(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2において、さらに、前記触媒の洗浄の後に、前記少なくとも1つの第1電源セルを前記第2電源セルから切り離し、該少なくとも1つの第1電源セルを負荷に接続する過程を含んでいる方法。
請求項9において、前記コントローラが、負荷を駆動すべく前記少なくとも1つの第1電源セルを負荷に接続すると同時に、前記第2電源セルによって前記少なくとも1つの第1電源セルの触媒を洗浄する電圧を前記少なくとも1つの第1電源セルに印加するように、前記電気素子を制御するように構成されている装置。
請求項10において、前記コントローラが、前記触媒の洗浄の後に前記少なくとも1つの第1電源セルを前記第2電源セルから切り離し、該少なくとも1つの第1電源セルを負荷に接続するように構成されている装置。
請求項9において、センサおよび判定ユニットをさらに備えており、該センサが、電力を生成している電源セルについての情報を提供し、前記判定ユニットが、電力を生成している電源セルの触媒の汚れの状態を診断する装置。
請求項9において、前記コントローラが、前記第2電源セルに、正弦波、チャープ、少なくとも一つの振幅又はオフセットを有する単一又は複数の周波数の波形からなる群から選択された電圧を生成させる装置。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の前述および他の目的、特徴ならびに利点は、添付の図面に示された本発明の例示的な実施形態についての以下の詳細な説明から明確になるであろう。添付の図面における同一の符号は、異なる図を通して同一の部分を示している。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【0047】
本発明の例示的な実施形態を以下で説明する。
【0048】
図1には、従来の半導体のウェハ10の平面図が示されている。この半導体のウェハ上には、半導体上の複数の燃料電池12が作製されている。これら複数の燃料電池をウェハ上で電気的に相互接続し、かつ気体を供給することで、電源チップ15を形成してもよい。簡略化のため、燃料電池12および電源チップ15は縮尺どおりに示していないが、4インチのウェハ上には少なくとも8000万個の燃料電池を形成することができる。そのような燃料電池の1つを
図2の部分断面図に示す。最も単純な形態において、各燃料電池12は、基板14と、コンタクト16Aおよび16Bと、導電性のポリマーの基部18とで構成されている。この導電性のポリマーの基部18は、非導電性のポリマーが積層した支持構造体20の第1層20(a)の両側に形成されており、電気を通す金属製のコンタクトに密着している。
【0049】
中央の構造体20の両側に位置し、触媒の粒子28が埋め込まれた導電性のポリマー22は、左側にある水素気体を右側にある酸素気体から隔てるプロトン交換膜(PEM)バリヤを形成している。O
2(酸素)気体およびH
2(水素)気体をそれぞれ導入するための流路である、エッチングされたチャネル50Bおよび50Aと、燃料電池12上の放熱用の蓋40とが
図2に示されている。
【0050】
図3A〜
図3Hは、PEMバリヤ30の関連する製造の詳細を段階的に示した一連の概略断面図である。
図3Aには、半導体の基板14にエッチングされた燃料電池のチャネルの底部が示されている。
図3Aには、さらに、電子を燃料電池12から残りの回路に運ぶ金属製のコンタクト16が示されている。これら金属製のコンタクトは、半導体製造プロセスのメタライゼーション段階における周知のフォトリソグラフィ工程によって堆積処理されている。
【0051】
図3Bには、この構造に塗布された導電性のポリマーの基部18が示されている。基部18は、金属製のコンタクト16と物理的/電気的に接触しており、
図3A〜
図3Hに示された過程の導電性のポリマー22を引き付ける。
【0052】
図3Cには、この構造に塗布された非導電性のポリマーの基部である第1層20(a)が示されている。この非導電性のポリマーの基部は2つの導電性のポリマーの基部18の場所間に位置決めされ、非導電性のポリマーの構造体20を引き付ける。
【0053】
図3Dには、この構造に塗布されたポリマーのレジスト21が示されている。このレジスト21は、導電性のポリマーをはじき、不必要な領域にポリマーが形成することを防ぐ。
【0054】
図3Eには、基部20A上に成長した非伝導性のポリマーの第1層20Bが示されている。この非伝導性のポリマーはPEMバリヤの中心材であり、薄い外側部である導電性のポリマー22が形成される時にこのポリマー22を支持する。
【0055】
図3Fには、一層ずつ積層されて垂直のバリヤを形成する、非導電性のポリマーの構造体20の次の層が示されている。このバリヤが垂直なことにより、領域を変形例することができる。
【0056】
図3Gには、基部18上に成長する導電性のポリマーの第1層22aが示されている。これが、触媒を備えた、PEMバリヤの外壁材である。
【0057】
図3Hには、この構造に一層ずつ積層された導電性のポリマー22の次の層が示されている。
図2には、ポリマーのレジスト21の層を除去し、蓋40を取り付け、簡略化のために
図3A〜
図3Hからは省略したが既に存在している側壁52を加えた後の、完成された構造が示されている。元来、レジスト21の層が半導体製造プロセスにおける最終工程のパッシベーション層である場合、このレジストの層を必ずしも除去する必要はない。
【0058】
再び
図2を参照し、燃料電池12を形成する構成要素のさらなる詳細について説明する。大まかに符号30で示したプロトン交換膜は、燃料の水素(H
2)と酸化剤の酸素(O
2)との間にバリヤを形成する。
【0059】
PEMバリヤ30は2つの材料を有する3つの部分で構成されている。このPEMバリヤ30には、第1外壁22Bと、次に中心の構造体20と、最後に第2外壁22Cとが存在する。PEMバリヤは、第1の材料の中心の構造体20が第2の材料の2つの外壁に接触するようにして構成されている。
【0060】
好ましくは、中心の構造体20を形成する材料は、水素イオン(プロトン)を水素側から酸素側に通過させることができるイオン性ポリマーである。この材料は非導電性なので、2つのコンタクト16Aと16Bとの間における電源セルの短絡を効果的に防ぐ。この材料は、Nafion(登録商標)または同様の特性を有する材料で形成されていてもよい。点線で示されている外部負荷5を、電力を取り出すためにコンタクト間に接続してもよい。
【0061】
導電性のポリマー22である2つの外面壁を形成する第2の材料も、水素イオンを通過させることができる同様なイオン性ポリマーである。さらに、この第2の材料は、白金/合金触媒などのナノ触媒の粒子28(ドットで示されている)でドーピングされており、かつ導電性である。
【0062】
触媒の粒子28をポリマー22に埋め込むことにより、PEMバリヤ30との最大限の密接が得られる。この密接により、イオンのカソード電極16Bに向かってイオンが自由に移動する経路が容易に得られる。触媒は表面効果であり、触媒の粒子28をポリマー22内に留めることにより、全表面積を効果的に使用することができる。これによりシステム効率が劇的に向上する。
【0063】
ポリマー22を第2の材料を導電性にすることにより、電極が形成される。触媒反応と電極とが近いほど、電極が電子を集める良好性に影響する。この方法により、触媒反応が電極内で効果的に生じる。この密接により、アノード16Aに向かって電子が自由に移動する経路が容易に得られる。これにより、自由電子の大部分を集めることに成功できる。同様に、これによってシステム効率が劇的に増大する。
【0064】
上述のPEM30の電気的および化学的/機能的特性に加えて、以下で説明する重要な物理的特性も存在する。
【0065】
この自己組立プロセスにより、PEMバリヤをより最適に構築することができ、設計によっては、さらに効率的になるであろう。
【0066】
第1に、別個の水素の流路および酸素の流路を形成する必要がある。こうするには、エッチングされたチャネル50を2つの別個のチャネル50A、50Bに完全に分割するように、PEMの構造体を成長/形成する必要がある。これは、PEMの構造体を、チャネルの中央で成長させ、電源セルの端壁にしっかりと当接するようにパターン化することを意味する。また、PEMの構造体を、蓋40の底部における接着剤42に接触するように、チャネルの高さにまで成長させてもよい。
【0067】
第2に、気密封止する必要がある。こうするには、PEM30の構造体が基部18および20Aの構造と、基板14と、電源セルの端壁(図示せず)と、蓋40を被覆する接着剤42とに完全に接着されていることが必要となる。ポリマーを適切に選択することにより、チャネル内でポリマーが接触する材料間に化学結合が形成される。この化学結合に加えて、PEMバリヤの上に蓋40を付着させることによる物理的な密封効果が得られる。PEM30の高さが正確に制御されている場合、付着された蓋の圧力により機械的な「Oリング」型の自己シールが形成される。PEM30を基板14上に成長させることによって、PEM30を蓋40と組み合わせるときに微細な調節の問題が生じない。蓋については注目すべき詳細はない。
【0068】
図4の概略斜視図には、流入/注入工程および流入/注入構造を伴う、PEMバリヤの他の実施形態が示されている。
【0069】
微小電気機械システム(MEMS)の機械加工方法を用いて、3つのチャネル60A、60Bおよび60Cが半導体の基板140にエッチングされる。外側の2つのチャネル60Aおよび60Cは、薄壁70A、70Bによって中央のチャネル60Bから隔てられている。これらの薄壁には複数の細いスリットS
1〜S
nがエッチングされている。その結果得られた歯部T
1〜T
n+1には、触媒280がスリットの領域に堆積している。薄壁70A、70Bの底部で、かつ外側のチャネル60A、60Cの壁が形成されている側に、金属製の電極160A、160Bが配置されている。触媒280は、電極160A、160Bが配置された後に歯部に堆積される。これにより触媒は、薄壁70A、70Bの基部で各電極160A、160Bと電気的に接触し、かつこれらの電極の一部を覆う。さらに、金属製の導電体90が、各電極160A、160Bに接触するように配置されており、さらに外側のチャネルを上って外に延びている。
【0070】
蓋400には、蓋400を基板140に接着するために用いられる接着剤420の層が設けられている。このようにして、3つの別個のチャネル、すなわち、水素用のチャネル60A、反応用のチャネル60Bおよび酸素用のチャネル60Cが基板に形成される。さらに、蓋400は、適宜に配置された電解質の様々な注入孔500として形成された注入口を有している。これらの注入孔500は、反応用のチャネル60Bのみにある、ポリマー材料の電解質膜(図示せず)に導く供給路を形成している。
【0071】
図4の構造体は以下のようにして組み立てられる。
【0072】
第1に、基板機械加工および全ての電気回路の堆積を含む半導体製造プロセスが実行される。
【0073】
次に、蓋400が機械加工され、さらに接着剤420付きの状態に加工される。蓋400が基板140に接着される。次に、電解質(図示せず)がこの構造体に注入される。
【0074】
反応用のチャネル60Bの薄壁70A、70Bは、電解質が流入する間、電解質を保持する。スリットS
1〜S
nにより、各チャネル60A、60B内の水素および酸素が触媒280およびPEM300に達することができる。歯部T
1〜T
N+1のスリットの領域を触媒280によって被覆することにより、水素(H
2)気体がスリットに進入するときに、反応点が形成される。電解質が反応用のチャネル60B内に流入/注入されると、電解質はチャネル60Bを完全に充填する。液状の電解質の表面張力により、電解質は、スリットを通って気体用のチャネル内に押し入ってこのチャネルを充填することができない。電解質を適用すると、ある程度の圧力が伴うので、圧力が電解質をスリット内に押しやることにより、電解質の表面の膨張効果が生じる。これにより、電解質は、スリットS
1〜S
Nの側部を被覆する触媒280に接触する。一旦この接触がなされて膜(電解質)に水分が与えられると、この膜(電解質)はさらに膨張し、触媒と確実に良好に接触する。H
2(水素)/O
2(酸素)気体は、触媒の領域において、膜(極薄であり、すなわち5マイクロメートル)内へと拡散することができる。膜を薄くできるので、より効率的になり、すなわち抵抗損失(I
2R)が小さくなる。これにより、反応の3つの成分は互いに接触する。触媒280と電気的に接触する電極160A、160Bが第4の成分であり、水素イオンが電界質膜を通過して他方の側部で反応を完了する間、自由電子のための経路(外部の負荷(図示せず)を通って)を形成する。
【0075】
図5〜
図7の断面図を参照しながら、本発明のPEM30の構造体の他の様々な実施形態を詳細に説明する。
図5には、PEMの中央の構造体20が、連続する非導電性の垂直に延びる要素として形成されており、電極/触媒16、28は、リードワイヤである金属製の導電体90に取り付けられた不連続な要素である。
図6は、PEMの構造体の変形例の図であり、触媒28が非導電性の構造体20である芯部に埋め込まれており、電極16が触媒の側方向に隣接して形成されている。最後に、
図7では、
図5のPEMの構造体に類似であるが、中央の芯部であるPEMの構造体20’が不連続である。
【0076】
図8は、マイクロコントローラと共に半導体のウェハ10に組み込むことができる実施可能な回路の幾つかを示す概略ブロック図であり、これらの回路は、複数の燃料電池の性能を監視し制御するものである。幾つかのセンサ回路80、82、84および86が、特定の機能を実行する。
【0077】
温度用の回路80の入力により、マイクロコントローラ88は燃料電池12の熱プロファイルを形成することができる。電圧用の回路82は、構成階層、すなわち燃料電池のグループの様々な階層における電圧を監視する。これにより、負荷における変化についての情報が得られる。プロセッサであるマイクロコントローラ88は、この情報を用いて、システムの構成を調節し、要求される動作を達成/維持する。電流用の回路84は、上述の電圧を監視する回路82と同様の機能を実行する。
【0078】
圧力用の回路86は、気体の内部の流路であるチャネル50A、50B内の圧力を監視する。システムの性能はこの圧力によって左右されるので、マイクロプロセッサ(マイクロコントローラ)88は、これらの測定値に基づいて調節を行い、システムの最適の動作を維持する。今後の機能の追加を予想して、未定義の回路81が利用可能に設けられており、マイクロ(マイクロコントローラ)88に対して余分な入力をすることができる。
【0079】
さらに、校正用の回路94が、少なくとも電力(V*I)スイッチ(
図9を用いて説明する)を制御するために用いられてもよい。出力電圧および電流の能力は、これらスイッチの構成によって定められる。ローカル回路92は、動的にプログラムされている必要があり、例えば、監視用のパラメータがプログラムされる。これらの出力は、上記の変化をもたらすために使用されてもよい。ローカルサブシステムである構成用の回路94は、気体の流量、故障の隔離および生成物の除去を制御するためにマイクロ(マイクロコントローラ)88によって使用される。ローカル電源回路96は、燃料電池12によって生成された電気の一部を取り出して基板上の電子機器に電力を供給する。電力供給回路であるローカル電源回路96は、調節回路および調整回路を備える。2線式通信インターフェイス装置98は、通信装置とこれら通信装置間を接続する電源バス(図示せず)との間の電気インターフェイスとなるために、チップに組み込まれてもよい。
【0080】
マイクロコントローラ88は統合型電子機器のサブシステムの心臓部であり、指定された全てのシステム機能を監視し制御する。さらに、マイクロコントローラ88は、いかなる外部通信の通信プロトコルも対処する。マイクロコントローラ88は「インサーキット・プログラミング(in circuit programming)」が可能なので、実行制御プログラムを必要に応じて更新することができる。また、マイクロコントローラ88は、データ記憶およびデータ処理が可能であり、さらに自身/システムの診断判定およびセキュリティ機能を備え、使用することができる。
【0081】
図9には、本発明のさらなる詳細が示されている。この実施形態において、燃料電池12である個々の電源セルがウェハ上に形成されており、
図8のマイクロプロセッサ(マイクロコントローラ)88から制御できるトランジスタのスイッチ97を用いて電源バス99A、99B間に並列に配線接続されている。スイッチ97Bおよび97Aは、それぞれ負のバススイッチおよび正のバススイッチであり、スイッチ97Cは直列スイッチSSであり、スイッチ97Dおよび97Eは、それぞれ正の並列スイッチおよび負の並列スイッチである。
【0082】
これにより、個々の電源セルまたは電源セルのグループ(電源チップ15)を様々な構成で、すなわち並列または直列で配線接続することができる。電源セルを直列に配線接続することによって様々な電圧が生成される。また、電源セルを並列に配線接続することによって電流能力を向上させることができる。一般に、電源チップの電力プロファイルを動的に制御することによって、「プログラム」された仕様を達成したり、維持したりすることができる。逆に、製造時において、電源チップを静的なプロファイルに構成してもよく、よって電力スイッチの必要性が解消される。スイッチをオン・オフしたり、配線の極性を変えたりすることによって、交流(AC)および直流(DC)の電力出力を作り出すことができる。
【0083】
電力を管理するためのサブシステムを実現するためには、電力生成プロセスからのフィードバックが必要である。プロセスの効率を絶えず測定する回路を、チップ上に直接形成してもよい。このフィードバックは、閉ループ方式でシステムの制御を変更するために用いられてもよい。こうすることにより、最大レベルのシステム効率が動的に維持される。これらの回路の幾つかを次に説明する。
【0084】
システムに対する要求が経時的に変化するにつれて、電力発生プロセスの性質は変化する。幾つかの動作パラメータのリアルタイムの状態に基づく判定により、システムは、自動調節によって最適の動作を維持することができる。これらパラメータの境界はプログラムによって定められる。
【0085】
例えば、個々の電源セルまたは電源セルのグループの電圧と電流との両方を測定してもよい。電力出力を監視してもよく、電源セルまたは電源セルのグループが動作していない場合、必要ならば、これを除いてもよい。前述したトランジスタのスイッチである電力スイッチ97によって、この動作していない電源セルまたは電源セルのグループを除いてもよい。
【0086】
また、平均出力レベルは、チップ上における活性中の「負荷を受ける」領域を移動させながら維持することができる。こうすることにより、常時(100%の時間)動作する領域が存在しないので、より良好な全体の動作レベルを達成できる。デューティサイクルによるこの方法は、要求が急激に高まった場合に特に適用可能である。ここでの概念は、電力を分割してより良好な電源セルの利用特性を得ることである。
【0087】
電源チップの熱特性が電気的負荷によって変化し、この熱が電源セルレベルの電力生成に悪影響を与えかねないことが予測できる。十分な温度感知と、電源セルの使用に対する適切な応答とによって、熱蓄積による有害な作用を最小限にすることができる。
【0088】
蓋40は、2つの部品による「電源チップ」アセンブリの第2部品である。好ましくは、蓋40は金属製であり、もろい半導体の基板14に対する機械的に強固な基材となっている。これにより、容易に扱うことが可能になり、さらに、「電源スタック」、すなわち、文字どおりに互いに上下に積層した複数の電源チップ15を組み立てるための安定した土台が提供される。目的は、より大きい電力を有する物理的ユニットを作ることである。
【0089】
図10には、どのようにして燃料および酸化剤/生成物のチャネル50A(ならびに図示されていない50B)を基板14の表面にエッチングすることができるかが示されている。これらの溝は3つの側面を有しており、上側は閉じられ、封止されていてもよい。蓋40および接着剤42は、基板14に接着してチャネルを完成させるとチャネルを密封する。これによって、燃料供給用、酸化剤用、および生成物である水の除去用のチャネルの基(matrix)が、基板の表面に形成される。
【0090】
蓋40は、入口/出口を形成することができる、機械的に安定したインターフェイスとなる。これらは、気体供給口および水除去口である。これらの構造は、広大な外界から基板上のマイクロメートル寸法の構成に寸法移行するものであってもよい。この寸法移行は、マイクロメートル寸法のチャネルを、これよりも相対的に遥かに大きい孔Hに延設することによって達成できる。この大きい孔によって、蓋と基板との間の調節があまり必要でない。蓋の大きい孔は、機械加工で基板に形成されたマイクロメートル寸法のチャネルを持つ基板の大きい孔と一直線状に整列し、このチャネルは、基板の大きい孔から電源セルに延在する。
【0091】
各ウェハは、マニフォルドを備えていてもよい。これにより、燃料供給、酸化剤および生成物除去のための外部との接続部材が必要となることが考えられ、さらに、この外部の管接続は自動的な連結システムを必要とし得る。
【0092】
図11および
図12には、いくつかの燃料電池12である電源セル(この例では3つの燃料電池が並んでいる)をウェハまたは基板14に形成して電源チップ15を形成する多くの方法のうちの1つが示されている。電源ディスクを垂直に互いに上下に積層することにより、それぞれ水素源および酸素源に連結された、導入孔50HI、50OIを備える垂直の柱状体を形成してもよい。ウェハの柱状体は、内部に電源チップを形成しており、また、電源スタックを備えている。
【0093】
図12には、複数の電源ディスク15をスタックすることにより、多大な電力を備える電源スタックが形成されている様子が示されている。「スタックする」という単語の使用は理にかなっている。なぜなら、この単語は、ウェハ同士が互いに近接することにより、短い電気的な相互接続と最小限の管接続とが可能になることを示唆しているからである。実際には、この「スタックする」という単語は、複数のウェハの電力を組み合わせてより高出力の装置を形成することをいう。この組み合わせを形成するのであれば、ウェハを電気的に重ね合わせるだけでよい。しかしながら、最小のスペースにおいて最大の効率性で最大の電力を生成することが所望とされる。最短の電気的な相互接続(電源バス接続)の変形例を検討する場合、主要なマニフォルドのうち2つを電源バスとして使用する可能性も考慮すべきである。これは、これらマニフォルド/電源バスの一部を電気的に絶縁し、これらの部分を、各ウェハからその次のウェハに電力を運ぶために使用することによって実現できる。これにより、大電力配線の必要性が軽減し、電力供給のこの機能が自動的になされ、かつ、精度および信頼性が向上する。
【0094】
所望のマニフォルドの構造によって、電源ディスクを積層することができる。この構造では、実際のマニフォルド95は部分単位で構成され、各々の部分は蓋40と一体である。電源ディスクが積層されるにつれて、マニフォルド(管)が形成されていく。この種類の構造は、外部の管の必要性を大幅に減少させる。特殊な末端キャップにより、電源スタックの端部においてマニフォルドが完成する。
【0095】
これまでに開示した実施形態を要約すると、本発明の主な目的の1つは、準標準的なの半導体加工方法を利用して、燃料電池12である複数の電源セルを含んだウェハ10で構成される電源チップ15を大量生産できるようにすることである。このプロセスは、もともと、極めて小さい特徴に対応できる。また、これらの特徴(電源セル)は、1個につき極めて小さい電力を生成するものと考えられる。各電源セルは、材料が支援できる最大限の電力を有するように設計される。現実的な大量の電力を得るために、数百万個の電源セルが単一の電源チップ15上に作製され、多数の電源チップが「電源ディスク」(半導体のウェハ10)上に作製される。これが、単一のウェハから十分な電力出力を得ることができる理由である。10マイクロメートル(μM)×10マイクロメートル(μM)の電源セルにより、1立方センチメートル(cm
2)あたりに100万個の電源セルが作製可能である。最終的な電源セルのトポロジーは、構成材料の物理的性質およびその特徴により決定される。
【0096】
固体高分子水素燃料電池(solid polymer hydrogen fuel cell)の基本的な電気化学的な反応は80〜100℃の動作温度で最も効率的である。これは、シリコンのような一般的な半導体の基板の動作範囲内である。しかしながら、ウェハが積層されるのであれば、さらなる放熱が必要になり得る。いずれにせよカバーは必要なので、さらなる余裕のために蓋40を放熱体とすることは道理にかなっている。
【0097】
燃料および酸化剤/生成物用のチャネルが半導体の基板の表面にエッチングされる。これらの溝は3つの側面を有しており、上側は閉じられて、封止されていてもよい。蓋40がこの機能を果たす。蓋40は接着剤で被覆されており、半導体の基板に接着しチャネルを完成させると、チャネルを密封する。これによって、燃料供給用、酸化剤用、および生成物である水の除去用のチャネルの基(matrix)が、基板の表面に形成される。電源セルの2つの主なチャネルは、この同一の接着剤に接着したPEMによって隔てられている。したがって、いかなる微粒子も除去することによって、整合の要求条件を達成するのが容易になる。
【0098】
電源セルおよび電源チップの構造
上述の電源セルが、体積空間を取り囲む三次元の幾何学的構造を有する膜と、膜に連結されて、膜において第1流路を第2流離から隔てるカバーとを備えていてもよいことを理解されたい。本明細書において、「電源セル」および「燃料電池」は同義であり、互換的に用いられる。電源セルは、さらに、カバーにアノード触媒層と、カソード触媒層とを備えていてもよい。任意で、電源セルは、燃料または酸化剤が触媒に流れるための孔を有する基板を備えていてもよい。本発明の他の実施形態は、電源チップである。電源チップは、第1の実施形態の電源セルのアレイに、燃料または酸化剤を供給すべく、第1流路または少なくとも1つの第2流路と気体連通したマニフォルドを設けたものを備えている。電源チップは、さらに、電源セルによって生成されたエネルギーのインターフェイスとなる、第1触媒および第2触媒に電気的に接続された端子も備えている。アレイまたはアレイのサブセットを構成し、外部の負荷と相互作用させるために、電気的な相互接続を、電源セルと、スイッチ、ヒューズまたは金属製のリンクとの間に延設してもよい。電源チップの構成は、プログラムできるものであってもよく、スイッチなどの制御電子機器の素子を備えていてもよい。電源チップは、さらに、電源チップのスタック(積層体)を支持するボンドパッドおよびパッケージを備えていてもよい。
【0099】
本発明の他の実施形態は、第1の実施形態で説明した燃料電池のアレイを備えた電源ディスクであり、このアレイは、電極を触媒に電気的に相互接続し、さらに任意で、電極を外部の負荷にも相互接続した基板を備えている。電気的な相互接続は、構成可能な方式で、燃料電池と、スイッチ、ヒューズまたは金属製のリンクとの間に延設されてもよい。電源チップの構成は、プログラムできるものであってもよい。電源ディスクは、さらに、電源チップのスタック(積層体)を支持するボンドパッドおよびパッケージを備えていてもよい。
【0100】
本発明の他のさらなる実施形態は、電源スタックである。電源スタックは、複数の電源ディスクと、電気的な相互接続および平行な気体の流れのための相互接続を有するパッケージと、燃料または酸化剤を供給すべく燃料電池のアレイを取り囲んでいるマニフォル系統とを含む、電源ディスクのアレイを備えている。
【0101】
他の実施形態は、選択された平面視の幾何学的形状(例えば、円形、四角形、蛇行)、壁の城郭、波形(壁のフィン)、カバーの触媒、カバー構造「低出力」および「高出力」、双方向の動作手段(電解槽および燃料電池)、ならびにチップ上の一般的なマイクロスケールの化学反応装置などの、さらに詳しく後述するこれらの組み合わせを有する燃料電池を備えていてもよい。
【0102】
図13は、複数の半導体燃料電池が作製された従来の半導体のウェハ1305の平面図である。このウェハ1305上に、複数の電源チップ1310が、後述する少数の例外を除く標準的かつ広く定着した半導体製造方法および微小電気機械システムの製造方法を用いて形成されている。簡略化のため、電源チップ1310は、縮尺どおりに示していない。
【0103】
電源チップは、製造そしてウェハレベルの試験の後、製造される集積回路の1つの複製をそれぞれ含んだ個々の電力生成装置として、分割されパッケージされてもよい。これらの装置のそれぞれ1つは、「ダイ」と称される。個々のダイの寸法は、電源チップの用途における必要性に応じて1立方センチメートル(cm
2)以下または1立方センチメートル(cm
2)以上であってもよい。
【0104】
基板(ウェハ1305)が、金属、ガラス、炭化ケイ素などの他の形態の基板であってもよいことを理解されたい。
【0105】
図14には、電源チップ1410の構成要素が示されている。各電源チップは、幾つかの従属構成品を備えている。各電源チップを、標準的なシリコンウェハなどの基板1405上に構築してもよく、基板1405には、多数の燃料電池1412が様々な微小電気機械システム(MEMS)による製造プロセスによって構築される。金属層1416、1415a、および1415bが、シリコンに付加され、電源セル1412間に適切な、電気的な相互接続のネットワークを形成すべくエッチングされる。従来の半導体の手法に従い、適切な絶縁層1420が、金属層を挟み、電気的な絶縁と化学的、機械的および環境的な保護とをも行っている。
【0106】
ボンドパッド1425が、同じく従来の手法に従い、電源チップ1410の縁部に構築されており、電源チップ1410と外部の回路(図示せず)との間の電気的接続の手段となっている。ボンドのリード(図示せず)を、通常のチップ・オン・ボードの方法を用いて回路基板に接続したり、後述するように複数の電源チップの積層を容易にする成形パッケージの縁部のコンタクト(図示せず)に接続したりしてもよい。
【0107】
さらに、電源チップ1410の電源セル(燃料電池1412)の構造の下および間におけるシリコン領域が、制御電子機器の回路素子1430を備えていてもよい。これら回路素子1430には、電源チップ1410の動作時において、監視、制御、最適化、ならびに外部装置および/または他の燃料電池への報告を協働して行うことができる、埋め込みの制御回路と、RAM、FLASHまたはROMメモリと、論理、例えばデジタル特定用途向け集積回路(ASIC)の形態での論理と、A/Dと、検知および切替のための装置とが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
図15は、個々の燃料電池1500の一実施形態の垂直断面を示す斜視図である。本発明の燃料電池の一実施形態によると、プロトン交換膜(PEM)の壁1505は、第1流路1510の体積空間1507を形成する三次元の幾何学的構造を形成するように構成されている。すなわち、
図15の例において、PEMの壁1505は、例えば円筒形である体積空間1507を取り囲み、第1流路の一部を形成している。カバー1520が、PEMの壁1505の構造によって形成された三次元の幾何学的構造の上部に連結され、閉じた空間を作り出し、PEMの壁1505において第1流路1510を第2流路1515から隔てている。カバー1520をPEMの壁1505に連結させることで体積空間1507の一端が封止される一方、体積空間1507の他端(第1流路1510の入口に近い端部)は開放しており、酸化剤または燃料の流れが入ることができる。
【0109】
カバー1520は、酸化剤と燃料との間の短絡を防ぐために気体不透過性材料で形成してもよく、PEMの壁1505の材料と異なる材料または同一の材料で形成してもよい。好ましくは、PEMの壁1505は、水素イオン(プロトン)を水素側から酸素側に通過させることができるイオン性ポリマーである。PEMの壁1505は非導電性であり、PEMの壁1505の両側のアノード1530とカソード1535との間における燃料電池1500の短絡を効果的に防ぐ。PEMの壁1505は、Nafion(登録商標)または同様の特性を有する材料で形成されていてもよい。負荷(図示せず)を、アノード1530およびカソード1535に電気的に接続されたコンタクト(例えば、金属製のワイヤ1545a、1545b)間に接続してもよく、燃料電池1500の動作時に、電力を取り出すことができる。さらに、PEMの壁1505を、導電性の白金/合金触媒などの触媒の粒子でドーピングしてもよい。
【0110】
一実施形態において、電源セルは、上述したように、燃料電池1500を支持することができる基板1540を備えている。しかしながら、基板1540は、燃料電池1500に関して任意の構成要素である。すなわち、PEMの壁1505は、三次元の構造であるので、それ自体で直立することができる自律構造であってもよい。したがって基板1540は、本発明の燃料電池1500にとって必須の構成要素ではない。基板1540が使用される場合、PEMの壁1505を、燃料または酸化剤が体積空間1507に流れ込むことができる基板の位置に接続してもよい。カバー1520が、当業者にとって一般的に知られた方法でPEMの壁1505に連結され、第1流路1510および第2流路1515をさらに隔てる。
【0111】
一実施形態において、カバー1520は、熱、溶剤、接着剤、音波溶接、および/または下向きの圧力の、適切な組み合わせを使用して取り付けられてもよい。例えば、カバー1520は、パターン化およびエッチングされていてもよい。半導体製造の手法において馴染み深いあらゆる方法が用いられてもよい。例えば、PEMの壁1505は、接着剤によって基板1540に完全に接着されて密封を行う。あるいは、カバー1520およびPEMの壁1505同士を、例えばポリマーを使用して、材料間に化学結合を形成することによって取り付けてもよい。この化学的結合に加えて、PEMの壁1505の上部1509にカバー1520を付着させることによる物理的な密封効果が得られる。PEMの壁1505の高さが正確に制御されている場合、付着されたカバーの圧力により機械的な「Oリング」型の自己シールが形成される。PEMの壁1505を基板1540上に成長させることによって、PEMの壁1505をカバーと組み合わせるときに微細な調節の問題が生じない。
【0112】
ある実施形態において、三次元構造の上部に接するカバー1520を「活性」させる(すなわち、円筒状の壁(PEMの壁)と同様の構成で、各側に、対応する触媒で被覆された電極を備えさせる)ことによって、電気を生成するための活性表面積を増加させることができる。さらに、気体不透過性の第3の材料(図示せず)をPEMの壁1505の上部に形成し、この第3の材料を介してカバー1520をPEMの壁1505に付着してもよいことを理解されたい。例えば、スペーサ(図示せず)を、PEMの壁1505の上部1509に配置し、カバー1520が、電気を生成するために第1流路1510と気体連通することを維持しながら、カバー1520がPEMの壁1505のいかなる部分とも物理的に接触しないようにしてもよい。
【0113】
他の実施形態において、製造において使用されるプロセス過程の特定の順序に依存するが、触媒のコーティングを、カバーの片面または両面にも拡張させてよく、これにより、装置の反応表面積を増加させることができる。あるいは、カバーの第1の層に、カバーを
図15に示した三次元構造の上部に接着させるために使用される接着剤層を設けてもよい。
【0114】
図15に示した燃料電池1500において、さらに、金属1545aおよび金属1545bは、絶縁層1506によって隔てられた2つの別個の金属層である。金属1545aは、燃料電池のカソード1535に接続され、金属1545bは、燃料電池のアノード1530に接続されている。アノード1530およびカソード1535は、PEMの壁1505の層によって隔てられている。
【0115】
一実施形態において、触媒(アノード1530の)および触媒(カソード1535の)が、PEMの壁1505の側部に埋め込まれている。触媒を埋め込むことによって、PEMの壁1505との最大限の密接が得られる。触媒は表面効果である。この密接により、カソード1535に向かってイオンが自由に移動する経路が容易に得られる。触媒をPEMの壁1505に留めることによって、全表面積を効果的に使用することができる。これにより、システム効率が劇的に向上する。
【0116】
気体の燃料(例えば、水素)1555は、燃料電池1500の第1流路1510を促す基板1540の孔を通して、体積空間1507に導入させてもよく、アノード1530の触媒との接触によって還元される。この反応の結果生じる電子が、導電性の触媒層を通って金属1545bに移動し、次いで負荷(図示せず)に移動する。この反応の結果生じるプロトンは、PEMの壁1505を通ってカソード1535に移動する。燃料電池1500のカソード1535の第2流路1515を介して周囲の空気から得ることができる酸化剤1550(例えば、酸素)が、PEMの壁1505を通って流れるプロトン、および金属1545aを通って負荷からやって来る電子と結合して水蒸気を生じる。
【0117】
あるいは、アノード1530およびカソード1535を、反対の構成に組み立ててもよく、アノード1530は一方の金属1545aに接続され、カソード1535は、他方の金属1545bに接続される。このような構成においては、気体の燃料は、第2流路1515を通して導入され、酸化剤は、第1流路1510を通して導入される。
【0118】
PEMの材料は、最初に、スピンコート、吹き付け、浸漬、または半導体製造において従来使用されている他の方法によって、基板またはウェハに堆積してもよい。次に、このPEMの材料を、フォトリソグラフィでパターン化しエッチングをすることによって、PEMの壁1505として
図15に示した壁の輪郭を形成してもよい。触媒層であるアノード1530およびカソード1535を、スパッタリング、蒸着、吹き付け、転写および浸漬の適切な組み合わせを有する従来の半導体製造方法を再び用いて、コーティングとしてPEMに付着させてもよい。結果として得られる触媒層は、複数の副層を有してもよく、これら副層は、周囲の気体と接触し、PEMへのプロトンの移動を支援できるイオン伝導度を維持し、基板上の金属層への電子の移動を支援できる電気伝導度を維持するという、大きい表面積の相反する必要条件をサポートするために特別に構成されている。触媒の層が複数あることにより、表面全体を効果的に使用することができる。
【0119】
図15には、円筒形状の燃料電池が示されているが、特定の用途に関して所望とされる動作特性に応じて、他の形状も実施可能である。例えば、
図16A〜16Dの平面図に示した形状、これらを組み合わせたもの、またはこれらの拡張形態を使用してもよい。
【0120】
図16Aには、
図15に示した構造と同様の円筒形状の構造体1600を、カバーを省略した状態の電源チップの簡略化した概略断面平面図にて示している。一実施形態において、円形の断面積を有する円筒形状の構造体1600が、基板1610とPEM壁の1605とを備えており、PEM壁の1605は、それぞれカソードおよびアノードとして機能する触媒層1615、1620の間に位置している。円筒形状の構造体1600の中心には、燃料または酸化剤が流れるための流路1625が形成されている。
【0121】
図16Bには、
図16Aの構成要素と同一の構成要素であるが、非円形の断面形状を有する構造体1650の断面平面図が示されている。この構造体1650では、
図16Aに示したものと同様の円形の断面積を有する円筒形状の構造体に比べ、単位占有面積当たりの反応表面積(すなわち、壁の長さ×高さ)が大きくなる。しかしながら、非円筒形状にすると、非円筒形状の燃料電池からなる高密度のアレイを構成した場合に、カソードの周囲において燃料または酸化剤の流れに利用可能な体積空間が減少してしまう可能性がある。
【0122】
図16Cは、円筒形状および矩形の同等物の構成要素と同じ構成要素を備えている曲線状の構造1660の一例である。曲線状の構造1660では、矩形および円筒形状の構造よりも、単位占有面積あたりの反応表面積の割合が大きくなる。さらに、曲線状の構造1660は、
図16Cに示すように、燃料または酸化剤の流れを促進する1つ以上の流路1665を備えていてもよい。
【0123】
図16Dは、平面視で蛇行形状を有している燃料電池構造1670の一例である。
【0124】
図17は、城郭状の表面にエッチングによりフィン1710を形成した、さらなる変形例を示す他の断面図である。この実施形態は、
図16A〜16Dに示した全体形状のうちのいずれかの形状の任意の部分に適用できるPEM壁1705の断面を、上方から示している。フィン1710によって、表面積を大幅に増加させることができる。しかしながら、フィンのアスペクト比が大きすぎると、プロトン伝導経路の実効抵抗が増加するので、フィンの効果が小さくなることがある。さらに、使用されるエッチングプロセスの特性によっては、この方法から得られる増加量には限界が存在する場合がある。なお、水素は途中で行き止まっても、流れ続けてもよく、酸素が流入および流出することにより、例えばフィン1705を有するPEM1710を備えた燃料電池に接続されたマニフォルドを介して、水が除去される。
【0125】
図18A〜18Cは、高出力密度を得るのに使用される装置の反応表面積を、どのようにしてさらに増加させるかを示す平面図である。反応表面積を、上述の構成を使用して増加させることができ、以下で説明するように、さらに増加させることができる。
図18Aは、従来技術のプレーナ型の燃料電池の典型例である、標準的なプレーナ型PEM1805を示しており、例えば40μm×400μmの寸法を有し、16000μm
2の占有面積および8000μm
2の反応表面積を有している。
図18Bに示す例では、これと同一の占有面積に、本発明の実施形態に係る矩形の三次元のPEM1810の構造を形成することで、76000μm
2または
図18Aの平面上のPEMの4倍超の反応表面積が得られる。
図18Cは、PEM壁1815を城郭状とすることで、表面積をさらに2倍にしてプラーナ型の表面積の8倍とすることができる(反応表面積が144000μm
2に増加するので)ことを示している。半導体部品のコストは、使用されるシリコンの「占有」面積に比例して増加する傾向にあるので、上記のように多数倍とすることで、これに応じた有効出力密度の増加と、生成されるワット当たりのコストの低減とが達成される。
【0126】
図19Aおよび19Bは、燃料電池構造の有用な変形例を示す図である。
図1を参照して説明したように、本発明の一実施形態は、電気的に相互接続され、別個の流路にガスおよび酸化剤が供給される、電源チップを形成する燃料電池のアレイである。相互接続されて電源チップを形成する燃料電池としては、本明細書に開示される任意の実施形態の燃料電池のアレイを含むことができる。電源チップは、さらに、流路と気体連通して燃料または酸化剤を供給する少なくとも1つのプレナムと、電源セルのアレイの少なくともサブセットのアノード触媒に電気的に接続された1対の端子とを備えていてもよい。
【0127】
図19Aは、燃料電池1905aのアレイを、燃料電池1905aの内部の三次元の幾何学的体積空間(すなわち、円筒)を取り囲む複数の膜1922とともに備える電源チップ1900aを示す図である。それぞれのPEM壁1922は、カバー1910aに連結されており、このカバー1910aがPEM壁1922を封止して各燃料電池1905を行き止まりにしている。次に、燃料が、アノード触媒1915aと気体連通するよう、PEM壁1922の三次元の幾何学的体積空間内に流れ込む。カソード触媒1925aは外気1920に曝されているので、カソード触媒1925aは、外気1920中の酸化剤(例えば、酸素)を効果的に利用して、電源チップ1900aにおいて燃料および酸化剤を反応させてエネルギーを生成することができる。電源チップ1900aの燃料電池を、サブセットに分割して、各サブセットへの電子の流入またはサブセットからの電子の流出を可能および不可能にすることによって、各サブセットを制御することができる。
【0128】
図19Bは、
図19Aのカバーの構成の代替例となるカバーの構成を示す、電源チップ1900bの図である。ここでは、カバー1910bは、
図19Aのカバー1910aの「ネガ」である。すなわち、電源チップ1900bは、
図19aに示したような複数のカバーを備える代わりに、1つの連続的なカバーを燃料電池の膜に連結させて使用することができる。このような構成においては、円筒1905bの内部を通過する流路が行き止まりではないので、電源セル1905bが、反応の副生成物をより効果的に除去することができる。この実施形態において、カソードにおいて形成される水または他の副生成物をより容易に除去することができるよう、カソード1025bとアノード1915bとを入れ替えてもよい。
【0129】
上述の構成の変形例は、高出力のシステムにおいて有用である場合がある。
図13の構成とは対照的に、基板またはウェハ(本明細書において、電源ディスクとも称される)は、分割されて小さいユニットにパッケージされるようには構成されていない。一実施形態において、電源ディスクは、(1)本明細書において開示された燃料電池の任意の実施形態のアレイ、(2)燃料および酸化剤を供給する燃料電池の流路に気体連通する少なくとも1つの空間、(3)燃料電池の少なくともサブセットのアノードおよびカソードの触媒に電気的に接続されて、電源セルによって生成されるエネルギーのインターフェイスとなる1対の端子、および(4)端子に電気的に接続された少なくとも1つのバス電力、を備えていてもよい。金属層の相互接続および制御電子機器(図示せず)を、個々の燃料電池または基板全体に接続されるように構成してもよい。一実施形態においは、電源ディスクは、さらに、電源チップ同士を電気的に選択可能に相互接続するスイッチを備えていてもよい。好ましい実施形態において、電源ディスクは、さらに、スイッチを制御するための電子機器を備えていてもよい。電源セルのアレイが基板に接続される場合、プレナムが実質的に均一な圧力で燃料または酸化剤を供給するように構成されることに注意すべきである。プレナムには、例えば、燃料と、酸化剤と、電源セル間の反応副生成物とを除去することができるよう、少なくとも1つの出口が設けられていてもよい。次いで、複数のこれらの電源ディスクを、電気的に並列な接続で積層し、電源スタックを形成してもよい。
【0130】
電源チップの一実施形態において、燃料電池が、ワイヤまたは回路による電気的な相互接続の代わりに、膜の両側部における金属製の被膜すなわちフィルムによって電気的に接続されている。金属の被膜は、電源チップの1つの縁部において端子に電気的に連絡しており、該縁部においてこの端子は外部の負荷に接続されている。
【0131】
電源スタックの他の実施形態において、電源スタックが、少なくとも1つの電源チップが接続された基板を備えていてもよい。電源チップは、本明細書に開示される電源チップの任意の実施形態であってもよい。電源チップのさらに他の実施形態は、基板と、本明細書に開示される電源セルの任意の実施形態のアレイと、対応するカソードおよびアノードの触媒にそれぞれ接続された1対の電極と、それぞれ第1電極および第2電極にそれぞれ電気的に接続された1対の電源ディスクバスを含むことができる。
【0132】
電源スタックの一実施形態において、電源スタックは、電源スタック構造体と、該構造体に接続されている複数の電源ディスクと、電源スタック構造体に関連し、ディスク端子に電気的に接続されるように構成された電源スタック端子を含むことができる。
【0133】
電源スタックの一実施形態においては、
図20Aに示されるように、酸化剤および燃料の流れが別個のマニフォルドによって促進されるように、個々の電源ディスク2005a、2005bが積層されていてもよい。例えば、電源ディスク2005a、2005bが、燃料および酸化剤を電源ディスクに供給する経路を形成するマニフォルドシステムが設けられた電源スタック構造体2000に取り付けられている。電源ディスク2005a、2005bは、上側のプレナム2010a、2010bと下側のプレナム2015a、2015bとの間に配置される。
図20Aは、例示のために、それぞれの電源ディスク2005a、2005bがただ1つの個々の電源セル2029a、2029bを有する旨を示している。すなわち、
図20Aには示されていないが、それぞれの電源ディスク2005a、2005bが、電源セルのアレイを、機能的な電源ディスクを形成するための他の構成要素とともに備えてもよいことを、理解すべきである。
【0134】
さらに
図20Aを参照すると、電源スタックに、燃料または酸化剤の入口ポイントである第1流入溝2025が設けられる。第1流入溝2025は、燃料または酸化剤が上側プレナム2010a、2010bできるよう、開口部2027a、2027bを有している。例えば、ひとたび酸化剤の流れが上側プレナム2010a、2010bに達すると、酸化剤が、基板2041a、2041bに接続された電源セル2029a、2029bのカソード触媒2031a、2031bに接触する。同時に、燃料の流れが、下側プレナム2015a、2015bに開放した第2流入溝2030を通って進入する。ここで、燃料がアノード触媒2033a、2033bに接触し、電子を生成すべく燃料、酸化剤、および触媒の間の反応が開始する。それぞれの電源ディスク2005a、2005bは、電子を運ぶべく触媒に電気的に接続された電極を備えることができる。あるいは、アノードおよびカソード触媒を、構成要素2031a、2031bがアノード触媒であって、構成要素2033a、2033bがカソード触媒である反対の構成に組み立てることも可能である。このような構成においては、燃料が第1流入溝2025を介して導入され、酸化剤が第2流入溝2030を介して導入される。
【0135】
さらに、
図20Aに開示されている第1流入溝2025から始まる流路には、出口路が設けられている。例えば、それぞれの触媒と反応した後の使用済みの燃料または酸化剤は、流路2047a、2047bを通過し、出口プレナム2043a、2043bに流れる。使用済みの燃料または酸化剤が、出口プレナム2043a、2043bを通過して、出口2045が設けられている流出溝2040に達する。一実施形態においては、出口プレナム2043a、2043bおよび流出溝2040を経由するこの出口路が、燃料、酸化剤、および燃料電池の間の反応によって生成される副生成物を除去するための出口になっている。
【0136】
さらに、
図20Aを参照すると、燃料または酸化剤の流れは、それぞれの電源ディスクに対して実質的に平行であってよく、比較的小さい圧力損失しか生じない。個々の反応部位がきわめて小さいので、各部位において必要とされる反応体の化学量論量は、きわめて少ない。多くの状況において、行き止まりの拡散主導の流れを、きわめて申し分なく使用することができる。
【0137】
図20Bは、電源スタックの他の実施形態を示す図である。複数の電源ディスク2055が、この実施形態においては、2つ以上の中空路で形成された電源スタック構造体2060に接続されている。電源スタック構造体2060は、この例示の構造体の両方の中空柱(中空路)に接続された補強材(図示せず)を備えていてもよく、燃料(例えば、水素)の流路2070(破線で示されている)を形成するように構成されている。流路2070は、電源ディスクの入口2051と気体連通しており、燃料がこの入口2051を通って少なくとも1つのディスクマニフォルド2065を介して各電源ディスク2055に流入できる。電源ディスク2055は、周囲空気に曝されているので、空気中の酸化剤(すなわち、酸素)を利用することができる。したがって、電源スタックは、酸化剤を電源スタック構造体2600および電源ディスク2055のマニフォルドにおける酸化剤の流れを通して意図的に供給する必要なく、十分にエネルギーを生成することができる。
【0138】
このような構成に従って組み立てられた電源ディスクは、大きな出力を生成することができる。
図21および22は、例を示している。
【0139】
図21は、どのようにして体積空間1リットル当たり10KWを、小さな反応表面積あたり出力密度に基づいて達成できるのかを示す一連の燃料電池構造体および関連の寸法を含んでいる。
【0140】
図22は、ワット/kgについての同様の計算を示す寸法および重量を有する別の図を含んでいる。
【0141】
発電機のアレイの制御
燃料電池などの電源セルは、一般に、電源インピーダンスを有しており、したがって、装置がもたらすことができる電圧は、供給される電流の関数である。結果として、負荷が、より多くの電流を必要とするほど、複数の燃料電池装置を直列に配置することによって生成することができる供給電圧を低下させる傾向にある。例えば、0.9ボルトの開路電位を有し、0.4ボルトにおいて1ミリアンペア(mA)の最大電流出力容量を有している燃料電池を用いる場合、このような装置12個を直列に接続すれば、4.8mWの最大電力出力において4.8Vが得られ、このような装置6個を直列に接続すれば、ゼロmWの出力において5.4Vを示す。内部損失がないと仮定すれば、1アンペアの電力供給容量は、このような1mAの装置が直列接続された列を1000個並列に接続することによって生成することができる。
【0142】
大部分の電子部品は、例えば、5ボルト±10%など、ある許容範囲への電圧調節を必要とする。いくつかの従来技術のシステムにおいては、電圧調節が、外部の電圧レギュレータまたは他の同様の電力調整回路によって達成されている。
【0143】
いくつかの実施形態においては、電源セルの配置構成が、直列装置の数を自動的に切り替えることで外部の電力レギュレータを不要としており、これによって、エネルギー効率を向上させ、生じる熱を少なくし、回路基板が必要とするスペースを減らし、システムの総コストを低減している。
【0144】
出力レベルが低いと電力変換効率が高くなるというのが、燃料電池および他の多くの発電機の特性である。なぜなら、装置内部での電力損失が少ないからである。電源セルを説明する電圧‐電流(V‐I)曲線の形状または同等の特性に応じて、最適な効率を提供する電力レベルが存在し得る。燃料電池において典型的には、最適な効率は、電圧降下が可能な限り小さいこと、つまり電流が最小限であることである。この場合、燃料効率と、電力装置の数、すなわちシステムのコストおよびサイズとの間に、トレードオフが存在する。
【0145】
したがって、本発明のいくつかの実施形態に係る燃料電池のための最適制御技術は、一例として、電圧が実際の負荷にとっての許容範囲内にあるように各列の直列装置の数の調節をもたらす粗制御ループと、所望の電流を供給するためにシステムをV‐I曲線の上下に移動させることによって電圧をさらに調節すべく、並列に接続されたそのような装置の列の数を増減させる微制御ループとを含むことができる。
【0146】
さらに、フィードバック制御システムを使用する実施形態においては、制御技術は、切り替えによって電力生成回路に取り入れられ、またはこの回路から除外されるときに時間的な過渡応答を有している、燃料電池の単セル、アレイ、またはバンクを考慮するものであってもよい。したがって、負荷の推移の存在下においてフィードバック制御システムの安定な動作を保証するために、フィルタまたは他の制御法則を、フィードバックループにおいて使用することができる。
【0147】
さらに、燃料電池装置の特性、すなわちフィードバックフィルタまたは他の制御法則における係数は、それまでの燃料電池装置の状態、あるいは温度、湿度、および圧力といった周囲の条件に左右され得る。
【0148】
本明細書において開示される方法の実施例には、(i)複数の電圧レベルを必要とすることが典型的である携帯電話機、PDA(携帯情報端末)、およびノート型コンピュータなどの負荷に対応するため、複数の電圧レベルまたは電流レベルの電流供給を制御する(すなわち、定電圧電源ではなくて定電流源である)こと、および(ii)一定の設定点電圧ではなくて経時変化する設定点電圧に追従すること、まで含まれる。この追従の特徴を、例えば、60Hzの正弦波出力を直接的かつ効率的に生成するために使用することができ、あるいは携帯電話機において直接的かつ効率的にスピーカを駆動するための音声増幅器として使用することができる。
【0149】
いくつかの用途においては、燃料を効率的に使用すると同時に必要とされる電力プロファイルを負荷に供給するように、生成される電力を、利用可能な燃料電池装置に割り当てることが有用である。ノート型コンピュータ、PDA、および携帯電話機などの可搬の電力用途においては、電力必要条件は、複数の電圧レベルを含んでいる。各電圧レベルは経時変化する電流に対応しており、かつ、電力必要条件の大幅な変化および極めて大きなピーク/平均比を含むことが多い。自動車およびバスの電源などのより大規模な用途も、同様の条件を特徴とする。
【0150】
燃料電池電力システムの商業的成功は、エネルギー貯蔵密度(ワット時/キログラムおよびワット時/リットル)、ピークおよび平均電力密度(ワット/リットルおよびワット/キログラム)、ならびにコスト(ドル/ワット、ドル/ワット時)によって決定されると予想される。これらの指標を、燃料の貯蔵、燃料の供給、および燃料電池そのものを含む全体システムに対して適用することができる。
【0151】
したがって、本発明の一実施形態は、多数の小型燃料電池からなるアセンブリ(それぞれの小型燃料電池が、アセンブリ全体によって生成される総電力の一部を生成する)の動作を、長期的な燃料消費を最小にし、負荷への電力出力を1つまたは複数の電圧において求められる電圧および/または電流の調節によって維持し、負荷変動を所要の許容範囲内で支持するように制御するための方法またはそれに対応する装置を含む。いくつかの実施形態においては、この方法およびそれに対応する装置を用いる制御システムが、温度、湿度、ならびに燃料および酸化剤の両方の利用可能な気体の圧力(例えば、高度によって変化する)による燃料電池の性能の変化を考慮し、これに応じて制御方式を調節する。
【0152】
他の実施形態は、多数の小型発電機からなるアセンブリの集合動作制御、例えば最適制御などを行う方法またはこれに対応する装置を提供する。この場合の小型発電機としては、燃料電池、マイクロバッテリー、光電素子、圧電素子、周囲の振動によって駆動される他の装置、または、効率が、バッテリーの放電曲線または燃料電池のV‐I曲線におおむね類似する何らかの特性に従う動作レベルに依存する、他のあらゆる電源を用いることができる。集合動作の制御は、最適制御の原理または他の形態の制御原理によって実行することができる。
【0153】
前述したように、以下の開示の詳細は燃料電池についてのものであるが、説明される概念、装置、または方法は、このような小型または比較的小型のあらゆる電力生成装置にも適用されると解釈されるべきである。
【0154】
図23に、燃料電池スタックまたはバッテリーを主たる電力源2301として使用する標準的な従来技術の電源回路2300を示す。レギュレータ2302が、負荷2304おける目標電圧2303を維持するために使用されており、目標電圧は、直流5V±0.5Vなど、負荷2304の適切な動作のために必要な範囲内の電圧レベルである。レギュレータは、典型的には主たる電力源2301の電圧がそのままでは目標電圧を維持できないような様相で変化するために、使用されている。レギュレータは、3端子の線形レギュレータであってよく、この技術分野において一般的に知られている、スイッチングレギュレータのいくつかの接続形態(ブースト、バック、バック‐ブースト)のいずれかであってもよい。典型的にはフィルタコンデンサ2305を用いて、負荷2304によって引き起こされる過渡電流を緩衝し、過渡電流によって引き起こされる電源ノイズを吸収する。
【0155】
図24は、マイクロ燃料電池の典型的な電流‐電圧(V‐I)曲線2400の図である。曲線2400は、オームの法則に従って、電流とともに変化する出力電圧を表わしており、これから、負荷インピーダンスとともに変化する出力電圧を読み取ることもできる。この技術分野において周知のとおり、燃料電池は、典型的には、3つの動作領域を有している。すなわち、活性化エネルギーに支配される領域2406、内部抵抗に支配される領域2407、および物質移動に支配される領域2408である。曲線2400の全体は、破線の曲線2409に示すように、温度よってシフトする傾向があり、さらに気体の圧力および湿度につれてシフトする傾向がある。電流I=0における電圧値が、開路電位2410と称される。
【0156】
並列切替
このようなV‐I曲線特性を念頭に、
図25に示す、燃料電池2512のアレイ2505を備える回路の接続形態2500を考える。ここで、各燃料電池2512は、
図24に示した曲線2400と同様の曲線で表される動作特性を有している。
【0157】
図25を参照すると、アレイ2505は、燃料電池2512を直列接続してなる複数の列2511a、2511b、・・・、2511xを含んでいる。各列2511a〜xは、燃料電池2512と電源バス2515との間にそれぞれのスイッチ(2513a、2513b、・・・、2513x)を有しており、スイッチ2513a〜xが閉じられたとき、対応する直列接続の列2511a〜xが、互いに並列に接続され、かつ負荷2514に並列に接続される。
【0158】
まず、最も左側の列2511aのための最も左側のスイッチ2513aが閉じられ、他のスイッチ2513b〜xが開かれている状況を考える。負荷2514のインピーダンスが極めて高い場合、負荷にかかる電圧V
lは、この直列アレイを構成している個々の燃料電池の開路電位の合計に近い。負荷2514のインピーダンスが小さい場合、この例では最も左側の列2511aの燃料電池2512によって出力される、負荷電流I
lに実質的に等しい電流が増加し、燃料電池2512の列2511aによって生成される電圧が、個々の燃料電池のV‐I曲線の合計に従って低下する。次に、第2の直列接続の列2511bが、対応するスイッチ2513bを閉じることによって接続された場合を考える。この状況において、各列2511a、2511bを通過して流れる電流は、ほぼ半分に減少し、これに対応して各列2511a、2511bの電圧が高くなる。したがって、出力電圧を、セル2512の列2511a〜xの接続および切り離しによって、あらかじめ定められた許容範囲内に維持することができ、これにより、
図26に示すように、負荷インピーダンスの関数としての電圧の定常状態変動がもたらされる。
【0159】
図26は、負荷インピーダンス2614が低下し、それに従って負荷電流2615が増加する状況を説明するグラフである。より多数の列2616を回路(例えば、
図25のアレイ2505)に接続するにつれて、回路には、電流2615の関数としての、電圧2617の鋸刃状の変動が生じる。
【0160】
直列切替
多くの状況において、装置の有用な動作範囲は、電圧の許容範囲よりもはるかに大きい。この場合、列の数のみならず、各列における直列接続される装置の数を切り替えることが有用であると考えられる。
【0161】
図27に示す接続形態2700は、直列構成要素2719の数を様々に選択するための列接続形態2718に設けられたスイッチ2720を備えている。この列接続形態を、微細に選択できる電流レベルにて負荷2714を駆動するために、並列の接続形態にて複数回繰り返すことができる。
【0162】
過渡応答
制御プロセスの設計における別の考慮事項は、個々の装置の過渡応答である。装置は、典型的には、最初に負荷回路へと切り換えられたとき、すぐに完全に応答せずに、経時的な過渡応答状態を経る。
【0163】
図28は、燃料電池などの個々の電力生成装置のステップ関数を示すグラフである。時刻T1において、電力生成装置を負荷回路に接続すると、結果として、実線の曲線2821で示すように、装置の関数である時定数にて、時間に対して指数関数的な電流の増加が生じる。装置の状態、および、燃料電池の場合にはプロトン交換膜(PEM)におけるイオンの分布に依存して、初期の輸送遅延2822も存在し得る。初期の輸送遅延は、温度および不活性度(すなわち、装置の前回の作動がどれくらい前であったか)の関数でもあり得る。これら後者のパラメータによる典型的な変化が、破線2823として示されている。
【0164】
燃料電池の過渡応答は、燃料電池の平衡状態に達する能力によって影響される。平衡が確立される領域として、i)反応層の膜(例えば、Nafion)の水和、ii)反応層における水の収支(例えば、液体の水が気孔空間に残って気体の触媒への到達を妨げていないか?)、iii)酸化剤/燃料の供給(例えば、所望の負荷を支持するための十分な反応気体が存在しているか?)が挙げられ、領域iiおよびiiiは相関していてよい。プロトン交換膜(PEM)の動作条件および構造の最適化は、燃料電池の過渡応答の最小化するための因子である。
【0165】
過渡応答は、正であっても負であってもよい。膜が正しく調整され、セルがある期間にわたって不活性であったことによって、反応層の気孔空間の水が取り除かれて、さらに、反応ガスが、反応層の全体へと拡散して、このガス拡散がなければ液体の水を捕捉することによって隔離され得る、可能なすべての活性触媒部位を占めるための時間を有する場合、過渡応答はピーク出力の経時的な低下を呈する。この出力低下は、反応層の気孔空間に液体の水が生成し、活性触媒を隔離するためであると考えられる。定常状態の出力は、液体の水の蓄積が除去の速度を超えていないが、ある程度の水が、除去が容易でない領域に蓄積されたときに生じる。システムの水分が除かれた場合、または反応気体の供給に中断が生じた場合、過渡電流は、ピーク電力未満の値を示し、定常状態に達するまで上昇する。ひとたびシステムが「定常状態」となると、出力は、動作条件および構成の性状に応じて変動する。したがって、水の形成と、反応層全体への反応体気体の分配に対する水形成の影響とを管理する能力が、燃料電池を適切に動作させるのに有用である。
【0166】
したがって、制御プロセスが、これらの影響を考慮し、不安定をもたらすことがない制御フィルタ処理または制御法則を取り入れることが有用である。
【0167】
図29は、一般的な形態の等価回路2900として示された燃料電池の電気モデルである。典型的には、輸送遅延2924に加え、オーミック抵抗2925、活性化損失に関する第2の抵抗2927、および電極の電気二重層に起因する電気容量2926が存在する。
【0168】
電圧サーボループ構造
いくつかの実施形態においては、制御ループを最適化し、あるいは他の方法で動作させるために、例えば、回路素子またはソフトウェアの形態のフィードバックフィルタまたは制御法則を、測定された電流を燃料電池の伝達関数あるいは複数の直列または並列の燃料電池の集合伝達関数の逆数によって補正するために使用することができる。燃料電池または他の電源セル装置の特性は、温度、湿度、圧力、および負荷に関する装置のキャラクタリゼーションによって確立することができ、制御理論およびデジタル信号処理(DSP)について確立された方法を使用して、デジタル信号処理へと取り入れることができる。非DSPの装置および方法を使用することもできる。センサをシステムにおいて使用して、例えば温度および湿度の値の測定を提供することができ、これらの値を使用して、DSPフィルタまたは他の制御法則のための係数のアレイを指標化することができる。これらの係数を、ニューラルネットワークなどによって適応させて調整することができ、各組の周囲条件のもとでの燃料電池の改善された動作が、ニューラルネットワークのノードの結合(すなわち、燃料電池の直列接続の列および複数の並列接続の列)を変える。
【0169】
図30は、燃料電池3038または他の形態の電源セルのアレイを制御するための例示的な制御構造体のブロック図である。アレイ3038が、経時変化するインピーダンスを有する負荷3030に供給する設定点電圧3029が存在し得る。アレイ3038によって負荷に供給される電圧を検知(3031)し、適切なフィルタ3033または状態空間方程式を介して切り換えロジック3032にフィードバックすることができる。このフィルタは、燃料電池のアレイ3038の種々の点3037において検知された電圧を含む入力状態ベクトル3020によって動作することができる。入力状態ベクトル3020は、温度センサ3015および相対湿度センサ3016a、3016bからの状態を、アナログまたはデジタル表現の形態で含むことができる。適切なフィルタとしてのDSPフィルタブロック3033が、通例の手法に沿った行列演算を適用することによって、状態ベクトル3020について動作することができ、状態ベクトル3020へと適用される行列(図示せず)は、フィードバック制御システムの分野において理解されるとおり、燃料電池アレイ3038を記述する離散伝達関数H(z)の適切に修正された逆数を表わすことができ、さらに、いくつかの実施形態においては負荷3030のモデルを考慮することができる。
【0170】
DSPフィルタブロック3033から得られるフィルタ処理された出力(「指令」)電圧3035および設定点電圧3029が一緒に、切替制御ブロック3032に提示される。切替制御ブロック3032を、アドレスがフィルタ処理された出力電圧および設定点電圧の関数であってよいメモリアレイとして好都合に実現でき、メモリ3025内のデータ3026が、アレイ3038のどのスイッチ3036をオン(すなわち、閉)にし、どのスイッチ3036をオフ(すなわち、開)にするかを制御するバイナリワードであってよい。一実施形態においては、例えば、指令電圧3035の値および設定点電圧3029の値の組み合わせのそれぞれが、メモリ3025内のただ1つの位置へとマッピングされ、その位置は、どのスイッチ3036がオンであり、どのスイッチ3036がオフであるのかについてのビットパターン(図示せず)を含んでいる。メモリアレイの内容を、後述のとおり、温度、出力湿度、および他の要因を制御する監視制御プロセスを動作させる監視プロセッサ3027の制御のもとで、更新または変更することができる。メモリアレイの内容を、外部のシステム(図示せず)から受信してもよい。
【0171】
切替制御ブロックであるコンパレータスイッチ制御ブロック3032が、コンピュータ、組み合わせロジック、論理ゲートに実践される組み合わせロジックの並列実行、などにおいて実行される特定の一連の指示を使用して、切替プロセスを実行するが、そのような切替プロセスは、負荷電圧3031および負荷電流3034の両方の関数として直列構成要素の数を切り替える粗いループ、ならびにアレイ3038において活性な並列に接続される3005a、3005bの数を切り替える微細なループの両方の形態で実践できる。微細なループは、フィルタ処理された出力電圧である負荷電圧3035が、しきい値を下回って低下する場合に、列3005a、3005bを追加することができ、フィルタ処理された負荷電圧3035がしきい値を上回って上昇する場合に、列3005a、3005bを除去することができる。システムが、例えばエネルギー効率の観点から、V−I曲線上の最適なまたは他のポイントからある許容範囲を超えて逸脱する場合、あるいは並列3005a、3005bの大部分が使用中となる状態に近付いた場合に、直列素子3007のさらなる行を、粗いループに従って切り替えによって回路内に追加することができる。同様に、システムの負荷が過度に低い場合、粗いまたは微細なループによって行を除去することができる。
【0172】
故障セルの迂回
個々の燃料電池が、劣化または故障することがある。直列接続の列3005a、3005bにおいて、列の全体の電圧は、電流が通過するあらゆるセルの個々の電圧の合計である。電流は各セルにおいて同じであるため、列内の最も性能の低いセルに対応する電流が流れる。この状況を、それぞれの電圧3032’を生成するための
図30に示す各列3005a、3005bの小さな電流検知抵抗3010a、3010bを利用するか、あるいは、列3005a、3005b内の複数の点において電圧3037を検知して一様性をチェックすることによって、検知することができる。大きな非一様性が検知される場合、1つ以上のセル3007が過剰なエネルギーを消耗している可能性が高く、スイッチ制御ブロック3032が、それらのセル3007を、例えば、利用可能な他の列が電流の需要を満たすことができる限りにおいて、行全体をメモリ3025から「外す」ことによって使用から除去することができる。直列接続列のうちのどのセルが故障であるかに応じて、使用する直列接続列内のセル数を減らす代わりに、より多数の列を使用するなど、利用可能であれば、他の構成も考えられる。
【0173】
関連する多くの用途において、平均負荷を満足させる必要がある燃料電池アレイの能力を超えるピーク負荷に対処するため、あるいはセルの応答時間を超える過渡要件を満足させるために、バッテリーまたはコンデンサを備えていてもよい。負荷プロファイルのピーク/平均比が小さい場合、
図26に示したように、コンデンサ3033が過渡電流に対応できる。(例えば、ハードディスク、または頻繁に無線で通信するセンサなどのように)ピーク/平均比が大きい場合、再充電可能なバッテリーによって、アレイの活性表面積ではピーク電流負荷の供給に十分でないピーク期間に対応することができる。この場合、充電/放電サイクルまたはバッテリーを適切に管理することに注意を払うことができる。大部分の種類のバッテリーは、限られた回数の充電/放電サイクルにしか対応できない。したがって、バッテリーを、再充電の前に、複数回のサイクルによって放電させることができる。バッテリーの寿命最大にするために、この回数は、再充電に利用できる余分な燃料電池容量(すなわち、ピークエネルギーおよびピークの頻度と非ピーク負荷を超える燃料電池容量)の範囲内で、可能な限り多くする必要がある。制御プロセスが、バッテリーの電圧を監視し、所定のパラメータまたは最近の負荷挙動履歴にもとづいて、再充電ポイントを決定することができる。
【0174】
図31は、例示的な粗制御ループおよび微制御ループを使用する制御プロセスの一例の構成を示すフローチャートである。比較的速い速度で制御プロセス3100の反復を生じさせる「高速」タイマのタイマ割り込み後に、制御プロセス3100が開始される(3105)。オンデマンドおよび/またはイベント駆動の割り込みなど、他の形態の割り込みによって制御プロセス3100を開始させてもよいことを理解すべきである。プロセス3100の粗い部分3101において、負荷の駆動電流(または、電圧)の大きな変化に関して、判定が行われる。これが、検出された負荷電圧が上限を超えているか否か(3110)、あるいは下限を下回っているか否か(3120)に基づき、アレイからの行の除去(3115)またはアレイへの行の追加(3125)を引き起こす。制御プロセス3100の微細な部分(3102)においては、電流を微量だけ取り除き、または追加するために、並列に接続された列を、アレイから除去する(3135)か否か、またはアレイに追加する(3145)か否かに関して、判定(3130、3140)が行われる。その後、制御プロセス3100は終了(3150)する。
【0175】
温度/湿度サーボループ構造体
さらなるサーボループの考慮事項が、温度、圧力、および湿度によるV−I曲線の変化から生じる。例えば、多くの用途において、水素−空気燃料電池から出力される空気は、蒸気の水への凝縮を引き起こさない湿度および温度にあることが好ましい。したがって、制御プロセスは、最初に出力湿度をチェックし、高すぎる場合には、動作温度の設定点を高くすることができる。これにより、水の出力が同じであれば、相対湿度(RH)が低くなる。相対湿度の低下は、同じ電力をより少数の燃料電池から生成することによって達成でき、これは、例えば
図30の制御ブロック3032のメモリ3025内の参照テーブル(図示せず)のデータ3026を変えることによって達成できる。次いで、別のループが、動作温度を設定点に対して比較し、テーブルに対して相応の調節を行うことができる。しかしながら、内部の抵抗損失を最小化することによって動作温度を可能な限り低く保つことで、最高の燃料効率が得られる。したがって、温度設定点は、制御プロセスによって、湿度の問題を生じさせない限りにおいて可能な限り低くされる。
【0176】
いくつかの燃料電池構造体は、出力の増加に伴う消費の増加と、より高い温度によるより少ない消費との対比に基づく、出力集中の最適値(すなわち、作動セルの数量)を有する場合がある。
【0177】
出力の集中に基づく制御ループを、始動時の温度を高くするため、および動作時に最適な温度を維持するため、の両方のために使用することができる。システムが電流供給容量を下回る電流で動作している場合、制御システムは、随意により、列が妥当かつ一様な平均温度を保つよう、利用可能な種々の列を介してサイクルさせることができる。
【0178】
図32は、温度または前述した考慮事項にもとづいて燃料電池のアレイの動作パラメータを変化させるための例示的なプロセスのフローチャートである。
図32は、
図31の制御プロセス3100よりも遅い速度で生じるプロセス3200のフローを示している。
図32を参照すると、タイマ割り込み(低速)または他の形態の割り込み(3205)によって、プロセス3200が開始される。出力湿度が上限よりも高いか否かについて、判定が行われる(3210)。出力湿度が上限よりも低い場合(3210)、プロセス3200は、出力湿度を下限と比較する(3215)。出力湿度が上限よりも高い場合(3210)、プロセス3200は、出力湿度を下げるべく設定点温度を上昇させる(3220)。出力湿度が下限を下回る場合(3215)、プロセス3200は、設定点温度を下げようと試みる(3225)。
【0179】
さらにプロセス3200を、設定点における温度、および、随意により温度のヒステリシスを監視(3230)するように構成することもできる。温度が設定点(+ヒステリシス)よりも低い場合、プロセス3200は、温度が設定点(−ヒステリシス)よりも低いか否かを判定する(3235)。温度が設定点(+ヒステリシス)よりも高い場合(3230)、電源セルの冷却のための新たな切替テーブルをロードすることができる(3240)。温度が設定点(−ヒステリシス)よりも低い場合(3235)、プロセス3200は、負荷を駆動することによって電源セルを加温するための新たな切替テーブルをロードすることができる(3245)。すでに述べたように(すなわち、より小さいまたはより大きい触媒表面積)、電源セルの加温または冷却は、典型的には、負荷の駆動に使用する電源セルの数を増減させることを意味する。
【0180】
さらに、プロセス3200は、負荷を駆動するための電源セルのバンクまたは電源セルの列をローテーションさせてもよい。内部のクロックまたはカウンタ(図示せず)を使用することによって、アレイ内の別のユニットにサイクルさせるか否かについて、判定を行うことができる(3250)。適切な時期である場合(3250)、プロセス3200は、どの電源セルを負荷の駆動に使用すべきかを判断するためにアクセスされる新たな切替テーブルを、プロセッサまたは記憶領域にロード(3255)することができる。アレイ内の別のユニットへのサイクルを行う時期でない場合(3250)、プロセス3200は、サイクルカウンタを増加させる(3260)。その後、プロセス3200は、故障の電源セルを探して電圧V
SENSEを検査し、あるいは読み取る。電源セルが、出力電流または電圧の監視(3265)などによって正しく機能していると判断される場合、プロセス3200は終了する(3275)。電源セルが故障であると判断される場合(3265)、プロセス3200は、新たな切替テーブルを計算して、それをロードする(3270)。その後にプロセス3200は終了する(3275)。
【0181】
図31および32のフロー図が、あくまでも例であることを理解すべきである。これらのフロー図の決定事項の数、順序、流れ、または他の態様を、
図31および32の例示の実施形態の範囲から逸脱することなく変形でき、変更でき、あるいは他の方法で説明できる。さらに、これらのフロー図を、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアにて実現することが可能であることを、理解すべきである。ソフトウェアにて実現される場合には、そのようなソフトウェアを、任意の形態のソフトウェアに書き込むことができ、本明細書に開示する発電に関して機能するのに適した任意のプロセッサによって実行することができる。また、ソフトウェアを、コンピュータで読み取り可能な任意の形式の媒体(プロセッサによってロードされるRAM、ROM、磁気または光学媒体、など)に保存される指示であって、プロセッサにプロセス3100、3200またはこの技術分野において理解されるとおりのそれらの変形例を実行させるべく実行される指示の形態で実現できることを、理解すべきである。
【0182】
寿命を改善するためのセルのローテーション
燃料電池または他の発電セルのアレイの動作において考慮すべきさらなる一連の決定事項を、時間または出力(エネルギー)の時間積分にもとづいて行うことにより、燃料電池または電源セルのアレイにおいて利用できるより多数のセルのなかで動作セルのローテーションを行うことができる。動作セルのローテーションのロジックは、典型的には、
図31の電圧制御ループよりも低い頻度で実行される。
【0183】
電力の最適化
図30および31に関して説明したように、電源セルのアレイによる全体の出力電力を制御するために、直列に接続されたセルまたはセルのバンクの数を変更する粗い電圧制御ループを、並列に接続されたなセル列またはセルバンクの数を変更する微細な電圧制御ループと組み合わせて動作させることができる。アレイの制御のこの選択の理由は、以下のとおりであってよい。装置ごとの典型的な電圧範囲は、0.9Vの開路電位から最大出力における約0.4Vまでであってよく、典型的な電流は、燃料電池の場合には反応表面積(RSA)に依存して1ミリアンペア以下であってよい。この状況において、列の電源セルの直列の切り替えを、粗い調節として最も適切に使用することができ、列の並列の切り替えを、微細な調節として最も適切に使用することができる。粗制御ループおよび微制御ループの実現を、
図33および34を参照して以下に説明する。
【0184】
図33は、直列の組合せ(すなわち、列)の燃料電池の数に応じて異なる、複数のV−I曲線の図である。直列の各燃料電池を通る電流は同一であり、電圧は加算される。したがって、V−I曲線は上方に移動し得、その傾きは、各直列の素子によって加えられる追加の電源インピーダンスに起因し増大する。曲線3339、3340および3341は、この順番で、直列の燃料電池の数の増加を示している。線3342は、負荷抵抗R
Lの特定の数値について、オームの法則に従う負荷電圧−対−電流、V=IR
Lを示している。この線3342とV−I曲線との交差点が、負荷抵抗に対するそれぞれの動作点である。つまり、負荷が一定に維持されたままで、直列の燃料電池を追加すると、電圧と電流とが、例えば、負荷の線3342とV−I曲線3339との交差点から、負荷の線3342とV−I曲線3340との交差点へと変化する。
【0185】
図34には、セルを並列に積層することによる結果が示されている。曲線3442、3443および3444は、並列の燃料電池の数の増加を示している。この場合、負荷電圧3442は同一であり、電流は、電源インピーダンスが小さくなることによって増加する。
【0186】
直列の装置の数は典型的に少なく(例えば、3.3ボルトの供給に対して4〜6個)、他方、並列の数は大きい(例えば、1アンペアの供給に対して1000個)ので、列の追加によって生じる電圧の変化は、典型的に、行の追加による電圧の変化よりもはるかに小さく、より緻密な調節が可能になる。
【0187】
システムは、単純な電圧調節の他にも、システムを効率的に動作させることによって燃料に貯えられたエネルギーを最適に使用し得る。
【0188】
図35Aおよび
図35Bは、動作点、供給電力および消費電力の間の例示的な関係を示す図である。
図35Aは、基本的に、
図24に示したV−I曲線の繰り返しである。
図35Bには、燃料の酸化によって生成される総電力3545と、総電力から起動損失を除いたもの3545’と、負荷に供給される電力3546と、装置において消費される電力3547とが示されている。起動損失は、電流Iに対して一定であるものと考えられる。したがって、消費電力および供給電力は、V−I曲線のほぼ真っ直ぐな抵抗領域の延長線がV軸に交差するポイントであるV
INT3548(
図35A)によって決定される。
【0189】
総電力3545の第1の近似は、
P
TOT=V
INTI+P
ACT
である。
【0190】
小さく、かつ電流Iに対してほぼ一定である起動損失P
ACTを除くと、P
TOTは、
図35Aおよび
図35Bに示されているように、傾きlを有するIの線形関数である。
【0191】
負荷に供給される電力は、
P
del=V(I)I
P
del=(V
INT−R
SI)I=IV
INT−I
2R
S
であり、R
Sは、装置の電源抵抗である。
【0192】
装置において消費される電力は、
P
diss=P
TOT−P
del=V
INTI−(IV
INT−I
2R
S)
P
diss=I
2R
S
である。
【0193】
図35Aに示すようなV−I曲線を有する装置において、供給電力は、電流に対する二次方程式であり、下方に凹形であり、P
del=P
dissのポイント3549で最大の供給電力になる。
【0194】
最適の電力:電源セル毎の電流の最小化
消費電力は、電流に対する二次方程式であり、上方に凹形であり、電流が少ないほど消費も少ないことを示している。しかしながら、電流が少ないということは、それに比例してより多くの装置が必要であることを意味する。最適の効率は、総電力に対する供給電力の割合である。したがって、効率は、電流が減少するにつれて単調減少する。
【0195】
実際問題として、動作の安定性および他の設計要因を考慮すると、特定の装置の、上述の単純モデルの一部ではない詳細な特性に応じて、若干高い電流動作点を選択することになるかもしれない。実際のシステムにおいて、装置毎の電流が少ないほど、装置の数が多くなり、これによってシステムに係るコストが増大するので、最適の効率はさらに限定され得る。
【0196】
最適の電力:切替による、可能な限り最小の増加
図36Aおよび
図36Bは、それぞれ、回路
図3648および電流波形3649であり、消費および供給電力の二次方程式の性質に起因し得る他の効果を示している。装置が、50%デューティサイクルでオン・オフされ、電流ゼロと電流2Iとの間を等しい時間間隔で交互することによって平均電力VIを供給する状況において、オンの時間に消費される電力は、半分の時間で消費される電力の4倍、または平均消費電力の2倍である。まず、供給電力がI
2R
Lであり、消費電力がI
2R
Sである一定の電流出力3650を考える。次に、平滑コンデンサに対する電源電流が50%デューティサイクルで電流ゼロと電流2Iとの間で切り替わる曲線3652を考える。負荷に供給される平均電流3651は、依然としてIであり、平滑コンデンサの出力3653(
図36A)において若干変動するのみである。しかしながら、消費電力は、
P
dis=(2I)
2R
S/2=2I
2R
S
であり、これは一定の電流出力3650の2倍である。
【0197】
すなわち、電力の消費を最小限にするため、制御プロセスは、可能な限り小数の装置を切り替えて設定点電圧を維持する。上述の例示的な制御プロセスは、これを行う。
【0198】
さらに、個々の装置または独立的に切り替えられる装置のグループが小型であるほど、システムのエネルギー変換がより効率的になるのは当然である。
【0199】
複数の電圧出力
図37は、複数のサブアレイまたはバンク3710a、3710b、・・・、3710nとして構成された電源セル(例えば、燃料電池)のアレイ3705で構成される複数電圧供給3700の接続形態である。複数電圧供給3700は、開示された構造の拡張形態であり、複数の電圧を必要とする電子装置において有用である。例えば、現代の携帯電話またはノート型コンピュータは、ディスプレイ、論理ハードディスク(logic hard disk)、RF装置などに異なる電圧を供給する複数の電圧レギュレータを備えている。超小型の燃料電池または他の電力生成セルのアレイは、電話機またはノート型コンピュータの従来の電力調整システムに関連する電力損失、熱の発生、基板コストおよび別個の構成品のコストを伴うことなく、このような複数の電圧を供給するように容易に構成することができる。燃料電池のアレイ3705が、冗長性をもたらすためのさらなるバンク(例えば、3710n−2、3710n−1、および3710n)を備えるように構成されていてもよく、これらさらなるバンクが、主要なバンクによって供給される任意の電圧を供給するように設定可能であってもよいことを理解されたい。さらに、全てのバンク3710a〜nは、いかなる電圧も供給できるように設定可能であってもよく、これにより、バンクをローテーションして寿命を長くすることができる。
【0200】
電流源、AC電源、音声出力増幅器
上記の基本的な構造のさらなる幾つかの変形例が実施可能である。システムは、変化する電圧に対して一定の電流を維持するように構成されていてもよい(すなわち、電圧源ではなくて電流源であり、例えば、ある種類のセンサを動作させるために有用である)。システムは、一定の電圧または電流を追跡するのではなく、代わりに、経時変化する設定点を追跡し、したがって、例えば家庭のバックアップ電源用の60HzのAC電源を提供するものであってもよい。またはシステムは、音声周波数信号を追跡し、例えば携帯電話のスピーカを駆動する、極めて効率的な電力増幅器を形成するものであってもよい。この構成は、一定の設定点電圧3029が経時変化する入力で置き換えられる点を除き、
図30の構成と同一であってもよい。
【0201】
電源チップにおける構築
従来技術のMarshの特許(米国特許第6,312,846号および米国特許第6,815,110号)に記載された、シリコン基板上におけるMEMS構造および製造方法を使用し、上述の制御システムを燃料電池と同一のシリコン基板上に組み込むことによってシリコンの表面積の増加を最小限にすることが、コスト効率に優れ得る。まず、電源アレイ用のトランジスタスイッチ、電圧センサおよび電流センサ、ならびに制御プロセスを実現するゲートのアレイを製造し得る確立された従来の半導体製造の手法に従い、基板上に一連の層を堆積し、これらをパターン化し、エッチングしてもよい。変形例として、書き換え可能な大規模集積回路(FPGA)、または組み込み型のプロセッサ中央処理装置(CPU)とメモリとを備える構造が、用いられてもよい。書き換え可能な大規模集積回路(FPGA)の構成またはプログラムメモリは、所望に応じて、製造後に装置を種々の用途に合わせてカスタマイズする必要性により、読み取り専用メモリ(ROM)、ワンタイムプログラマブル(OPT)メモリまたはFLASHメモリであってもよい。最新のCMOS製造法を使用することで、これらの方法はいずれも、1cm
2の燃料電池のアレイよりも小さいシリコン領域を使用してもよく、MEMS燃料電池構造体の同一のシリコン領域に容易に構築することができる。
【0202】
電源ディスク、電源スタックの階層制御
大型の電源について、Marsh(米国特許第6,312,846号および米国特許第6,815,110号)には、複数の電源セルを電源ディスクに組み立て、複数の電源ディスクを電源スタックに組み立ててもよいことが記載されている。この状況において、階層制御システムを実装してもよく、各電源チップは本発明の例示的な一実施形態に従って制御されるが、設定点は、個々の電源チップに電源ディスクレベルで作用する同様の制御システムによって決定される。同様に、複数の電源ディスクを、電源スタックに組み立てて、電源ディスクの合計の電力出力が最適になるように制御してもよい。
【0203】
電力増幅器
図38は、増幅器の機能を実行するために、通常は電圧レール(voltage rail)を使用するところを、電力生成器を使用したシステム3800のブロック図である。この例では、外部の装置3805が増幅器3810に受け取られ、低レベルの電圧信号3835を生成する。増幅器3810は、高インピーダンス入力ステージ3815と、電力生成セルコントローラ3820と、電子機器電源セル3825と、信号生成電源セル3830とを備えている。符号3815、3820、3825、3830で示されるこれらのモジュールは、当該技術分野において理解される任意の典型的な方法で相互接続されており、単一のシリコンのウェハに組み込まれ、例えば、前述したように相互接続されている。高インピーダンス入力ステージ3815および電力生成セルコントローラ3820は、増幅器3810の電子機器を動作させるために十分な電力を供給する電子機器電源セル3825によって給電される。高インピーダンス入力ステージ3815は、入力波形3835の出力値3817を電力生成セルコントローラ3820に供給し、そして電力生成セルコントローラ3820が、信号生成電源セル3830を制御し、入力波形3835を増幅した形態として電圧または電流波形3840を生成する。電圧波形または電流波形3840である出力波形は、負荷3845(例えば、携帯電話のヘッドセットスピーカ)、または例示的な増幅器3810によって駆動されるのに適した電気特性を有する他の形態の負荷を駆動するために使用されてもよい。
【0204】
図39は、波形を生成するように制御される電力生成セルの例示的な使用を示す1対の波形3900の図である。1対の波形3900は、正弦波の電力波形3905および調節された電力波形3910を含んでいる。調節された電力波形3910は、波形3905に対する負荷3915の影響を補正する形状で生成される。調節された電力波形3910が、必ずしも縮尺どおりではなく、実際に用いられる予定のない調節された波形の、単なる例にすぎないことを理解されたい。また、調節された電力波形3910が、電力供給の分野において理解される力率または電力品質を改善する目的で使用されてもよいことを理解されたい。
【0205】
図40は、電源セル(図示せず)のA〜Iまでの列4010a、4010b、4010c、・・・、4010iを有する電源セルのアレイ4000のブロック図である。アレイ4000は、さらに、コントローラ4005を、電源セルと一体で基板上に備えるか、または電源セルを有する基板とは別個に備えている。いずれの場合も、コントローラは、バス4015を介して負荷4025に電力4020を供給するために、どの列4010a〜iを使用するかを制御するために用いられてもよい。すなわち、コントローラ4005は、列4010a〜iを順番に進むか、または電源セルの列を選択し、負荷4025に供給する電力を生成してもよい。例示的な実施形態において、コントローラ4005は、列AからIへと順に進んで電力を生成し、よって電力4020は、これに応じた順序で供給される(すなわち、最初に列A4010aが電力P
aを供給し、次に列B4010bが電力P
bを供給し、・・・、最後に列I4010iが電力P
iを供給する)。
【0206】
図41は、発電システム4110が電源セル4107、4110a〜eのアレイに関連したコントローラ4105を備えている場合を示すブロック図である。この例では、始動セル4107が、まず出力P
out4120を生成してバス4115を介して外部の負荷4125に供給し、これによって熱を生成し、周囲にあり、外側に延在する電源セル4110aを暖める。変形例として、始動セル4107は、電源セルのアレイと同一の基板4102上に位置する任意の内部負荷4140に、電力P
warm4122を供給してもよい。これにより、始動セル4107は、外部の負荷4125に接続される必要なく暖まることができる。始動セル4107の位置を、例えば、4方向のいずれかにおいて高温の電源セルのより中心になるように、アレイの電源セル4110a〜eの中の他の位置に設定してもよいことを理解されたい。
【0207】
動作時において、コントローラ4105は、始動セルから温度フィードバック4135を受け取ってもよい。温度フィードバック4135の関数としてコントローラ4105によって決定される温度が増加すると、コントローラ4105は、始動セル4107を囲む電力生成セルすなわち電源セル4110aを動作させてもよい。次に、周囲の電源セル4110aが暖まると、コントローラ4105は、始動セル4110aを囲む次のセットの電源セル4110bを動作させて、電力4120を生成しバス4115を介して外部の負荷4125に供給する。このプロセスは、全ての電力生成セルすなわち電源セル4110a〜eが活性して電力4120を生成し、外部の負荷4125に供給するようになるまで継続してもよい。
【0208】
矢印4130によって示される進行が、図示のように斜め方向ではなく、代わりに、始動セル4107の領域および電源セル4110a〜eの領域のそれぞれが、
図40または
図30に示されているように電源セルの縦方向のセクタであってもよいことを理解されたい。どの実施形態が選択されるにせよ、始動セル4107が、効率的に熱を生成し速やかに暖まるように低効率で動作されてもよく、活性される次のサブセットの電源セルのそれぞれが、高速または通常速度で温度上昇し、所与の環境での使用において電源セルを始動させるための所与のプロファイルに合致するように所与の効率で駆動されてもよいことを理解されたい。
【0209】
図42は、カーネル機能4205および「高次」機能4210の2つのレベルの機能を備えたコントローラ4200のブロック図である。カーネル機能4205は、基本的な電源管理および制御機能であってもよく、これらは、例えば、電圧レベルを対応するスイッチの閉止にマッピングし、さらに、電力要求を列内の行の数および/または並列接続の列の数に変換し、電源セルのどのスイッチを閉止するかを選択して直列および並列の組合せを構成し、電力を生成するために使用される。他の基本的な機能も、カーネル機能4205内で使用されてよい。
【0210】
高次機能4210は、電源セルのインテリジェント制御を行う機能を備えていてもよい。高次機能の例には、冷間始動、正弦波制御、任意波形制御、電圧調節、電流調節、電源セルのローテーション、調節、および汚染除去が含まれる。
図43を用いて後で説明する振動も、「水浸し」事象の加速補正の支援としての高次機能の例であり得る。
【0211】
例示的な一実施形態において、コントローラ4200は、前述の機能または他の高レベル機能のうちの1つを実行するようにカーネル機能4205に要求4225を与える高次機能4210を備えている。次に、カーネル機能4205は、要求4225を実行するために、燃料または酸化剤の流れの制御素子などのスイッチもしくは他の制御素子(例えば、MEMSスイッチ)に制御信号4215を与える。フィードバック4220がカーネル機能4205へと返され、そしてカーネル機能4205が、高次機能4210による読み取りに適した形態でフィードバック4230を提示してもよい。変形例として、フィードバック4220は、高次機能4210に直接提示されてもよい。
【0212】
コントローラ4200が、他の方法で区分化されてもよく、また、単一の電源セルまたは電源セルのアレイに対して使用されるのに適した他の機能を備えていてもよいことを理解されたい。
【0213】
コントローラ4200は、さらに、複数のコントローラが統一された方式または分散された方式で機能できるように、コントローラ間あるいは電源ディスク/電源チップ内または電源ディスク/電源チップ間の通信モジュール4212を備えていてもよい。電源ディスク/電源チップ間の通信は、さらに、冗長性に対するサポートをしたり、事実上無限の数の電源セルの巨大なアレイを支援したりしてもよい。
【0214】
図43は、電源セルが形成されたパルス生成器4310に電気的に接続されているか、または任意で、1対のスイッチ4315a、4315bを介して電子パルス発生器に接続されている電気的に接続して備えている電源セル4305を備えたシステム4300の概略図である。この実施形態において、スイッチ4315a、4315bは、電源セル4305が、負荷4312に電力を供給することから、パルス発生器4310からのパルス4325aまたはパルス4325a、4325bを受け取るように切り替わるために用いられる。パルス発生器4310が、正弦波、チャープまたは他の波形などの典型的または非典型的な波形を生成する、いかなる形態の信号発生器であってもよいことを理解されたい。
【0215】
パルス4325aの目的は、壁の両側の触媒に電圧または電流を加えることである。触媒をパルス4325a、4325bで駆動させることによって、触媒に付着し得る汚染物質を、電源セルから外向きに突出している複数の矢印4330で示されているように排出してもよい。同様のセットの複数の矢印4330が、電源セル4305によって取り囲まれた体積空間の内部でも生じ得るが、汚染除去のプロセスがどのように作用するのかについて容易に理解できるように、それを図示していないことを理解されたい。さらに、一方の触媒の側を他方の触媒の側よりも良好に汚染除去するために、一方のパルス4325a、4325bを、接地電位などの基準レベルにしてもよいことを理解されたい。
【0216】
さらに、1ボルトまたは他の低電圧波形が、電源セル4305を形成するために用いられ、極めて薄い膜であってもよい触媒被覆された膜を振動させるために使用されてもよい。振動は、電源セル4305による電力生成を低下させ得る水浸しの状態の除去を加速させるために使用されてもよい。この目的のために、電源セル4305の厚さ、高さおよび直径、ならびに触媒の厚さ、区分け、または他の物理的パラメータが、電源セル4305が振動する能力を向上させるために特別に構成されてもよい。さらに、振動(または熱)は、電源セル4305における反応を生じさせたり、加速させたり、影響を及ぼしたりするために使用されるエネルギーを増やすように用いられてもよく、電源セル4305は、反応における特定の反応または特定の段階でのエネルギー供給またはエネルギー削減を向上させるために、単一また複数の周波数の振幅またはオフセットで駆動されてもよい。
【0217】
検査の観点からみて、電源セル4305は、導電性触媒の形態の2枚の「プレート」(膜の外壁および内壁)を有しているので、コンデンサと同様に電気インピーダンスを有している。このインピーダンスは、自動検査のために使用することができ、コントローラを使用して、電源セル4305から、静電容量計に接続された電源チップまたは電源ディスクの縁部のピンへと電気路を切り替えてもよい。このようにして、電源セルの巨大なアレイを、素早く検査または検査することができる。
【0218】
さらに、制御プログラムが、カスタムゲートアレイまたは特定用途向け集積回路(ASIC)の階層構造に実装され、複数の電源セルが、上述のマイクロプロセッサの電力生成器のアレイのように制御され、また、電源ディスクを形成するように組み立てられており、同様のプロセスが、電源ディスクにおける電源セルに対する電力生成の割り当てを制御している。ある実施形態では、複数の電源ディスクが電源スタックを形成するように組み立てられている階層構造において、同様のプロセスが、電源スタックにおける電源ディスクに対する電力生成の割り当てを制御している。
【0219】
例えば、最適の制御、ファジー論理、ニューラルネットワーク、およびHインフィニティ制御など、上述の制御フィルタ、制御則または他の制御則のうちどれでも、プロセッサのソフトウェアの形態で実行し、電力生成の動作を制御してもよい。ハードウェアまたはファームウェア実装を用いてもよい。制御プログラムは、上述の制御に加えて、任意で、個々の装置または装置のバンクが古くなるときの経時的な電源セルの特性に適応できるものであってもよい。制御プログラムは、さらに、現場設置後または製造後に変更もしくはアップグレードされてもよく、これにより、以前は同一であった装置に対して異なる用途のための異なる動作特性が与えられる。
【0220】
一実施形態において、超小型電力生成器のアレイは、再充電可能なバッテリー、コンデンサ、光電池、振動利用の電力生成器などを備えたハイブリッドシステムとして構成してもよい。バッテリーの充電サイクルは、バッテリーの長寿命を強化するように構成されたものであってもよい。
【0221】
電源セルの電気化学用途
本発明の他の態様の一実施形態は、反応成分を反応させる方法である。例示的な一方法は、体積空間を取り囲む少なくとも1つの膜の両側で、少なくとも1つの触媒の存在下、反応成分を電気化学的に反応させる過程を含んでいる。ここで述べる方法は、本明細書に開示されている電源セル、電源チップ、電源ディスクまたは電源スタックの任意の実施形態によって実施されてもよい。
【0222】
図44には、本発明の方法の上記の実施形態の例が示されている。電源セル4400は、アノード4405の触媒、カソード4410の触媒、および膜4415(例えば、イオンまたはプロトン交換膜)などの、他の電源セルに関して上述した構成品と同一もしくは同様の構成品を備えている。電源セル4400は、基板4420に接続されていてもよく、反応成分は、この基板4420を通り、矢印4440で示されたとおりに流れるものであってもよい。本明細書で述べる膜4415は、イオン交換膜またはプロトン交換膜などの、不織布および膜の積層体であってもよい。三次元の幾何学的構造体を形成するように構成された電源セルと同様に、この膜は体積空間4425を取り囲んでいる。超小型電源セルの用途において、体積空間4425は、1立方ミリメートル未満になり得る。他の用途において、体積空間4425は、1立方センチメートル未満、1立方メートル未満、さらには1立方マイクロメートル未満になり得る。スイッチ4455と負荷4457とを含む電気回路が、カソード4410およびアノード4405に接続されていてもよい。電源セル4400は、セパレータ4415の両側面上または内側の他の反応成分と協働して、電気化学反応を引き起こしてもよい。例えば、電源セル4400は、水の電気分解を用いて水素を生成するために使用されてもよい。
2H
2O
(l)→2H
2(g)+O
2(g)
【0223】
水の電気分解は、電源セル4400によって生成された電流を水の滴4440に通すことによって行うことができる(実際には、食塩水を用いて反応強度を増大させることで、観察を容易にすることができる)。水素気体が、白金電極を使用するカソード4410において見られ、酸素の気泡が、同じく白金電極を使用するアノード4405において見られる。他の金属がアノードとして使用される場合、酸素が気体として放出されずにアノードと反応する可能性がある。例えば、塩化ナトリウムの溶液内で鉄電極を使用すると、アノードにおいて酸化鉄が生成され、これが反応して水酸化鉄を形成してしまう。他の産業上の利用として、電気分解を用いて金属化合物から金属を還元し、純粋な形態の金属を得るプロセスである電気冶金が含まれる。例えば、金属形態の水酸化ナトリウムが、電気分解によってナトリウムと水素とに分離され、これらナトリウムおよび水素のどちらにも、重要な化学的用途がある。この例示的な方法は、さらに、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはアスピリンを製造するために用いられてもよい。電源セルによる電気分解の他の実用的な用途は、アノード酸化処理である。これにより、金属の表面を防食性にする。例えば、水中の船は、電気分解によりなされるこのプロセスによって、水中の酸素による腐食から護られる。このプロセスは、表面を装飾的にするために使用されてもよい。
【0224】
さらに、水の電気分解によって生成される水素気体を、他のさらなる反応の燃料として使用してもよい。例えば、水素気体4460は、出口4470を通って流れ、燃料として集められてもよい。
【0225】
上述の電気分解を、電源セルのコンテクストで説明したが、このような方法を、電源セルのアレイ、電源ディスク、または電源スタックに用いてもよい。
【0226】
この方法の他の実施形態は、さらに、電気化学反応を行うために電位差を加える過程を含む。
図44において、さらに、スイッチ4480をオンすることによって、電源セル4400をバッテリー4482に電気的に接続することができる。しかしながら、バッテリー4482は例示である。したがって、DC、AC、固定周波数、任意波形、またはこれらの任意の組み合わせなどの他の形態の電力を、電源セル4400に加えてもよい。
【0227】
アノードとカソードとに電位差を加えることによって、電気化学反応を引き起こすことができる。例えば、Nafion(登録商標)などの材料で作られた膜を備えた電源セルは、正弦波、パルス、チャープまたは他の波形などの電流が加えられると振動することができる。したがって、例えば、熱を生成したり(すなわち、膜4415において)、ある物理的状態(すなわち、液体、擬固体、気体、擬液体または固体)から他の物理的状態に変換したり、反応の様々な段階の間に、または反応の単一の段階において、電位差のプロファイルを変化させたりする電気化学反応を、電源セル4400に電位差を加えることによって引き起こしたり向上させたりできる。電位差を電源セルのアレイに加える場合、熱を生成している対象に熱的に近接した、アレイのサブセットに電位差を加えてもよい。
【0228】
電気化学反応を監視するために、センサを使用してもよい。例えば、システム4401は、水の電気分解の際のハウジング4403内部の水素気体のレベルを測定するセンサ4406を備えていてもよい。また、このシステムは、反応に関連する測定基準(例えば、濃度もしくは温度)、または典型的な反応に対する電源セルに関連する測定基準(例えば、温度もしくは圧力)のフィードバックを監視することによって、フィードバックシステムを備えてもよい。このフィードバックシステムを用いた電気化学反応の監視は、少なくとも1つの測定基準の関数として電気化学反応を調節、調整、および/または制御するのに有用になり得る。測定基準として、例えば、少なくとも1つの反応成分の温度、圧力、湿度、時間、濃度が含まれていてもよい。さらに、何時、如何にして電位差を加えるのかについて調整できるものであってもよい。例えば、典型的な反応において、電位差を減少させたり増加させたりすることによって、電気化学反応を減速させたり加速させたりしてもよい。
【0229】
さらに、電気化学反応の生成物は、抽出、吐出、排出、放出または排気などの方法を用いて出力してもよく、他の電気化学反応が、第1の電気化学反応の間または後に生じてもよい。第1の電気化学反応の間または後に少なくとも1つの他の反応成分を導入することによって、新しい電気化学反応を引き起こすか、または現在進行中の電気化学反応の次の段階において使用することができる。さらに、新しい電気化学反応の生成物も、先の電気化学反応と同様の方法で取り出してもよい。
【0230】
本発明を、例示的な実施形態を用いて詳細に示し説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および細部の様々な変更が可能であることを理解できるであろう。