【発明が解決しようとする課題】
【0010】
<関連技術の説明>
全血または骨髄穿刺試料由来の一定の細胞タイプを単離および回収する従来方法は、試料の遠心分離に関連する。遠心分離中、細胞集団は、その密度によって強弱する加速軸に沿って相対的位置へと移動し、複数の層に濃縮される傾向があり、その移動プロセス中に血漿や他の高密度および低密度細胞タイプと置換する。
【0011】
図1は、ヒト血液に見られる各種細胞タイプの密度と平均直径を示す。血液を遠心分離する際に、互いに異なる細胞タイプ間の物理的差異が重要である。血液を遠心分離する際、ストークスの法則を含む多数の流体力学的因子に従う速度で、細胞は新たな位置へ移動を開始する。全ての細胞が軽度に負の荷電を保持している事実は、直接的細胞膜間接触に不利に作用する。主として(比較的にほとんど細胞の無い)血漿を含む環境では、細胞が大きくなればなるほど、細胞はより速やかに移動する。しかしながら、細胞濃度が上昇するにつれて、細胞荷電の効果が細胞の速度を実質的に決定するようになる。
【0012】
しかしながら、全ての場合において、細胞の密度が高くなればなるほど、容器のより下方へ(つまり、遠心分離機の回転軸から遠ざかるように)、細胞は最終的に移動し定着する。従って、
図2に示すように、最も高密度の細胞であるRBC(密度は1.08と1.12との間である)は、遠心分離される容器の底に移動することになる。RBC層の中では、有核赤血球(臍帯血と骨髄との双方には存在するが、正常な血液には存在しないもの)は、赤血球画分の最上部に位置する。RBCの上にあるのは、GRN(密度1.07〜1.11)であり、容器の回転軸に近づく順番で、次に、リンパ球(密度1.05〜1.09)、単球(密度1.045〜1.0750)、そしてPLT(1.03〜 1.065)である。SPCの密度は単球およびリンパ球に最も近く、従って、より多数のこれらの細胞が取得された場合にSPCを取得することができることが知られている。ある条件下で形成する既知の層を利用することで、その層だけを回収することを通して、ある1種類の細胞の回収が促進可能である。
図2が示すのは、正常血液、臍帯血、および骨髄の一般的試料における、血液細胞タイプの相対的頻度である。そして、結論として示すのは、下記で議論するように、密度により体系づけられた細胞集団に重なりがある場合があることである。
【0013】
階層化された細胞層を構築することは、決まった量の時間に高いG力を適用すること以外は一般的に必要としないが、特異的な細胞層を正確に除去することには問題がある。所定の試料においてある一定の細胞集団が稀であり少量しかないことを説明するために、
図3、4、及び5が詳細に説明するのは、遠心分離と階層化後の正常血液(NB)、臍帯血(CB)、及び骨髄(BM)における各細胞集団の平均体積である。
【0014】
図3及び4が示すのは、大多数の細胞がRBCであることである。一方、
図5が明確に示すのは、非RBCの細胞性血液構成成分の体積が小さいので、臍帯血試料200mlをもってしてもGRN(最上部の線)、MNC(中間線)及びPLT(下線)を全て合わせた総体積が約1mLであることである。臍帯血中では、1000個の血液細胞中1個より少ない細胞(総細胞の約0.08%)がMNCである。10,000個のRBCを含む臍帯血試料中では、40〜200個のPLT、3〜6個のMNC、及び5〜10個の顆粒球を見出すことが期待される。
【0015】
説明したように、細胞数と体積との双方の点から、血液の大部分はWBC以外の細胞から構成されている。これらWBCが少ないことと、膨大な数のRBCが占める溶液中でWBCが留まっていることから、WBCを単離する現状の方法は、(A)労力と時間がかかり、検査室での優れた技術を必要とする;(B)一般的には無菌環境中で実現することができない;(C)一般的にはWBCを取得する効率がほんの50〜75%である(25〜50%のWBCを失う);(D)細胞機能に悪影響を与える可能性のあるプロセスに関わる。血液試料のサイズが一般的には小さいこととSPCが正常血液中では極めて稀であるという事実とを考慮すると、正常血液からWBCを普通に回収した際にはSPCは全く無い可能性がある。正常血液よりも臍帯血中でSPCがより数が多いとしても、臍帯血中でさえも依然としてSPCは稀である。
【0016】
正常血液からWBCを得るのが如何に困難かをさらに説明するために、従来の手作業の血液構成成分分離法で通常用いられる概略50ml試験管を
図6に図示する。これらの試験管の幅は、通常28mmである。遠心分離後、分離された血液構成成分は、血漿(最上部)、RBC(底部)、及び「バフィーコート」と呼ばれるほとんど目視できない薄層(説明目的で
図6では大きさを誇張している)である。この「バフィーコート」がほぼ全てのWBC、SPC、及びPLTを含む。
【0017】
全血からWBCを回収するためのいくつかの半自動化システムが現在市販されているが、手作業による方法と比べた場合の細胞回収効率の利点は際立ったものではなく、それらの市場浸透率は小さい。血液または骨髄試料中のWBCを単離・取得するための一般的な現状の方法は、以下の2つの手作業による処理技術である:(A)粒子を用いる密度勾配法;(B)ディスクを用いる密度勾配法。診断または研究目的に関して、血液または骨髄からWBCを単離する100回中99回は、WBCをこれらの技術を使い単離する。この両技術がうまくいくかどうかは、処理のため円筒管を利用し、密度の操作を注意して行うかどうかによって決まる。例えば、MNCを単離する目的の場合、多数の細かな粒子または約1.08の密度を有する(管の内径よりわずかに小さな直径の)ディスクを管中に配置する。この特異的密度の値を選んだ理由は、GRNとリンパ球の中間密度から等距離にあるからである(
図2を参照されたい)。この両技術が正しく機能するためには、血液試料をまずその血液体積の等量から2〜4倍量の緩衝剤で希釈することが必要である。
【0018】
まず前記粒子を用いた方法に関して言うと、緩衝剤で処理した血液試料を試験管中で粒子と混合した後、遠心分離を開始する。遠心分離中、粒子の密度に応じて粒子が合体することにより、RBC/GRNとMNC/PLTを分離する。
図7が示すのは、MNCとRBC/GRNとを分離する(密度勾配に用いる粒子)Ficollを用いた処理である。
【0019】
密度勾配ディスクを使用する方法は、非常に類似していて、
図8にて説明される。ここで、密度1.08のディスクは、遠心分離下、リンパ球とGRNとの間の境界面へと移動する。しかしながら、ほとんどの密度勾配ディスクは、上記粒子に見られない1つの特徴を有している。つまり、MNCが定着することになる、上方と下方のディスク間の空洞を含み、従って、管の最上部とこの空洞間を貫く可動なチューブを介して、MNCの回収をする工程をいくらか簡単にする。
【0020】
血液試料からMNCを単離・取得するこれら手作業による方法は、根気と優れた手技を必要とする。これらの方法は、一般的に実施するのに1[1/2]〜2時間かかり、最もうまくいっても、MNCの回収率は60%より少ないことがしばしばである。従って、血液試料中のMNCを単離・取得するのによく用いられる手作業による方法は、正確さとスピードの点から最適には及ばない。なぜなら、この技術には多数の制約があるからだ。
【0021】
第一に、密度勾配溶液が血液または骨髄からWBC集団の単離を実現できるかどうかは、たった一つの物理的因子(密度)によって決まる。一旦遠心分離が始まると、密度勾配媒体はある位置へ移動し、その位置で、その媒体は細胞溶液中で浮揚し止まる。 一般的には、細胞集団の最終位置への移動は、決められた期間と加速の間に起こり、従って、個々の血液試料に関して最適であることは稀である。
【0022】
図2に関して述べたように、基本的に、両方の密度勾配技術の有するWBC又はMNC回収効率が制限されるのは、顆粒球とリンパ球との中間密度のベル型曲線間の隙間の中心(つまり、1.08)を狙う必要があるからだ。
図2が明らかにするように、この決まった密度は、全ての顆粒球又は全てのRBCさえも除外することはできず、実際、ある程度の所望のリンパ球を廃棄することになる。
【0023】
この簡便な方法が説明しない事実は、たとえ健常人においても各細胞タイプの数と密度に有意なばらつきが存在し、試料間の沈降速度が一桁ほど異なる場合があることである。さらに、患者がある種の疾患を有する場合、相対的な細胞集団のばらつきやその細胞の沈降速度が二桁程度まで大きくなる可能性がある。従って、これらの旧式なWBC又はMNC単離技術は、任意の特異的血液試料にとって最適であることは稀である。
【0024】
この制限の重大さを想像する最善の方法は、血液試料中の細胞(遠心分離前にはその体積中で均等に分布しているもの)が、遠心分離が開始すると、競い合って新たな位置へと移動を始めるということを理解することである。このWBC又はMNC単離技術が効率よく行われるかどうかは、どのくらい正確に全てのWBCが、その競争の終わりに同一の層へと辿り着くかや、どのくらい上手に検査技師が通常の1G条件(つまり、容器がほんの少し動いただけ又はピペットチップがほんの少し動いただけで細胞が再混合され始める様な条件)でピペットを用いてこの位置からWBCを抽出することができるかによって決まる。
【0025】
科学者は、1G条件下で正常血液由来のRBCが容器を下って移動する速度を長らく研究してきた。この測定値を、赤血球沈降速度またはESRと呼ぶ。従来のMNC単離工程で使用される遠心加速度はこの沈降速度を加速するが、これらは互いに異なる細胞タイプの沈降速度の割合変化を変えるものではない。さらに、RBCの数は、WBCの千倍以上あり、MNCの2千倍以上ある。そして、全ての細胞は軽度に負に荷電していて、WBC集団の単離に最も影響を及ぼすのはRBCの移動である。
【0026】
様々な年齢の成人におけるESR(1時間当たりのミリリットル(mm/hr)で測定したもの)が、
図9に示される。子供においては、出生時では、ESRの正常値は1〜2mm/hourであり、生後8日では、4mm/hourに上昇し、その後、生後14日までには、17mm/hour(2週間未満で一桁より高い変化)となる。ESRは可変であるので、悪性疾患(例、多発性骨髄腫、種々の自己免疫疾患(例、関節リウマチ、慢性腎疾患))の診断に用いられる。これら疾患では、ESRは、100mm/hour(健常成人の5倍)を超える場合がある。
【0027】
さらに、注目されるのは、容器の底部にあるWBCは、容器の最上部から下って来るWBCに合わさるように上方へと移動可能であるのみであり、結果として、下ってくるRBCに置換される昇っていく血漿上に浮上する。なお、溶液中の極少数のWBCが、RBC(千倍もの数があり、同一の垂直な流路を反対方向に移動するもの)の流れに逆らって上昇する経路を通り抜ける必要がある。さらに、遠心分離機の加速と期間が運転の開始時にプログラムされているので、特定試料中の全ての細胞を再配置するのに十分な期間は、他の多くの血液試料にとっては不十分である場合がある。つまり、ほとんどのRBCがチューブの底部に到達していない場合があり、従って、標的WBCの多くが上っていく血漿により作られる「バフィーコート」 層 に浮上していない可能性がある。この工程は閉鎖系の遠心分離機中、急速に回転するローター中において起こるので、操作者は、細胞の実際の挙動を観察することはできない。
【0028】
従って、必要とされるシステムとは、遠心分離中、個々の血液試料中の細胞集団の移動をリアルタイムで光学的に追跡するものである。そのようなシステムは、それら血液試料の有する構成細胞集団の特異的サイズと密度に応じて、個々の血液試料をオーダーメードで処理することを可能にする。この改良型解決策は、標的WBC又はMNC細胞集団の回収効率を大きく増大させることも期待されている。
【0029】
密度勾配媒体の別の欠点は、媒体が緩衝剤を必要とすることである。緩衝剤は所定の回収管の体積のほぼ全てを占領し、WBCが回収されることになる血液の体積を小さくする。緩衝剤は、典型的な50mlの回収管の70%〜90%を占めることがしばしばなので、たった5〜15mlの血液のための空間しか残さない。結果として、100mlの血液からWBCを回収する必要がある検査技師は、7〜20本の試験管を用いなければならず、目的を達成するのに必要な労力がさらに増大する。また、最終WBC集団中の夾雑物からの十分な純度を実現するために、粒子状密度勾配媒体や緩衝剤を洗い流す必要があり、必然的に標的細胞のさらなるロスを引き起こす。
【0030】
従って、血液または骨髄試料から不必要な細胞を枯渇させる手段の必要があり、その手段は体積のかさばる密度勾配媒体や緩衝剤を必要としないものである。前記手段は、任意ではあるが、より体積の大きい試料からのWBCの回収を可能にする場合もあり、診断または臨床用途で回収可能な構成細胞数をさらに増加する。
【0031】
密度勾配に基づいた上記血液分離方法の3番目の欠点は、密度勾配回収管の並列の垂直壁が、WBCが遠心分離中に上昇してRBCの上に位置することを補助しないことである。従来型システムでの密度勾配用の回収試験管は、並列の垂直壁を有していて、それが意味するのは、遠心分離中全ての細胞が試験管の軸に沿って垂直に下降または上昇することである。上記したように、上昇する各WBCは反対方向に移動する何千個ものRBCを通り抜けていく必要がある。回収試験管の有する並列の垂直壁は、遠心分離中にWBCの上昇を補助する横の運動、つまり下降するRBCと上昇するWBCへの横の運動を提供しない。その結果として、管の底部で回転サイクルを開始したWBCの大部分が、選択された遠心分離処理中に回収層である「バフィーコート」へと上昇しない可能性がある。
【0032】
従って、試験管の底にWBCが補足されることを、底部で急激に細くなった漏斗状の回収室を利用することで克服する必要がある。そのようにして、下降するRBCの大部分は中心に寄せられ、RBC体積最上部へと上昇する最も軽いRBCにより引き起こされる渦流を増強する。順に、これらの渦流は、数はずっと少ないがより浮揚力のあるWBCが上昇するのを補助する。
【0033】
密度勾配に基づく分離方法の4番目の欠点は、MNCが1Gで手作業により回収される位置における、密度勾配の回収試験管の断面面積が一定して大きいことである。
【0034】
標準的50mlの密度勾配回収管の壁は約28mm離れて固定されているので、10mlの抹消血液試料由来の非常に少ないMNC体積(約0.028ml)が管の断面積(約615mm
2)全体に渡って広がり、ほとんど目視できない薄層(約0.023mm)を形成する。この広い断面積と得られるMNCの薄層とのために、細胞集団間の密度差による階層化効果は非常に小さい。結果として、1GにおいてMNCを回収するためには、熟練した検査技師が、密度勾配(下層)と血漿(上層)との間に浮かぶこの非常に薄い細胞層へとピペットチップをゆっくり慎重に挿入し、その後、穏やかに吸引してペピットの中にMNCを取り込むことを必要とする。しかしながら、大きな遠心力によって増大しない場合の細胞集団間の密度変化が非常に小さいことや管の断面積が大きいことという2つの原因によって、MNC/PLTが基本的に全て、同一の薄い垂直層に保たれる。結果として、この手作業による吸引工程中どんなに注意しても、MNC/PLT層と密度勾配媒体との攪乱を阻止することはできず、MNCのロスと密度勾配に用いる粒子による細胞の相当な混入とが引き続いて起こる。従って、この過程でMNCの約25〜40%が失われることも普通である。
【0035】
従って、十分な遠心により細胞層の一体性と純度を維持しながら細胞が先細の漏斗を下降するにつれ垂直方向に広がる一方で、漏斗出口の横断面領域が狭まることによりRBCや大部分のGRNを枯渇させることでMNC回収中のロスを回避する必要がある。
【0036】
密度勾配に用いる粒子(密度勾配粒子)に基づく従来型システムの5番目の欠点は、密度勾配粒子と細胞との間での直接的接触に起因する。回収される細胞とこれらの粒子との間で長期間直接的な接触が起こることにより、毒性という形で細胞機能が損なわれるとの報告がある。例えば、Yuhan Changらが最近報告した「The Efficiency of Percoll and Ficoll density gradient medium in the Isolation of Marrow Derived Human mesenchymal stem cells with Osteogenic Potential」(Chang Gung Med J 2009;32:264-75)では、コントロール媒体と希釈系列のPercoll又はFicollとの混合物とを共に培養することにより細胞毒性試験をCFU-F(培養継体1回目)上で実施して、これら2つの勾配媒体の持つ成長阻害効果又は細胞毒性効果を評価した場合、勾配媒体の比率がその両者の群で増加するにつれてCFU-Fの細胞死がより増加することが示された。
【0037】
従って、密度勾配粒子または細胞機能を変更し損傷する可能性のある他の外的物質を加える必要なしに、RBC、RBC及びGRN、RBC、GRN及びPLT、或いはRBC、GRN及びMNCを枯渇させる必要がある。
【0038】
密度勾配粒子を用いるか又は用いない、従来型血液分離方法の6番目の欠点は、有意な数のRBCが最終産物中に残ってしまう可能性があることである。なぜなら、検査技師の技能のばらつきや1Gにおいて細胞が何らかの事情で再混合し易いことがあるからである。いくつかの最近の研究は、RBCの混入を最小限にする重要性を強調している。なぜなら、そのような混入がこれらMNCを使用する医療処置の効能を減少させるからである。
【0039】
RBC混入の悪影響の例は多くあり、例えば、「Red Blood Cell Contamination of the Final Cell Product Impairs the Efficacy of Autologous Bone Marrow Mononuclear Cell Therapy」 (Assmusら, Journal of the American College of Cardiology, 55.13, 2010)を参照されたい。そこで開示されるのは、RBCを混入させることが、単離されるBMCの機能性に影響し、 急性心筋梗塞を有する患者の冠動脈内にBMCを注入後の左室駆出率の回復の程度を決定することである。また、「Packed Red Blood Cells Suppress T-Cell Proliferation Through a Process Involving Cell-Cell Contact」(Bernardら, The Journal of Trauma, Injury, Infection, and Critical Care, 69.2, Aug. 2010)を参照されたい。そこで開示されるのは、貯蔵されたRBCがT細胞増殖に対して強力な阻害効果を示すことと、おそらく、T細胞増殖への同様な阻害が輸血後にインビボ(in vivo)で起こり、輸血関連免疫調節の主要な寄与因子となる可能性があることである。
【0040】
従って、SPCを含む精製溶液をよりたくさん回収するために、正常血液若しくは臍帯血、骨髄、又は脂肪組織より分離されたSVF細胞の回収試料からRBC、GRN、及び可能性としてはPLTをより多く予測可能に枯渇させる必要がある。
【0041】
この細胞分離と枯渇工程を自動化した極少数の市販システム(例、Hemonetics V50、Cobe Spectra、Sepax System(Biosafe SA、スイス、製)、Thermogenesis AXP(Thermogenesis社、カリフォルニア、製))も実質的欠点があり、従来型の手作業による手段に比べて精製WBCの回収は改善されてはいない。別の欠点としては、これらの市販自動化システムは、操作するために高価な設備投資を必要とする。これらの自動化装置は何万ドルもの費用がかかり、精製WBCの大量生産が必要な場合(例、一日当たり40〜200ユニットを処理する臍帯血幹細胞バンクの場合)、検査室のかなりの部分を占有する。
図10が説明するのは、先行技術の2つのシステムと本システムを用いて4ユニットの血液を処理するコストである。
【0042】
現状の市販自動化システムの2番目の欠点は、
図11に示すように、複雑、高価で、製造困難な1回使い捨てバッグセットであって、細胞処理のためにたくさんのチューブと連結されたものを必要とすることである。これらのバッグセットは約5分かけて、それ専用の装置へと正しく配置され、血液または骨髄を処理するためにシステムが準備される。これら先行技術のバッグセットは、複雑で製造に費用がかさむ。
図11に示すように、これらの先行技術のバッグセットは、20より多くの個々に形成された接着部を必要とする。
【0043】
従って、RBCの混入がより少なくてWBCの回収効率がより高くなり得る、より簡単で、より費用のかからない、より迅速且つ使いやすい自動化システムが必要とされる。さらに、(複数のバッグや複雑に接続されるチューブの必要が無い)簡単で、製造コストの低い1回使い捨て処理容器を用いるシステムが必要である。
【0044】
図12が示すのは、本発明の簡単さであり、一体型円筒カートリッジを提供する。そのカートリッジの中で、全ての細胞処理が起こり、細胞の階層化と枯渇に関連する全ての構成要素が配置されている。1,2秒かのわずかの間に、このカートリッジは、専用の円筒形制御モジュールの最上部に固定され、遠心カップに挿入準備可能となる。制御モジュールは、カートリッジ中の活動を制御する手段と同様に、光学的および重力感知手段を含む。
【0045】
この一体型カートリッジは、射出成形の製造精度がよいことから助けを受けて、複数のバッグセットとそれに接続する複雑に接続されたチューブを一般的に含む先行技術の自動化システム用の従来型処理用使い捨て用品よりもずっと簡単で労働効率がよい。
【0046】
従って、本発明の第1の目的は、個々の血液試料に関して細胞集団の移動を光学的に追跡し、その後、遠心期間中に同一カートリッジ内の第2分離区画へと前記細胞集団を迂回させながら特定の細胞タイプを枯渇させることである。
【0047】
本発明の第2の目的は、体積のかさばる密度勾配媒体または緩衝剤を必要とせずに、実質的に全ての不必要な細胞タイプを選択的に枯渇させることである。
【0048】
本発明の第3の目的は、その底部が十分狭くなった、固定した漏斗状の回収室を提供することである。従って、下降するRBCが漏斗の中心部に押しやられて、赤血球体積の最上部へと上昇する最も軽いRBCにより引き起こされる垂直方向の渦流を増強する。このことは、数はずっと少ないが、より浮揚力のあるWBCが初期のWBC層および濃度レベルへと上昇するのを補助する。
【0049】
本発明の第4の目的は、一体型カートリッジを提供することであり、その中では、全ての細胞処理が起こり、細胞の階層化と枯渇に関連する全ての構成要素が遠心分離の完了時に配置されている。カートリッジは、制御モジュールへ簡単、迅速、取り外し可能に固定可能である。その制御モジュールは、遠心分離下で、それがはまり込んでいる支持構造物よりもそれ自身の支持力に依存する。このカートリッジを好ましく構成するのは、少なくとも3つの以下の固定区画である。(1)RBC区画であって、その中に大部分のRBCおよび、操作者の裁量で、不必要なGRNが誘導される。(2)幹細胞(SC)区画であって、その中に目的のWBCが誘導され、そのWBCには、操作者の裁量で、GRN、リンパ球、単球、SPC、及び/又は血小板を含んでもよい。(3)回収漏斗であって、初期には血液または骨髄の試料全体を含むが、処理後には任意の余分な血漿を保持する。
【0050】
本発明の第5の目的は、漏斗内にWBC層を作り出すことであり、WBCは、遠心力により下方に押し込まれた場合、直径が減少するような漏斗部分に出くわし、前記WBC層の垂直方向の厚さが増大する。
【0051】
本発明の第6の目的は、血液試料をRBC、GRN、MNC、PLT、及び血漿へと階層化する手段と、特定の細胞層間の界面で特定の弁を正確に開閉する手段とを提供することである。
【0052】
本発明の第7の目的は、ヘタスターチ等のRBC沈降剤の必要無しに、従来型手作業または自動化システムを使用して得るよりも、より高い割合のRBCを同時に枯渇しながらより高い割合のWBCを回収する手段を提供することである。
【0053】
本発明の第8の目的は、現在配置されている従来型手作業システムおよび自動化システムと比べて、安価に上記7つの目的を提供することである。
【0054】
本発明のこれらの目的や他の目的、利点、特徴、及び観点は、以下の記載が進むにつれ明らかになる。前記および関連目的の実現のため、本発明は、特許請求の範囲により十分に以下記載され特に指摘された特徴と、以下の明細書部分と、本発明の例示的実施形態を詳細に記載した付属図面とを含む。しかしながら、これらは、本発明の原理が利用可能な各種方法の内のいくつかを示唆するものにすぎない。