特許第6016874号(P6016874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016874
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20161013BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20161013BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C09J153/02
   C09J11/08
   C09J7/00
【請求項の数】12
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-240427(P2014-240427)
(22)【出願日】2014年11月27日
(62)【分割の表示】特願2012-177535(P2012-177535)の分割
【原出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-45027(P2015-45027A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-60665(P2012-60665)
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】西山 直幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 祥平
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−342441(JP,A)
【文献】 特開平08−157794(JP,A)
【文献】 特開2001−123135(JP,A)
【文献】 特開平08−269422(JP,A)
【文献】 特開平10−060394(JP,A)
【文献】 特開2003−096116(JP,A)
【文献】 特開2011−148864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーと、
水酸基価80mgKOH/g以上200mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(T)と、
水酸基価80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(T)と、
を含有し、
前記粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃以上の高軟化点樹脂を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃以上の高軟化点樹脂を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂(T)として、テルペンフェノール樹脂を含む、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂(T)として、石油樹脂およびテルペン樹脂の少なくとも一方を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃未満の低軟化点樹脂を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ベースポリマーは、スチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方からなる、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記粘着剤組成物は、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂Aおよびテルペンフェノール樹脂Bを含有し、
前記テルペンフェノール樹脂Aの水酸基価AOH(mgKOH/g)は、前記テルペンフェノール樹脂Bの水酸基価BOH(mgKOH/g)よりも高い、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記テルペンフェノール樹脂Aの水酸基価AOHは80mgKOH/g以上であり、前記テルペンフェノール樹脂Bの水酸基価BOHは80mgKOH/g未満である、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記テルペンフェノール樹脂Aの含有量mと前記テルペンフェノール樹脂Bの含有量mとの質量比(m:m)が1:5〜5:1である、請求項7または8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記テルペンフェノール樹脂Aおよび前記テルペンフェノール樹脂Bは、いずれも、軟化点が120℃以上の高軟化点樹脂である、請求項7から9のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーと、
水酸基価80mgKOH/g以上200mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(T)と、
水酸基価80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(T)と、
を含む粘着剤層を有
前記粘着剤層は、前記粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃以上の高軟化点樹脂を含む、粘着シート。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えばスチレン系ブロック共重合体)をベースポリマーとする粘着剤組成物に関する。また本発明は、かかる共重合体をベースポリマーとする粘着剤を備えた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、作業性がよく接着の信頼性の高い接合手段として、家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において広く利用されている。粘着剤の代表的な組成として、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含む組成が挙げられる。ベースポリマーとしては、常温でゴム弾性を示すポリマーが好ましく採用され得る。例えば特許文献1〜3には、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)やスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)等のスチレン系ブロックコポリマーを含む粘着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−123140号公報
【特許文献2】特開2001−342441号公報
【特許文献3】特開平10−287858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように被着体に簡単に圧着できるという粘着剤の性質上、粘着剤による接合部は、該接合部に継続的に加わる応力に対する耐性(該応力に抗して良好な接合状態を維持する性能)が低くなりがちである。例えば、図2に示すように、厚手のプラスチックフィルムからなるブレード(樹脂ブレード)30の一端32における第一面32Aをプラスチック成型体36の表面に両面粘着シート1で固定(接合)し、その成型体36に近接配置された回転ロール38の表面にブレード30の他端34における第一面34Aを該ブレード30の弾性力により押し当てた状態でロール38を回転させることによりロール表面の付着物を掻き落とす態様では、ロール38の回転に伴う摩擦力およびブレード30の弾性力により、両面粘着シート1による接合部には継続的な応力が加わる。このような使用態様においても上記接合部が剥がれにくい粘着シートが提供されれば有用である。
【0005】
そこで本発明は、継続的な応力に対する耐性の高い粘着シートを実現し得る粘着剤組成物の提供を一つの目的とする。関連する他の目的は、継続的な応力に対する耐性の高い粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される粘着剤組成物は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーを含む。また、水酸基価80mgKOH/g以上の粘着付与樹脂(T)をさらに含有する。かかるベースポリマーおよび粘着付与樹脂(T)を含む粘着剤組成物によると、継続的に加わる応力に対する耐性(例えば、厚手のプラスチックフィルムの撓み力に抗して接合を維持する性能)に優れた粘着シートが実現され得る。
【0007】
この明細書によると、また、粘着剤層を有する粘着シートが提供される。上記粘着剤層は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーを含む。また、水酸基価80mgKOH/g以上の粘着付与樹脂(T)を含有する。かかる粘着剤層を備えた粘着シートは、継続的に加わる応力に対する耐性(例えば、厚手のプラスチックフィルムの撓み力に抗して接合を維持する性能)に優れたものとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る粘着シート(基材付き両面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
図2】粘着シートの使用態様を例示する模式的断面図である。
図3】耐反撥性の評価方法を示す説明図である。
図4】定荷重剥離特性の評価方法を示す説明図である。
図5】a1〜a7に係る両面粘着シートの耐反撥性評価結果を示す特性図である。
図6】a1〜a7に係る両面粘着シートの湿熱条件下における定荷重剥離特性を示す特性図である。
図7】c1〜c6に係る両面粘着シートの耐反撥性評価結果を示す特性図である。
図8】他の実施形態に係る粘着シート(基材レス両面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
図9】他の実施形態に係る粘着シート(基材付き片面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0010】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。また、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分(すなわち、該ゴム状ポリマーの50質量%以上を占める成分)をいう。
【0011】
この明細書において「モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体」とは、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマー(50質量%を超える共重合成分をいう。以下同じ。)とするセグメント(以下「Aセグメント」ともいう。)と、共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント(以下「Bセグメント」ともいう。)とを、それぞれ少なくとも一つ有するポリマーをいう。一般に、Aセグメントのガラス転移温度はBセグメントのガラス転移温度よりも高い。かかるポリマーの代表的な構造として、Bセグメント(ソフトセグメント)の両端にそれぞれAセグメント(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(A−B−A構造のトリブロック体)、一つのAセグメントと一つのBセグメントとからなるジブロック構造の共重合体(A−B構造のジブロック体)等が挙げられる。
【0012】
この明細書において「スチレン系ブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックを有するポリマーを意味する。上記スチレンブロックとは、スチレンを主モノマーとするセグメントを指す。実質的にスチレンのみからなるセグメントは、ここでいうスチレンブロックの典型例である。また、「スチレンイソプレンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのイソプレンブロック(イソプレンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。スチレンイソプレンブロック共重合体の代表例として、イソプレンブロック(ソフトセグメント)の両端にそれぞれスチレンブロック(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(トリブロック体)、一つのイソプレンブロックと一つのスチレンブロックとからなるジブロック構造の共重合体(ジブロック体)等が挙げられる。「スチレンブタジエンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのブタジエンブロック(ブタジエンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。
【0013】
この明細書において、スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、当該ブロック共重合体の全体質量に占めるスチレン成分の質量割合をいう。上記スチレン含有量は、NMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
また、スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合(以下「ジブロック体比率」または「ジブロック比」ということがある。)は、次の方法により求められる。すなわち、スチレン系ブロック共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー(株)製GS5000H及びG4000Hの液体クロマトグラフ用カラムをそれぞれ2段づつ計4段を直列につなぎ、移動相にTHFを用いて、温度40℃、流量1ml/minの条件下で高速液体クロマトグラフィを行い、得られたチャートからジブロック体に対応するピーク面積を測定し、全体のピーク面積に対する前記ピーク面積の100分率を算出することにより求められる。
【0014】
<粘着シートの構造例>
ここに開示される粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、例えば、図1に示す断面構造を有する両面粘着シートの形態であり得る。この両面粘着シート1は、基材としてのプラスチックフィルム15と、その基材15の両面にそれぞれ支持された第一粘着剤層11および第二粘着剤層12とを備える。より詳しくは、基材15の第一面15Aおよび第二面15B(いずれも非剥離性)に、第一粘着剤層11および第二粘着剤層12がそれぞれ設けられている。使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート1は、図1に示すように、前面21Aおよび背面21Bがいずれも剥離面である剥離ライナー21と重ね合わされて渦巻き状に巻回された形態であり得る。かかる形態の両面粘着シート1は、第二粘着剤層12の表面(第二粘着面12A)が剥離ライナー21の前面21Aにより、第一粘着剤層11の表面(第一粘着面11A)が剥離ライナー21の背面21Bにより、それぞれ保護されている。あるいは、第一粘着面11Aおよび第二粘着面12Aが2枚の独立した剥離ライナーによりそれぞれ保護された形態であってもよい。
【0015】
ここに開示される技術は、図1に示すような基材付き両面粘着シートに好ましく適用されるほか、図8に示すような基材レスの(すなわち、基材を有しない)両面粘着シート2にも適用され得る。使用前の両面粘着シート2は、例えば図8に示すように、基材レスの粘着剤層11の第一粘着面11Aおよび第二粘着面11Bが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21,22によってそれぞれ保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー22を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー21を用い、これと粘着剤層11とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面11Bが剥離ライナー21の背面に当接して保護された形態であってもよい。
【0016】
ここに開示される技術は、また、図9に示すように、基材15と該基材の第一面(非剥離面)15Aに支持された粘着剤層11とを備える片面粘着タイプの基材付き粘着シート3にも適用され得る。使用前の粘着シート3は、例えば図9に示すように、その粘着剤層11の表面(粘着面)11Aが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21で保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー21を省略し、第二面15Bが剥離面となっている基材15を用い、基材付き粘着シート3を巻回することにより第一粘着面11Aが基材15の第二面15Bに当接して保護された形態であってもよい。
【0017】
以下、ここに開示される技術を基材付き両面粘着シートまたは該両面粘着シートの粘着剤層に適用する場合を主な例として説明するが、当該技術の適用対象を限定する意図ではない。
【0018】
<ベースポリマー>
ここに開示される技術における粘着剤(粘着剤組成物の固形分または粘着剤層の構成材料としても把握され得る。)は、ベースポリマーとして、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に1つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を併用してベースポリマーに用いることができる。
【0019】
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上(より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。)であることが好ましい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上(より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。)であることが好ましい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
【0020】
上記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にAセグメント(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術において用いられるブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性(特に、湿熱条件下での耐反撥性)の観点から、ジブロック体比率が30質量%以上(より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、典型的には65質量%以上、例えば70質量%以上)のものを好ましく用いることができる。また、定荷重剥離に対する耐性(定荷重剥離特性)の観点から、ジブロック体比率が90質量%以下(より好ましくは85質量%以下、例えば80質量%以下)のものを好ましく用いることができる。ここに開示される技術の一態様では、上記ブロック共重合体として、ジブロック体比率が30〜80質量%(より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜80質量%、例えば50〜70質量%)のものを好ましく採用し得る。他の一態様(例えば、後述するように、水酸基価の異なるテルペンフェノール樹脂A,Bを粘着付与樹脂として含む態様)において、上記ブロック共重合体として、ジブロック体比率が30〜90質量%(典型的には40〜90質量%、好ましくは50〜90質量%、例えば60〜85質量%)のものを好ましく採用し得る。
【0021】
<スチレン系ブロック共重合体>
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である。例えば、上記ベースポリマーがスチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含む態様で好ましく実施され得る。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、あるいはスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70質量%以上であることが好ましい。好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100質量%)がスチレンイソプレンブロック共重合体である。他の好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100質量%)がスチレンブタジエンブロック共重合体である。これらの組成によると、継続的に加わる応力に対する耐性に優れ、かつ他の粘着特性とのバランスの良い粘着シートが好適に実現され得る。
【0022】
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術において用いられるスチレン系ブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性(特に、湿熱条件下での耐反撥性)の観点から、ジブロック体比率が30質量%以上(より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、典型的には65質量%以上、例えば70質量%以上)のものを好ましく用いることができる。また、定荷重剥離に対する耐性(定荷重剥離特性)の観点から、ジブロック体比率が90質量%以下(より好ましくは85質量%以下、例えば80質量%以下)のものを好ましく用いることができる。ここに開示される技術の一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体として、ジブロック体比率が30〜80質量%(より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜80質量%、例えば50〜70質量%)のものを好ましく採用し得る。他の一態様(例えば、後述するように、水酸基価の異なるテルペンフェノール樹脂A,Bを粘着付与樹脂として含む態様)において、上記スチレン系ブロック共重合体として、ジブロック体比率が30〜90質量%(典型的には40〜90質量%、好ましくは50〜90質量%、例えば60〜85質量%)のものを好ましく採用し得る。
【0023】
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5〜40質量%であり得る。耐反撥性や定荷重剥離特性の観点から、通常は、スチレン含有量が10質量%以上(より好ましくは10質量%よりも大、例えば12質量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、粘着剤の凝集力(保持力)や被着体に対する粘着力の観点から、スチレン含有量が35質量%以下(典型的には30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、例えば20質量%未満)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。ここに開示される技術の一態様において、スチレン含有量が10〜35質量%(より好ましくは15質量%を超えて24質量%未満、例えば16〜23質量%)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。他の一態様(例えば、後述するように、水酸基価の異なるテルペンフェノール樹脂A,Bを粘着付与樹脂として含む態様)において、スチレン含有量が12質量%以上20質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
【0024】
<粘着付与樹脂>
ここに開示される技術における粘着剤は、ベースポリマー(例えばスチレン系ブロック共重合体)に加えて、粘着付与樹脂を含有する。かかる粘着付与樹脂としては、公知の石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、ケトン系樹脂等の各種粘着付与剤樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。上記石油樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、これらの水素化物等が例示される。上記テルペン樹脂としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン樹脂(以下、後述する変性テルペン樹脂との区別を明確にするために「未変性テルペン樹脂」ということもある。);これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、スチレン変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の例としては、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記「ロジン系樹脂」の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);等が挙げられる。上記ロジン誘導体樹脂の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0026】
<高水酸基価粘着付与樹脂(T)>
ここに開示される技術における粘着剤は、上記粘着付与樹脂として、水酸基価(OH価)が80mgKOH/g以上(典型的には80〜250mgKOH/g、例えば80〜220mgKOH/g)の粘着付与樹脂(T)を含有することによって特徴づけられる。かかる粘着付与樹脂(T)を含む組成の粘着剤は、例えば、該粘着付与樹脂(T)の全量をより水酸基価の低い(例えば、水酸基価が0〜60mgKOH/g程度の)粘着付与樹脂に置き換えた組成の粘着剤に比べて、継続的な応力に対する耐性(特に、湿熱条件下における耐性)が顕著に改善されたものとなり得る。したがって、上記粘着付与樹脂(T)を含む組成の粘着剤によると、上記継続的な応力に対する耐性と粘着力とのバランスに優れた粘着シートが実現され得る。
【0027】
上記粘着付与樹脂(T)としては、水酸基価が90mgKOH/g以上(典型的には90mgKOH/g以上200mgKOH/g未満、例えば90〜180mgKOH/g)のものを好ましく採用し得、より好ましくは100mgKOH/g以上(典型的には100〜180mgKOH/g、さらに好ましくは100mgKOH/gを超えて180mgKOH/g以下)である。好ましい一態様において、水酸基価が110〜180mgKOH/g(より好ましくは120〜170mgKOH/g、例えば125〜170mgKOH/g)の粘着付与樹脂(T)を好ましく採用することができる。
【0028】
上記水酸基価の値としては、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8ml)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mlにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5ml)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mlおよびピリジン10mlを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mlを加えて攪拌した後、蒸留水1mlを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mlで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mlを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)〜(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B−C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、
C: 試料に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、
f: 0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の質量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
【0029】
ここに開示される技術を実施する上で、上記構成の粘着剤により上述の課題が解決される理由を明らかにする必要はないが、例えば以下のことが考えられる。すなわち、ここに開示されるベースポリマー(典型的にはスチレン系ブロック共重合体)と高水酸基価の粘着付与樹脂(T)(例えばテルペンフェノール樹脂)とを含む組成の粘着剤は、該ベースポリマーと上記粘着付与樹脂(T)とが適度にミクロ相分離した状態となりやすい。かかる状態の粘着剤は、ベースポリマーを多く含むバルク部分のなかに水酸基濃度の高い部分(粘着付与樹脂(T)を多く含む部分)が分散した状態となり得る。その水酸基濃度の高い部分(相分離部)の間に相互作用(相分離部の間に跨る化学結合に基づく相互作用に限定されない。)が働くことにより、バルク部分の物性と相分離部の存在により生じる物性とがバランスよく発揮されて、継続的な応力に対する耐性(特に、湿熱条件下における耐性)が改善されたものと考えられる。
【0030】
上記粘着付与樹脂(T)としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。好ましい一態様では、上記粘着付与樹脂(T)として、少なくともテルペンフェノール樹脂を使用する。粘着剤に含まれる粘着付与樹脂(T)のうち50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であることが好ましく、実質的に全部(例えば95〜100質量%、さらには99〜100質量%)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので、高水酸基価を有するものが得られやすい。また、ここに開示される技術におけるベースポリマーとの組み合わせにおいて上記ミクロ相分離構造を形成しやすいため、上記課題の解決に適している。
【0031】
ここで「テルペンフェノール樹脂」とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペンとフェノール化合物との共重合体(テルペン−フェノール共重合体樹脂)と、テルペンの単独重合体または共重合体(テルペン樹脂、典型的には未変性テルペン樹脂)をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。上記テルペンフェノール樹脂におけるテルペンの好適例としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)などのモノテルペンが挙げられる。
【0032】
上記粘着付与樹脂(T)としては、軟化点が100℃以上(典型的には100℃超、例えば110℃以上)のものを好ましく用いることができる。軟化点120℃以上(典型的には120℃超、好ましくは125℃以上、例えば130℃以上)の粘着付与樹脂(T)の使用が特に好ましい。このように高水酸基価かつ高軟化点の粘着付与樹脂(T)によると、上記ミクロ相分離構造がより形成されやすくなることに加えて、粘着付与樹脂(T)の耐熱性が高くなることにより、より良好な性能(例えば、湿熱条件下における耐反撥性や定荷重剥離特性の向上)が実現され得る。一方、軟化点が高すぎると、被着体に対する粘着力(特に、低温条件下における粘着力)が低下傾向となることがあり得る。したがって、通常は軟化点が200℃以下(例えば100℃以上200℃以下)の高水酸基価粘着付与樹脂(T)を好ましく採用し得る。軟化点120℃以上180℃以下(例えば125℃以上170℃以下)の粘着付与樹脂(T)の使用がより好ましい。
【0033】
ここで、上記粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0034】
<低水酸基価粘着付与樹脂>
ここに開示される粘着剤は、上記高水酸基価粘着付与樹脂に加えて、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(低水酸基価粘着付与樹脂(T))をさらに含有し得る。かかる粘着付与樹脂(T)としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち水酸基価が上記範囲にあるものを、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満(典型的には0以上60mgKOH/g未満、好ましくは0以上40mgKOH/g未満、例えば0以上20mgKOH/g未満)の石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体、テルペンフェノール樹脂等)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を用いることができる。
【0035】
好ましい一態様に係る粘着剤は、上記低水酸基価粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃未満(典型的には80℃以上120℃未満、より好ましくは100℃以上120℃以下、例えば110℃以上120℃以下)の粘着付与樹脂(以下「低軟化点樹脂」ともいう。)を含む。かかる組成の粘着剤は、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、継続的な応力に対する耐性(例えば定荷重剥離特性)にも優れたものとなり得る。低軟化点樹脂のうちの主成分(すなわち、低軟化点樹脂のうち50質量%以上を占める成分)は、例えば、石油樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂とテルペン樹脂との組み合わせ、等であり得る。石油樹脂としては、C5系石油樹脂(典型的には、ナフサの分解により得られるC5留分からイソプレンおよびシクロペンタジエンを抽出分離した残分を重合した樹脂)を好ましく採用し得る。テルペン樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)などのモノテルペンの重合体を好ましく採用し得る。粘着力および相溶性の観点から、低軟化点樹脂の主成分がテルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)であることが好ましい。低軟化点樹脂の実質的に全部(例えば95〜100質量%)がテルペン樹脂であってもよい。
【0036】
低軟化点樹脂の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば10〜120質量部とすることができ、通常は15〜90質量部(例えば20〜70質量部)とすることが適当である。低軟化点樹脂の含有量が少なすぎると、被着体に対する粘着力が低下傾向となることがあり得る。低軟化点樹脂の含有量が多すぎると、粘着力(特に、低温条件下における粘着力)が低下傾向となることがあり得る。
【0037】
ここに開示される粘着剤は、上記低水酸基価粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃以上200℃以下(典型的には120℃以上180℃以下、例えば125℃以上170℃以下)の粘着付与樹脂を含み得る。かかる低水酸基価かつ高軟化点の粘着付与樹脂としては、例えば、重合ロジン、重合ロジンのエステル化物、テルペンフェノール樹脂等を採用することができる。軟化点が低すぎると、継続的な応力に対する耐性が低下傾向となることがあり得る。軟化点が高すぎると、被着体に対する粘着力(特に、低温条件下における粘着力)が低下傾向となることがあり得る。
【0038】
ここに開示される粘着剤は、軟化点120℃以上の粘着付与樹脂(以下「高軟化点樹脂」ともいう。)を含み、かつ該高軟化点樹脂全体の25質量%以上(より好ましくは30質量%以上)が高水酸基価粘着付与樹脂(T)(例えばテルペンフェノール樹脂)である態様で好ましく実施され得る。高軟化点樹脂の50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、例えば90質量%以上)が高水酸基価粘着付与樹脂(T)であってもよく、高軟化点樹脂の実質的に全部(例えば95〜100質量%)が高水酸基価粘着付与樹脂(T)であってもよい。
【0039】
高水酸基粘着付与樹脂(T)の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば10〜100質量部とすることができる。継続的な応力に対する耐性の観点から、通常は、粘着付与樹脂(T)の含有量を15〜100質量部(典型的には20〜100質量部)とすることが適当であり、35質量部を超えて80質量部以下(例えば、40〜70質量部)とすることが好ましい。粘着付与樹脂(T)の含有量が多すぎると、粘着力が低下傾向となることがあり得る。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂(T)として、水酸基価80mgKOH/g以上(より好ましくは100mgKOH/g以上、例えば100mgKOH/g超)のテルペンフェノール樹脂を、ベースポリマー100質量部に対して20質量部以上(好ましくは35質量部以上)含む態様で好ましく実施され得る。通常は、上記テルペンフェノール樹脂の含有量を100質量部以下とすることが適当であり、好ましくは80質量部以下、例えば70質量部以下である。
【0040】
ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量(水酸基価を問わない。)は、通常、20質量部以上(典型的には20〜200質量部)とすることが適当であり、30〜150質量部(例えば50〜150質量部)とすることが好ましい。粘着付与樹脂の含有量が多すぎると、粘着力(特に、低温条件下における粘着力)が低下傾向となることがあり得る。粘着付与樹脂の含有量が少なすぎると、継続的な応力に対する耐性(耐反撥性、定荷重剥離特性等)が低下傾向となることがあり得る。
ここに開示される粘着剤が高水酸基価粘着付与樹脂に加えて低水酸基価粘着付与樹脂を含む場合、それらの使用量の関係は、低水酸基価粘着付与樹脂:高水酸基価粘着付与樹脂の質量比が1:5〜3:1(より好ましくは1:5〜2:1)となるように設定することが好ましい。ここに開示される技術は、低水酸基価粘着付与樹脂よりも高水酸基価粘着付与樹脂を多く含む態様(例えば、低水酸基価粘着付与樹脂:高水酸基価粘着付与樹脂の質量比が1:1.2〜1:5)で好ましく実施され得る。かかる態様によると、継続的な応力に対する耐性がより高い粘着シートが実現され得る。
ここに開示される粘着剤が低軟化点樹脂と高軟化点樹脂とを含む場合、それらの使用量の関係は、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の質量比が1:5〜3:1(より好ましくは1:5〜2:1)となるように設定することが好ましい。ここに開示される技術は、低軟化点樹脂よりも高軟化点樹脂を多く含む態様(例えば、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の質量比が1:1.2〜1:5)で好ましく実施され得る。かかる態様によると、継続的な応力に対する耐性(例えば、定荷重剥離特性)により優れた粘着シートが実現され得る。
【0041】
<水酸基価の異なるテルペンフェノール樹脂の組合せ>
ここに開示される粘着剤組成物は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーと、粘着付与樹脂とを含む形態であって、上記粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂Aとテルペンフェノール樹脂Bとを少なくとも含む形態で好ましく実施され得る。ここで、テルペンフェノール樹脂Aおよびテルペンフェノール樹脂Bは、テルペンフェノール樹脂Aの水酸基価AOH(mgKOH/g)とテルペンフェノール樹脂Bの水酸基価BOH(mgKOH/g)とがAOH>BOHの関係を満たすように選択されることが好ましい。かかるテルペンフェノール樹脂A,Bを組み合わせて使用することにより、例えば、粘着シートの剥離強度(特に、経時後の剥離強度)が改善され得る。
【0042】
通常は、水酸基価AOHと水酸基価BOHとの差、すなわちAOH−BOHが、0より大きく200mgKOH/g以下となるように、テルペンフェノール樹脂A,Bを選択することが適当である。好ましい一態様では、AOH−BOHが5〜150mgKOH/g(典型的には10〜120mgKOH/g、より好ましくは15〜100mgKOH/g、例えば20〜80mgKOH/g以下)である。
【0043】
テルペンフェノール樹脂A,Bの各々の水酸基価は特に限定されない。例えば、AOHおよびBOHがいずれも80mgKOH/g以上(典型的には80〜250mgKOH/g、好ましくは80〜220mgKOH/g、例えば90〜160mgKOH/g)であってもよく、AOHおよびBOHがいずれも80mgKOH/g未満(典型的には0以上80mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g以上80mgKOH/g未満、例えば20〜70mgKOH/g)であってもよく、AOHが80mgKOH/g以上であり、BOHが80mgKOH/g未満であってもよい。好ましい一態様では、AOHが80mgKOH/g以上(典型的には80〜160mgKOH/g、好ましくは80〜140mgKOH/g、例えば90〜120mgKOH/g)であり、BOHが80mgKOH/g未満(典型的には0以上80mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g以上80mgKOH/g未満、例えば20〜70mgKOH/g)であり、かつAOH−BOHが10mgKOH/g以上(好ましくは20mgKOH/g以上、例えば30mgKOH/g以上であり、典型的には100mgKOH/g以下)である。
【0044】
テルペンフェノール樹脂A,Bの各々の含有量は、それぞれ、ベースポリマー100質量部に対して1質量部以上とすることができる。テルペンフェノール樹脂Aとテルペンフェノール樹脂Bとを組み合わせて用いることの効果をよりよく発揮させるためには、ベースポリマー100質量部に対するテルペンフェノール樹脂A,Bの含有量を、いずれも5質量部以上(好ましくは10質量部以上、例えば15質量部以上)とすることが適当である。また、被着体に対する粘着力(特に、低温における粘着力)の観点から、通常は、テルペンフェノール樹脂A,Bの合計含有量を、ベースポリマー100質量部に対して100質量部以下とすることが適当であり、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下(例えば70質量部以下)である。例えば、ベースポリマー100質量部に対するテルペンフェノール樹脂A,Bの合計含有量が15〜80質量部(典型的には25〜60質量部)である態様を好ましく採用し得る。
【0045】
テルペンフェノール樹脂Aの含有量mとテルペンフェノール樹脂Bの含有量mとの質量比(m:m)は、例えば1:10〜10:1とすることができる。被着体への粘着力(剥離強度)と、耐反撥性(特に、湿熱条件下での耐反撥性)や定荷重剥離特性(特に、湿熱条件下での定荷重剥離特性)との兼ね合いの観点から、通常は、上記質量比(m:m)を1:5〜5:1とすることが適当であり、例えば1:3〜3:1とすることができる。好ましい一態様において、質量比m/mが0.7〜10(より好ましくは0.8〜5、典型的には0.9〜4、例えば1〜3)となるようにm,mを設定することができる。このような態様によると、継続的な応力に対する耐性に優れ、かつ粘着性能(例えば剥離強度)の経時安定性に優れた粘着シートが実現され得る。
【0046】
テルペンフェノール樹脂A,Bの各々の軟化点は特に限定されない。例えば、テルペンフェノール樹脂A,Bの軟化点がいずれも120℃以上(典型的には120℃超、好ましくは125℃以上、例えば130℃以上であり、典型的には180℃以下)であってもよく、いずれも120℃未満であってもよい。また、テルペンフェノール樹脂A,Bのいずれか一方の軟化点が120℃以上であり、他方の軟化点が120℃未満であってもよい。好ましい一態様では、テルペンフェノール樹脂A,Bの軟化点がいずれも120℃〜170℃の範囲にある。例えば、軟化点が120℃〜170℃であって水酸基価が80〜140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂Aと、軟化点が120℃〜170℃であって水酸基価が80mgKOH/g未満(例えば20〜70mgKOH/g)であるテルペンフェノール樹脂Bとの組合せを好ましく採用し得る。
【0047】
なお、ここに開示される粘着剤組成物は、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂Aおよびテルペンフェノール樹脂B以外のテルペンフェノール樹脂をさらに含有し得る。粘着剤組成物が3種類以上のテルペンフェノール樹脂を含む場合には、それらのテルペンフェノール樹脂のうち質量基準の含有量が多いものから順に2種類を選択し、それらのうち水酸基価の高いほうをテルペンフェノール樹脂A、水酸基価の低いほうをテルペンフェノール樹脂Bとするものとする。また、例えば、質量基準で最も含有量の多いテルペンフェノール樹脂として、3種類のテルペンフェノール樹脂が概ね1:1:1の質量比で含まれる場合には、それらのうち最も水酸基価が高いものをテルペンフェノール樹脂Aとし、最も水酸基価が低いものをテルペンフェノール樹脂Bとするものとする。
【0048】
<イソシアネート化合物>
ここに開示される技術は、上記粘着剤がベースポリマーおよび粘着付与樹脂に加えてさらにイソシアネート化合物を含む態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、継続的な応力に対する耐性(例えば耐反撥性)がさらに改善され得る。かかる効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、例えば、上述したミクロ相分離構造において相分離部の間に架橋構造が形成されることにより、より安定した性能向上効果が発揮され得るものと考えられる。
【0049】
上記イソシアネート化合物としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。かかる多官能イソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する各種のイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)から選択される1種または2種以上を用いることができる。かかる多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
【0050】
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2−エチレンジイソシアネート;1,2−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−テトラメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0051】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2−シクロペンチルジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0052】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
好ましいイソシアネート化合物として、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA−100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0054】
イソシアネート化合物を用いる場合、その使用量は、ベースポリマー100質量部に対して、0質量部を超えて10質量部以下(典型的には0.01〜10質量部)とすることが適当であり、通常は0.1〜10質量部(例えば、0.5〜5質量部)とすることが好ましい。かかる範囲でイソシアネート化合物を用いることにより、特に性能バランスに優れた粘着シートが実現され得る。基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のプラスチックフィルム)と粘着剤層の密着性(投錨性)等の観点からは、ベースポリマー100質量部に対して、0.1質量部よりも多い量(例えば0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上)のイソシアネート化合物を用いることが好ましい。ここに開示される技術の好ましい一態様では、基材に対する投錨性と、被着体に対する粘着力(剥離強度)との兼ね合いの観点等から、ベースポリマー100質量部に対するイソシアネート化合物の使用量を、0.1質量部より多く5質量部以下(典型的には0.3〜3質量部、例えば0.5〜1質量部)とすることが適当である。
【0055】
ここに開示される技術を、上記イソシアネート化合物を含む態様で実施する場合、該イソシアネート化合物の使用量は、使用する粘着付与樹脂(T)の水酸基価をH(mgKOH/g)、該粘着付与樹脂(T)の使用量をW(g)、および上記イソシアネート化合物のイソシアネート基含有量(NCO含有量)をN(g)として、次式:H×W/N;の値が5×10〜50×10(好ましくは10×10〜35×10、より好ましくは10×10〜25×10)程度となるように設定することが適当である。この値が大きすぎると、イソシアネート化合物の使用効果が十分に発揮され難くなる場合がある。この値が小さすぎると、粘着力が低下傾向となる場合があり得る。
【0056】
ここに開示される技術における粘着剤は、必要に応じて、ベースポリマー以外のゴム状ポリマーを1種または2種以上含有し得る。かかるゴム状ポリマーは、粘着剤の分野において公知のゴム系、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の各種ポリマーであり得る。ゴム系のゴム状ポリマーとしては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、再生ゴム等の適宜なものを利用し得る。上記ゴム状ポリマーを用いる場合における使用量は、通常、ベースポリマー100質量部あたり50質量部以下とすることが適当であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下(例えば5質量部以下)である。ここに開示される技術は、かかるゴム状ポリマーを実質的に含有しない(例えば、ベースポリマー100質量部当たりの含有量が0〜1質量部である)態様で好ましく実施され得る。
【0057】
ここに開示される粘着剤は、必要に応じて、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。ここに開示される粘着剤は、ポリブテン等の液状ゴムを実質的に含有しない(例えば、ベースポリマー100質量部当たりの含有量が1質量部以下であり、0質量部であってもよい。)態様で好ましく実施され得る。かかる組成の粘着剤によると、より耐反撥性および/または定荷重剥離特性に優れた粘着シートが実現され得る。
【0058】
ここに開示される粘着剤は、ベースポリマーと粘着付与樹脂との合計量が、該粘着剤の90質量%以上(典型的には90〜99.5質量%、例えば95〜99質量%)を占める態様で好ましく実施され得る。上記粘着剤は、キレート化合物(例えば、アルカリ土類金属の酸化物と、該酸化物が配位可能な官能基(水酸基、メチロール基等)を有する樹脂(アルキルフェノール樹脂等)とのキレート化合物)を実質的に含まない態様(例えば、かかるキレート化合物を全く含まないか、その含有量が粘着剤の1質量%以下である態様)で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より粘着力に優れた粘着シートが実現され得る。
【0059】
ここに開示される粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、上述のような組成の粘着剤(粘着成分)を有機溶媒中に含む形態(溶剤型)の粘着剤組成物、粘着剤が水性溶媒に分散した形態(水分散型、典型的には水性エマルション型)の粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物等であり得る。塗工性および基材の選択自由度等の観点から、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物を好ましく採用し得る。より高い粘着性能を実現するためには、溶剤型の粘着剤組成物が特に好ましい。かかる溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、上述した各成分を有機溶媒中に含む溶液の形態に調製される。上記有機溶媒は、公知ないし慣用の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。特に限定するものではないが、通常は、上記溶剤型粘着剤組成物を固形分(NV)30〜65質量%(例えば40〜55質量%)に調製することが適当である。NVが低すぎると製造コストが高くなりがちであり、NVが高すぎると塗工性等の取扱性が低下することがある。
【0060】
ここに開示される技術を基材付き両面粘着シートまたは基材付き片面粘着シートに適用する場合、基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。);アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルム(典型的には非多孔質のプラスチック膜を指し、織布や不織布とは区別される概念である。)としては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。また、基材のうち粘着剤層が設けられる面には、下塗剤の塗付、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。基材の厚みは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね2μm〜500μm(典型的には10μm〜200μm)程度である。
【0061】
基材上に粘着剤層を形成する方法としては、従来公知の種々の方法を適用し得る。例えば、上記粘着剤組成物を基材に直接塗付して乾燥させる方法(直接法)、適当な剥離面上に上記粘着剤組成物を塗付して乾燥させることで該剥離面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に貼り合わせて転写する方法(転写法)等が挙げられる。これらの方法を組み合わせて用いてもよい。粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。通常は、例えば凡そ40℃〜120℃程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。特に限定するものではないが、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ4μm〜150μm(典型的には20μm〜120μm、例えば30μm〜100μm)程度が適当である。基材付き両面粘着シートの場合、基材の両面それぞれに上記厚さの粘着剤層が設けられた構成とするとよい。
【0062】
ここに開示される粘着シートは、23℃、50%RHの環境下にて、被着体としてのステンレス鋼(SUS304)板の表面に2kgのローラを1往復させて圧着し、30分間放置した後、JIS Z 0237に準じて引張速度300mm/分の条件で測定される180°引き剥がし粘着力(N/20mm幅)(より詳しくは、後述する実施例に記載の180°剥離強度評価方法に従って測定される。)が、典型的には10N/20mm以上である。上記180°引き剥がし粘着力が15N/20mm以上であることが好ましく、より好ましくは20N/20mm以上である。かかる粘着シートは、例えば、樹脂部品(図2に示す樹脂ブレード30等)を他の樹脂部品(図2に示すプラスチック成型体36等)に固定する用途等に好適である。好ましい一態様に係る粘着シートは、上記180°引き剥がし粘着力(N/20mm幅)が25N/20mm以上(さらには30N/20mm以上)であり得る。
【0063】
ここに開示される粘着シートは、後述する実施例に記載の耐反撥性評価方法において、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体樹脂(ABS)板を被着体とし、条件(C)を適用して測定される浮き距離が3mm以下のものであり得る。好ましい一態様では、上記浮き距離が2mm以下(例えば1mm以下)である。また、ここに開示される粘着シートは、後述する実施例に記載の定荷重剥離特性評価方法において、ABS板を被着体とし、湿熱条件下で測定される18時間後の剥離距離が、15mm以下(典型的には10mm以下、好ましくは5mm以下、例えば3mm以下)のものであり得る。
【0064】
なお、この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1)モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーと、
水酸基価100〜220mgKOH/g(好ましくは110〜180mgKOH/g、例えば125〜170mgKOH/g)の高水酸基価粘着付与樹脂(T)と、
を含有する、粘着剤組成物。
(2)上記高水酸基価粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃以上(より好ましくは120℃超、例えば125℃以上)の高軟化点樹脂を含む、上記(1)に記載の粘着剤組成物。
(3)上記高水酸基価粘着付与樹脂(T)として、テルペンフェノール樹脂を含む、上記(1)または(2)に記載の粘着剤組成物。
(4)さらにイソシアネート化合物を含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(5)水酸基価80mgKOH/g未満(好ましくは60mgKOH/g未満)の低水酸基価粘着付与樹脂(T)をさらに含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(6)上記低水酸基価粘着付与樹脂(T)として、石油樹脂およびテルペン樹脂の少なくとも一方を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(7)上記低水酸基価粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃未満の低軟化点樹脂を含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(8)上記低水酸基価粘着付与樹脂(T)として、軟化点が120℃以上(より好ましくは120℃超、例えば125℃以上)の高軟化点樹脂を含む、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(9)上記ベースポリマーは、スチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方からなる、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(10)ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
【0065】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
【0066】
(1)180度剥離強度
両面粘着シートの一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。23℃、50%RHの環境下にて、上記試験片の他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、該試験片を被着体の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、JIS Z 0237に準じて、引張試験機を使用して引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力(N/20mm幅)を測定した。
ステンレス鋼(SUS304)板、ABS板(新神戸電機株式会社製)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)板(日本テストパネル株式会社製)、およびポリカーボネート(PC)/ABSブレンド樹脂板(日本テストパネル株式会社製)の4種類の被着体について、上記手順に従って粘着力を測定した。
【0067】
(2)耐反撥性
直径24mmのアルミニウム製円筒を被着体に用いて、両面粘着シートの耐反撥性を評価した。すなわち、両面粘着シート4の一方の粘着面4Aを、厚さ300μmのPETフィルム42に貼り付けて裏打ちした(図3参照)。この裏打ちされた粘着シート4を幅10mm、長さ40mmのサイズにカットして試験片44を作製した。23℃、50%RHの環境下にて、図3に示すように、試験片44の他方の粘着面4Bを、試験片44の長手方向が被着体(アルミニウム製円筒)46の円周方向となるようにして、2kgのローラを1往復させて圧着した。なお、被着体46は、あらかじめエチルアルコールで洗浄して使用した。これを以下の(A)〜(C)のいずれかの条件に保持した後、試験片44の長手方向の両端44A,44Bが被着体46の表面から剥がれて浮いているか否かを観察し、浮いていた場合にはその浮き距離(試験片44が被着体46の表面から浮き上がった部分の長さ)を測定した。試験片の両端が浮いていた場合には両端の浮き距離の平均値を当該試験片の浮き距離とした。
(A)室温(23℃、50%RH)で24時間放置
(B)70℃、80%RHの環境下に4時間放置
(C)70℃、80%RHの環境下に12時間放置
【0068】
(3)定荷重剥離特性
両面粘着シート5の一方の粘着面5Aを、厚さ25μmのPETフィルム52に貼り付けて裏打ちした(図4参照)。この裏打ちされた粘着シート5を幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片54を作製した。23℃、50%RHの環境下にて、試験片54の他方の粘着面5Bを被着体56の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した。その後、23℃、50%RHの環境下にて、図4に示すように、試験片54が貼り付けられた面が下方になるようにして被着体56を水平に保持した。その試験片54の一端に、剥離角度が90度となるように300g(2.9N)の荷重58を掛けて、24時間後の剥離距離を測定した。ABS板(新神戸電機株式会社製)、PC/ABSブレンド樹脂板(日本テストパネル株式会社製)およびHIPS板(日本テストパネル株式会社製)の3種類の被着体について、上記手順に従って、通常条件下における定荷重剥離特性(剥離距離)を測定した。
また、同様に23℃、50%RHの環境下で試験片を被着体表面に圧着して同環境下に30分間放置した後、50℃、80%RHの環境下(湿熱条件下)にて、試験片が貼り付けられた面が下方になるようにして被着体を水平に保持し、該試験片の一端に、剥離角度が90度となるように100g(0.98N)の荷重を掛けて、18時間後の剥離距離を測定した。ABS板(新神戸電機株式会社製)およびHIPS板(日本テストパネル株式会社製)の2種類の被着体について、上記手順に従って定荷重剥離特性(剥離距離)を測定した。
【0069】
<実験例1>
表1に示す割合で、スチレンイソプレンブロック共重合体(JSR株式会社製品、製品名「SIS5505」、ジブロック体比率50%、スチレン含有量16%)と、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製の製品名「PX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)と、表1に示す軟化点および水酸基価を有する各種のテルペンフェノール樹脂(いずれもヤスハラケミカル株式会社製品)と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」、イソシアネート含量13.6%)と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物a1〜a7を調製した。
【0070】
これらの粘着剤組成物a1〜a7の各々を、基材としての厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラーS10」)の第1面に塗付し、120℃で3分間乾燥処理して、厚さ64μmの粘着剤層を形成した。その粘着剤層に、シリコーン系剥離剤により剥離処理された剥離ライナーを貼り合わせた。次いで、上記PETフィルムの第2面(第1面とは反対側の面)に、第1面と同様にして厚さ64μmの粘着剤層を形成し、剥離ライナーを貼り合わせた。このようにして、各粘着剤組成物a1〜a7に対応する両面粘着シートa1〜a7を作製した。これらの両面粘着シートの概略構成と評価結果を表1に示す。図5は、耐反撥性の評価結果をグラフ化したものである。図6は、湿熱条件下での定荷重剥離特性の評価結果をグラフ化したものである。
【0071】
【表1】
【0072】
これらの図表に示されるように、水酸基価80mgKOH/g以上(より詳しくは、80〜250mgKOH/g)のテルペンフェノール樹脂を用いたa3〜a7の両面粘着シートは、水酸基価が60mgKOH/g以下のテルペンフェノール樹脂を用いたa1,a2の両面粘着シートに比べて、継続的な応力に対する耐性が明らかに高かった。特に、湿熱条件下における耐反撥性および定荷重剥離特性において、水酸基価100mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を用いることによる顕著な効果が認められ、水酸基価110mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を用いたa4〜a7では更に良好な結果が得られた。
【0073】
<実験例2>
表2に示す割合で、スチレンイソプレンブロック共重合体(JSR株式会社製品、製品名「SIS5505」)と、水酸基価100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製品、製品名「S145」)と、C5系石油樹脂(日本ゼオン株式会社製品、製品名「クイントン(登録商標)U−185」(以下、単に「U−185」と表記する。)、軟化点86℃、水酸基価1mgKOH/g未満)、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物b1〜b4を調製した。また、イソシアネート化合物を使用しない点を除いては上記と同様にして、粘着剤組成物b5を調製した。これらの粘着剤組成物b1〜b5の各々を用いて、実験例1と同様にして両面粘着シートb1〜b5を作製した。各両面粘着シートの概略構成と評価結果を表2に示す。なお、b1の定荷重剥離特性は未評価である。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示されるように、ベースポリマーとしてのスチレン系ブロック共重合体と高水酸基価のテルペンフェノール樹脂とを含む粘着剤層を備えたb1〜b5の両面粘着シートは、イソシアネート化合物の使用の有無に関わらず、表1のa1,a2(低水酸基価のテルペンフェノール樹脂を用いた例)に比べて、継続的な応力に対する耐性(耐反撥性および定荷重剥離特性の少なくとも一方)が明らかに良好であった。スチレン系ブロック共重合体100部当たり1〜5部のイソシアネート化合物を用いたb1〜b4の両面粘着シートによると、イソシアネート化合物を用いないb5の両面粘着シートに比べて、湿熱条件下における耐反撥性がさらに向上した。なお、イソシアネート化合物の使用量を3部以上としたb3,b4は、180度剥離強度がやや低下する傾向にあった。この結果は、180度剥離強度を重視する用途においては、イソシアネート化合物の使用量として、スチレン系ブロック共重合体100部当たり概ね2.5部以下(典型的には0.3〜2.5部、例えば0.5〜2.5部程度)の範囲を好ましく採用し得ることを示唆している。
【0076】
<実験例3>
表3に示す割合で、スチレンイソプレンブロック共重合体(JSR株式会社製品、製品名「SIS5505」、ジブロック体比率50%)と、水酸基価100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製品、製品名「S145」)および/または水酸基価40mgKOH/gのロジンエステル(荒川化学株式会社製品、製品名「D125」、軟化点125℃)と、C5系石油樹脂(日本ゼオン株式会社製品、製品名「U−185」)と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、固形分(NV)50%の粘着剤組成物c1〜c6を調製した。これらの粘着剤組成物c1〜c5の各々を用いて、実験例1と同様にして両面粘着シートc1〜c5を作製した。各両面粘着シートの概略構成と評価結果を表3に示す。図7は、耐反撥性の評価結果をグラフ化したものである。
【0077】
【表3】
【0078】
これらの図表に示されるように、高軟化点樹脂として高水酸基価のテルペンフェノール樹脂を単独で使用したc1〜c3およびc5の両面粘着シートは、高軟化点樹脂として水酸基価の低いロジンエステルを単独で使用し、高水酸基価粘着付与剤を使用しない両面粘着シートc6に比べて、湿熱条件下における耐反撥性が明らかに良好であった。高軟化点樹脂として高水酸基価のテルペンフェノール樹脂と低水酸基価のロジンエステルとを1:2の質量比で使用したc4においても、同様に、両面粘着シートc6に比べて明らかな耐反撥性の向上がみられた。ベースポリマー100部に対する高軟化点樹脂の合計量が30部を上回る(例えば、35部以上60質量部以下の)c1〜c4では、より大きな耐反撥性改善効果が得られた。また、高軟化点樹脂/低軟化点樹脂の比が1を上回る(例えば、1.2以上5.0以下の)c2〜c4は、上記比が1以下であるc1,c5,c6に比べて、より優れた定荷重剥離特性を示した。
【0079】
<実験例4>
表4,5に示すジブロック体比率およびスチレン含有量を有するスチレンイソプレンブロック共重合体(表中では「SIS」と表示)またはスチレンブタジエンブロック共重合体(表中では「SBS」と表示)を用いて、粘着剤組成物d1〜d13を調製した。すなわち、表4,5に示す割合で、各スチレン系ブロック共重合体と、低軟化点樹脂としてのC5系石油樹脂(日本ゼオン株式会社製品、製品名「U−185」)と、水酸基価100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製品、製品名「S145」)と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物d1〜d13を調製した。なお、d1,d6,d8,d9,d12で使用したスチレン系ブロック共重合体はJSR株式会社製、d2〜d5,d7,d10,d11で使用したスチレン系ブロック共重合体はクレイトンポリマージャパン株式会社製、d13で使用したスチレン系ブロック共重合体は日本ゼオン株式会社製である。
これらの粘着剤組成物d1〜d13の各々を用いて、実験例1と同様にして両面粘着シートd1〜d13を作製した。各両面粘着シートの概略構成と評価結果を表4,5に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
これらの表に示されるように、ジブロック体比率が30〜80%(より好ましくは50〜80%)であるスチレンイソプレンブロック共重合体をベースポリマーに用いたd1〜d3,d13の両面粘着シートは、よりジブロック体比率の低いベースポリマーを用いた両面粘着シートに比べて、耐反撥性(特に、湿熱条件下における耐反撥性)に優れる傾向にあった。ジブロック体比率が50%を上回る(より詳しくは、ジブロック体比率が55%〜70%の範囲にある)d2,d3の両面粘着シートは、特に良好な耐反撥性を示し、定荷重剥離特性も良好であった。
【0083】
<実験例5>
表6に示す割合で、スチレンイソプレンブロック共重合体(JSR株式会社製品、製品名「SIS5505」)と、水酸基価100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製品、製品名「S145」)と、低軟化点樹脂と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物e1〜e7を調製した。低軟化点樹脂としては、日本ゼオン株式会社製の製品名「U−185」(C5系石油樹脂)、日本ゼオン株式会社製の製品名「S−100」(C5系石油樹脂、軟化点94℃、水酸基価1mgKOH/g未満)、またはヤスハラケミカル株式会社製の製品名「PX1150N」(テルペン樹脂)を使用した。これらの粘着剤組成物e1〜e7の各々を用いて、実験例1と同様にして両面粘着シートe1〜e7を作製した。各両面粘着シートの概略構成と評価結果を表6に示す。
【0084】
【表6】
【0085】
上記表に示されるように、低軟化点樹脂としてC5系石油樹脂を用いたe1,e2に比べて、低軟化点樹脂としてテルペン樹脂を用いたe3〜e7に係る両面粘着シートは、より高い剥離強度を示す傾向にあった。また、ベースポリマー100部当たりに配合する低軟化点樹脂の量が多くなるにつれて剥離強度は高くなる傾向にあるが、耐反撥性および定荷重剥離特性とのバランスの観点からは、低軟化点樹脂の量が80部以下(例えば60部以下)であるe3〜e5において、より良好な結果が得られた。
【0086】
<実験例6>
表7に示す割合で、ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社製、製品名「クインタック(Quintac)3520」、ジブロック体比率78%、スチレン含有量15%)と、水酸基価100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製品、製品名「S145」)と、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製の製品名「PX1150N」)と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物f1〜f6を調製した。これらの粘着剤組成物f1〜f6の各々を用いて、実験例1と同様に、PETフィルム(基材)の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートf1〜f6を作製した。
【0087】
各両面粘着シートの概略構成と評価結果を表7に示す。
ここで、表7に示す定荷重剥離特性の「剥離距離」は、被着体としてABS板(新神戸電機株式会社製)を用いて測定されたものである。また、表7に示す定荷重剥離特性の「剥離形態」とは、上記剥離距離測定において試験片が被着体から剥がれた部分を試験者が目視により確認して評価したものである。この「剥離形態」について、表7に示す「界面」とは、図4に示す例のように、粘着シート(試験片)5が被着体56と粘着面5Bとの間で剥離した形態、すなわち被着体56の表面に粘着剤を残さずに剥がれた形態を指す。これに対して「投錨」とは、図4において、粘着面5B側の粘着剤層と粘着シート5の基材(図1に示す基材15;本実験例では厚み12μmのPETフィルム)との間で剥離した形態、すなわち、粘着面5B側の粘着剤層を被着体56上に残して試験片が剥がれた形態を示している。
【0088】
【表7】
【0089】
表7に示されるように、イソシアネート化合物を不使用またはその使用量が0.1部以下であるf1,f2の両面粘着シートは、定荷重剥離測定における剥離形態が投錨剥離であった。一方、0.1部より多く(より具体的には0.3部以上)のイソシアネート化合物を用いたf3〜f6の両面粘着シートでは、定荷重剥離測定における剥離形態が界面剥離であった。この結果は、f3〜f6の両面粘着シートでは、基材(ここではPETフィルム)に対する粘着剤の投錨性が改善されたことを示している。一方、イソシアネート化合物の使用量が多くなると、剥離強度は低下する傾向にある。表7に示す結果は、本実験例の組成では、イソシアネート化合物の使用量が0.3部より多く1.0部未満の範囲において、投錨性と剥離強度とが特に高度なレベルで両立されたことを示している。
【0090】
<実験例7>
表8に示す割合で、ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社製、製品名「クインタック(Quintac)3520」)と、水酸基価100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製品、製品名「S145」)と、水酸基価60mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製品、製品名「T145」)と、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製の製品名「PX1150N」)と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物g1〜g5を調製した。これらの粘着剤組成物g1〜g5の各々を用いて、実験例1と同様に、PETフィルム(基材)の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートg1〜g5を作製した。
なお、粘着剤組成物g2〜g4において、水酸基価が100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(S145)はテルペンフェノール樹脂Aに相当し、水酸基価が60mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(T145)はテルペンフェノール樹脂Bに相当する。
【0091】
各両面粘着シートの概略構成と評価結果を表8に示す。
ここで、180度剥離強度の測定は、被着体としてステンレス鋼(SUS304)板を用い、上記により作製された後、特に保存期間を設けていない両面粘着シート(初期)、23℃、50%RHの環境下に7日間保持した後の両面粘着シート(r.t.保存 7日)、23℃、50%RHの環境下に14日間保持した後の両面粘着シート(r.t.保存 14日)、40℃、92%RHの湿熱環境下に3日間保持してから23℃、50%RHの環境下に戻した後の両面粘着シート(40℃92%RH保存 3日)、40℃、92%RHの湿熱環境下に7日間保持してから23℃、50%RHの環境下に戻した後の両面粘着シート(40℃92%RH保存 7日)および、40℃、92%RHの湿熱環境下に14日間保持してから23℃、50%RHの環境下に戻した後の両面粘着シート(40℃92%RH保存 14日)の各々について行った。また、定荷重剥離特性は、上述した定荷重剥離特性の評価において、50℃、80%RHの環境下(湿熱条件下)にて、試験片の一端に100g(0.98N)の荷重を掛けてから測定までの時間を18時間から24時間に変更して、該試験片の剥離距離を測定することにより評価した。
【0092】
【表8】
【0093】
表8に示されるように、テルペンフェノール樹脂として水酸基価が60mgKOH/gのもの(T145)のみを使用したg1の両面粘着シートに比べて、水酸基価100mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂(S145)を単独で、あるいはT145と組み合わせて用いたg2〜g5の両面粘着シートは、継続的な応力に対する耐性が明らかに高かった。特に、湿熱条件下での定荷重剥離特性において顕著な改善がみられ、本実験例の組成においても実験例1(表1)と同様の効果が得られることが確認された。また、テルペンフェノール樹脂としてS145のみを使用したg5に比べて、S145とT145とを組み合わせて用いたg2〜g4では、経時後の剥離強度が明らかに改善された。なかでも、質量基準でT145の0.9倍〜4倍(より詳しくは1倍〜3倍)のS145を含むg3,g4の両面粘着シートは、継続的な応力に対する耐性と、経時後の剥離強度とを、高度なレベルで両立するものであった。
【0094】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
ここに開示される粘着剤組成物または粘着シートは、各種のOA機器、家電製品、自動車等における部材間の接合(例えば、かかる製品における各種部品の固定用途)に有用である。特に、弾性のある樹脂シート(例えば、厚さ0.05mm〜0.2mm程度のプラスチックフィルム)をABS、HIPS、PC/ABS等の樹脂製の筐体に接合する用途に好適である。かかる接合箇所を有する製品の例として、トナーカートリッジ、プリンター、ノートパソコン、モバイル機器等が挙げられる。
【符号の説明】
【0096】
1,2,3,4,5 粘着シート
11 第一粘着剤層
12 第二粘着剤層
15 基材
21,22 剥離ライナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9