイミドフィルムは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、フェニレンジアミン(PDA)及びジアミノジフェニルエーテル(ODA)によって合成されたものであり、この三者の好ましいモル分率として、好ましくは1:0.5:0.5、1:0.7:0.3又は1:0.3:0.7であってもよい。
【0033】
その後、第1の絶縁基材101の第2の表面101bに第1の接着剤層103を形成する。更に、第1の接着剤層103の片側に、当該第1の接着剤層103が第1の絶縁基材101の第2の表面101bと第1の金属層102との間に位置するように第1の金属層102を形成し、(
図1Bに示すような)3層の複合構造を構成する。
【0034】
本発明のある実施例において、第1の金属層102は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、錫(Sn)、鉛(Pb)、鉛−錫合金(Sn−Pb Alloy)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ステンレス(stainless steel)又は上記の任意の組み合わせを含む。例えば、本実施例において、第1の金属層102は、厚さが実質的に3μm〜210μmにある銅箔層であってもよい。熱ラミネート法によって、熱可塑性の第1の接着剤層103を用いて、高温高圧で第1の金属層102を第1の絶縁基材101の第2の表面101bに貼り合わせる。第1の接着剤層103は、エポキシ樹脂(Epoxy Resins)、フェノキシ樹脂(Phenoxy Resin)、アクリル酸樹脂(Acrylic Resin)、ウレタン樹脂(Polyurethane Resin)、シリコーンゴム(Silicone Rubber)系樹脂、ポリパラキシレン(Poly‐para‐xylylene ; Parylene)系樹脂、ビスマレイミド樹脂(Bimaleimide Resin)、ポリイミド樹脂(Polyimide Resin)又はその混合物を含む。
【0035】
次に、第1の絶縁基材101の第1の表面101aに改質プロセス104を行って、改質表面101cを形成し、これにより、(
図1Cに示すような)接着剤付きの片面基板構造の金属基板10の調製を達成する。本発明のある実施例において、改質プロセス104は、プラズマ処理プロセスであってもよい。例えば、アルゴン(Ar)及び窒素(N2)の反応雰囲気によって、第1の絶縁基材101の第1の表面101aを改質する。ガス流量が実質的に50リットル/分(L/min)〜100リットル/分にあり、アルゴンと窒素の含有量比が実質的に1:1〜1:20にあり、動作電圧が実質的に300ボルト(V)〜600ボルトにあり、操作時間が実質的に10秒〜50秒にある。本発明の1つの好ましい実施例において、改質プロセス104のガス流量が実質的に70リットル/分であり、アルゴンと窒素の含有量比が実質的に3:8であり、動作電圧が実質的に500ボルトであり、操作時間が20秒である。
【0036】
本発明の他のある実施例において、改質プロセス104は、紫外線照射プロセスであってもよい。例えば、真空度が実質的に2torrの条件で、波長が実質的に180nm〜270nmにある紫外線によって、第1の絶縁基材101の第1の表面101aを照射し、照射時間が実質的に20秒〜80秒にある。本発明のある実施例において、好ましくは、波長が182nm、184nm又は254nmである紫外線で、第1の絶縁基材101の第1の表面101aを60秒照射する。中でも、特に波長が182nmである紫外線の効果が良い。
【0037】
本発明のまた他のある実施例において、改質プロセス104は、アルカリ性溶液浸潤プロセスであってもよい。例えば、重量パーセント濃度(%)が実質的に5よりも大きいヒドラジン(Hydrazine;N
2H
4)、水酸化カリウム(Potassium Hydroxide;KOH)、水酸化ナトリウム(Sodium Hydroxide;NaOH)水溶液又はその組み合わせによって、第1の絶縁基材101の第1の表面101aを浸潤し、反応時間が実質的に20秒〜80秒にある。
【0038】
改質プロセス104で処理された改質表面101cは、導電率が約0.055μS/cm(25°C)で、比抵抗値(Resistivity)が実質的に18MΩ・cm(25°C)である脱イオン水に対して、実質的に3ダイン/cm〜30ダイン/cmにある表面エネルギーを有し、好ましくは、実質的に15ダイン/cm〜25ダイン/cmにある。且つ改質表面101cの粗さが実質的に3μmよりも小さい。
【0039】
次に、第1の絶縁基材101の改質表面101cに、(
図1Dに示すような)1層の離型層105を貼り合わせる。本発明のある実施例において、離型層105は、例えば、天然ゴム感圧接着剤、合成ゴム感圧接着剤、熱可塑性エラストマー感圧接着剤又は上記の任意の組み合わせを含むエラストマー系感圧接着剤、又はポリアクリレート(Polyacrylate)、ポリウレタン(Polyurethane)、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル(Polyvinyl Ether)を含む樹脂系感圧接着剤であってもよい。
【0040】
その後、離型層105に、少なくとも第2の絶縁基材106及び第2の金属層107を含む片面基板構造の金属基板11を更に貼り合わせる。熱ラミネートプロセス109により、片面基板構造の金属基板11と片面基板構造の金属基板10を緊密に貼り合わせて、両面基板構造の金属基板100の調製を達成し、離型層105が第1の改質表面101cと第2の絶縁基材106との間に位置し、第2の絶縁基材106が離型層105と第2の金属層107との間に位置する(
図1Eに示すように)。
【0041】
本実施例において、片面基板構造の金属基板11と片面基板構造の金属基板10が同様に、何れも接着剤付きの片面基板構造の金属基板である。片面基板構造の金属基板11は、第2の金属層107と第2の絶縁基材106を貼り合わせるための、第2の絶縁基材106と第2の金属層107との間に位置する第2の接着剤層108を更に含む。
【0042】
本発明のある実施例において、熱ラミネートプロセス109は、ラミネート温度が実質的に50℃よりも大きく、好ましくは120℃〜500℃にあり、より好ましくは250℃であるホットプレートラミネートプロセスであってもよい。ラミネートの圧力は、実質的に0.3キログラム/cm
2(kg/cm
2)よりも大きく、好ましくは、実質的に15キログラム/cm
2〜90キログラム/cm
2にあり、より好ましくは20キログラム/cm
2である。本発明のある実施例において、熱ラミネートプロセス109は、ラミネート温度が実質的に50℃よりも大きく、好ましくは、150℃〜380℃にあり、より好ましくは250℃であるホットローララミネートプロセスであってもよい。ラミネートの圧力は、実質的に3kN/cmよりも大きく、好ましくは実質的に3kN/cm〜30kN/cmにあり、より好ましくは20kN/cmである。ラミネートの張力は、実質的に0.5kgよりも大きい。
【0043】
注意すべきなのは、第1の絶縁基材101の第1の改質表面101cに貼り合わせられた片面基板構造の金属基板は、第1の絶縁基材101の第1の改質表面101cと同様な第2の改質表面を有してもよい。例えば、
図2を参照されたい。
図2は、本発明の別の実施例に基づいて示された両面基板構造の金属基板200の構造断面図である。両面基板構造の金属基板200と
図1Eの両面基板構造の金属基板100の構造が類似し、何れも2つの接着剤付きの片面基板構造の金属基板10と21(第2の絶縁基材206、第2の接着剤層208及び第2の金属層207を含む)からなる。片面基板構造の金属基板21の第2の絶縁基材206の離型層105に対面する側に、第1の絶縁基材101の第1の改質表面101cと同様な第2の改質表面206cを有することのみが、異なっている。片面基板構造の金属基板10の構造と製造方法について以上のように詳しく説明したので、具体的な手順はここで再度説明せず、同じ素子については同じ素子符号で説明する。
【0044】
更に、注意すべきなのは、上記実施例において、両面基板構造の金属基板は何れも2つの接着剤付きの片面基板構造の金属基板から構成されるが、本発明のある実施例において、両面基板構造の金属基板の中の一方又は双方は、接着剤無しの片面基板構造の金属基板であってもよい。
【0045】
例えば、
図3を参照されたい。
図3は、本発明のまた他の実施例に基づいて示された両面基板構造の金属基板300の構造断面図である。両面基板構造の金属基板300と
図1Eの両面基板構造の金属基板100の構造が類似し、何れも2つの片面基板構造の金属基板10と30から構成される。第1の絶縁基材101の第1の改質表面101cに貼り合わせられた片面基板構造の金属基板30は、接着剤無しの片面基板構造の金属基板であることのみが、異なっている。片面基板構造の金属基板30は、第2の絶縁基材306、及び直接に第2の絶縁基材306の片側に貼り合わせられた第2の金属層307を含み、第2の絶縁基材306が第2の金属層307と第1の絶縁基材101の第1の改質表面101cとの間に位置する。片面基板構造の金属基板10の構造と製造方法について以上のように詳しく説明したので、具体的な手順はここで再度説明せず、同じ素子については同じ素子符号で説明する。
【0046】
例えば、
図4を参照されたい。
図4は、本発明の更に別の実施例に基づいて示された両面基板構造の金属基板400の構造断面図である。両面基板構造の金属基板400と
図1Eの両面基板構造の金属基板100の構造が類似し、何れも2つの片面基板構造の金属基板40と41から構成される。両面基板構造の金属基板400を構成する2つの片面基板構造の金属基板40と41が、何れも接着剤無しの片面基板構造の金属基板であることのみが、異なっている。片面基板構造の金属基板40は、第1の絶縁基材401、及び直接に第1の絶縁基材401の第1の改質表面401cに対向する側に貼り合わせられた第1の金属層402を含み、片面基板構造の金属基板41は、第2の絶縁基材406、及び直接に第2の絶縁基材406の離型層105に対面する反対側に貼り合わせられた第2の金属層407を含む。
【0047】
また、
図1Eを参照されたい。その後、2つの接着剤付きの片面基板構造の金属基板10と11を有する両面基板構造の金属基板100に対して、例えば露光、現像、エッチング、膜除去、及びメッキ加工のような湿式プロセス加工、並びに高温部の後加工を含むフレキシブルプリント回路基板の全プロセス加工を行った後で両面プリント回路基板を形成し、更に2つの接着剤付きのプリント回路基板を分離し、同時に2つの接着剤付きの片面フレキシブルプリント回路基板(図示せず)を形成することができ、更にフレキシブルプリント回路基板のプロセス効率と生産能力を大幅に増加することができる。
【0048】
本発明のある実施例において、機械力を用いて、両面基板構造の金属基板100を構成する2つの片面基板構造の金属基板10又は11を分離(
図1Fに示すように)することができる。本発明の実施例において、両面基板構造の金属基板100を2つの片面基板構造の金属基板10又は11に分離するのに必要な剥離強度は、実質的に80gf/cmよりも大きく、好ましくは、100gf/cm〜600gf/cmにある。
【0049】
熱ラミネートプロセス109で形成された両面基板構造の金属基板100は、片面基板構造の金属基板10又は11に比べて、厚さを提供して、片面基板構造の金属基板10又は11の剛性を補強し、片面基板構造の金属基板10又は11により優れた機械的性質を付与することができるので、金属基板が例えば曝光、現像、エッチング、膜除去、及びメッキ加工のような湿式プロセス加工、並びに、例えばベーキング、高速プレス、被覆層の老化、及び表面の取付貼り合わせのような高温部の加工等を含むフレキシブルプリント回路基板の全プロセス加工の過程において、折り傷、衝突損傷又はデラミネーション等の問題を発生することを防止することができる。
【0050】
また、第1の絶縁基材101の改質表面101cの表面エネルギーが実質的に一般的な接着剤の表面エネルギーよりも小さい(約3ダイン/cmよりも大きい)ので、離型層105を除去しやすく、接着剤を残留させずに、片面基板構造の金属基板10又は11を互いに分離させることができ、フレキシブルプリント回路基板プロセスのプロセス歩留まりを向上させる。本発明の実施例において、分離した後の2つの片面基板構造の金属基板10と11における第1の絶縁基材101と第2の絶縁基材106の厚さは、片面基板構造の金属基板10と11を貼り合わせる前の第1の絶縁基材101と第2の絶縁基材106の初期厚さに比べ、その変化量が実質的に10%よりも小さい。また、第1の絶縁基材101の第1の改質表面101cの表面粗さは、離型層と貼り合わせる前の初期表面粗さに比べ、その変化量が実質的に10%よりも小さい。
【0051】
上記実施例によれば、本発明は、それぞれ絶縁基材と金属層を含む2つの片面基板構造の金属基板を、離型層で貼り合わせた金属基板であって、一方の片面基板構造の金属基板の絶縁基材の離型層との貼り合わせ界面に、改質プロセスを行うことにより、改質表面を有するようにし、この絶縁基材を離型層(又は別の絶縁基材)と分離した場合、この絶縁基材の改質表面の表面粗さは、離型層と貼り合わせる前の初期表面粗さに比べ、その変化量が実質的に10%よりも小さい金属基板を提供する。
【0052】
このような二重金属基板によってプリント回路基板を製造する場合、片面基板構造の金属基板の構造強度を補強して、プリント回路基板のプロセスでの折り傷、衝突損傷又はデラミネーションの発生を防止し、プリント回路基板の歩留まりを向上できることに加えて、絶縁基材の改質表面の表面エネルギーが低く、離型層と貼り合わせられた後、接着剤を残さずに容易に分離できる特性を利用して、2つの片面基板構造の金属基板を一時的にラミネートし、プリント回路基板の全プロセスを経た後で更に分離することにより、2つの片面基板構造を有するプリント回路基板を同時に製造することができ、このように、一層にプリント回路基板プロセスの効率と生産能力を大幅に増加することができる。
【0053】
本発明を実施例で前述の通り開示したが、本発明を限定するためのものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0054】
10、11、21、30、40、41 片面基板構造の金属基板100、200、300、400 両面基板構造の金属基板101、401 第1の絶縁基材101a 第1の絶縁基材の第1の表面101b 第1の絶縁基材の第2の表面101c、401c 第1の改質表面102、402 第1の金属層103 第1の接着剤層104 改質プロセス105 離型層106、206、306、406 第2の絶縁基材107、207、307、407 第2の金属層108、208 第2の接着剤層109 熱ラミネートプロセス206c 第2の改質表面