特許第6016867号(P6016867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016867血液または骨髄中の一定細胞集団をその他のものを枯渇させることにより精製するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016867
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】血液または骨髄中の一定細胞集団をその他のものを枯渇させることにより精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20161013BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   A61M1/02 120
   A61M1/36 185
【請求項の数】26
【外国語出願】
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-211239(P2014-211239)
(22)【出願日】2014年10月15日
(62)【分割の表示】特願2013-500213(P2013-500213)の分割
【原出願日】2011年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-37590(P2015-37590A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】61/315,109
(32)【優先日】2010年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/436,964
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512300229
【氏名又は名称】シンジェン, インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】コエーリョ, フィリップ, エイチ.
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−538956(JP,A)
【文献】 特開2008−145420(JP,A)
【文献】 特表2009−535618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液、骨髄、若しくは脂肪組織より分離される間質血管細胞を含む試料から赤血球、顆粒球、又は血小板の少なくとも一つを枯渇させるための方法において、
a. i.回転軸を有する遠心分離機;
ii.血漿と、第1の高密度細胞部分と、残りの低密度細胞部分とを含む試料;
iii.固定カートリッジであって、
1.出口ポートを有する内部固定空間と、
2.第1固定貯蔵区画および第2固定貯蔵区画と、
3.前記試料へのアクセスを司る前記固定カートリッジの入口ポートと、
4.前記出口ポートと前記第1及び第2固定貯蔵区画との間の連結手段を提供する弁システムとを含み、
前記弁システムは、前記出口ポートと前記第1固定貯蔵区画とを連結する第1弁と、前記出口ポートと前記第2固定貯蔵区画とを連結する第2弁と、を備え、
前記第1弁は、最初は閉じており、前記第2弁は、最初は閉じている、固定カートリッジ;並びに
iv.前記出口ポートを通過する前記第1の高密度細胞部分の移動を追跡するために前記第1固定貯蔵区画に位置したセンサー;を提供する、提供工程、
b.前記入口ポートを通過し前記固定空間へと前記試料を移入させることにより、前記固定カートリッジ中に前記試料を配置する、配置工程、
c.前記固定カートリッジを遠心分離して、前記第1の高密度細胞部分を遠心力により前記回転軸から離れるように前記出口ポートに向かってまず押し込み、制御モジュールによって前記第1弁を開口することで方向付けられ、その後、前記回転軸に向かって押し込み、そして前記第1固定貯蔵区画中へと押し込まれる、遠心分離工程、並びに
d.前記制御モジュールによって前記第1弁を閉口して前記第2弁を開口することで、前記残りの低密度細胞部分のある量を遠心力によって前記回転軸から離れるようにまず押し込み、次に前記回転軸に向かって移動して前記第2固定貯蔵区画中へと誘導する、誘導工程を含む、方法。
【請求項2】
前記弁システムがカムおよび可動性導管を含み前記第1固定貯蔵区画と第2固定貯蔵区画とを連結する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサーが光学センサーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固定空間が小型先端部をさらに含み、前記出口ポートが前記小型先端部に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料を階層化し、前記第1の高密度細胞部分が高密度成分層を形成し、前記残りの低密度細胞部分が低密度成分層を形成し、前記高密度成分層と前記低密度成分層との間に少なくとも一つの界面を生成する、階層化工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの前記界面を、前記センサーを用いて検出する、検出工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記階層化工程が第1及び第2界面を生成する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2界面を、前記センサーを用いて検出する、検出工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記誘導工程(d)が、前記センサーが第1界面を検出した後に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記誘導工程(d)が、前記センサーが第2界面を検出した後に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
e.前記遠心分離工程に引き続いて、前記固定カートリッジを10Gより高いG力から約1GのG力に減速する、減速工程であって、
i.大部分の前記第1の高密度細胞部分が前記第1固定貯蔵区画の中にあり;
ii.大部分の前記残りの低密度細胞部分が前記固定空間の中にある、減速工程と;
f.前記固定カートリッジを撹拌することを通して前記残りの低密度細胞部分を混合する、混合工程と;
並びに
g.その後の処理のため、前記固定カートリッジを1Gより大きいG力へと戻す、戻し工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記光学センサーが少なくとも一つの赤外線放出器/検出器ペアを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
血液、骨髄、若しくは脂肪組織より分離される間質血管細胞を含む試料から赤血球、顆粒球、又は血小板の少なくとも一つを枯渇させるための方法において、
a. i.硬い外殻と;
ii.出力開口部を含む小型先端部と入力開口部を含む大型先端部とを有する全体的に漏斗状の内部固定空間と;
iii.最初は前記小型先端部と流体で連結していない第1及び第2固定貯蔵区画と;
iv.前記出力開口部と前記第1固定貯蔵区画とを連結する第1弁であって、前記第1弁が最初は閉じているものと;及び
v.前記出力開口部と前記第2固定貯蔵区画とを連結する第2弁であって、前記第2弁が最初は閉じているものとを、含む固定カートリッジを提供する、提供工程;
b.前記固定カートリッジを受け入れるように構成された、回転軸を有する遠心分離機を提供する、提供工程;
c.高密度細胞、低密度細胞、血小板、および血漿の混合物を含む試料を提供する、提供工程;
d.前記入力開口部を介して前記固定カートリッジの中へ前記試料を移す、移し工程;
e.前記遠心分離機の中へ前記固定カートリッジを配置する、配置工程;
f.遠心力を適用して、前記試料を前記小型先端部へと押し込む、適用工程;
g.前記試料を階層化することで、大部分の前記高密度細胞が高密度成分層を形成し、大部分の前記低密度細胞が低密度成分層を形成する、階層化工程;並びに
h.前記第1弁を開口することで、前記高密度および低密度成分層が前記小型先端部へと移動し、そこでは、前記大部分の前記高密度細胞が遠心力により押し込まれて前記回転軸から離れるようにまず流れ、その後回転軸に向かって流れ、そして前記第1固定貯蔵区画中へと流す、開口工程とを含む、方法。
【請求項14】
前記第1弁がカムにより作動される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記入力開口部が前記出力開口部よりも前記回転軸に近い位置にあり、
前記高密度細胞が前記入力開口部を通って流入する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記小型先端部中の前記成分層の少なくとも一つの存在を、センサーを用いて検出する、検出工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記小型先端部を通過する第1および第2成分層の存在を、第1および第2センサーを用いて検出する、検出工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第1弁を閉口し前記第2弁を開口することで、前記大部分の前記低密度細胞と血漿を遠心力により押し込んで、前記回転軸からまず離れるように流れ、その後前記回転軸に向かって流れ、そして前記第2固定貯蔵区画中へと流れる、閉口工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2弁を開口する前に、前記第2固定貯蔵区画へ加えられる低密度細胞と血漿の最終体積を前もって決定する、事前決定工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
j.前記第2成分層の検出後に、血漿を用いて前記第2固定貯蔵区画を満たすために前記第2弁を開口しておくべき時間量を計算することで、前記最終体積が前記前もって決定した最終体積と実質的に同じにする、計算工程;並びに
k.前記時間量後に、前記第2弁を閉口する、閉口工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記計算工程(j)が、前記第1センサーと前記第2センサーとにより、前記成分層の1つを検出する間の経過時間に基づいている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
l.前記開口工程(h)後に遠心力を除去する、除去工程;
m.前記固定カートリッジを撹拌して、前記低密度細胞、前記血小板、及び前記血漿を前記除去工程(l)後に混合する、撹拌工程;並びに
n.前記低密度細胞、前記血小板、及び前記血漿をさらに処理するために、遠心力を再適用する、再適用工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記高密度成分層が赤血球を含み、前記低密度成分層が白血球を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記低密度成分層が単核球をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記低密度成分層が顆粒球をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記高密度成分層が顆粒球をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、米国仮出願第61/315,109号(2010年3月18日出願)と米国仮出願第61/436,964号(2011年1月27日出願)に係る優先権を主張する。これらの仮出願の開示は、これらが完全に記載された如く参照により本明細書中に取り込まれる。
【0002】
<背景>
<本発明の分野>
本発明は細胞分離システムに関し、特に、正常血液、胎盤/臍帯血、骨髄、または脂肪組織より分離された間質血管(SVF)細胞から一定の血液構成成分を枯渇するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
<発明の背景>
正常なヒト血液の一般的構成は、血小板(「PLT」)、血漿、赤血球(「RBC」)、白血球(「WBC」)、並びに、量的に非常に少ないが幹細胞および前駆細胞(SPC)である。平均的には(個人間で、経時的に、同一個人内においてもばらつきがあることが知られているが)、 RBCは個人の全血液細胞数の約99.9%程度を構成し、個人の全血液体積の約45%を占める。RBCは、体組織への主要な酸素運搬手段として不可欠な機能を司る。個人の血液体積の残りほとんど全てを構成するのは血漿である。それは全血液体積の約55%を占める非細胞性の液体血液構成成分で、その中に全ての血液細胞が懸濁されている。
【0004】
従って、正常血液体積の99%より多くが、血漿とRBCとから構成されている。正常血液体積の、残り約0.6%より少ない部分が、他の全ての血液細胞タイプとPLTからなっている。 PLTは、小型で、不規則な形の無核細胞であって、WBCの数の約10倍以上存在する。PLTは、止血し、損傷組織を修復および再生する成長因子を多数放出することによって、創傷ケアに基本的役割を果たす。
【0005】
次に最も一般的な血液細胞はWBCであり、典型的な血液試料中の全細胞数のわずか約0.1%を構成する。しかしながら、WBCは身体の免疫系に重要であり、感染症や異物の両者から身体を保護する。WBCは、より小さなサブグループにさらに分割可能である。そのようなサブグループで最も大きいのは顆粒球(GRN)であり、全WBCの約60%を構成する。その他約40%は単核球(MNC)である。本出願を通して、用語WBCの使用は、排他的にGRN、排他的にMNC、又はその両者の何らかの組み合わせを指す場合がある。
【0006】
MNCは、さらにリンパ球と単球とに分割可能であるが、丸い単核の各細胞が存在することに起因して、集団としてMNCと称される場合がある。MNCは免疫系の重要な要素であり、T細胞、B細胞、及びNK細胞を含む。これらの細胞は、体組織中の感染部位に移動して、その後マクロファージ及び樹状細胞へと分裂・分化して、免疫応答を誘発する。最後に、MNC自身はさらに、もっと小さなサブクラスへと分割される。つまり、非常に少数の多能性造血 (血液を形成する)幹細胞および前駆細胞、並びに間葉系 (骨、脂肪、軟骨、筋肉、及び皮膚を形成する)幹細胞および前駆細胞を含み、そのどちらの細胞もヒトの健康に重要である。MNCの別の供給源は、脂肪吸引中に個人から除去された脂肪細胞より分離された間質血管細胞(SVFC)である。
【0007】
正常血液、胎盤/臍帯血、又は骨髄の試料採取は、先進工業国では年間当たり2千5百万回を超えて行われている。その試料は疾患治療の研究の一部または直接的臨床治療用のいずれかとして一般的に用いられているので、最も頻繁に単離される血液細胞はWBCであり、次いでMNCである。MNCは、全ての幹細胞および前駆細胞と約40%の非常に重要な免疫細胞を含む。従って、最も頻繁に需要がある細胞は、一般的な試料用に採血される細胞の極少数だけである。
【0008】
従って、基本的に全ての幹細胞および前駆細胞(SPC)を含み、実質的に全てのRBCが枯渇された、比較的に精製された細胞集団が望ましい場合、WBC又は(より高い純度が望まれる場合)MNCを単離するために、上記血液または骨髄由来の構成成分を分離する必要がある。これらの細胞集団を分離して標的細胞を回収する堅実で効果的な処理が必要なことは、研究用、治験用、および医療行為用のSPCへの需要の増大に起因して特に差し迫っている。
【0009】
SPCへの関心や、SPCに関して実施される研究は驚くべきものである。2010年11月の時点で、100,800本の幹細胞研究論文が全世界で発表されている。全世界で、SPCに焦点を当てている少なくとも7,000人の主任研究者が現在いる。米国だけでも、300ヶ所の幹細胞研究センターと約10,000個の個々の研究室がある。この大規模な研究の結果、NIHのウエブサイトであるclinicaltrials.govによると、臍帯血幹細胞を用いた199個の治験、脂肪組織を用いた34個の治験、および骨髄幹細胞を用いた1,405個の治験が現在進行中である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
<関連技術の説明>
全血または骨髄穿刺試料由来の一定の細胞タイプを単離および回収する従来方法は、試料の遠心分離に関連する。遠心分離中、細胞集団は、その密度によって強弱する加速軸に沿って相対的位置へと移動し、複数の層に濃縮される傾向があり、その移動プロセス中に血漿や他の高密度および低密度細胞タイプと置換する。
【0011】
図1は、ヒト血液に見られる各種細胞タイプの密度と平均直径を示す。血液を遠心分離する際に、互いに異なる細胞タイプ間の物理的差異が重要である。血液を遠心分離する際、ストークスの法則を含む多数の流体力学的因子に従う速度で、細胞は新たな位置へ移動を開始する。全ての細胞が軽度に負の荷電を保持している事実は、直接的細胞膜間接触に不利に作用する。主として(比較的にほとんど細胞の無い)血漿を含む環境では、細胞が大きくなればなるほど、細胞はより速やかに移動する。しかしながら、細胞濃度が上昇するにつれて、細胞荷電の効果が細胞の速度を実質的に決定するようになる。
【0012】
しかしながら、全ての場合において、細胞の密度が高くなればなるほど、容器のより下方へ(つまり、遠心分離機の回転軸から遠ざかるように)、細胞は最終的に移動し定着する。従って、図2に示すように、最も高密度の細胞であるRBC(密度は1.08と1.12との間である)は、遠心分離される容器の底に移動することになる。RBC層の中では、有核赤血球(臍帯血と骨髄との双方には存在するが、正常な血液には存在しないもの)は、赤血球画分の最上部に位置する。RBCの上にあるのは、GRN(密度1.07〜1.11)であり、容器の回転軸に近づく順番で、次に、リンパ球(密度1.05〜1.09)、単球(密度1.045〜1.0750)、そしてPLT(1.03〜 1.065)である。SPCの密度は単球およびリンパ球に最も近く、従って、より多数のこれらの細胞が取得された場合にSPCを取得することができることが知られている。ある条件下で形成する既知の層を利用することで、その層だけを回収することを通して、ある1種類の細胞の回収が促進可能である。図2が示すのは、正常血液、臍帯血、および骨髄の一般的試料における、血液細胞タイプの相対的頻度である。そして、結論として示すのは、下記で議論するように、密度により体系づけられた細胞集団に重なりがある場合があることである。
【0013】
階層化された細胞層を構築することは、決まった量の時間に高いG力を適用すること以外は一般的に必要としないが、特異的な細胞層を正確に除去することには問題がある。所定の試料においてある一定の細胞集団が稀であり少量しかないことを説明するために、図3、4、及び5が詳細に説明するのは、遠心分離と階層化後の正常血液(NB)、臍帯血(CB)、及び骨髄(BM)における各細胞集団の平均体積である。
【0014】
図3及び4が示すのは、大多数の細胞がRBCであることである。一方、図5が明確に示すのは、非RBCの細胞性血液構成成分の体積が小さいので、臍帯血試料200mlをもってしてもGRN(最上部の線)、MNC(中間線)及びPLT(下線)を全て合わせた総体積が約1mLであることである。臍帯血中では、1000個の血液細胞中1個より少ない細胞(総細胞の約0.08%)がMNCである。10,000個のRBCを含む臍帯血試料中では、40〜200個のPLT、3〜6個のMNC、及び5〜10個の顆粒球を見出すことが期待される。
【0015】
説明したように、細胞数と体積との双方の点から、血液の大部分はWBC以外の細胞から構成されている。これらWBCが少ないことと、膨大な数のRBCが占める溶液中でWBCが留まっていることから、WBCを単離する現状の方法は、(A)労力と時間がかかり、検査室での優れた技術を必要とする;(B)一般的には無菌環境中で実現することができない;(C)一般的にはWBCを取得する効率がほんの50〜75%である(25〜50%のWBCを失う);(D)細胞機能に悪影響を与える可能性のあるプロセスに関わる。血液試料のサイズが一般的には小さいこととSPCが正常血液中では極めて稀であるという事実とを考慮すると、正常血液からWBCを普通に回収した際にはSPCは全く無い可能性がある。正常血液よりも臍帯血中でSPCがより数が多いとしても、臍帯血中でさえも依然としてSPCは稀である。
【0016】
正常血液からWBCを得るのが如何に困難かをさらに説明するために、従来の手作業の血液構成成分分離法で通常用いられる概略50ml試験管を図6に図示する。これらの試験管の幅は、通常28mmである。遠心分離後、分離された血液構成成分は、血漿(最上部)、RBC(底部)、及び「バフィーコート」と呼ばれるほとんど目視できない薄層(説明目的で図6では大きさを誇張している)である。この「バフィーコート」がほぼ全てのWBC、SPC、及びPLTを含む。
【0017】
全血からWBCを回収するためのいくつかの半自動化システムが現在市販されているが、手作業による方法と比べた場合の細胞回収効率の利点は際立ったものではなく、それらの市場浸透率は小さい。血液または骨髄試料中のWBCを単離・取得するための一般的な現状の方法は、以下の2つの手作業による処理技術である:(A)粒子を用いる密度勾配法;(B)ディスクを用いる密度勾配法。診断または研究目的に関して、血液または骨髄からWBCを単離する100回中99回は、WBCをこれらの技術を使い単離する。この両技術がうまくいくかどうかは、処理のため円筒管を利用し、密度の操作を注意して行うかどうかによって決まる。例えば、MNCを単離する目的の場合、多数の細かな粒子または約1.08の密度を有する(管の内径よりわずかに小さな直径の)ディスクを管中に配置する。この特異的密度の値を選んだ理由は、GRNとリンパ球の中間密度から等距離にあるからである(図2を参照されたい)。この両技術が正しく機能するためには、血液試料をまずその血液体積の等量から2〜4倍量の緩衝剤で希釈することが必要である。
【0018】
まず前記粒子を用いた方法に関して言うと、緩衝剤で処理した血液試料を試験管中で粒子と混合した後、遠心分離を開始する。遠心分離中、粒子の密度に応じて粒子が合体することにより、RBC/GRNとMNC/PLTを分離する。図7が示すのは、MNCとRBC/GRNとを分離する(密度勾配に用いる粒子)Ficollを用いた処理である。
【0019】
密度勾配ディスクを使用する方法は、非常に類似していて、図8にて説明される。ここで、密度1.08のディスクは、遠心分離下、リンパ球とGRNとの間の境界面へと移動する。しかしながら、ほとんどの密度勾配ディスクは、上記粒子に見られない1つの特徴を有している。つまり、MNCが定着することになる、上方と下方のディスク間の空洞を含み、従って、管の最上部とこの空洞間を貫く可動なチューブを介して、MNCの回収をする工程をいくらか簡単にする。
【0020】
血液試料からMNCを単離・取得するこれら手作業による方法は、根気と優れた手技を必要とする。これらの方法は、一般的に実施するのに1[1/2]〜2時間かかり、最もうまくいっても、MNCの回収率は60%より少ないことがしばしばである。従って、血液試料中のMNCを単離・取得するのによく用いられる手作業による方法は、正確さとスピードの点から最適には及ばない。なぜなら、この技術には多数の制約があるからだ。
【0021】
第一に、密度勾配溶液が血液または骨髄からWBC集団の単離を実現できるかどうかは、たった一つの物理的因子(密度)によって決まる。一旦遠心分離が始まると、密度勾配媒体はある位置へ移動し、その位置で、その媒体は細胞溶液中で浮揚し止まる。 一般的には、細胞集団の最終位置への移動は、決められた期間と加速の間に起こり、従って、個々の血液試料に関して最適であることは稀である。
【0022】
図2に関して述べたように、基本的に、両方の密度勾配技術の有するWBC又はMNC回収効率が制限されるのは、顆粒球とリンパ球との中間密度のベル型曲線間の隙間の中心(つまり、1.08)を狙う必要があるからだ。図2が明らかにするように、この決まった密度は、全ての顆粒球又は全てのRBCさえも除外することはできず、実際、ある程度の所望のリンパ球を廃棄することになる。
【0023】
この簡便な方法が説明しない事実は、たとえ健常人においても各細胞タイプの数と密度に有意なばらつきが存在し、試料間の沈降速度が一桁ほど異なる場合があることである。さらに、患者がある種の疾患を有する場合、相対的な細胞集団のばらつきやその細胞の沈降速度が二桁程度まで大きくなる可能性がある。従って、これらの旧式なWBC又はMNC単離技術は、任意の特異的血液試料にとって最適であることは稀である。
【0024】
この制限の重大さを想像する最善の方法は、血液試料中の細胞(遠心分離前にはその体積中で均等に分布しているもの)が、遠心分離が開始すると、競い合って新たな位置へと移動を始めるということを理解することである。このWBC又はMNC単離技術が効率よく行われるかどうかは、どのくらい正確に全てのWBCが、その競争の終わりに同一の層へと辿り着くかや、どのくらい上手に検査技師が通常の1G条件(つまり、容器がほんの少し動いただけ又はピペットチップがほんの少し動いただけで細胞が再混合され始める様な条件)でピペットを用いてこの位置からWBCを抽出することができるかによって決まる。
【0025】
科学者は、1G条件下で正常血液由来のRBCが容器を下って移動する速度を長らく研究してきた。この測定値を、赤血球沈降速度またはESRと呼ぶ。従来のMNC単離工程で使用される遠心加速度はこの沈降速度を加速するが、これらは互いに異なる細胞タイプの沈降速度の割合変化を変えるものではない。さらに、RBCの数は、WBCの千倍以上あり、MNCの2千倍以上ある。そして、全ての細胞は軽度に負に荷電していて、WBC集団の単離に最も影響を及ぼすのはRBCの移動である。
【0026】
様々な年齢の成人におけるESR(1時間当たりのミリリットル(mm/hr)で測定したもの)が、図9に示される。子供においては、出生時では、ESRの正常値は1〜2mm/hourであり、生後8日では、4mm/hourに上昇し、その後、生後14日までには、17mm/hour(2週間未満で一桁より高い変化)となる。ESRは可変であるので、悪性疾患(例、多発性骨髄腫、種々の自己免疫疾患(例、関節リウマチ、慢性腎疾患))の診断に用いられる。これら疾患では、ESRは、100mm/hour(健常成人の5倍)を超える場合がある。
【0027】
さらに、注目されるのは、容器の底部にあるWBCは、容器の最上部から下って来るWBCに合わさるように上方へと移動可能であるのみであり、結果として、下ってくるRBCに置換される昇っていく血漿上に浮上する。なお、溶液中の極少数のWBCが、RBC(千倍もの数があり、同一の垂直な流路を反対方向に移動するもの)の流れに逆らって上昇する経路を通り抜ける必要がある。さらに、遠心分離機の加速と期間が運転の開始時にプログラムされているので、特定試料中の全ての細胞を再配置するのに十分な期間は、他の多くの血液試料にとっては不十分である場合がある。つまり、ほとんどのRBCがチューブの底部に到達していない場合があり、従って、標的WBCの多くが上っていく血漿により作られる「バフィーコート」 層 に浮上していない可能性がある。この工程は閉鎖系の遠心分離機中、急速に回転するローター中において起こるので、操作者は、細胞の実際の挙動を観察することはできない。
【0028】
従って、必要とされるシステムとは、遠心分離中、個々の血液試料中の細胞集団の移動をリアルタイムで光学的に追跡するものである。そのようなシステムは、それら血液試料の有する構成細胞集団の特異的サイズと密度に応じて、個々の血液試料をオーダーメードで処理することを可能にする。この改良型解決策は、標的WBC又はMNC細胞集団の回収効率を大きく増大させることも期待されている。
【0029】
密度勾配媒体の別の欠点は、媒体が緩衝剤を必要とすることである。緩衝剤は所定の回収管の体積のほぼ全てを占領し、WBCが回収されることになる血液の体積を小さくする。緩衝剤は、典型的な50mlの回収管の70%〜90%を占めることがしばしばなので、たった5〜15mlの血液のための空間しか残さない。結果として、100mlの血液からWBCを回収する必要がある検査技師は、7〜20本の試験管を用いなければならず、目的を達成するのに必要な労力がさらに増大する。また、最終WBC集団中の夾雑物からの十分な純度を実現するために、粒子状密度勾配媒体や緩衝剤を洗い流す必要があり、必然的に標的細胞のさらなるロスを引き起こす。
【0030】
従って、血液または骨髄試料から不必要な細胞を枯渇させる手段の必要があり、その手段は体積のかさばる密度勾配媒体や緩衝剤を必要としないものである。前記手段は、任意ではあるが、より体積の大きい試料からのWBCの回収を可能にする場合もあり、診断または臨床用途で回収可能な構成細胞数をさらに増加する。
【0031】
密度勾配に基づいた上記血液分離方法の3番目の欠点は、密度勾配回収管の並列の垂直壁が、WBCが遠心分離中に上昇してRBCの上に位置することを補助しないことである。従来型システムでの密度勾配用の回収試験管は、並列の垂直壁を有していて、それが意味するのは、遠心分離中全ての細胞が試験管の軸に沿って垂直に下降または上昇することである。上記したように、上昇する各WBCは反対方向に移動する何千個ものRBCを通り抜けていく必要がある。回収試験管の有する並列の垂直壁は、遠心分離中にWBCの上昇を補助する横の運動、つまり下降するRBCと上昇するWBCへの横の運動を提供しない。その結果として、管の底部で回転サイクルを開始したWBCの大部分が、選択された遠心分離処理中に回収層である「バフィーコート」へと上昇しない可能性がある。
【0032】
従って、試験管の底にWBCが補足されることを、底部で急激に細くなった漏斗状の回収室を利用することで克服する必要がある。そのようにして、下降するRBCの大部分は中心に寄せられ、RBC体積最上部へと上昇する最も軽いRBCにより引き起こされる渦流を増強する。順に、これらの渦流は、数はずっと少ないがより浮揚力のあるWBCが上昇するのを補助する。
【0033】
密度勾配に基づく分離方法の4番目の欠点は、MNCが1Gで手作業により回収される位置における、密度勾配の回収試験管の断面面積が一定して大きいことである。
【0034】
標準的50mlの密度勾配回収管の壁は約28mm離れて固定されているので、10mlの抹消血液試料由来の非常に少ないMNC体積(約0.028ml)が管の断面積(約615mm2)全体に渡って広がり、ほとんど目視できない薄層(約0.023mm)を形成する。この広い断面積と得られるMNCの薄層とのために、細胞集団間の密度差による階層化効果は非常に小さい。結果として、1GにおいてMNCを回収するためには、熟練した検査技師が、密度勾配(下層)と血漿(上層)との間に浮かぶこの非常に薄い細胞層へとピペットチップをゆっくり慎重に挿入し、その後、穏やかに吸引してペピットの中にMNCを取り込むことを必要とする。しかしながら、大きな遠心力によって増大しない場合の細胞集団間の密度変化が非常に小さいことや管の断面積が大きいことという2つの原因によって、MNC/PLTが基本的に全て、同一の薄い垂直層に保たれる。結果として、この手作業による吸引工程中どんなに注意しても、MNC/PLT層と密度勾配媒体との攪乱を阻止することはできず、MNCのロスと密度勾配に用いる粒子による細胞の相当な混入とが引き続いて起こる。従って、この過程でMNCの約25〜40%が失われることも普通である。
【0035】
従って、十分な遠心により細胞層の一体性と純度を維持しながら細胞が先細の漏斗を下降するにつれ垂直方向に広がる一方で、漏斗出口の横断面領域が狭まることによりRBCや大部分のGRNを枯渇させることでMNC回収中のロスを回避する必要がある。
【0036】
密度勾配に用いる粒子(密度勾配粒子)に基づく従来型システムの5番目の欠点は、密度勾配粒子と細胞との間での直接的接触に起因する。回収される細胞とこれらの粒子との間で長期間直接的な接触が起こることにより、毒性という形で細胞機能が損なわれるとの報告がある。例えば、Yuhan Changらが最近報告した「The Efficiency of Percoll and Ficoll density gradient medium in the Isolation of Marrow Derived Human mesenchymal stem cells with Osteogenic Potential」(Chang Gung Med J 2009;32:264-75)では、コントロール媒体と希釈系列のPercoll又はFicollとの混合物とを共に培養することにより細胞毒性試験をCFU-F(培養継体1回目)上で実施して、これら2つの勾配媒体の持つ成長阻害効果又は細胞毒性効果を評価した場合、勾配媒体の比率がその両者の群で増加するにつれてCFU-Fの細胞死がより増加することが示された。
【0037】
従って、密度勾配粒子または細胞機能を変更し損傷する可能性のある他の外的物質を加える必要なしに、RBC、RBC及びGRN、RBC、GRN及びPLT、或いはRBC、GRN及びMNCを枯渇させる必要がある。
【0038】
密度勾配粒子を用いるか又は用いない、従来型血液分離方法の6番目の欠点は、有意な数のRBCが最終産物中に残ってしまう可能性があることである。なぜなら、検査技師の技能のばらつきや1Gにおいて細胞が何らかの事情で再混合し易いことがあるからである。いくつかの最近の研究は、RBCの混入を最小限にする重要性を強調している。なぜなら、そのような混入がこれらMNCを使用する医療処置の効能を減少させるからである。
【0039】
RBC混入の悪影響の例は多くあり、例えば、「Red Blood Cell Contamination of the Final Cell Product Impairs the Efficacy of Autologous Bone Marrow Mononuclear Cell Therapy」 (Assmusら, Journal of the American College of Cardiology, 55.13, 2010)を参照されたい。そこで開示されるのは、RBCを混入させることが、単離されるBMCの機能性に影響し、 急性心筋梗塞を有する患者の冠動脈内にBMCを注入後の左室駆出率の回復の程度を決定することである。また、「Packed Red Blood Cells Suppress T-Cell Proliferation Through a Process Involving Cell-Cell Contact」(Bernardら, The Journal of Trauma, Injury, Infection, and Critical Care, 69.2, Aug. 2010)を参照されたい。そこで開示されるのは、貯蔵されたRBCがT細胞増殖に対して強力な阻害効果を示すことと、おそらく、T細胞増殖への同様な阻害が輸血後にインビボ(in vivo)で起こり、輸血関連免疫調節の主要な寄与因子となる可能性があることである。
【0040】
従って、SPCを含む精製溶液をよりたくさん回収するために、正常血液若しくは臍帯血、骨髄、又は脂肪組織より分離されたSVF細胞の回収試料からRBC、GRN、及び可能性としてはPLTをより多く予測可能に枯渇させる必要がある。
【0041】
この細胞分離と枯渇工程を自動化した極少数の市販システム(例、Hemonetics V50、Cobe Spectra、Sepax System(Biosafe SA、スイス、製)、Thermogenesis AXP(Thermogenesis社、カリフォルニア、製))も実質的欠点があり、従来型の手作業による手段に比べて精製WBCの回収は改善されてはいない。別の欠点としては、これらの市販自動化システムは、操作するために高価な設備投資を必要とする。これらの自動化装置は何万ドルもの費用がかかり、精製WBCの大量生産が必要な場合(例、一日当たり40〜200ユニットを処理する臍帯血幹細胞バンクの場合)、検査室のかなりの部分を占有する。図10が説明するのは、先行技術の2つのシステムと本システムを用いて4ユニットの血液を処理するコストである。
【0042】
現状の市販自動化システムの2番目の欠点は、図11に示すように、複雑、高価で、製造困難な1回使い捨てバッグセットであって、細胞処理のためにたくさんのチューブと連結されたものを必要とすることである。これらのバッグセットは約5分かけて、それ専用の装置へと正しく配置され、血液または骨髄を処理するためにシステムが準備される。これら先行技術のバッグセットは、複雑で製造に費用がかさむ。図11に示すように、これらの先行技術のバッグセットは、20より多くの個々に形成された接着部を必要とする。
【0043】
従って、RBCの混入がより少なくてWBCの回収効率がより高くなり得る、より簡単で、より費用のかからない、より迅速且つ使いやすい自動化システムが必要とされる。さらに、(複数のバッグや複雑に接続されるチューブの必要が無い)簡単で、製造コストの低い1回使い捨て処理容器を用いるシステムが必要である。
【0044】
図12が示すのは、本発明の簡単さであり、一体型円筒カートリッジを提供する。そのカートリッジの中で、全ての細胞処理が起こり、細胞の階層化と枯渇に関連する全ての構成要素が配置されている。1,2秒かのわずかの間に、このカートリッジは、専用の円筒形制御モジュールの最上部に固定され、遠心カップに挿入準備可能となる。制御モジュールは、カートリッジ中の活動を制御する手段と同様に、光学的および重力感知手段を含む。
【0045】
この一体型カートリッジは、射出成形の製造精度がよいことから助けを受けて、複数のバッグセットとそれに接続する複雑に接続されたチューブを一般的に含む先行技術の自動化システム用の従来型処理用使い捨て用品よりもずっと簡単で労働効率がよい。
【0046】
従って、本発明の第1の目的は、個々の血液試料に関して細胞集団の移動を光学的に追跡し、その後、遠心期間中に同一カートリッジ内の第2分離区画へと前記細胞集団を迂回させながら特定の細胞タイプを枯渇させることである。
【0047】
本発明の第2の目的は、体積のかさばる密度勾配媒体または緩衝剤を必要とせずに、実質的に全ての不必要な細胞タイプを選択的に枯渇させることである。
【0048】
本発明の第3の目的は、その底部が十分狭くなった、固定した漏斗状の回収室を提供することである。従って、下降するRBCが漏斗の中心部に押しやられて、赤血球体積の最上部へと上昇する最も軽いRBCにより引き起こされる垂直方向の渦流を増強する。このことは、数はずっと少ないが、より浮揚力のあるWBCが初期のWBC層および濃度レベルへと上昇するのを補助する。
【0049】
本発明の第4の目的は、一体型カートリッジを提供することであり、その中では、全ての細胞処理が起こり、細胞の階層化と枯渇に関連する全ての構成要素が遠心分離の完了時に配置されている。カートリッジは、制御モジュールへ簡単、迅速、取り外し可能に固定可能である。その制御モジュールは、遠心分離下で、それがはまり込んでいる支持構造物よりもそれ自身の支持力に依存する。このカートリッジを好ましく構成するのは、少なくとも3つの以下の固定区画である。(1)RBC区画であって、その中に大部分のRBCおよび、操作者の裁量で、不必要なGRNが誘導される。(2)幹細胞(SC)区画であって、その中に目的のWBCが誘導され、そのWBCには、操作者の裁量で、GRN、リンパ球、単球、SPC、及び/又は血小板を含んでもよい。(3)回収漏斗であって、初期には血液または骨髄の試料全体を含むが、処理後には任意の余分な血漿を保持する。
【0050】
本発明の第5の目的は、漏斗内にWBC層を作り出すことであり、WBCは、遠心力により下方に押し込まれた場合、直径が減少するような漏斗部分に出くわし、前記WBC層の垂直方向の厚さが増大する。
【0051】
本発明の第6の目的は、血液試料をRBC、GRN、MNC、PLT、及び血漿へと階層化する手段と、特定の細胞層間の界面で特定の弁を正確に開閉する手段とを提供することである。
【0052】
本発明の第7の目的は、ヘタスターチ等のRBC沈降剤の必要無しに、従来型手作業または自動化システムを使用して得るよりも、より高い割合のRBCを同時に枯渇しながらより高い割合のWBCを回収する手段を提供することである。
【0053】
本発明の第8の目的は、現在配置されている従来型手作業システムおよび自動化システムと比べて、安価に上記7つの目的を提供することである。
【0054】
本発明のこれらの目的や他の目的、利点、特徴、及び観点は、以下の記載が進むにつれ明らかになる。前記および関連目的の実現のため、本発明は、特許請求の範囲により十分に以下記載され特に指摘された特徴と、以下の明細書部分と、本発明の例示的実施形態を詳細に記載した付属図面とを含む。しかしながら、これらは、本発明の原理が利用可能な各種方法の内のいくつかを示唆するものにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0055】
<発明の概要>
本出願は、血液試料からRBCを枯渇させる方法と装置を提示し、いくつかの状況では、GRN、他の状況ではPLTを枯渇させる方法と装置を提示する。その方法には、細胞溶液のカートリッジ型保持・分離器を遠心分離することを含む。図13に示すのは、本明細書中に記載される処理の簡単な模式的概要である。本発明は実質的に全ての不必要なRBCを選択的に枯渇させる。操作者の裁量で、特定のWBC(好ましくはGRN)をも枯渇させる。また、操作者の裁量で、精製MNCを最適に単離し、その後回収するために、血液または骨髄試料からPLTを枯渇させる。好ましい実施形態の本発明は、1回使い切りの硬質プラスチックのカートリッジを含み、そのカートリッジの中で、全ての処理が起こり、全ての細胞集団、PLT、及び血漿が遠心分離中に分配可能である。本発明は、密度勾配粒子またはディスクの必要性を除去する。本発明はまた、壊れやすい薄層プラスチックバッグセットと複雑で無駄な接続チューブ(多くの接着部で漏れを生じ、詰まるのが避けられないMNC及びSPCがその後回収できないもの)の必要性をも除去する。さらに、本発明は、重力井戸中で細胞の流れを最適化し細胞集団を垂直に階層化する、まさにだんだん狭くなる断面を有する内部漏斗を含む、使い易い固定カートリッジを提供する。
【0056】
図13に示すように、抹消血若しくは臍帯血、骨髄、または脂肪組織から除去されたSVF細胞溶液の試料で、使用中、高いG力において、WBCは最初に層化する可能性がある。その後、第2の弱いG力、前記装置および方法は、遠心力により回転軸から遠ざかるにつれて細胞を押し込むことを可能にし、RBCを漏斗の底部から内蔵された区画へと誘導可能にする。層化されたWBCが、放出されるRBCによって以前占有されていた直径がだんだん小さくなる空間に入るにしたがって、半径がだんだん小さくなり垂直方向の厚みがだんだん増すWBCとMNCのディスクが形成される。
【0057】
遠心分離中にRBCを除去することにより、RBC層と血漿層との間のWBC層が漏斗のこの狭まった部分へと下降し、WBCとMNCがだんだん狭まる漏斗の最上部になる位置へと移動する。次に、RBC除去区画へ赤血球の除去が引き続いて起こるか、又はWBCがSC区画に捕獲されるのに先行して、階層化レイヤーは垂直方向に引き延ばされ、それにより所望の細胞タイプのみを除去することを促進する。
【0058】
図14に示すように、周径や形状が様々な漏斗先端部が採用可能なことが理解される。細胞が漏斗の出口へと向かって移動するに従い、これら互いに異なる周径や形状が、流速および細胞密度とそれに続く赤外線センサーの光学的測定値とを変化させる。
【0059】
このましい実施形態では、光学的検出システムは、細胞集団が漏斗を出る際に、各細胞集団タイプを同定する。前記光学的検出システムは、特定の細胞集団が2箇所の内どちらか1つの位置へと流れるのを誘導・制御する一又は複数の弁手段と連動している。例えば、図13に示すように、WBCの階層化レイヤーが光学検出システムを通過すると、WBCは、使い捨てカートリッジ内の第2SC回収区画へと誘導可能である。その後、WBCはWBCの後ろ/上にある流体と細胞との圧力により押し込まれて、最初は回転軸に垂直に移動し、その後スタンドパイプ中を回転軸から見て上方に移動し、SC回収区画内へと移動可能である。
【0060】
本発明は、経時的に重力場を観測して、試料からRBCと、任意ではあるがGRN及び/又はPLTとの両者を枯渇させるのに重要なデータを提供する手段をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明の前記観点と多くの付随する利点は、以下の付属チャートや図面と組み合わせられて、以下の詳細な説明を参照することによってより理解されるにしたがって、それら観点と利点はより容易に価値を認められる。
【0062】
図1図1は、ヒト血液に見られる各種細胞タイプの密度と平均直径のプロットである。
【0063】
図2図2は、ヒト血液に見られる各種細胞タイプの様々な密度を示すプロットである。
【0064】
図3図3は、遠心分離後の細胞集団の体積比率を示す表である。
【0065】
図4図4は、各種体積の抗凝血処理済み血液中の細胞体積を示す表である。
【0066】
図5図5は、抗凝血処理済み血液の体積に対する遠心分離した細胞集団の体積に関するプロットである。
【0067】
図6図6は、標準的試験管中で遠心分離中にヒト血液が分離される複数の層を示す図である。
【0068】
図7図7は、ヒト血液混合物とFicoll添加剤とが遠心分離後に分離される複数の層を示す図である。
【0069】
図8図8は、標準的試験管中で血液分離ディスクと共に遠心分離された場合、如何にヒト血液が分離するかを示す図である。
【0070】
図9図9は、様々な年齢の平均的男女が有するESR値の表である。
【0071】
図10図10は、いくつかの先行技術システム及び本システムを用いる4つの血液試料の相対的処理コストを説明する図面である。
【0072】
図11図11は、先行技術の血液分離システムと本システムの使い捨て部品の相対的複雑さを示す図面である。
【0073】
図12図12は、本発明の使い捨てカートリッジ及び制御モジュールの斜視図である。
【0074】
図13図13は、本発明の処理の概要を提供する図である。
【0075】
図14図14は、本発明の漏斗先端部の各種実施形態の断面図である。
【0076】
図15図15は、本発明の使い捨てカートリッジ、制御モジュール、並びに前記制御モジュール及び前記カートリッジの様々な特徴を示す、部分的にワイヤーフレームを用いた斜視図である。
【0077】
図16図16は、本発明の使い捨てカートリッジ、制御モジュール、及び例示的遠心カップの分解図である。
【0078】
図17図17は、本発明の制御モジュールの斜視図である。
【0079】
図18a図18aは、使い捨てカートリッジのワイヤーフレームを用いた側面図であり、切断線をA-Aで印を付けている。
【0080】
図18b図18bは、線A-Aに沿って切断した使い捨てカートリッジの斜視図である。
【0081】
図19図19は、示された漏斗の底部が狭くなった使い捨てカートリッジの斜視断面図である。
【0082】
図20図20は、遠心分離前の本発明の好ましい実施形態の断面図である。
【0083】
図21図21は、遠心分離中の本発明の好ましい実施形態の断面図である。
【0084】
図22図22は、遠心分離中の本発明の好ましい実施形態の弁システム部分の断面図である。
【0085】
図23図23は、本発明の別の実施形態のカンチレバー(片持)弁システムの詳細図である。
【0086】
図24図24は、本発明の好ましい実施形態のカム部分の詳細な斜視図である。
【0087】
図25図25は、本発明の好ましい実施形態の可動性(フレキシブルな)導管の断面図であり、ヒト血液に存在する各種細胞と可動性導管の相対的サイズを示している。
【0088】
図26図26は、遠心分離10分後の本発明の好ましい実施形態の断面図である。
【0089】
図27図27は、本発明の好ましい実施形態の光学的検出部分の詳細な断面図である。
【0090】
図28図28は、RBC枯渇中の、本発明の好ましい実施形態の弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0091】
図29図29は、RBC及びGRN枯渇中の、本発明の好ましい実施形態の弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0092】
図30図30は、RBC及びGRN枯渇後の、本発明の好ましい実施形態の弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0093】
図31図31は、MNC枯渇中の、本発明の好ましい実施形態の第1位置放出器/検出器ペアにより測定される値のプロットである。
【0094】
図32図32は、MNCの枯渇中でその上部に血漿が乗った場合の、本発明の好ましい実施形態の弁システム、スタンドパイプ、 RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0095】
図33図33は、RBCとGRNの枯渇後に遠心分離が止まった場合の、別の実施形態の漏斗、弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0096】
図34図34は、RBCとGRNの枯渇後に遠心分離を止めて、残った血漿、MNC、及びPLTを混合するためにカートリッジ全体を振とうさせた場合の、別の実施形態の漏斗、弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0097】
図35図35は、ほんの少しのPLTは残るが実質的に全てのMNCを回収するために、短時間弱いG力で2度目にカートリッジを遠心分離した場合の、別の実施形態の漏斗、弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0098】
図36図36は、遠心分離を止めて、MNC、血漿、及びほんの少しのPLTをSC回収区画中に回収した後の、別の実施形態の漏斗、弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である。
【0099】
図37図37は、SC回収区画中にGRNが所望される別の実施形態の漏斗、弁システム、スタンドパイプ、RBC回収室、及びSC回収室の詳細な断面図である
【0100】
図38図38は、SC回収チューブおよびRBC/GRN回収チューブを示す、本発明の好ましい実施形態のカートリッジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下の記載を提示するのは、当業者が本発明の各種観点と例を作成・使用することができるようにするためである。具体的材料、技術、応用の記載を、例としてのみ提供する。本明細書中に記載された例に対する各種変更は、当業者にとって容易に明らかであり、本明細書中に規定された一般原理は、本発明の精神と範囲から逸脱すること無しに他の例や応用に適用してもよい。従って、本発明は、記載および示された例に限定される意図は無く、添付された特許請求の範囲と矛盾しない範囲での扱いを受ける。
【0102】
本出願人は、血液試料からRBCを枯渇させる方法と装置を開示し、いくつかの状況では、特定のGRN、他の状況ではPLTを枯渇させる方法と装置を開示する。実質的に全てのSPCを含むWBCを最適に単離しその後回収するために、本発明の好ましい実施形態は、遠心分離を介してこのように実質的に枯渇させることを実現する。
【0103】
まず、図15では、好ましい実施形態の本出願人の方法と装置1は、使い捨て固定カートリッジ10(250mLまでの液体を保持し、円筒形で、1回使い切り、好ましくは硬質プラスチックでできていて、より好ましくは光学的に透明なポリカーボネートであるもの)を含む。中に使い捨てカートリッジ10を据え付ける制御モジュール40は、電池で駆動し、光学および重力感知できる電気機械装置である。また、好ましい実施形態は、ユーザーに通知・補助するための薄膜スイッチ41、7桁数値デジタル表示装置42および3個の発光ダイオード43を含む。図15の左側に示すのは、ユーザーに電池の充電状態を警告する一般的な電池表示44である。真ん中に示すのは、制御モジュール用のオン-オフスイッチ45とLEDである。右側には、(細胞回収運転が計画通り実施されたかどうか、もしそうでなければ運転中にどのエラーが起こった可能性があるかを表示する)デジタル表示装置42とLEDとがある。
【0104】
図16では、使い捨てカートリッジ10および制御モジュール 40、加えて一般的な750mlの遠心カップ70の分解図が、本発明の好ましい実施形態にしたがって示される。動作中、使い捨てカートリッジ10と制御モジュール40とは、脱着可能に固定されている。使い捨てカートリッジは、複数の区画を含み、その一つは漏斗または固定空間11である。好ましくは、遠心カップ70は、制御モジュール40を収容する。制御モジュールは、その上にある滅菌した使い捨てカートリッジ10と連結して繰り返し使用することを意図している。制御モジュール40とカートリッジ10とは、合わせて、好ましくは約450グラムの重量がある。後述する他の部品の中で、カートリッジは、受け入れる流体へのアクセスを司る最上部の入口12を含む。このアクセス部は、細胞溶液と連結するための静脈穿刺用の針または皮下注射針が先にあるチューブと接続可能である。また、残りの処理工程中に、他のシステム部品をさもなくば詰まらせるかもしれない任意の凝血塊を除去するインライン・フィルタと連結可能である。使い捨てカートリッジの最上部は、また、0.2ミクロンのフィルタ13を含んでいてもよく、血液または骨髄が漏斗中に導入される際に、漏斗内から空気を置換するための通り道を提供してもよい。 また、カートリッジの最上部は、漏斗に導入される際に、血液、骨髄、又は他の流体(例、希釈剤)用の滅菌フィルタ手段を含んでいてもよい。
【0105】
図17では、制御モジュール40の下部に位置するモーター回路基板電気装置47を示す。 前記装置の電気機械部分は、好ましくは充電式バッテリーシステムを用いて、重力および光検出装置を監視・制御し且つ使い捨てカートリッジの動作を指示する制御モジュールを駆動する。G力測定手段は、当該技術分野で通常知られているもの(例、遠心分離機のRPM測定を介して、又は加速若しくは重力を直接測定することを介して、G力を計算するもの)ならいずれでもよい。
【0106】
図18aは、断面A-Aの印が付けられている使い捨てカートリッジ10の概略側面図である。図18bは、断面A-Aに沿って切断した使い捨てカートリッジ10の斜視図である。以下の処理工程に記載されるように、細胞(例、正常血液、臍帯血、又は骨髄)を含む生物学的流体を、弁手段(図示しない)により最初は閉じられている開口先端部を有する大きな漏斗状の区画へと送る。カートリッジは、大きな第1固定貯蔵区画若しくはRBC除去区画14と、WBCおよび実質的に全てのSPCを移入させる小さな第2固定貯蔵区画若しくはSC区画15とを含む。RBC除去区画14がSC回収区画15よりも有意に大きいのは、血液試料から枯渇されるRBC体積が回収されるWBC体積よりも必ずずっと大きいからである。すべての区画は互いに区別されるが、空気の流れに関しては連続的である。RBC除去区画14とSC回収区画15とが、小型排気口29により、元の空間へ連結されているのは、細胞溶液が元の空間からそれぞれの区画へと移動するにしたがって、空気を置換可能にするためである。
【0107】
図19では、漏斗11の底が狭まった使い捨てカートリッジ10の透視断面図を示す。漏斗の左側の断面に見られるのは、より大きなRBC除去区画14である。以下に詳しく説明するように、動作中、RBCはまず漏斗状の主要区画の底部に移動し、装置底部の弁システム16に到達するまで、遠心分離機の回転軸から放射状に外に離れるように動く。ここで、弁システム上部にある流体の圧力水頭が、その流体を2つある区画のどちらか1つへと押し込む。前記流体がどちらの区画に誘導されるかは、これらの区画の弁状態(開口、閉口)に依存している。どちらの場合にしても、カートリッジ10の底部にある弁システム16を通過した後、流体は回転軸にむかって全体として流れていき、主要区画に残存している流体(大部分は血漿)からの圧力により押し込まれる。弁システムを既に通過した流体は、その後、RBC除去区画14またはSC回収区画15のいずれかに保持される。弁の微調整を介して、不必要な細胞溶液を枯渇してもよく、そして、所望の細胞溶液が回収可能である。
【0108】
図20では、使用中の本発明の好ましい実施形態を示す。図に示されるように、100mlの臍帯血を主要な漏斗状区画11の内部に配置する。その次に、操作者はカートリッジ10を制御モジュール40(図21に示されるもの)に取り付けて、その後、カートリッジを遠心分離機(好ましくは、スイングバケット付き遠心分離機(例、Thermo Fisher Sorvall ST-40卓上遠心分離機(4つの750mlの円筒状バケットを受け入れるように構成されたもの)))に入れる。大体4個のカートリッジを一度に遠心分離するような別の遠心分離機を使用してもよい。
【0109】
図21では、高いG力にカートリッジ10を供する場合に起こることを表したものを示す。ここで、例示的な2000Gでの遠心分離下では、RBCが下方に移動し、WBCが漏斗の底部から上方に移動し及び流体の最上部から下方に移動し始め、RBCの上の位置へと移動する。その後、RBCの上には、非常に薄層のWBCとPLTが層を作り始め、ある体積の血漿が層化した上部では、血漿は黄色である。高いG力下では、RBCは処理用漏斗11の底部付近でぎゅっと詰め込まれて、RBCの最も重たい部分は下方に、より軽いRBCは、RBC体積の最上部付近に位置する。なお、遠心分離中、この図に描画されたカートリッジは、示されたカートリッジに垂直で上部に位置する軸の周りを回転するので、カートリッジが受けるG力は、回転軸からの距離に比例して増加し、最上部(1000G)でと比べて遠心カップの底部(2000G)では、およそ2倍になる。
【0110】
図22では、好ましい実施形態の詳細な断面模型側面図を示す。この好ましい実施形態では、弁システム16により、漏斗11はRBC除去区画14とSC回収区画15とから分離されている。多くの弁制御手段が考えられるが、好ましい実施形態では、ピンチ弁システムが使用される。そこでは、偏心カム17がチューブピンチャー18を制御し、そのチューブピンチャーは、漏斗の底部から、細胞除去区画14および細胞回収区画15への液体の流れを最終的に方向づける。ここで、ピンチ弁は、約0.088インチ(2.24ミリメートル)幅の締め付け表面を有する互いに対向する2つのクランプから構成される。そして、管の水圧が325PSIの場合、そのウレタン管(内径0.062インチ(1.57ミリメートル)で、外径0.088インチ(2.24ミリメートル)のもの)を通過する全ての流体を遮断するために、約1.6ポンド(725.7グラム)の締め付け力を必要とする。1.6ポンド(725.7グラム)を超える締め付け力が、より高い圧力では必要とされる場合があり、より低い圧力では、締め付け力が減少しても十分である場合もある。
【0111】
図23では、これらの必要とされる締め付け圧力を実現するためのカンチレバーシステムを示す。カンチレバーシステム19は、必要に応じて弁(チューブを締め付け及び解放するもの)を開閉可能である。各カンチレバー(片持)21のバネ20は、好ましくはカンチレバーの最先端部に位置する。アクチュエータ(作動装置)がバネの抵抗を克服してレバーを動かす。 アクチュエータが力の適用を中断すると、バネの偏りにより、レバーを最初の位置へと押し込む。
【0112】
図24では、チューブ締め付けメカニズム又は弁閉鎖メカニズムのカム部分の詳細図を示す。カムは弁モーターの回転動作を直線動作に変換し、チューブを閉じるか又は締め付けるのに用いられる。上記に開示されるように、カンチレバーシステムは、カムと連動して用いてもよい。カム22が時計回りに約90度回転すると、カムのより大きい部分が、ローターとモーター上で連続的に時計回りのねじり力を発生する。それは装置全体を横切るような全体的に下向きの力を発生する高い重力場によるものである。カムは、極めて高い重力場内で動作するように特別に設計されている。 図に示される切抜部分23とカムのその反対側に位置する釣り合いおもり24は、小型モーターが十分な力を提供してカムを開始位置から反時計回りに90度回転できるようにする。従って、具体的には、カムは軸外の質量を減らして潜在的な固定化重力に供するだけでなく、そのような力を考慮してカムの残りの部分の重さに対抗する。つまり、カム軸がその中心軸の周りを回転するにつれて、この様に設計することによりカムに働くG力の結果としてのトルクの増減がないように保証する。
【0113】
図25が示すのは、例示的実施形態の接続チューブ又は可動性導管(外側の大きな円)(主要区画11とRBC除去区画14若しくはSC回収区画15のいずれかとの間に位置しているもの)に比較した各種細胞の相対的サイズである。例示的実施形態のチューブ内径は、0.062インチ(1.575mm)である。弁手段を介して全ての細胞と液体を完全に遮断できる限り、他の内径および外径のチューブを用いてもよい。例示的実施形態では、これらの可動性導管の直径に対する長さの比率は20を超えない。
【0114】
例示的処理工程の説明に戻ると、図26が示すのは、2000Gで遠心分離約10分後の例示的カートリッジである。バフィーコート2が、RBCと血漿の界面で層化している。漏斗11の最下部の細胞は90近いHCT(ヘマトクリット、赤血球に占められる血液体積の割合)に到達する。しかし、RBC層の最上部辺りでは、HCTは60〜70にすぎない。これは、回転軸からその距離での遠心力が弱いことと、その位置での漏斗の面積が広いことによる。
【0115】
図27では、漏斗11の狭領域の詳細図を示す。使い捨てカートリッジ10を制御モジュール40に取り付けた場合、主要区画のこの狭領域には、少なくとも1つ、好ましくは2以上の光学センサー又は他のセンサー48がある。これらセンサーは、処理中の漏斗のこの部分を通過する細胞のタイプを検出する。主要区画のこの狭領域には、少なくとも1つ、好ましくは2以上の光放出器等49がある。例示的実施形態では、図示される4つの赤外線放出器/検出器ペアが垂直に配置される。好ましい実施形態では、赤外線センサーが、ペアとなる赤外線放出器の正面に配置される。第2の好ましい実施形態では、赤血球に優先的に吸収される波長を提供する放出器を、当該周波数に感度のあるペアとなるセンサーの正面に配置する。第3の好ましい実施形態では、 蛍光色素を吸収させた細胞を同定するセンサーを使用する。第1の好ましい実施形態では、細胞の存在が放出された赤外光と干渉し、赤外光検出器が流体を貫く信号の振幅を定量する。好ましい実施形態では、センサーは、0〜1000の値を透過レベルに割り当て可能である。純粋な血漿は、水と似て、赤外光を遮断しないので、おおよその値1000を登録する。凝縮したRBCが通過すると、基本的に全ての赤外光を遮断するので、検出器は値0を登録する。
【0116】
図28では、次の処理工程を示す。試料を所定時間量(例示的実施形態では20分)遠心分離した後、遠心分離機を、遠心分離機のバケットの底部(つまり、回転軸から最も離れたところ)で100Gになる速度へと緩めてもよい。搭載した加速度計がこのプロセスの間ずっとG力を追跡可能である。加速度計が、遠心分離機が100Gに到達したことを検出すると、装置は所定時間量待機し(遠心分離機が100Gに固定され、より低いG力へと通り過ぎない(つまり、機械が故障したり、電力が失われたりしないかどうか)ことを保証するため)、その後、主要区画11とRBC除去区画14とを連結する第1弁25を開き、高度に濃縮されたRBCといくらかの血漿の通過を可能にする。最初にスタンドパイプ26(下記するように1mLの体積を好ましくは有するもの)を満たすことで、RBCが除去区画14に進入していく様子が見られる。使用中、RBCは、スタンドパイプ26が満タンになるまで除去区画14へ流れ続ける。満タンになった時点で、RBCは溢れてより多きな区画である除去区画14を満たす。
【0117】
図29が示すのは、スタンドパイプ26が溢れてRBCがより大きな枯渇用空間を満たす様子である。RBCと血漿との間の界面は、バフィーコート2により描写されているが、今や容易に目に見える。漏斗11が狭くなるにつれて、同量の細胞が、より狭い水平空間を占めることになる。結果として、占められる垂直空間は増大し、複数の細胞タイプの各階層化レイヤーを区別することがより容易になる。
【0118】
図30では、漏斗11の狭くなっている部分に進入するWBCを示す。WBCがこの狭くなっていく部分に進入するにつれて、層化が継続し、GRNが底部にあり(印を付けていない)、MNC3が中間にあり、そして、PLT4がMNCの上に乗っている。血漿5の大部分はPLT上に示される。
【0119】
図27に示される放出器/検出器ペアは、主要区画の狭領域を細胞が通過するのを監視する。図31が示すのは、100Gで移動中の血液細胞集団の、第1位置(最上部)放出器/検出器ペアからの赤外線の光学的数値である。水平な線が表すのは、細胞を含まない血漿で観察される光学的数値である。光学的数値がより低いことは、放出器/検出器ペアで観察される試料にWBCとPLTがいまだ存在することを示す。グラフの左底部において初期に0から立ち上がるのは、RBCの上に配置されたバフィーコート層が第1位置放出器/検出器ペアを通過することを示す。値が上昇することは、放出器/検出器ペアの間を通過する溶液がより透明になることを指し、それは、含まれるRBCの数が少なくなることを意味する。より透明な層に近づくにつれて、数値は上昇し、例えば、50、次に、100、200と続く。
【0120】
いくつかの状況下では、細胞が枯渇される間上昇するような図31に示される光学的数値は、枯渇が停止されると、減少しはじめる場合がある。このことは、より多くの細胞がセンサー検出領域に進入していることを示している。この理由は複雑である。まず、様々な密度の粒子は半径がだんだん減少する漏斗の下部から排出されるにつれて再構成される際に、乱流や渦流がある流体を通して、光学的測定がなされたことがある。RBCおよびWBCは、それらのサイズがことなるので、異なる速度で下降する。従って、RBCの排出速度が特定の粒子(例、PLT(他と比べてサイズが小さい))の沈降速度より大きい場合、これらの粒子はより沈降速度の速い他の粒子に後れを取る。慎重に階層化された混合物は、排出処理中に部分的に混合される。WBCがある速度で下降する間に、RBCが異なる速度で下降するだけでなく、WBCの動きが圧倒的に数の多いRBCの動きにより阻害される可能性がある。さらに、RBCの密度はそのライフサイクルを通して変化する。結果として、より密度の高いRBCが漏斗の底部に押し込められる一方で、より軽いRBCは置換される血漿と共に上昇する。従って、漏斗の底部で開始し、RBC/血漿界面へ向かって上昇することが仮定されたWBCは、ずっと数の多い「より軽い」RBCと共に移動する。これら上昇する細胞が、下降する高密度のRBCの間をぬって移動するのは、全ての細胞が、軽度に負に荷電し互いに反発する傾向があるという事実によるものである。
【0121】
枯渇中に必然的に起こるこの混合に対抗するために、例示的実施形態のシステムは、所定時間排出後に、細胞が通過するチューブを閉鎖し、下降する細胞が再凝集して再び層化することを可能にする。チューブが再度開かれると、漏斗内で混合が再度起こり始める。この混合が所定の応用例に適しない場合、本発明は、従って、排出処理を定期的に停止する、スタート-ストップ方法を採用することができる。
【0122】
図32では、処理工程の後期を示す。処理工程のある時点で、RBC除去区画14への管を閉鎖し、SC回収区画15への管を開口する。図32は、処理のより後の時点を図示し、その時点では、SC回収区画15への経路は、開かれていて、RBC除去区画への経路は締め付けられて閉じている。 RBC除去区画のスタンドパイプ26は、RBC除去区画15に入るRBCの最後のlmLを保持しているので、 スタンドパイプ26は、最も軽い密度のRBCを含んでいる。従って、 RBC除去区画15全体が含むよりも、より高濃度のGRNとNRBCを含むことになる。検査技師は、その後スタンドパイプ26の内容物を回収する場合があり、従って、より小さなSC区画15からのSPC回収物を犠牲にすることなく、HLAタイピングのためにGRNとNRBCを得ることができる。遠心分離が継続すると、より密度の高い細胞が回転軸から離れるにつれて押し込まれ続ける。主要区画に残存する血漿5は、その下にある流体や細胞に圧力をかけ続け、MNC3及びPLT4を、SC回収区画15へと続く管中を上方に動かす。図示するように、MNCとPLTとが主要区画から大部分除去された後でさえも、血漿5を、その後SC回収区画15へと流れこませ, その処理工程中で連結する管を洗浄し、全てのSPCが回収区画15中に回収されることを確実にする。
【0123】
RBC除去区画14とは逆にSC回収区画15へ流体(及び細胞)を誘導する、弁システム16を制御するタイミングが重要である。弁を切り替えるのが早すぎると、RBCがSC回収区画15に入る可能性があり、HCTを上昇させ、回収される試料の純度を減少させる。弁を切り替えるのが遅すぎると、ある程度のMNCがRBC除去区画14へ移動する可能性があり、回収されるMNCとSPCとの回収効率を減少させる。
【0124】
先行技術にあるが、本発明の例示的実施形態により克服される一つの困難は、遠心分離中に移行される液体の所定最終体積の回収に挑戦することである。このことが重要なのは、例えば、本発明により得られる血液試料が使用されるのが期待される各種他の装置が、所定体積(例、20mL)の液体を受け入れるように構成されているからである。ある一定体積の流体が遠心分離中に回収される時期の検出が、回収される流体重量を測定する専用スケールを用いて可能であるが、信頼度のあるものを得る目的では、固溶体が好ましい。SC回収区画へと通過する液体体積を測定するためには、ある種の仮定が必要である。まず知られていることは、主要区画のセンサー領域を通過する細胞の上にある流体が、これらの細胞に下方へ圧力をかけ、漏斗の底部からその排出を促進することである。一定加速度下で液体が排出され続けると、排出速度が遅くなる。なぜなら、その上にある血漿体積が減少することにより、細胞への圧力が小さくなるからである。また、細胞粘度がヘマトクリット間、ヒト間でばらつきがある場合があることが知られているが、血漿は粘度に関して十分一貫性がある。結果として、一旦全ての標的細胞が通過し、血漿だけがチューブからSC区画へと移行されるように残された場合、上にある血漿の動的頭頂部に比例する予想可能な速度で血漿が流れる。
【0125】
本発明では、上記事実は、排出される細胞が通過する複数の放出器/検出器ペアを用いる方法と結びつく。例えば、上記したように、バフィーコートが最上部センサーに近づくと、最上部又は第1位置放出器/検出器ペアにより検出される光学的数値が上昇し始める。任意の光学計測値(この場合では4)を前もって設定し、第1位置放出器/検出器ペアがその任意の値を検出した場合に時刻印を開始する。排出が継続すると、第2位置放出器/検出器ペア(つまり、最上部ペアの直下にあるペア)がそれと同じ任意の値を読み取ると、第2の時刻印をセットする。第1位置と第2位置放出器/検出器ペアとの間の距離とその任意の値が第2位置に到達するのにかかる時間とを考慮する計算を通して、2つのセンサーペア間の血液構成成分の流速が測定可能である。同じプロセスを用いて、あるセンサーからその下に位置する任意の他のセンサーへ任意の値が通過するのにかかる時間量を測定することもできる。
【0126】
センサー間の血液体積をさらに把握すると、体積が枯渇する速度を計算できる。例えば、本発明の1実施形態においては、第1位置センサーの下にある漏斗下端部の体積は6mLであり、第2位置センサーの下にある体積が4mLであることが知られている。従って、第1時刻印と第2時刻印との間に2mLの血液が排出されたとの理解に基づき、流速を計算することができる。第3位置及び第4位置(最下部)放出器/検出器ペアがその同じ任意の値を読みとる時間を検出することにより、その速度をさらに正確にすることもできる。重要なことは、このプロセス中、前記スタート-ストップ技術を実施して、完全に弁が閉じることによる排出速度への影響に注目することである。結論としては、積み重ねた放出器/検出器ペアを介して観測された流速に基づく推測により、SPCを含むWBCの溶液に所望の体積で血漿を追加するようにSC回収区画への弁を開く時間をセットする制限を設けることができる。その制限は流速に依存して変化する。究極的に主として依存するのは、排出点より上の液体の頭頂部により引き起こされる圧力であり、ある程度は、幹細胞溶液を所定の最終体積へ「補充」するのに使用される血漿の粘度による圧力に依存する。
【0127】
本発明の別の実施形態では、RBCを、現在選択されている100Gより高いか又は低い加速度で、例えば50〜200Gの重力場で回収してもよい。
【0128】
本発明の別の実施形態は、MNC5と共に回収されるPLT4の数を有意に減少させる方法を含む。
【0129】
図33に示すように、遠心分離工程の間、MNC3と血小板4は主要区画11の狭くなった底部に濃縮する。前記工程のこの時点では、SC回収区画15へのピンチ弁が開口した場合、MNCは血漿の質量により押し込まれて、最初に回転軸に垂直方向に移動し、次に回転軸に向かって右側の管を上昇し、SC回収区画15の中へ移動する。さらなる工程を取ること無しに、血漿の流れがSC回収区画上に入った時点でそれらが枯渇するまで、血漿は引き続いてPLTをSC回収区画へと押し込む。
【0130】
SC回収区画15に入るPLTの数を減らすため、検査技師は制御モジュールをプログラムして、RBC/GRN枯渇サイクルの終わりでの回収工程を(RBC弁を閉鎖し、MNC弁を開けないようにすることで)一旦停止し、遠心分離機が止まるようにする。この方法では、その後検査技師は遠心分離機のバケットからカートリッジを取り外し、図34に図示するように、MNC3とPLT4を拡散して漏斗中でMNC3及びPLT4を血漿5の中で再分配するためにカートリッジを穏やかに振とうする。
【0131】
図35に示すように、カートリッジをその後少しの時間、低加速度で遠心分離する。より少ない時間と低加速度であっても、より密度の高く迅速に動くMNC3を漏斗の底部に再濃縮するのに十分であるが、PLTを同様にすることには十分ではない。より密度の低く大きさの小さいPLTは、従って、漏斗の底部に移動するのにより多くの時間を必要とする。そのような時間を提供しないことにより、MNCの大部分がPLTの大部分から分離可能なことが示される。
【0132】
図36では、SC回収区画15へのピンチバルブがその後開かれると、MNC3がまず流入し、その次に血漿5とわずかの画分のPLT4が続き、その後SC回収チューブが締め付けられて閉じられる。いくつかのPLTがまだSC回収区画に入って行く一方で、PLT画分は、使い捨てカートリッジ中の総血漿体積に比べて、SC回収区画へ移行された血漿体積に比例する。例えば、100mlの血液は、約55mlの血漿を一般的に含む。主要区画に50mlの血漿を残して、5mlの血漿がSC回収区画へ移入された場合、MNCと一緒になるPLTの割合は、総PLTの約10%である。つまり、MNCを回収する際におおよそ90%のPLTの減少を実現する。
【0133】
図37では、別の実施形態の一つを説明する。本発明のこの別の実施形態では、GRN6がSC回収区画15で所望される。例えば、臍帯血を回収する際に、総WBC数がしばしば、患者に等しく適合する2つの臍帯血ユニットのどちらを選ぶかを決定する。従って、MNCと共にGRNの大部分を含ませることが所望される場合がある。この結果を得るために、検査技師は制御モジュールをプログラムして、SC回収区画への弁を他の(上で開示した)実施形態より早く開口して、RBCの最上部層(多くのGRNを含むもの)を回収区画へと入るようにする。自明であるべきことは、タイミングの調整を介して、様々な量のGRNをSC回収区画へと入れることが可能であることである。前記回収区画で回収された試料は、引き続いて、血漿を追加されるので、試料は比較的低い(約2〜10%の)ヘマトクリットを保持する。
【0134】
図38では、上記実施形態の任意において、RBC区画へ移行されるRBCの最後の1mLを含むスタンドパイプとSC回収区画の内容物を除去する機構が配置されている。図38が示すのは、回収用に配置されたSC回収チューブ27とRBC/GRN回収チューブ28の両者を有する使い捨てカートリッジである。RBC/GRN回収チューブは、当該技術分野で公知の任意の手段により、カートリッジの外側に接続し、スタンドパイプの底部と流体により連結されている。そのことにより、サンプリング(例、ヒト白血球抗原 (HLA)タイピングを得ること)用の細胞溶液の最後の1mLからNRBC 及びGRNを得る簡単な手段を提供する。その後、RBC/GRNの残りを、必要に応じて除去することもできる。
【0135】
本発明の任意の実施形態で理解されることは、抗体ビーズ(血漿中で浮揚するか、RBCと密度がほぼ同じもののいずれかのもの)が、回収前に試料に導入されて、特異的研究や臨床目的に有用でないことが知られた細胞に結合可能なことである。
【0136】
本発明の任意の実施形態において容易に理解されるべきこととしては、ある種の細胞集団により吸収可能な蛍光物質が、回収前に試料に導入されて、前記細胞集団をその回収工程中およびその後に追跡可能にすることである。
【0137】
本発明をある種の実施形態に関して示し説明してきたが、等価な変更や改変の実施が、本明細書を読み理解する際に当業者に自明である。特に、上記部品により実施される様々な機能に関して、そのような部品を記載するのに用いた用語(「手段」への任意の言及を含むもの)は、他に指示が無い場合、記載された部品の特異的機能を実施する任意の部品(つまり、機能的に等価なもの)に対応する。それは、本明細書に記載する本発明の例示的実施形態において当該機能を実施する開示部品に構造的に等価でなくても対応する。また、本発明の特定の特徴がたった一つの実施形態に関してのみ開示されていたとしても、そのような特徴は、任意の所定のまたは特定の応用例にとって望ましいか或いは有利である場合がある他の実施形態の一又は複数の他の特徴と組み合わされていてもよい。
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