(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016905
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】極低温スラスタアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F02K 9/44 20060101AFI20161013BHJP
F17C 7/00 20060101ALI20161013BHJP
B65D 88/00 20060101ALI20161013BHJP
B64G 1/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
F02K9/44
F17C7/00 A
B65D88/00
B64G1/00 H
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-515252(P2014-515252)
(86)(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公表番号】特表2014-519578(P2014-519578A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】FR2012051283
(87)【国際公開番号】WO2012172238
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】1155315
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルトゥロット、ジャン−ルュック
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラミー、ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】サニーノ、ジャン−ミシェル
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−212299(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0139902(US,A1)
【文献】
特開平11−229964(JP,A)
【文献】
特開2008−189304(JP,A)
【文献】
米国特許第02683963(US,A)
【文献】
特開平08−074662(JP,A)
【文献】
米国特許第05099645(US,A)
【文献】
米国特許第03597923(US,A)
【文献】
国際公開第2003/078818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/42−68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再点火可能な主スラスタ(6)と、
第1の推進剤を供給するために前記主スラスタ(6)に接続される第1の極低温タンク(2)と、
第1のガスタンク(4)と、
少なくとも1つのセトリングスラスタ(7,8)と、
を少なくとも備える極低温スラスタアセンブリ(1)であって、
前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための第1の供給回路(16)をさらに備え、
前記第1の供給回路は、前記第1の極低温タンク(2)に接続され、気体の状態の前記第1の推進剤を前記第1のガスタンク(4)に供給するために、前記第1の極低温タンク(2)から取り出された前記第1の推進剤の液体の流れを気化すべく、前記少なくとも1つのセトリングスラスタ(7)によって発せられる熱を使用する熱交換器(19)を備えることを特徴とする極低温スラスタアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記第1のガスタンク(4)は、前記セトリングスラスタ(7)に前記第1の推進剤を供給するために、該セトリングスラスタ(7)に接続される請求項1に記載の極低温スラスタアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記第1のガスタンク(4)は、前記第1の極低温タンク(2)を加圧するために、該第1の極低温タンク(2)に接続される請求項1または2に記載の極低温スラスタアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記第1のガスタンク(4)に接続された少なくとも1つの操舵制御スラスタ(9)をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の極低温スラスタアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための第2の供給回路(17)をさらに備え、
前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための前記第2の供給回路は、前記第1の極低温タンク(2)に接続され、気体の状態の前記第1の推進剤を前記第1のガスタンク(4)に供給するために、前記第1の極低温タンク(2)から取り出された前記第1の推進剤の液体の流れを気化すべく、前記主スラスタ(6)によって発せられる熱を使用する熱交換器(13)を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の極低温スラスタアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための前記第1の供給回路(16)は、少なくとも1つの供給ポンプ(18)をさらに備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の極低温スラスタアセンブリ(1)。
【請求項7】
第2の推進剤を供給するために前記主スラスタ(6)に接続される第2の極低温タンク(3)と、
第2のガスタンク(5)と、
前記第2のガスタンク(5)に前記第2の推進剤を供給するための第1の供給回路(20)と、
をさらに備え、
前記第2のガスタンク(5)に前記第2の推進剤を供給するための前記第1の供給回路(20)は、前記第2の極低温タンク(3)に接続され、気体の状態の前記第2の推進剤を前記第2のガスタンク(5)に供給するために、前記第2の極低温タンク(3)から取り出された前記第2の推進剤の液体の流れを気化すべく、前記少なくとも1つのセトリングスラスタ(8)によって発せられる熱を使用する熱交換器(23)を備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の極低温スラスタアセンブリ(1)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の極低温スラスタアセンブリ(1)を備える打ち上げロケット最上段。
【請求項9】
極低温スラスタアセンブリ(1)の第1のガスタンク(4)に気体の状態の第1の推進剤を供給する方法であって、
再点火可能な第1のスラスタ(6)が消されており、少なくとも1つのセトリングスラスタ(7,8)が点火されている状況において、
前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための第1の供給回路(16)を介して、第1の極低温タンク(2)から前記第1の推進剤の液体の流れを取り出すステップと、
前記第1の推進剤の前記液体の流れを、前記第1のガスタンク(4)へ届けられる前に、前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための前記第1の供給回路(16)の熱交換器(19)において、前記少なくとも1つのセトリングスラスタ(7)で発せられる熱によって、気化させるステップと、
が実行される方法。
【請求項10】
前記主スラスタ(6)が点火されているときに、
前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための第2の供給回路(17)を介して、前記第1の極低温タンク(2)から前記第1の推進剤の第1の液体の流れを取り出すステップと、
前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための前記第2の供給回路(17)を介して取り出された前記第1の推進剤の前記液体の流れを、前記第1のガスタンク(4)へ届けられる前に、前記第1のガスタンク(4)に前記第1の推進剤を供給するための前記第2の供給回路(17)の熱交換器(13)において、前記主スラスタ(6)で発せられる熱によって気化させるステップと、
が実行される請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温推進(cryogenic propulsion)の分野に関し、さらに詳しくは、少なくとも1つの再点火可能な主スラスタ(main thruster)と、主スラスタに接続され、主スラスタに第1の推進剤を供給する第1の極低温タンクと、第1のガスタンクと、少なくとも1つのセトリングスラスタ(settling thruster)とを備える極低温スラスタアセンブリに関する。さらに、本発明は、気体の状態の第1の推進剤を第1のガスタンクに供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液体水素および酸素などの極低温推進剤が供給される反応スラスタによって推進されるロケット、特にロケットエンジンにおいて、そのような極低温推進剤のタンクは、通常は、飛行の弾道段階において、極低温推進剤の温度について制御を維持することができるよう、各々の推進剤の飽和圧力まで減圧される。
【0003】
しかしながら、スラスタを弾道段階の後に再び始動させるべき場合には、極低温推進剤タンクは、推進剤がエンジンの供給条件に適合した圧力となるように再び加圧される。通常に用いられる再加圧システムは、高圧で貯蔵されたヘリウムなどの再加圧ガスを利用する。そのような従来技術の再加圧システムの例が、例えば以下のロシア特許出願、すなわちRU2159348C1、RU2159861、RU2177070C2、RU2119082C2、RU2132477C1、RU2339833C2、およびRU2339835C2に開示されている。しかしながら、この技術的解決策は、再加圧ガスをロケットに搭載して運ばなければならないという欠点を呈する。すなわち、液体水素の60m
3のタンクの再加圧のために、通常は、20kgという大量のヘリウムが必要とされる。この大量のヘリウムを高圧(約200bar)の気体の状態で収容するヘリウムタンクは、典型的には、200kgの総質量を有する。この追加の質量がロケットに搭載されて運ばれることで、ロケットの積載量が失われる。さらに、長期にわたる弾道段階の後に必要となる極低温タンクの再加圧の回数を、掛け算しなければならない。
【0004】
サターンV型ロケットのS−IV−B段のスラスタアセンブリにおいては、再加圧ガスを液体の状態で貯蔵することで、貯蔵の質量の約30%の削減を可能にしていた。しかしながら、この削減は、加熱手段を備える必要性が生じることで少なくとも部分的に打ち消され、この加熱手段の必要性は、エンジンに推進剤を供給するためのシステムをさらに複雑にもする。同様の欠点は、RU2147344に開示のシステムなど、再加圧ガス発生装置を利用するシステムにおいても見られる。
【0005】
これらの欠点を回避するために、特にサターンV型(J2エンジン)およびH2A型ロケットに搭載され、スペースシャトルSTSにも搭載されたいくつかの従来技術の極低温スラスタアセンブリは、極低温推進剤の少なくとも1つの一部分を再加圧の目的で気化させている。しかしながら、この代案も、通常は、別途の加熱手段または主スラスタによって加熱されるときの気体の状態の推進剤の流れのための分岐接続の存在を必要とする。加熱手段は、通常は追加の質量を意味するが、主スラスタによって気化された推進剤の流れの分岐接続は、主スラスタが動作しているときにしか気体の状態の推進剤をもたらすことができず、したがって飛行の弾道段階の時間の全体を通して再加圧を提供するために、充分な量の推進剤を気体の状態で貯蔵することが依然として必要である。
【0006】
さらに、再点火可能な主スラスタを有する極低温スラスタアセンブリは、通常は、少なくとも1つのセトリングスラスタ、すなわち液体の推進剤を極低温タンクの底部へと押し付けることによって再点火時の主スラスタへの供給を保証すべく低レベルの加速度を維持するために、飛行のいわゆる「弾道」段階において動作する副スラスタを備えている。典型的には、そのようなセトリングスラスタには、極低温タンクとは別のタンクから液体または気体の推進剤が供給される。そのような極低温スラスタアセンブリの操舵を制御するために、典型的には低温の気体が供給され、したがって別途のガスタンクが必要であることを意味する操舵制御ノズルを、極低温スラスタアセンブリに備えることも、一般的なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、再点火可能な主スラスタと、主スラスタへと接続され、主スラスタに第1の推進剤を供給する第1の極低温タンクと、第1のガスタンクと、少なくとも1つのセトリングスラスタとを少なくとも備え、主スラスタが点火されていない飛行のいわゆる「弾道」段階においても気体の状態の推進剤を第1のガスタンクへともたらし続けることを可能にする極低温スラスタアセンブリを提供しようとする。これにより、例えば第1の極低温タンクの再加圧、セトリングスラスタへの供給、および/または操舵制御スラスタへの供給など、飛行のいわゆる「弾道」段階における種々の気体の必要性を、小さな体積のガスタンクで満足させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、極低温スラスタアセンブリは、前記第1のガスタンクへ供給するための第1の供給回路をさらに備え、前記第1の供給回路は、前記第1の極低温タンクに接続され、気体の状態の前記第1の推進剤を前記第1のガスタンクに供給するために、前記第1の極低温タンクから取り出された前記第1の推進剤の液体の流れを気化すべく、前記少なくとも1つのセトリングスラスタによって発せられる熱を使用する熱交換器を備えることにより、この目的は、達成される。このようにすることで、セトリングスラスタが発生させる熱を、飛行のいわゆる弾道段階において、第1の推進剤を加熱して気化させ、したがって飛行のこの段階においても第1のガスタンクへと気体の流れを積極的にもたらすために、使用することができる。このやり方で、たとえ第1のガスタンクに収容された気体を飛行のいわゆる「弾道」段階において使用する必要がある場合でも、第1のガスタンクの体積、したがって質量を、より小さくすることができる一方で、加熱手段の質量および複雑さも抑えられたままである。特に、第1のガスタンクを、第1の極低温タンクを加圧するために第1の極低温タンクへと接続することができ、さらには/あるいはセトリングスラスタおよび/または極低温スラスタアセンブリの一部をやはり形成する少なくとも1つの操舵制御スラスタへと、これらへの供給のために接続することができる。このようにして、第1のガスタンクは、この第1のガスタンクがこの第1のガスタンクの第1の供給回路を介して気体の状態で前もって受け取った第1の推進剤で、極低温スラスタアセンブリのこれらの構成要素の気体のニーズを賄うことができる。第1のガスタンクの第1の供給回路は、第1の推進剤の第1のガスタンクへの強制的な流通を保証するために、少なくとも1つの供給ポンプをさらに含むことができる。
【0009】
第2の形態において、極低温スラスタアセンブリは、前記第1のガスタンクに供給するための第2の供給回路をさらに備え、前記第2の供給回路は、前記第1の極低温タンクに接続され、気体の状態の前記第1の推進剤を前記第1のガスタンクに供給するために、前記第1の極低温タンクから取り出された前記第1の推進剤の液体の流れを気化すべく、前記主スラスタによって発せられる熱を使用する熱交換器を備える。特に、第1のガスタンクの第2の供給回路は、主スラスタへの供給のための回路における分岐接続であってよい。このやり方で、第1のガスタンクに、主スラスタの最初の点火の際ならびに後の点火の際に、気体をすでに供給することができる。
【0010】
第3の形態において、第2の推進剤を供給するために前記主スラスタに接続される第2の極低温タンクと、第2のガスタンクと、前記第2のガスタンクに供給するための第1の供給回路と、をさらに備え、前記第1の供給回路は、前記第2の極低温タンクに接続され、気体の状態の前記第2の推進剤を前記第2のガスタンクに供給するために、前記第2の極低温タンクから取り出された前記第2の推進剤の液体の流れを気化すべく、前記少なくとも1つのセトリングスラスタによって発せられる熱を使用する熱交換器を備える。このやり方で、この第2のガスタンクに、飛行のいわゆる「弾道」段階において気体の状態の第2の推進剤の流れを供給することができ、例えばこの気体の状態の第2の推進剤を、第2の極低温タンクの再加圧に使用することができ、さらには/あるいは少なくとも1つのセトリングスラスタおよび/または操舵制御スラスタへの供給のために、それらが1つの推進剤を使用するか、あるいは2つの推進剤を使用するかにかかわらず、使用することができる。
【0011】
また、本発明は、そのような極低温スラスタアセンブリを備える打ち上げロケット最上段を提供する。そのようなロケットにおいて、特に複数の衛星をまとめて異なる軌道へと打ち上げ、あるいは衛星を軌道上に最終的に配置するために、主スラスタが再点火の能力を有することが、きわめて有用である。
【0012】
また、本発明は、極低温スラスタアセンブリの第1のガスタンクに気体の状態の第1の推進剤を供給する方法を提供する。この方法の第1の態様において、再点火可能な主スラスタが消されており、少なくとも1つのセトリングスラスタが点火されているときに、前記方法は、前記第1のガスタンクに供給するための第1の供給回路を介して、第1の極低温タンクから前記第1の推進剤の液体の流れを取り出すステップと、該液体の流れを、前記第1のガスタンクへ届けられる前に、前記第1のガスタンクの前記第1の供給回路の熱交換器において、前記少なくとも1つのセトリングスラスタで発せられる熱によって、気化させるステップと、を含む。このようにして、第1のガスタンクに、この飛行のいわゆる「弾道」段階において気体が供給される。一例として、後にこの気体を、第1の極低温タンクの再加圧に使用することができ、さらには/あるいはセトリングスラスタ、操舵制御スラスタ、および/または他の装置(燃料電池、点火トーチ、および/または流体アクチュエータ、など)への供給に使用することができる。
【0013】
第2の形態において、前記主スラスタが点火されているときに、前記方法は、前記第1のガスタンクに供給するための第2の供給回路を介して、前記第1の極低温タンクから前記第1の推進剤の第1の液体の流れを取り出すステップと、該液体の流れを、前記第1のガスタンクへ届けられる前に、前記第1のガスタンクの前記第2の供給回路の熱交換器において、前記主スラスタで発せられる熱によって気化させるステップと、を含む。このようにして、第1のガスタンクに、この飛行の他の段階においても気体が供給される。
【0014】
このやり方で、第1のガスタンクに気体の状態の第1の推進剤を供給できるだけでなく、同時に第2のガスタンクにも気体の状態の第2の推進剤を供給することができる。したがって、再点火可能な主スラスタが点火されておらず、少なくとも1つのセトリングスラスタが点火されている場合に、第2の推進剤の液体の流れを、第2のガスタンクの第1の供給回路を介して第2の極低温タンクから取り出し、第2のガスタンクへと届けられる前に、第2のガスタンクの第1の供給回路の熱交換器において、少なくとも1つのセトリングスラスタが発する熱によって気化させることができる。
【0015】
同様に、主スラスタが点火されているときに、第2の推進剤の液体の流れを、第2のガスタンクの第2の供給回路を介して第2の極低温タンクから取り出し、第2のガスタンクへと届けられる前に、第2のガスタンクの第2の供給回路の熱交換器において、主スラスタが発する熱によって気化させることができる。次いで、第1のタンクからの気体と同様に、この第2のタンクからの気体を、例えば該当の極低温タンクの再加圧、セトリングスラスタへの供給、操舵制御スラスタへの供給、および/または他の要素(燃料電池、スラスタ点火トーチ、および/または流体アクチュエータ、など)への供給に使用することができる。
【0016】
あくまでも本発明を限定するものではない例として提示される以下の実施形態についての詳細な説明を検討することによって、本発明を充分に理解することができ、本発明の利点がさらに明らかになるであろう。説明においては、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、この実施形態における極低温スラスタアセンブリの概略図である。
【
図2】
図2は、主スラスタが点火されているときの
図1の極低温スラスタアセンブリにおける推進剤の流れの概略図である。
【
図3】
図3は、主スラスタが点火されていない飛行のいわゆる「弾道」段階における
図1の極低温スラスタアセンブリにおける推進剤の流れの概略図である。
【
図4】
図4は、飛行の弾道段階の終わりにおける主スラスタの再点火に先立つ極低温タンクの再加圧時の
図1の極低温スラスタアセンブリにおける推進剤の流れの概略図である。
【
図5】
図5は、
図1の極低温スラスタアセンブリにおける姿勢制御スラスタへと向かう第1の推進剤の流れの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ロケットエンジンの分野において、とりわけ衛星打ち上げロケットの最上段について、再点火可能なスラスタを使用することが、きわめて一般的になっている。再点火可能な主スラスタを装備した最上段は、複数の衛星をまとめて、しかしながら異なる軌道へと打ち上げることを可能にできる。そのような最上段に装備するために適した極低温スラスタアセンブリ1が、
図1に図式的に示されている。この図において見て取ることができるとおり、極低温スラスタアセンブリ1は、第1の極低温タンク2と、第2の極低温タンク3と、第1のガスタンク4と、第2のガスタンク5と、主スラスタ6と、第1のセトリングスラスタ7と、第2のセトリングスラスタ8と、操舵制御スラスタ9とを備えている。図示の実施形態においては、セトリングスラスタ7、8は、2推進剤のスラスタである一方で、操舵制御スラスタ9は、単に低温ガスノズルである。
【0019】
第1の極低温タンク2は、主スラスタ6の第1の供給回路10を介して主スラスタ6へと接続され、第2の極低温タンク3は、主スラスタ6の第2の供給回路11によって主スラスタ6へと接続されている。主スラスタ6の第1および第2の供給回路10および11の各々は、それぞれの極低温タンク2、3から液体の推進剤を送り、主スラスタ6の燃焼室への注入に先立って主スラスタによって生み出される熱を使用して気化させるそれぞれのターボポンプ12および熱交換器13を有している。
【0020】
一例として、ターボポンプ12を、液体の状態の第1の推進剤によって、気化用の熱交換器13を通過した後で作動させることができる。あるいは、ターボポンプを、やはり推進剤が供給される補助燃焼室において生成される高温の気体によって作動させることもできる。どちらの種類の極低温ターボポンプも、極低温スラスタアセンブリの分野の当業者にとって周知である。典型的には主スラスタのノズルに組み込まれる熱交換器13も、当業者にとって周知である。
【0021】
2つの極低温タンク2および3の各々が、きわめて低い温度で液体の状態の異なる推進剤を収容するように設計されている。すなわち、第1の極低温タンク2が、例えば液体水素(LH
2)などの第1の推進剤を収容するように設計される一方で、第2の極低温タンク3が、例えば液体酸素(LOX)などの第2の推進剤を収容するように設計される。第1および第2の推進剤は、主スラスタ6の燃焼室において発熱反応を生じるために適している。
【0022】
第1のガスタンク4および第2のガスタンク5も、やはり第1の推進剤および第2の推進剤を、しかしながら気体の状態で、各々の推進剤の極低温タンクにおける圧力と各々の推進剤の主スラスタ6の燃焼室への注入の圧力との間の中間的な圧力で収容するようにそれぞれ設計されている。
【0023】
第1のガスタンク4は、第1のガスタンク4への供給のための第1および第2の回路16および17を介して、第1の極低温タンク2の底部へと接続されている。第1のガスタンク4の第1の供給回路16は、第1のセトリングスラスタ7の点火時に液体の状態の第1の推進剤を第1のガスタンク4へと届けるために、第1の極低温タンク2から液体の状態の第1の推進剤を送り、第1のセトリングスラスタ7によって生成される熱で気化させるためのポンプ18および熱交換器19をそれぞれ有している。第1のガスタンク4の第2の供給回路17は、主スラスタ6の第1の供給回路10と共通の部分を有しているが、ターボポンプ12および熱交換器13の下流において、液体の状態の第1の推進剤を主スラスタ6の点火時に第1のガスタンク4へともたらすために回路17を開き、主スラスタ6が点火されていないときに回路17を閉じるために適したバルブ27を介して、主スラスタ6の第1の供給回路10から分岐している。また、第1のガスタンク4は、バルブ30を有するダクト24を介して、第1の推進剤のためのマニホールド26にも接続されている。次いで、このマニホールド26は、第1の極低温タンク2の上部、セトリングスラスタ7,8への供給のための第1の供給回路14、および操舵制御スラスタ9への供給のための供給回路16へと接続されている。
【0024】
第2のガスタンク5は、第2のガスタンク5への供給のための第1および第2の供給回路20、21を介して、第2の極低温タンク3の底部へと接続されている。第2のガスタンク5の第1の供給回路20は、第2のセトリングスラスタ8の点火時に液体の状態の第2の推進剤を第2のガスタンク5へと届けるために、第2の極低温タンク3から液体の状態の第2の推進剤を送り、第2のセトリングスラスタ8によって生成される熱で気化させるためのポンプ22および熱交換器23をそれぞれ有している。第2のガスタンク5の第2の供給回路21は、主スラスタ6の第2の供給回路11と共通の部分を有しているが、ターボポンプ12および熱交換器13の下流において、液体の状態の第2の推進剤を主スラスタ6の点火時に第2のガスタンク5へともたらすために回路21を開き、主スラスタ6が点火されていないときに回路21を閉じるために適したバルブ28を介して、主スラスタ6の第2の供給回路11から分岐している。さらに、第2のガスタンク5は、バルブ31を有するダクト25を介してマニホールド29にも接続されている。次いで、このマニホールド29は、第2の極低温タンク3の上部およびセトリングスラスタ7,8への供給のための第2の供給回路15へと接続されている。
【0025】
セトリングスラスタの第1および第2の供給回路14および15は、セトリングスラスタ7,8への第1および第2のそれぞれの推進剤の通過を制御するためのバルブ32、33をさらに備えている。操舵制御スラスタは、第1の推進剤を種々のノズルへともたらすための制御バルブ(図示されていない)をさらに備えている。極低温スラスタアセンブリ1のバルブの一部またはすべて、ならびにポンプ18および22を、随意により、各々の回路の流体の流量を制御するための制御ユニット(図示されていない)へと接続することができる。
【0026】
動作時に、極低温スラスタアセンブリ1を最上段として装備するロケットにおいて、極低温タンク2,3およびガスタンク4,5は、通常は、発射前に推進剤で満たされる。したがって、最上段の分離に先立って、主スラスタ6の供給回路10,11を冷却し、主スラスタ6の初めての点火を可能にするために、ガスタンク4、5の圧力を、極低温タンク2、3をあらかじめ加圧するために使用することができる。この初めての点火の後で、主スラスタ6が点火されたままとなる飛行の第1の段階において、バルブ27,28は、開いたままである。したがって、
図2に示される様相で、第1の推進剤の気体の流れが、第1のガスタンク4の補給のために第1のガスタンク4の第2の供給回路17を介して取り出される一方で、第2の推進剤の気体の流れが、同様に、第2のガスタンク5の補給のために第2のガスタンク5の第2の供給回路21を介して取り出される。両方の推進剤は、ターボポンプ12および熱交換器13の下流で主スラスタ6の供給回路10,11から取得されるため、気体の状態でそれぞれのガスタンク4,5へともたらされる。従来どおり、これらの気体の流量は、主スラスタ6の動作時に極低温タンク2,3の圧力を維持するようにも機能する。
【0027】
飛行のいわゆる「弾道」段階の開始のために主スラスタ6が消火される直前に、セトリングスラスタ7および8が点火される。したがって、飛行のこの段階は「弾道」と呼ばれるべきではあるが、セトリングスラスタ7および8が、液体の推進剤を極低温タンク2,3の底部に押し付け続けるために、極低温スラスタアセンブリ1にわずかな加速度を維持する。主スラスタ6と同様に、セトリングスラスタ7および8は、第1および第2の推進剤が供給される2推進剤のスラスタである。しかしながら、
図3に示されるように、推進剤は、ガスタンク4および5からセトリングスラスタ7および8へと気体の状態で直接もたらされる。この目的のため、バルブ30、31、32、および33が開かれ、推進剤が、ダクト24,25を介してマニホールド26,29へと流れ、マニホールド26,29からセトリングスラスタ7,8の第1および第2の供給回路14,15を介して流れる。飛行の弾道段階においてガスタンク4および5への供給を続けるために、極低温タンク2,3から第1のガスタンク4の第1の供給回路16および第2のガスタンク5の第1の供給回路20をそれぞれ介して第1および第2の推進剤をもたらすために、ポンプ18および22が作動させられる。これらの回路16および20を介して流れる推進剤が、それぞれ熱交換器19および23においてセトリングスラスタ7および8が発生させる熱によって気化させられる。したがって、推進剤は、気体の状態でガスタンク4および5へともたらされる。図示の実施形態においては、各々の熱交換器19および23が、異なるセトリングスラスタに組み合わせられているが、おおむね同等である他の構成を採用することは、当業者にとって当然ながら自明である。例えば、セトリングスラスタのうちの少なくとも1つを、2つの推進剤の各々のための少なくとも1つの熱交換器に組み合わせることができる。
【0028】
飛行の弾道段階において、極低温タンク2,3は、液体の推進剤の温度について制御を維持することができるよう、推進剤の飽和圧力まで減圧される。したがって、主スラスタ6の再点火に先立って、極低温タンク2,3を再加圧することが適切である。これを行うために、マニホールド26および29が、ダクト24および25をそれぞれの極低温タンク2、3の上部に連通させることで、
図4に示されるようにガスタンク4,5に連通した極低温タンク2,3の再加圧のための2つの回路を形成する。極低温タンク2および3の各々において所定の圧力のしきい値に達すると、主スラスタ6に推進剤を供給すべく主スラスタ6の供給回路10、11を再作動させることができ、主スラスタ6を再点火することができる。
【0029】
さらに、これらの種々の段階の各々において、第1のガスタンク4は、
図5に示されるように、ダクト24、マニホールド26、および操舵制御スラスタ9の供給回路16を介して、操舵制御スラスタ9へと気体の状態の第1の推進剤をもたらすこともできる。したがって、操舵制御スラスタ9によるこの低温または微温の気体の制御された排出により、最上段の操舵を制御し、おそらくは最上段の軌道を制御するために、小さな横方向の推力を最上段に付与することができる。
【0030】
したがって、飛行のこれらの種々の段階において、ガスタンク4および5は、セトリングスラスタ7,8および/または操舵制御スラスタ9への供給、ならびに/あるいは極低温タンク2,3の加圧、圧力の維持、および/または再加圧に必要な気体の推進剤の流量への到達を、これらの組み合わせの流量が種々の熱交換器13、19、および/または23によってもたらすことができる流量を超える場合にも可能にする緩衝の能力をもたらす。次いで、ガスタンク4,5を、気体の需要が減少したときに補給することができる。
【0031】
本発明を特定の実施形態に関して説明したが、これらの実施形態について、特許請求の範囲によって定められる本発明の全体的な範囲を超えることなく、種々の改良および変更が可能であることは、明らかである。特に、種々の実施形態の個々の特徴を、さらなる実施形態へと組み合わせることができる。したがって、本明細書および図面は、本発明を限定する意味にではなく、例示の意味にて考慮されなければならない。