特許第6016895号(P6016895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016895スクアレンを産生する微細藻類の新規菌株
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016895
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】スクアレンを産生する微細藻類の新規菌株
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161013BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20161013BHJP
   C12P 7/64 20060101ALI20161013BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20161013BHJP
   A61K 31/01 20060101ALI20161013BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20161013BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20161013BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20161013BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20161013BHJP
   C12R 1/89 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/12 C
   C12P7/64
   A23L33/12
   A61K31/01
   A61K31/202
   A61K8/31
   A61K8/36
   A61Q19/00
   A61P39/06
   C12N1/12 C
   C12R1:89
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-511822(P2014-511822)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公表番号】特表2014-518628(P2014-518628A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012059231
(87)【国際公開番号】WO2012159980
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】201110147066.X
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】CN
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4469
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ポーラ,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥフルティン,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ファンデワル,グザヴィエ
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−232866(JP,A)
【文献】 特表2014−515929(JP,A)
【文献】 Schizochytrium sp. ATCC 20888 18S ribosomal RNA, partial sequence.,DDBJ[online],2009年,ACCESSION: DQ367050, VERSION: DQ367050.1,http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/getentry/na/DQ367050/?filetype=html参照
【文献】 J. Agric. Food Chem.,2004年,52,1196-1200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12N 15/00
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2011年4月14日に、CNCMに番号I−4469で寄託されたシゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)の菌株。
【請求項2】
請求項1に記載の菌株を培養するステップ、および、対象脂質化合物富化バイオマスを回収するステップを含む対象脂質化合物を含む組成物の産生方法。
【請求項3】
さらに、前記脂質化合物を含む組成物を収集するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象脂質化合物が、スクアレンまたはドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
スクアレンまたはドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)を含む対象脂質化合物を含む組成物を産生するための請求項1に記載の菌株の使用。
【請求項6】
医学分野、化粧品分野および食品分野向けの組成物の調製における、請求項2または3に記載の方法によって産生されたスクアレンまたはドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)を含む前記対象脂質化合物を含む組成物の使用。
【請求項7】
スクアレンもしくはドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)を含む、請求項1に記載の菌株またはその細胞抽出物もしくは画分を含む産生物もしくは組成物。
【請求項8】
スクアレンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の産生物または組成物。
【請求項9】
食品製品または栄養補助食品製品であることを特徴とする、請求項7または8に記載の産生物または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクアレンの産生に特に好適な微細藻類の新規な菌株およびその使用に関する。
【0002】
スクアレンは、30個の炭素原子および50個の水素原子を含む、式:2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサ−ヘキセンのトリテルペン(イソプレノイド)である。
【背景技術】
【0003】
これは、ヒトを含むすべての高等生物において天然に生じる脂質である(皮脂において見出される)。スクアレンは、実際には、コレステロール、ステロイドホルモンおよびビタミンDの生合成における重要な中間体である(コレステロール代謝経路の酵素(スクアレンモノオキシゲナーゼ)は、スクアレン分子の一端部を酸化することにより環化を誘引してラノステロールをもたらし、これがコレステロールおよび他のステロイドに変換されることとなる)。
【0004】
工業的には、スクアレンは、食品分野、化粧品分野および薬学分野において特に用いられる。
【0005】
栄養補助食品としては、スクアレンは通常カプセルまたは油として配合される。
【0006】
化粧品分野においては、この分子は、脂肪の跡または脂っぽさを残すことなく直ぐに皮膚に浸透し、他の油およびビタミンと良好に混合される保湿クリームにおいて、抗酸化剤、帯電防止および皮膚軟化剤として用いられることが可能である。
【0007】
この分野においては、スクアレン(6つの不飽和性)のきわめて低い安定性のために、スクアレンは飽和されてスクアレンよりも良好な抗酸化剤であるスクアラン(水素化によって得られる)を形成し、これは、一般にきわめて高い純度レベル(99%)で市場において見出されることに留意すべきである。
【0008】
毒性に関する研究では、化粧品において用いられている濃度では、スクアレンおよびスクアランは全く毒性を示さず、ヒトの皮膚に対する刺激物でも感作物質でもないことが示されている。
【0009】
薬学分野においては、スクアレンはワクチンの補助剤として用いられる。
【0010】
これらの補助剤は、免疫系を刺激し、ワクチンに対する応答を高める物質である。
【0011】
スクアレンは、ワクチンを免疫原性とするために、1997年から、インフルエンザワクチン(季節性インフルエンザに対するChiron社製のFluad)において、一投与量当たりおよそ10mgのスクアレンで、ワクチン投与物質に添加されるエマルジョンの形態で用いられている。
【0012】
スクアレンを含有するすべてのワクチンと同様、これらのエマルジョンは乳白色の外観を有する。
【0013】
スクアレンはまた:
− Glaxosmithkline社によって、2009年におけるインフルエンザの流行に対するPandemrixおよびArepanrixワクチンにおいて用いられたAS03アジュバント系の特許取得された構成成分として、
− Novartis社によって用いられたMF59アジュバント系の特許取得された構成成分として、
新興のウイルスH5N1、次いで、2009 H1N1を標的とする特に実験用ワクチン、抗マラリア剤またはインフルエンザワクチンのワクチンアジュバントとして用いられる。
【0014】
スクアレンはまた、メモリーCD4細胞の産生を介してヒトの身体の免疫応答を刺激するためにインフルエンザワクチンに添加されている。
【0015】
これは、季節性インフルエンザウイルス抗原と組み合わされて市場に出されたインフルエンザワクチン用の最初の水中油型アジュバントである。
【0016】
この応用分野においてスクアレンの純度レベルは重要である。
【0017】
実際に、経口摂取される場合、スクアレンは完全に安全であると考えられるが;しかしながら、注射経路は議論の対象となる。
【0018】
実際に、医学分野においては、このアジュバントは当然のようにその不純物に対しても強い免疫応答を誘起してしまうことが可能であるために、スクアレンが不純物により汚染されている場合に、ヒトレシピエントに対する有害性リスクが高まってしまう場合がある。
【0019】
従って、スクアレンは不純物(微量の金属、特に水銀、および他の毒素)を含有しない高品質のものであることが重要である。
【0020】
一定数のスクアレンの製造経路が文献において提案されている。
【0021】
これは、深海鮫などの軟骨魚類の肝臓に蓄えられていることが見出されることの多い化合物である(よってこの名とされている)。
【0022】
従って、これが乱獲される1つの理由であるが、鮫は鰭を採るために既に漁の対象とされている。鮫の肝臓は、現在、「健康によい」と表現されるゲルカプセルの製造用に販売されている。
【0023】
しかしながら、それ故、市販されているスクアレンは主に鮫の肝臓から抽出されているが、健康上の問題が存在している。
【0024】
これは、鮫は、ヒトに有害な物質を産する可能性がある病原菌に感染している可能性があるためである。加えて、生体の解毒および精製器官である鮫の肝臓は、ヒトに有害であるカーチャトキシン(carchatoxin)などの毒素を含有している場合がある。
【0025】
これらの環境問題(鮫の生息数の大幅な減少)および健康上の問題(魚の肝臓もまた健康に関する懸念材料である毒素を有する)により、これを植物から抽出することが促されている。
【0026】
それ故、オリーブ油およびヤシ油、ならびに、穀類からの他の油またはアマランス、種子、米ぬかまたはコムギ麦芽に由来する他の油からこれを単離することが可能である。
【0027】
しかしながら、この場合における主な欠点は、スクアレンは、約0.1%〜0.7重量%ときわめて少量でしか抽出されないことである。
【0028】
鮫の肝臓または植物からのこれらの抽出方法の最初の代替として、微生物:天然酵母または組み換え型酵母、特にサッカロミセス属(Saccharomyces)タイプからスクアレンを生成するための最初の方法が提案されているが、相当量の濃縮および精製方法が行われるために経済的ではなくなってしまう場合が多い。
【0029】
そして、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)がスクアレンを産生することが可能であることが知られているが、しかしながら、その量は、約0.041mg/バイオマス1gときわめて少量である(Bhattacharjee、P.et al.、2001、World J.Microb.Biotechnol.、17、pp.811−816)。
【0030】
従って、遺伝子組み換えによってこれらの産生能を最適化するための研究が行われている。
【0031】
スクアレンを産出する組み換え型酵母は、それ故、以下の利点を有する。
− 宿主細胞と同一のGRAS(一般に安全と認められる(Generally Regarded As Safe))ステータスによる利点を有する、
− 宿主細胞と同様に病原菌、プリオンまたは毒素を含まない、および
− ワクチン分野において既に使用実績がある(B型肝炎抗原を含有するベクターを発現するこれらの酵母など)。
【0032】
しかしながら、医学分野について国際公開第2010/023551号パンフレットによって提示されているとおり(ワクチンアジュバントとしての97%を超える純度を有するスクアレンの生産)、この最初の代替は、組み換え型酵母によりスクアレンを過剰産出させる(乾燥細胞の15重量%超)ことが可能である場合にのみ工業化が可能である。
【0033】
実際のところ、これらの組み換え型細胞を得るためには、分子生物学的ツールを用い、スクアレン生合成経路の刺激およびスクアレン異化反応経路の阻害をもたらす数多くの面倒で、時間がかかり、複雑な代謝工学ステップを実施する必要がある。
【0034】
実際に、前記国際公開第2010/023551号パンフレットを再度引用すると、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、ピロホスホメバロン酸デルカルボキシラーゼ、イソペンテニルピロリン酸イソメラーゼ、HMGR(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼ)およびスクアレンシンセターゼを含む多くの遺伝子がスクアレン生合成に関与している。
【0035】
異化反応経路については、遺伝子が、スクアレンエポキシダーゼ(ERG1)、ラノステロールシンセターゼ、C14−ジメチラーゼ、d14−レダクターゼ、C4−メチルオキシダーゼ、C4−デルカルボキシラーゼ(ERG26)、3−ケトレダクターゼ、C24−メチルトランスフェラーゼ、C8−イソメラーゼ、C5−デサチュラーゼ、d22−デサチュラーゼおよびd24−レダクターゼを含む、スクアレンのエルゴステロールへの変換に関与する数多くの酵素をコードする。
【0036】
しかも、LEU2(β−イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素)、オキシドスクアレンシクラーゼ、ジモステロール−24−メチルトランスフェラーゼおよびエルゴスタ−5,7,24(28)−トリエノール−22−脱水素酵素といった他の分解酵素もまた考慮されなければならない。
【0037】
鮫の肝臓または植物からの抽出方法の第2の代替として、トラウストキトリアレス科(Thraustochytriales)(トラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属およびシゾキトリウム(Schizochytrium)属を含む)、特にシゾキトリウムマングローヴァイ(Schizochytrium mangrovei)またはシゾキトリウムリマシナム(Schizochytrium limacinum)の微細藻類からスクアレンを生産する有望な方法が提案されている。
【0038】
これらの微細藻類は、従属栄養的条件下(暗中;炭素源としてのグルコースの供給)でスクアレンを産生し、従って、微生物発酵分野における当業者により容易に操作され得る。
【0039】
従って、これらの方法は、制御された発酵条件によって、食品、化粧品および医学的な要求を満たすための精製を容易に行うことが可能であるスクアレンの品質を提供する。
【0040】
しかしながら、これらのトラウストキトリアレス科(Thraustochytriales)の微細藻類において、スクアレンは、ω3族の多価不飽和脂肪酸である、ドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)などの対象である他の脂質化合物の副産物である。
【0041】
それ故、スクアレンは、市販のDHA油の不鹸化性画分の成分の一種として特に記載される(カロチノイドおよびステロールと共に)と考えられる。
【0042】
比較として、シゾキトリウムマングローヴァイ(Schizochytrium mangrovei)FB1菌株は、0.017%のスクアレンに対して、細胞の乾燥重量基準で6.2%の割合でDHAを産生する。
【0043】
その結果、スクアレンを自然に産生するこれらの微生物は、その量は以下のように少量である。
− トラウストキトリド(Thraustochytrid ACEM 6063)(Lewis et al.、Mar.Biotechnol.、2001、439−447を参照のこと)については約0.1mg/バイオマス1g、
− シゾキトリウムマングローヴァイ(Schizochytrium mangrovei)FB1(Jiang et al.、J.Agric.Food Chem.、2004、52、pp.1196−1200を参照のこと)については約0.162mg/バイオマス1g、
− ホンコンマングローブオーランチオキトリウム(Hong Kong mangroves Aurantiochytrium)BR−MP4−A1(Li et al、J.Agric.Food Chem.、2009、57、pp.4267−4272を参照のこと)からの単離物については約0.18mg/バイオマス1g。
【0044】
産生を増加させるためには、従って、発酵条件を最適化することが重要であることが見受けられた。
【0045】
Qian Li et al.、J.Agric.Food Chem.、2009、57、4267−4272による論文においては、スクアレンはステロール生合成の重要な中間体であり、スクアレンのステロールへの変換の第1のステップは酸素−依存スクアレンエポキシダーゼによって触媒されることが明記されている。
【0046】
従って、溶存酸素に富む条件は、反対に、細胞内スクアレンを蓄積するために必要に応じて回避されるべきである。
【0047】
それ故、低溶存酸素レベル(0〜5%飽和度)でのトラウストキトリド(Thraustochytrid)ACEM 6063の培養により、1mg/gを上回るスクアレンを蓄積することが可能となり、一方で、より高い溶存酸素レベル(40%〜60%)での増殖では、0.01mg/gのスクアレンの達成しか可能ではない。
【0048】
同様に、15℃の温度での培養は、トラウストキトリド(Thraustochytrid)ACEM 6063によるスクアレンの産生は1.2mg/gであり、一方で、20℃ではわずかに0.7mg/gである(Lewis et al.、Mar.Biotechnol.、2001、3、439−447を参照のこと)。
【0049】
G.Chen et al.、New Biotechnology、2010、27−4、pp.382−389による論文においては、シゾキトリウム(Schizochytrium)はポリケチドシンターゼ(頭字語:PKS)経路によってDHAを主に産生するが、一方で、スクアレンは代わりにコレステロール生合成経路によって合成され、これは、これらの2種の化合物に対するトラウストキトリド(thraustochytrid)の栄養上の要求は異なっていることを意味することが想起される。
【0050】
彼らの研究の目的は、従って、スクアレンの産生における種々の窒素源の効果を系統的に調べることであった。
【0051】
それ故、G.Chenらは、シゾキトリウム(Schizochytrium)は、グルタミン酸ナトリウム、イースト菌抽出物およびトリプトンからなる窒素源の混合物を含有する培地中では、急速に増殖して「大」量のスクアレンを蓄積することが可能であることを見出した。
【0052】
これに関わらず、このスクアレンの「大量」の産生は完全に相対的である。
【0053】
これらの著者らは、基準となる培地の値と比して、スクアレン含有量および収率をそれぞれ26.3%および10.1%で顕著に増加させることに成功しているが、これらの最適化された条件は、実際には0.72mg/gのスクアレン含有量および5.90mgl/lの滴定量をもたらす。
【0054】
スクアレンの産生を最適化するという同一の目的で、K.W.Fan et al.、World J.Microbiol.Biotechnol.、2010、26−3、pp.1303−1309では、スクアレンモノオキシゲナーゼ(ステロール生合成における重要な酵素)の抑制剤であるテルビナフィンヒドロキシクロリドが用いられている。
【0055】
スクアレン含有量および収率は、微生物培養の熟成度に関連していることは公知である。
【0056】
細胞培養の熟成度が高いほどスクアレンの蓄積は少なくなり;実際には、ステロール生合成経路における前記スクアレンの消費が増えてしまう。
【0057】
従って、テルビナフィンは、ステロール経路に向かうこのスクアレンの消費を防止するよう作用し、従って、細胞内における対照に比して36%〜40%以下までのスクアレンの蓄積を促進させることが可能である。
【0058】
しかしながら、出芽酵母(S.cerevisiae)について記載のもの(0.041mg/バイオマス1g)よりもかなり高く、または、トルラスポラデルブリュッキイについて記載のもの(0.24mg/バイオマス1g)よりも高いが、この研究において用いられたオーランチオキトリウムマングローヴァイ(Aurantiochytrium mangrovei)FB3菌株で達成された最も高いスクアレンの産生は、わずかに0.53mg/バイオマス1gである。
【0059】
それ故、成されたすべての試みに関わらず、これらの値は、オリーブ油に係る基準値(約4.24mg/g)よりもかなり低く、工業規模において要求される値に遠く及ばない。
【0060】
従来技術において記載されているものよりもかなり効果的であると共にかなり経済的な産生方法の開発に関して、本出願人は、そのリサーチの最中に、例えば1gのバイオマス当たり18mgのスクアレン、すなわちオーランチオキトリウムマングローヴァイ(Aurantiochytrium mangrovei)FB3菌株で達成された最高のスクアレン産生の30倍を超える、1gのバイオマス当たり10mgを超えるスクアレン産生を可能とするスクアレン産生に係る優れた能力を有する微細藻類の新規菌株を同定した。しかも、顕著なスクアレン産生能力に追加して、この菌株はまた、バイオマスの乾燥重量基準で15%超、例えばバイオマスの乾燥重量基準で17.6%でドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)などの対象となる他の脂質化合物をもたらすことが可能である。
【0061】
このシゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)の菌株は、フランスにおいて、2011年4月14日に、パスツール研究所(Institut Pasteur)のCollection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures](CNCM)に、番号I−4469で寄託され、また、中国において、武漢大学(University of Wuhan), Wuhan 430072,P.R.ChinaのCHINA CENTER FOR TYPE CULTURE COLLECTION (CCTCC)に、番号M209118で寄託された。これは、18S RNAをコードする遺伝子の部分配列によって特徴付けられ(配列番号1):
1 GAGGGTTTTA CATTGCTCTC aTTCCaATAG CAaGACGCGA AGCGCCCCGC ATTGATATTT
61 CTCGTCACTA CCTCGTGGAG TCCACATTGG GTAATTTACG CGCCTGCTGC CTTCCTTGGA
121 TGTGGTAGCC GTCTCTCAGG CTCCCTCTCC GGAGTCGAGC CCTAACTCCC CGTCACCCGT
181 TATAGTCACC GTAGGCCAAT ACCCTACCGT CGACAACTGA TGGGGCAGAA ACTCAAACGA
241 TTCATCGCTC CGAAAAGCGA TCTGCTCAAT TATCATGACT CACCAAGAGA GTTGGCTTAG
301 ACCTAATAAG TGCGGCCCTC CCCGAAAGTC GGGCCCGTAC AGCACGTATT AATTCCAGAA
361 TTACTGCAGG TATCCGTATA AAGGAACTAC CGAAGGGATT ATAACTGATA TAATGAGCCG
421 TTCGCAGTTT CACAGTATAA TTCGCTTATA CTTACACATG CATGGCTTAG TCTTTGAGA
これは、シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)のタイプの菌株であると同定され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0062】
従って、本発明は、2011年4月14日に、CNCMに番号I−4469で寄託されたシゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)の菌株に関する。この菌株は、本出願において後に「CNCM I−4469」と記載され得る。
【0063】
この菌株は、スクアレンを大量に産生するという有利な特性を有する。実際に、100グラムの乾燥バイオマスに対して1グラムの規模でスクアレンを得ることが可能となる。特に、産生されたスクアレンの定量化は、実験の段落において詳述されている方法に従って実施され得る。
【0064】
結果的に、本発明はまた、この菌株の変異体、または、前記菌株から派生した菌株に関し、前記変異体または前記派生した菌株は、100gの乾燥バイオマス当たり1g以上のスクアレン含有量を産生する特性を保有する。特に、これは、100gの乾燥バイオマス当たり1g以上のスクアレン含有量を産生することが可能であり、および、突然変異誘発により、または、遺伝子形質変換によりCNCM I−4469菌株から得られるシゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)の菌株に関連している。突然変異誘発は、部位特異的および/または無作為的であり得る。
【0065】
本発明はまた、CNCM I−4469菌株の突然変異誘発または遺伝子形質変換ステップ、および、任意により、100gの乾燥バイオマス当たり少なくとも1gのスクアレンを産生する菌株を選択するスクリーニングステップを含む、このような菌株を調製する本発明に関する。
【0066】
本発明は、この菌株を適切な培地において培養するステップ、および、バイオマスを回収するステップを含む、CNCM I−4469菌株もしくはスクアレン産生能力を保有するその変異体の培養方法に関する。培養は、従属栄養的条件下で実施される。一般に、培養ステップは、菌株を活性化させるための前培養ステップ、次いで、実際の培養または発酵ステップを含む。後者のステップは、対象の脂質化合物を産生するステップに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0067】
これらの微細藻類を培養するための条件はこの分野において周知である。例えば、上記のG.Chenによる論文には、以下の連続的なステップを含む方法が記載されている:
− グルコース、グルタミン酸ナトリウム、イースト菌抽出物および種々の微量元素を含む寒天栄養培地上で維持した菌株から開始し、
− 活性化されたバイオマスを得るために、オービタルシェーカ上のエルレンマイヤーフラスコ中において、pH6、25℃の温度で、前培養物を調製し、
− 前培養において用いられたものと同一の培地を有する他の系列の産生エルレンマイヤーフラスコに、約0.5%(v/v)の前段のステップにおいて得られたバイオマスを接種し、温度を25℃に維持する。
【0068】
前培養ステップは、24〜74時間、好ましくは約48時間継続され得ることが好ましい。培養ステップに関して、これは60〜150時間継続され得ることが好ましい。
【0069】
微細藻類の増殖に要求される炭素源はグルコースであることが好ましい。
【0070】
窒素源の性質に関して、本出願人は、イースト菌抽出物、尿素、グルタミン酸ナトリウムおよび硫酸アンモニウムからなる群から単独で、または、組み合わせで選択することが可能であることを見出した。同様に、尿素を、グルタミン酸ナトリウムで完全にもしくは部分的に置き換えること、または、グルタミン酸ナトリウムと硫酸アンモニウムとの混合物を用いることが可能である。
【0071】
従来技術における方法において慣習的に用いられているイースト菌抽出物、5ml/lの比率で用いられるSigma社により販売されているBME反応混液などのビタミン反応混液が加えられた尿素を選択することが可能である。
【0072】
前培養培地は、ビタミンB1、B6およびB12を含んでいることが好ましい。
【0073】
培地のpHに関して、本明細書中以下において例示するとおり、これは、5.5〜6.5、好ましくは6の固定値で維持されることとなる。pHは、例えば2N硫酸、次いで、8N水酸化ナトリウムを添加することによる、当業者に公知であるいずれかの手段により調節され得る。
【0074】
最後に、溶存酸素含有量は、20%〜0%の値で調節され、0%で放置される前に、好ましくは、24および48時間、好ましくは36時間の最初の期間の間5%で維持され得る。酸素移動容量に関して、これは、さらに、45mmol/l/時間を超えることがないよう、当業者に公知のいずれかの手段によって調節されることとなる。
【0075】
本発明は、特に、対象脂質化合物を産生するためのCNCM I−4469菌株もしくはスクアレン産生能力を保有するその変異体の使用に特定的に関連する。対象脂質化合物は、スクアレン、および、特にドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)を含む。好ましくは、この対象化合物はスクアレンである。スクアレンは、100gの乾燥バイオマス当たり1g以上の含有量で産生され得ることに留意すべきである。
【0076】
本発明は、CNCM I−4469菌株もしくはスクアレン産生能力を保有するその変異体を培養するステップ、ならびに、対象脂質化合物富化バイオマスを回収するステップ、ならびに、任意により、対象脂質化合物を収集および/または精製するステップを含む対象脂質化合物の産生方法に関する。対象脂質化合物は、スクアレン、および、特にドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)を含む。好ましくは、この対象化合物はスクアレンである。特に、スクアレンは、100gの乾燥バイオマス当たり1g以上の含有量で産生され得る。
【0077】
発酵ステップの後、バイオマスは、それ自体が当業者に公知であるいずれかの方法によって発酵培地から回収され、例えばバイオマスは、発酵槽から取り出され、精密ろ過もしくは遠心分離によって単に濃縮されるか、または、水溶液による一連の濃縮−希釈を介して洗浄され得る。
【0078】
それ故、本発明は、CNCM I−4469菌株もしくはスクアレン産生能力を保有するその変異体を含むバイオマスに関する。特に、発酵または培養ステップの後、このバイオマスは、スクアレンおよびドコサヘキサエン酸、好ましくはスクアレンなどの対象脂質化合物に富んでいる。これは、本書面に記載の方法によって得ることが可能である。実際に、発酵の後、バイオマスは、17.6重量%のドコサヘキサエン酸および1.8重量%のスクアレンを含有し得る。ここで、「スクアレンに富んでいる」という用語は、100gの乾燥バイオマス当たり1g以上の含有量を意味することが意図されている。
【0079】
バイオマスに追加して、本発明はまた、CNCM I−4469菌株もしくはスクアレン産生能力を保有するその変異体を含むこのバイオマスから調製された細胞抽出物もしくはライセートに関する。特に、この抽出物もしくはライセートは、発酵後に回収されたバイオマスから調製される。この抽出物またはライセートは、スクアレンおよびドコサヘキサエン酸、好ましくはスクアレンなどの対象脂質化合物に富んでいる。脂質内容物を抽出するための細胞の破壊は、機械的、化学的または酵素的経路といった種々の経路で実施され得る。
【0080】
数回にわたる順次の抽出において、その後、ヘキサン/エタノールで細胞ライセートから油が抽出され得る。ヘキサン画分が次いで分離され、次いで、原油が単離されるようヘキサンが蒸発される。
【0081】
それ故、対象脂質化合物、好ましくはスクアレンを産生する方法は、バイオマスを収集するステップ、細胞抽出物もしくはライセートを調製するステップ、および、対象脂質化合物、好ましくはスクアレンを含む原油を抽出するステップを含む。
【0082】
本発明はまた、CNCM I−4469菌株もしくはスクアレン産生能力を保有するその変異体を含むこのバイオマスから調製された、対象脂質化合物、好ましくはスクアレンを含む粗もしくは精製油に関する。
【0083】
最後に、本発明は、医学分野、化粧品分野および食品分野向けの組成物の調製における本発明の方法のいずれか1つにより産生されたスクアレンまたはドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)、特にスクアレンなどの対象脂質化合物の使用に関する。それ故、本発明は、本発明の方法のいずれか1つによりスクアレンまたはドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)、特にスクアレンなどの対象脂質化合物を産生するステップ、次いで、医学分野、化粧品分野および食品分野向けの組成物を調製するステップを含む、医学分野、化粧品分野および食品分野向けの組成物の調製方法に関する。
【0084】
特に、本発明は、CNCM I−4469菌株もしくはスクアレン産生能力を保有するその変異体、培養もしくはその発酵後に得られたバイオマス、および、細胞抽出物もしくはそのライセートを含む産生物もしくは組成物に関する。好ましくは、この産生物またはこの組成物は、食品組成物もしくは食品、または、栄養補助剤である。これは、液体形態であっても固体形態であってもよい。特に、細胞または細胞抽出物もしくはそのライセートの凍結乾燥物が含有されている。この産生物またはこの組成物は、粉末、顆粒、ゲルカプセル、カプセルまたは錠剤の形態、好ましくはカプセルの形態であり得る。あるいは、産生物または組成物は液体形態であり、本発明の方法のいずれか1つにより得られた粗もしくは精製油を含む。
【0085】
本発明は、例示であると共に非限定的であることが意図される以下の実施例によってより明白に理解されるであろう。
【実施例】
【0086】
実施例1:シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469菌株によるスクアレンの産生の研究
シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469菌株の顕著なスクアレン産生能力を実証するために、この菌株を、文献におけるスクアレン産生に係る標準微細藻類菌株(すなわち、シゾキトリウムマングローヴァイ(Schizochytrium mangrovei)菌株(RCC 893、Roscoff Culture Collection、フランス))と比較した。
【0087】
前培養および培養培地
ここでは、実際の培養/産生フェーズに先だつ事前の前培養フェーズで微細藻類の発酵を行った。
【0088】
前培地は、以下の表Iに記載の組成を有していた。
【0089】
【表1】
【0090】
培養/産生培地の組成が以下の表IIにより記載されている。
【0091】
【表2】
【0092】
g/lでの濃縮ビタミン溶液の組成。
【0093】
【表2-1】
【0094】
g/lでの濃縮微量元素溶液の組成。
【0095】
【表2-2】
【0096】
発酵の実施
前培養は、2リットルのバッフル付エルレンマイヤーフラスコにおいて実施した。その構成成分を完全に溶解させた後に培地をろ過した。ペトリ皿中で培養した微細藻類のコロニーを採ることにより接種を行った(1つの10μlループの割合で)。インキュベーションを、25℃の温度で、110rpmで振盪しながら(オービタルシェーカで)48時間行った。
【0097】
バイオマスは沈殿する(または、壁に付着する)ため、エルレンマイヤーフラスコをよく振盪した後に300mlのサンプルを採取するよう注意する;前記300mlを用いて培養に接種した。
【0098】
実際の培養は、2リットルのバッフル付エルレンマイヤーフラスコの中で、25℃の温度で、110rpmで振盪しながら(オービタルシェーカで)、以下の方法で実施した。初期pHは>5.5であった。
【0099】
平衡グルコース消費で、培養時間は、シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469菌株については66時間、および、シゾキトリウムマングローヴァイ(Schizochytrium mangrovei)RCC 893菌株については138時間であり、シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469菌株の良好な増殖が反映された。
【0100】
以下の表IIIには、シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469菌株およびシゾキトリウムマングローヴァイ(Schizochytrium mangrovei)RCC 893菌株で得られた結果が記載されている。
【0101】
【表3】
【0102】
それ故、シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469菌株により100gの乾燥バイオマス当たり1.8gのスクアレン含有量を得ることが可能であり、これは、これらの微細藻類では未だかつて観察されたことのない含有量であったことに注目すべきである。標準菌株との比較において、この含有量は、半分の短さの培養時間で少なくとも4倍高いものである。
【0103】
しかも、シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469に係る発酵後に得られたバイオマスの分析では、17.6重量%のドコサヘキサエン酸(DHA)を含む合計で41.8重量%の脂肪酸を含有していたことが観察可能であった。
【0104】
【表3-1】
【0105】
シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)バイオマスにおけるスクアレンの定量化方法
バイオマスのビーズによる破壊およびクロロホルム/メタノールでの冷抽出後に、分析を25℃でプロトンNMRにより実施した。定量化は、以下に記載のとおり内標準により実施した。
【0106】
スペクトルを、400MHzで操作されるAvance III 400分光計(Bruker Spectrospin)で得た。
【0107】
バイオマスの破壊:およそ200mgの新鮮なバイオマスを正確に計量する。およそ1〜1.5cmのガラスビーズおよび0.1mlのメタノールを加える。チューブを気密封止し、ボルテックス(Vortex)ミキサにより少なくとも5分間撹拌する。
【0108】
冷抽出:およそ2mgのトリフェニルリン酸(TPP)、0.9mlのメタノールおよび2mlのクロロホルムを添加する。チューブを気密封止し、ボルテックス(Vortex)ミキサにより1分間撹拌する。冷蔵庫に入れる。沈殿による分離の後(最低で1時間)、透明な上方相を注意深く回収し、これをガラスジャーに移し、周囲温度で、窒素流下に乾燥するまで蒸発させる。乾燥した抽出物を0.5mlのCDClおよび0.1mlのCDODに溶解させ、これをNMR管に移す。
【0109】
スペクトルの記録:機器を適切に設定した後、溶剤抑制を行わず、回転させず、少なくとも15秒間の緩和時間で取得を行う。スペクトル窓は、7.25ppmのクロロホルムピークで較正されたスペクトルで少なくとも−1〜9ppmの間でなければならない。マニュアルモードにおけるフーリエ変換、位相補正およびベースラインの減算(指数関数的増幅を伴わない、LB=GB=0)後にスペクトルを用いる。
【0110】
シグナルの使用:7.05〜7.15ppmのクロロホルムシグナルを含有しないTPP未解像ピークを値100とする(9つのTPPプロトンとして計数)。1.55ppmでのスクアレンシグナルの面積を積分する(6つのプロトンとして一重項の計数)。
【0111】
計算および結果の表記:結果は、粗重量割合として表記した。
【数1】

ここで、
:1.55ppmでのスクアレンシグナルの面積。
TPP:積分したTPP未解像ピークのプロトンの数:9
TPP:計量したTPPの重量(グラム)
TPP:モル質量(グラム/TPP1モル)(MTPP=326g/mol)
:モル質量(グラム/スクアレン1モル)(M=410g/mol)
PE:新鮮なバイオマスの重量(グラム)
【0112】
実施例2:シゾキトリウム エスピー(Schizochytrium sp.)CNCM I−4469菌株の脂質プロファイルの研究
この菌株の脂質プロファイル(表IVを参照のこと)では、ドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)を含む他の対象脂質化合物の産生も可能とされることが判定可能であった。前記プロファイルは、発酵後に得たバイオマスから抽出した原油で生成した。
【0113】
【表4】
【0114】
【表4-1】
【0115】
脂質プロファイルの調製方法
脂肪酸を、メタノール塩酸混液とのエステル交換およびクロロホルムでの抽出後に、メチルエステルの形態でガスクロマトグラフィにより測定した。結果を%分布として表記する;分析は内標準方法により行う。
【0116】
tapfocusライナおよび水素炎イオン化検出器と共にスプリット−スプリットレスインジェクタを備えたクロマトグラフ(Varian 3800)を用いた。
【0117】
1mlのメタノール当たりほぼ正確に0.5mgのヘプタデカン酸メチルを含有する内部較正溶液を調製した。ヘプタデカン酸メチルはクロマトグラフ標準点とされる。
【0118】
ほぼ正確に30mgの予め乾燥させたサンプルを6mlチューブに計量した。1mlの内部較正溶液、次いで、2mlの3Nメタノール塩酸混液を、2つの計測ラインでピペットを用いて添加した。次いで、チューブに蓋をし、110℃に恒温化した乾燥浴に4時間入れた。
【0119】
冷却した後、約0.5mlの水および0.5mlの飽和塩化ナトリウム水溶液を添加し、1mlのクロロホルムで3回抽出した。クロロホルム相を6mlチューブに回収し、これらを硫酸ナトリウムを含有するカラムで乾燥させた。これらを窒素流下で約1mlに濃縮して注入した。
【0120】
各脂肪酸(i)の%分布を、ヘプタデカン酸メチルピークを排除したラウリン酸(C12:0)からDHA(C22:6Δ4c、7c、10c、13c、16c、19c)(端点を含む)におよぶクロマトグラム上で位置を特定したすべてのピークの面積の和に比したこの脂肪酸のピーク下の面積の比により得た。
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]