特許第6016896号(P6016896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016896ワーク、特に金属薄板を加工するプレスの形態の工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016896
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ワーク、特に金属薄板を加工するプレスの形態の工作機械
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/20 20060101AFI20161013BHJP
   B21D 28/04 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B21D28/20
   B21D28/04 A
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-511837(P2014-511837)
(86)(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公表番号】特表2014-515315(P2014-515315A)
(43)【公表日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2012059416
(87)【国際公開番号】WO2012160039
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】11167704.3
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フランク シュマウダー
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ヴルック
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ブライトリング
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/122294(WO,A1)
【文献】 特開平11−090555(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19954441(DE,A1)
【文献】 特開平10−328897(JP,A)
【文献】 米国特許第04535689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/20
B21D 28/04
B21D 28/34
B30B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工するプレスの形態の工作機械であって、行程駆動装置(13,113,213,313)を備え、
前記行程駆動装置(13,113,213,313)によって、プレス工具(11)が行程軸線(14)に沿って、該プレス工具(11)により加工したいワークに向かう方向及び/又はこれとは逆方向で移動可能であり、
前記行程駆動装置(13,113,213,313)は、前記行程軸線(14)に対して垂直に延びる位置決め軸線(16)に沿って位置決め可能であり、かつ
前記行程駆動装置(13,113,213,313)は、モータ式の駆動装置(17,117,217,317)と前記プレス工具(11)との間に設けられるくさび形伝動装置(21)を有し、該くさび形伝動装置(21)は、2つの駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)と、2つの被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)とを有し、それぞれ、1つの駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)と、1つの被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)とは、互いに対応するように配置されて、1つの伝動装置要素対を形成しており、少なくとも1つの伝動装置要素対の前記くさび形伝動装置要素(22,24;23,25)は、前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に対して所定のくさび角をなして傾いたくさび面(30,32;31,33)において互いに対向し、両伝動装置要素対のくさび面(30,32;31,33)は、逆向きに前記行程駆動装置(13)の位置決め軸線(16)に対して傾いており、前記行程軸線(14)に沿った前記プレス工具(11)の移動のために、前記モータ式の駆動装置(17,117,217,317)は、少なくとも1つの伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に沿って、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)に対して相対的に移動させ、かつ/又は前記位置決め軸線(16)に沿った前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決めのために、前記モータ式の駆動装置(17,117,217,317)は、両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)とともに前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に沿って同時に移動させる、ようにした工作機械において、
両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)は、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)に、それぞれのくさび面(30,32;31,33)において並行に向かい合っており、前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動装置(17,117,217,317)は、2つのモータ式の駆動ユニット(38,39)を有し、両モータ式の駆動ユニット(38,39)は、互いに独立的に制御可能であり、制御に際し、前記行程軸線(14)に沿った前記プレス工具(11)の移動のために少なくとも1つの伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)に対して相対的に移動させ、かつ/又は前記位置決め軸線(16)に沿った前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決めのために両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)とともに前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に沿って同時に移動させるように制御可能である、ことを特徴とする、ワークを加工するプレスの形態の工作機械。
【請求項2】
前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)は、少なくとも1つの伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)に対して相対的に、かつ両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)とともに前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に沿って同時に移動させるように制御可能である、請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)は、前記行程軸線(14)に沿った前記プレス工具(11)の移動のために、両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)に対して相対的に前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に沿って同時に移動させるように制御可能である、請求項1又は2記載の工作機械。
【請求項4】
前記駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)を備え、該モータ式の駆動ユニット(38,39)により駆動される駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)は、前記モータ式の駆動ユニット(38,39)の制御に基づいて、行程軸線(14)での前記プレス工具(11)の移動のために前記被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)に対して相対的に動かされ、かつ/又は前記位置決め軸線(16)に沿った前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決めのために前記被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)を前記位置決め軸線(16)に沿って連行する、請求項1から3までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項5】
前記モータ式の駆動ユニット(38,39)の一方は、前記行程軸線(14)に沿った前記プレス工具(11)の移動のために、少なくとも1つの伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)に対して相対的に移動させ、かつ前記モータ式の駆動ユニット(38,39)の他方は、前記位置決め軸線(16)に沿った前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決めのために、両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)を、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)とともに、かつ前記行程軸線(14)に沿った前記プレス工具(11)の移動のための前記モータ式の駆動ユニット(38,39)を伴って、前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に沿って同時に移動させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項6】
一方の伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(23)は、2つの伝動装置要素部分(46,47)を有し、両伝動装置要素部分(46,47)は、前記行程駆動装置(13,113,213,313)の行程軸線(14)及び位置決め軸線(16)により形成される運動平面に対して垂直に互いにずらされて配置されて、中間室(48)を形成しており、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素(25)に、該当するくさび面(31,33)において対向し、かつ他方の伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(22)は、前記運動平面に対して垂直に見て前記伝動装置要素部分(46,47)の中間室(48)の高さに配置されており、単数又は複数の前記駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)が前記行程軸線(14)に沿った前記プレス工具(11)の運動のために実施する、前記行程駆動装置(13,113,213,313)の位置決め軸線(16)に沿った移動時、前記伝動装置要素部分(46,47)の中間室(48)内に収容されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項7】
前記一方の伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素(23)は、2辺を有するU形に形成されており、前記運動平面に対して平行に配向されかつ前記運動平面に対して垂直に互いに間隔を置いた辺により、前記中間室(48)を置いて互いにずらされて配置された前記伝動装置要素部分(46,47)を形成している、請求項1から6までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項8】
前記被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)は、前記行程軸線(14)に沿って可動に案内されるラム(12)に設けられており、該ラム(12)によって、前記プレス工具(11)は、前記行程軸線(14)に沿って可動である、請求項1から7までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項9】
前記ラム(12)は、該ラム(12)に設けられた被動側のくさび形伝動装置要素(24,25)を介して前記行程軸線(14)に沿って案内されている、請求項記載の工作機械。
【請求項10】
前記ラム(12)は、前記プレス工具(11)のための工具収容部を有し、前記ラム(12)には、回転駆動装置(28)が設けられており、該回転駆動装置(28)によって、前記工具収容部は、前記行程軸線(14)周りに回転可能であり、これにより該行程軸線(14)周りの様々な回転位置に調節可能である、請求項8又は9記載の工作機械。
【請求項11】
前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)の少なくとも1つは、スピンドルドライブとして形成されているか、又は前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)の少なくとも1つは、リニアモータとして形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項12】
前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)は、前記駆動側のくさび形伝動装置要素(22,23)の1つとともに前記行程駆動装置(13,113)の位置決め軸線(16)に沿って連動するそれぞれ1つの伝動装置側の駆動装置を有し、両モータ式の駆動ユニット(38,39)の伝動装置側の駆動装置は、両モータ式の駆動ユニット(38,39)に共通の、前記工作機械の支持構造に設けられた1つの支持構造側の駆動装置と協働する、請求項1から11までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項13】
前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)は、スピンドルドライブとして形成されており、該スピンドルドライブは、スピンドルナット(41,43;141,143)を有するそれぞれ1つの伝動装置側の駆動装置と、該伝動装置側の駆動装置のスピンドルナット(41,43;141,143)が被嵌される、前記行程駆動装置(13)の位置決め軸線(16)に沿って延びる1つの共通の駆動スピンドル(18)の形態の、1つの共通の支持構造側の駆動装置とを有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項14】
スピンドルドライブとして形成される駆動ユニット(38,39)の少なくとも1つは、スピンドルナット(41,43)に対して付加的に駆動モータ(40,42)を有する伝動装置側の駆動装置を有し、前記駆動モータ(40,42)は、対応するように配置されたスピンドルナット(41,43)を前記駆動スピンドル(18)に沿って駆動する、請求項1から13までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項15】
前記くさび形伝動装置要素(22,23,24,25)のためのモータ式の駆動ユニット(38,39)は、リニアモータとして形成されており、伝動装置側の駆動装置として、それぞれ1つの一次部分を有し、共通の支持構造側の駆動装置として、前記行程駆動装置(13)の位置決め軸線(16)に沿って延びる1つの共通の二次部分を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項16】
前記工作機械は、支持構造として、フレーム内室(7)を囲繞するO形の機械フレーム(2)を有し、前記行程駆動装置(13,113,213,313)は、前記フレーム内室(7)内に配置されており、前記機械フレーム(2)に、該機械フレーム(2)に沿って延びる位置決め軸線(16)に沿って位置決め可能に案内されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項17】
前記工作機械は、金属薄板を加工するプレスとして形成される、請求項1から16までのいずれか1項記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク、特に金属薄板を加工するプレスの形態の工作機械であって、行程駆動装置を備え、
行程駆動装置によって、プレス工具が行程軸線に沿って、プレス工具により加工したいワークに向かう方向及び/又はこれとは逆方向で移動可能であり、
行程駆動装置は、行程軸線に対して垂直に延びる位置決め軸線に沿って位置決め可能であり、かつ
行程駆動装置は、モータ式の駆動装置とプレス工具との間に設けられるくさび形伝動装置を有し、くさび形伝動装置は、2つの駆動側のくさび形伝動装置要素と、2つの被動側のくさび形伝動装置要素とを有し、それぞれ、1つの駆動側のくさび形伝動装置要素と、1つの被動側のくさび形伝動装置要素とは、互いに対応するように配置されて、1つの伝動装置要素対を形成しており、少なくとも1つの伝動装置要素対のくさび形伝動装置要素は、行程駆動装置の位置決め軸線に対して所定のくさび角をなして傾いたくさび面において互いに対向し、両伝動装置要素対のくさび面は、逆向きに行程駆動装置の位置決め軸線に対して傾いており、行程軸線に沿ったプレス工具の移動のために、モータ式の駆動装置は、少なくとも1つの伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素を行程駆動装置の位置決め軸線に沿って、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素に対して相対的に移動させ、かつ/又は位置決め軸線に沿った行程駆動装置の位置決めのために、モータ式の駆動装置は、両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素を同時に、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素とともに行程駆動装置の位置決め軸線に沿って移動させる、
ようにした工作機械に関する。
【0002】
この種の工作機械は、国際公開第2007/122294号パンフレットにおいて公知である。この刊行物は、複数の打抜き加工用パンチを水平方向で並べた水平のワーク支持台を有するパンチプレスを開示している。打抜き加工用パンチの上方では、打抜き加工用パンチのために設けられた行程駆動装置が、打抜き加工用パンチの列に沿って移動可能となっている。行程駆動装置の一部は、打抜き加工用パンチの列に沿って移動可能なラムキャリッジである。ラムキャリッジには、ラムが鉛直方向で可動に案内されている。ラムの下端は、打抜き加工用パンチに面している。ラムの上面には、くさび形伝動装置(Keilgetriebe)の2つの伝動装置くさびが設けられている。両伝動装置くさびは、一体化されて、1つの構成ユニットをなしたくさびアッセンブリを形成している。このくさびアッセンブリは、その上面において両伝動装置くさびのくさび面によって画成されている。両くさび面は、逆向きに水平に対して傾いており、ラム側のくさびアッセンブリにおいて屋根状の双くさび面を形成している。ラム側のくさびアッセンブリには、鉛直方向で、駆動側のくさびアッセンブリが対向している。駆動側のくさびアッセンブリも、逆向きに水平に対して傾き、屋根状に突き合わされたくさび面を有する2つの伝動装置くさびからなる構成ユニットとして形成されている。モータ式のスピンドルドライブによって、駆動側のくさびアッセンブリは、打抜き加工用パンチの列に沿って、ひいてはラムキャリッジの移動方向で移動可能である。屋根状の双くさび面の近傍において、駆動側のくさびアッセンブリには、凸部が下向きに突出している。この凸部に対応するように、ラム側のくさびアッセンブリのベースプレートには、凹部が配置されている。駆動側の凸部とラム側の凹部とは、選択的に嵌脱可能である。
【0003】
打抜き加工用パンチの列から選択された打抜き加工用パンチが、ワーク加工のために作業ストロークを実施すべきであり、ラムキャリッジに案内されているラムが、この選択された打抜き加工用パンチから離れて配置されている場合、まずラムを水平方向で、ラムにより操作すべき打抜き加工用パンチの上方位置へ移動させなければならない。この目的のために、駆動側のくさびアッセンブリをモータ式のスピンドルドライブによって打抜き加工用パンチの列に沿って、駆動側のくさびアッセンブリから下向きに突出した凸部が、ラム側のくさびアッセンブリのベースプレートに設けられた凹部の高さに配置されている位置へ移動させる。その際、ベースプレートはもちろん、ラム側のくさびアッセンブリ自体も、まずは鉛直方向で、駆動側の凸部がラム側のくさびアッセンブリのベースプレートを十分に乗り越えることができる程度まで下げられている。次に、ラム側のくさびアッセンブリ及びそのベースプレートの行程運動によって、ラム側の凹部と駆動側の凸部とを係合させる。そこで、駆動側のくさびアッセンブリをモータにより駆動して移動させると、駆動側のくさびアッセンブリは、ラム側のくさびアッセンブリのベースプレートを介してラム側のくさびアッセンブリ及びラムキャリッジ全体を移動方向に連行する。この移動は、ラムキャリッジのラムが、操作したい打抜き加工用パンチ上方の目標位置に到達すると直ちに終了する。ラムの目標位置をロックするため、ラムキャリッジをガイドに固定する。次に、駆動側のくさびアッセンブリに設けられた凸部を、ラム側のくさびアッセンブリのベースプレートに設けられた凹部から抜くことができるようになるまで、ラム側のくさびアッセンブリ及びそのベースプレートを下降させる。ラム側のくさびアッセンブリ及びそのベースプレートの下降運動にもかかわらず、ラムはその下面において、依然として、ラムに対応するように配置された打抜き加工用パンチから間隔を置いている。そこで、駆動側のくさびアッセンブリをモータによりその移動方向で駆動すると、駆動側のくさびアッセンブリは、移動方向でロックされたラムキャリッジに設けられたラム側のくさびアッセンブリに対して相対的に移動する。駆動側のくさびアッセンブリがラム側のくさびアッセンブリに対して相対的に移動すると、両側のくさび面の協働の結果、ラムキャリッジに鉛直方向で案内されているラムは、下方に運動し、作業行程を実施する。その際、ラムは、ラムに鉛直方向で対向する打抜き加工用パンチに力を加え、打抜き加工用パンチは、ワークの所望の打抜き加工を実施する。
【0004】
本発明の課題は、従来技術を単純化することである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載の本発明に係る工作機械によって解決される。
【0006】
本発明の場合、駆動側のくさび形伝動装置要素は、同時に、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素に、該当するくさび面において対向している。さらに、本発明におけるくさび形伝動装置のくさび形伝動装置要素のためのモータ式の駆動装置は、2つのモータ式の駆動ユニットを有し、両モータ式の駆動ユニットは、互いに独立的に制御可能であり、制御に際し、行程軸線に沿ったプレス工具の移動のために少なくとも1つの伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素を、対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素に対して相対的に移動させ、かつ/又は位置決め軸線に沿った行程駆動装置の位置決めのために両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素を同時に、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素とともに行程駆動装置の位置決め軸線に沿って移動させるように制御可能である。このような構成下にあっては、モータ式の駆動ユニットを適当に制御するだけで、行程駆動装置が位置決め運動でもって位置決め軸線に沿って移動するか、行程駆動装置がプレス工具を行程方向で移動させるか、又は行程駆動装置の位置決め運動とプレス工具の行程運動とが互いに重ねられるかを決定することができる。したがって、本発明に係る工作機械では、同一のモータ式の駆動装置をプレス工具の2軸の運動のために利用することが可能である。
【0007】
請求項1に係る発明の特別な態様は、従属請求項2乃至16に係る発明である。
【0008】
本発明の請求項2に係る態様において、本発明におけるくさび形伝動装置のくさび形伝動装置要素のためのモータ式の駆動ユニットは、同時に、少なくとも1つの伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素と被動側のくさび形伝動装置要素とを相対的に移動させるとともに、両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素と被動側のくさび形伝動装置要素とを行程駆動装置の位置決め軸線に沿って一緒に移動させるように制御可能である。モータ式の駆動ユニットのこの運転形式から、行程駆動装置の位置決め運動と、行程方向でのプレス工具の駆動のために利用可能な行程駆動運動との重畳が、結果として生じる。
【0009】
本発明の別の態様では、請求項3に示すように、両伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素を同時に、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素に対して相対的に行程駆動装置の位置決め軸線に沿って移動させる可能性が存在する。こうして、行程軸線に沿った、特に作業行程の行程方向での最大の駆動力をプレス工具に提供することができる。
【0010】
互いに独立的に制御可能な両モータ式の駆動ユニットの、くさび形伝動装置要素に対する対応配置に関して、本発明では、複数の可能性が存在する。
【0011】
請求項4によれば、両モータ式の駆動ユニットは、駆動側のくさび形伝動装置要素のために設けられている。モータ式の駆動ユニットの運転形式に応じて、駆動側のくさび形伝動装置要素が、駆動側のくさび形伝動装置要素に対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素を連行して、行程駆動装置を位置決め方向で位置決めするか、又は行程駆動装置の位置決め運動に対して択一的にか、若しくはこの位置決め運動に重畳させる形で、駆動側のくさび形伝動装置要素と、駆動側のくさび形伝動装置要素に対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素との間の相対運動が生じ、この相対運動の結果、プレス工具を行程軸線に沿って駆動することができる。したがって、本発明におけるくさび形伝動装置のくさび形伝動装置要素は、複数の機能を担っている。
【0012】
本発明の請求項5に係る態様では、両モータ式の駆動ユニットのうちの一方のモータ式の駆動ユニットが、プレス工具を行程軸線に沿って移動させ、他方のモータ式の駆動ユニットが、行程駆動装置を位置決め軸線に沿って位置決めする。
【0013】
本発明に係る工作機械のくさび形伝動装置の、請求項6及び7に記載の構成は、くさび形伝動装置の構造形式はコンパクトなまま、負荷の最適な伝達を可能にする。一方の伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素を、互いに間隔を置いた2つの伝動装置要素部分に二分割した結果、この駆動側のくさび形伝動装置要素の支持のために、広い基礎が提供される。他方の伝動装置要素対の駆動側のくさび形伝動装置要素は、両伝動装置要素部分間に進入可能であるので、くさび形伝動装置は、駆動側のくさび形伝動装置要素の運動方向で比較的小型に形成される。
【0014】
アッセンブリ全体の可及的簡単な構造的な構成のために、本発明の請求項8に係る態様では、被動側のくさび形伝動装置要素が、プレス工具を操作するために働くラムに設けられている。
【0015】
本発明の別の好ましい態様において、ラムは、ラムに設けられた被動側のくさび形伝動装置要素を介して行程軸線に沿って案内されている(請求項9)。
【0016】
請求項10は、本発明に係る工作機械の一態様に関し、本態様では、ラムにプレス工具のための工具収容部と回転駆動装置とが設けられており、回転駆動装置によって、ラムに設けられた工具収容部が、行程軸線周りに回転可能であり、これにより行程軸線周りの様々な回転位置に調節可能である。行程軸線周りの工具収容部の回転調節は、特に、プレス工具により実施されるワーク加工の方向を規定するために必要である。
【0017】
本発明における駆動装置のモータ式の駆動ユニットのために、種々異なる構造形態が可能である。本発明において好適であるのは、スピンドルドライブ及び/又はリニアモータである(請求項11)。
【0018】
可及的少ない機械要素を用いて可及的多くの機能を実現するという本発明の課題設定には、本発明の請求項12に係る態様が特に合目的である。請求項12に係る工作機械において、両伝動装置要素対のモータ式の駆動ユニットは、1つの共通の支持構造側の駆動装置を有している。
【0019】
くさび形伝動装置要素のためのコンパクトな駆動装置の本発明における好ましい態様は、請求項13乃至15に係る発明である。
【0020】
請求項13及び14に係る発明では、伝動装置側の駆動装置としてスピンドルナットと、スピンドルナットのための駆動モータとを有し、かつ共通の支持構造側の駆動装置として1つの共通の駆動スピンドルを有するスピンドルドライブが設けられている。駆動モータとして、特にトルクモータが考えられる。駆動スピンドル上に被嵌されるスピンドルナットの駆動装置は、例えばボールねじ機構(Kegelgewindetrieb)、台形ねじ機構(Trapezgewindetrieb)又はローラねじあるいは遊星ねじ機構(Rollen‐ bzw. Planetengewindetrieb)として形成されていてよい。
【0021】
請求項15に係る発明では、本発明に係るモータ式の駆動装置のモータ式の駆動ユニットが、リニアモータとして形成されている。この場合、リニアモータとして、原則、同期リニアモータ及び非同期リニアモータが考えられる。しかし、より高い効率及びより高い送り力に基づいて、同期リニアモータが好適である。いずれにせよ、駆動側のくさび形伝動装置要素には、それぞれのリニアモータの一次部分が設けられている。支持構造には、両モータ式の駆動ユニットの共通の支持構造側の駆動装置として、行程駆動装置の位置決め軸線に沿って延びる二次部分が取り付けられている。
【0022】
スピンドルドライブ及びリニアモータの他に、本発明におけるモータ式の駆動装置のためのモータ式の駆動ユニットとして、例えばラックドライブ又はチェーンドライブが考えられる。
【0023】
行程駆動装置は、行程軸線に対して垂直に延びる位置決め軸線に沿った可動性の結果、行程駆動装置に設けられたプレス工具でもって特に、加工したいワークの加工部位へと移動可能である。したがって、ワーク及びプレス工具相互の位置決めのために、位置決め軸線の方向でのワークの運動は不要であるか、あるいは比較的小さな運動が必要であるにすぎない。この理由から、ワークのためには、位置決め軸線の方向で、比較的小さな可動範囲さえ提供されていればよい。この状況は、加工したいワークの必要な可動範囲をO形の機械フレーム内に納める可能性を開く(請求項16)。機械フレームのこのような幾何学形状は、特に本発明のような形式のプレスにとって有利である。高いプレス力が導入されても、O形の機械フレームは、精々のところ極僅かに変形するにすぎない。ワーク運動のための従来慣用の座標ガイドの使用は、行程駆動装置の位置決め可能性にもかかわらず、可能である。座標ガイドは、ワーク運動、好ましくは位置決め軸線及び行程軸線に対して垂直なワーク運動、さらには位置決め軸線に沿ったワーク運動を担うことができる。
【0024】
以下に、本発明について、一実施の形態の概略図を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】打抜き加工用パンチのための行程駆動装置を有するパンチプレスの形態の工作機械であって、行程駆動装置のための第1の構造形態のモータ式の駆動装置を含む工作機械を示す図である。
図2図1に示した行程駆動装置及びモータ式の駆動装置の原理的な構造を著しく概略的に示す図である。
図3図1に示した行程駆動装置のくさび形伝動装置の一伝動装置要素を示す図である。
図4図1に示した行程駆動装置のくさび形伝動装置の、図3に示した伝動装置要素とは別の伝動装置要素を示す図である。
図5図1に示した行程駆動装置のくさび形伝動装置の、図3及び4に示した伝動装置要素とは別の伝動装置要素を示す図である。
図6図1に示したパンチプレスを示す図であって、行程駆動装置がとある機能状態にある図である。
図7図1に示したパンチプレスを示す図であって、行程駆動装置が図6とは異なる機能状態にある図である。
図8図1に示したパンチプレスを示す図であって、行程駆動装置が図6及び7とは異なる機能状態にある図である。
図9】行程駆動装置のための第2の構造形態のモータ式の駆動装置を含む、行程駆動装置の原理的な構造を著しく概略的に示す図である。
図10】行程駆動装置のための第3の構造形態のモータ式の駆動装置を含む、行程駆動装置の原理的な構造を著しく概略的に示す図である。
図11】行程駆動装置のための第4の構造形態のモータ式の駆動装置を含む、行程駆動装置の原理的な構造を著しく概略的に示す図である。
【0026】
図1に示すパンチプレス1として形成される工作機械は、支持構造としてO形の機械フレーム2を有している。機械フレーム2は、2つの水平のフレーム辺3,4と、2つの鉛直のフレーム辺5,6とを有し、フレーム内室7を囲繞している。フレーム内室7は、パンチプレス1の作業領域を形成している。
【0027】
パンチプレス1によって金属薄板の加工が行われる。金属薄板は、図面を簡略化するために図示していないが、加工の目的でフレーム内室7内に配置される。その際、加工したい金属薄板は、フレーム内室7内に設けられたワーク支持台8上に載置される。ワーク支持台8の切り欠かれた領域では、機械フレーム2の下側の水平のフレーム辺4に、従来慣用の構造形態の打抜き加工用ダイ9として形成される下側のプレス工具が支承されている。打抜き加工用ダイ9には、慣用の形式でダイ開口が設けられている。
【0028】
打抜き加工用ダイ9のダイ開口内には、ワークの打抜き加工時、打抜き加工用パンチ11として形成される上側のプレス工具が進入する。打抜き加工用パンチ11及び打抜き加工用ダイ9の代わりに、例えばワークを変形加工する曲げ加工用パンチ及び曲げ加工用ダイが使用されてもよい。
【0029】
打抜き加工用パンチ11は、ラム12の下端に設けられた工具収容部内に固定されている。ラム12は、行程駆動装置13の一部である。行程駆動装置13によって打抜き加工用パンチ11は、行程軸線14に沿った行程方向(双方向矢印)で移動可能である。行程軸線14は、パンチプレス1の、図1では概略的に示した数値制御部15の座標系のZ軸方向で延びている。行程軸線14に対して垂直に、行程駆動装置13は、位置決め軸線16に沿って双方向矢印の方向で移動可能である。位置決め軸線16は、数値制御部15の座標系のY軸方向で延びている。位置決め軸線16に沿った行程駆動装置13の運動時、打抜き加工用ダイ9及びワーク支持台8は、詳細は示さないモータ式の駆動装置によって行程駆動装置13と同期的に移動する。打抜き加工用ダイ9のための行程駆動装置も可能である。
【0030】
行程軸線14に沿ったラム12の運動と、位置決め軸線16に沿った行程駆動装置13の位置決めとは、スピンドル駆動アッセンブリ17として形成される1つのモータ式の駆動装置によって実施される。スピンドル駆動アッセンブリ17は、位置決め軸線16の方向で延びていて、機械フレーム2に不動に結合されている駆動スピンドル18を有している。行程駆動装置13は、位置決め軸線16に沿って移動する際、上側の水平のフレーム辺3の計3つの案内レール19に案内される。これらの案内レール19のうち、図1には1つの案内レール19が看取可能である。その他の2つの案内レール19は、看取可能な案内レール19に対して平行に延びており、この看取可能な案内レール19から数値制御部15の座標系のX軸方向に間隔を置いている。これらの案内レール19に沿って、行程駆動装置13の案内キャリッジ20が走行する。案内レール19及び案内キャリッジ20相互の係合部は、案内レール19と案内キャリッジ20との間の結合部が、鉛直方向で働く負荷も受容できるように形成されている。これに応じて、行程駆動装置13は、案内キャリッジ20と案内レール19とを介して機械フレーム2に懸装されている。
【0031】
行程駆動装置13のその他の主要な構成要素は、くさび形伝動装置21である。くさび形伝動装置21の大部分は、図1では隠れて見えない。
【0032】
くさび形伝動装置21の原理的な構造及び原理的な機能形式は、図2に略示した。
【0033】
図2に示すように、くさび形伝動装置21は、2つの駆動側のくさび形伝動装置要素22,23と、2つの被動側のくさび形伝動装置要素24,25とを有している。後者、すなわち2つの被動側のくさび形伝動装置要素24,25は、構造的にまとめられて、被動側の双くさびあるいはダブルウェッジ26として1つの構成ユニットを形成している。
【0034】
被動側の双くさび26には、ラム12が行程軸線14周りに回転可能に支承されている。モータ式の回転駆動装置28は、被動側の双くさび26内に格納されており、ラム12を必要なときに行程軸線14周りに動かして調節する。その際、ラムの左回りの回転も、右回りの回転も可能である(図2の双方向矢印)。ラム支承部29は、図2にやはり概略的に示してある。ラム支承部29は、一方では、行程軸線14周りのラム12の低摩擦の回転運動を可能にし、他方では、ラム12を軸方向で支持し、これに応じて、ラム12に行程軸線14の方向で作用する負荷を被動側の双くさび26へと伝達する。
【0035】
被動側の双くさび26は、上向きに、被動側のくさび形伝動装置要素24のくさび面30と、被動側のくさび形伝動装置要素25のくさび面31とによって画成されている。被動側のくさび形伝動装置要素24,25のくさび面30,31には、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23のくさび面32,33が対向している。後で詳述する、図2に著しく概略的に示した長手方向ガイド34,35を介して、駆動側のくさび形伝動装置要素22と被動側のくさび形伝動装置要素24とは、Y軸方向、すなわち行程駆動装置13の位置決め軸線16の方向で、互いに相対的に可動に案内され、駆動側のくさび形伝動装置要素23と被動側のくさび形伝動装置要素25とは、Y軸方向、すなわち行程駆動装置13の位置決め軸線16の方向で、互いに相対的に可動に案内されている。駆動側のくさび形伝動装置要素22と被動側のくさび形伝動装置要素24とは、1つの伝動装置要素対を形成し、駆動側のくさび形伝動装置要素23と被動側のくさび形伝動装置要素25とは、1つの伝動装置要素対を形成している。図示した関係とは異なり、互いに対応するように配置されたくさび形伝動装置要素のそれぞれ一方のみが、位置決め軸線16に対して傾いたくさび面を有するようにした伝動装置要素対を有するくさび形伝動装置も可能である。
【0036】
駆動側のくさび形伝動装置要素22,23の上面に設けられた長手方向ガイド36,37は、機械フレーム2に設けられた前述の案内レール19と、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23に取り付けられている、行程駆動装置13の案内キャリッジ20とにより形成される。
【0037】
駆動側のくさび形伝動装置要素22は、モータ式の駆動ユニット38を有し、駆動側のくさび形伝動装置要素23は、モータ式の駆動ユニット39を有している。両駆動ユニット38,39は、相俟って1つのスピンドル駆動アッセンブリ17を形成している。
【0038】
モータ式の駆動ユニット38,39において、図1に示した駆動スピンドル18は、機械フレーム2に支承された支持構造側の駆動装置として共有されている。モータ式の駆動ユニット38の伝動装置側の駆動装置として、駆動スピンドル18に、電動式の駆動モータ40と、この電動式の駆動モータ40によって駆動され、駆動スピンドル18上に被嵌されるスピンドルナット41とが対応配置されている(図3)。モータ式の駆動ユニット39は、伝動装置側の駆動装置として、電動式の駆動モータ42とスピンドルナット43とを有している(図4)。電動式の駆動モータ40及びスピンドルナット41は、駆動側のくさび形伝動装置要素22とともに位置決め軸線16に沿って移動する。電動式の駆動モータ42及びスピンドルナット43は、位置決め軸線16に沿った運動のために駆動側のくさび形伝動装置要素23に連結されている。
【0039】
パンチプレス1の全ての主要な機能ユニットと同様に、くさび形伝動装置21のモータ式の駆動ユニット38,39も、パンチプレス1の数値制御部15によって制御される。駆動側のくさび形伝動装置要素22,23の制御のためにも、被動側の双くさび26の制御のためにも、適当な距離測定システムが設けられている。
【0040】
図2にやはり看取可能であるように、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23は、同時に、それぞれ対応するように配置された被動側のくさび形伝動装置要素24,25に、くさび面30,32あるいはくさび面31,33において対向している。
【0041】
駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が位置決め軸線16に沿って互いに接近するように、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23に設けられた電動式の駆動モータ40,42を運転すると、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23と被動側のくさび形伝動装置要素24,25との間に相対運動が生じる。この相対運動の結果、被動側の双くさび26は、被動側の双くさび26に支承されたラム12とともに行程軸線14に沿って下降する。ラム12に取り付けられた打抜き加工用パンチ11は、作業行程を実施し、その際、ワーク支持台8上に支承されたワークを加工する。
【0042】
電動式の駆動モータ40,42を適当に制御して、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23を被動側のくさび形伝動装置要素24,25に対して相対的に、しかもその際に互いに離間する方向で移動させると、被動側の双くさび26と、双くさび26に支承されたラム12とは、打抜き加工用パンチ11とともに行程軸線14に沿って上昇する。
【0043】
駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が、電動式の駆動モータ40,42の適当な制御に基づいて、同一方向で位置決め軸線16に沿って移動すると、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23は、被動側の双くさび26をラム12及び打抜き加工用パンチ11とともに位置決め軸線16に沿って連行する。これにより、行程駆動装置13と、行程駆動装置13に伴われるラム12及び打抜き加工用パンチ11とは、Y軸方向で位置決めされる。
【0044】
位置決め軸線16に沿った駆動側のくさび形伝動装置要素22,23の移動に際し、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23間の、位置決め軸線16の方向での間隔が不変であれば、ラム12及び打抜き加工用パンチ11は、位置決め軸線16の方向でのみ位置を変え、行程軸線14の方向では位置を変化させない。
【0045】
位置決め軸線16に沿った位置決め運動と、行程軸線14に沿った行程運動との重畳も可能である。この目的のためには、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が同一方向で、しかも同時に互いに相対的かつ被動側のくさび形伝動装置要素24,25に対して相対的に位置決め軸線16に沿って移動するように、電動式の駆動モータ40,42を制御すればよい。
【0046】
図3は、駆動側のくさび形伝動装置要素22を、図4は、駆動側のくさび形伝動装置要素23を、図5は、被動側のくさび形伝動装置要素24,25、あるいは両被動側のくさび形伝動装置要素24,25により形成される被動側の双くさび26を、それぞれ詳細に示している。
【0047】
図3には、機械フレーム2に設けられた案内レール19と協働して図2に示した長手方向ガイド36を形成する、駆動側のくさび形伝動装置要素22の上面に設けられた案内キャリッジ20と、駆動側のくさび形伝動装置要素22の下面に設けられた案内レール44とが看取可能である。モータ式の駆動ユニット38の電動式の駆動モータ40とスピンドルナット41とは、1つの共通のハウジング内に配置されており、図3では隠れて見えない。電動式の駆動モータ40は、トルクモータとして形成されており、ロータでもって直接スピンドルナット41に取り付けられている。
【0048】
駆動側のくさび形伝動装置要素22に設けられた案内レール44は、組み付けられた状態では、図5に示した被動側の双くさび26に設けられた案内キャリッジ45と係合する。案内レール44と案内キャリッジ45とは、相俟って、図2に概略的に示した長手方向ガイド34を形成している。長手方向ガイド34を介して、駆動側のくさび形伝動装置要素22と被動側の双くさび26とは、鉛直方向で互いに支持されている。
【0049】
駆動側のくさび形伝動装置要素23は、図4に示したようにU形をなしており、そのU字の2辺でもって伝動装置要素部分46,47を形成している。伝動装置要素部分46,47は、対向しており、中間室48を形成している。
【0050】
伝動装置要素部分46,47の上面には、図2に概略的に示した長手方向ガイド37の、機械フレーム2の案内レール19に対応するように配置された案内キャリッジ20が取り付けられている。伝動装置要素部分46,47の下面には、案内レール49が設けられている。案内レール49は、被動側の双くさび26の上面に設けられた案内キャリッジ50(図5)内を走行し、案内キャリッジ50と相俟って、図2に示した長手方向ガイド35を形成している。長手方向ガイド35を介して、駆動側のくさび形伝動装置要素23と被動側の双くさび26とは、鉛直方向で互いに支持されている。電動式の駆動モータ42とスピンドルナット43とを有する、駆動側のくさび形伝動装置要素23のモータ式の駆動ユニット39の伝動装置側の駆動装置は、構造的に、駆動側のくさび形伝動装置要素22の伝動装置側の駆動装置に相当する。
【0051】
駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が位置決め軸線16に沿って配置されている互いの相対位置に基づいて、行程軸線14に沿ったラム12及び打抜き加工用パンチ11の様々な高さ位置が生じる。様々な高さ位置は、図6乃至8に詳細に示した。
【0052】
図6で見て、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23は、位置決め軸線16に沿って最大に離間している。これに応じて、ラム12及び打抜き加工用パンチ11は、行程軸線14に沿ってその上側の終端位置を占めている。
【0053】
図6に示した状態から出発して、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23を位置決め軸線16に沿って互いに接近させていくと、ラム12は、打抜き加工用パンチ11とともに行程軸線14に沿って下降し、その際、例えば図7に示すような位置を取る。
【0054】
駆動側のくさび形伝動装置要素22,23の逆方向の運動を継続すると、図8に示した状態が生じる。図8では、ラム12に取り付けられた打抜き加工用パンチ11は、打抜き加工用ダイ9にほぼ到達している。駆動側のくさび形伝動装置要素22,23をさらに逆向きに移動させると、打抜き加工用パンチ11は、最終的に打抜き加工用ダイ9内に進入する。
【0055】
位置決め軸線16に沿った駆動側のくさび形伝動装置要素22,23のこの逆向きの運動時、駆動側のくさび形伝動装置要素22は、ますます、U形に形成された駆動側のくさび形伝動装置要素23の伝動装置要素部分46,47の中間室48内に進入する。被動側の双くさび26と駆動側のくさび形伝動装置要素22,23との間に設けられた長手方向ガイド34,35は、行程軸線14に沿ったラム12の運動時、ラム12を案内する役割を果たす。ラム12の行程運動のためにそれ以外の案内装置は設けられていない。ラム12の、図6乃至8に看取可能な行程運動は、位置決め軸線16に沿った行程駆動装置13の位置決め運動と組み合わされていてもよい。
【0056】
図9、10及び11は、それぞれ、上で詳述した行程駆動装置13の代わりにパンチプレス1に設けられてもよい行程駆動装置113,213,313を示している。スピンドル駆動アッセンブリ17を有する行程駆動装置13とは、行程駆動装置113,213,313は、主として、モータ式の駆動装置として設けられているスピンドル駆動アッセンブリ117,217,317の構成の面で相違する。行程駆動装置13と行程駆動装置113,213,313との一致点は、特に使用されるくさび形伝動装置21に関する。
【0057】
さらに、図9に示したスピンドル駆動アッセンブリ117は、スピンドル駆動アッセンブリ117のモータ式の駆動ユニット38,39も、支持構造側の駆動装置として機能し位置決め軸線16に沿って延びる1つの共通の駆動スピンドル18を有するスピンドルドライブとして形成されている点で、スピンドル駆動アッセンブリ17と一致する。駆動スピンドル18は、その全長にわたって、一様な雄ねじ山を有しており、電動式の駆動モータ142により駆動スピンドル18の長手方向軸線周りに駆動可能である。伝動装置側の駆動装置として、図9に示したモータ式の駆動ユニット38,39の場合、電動式の駆動モータ140及びスピンドルナット141が、駆動側のくさび形伝動装置要素22に設けられ、スピンドルナット143が、駆動側のくさび形伝動装置要素23に設けられている。スピンドルナット143は、駆動側のくさび形伝動装置要素23に、駆動スピンドル18の回転軸線に関して相対回動不能に取り付けられている。スピンドルナット141は、駆動側のくさび形伝動装置要素22に、駆動スピンドル18の回転軸線周りに回転可能に支承されている。駆動モータ140は、スピンドルナット141を駆動スピンドル18の回転軸線周りに駆動可能であるが、スピンドルナット141のこの種の回転運動を阻止することもできる。
【0058】
くさび形伝動装置21あるいは打抜き加工用パンチ11が位置決め軸線16に沿って移動することが望まれる場合、駆動スピンドル18は、駆動モータ142により回転される。駆動スピンドル18に噛み合ったスピンドルナット141,143は、駆動スピンドル18の回転に基づいて同一方向で位置決め軸線16に沿って移動し、その際、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23と、両駆動側のくさび形伝動装置要素22,23を介して、被動側のくさび形伝動装置要素24,25により形成される被動側の双くさび26とを、同じ運動方向で連行する。駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が同一方向で、その際、同一の速度で位置決め軸線16に沿って移動すると、被動側の双くさび26と、打抜き加工用パンチ11を有するラム12とは、位置決め軸線16に沿った運動のみを実施する。この状態は、スピンドルナット141の、回転する駆動スピンドル18の回転軸線周りの回転が、駆動モータ140によって阻止されている場合に該当する。
【0059】
ラム12及び打抜き加工用パンチ11が、行程軸線14に沿った行程運動のみを実施することが望まれる場合は、一方では電動式の駆動モータ140及びスピンドルナット141を、他方では駆動モータ142及び駆動スピンドル18を、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が同一の速度で逆向きに位置決め軸線16に沿って移動するように運転すればよい。このとき、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が互いに接近すれば、ラム12は、打抜き加工用パンチ11とともに被動側の双くさび26を介して行程軸線14に沿って下降する。駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が位置決め軸線16に沿って同一の速度で互いに離間すれば、被動側の双くさび26及びラム12は、行程軸線14に沿って上昇する。
【0060】
位置決め軸線16に沿ったラム12及び打抜き加工用パンチ11の運動と、行程軸線14に沿ったラム12及び打抜き加工用パンチ11の運動とを重畳させるには、駆動モータ140及びスピンドルナット141並びに駆動モータ142及び駆動スピンドル18を、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が同一方向で、しかもその際に互いに相対的に位置決め軸線16に沿って移動するように運転すればよい。
【0061】
図10に示したスピンドル駆動アッセンブリ217は、モータ式の駆動ユニット38,39としてやはり2つのスピンドルドライブを有している。しかし、スピンドル駆動アッセンブリ17,117のスピンドルドライブとは異なり、スピンドル駆動アッセンブリ217のモータ式の駆動ユニット38,39は、1つの共通の支持構造側の駆動装置を使用していない。その代わり、モータ式の駆動ユニット38,39の各々は、独自の駆動スピンドルを有している。つまり、モータ式の駆動ユニット38は、駆動スピンドル51を有し、モータ式の駆動ユニット39は、駆動スピンドル52を有している。駆動スピンドル51は、電動式の駆動モータ53によって、そして駆動スピンドル52は、電動式の駆動モータ54によって、位置決め軸線16に沿って延びる長手方向軸線周りに駆動される。駆動スピンドル51の、電動式の駆動モータ53による回転は、駆動側のくさび形伝動装置要素22に相対回動不能に取り付けられているスピンドルナット55を介して、駆動側のくさび形伝動装置要素22の直動に変換される。相応に駆動モータ54は、駆動スピンドル52と、駆動スピンドル52上に被嵌されたスピンドルナット56とを介して駆動側のくさび形伝動装置要素23を位置決め軸線16に沿って駆動する。駆動スピンドル51,52は、図10に破断して示した。駆動スピンドル51,52は、図10の図平面に対して垂直に互いにずらされて配置されており、両者は、機械フレーム2の上側の水平のフレーム辺3の全長にわたって延在している。
【0062】
駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が同一方向及び同一速度で位置決め軸線16に沿って移動するように、図10に示したモータ式の駆動ユニット38,39を運転あるいは制御すると、位置決め軸線16に沿った行程駆動装置213の位置決め運動のみが生じる。駆動側のくさび形伝動装置要素22,23がモータ式の駆動ユニット38,39によって同一速度で逆向きに位置決め軸線16に沿って移動すると、行程軸線14に沿ったラム12あるいは打抜き加工用パンチ11の動作のみが生じる。駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が互いに接近すれば、ラム12は、打抜き加工用パンチ11とともに行程軸線14に沿って下降するし、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が位置決め軸線16に沿って互いに離間すれば、ラム12は、打抜き加工用パンチ11とともに行程軸線14に沿って上昇する。
【0063】
図10に示したアッセンブリの場合も、位置決め軸線16に沿った位置決め運動と、行程軸線14に沿った運動とは、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が位置決め軸線16に沿って同一方向で、しかもその際に互いに相対的に移動されることで、互いに重畳され得る。
【0064】
図11に示した行程駆動装置313の場合、行程軸線14に沿ったラム12及び打抜き加工用パンチ11の運動は、モータ式の駆動ユニット38だけで実施され、位置決め軸線16に沿った位置決め運動は、モータ式の駆動ユニット39だけで実施される。
【0065】
モータ式の駆動ユニット38は、電動式の駆動モータ57を有している。電動式の駆動モータ57は、駆動スピンドル58をその長手方向軸線周りに駆動する。駆動スピンドル58は、逆向きのねじ山を有する2つの長手方向区分59,60を有している。駆動スピンドル58の長手方向区分59は、スピンドルナット61と噛み合っている。スピンドルナット61自体は、相対回動不能に駆動側のくさび形伝動装置要素22に結合されている。相応に駆動スピンドル58の長手方向区分60は、スピンドルナット62と噛み合っている。スピンドルナット62自体は、相対回動不能に駆動側のくさび形伝動装置要素23に取り付けられている。
【0066】
駆動スピンドル58の長手方向区分59,60の逆進性の結果、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23は、駆動スピンドル58の回転時、逆向きに移動する。駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が互いに接近すれば、ラム12は、打抜き加工用パンチ11とともに行程軸線14に沿って下降し、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23が互いに離間すれば、ラム12は、打抜き加工用パンチ11とともに行程軸線14に沿って上昇する。
【0067】
スピンドル駆動アッセンブリ317のモータ式の駆動ユニット39は、電動式の駆動モータ63と、この電動式の駆動モータ63により駆動される駆動スピンドル64とを有している。駆動スピンドル64は、ハウジング66に相対回動不能に取り付けられているスピンドルナット65を支承している。ハウジング66の内部には、モータ式の駆動ユニット38が、駆動側のくさび形伝動装置要素22,23とともに格納されている。
【0068】
モータ式の駆動ユニット38だけが運転されると、行程軸線14に沿ったラム14の運動が生じる。モータ式の駆動ユニット39だけが運転されると、ラム12は、打抜き加工用パンチ11とともに位置決め軸線16に沿って移動する。両モータ式の駆動ユニット38,39が同時に運転されると、行程軸線14に沿ったラム12及び打抜き加工用パンチ11の運動と、位置決め軸線16に沿ったラム12及び打抜き加工用パンチ11の運動とが重畳される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11