特許第6016910号(P6016910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6016910-磁束漏れ路遮断器を有する回転結合装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016910
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】磁束漏れ路遮断器を有する回転結合装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/10 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   F16D27/10 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-520207(P2014-520207)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公表番号】特表2014-521037(P2014-521037A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012045007
(87)【国際公開番号】WO2013009504
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】13/182,921
(32)【優先日】2011年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511114014
【氏名又は名称】ワーナー エレクトリック テクノロジー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーディー、ジェイムス、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒュミー、ミカエル
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−336815(JP,A)
【文献】 特開2004−278778(JP,A)
【文献】 特表2008−544169(JP,A)
【文献】 実開昭54−169647(JP,U)
【文献】 特開平02−304222(JP,A)
【文献】 特表2009−532651(JP,A)
【文献】 特開2002−213495(JP,A)
【文献】 特開平06−235428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと共に回転するためにシャフトに結合するように構成され、回転軸のまわりに配置され、第1のクラッチ係合面を画定する回転子と、
前記回転軸のまわりに配置され、回転しないように固定されたフィールドシェルと、
前記回転子の第1の側で前記フィールドシェル内に配置された電気導体と、
前記電気導体とは反対側の前記回転子の第2の側に配置され、第2のクラッチ係合面を画定する、前記回転子および前記フィールドシェルと共に磁気回路の部材を構成する電機子と、
前記電機子と共に回転するように前記電機子に結合され、前記回転軸のまわりに配置されて、前記回転軸のまわりに配置されたベアリングによって支持されたトルク伝達部材と、
前記ベアリングの半径方向内側で前記回転軸のまわりに配置されたスリーブと、半径方向で前記スリーブと前記ベアリングとの間に配置され、前記スリーブの上で支持される前記回転子の一部分と、
前記ベアリングの半径方向内側で前記回転軸のまわりに配置され、半径方向で前記スリーブと前記ベアリングとの間に配置されるスペーサーと、
を備え、
前記スリーブおよび前記スペーサーは、前記磁気回路の前記部材の透磁率よりも低い透磁率を有する回転結合装置。
【請求項2】
シャフトと共に回転するためにシャフトに結合するように構成され、回転軸のまわりに配置され、第1のクラッチ係合面を画定する回転子と、
前記回転軸のまわりに配置され、回転しないように固定されたフィールドシェルと、
前記回転子の第1の側で前記フィールドシェル内に配置された電気導体と、
前記電気導体とは反対側の前記回転子の第2の側に配置され、第2のクラッチ係合面を画定する、前記回転子および前記フィールドシェルと共に磁気回路の部材を構成する電機子と、
前記電機子と共に回転するように前記電機子に結合され、前記回転軸のまわりに配置されて、前記回転軸のまわりに配置されたベアリングによって支持されたトルク伝達部材と、
前記ベアリングの半径方向内側で前記回転軸のまわりに配置されたスリーブと、
前記回転軸のまわりに配置されたスペーサーと、
前記スペーサーを貫通し、前記シャフトと係合するように構成された留め具と、
を備え、
前記スリーブと、前記スペーサーおよび前記留め具の少なくとも1つは、前記磁気回路の前記部材の透磁率よりも低い透磁率を有する回転結合装置。
【請求項3】
前記ベアリングの半径方向内側で前記回転軸のまわりに配置され、前記磁気回路の前記部材の前記透磁率よりも低い透磁率を有するもう1つのスペーサーをさらに備える請求項2に記載の回転結合装置。
【請求項4】
前記もう1つのスペーサーは、半径方向で前記スリーブと前記ベアリングとの間に配置される請求項3に記載の回転結合装置。
【請求項5】
前記スリーブは、軸方向で前記もう1つのスペーサーと前記回転子との間に配置される請求項3に記載の回転結合装置。
【請求項6】
前記回転子の一部分は、半径方向で前記スリーブと前記ベアリングとの間に配置され、前記スリーブの上で支持される請求項2〜4のいずれかに記載の回転結合装置。
【請求項7】
前記トルク伝達部材はプーリーを備える請求項1〜6のいずれかに記載の回転結合装置。
【請求項8】
前記プーリーは、前記磁気回路の前記部材の前記透磁率よりも低い透磁率を有する請求項7に記載の回転結合装置。
【請求項9】
前記ベアリングの上で支持された、軸方向に延びる部分と、前記軸方向に延びる部分から半径方向に延びるフランジとを有する支持カップと、
前記電機子と前記支持カップの前記フランジとの間に延びるばねと、
をさらに備え、
前記支持カップの前記フランジは、前記支持カップの前記軸方向に延びる部分から半径方向外側に延びる請求項1〜8のいずれかに記載の回転結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキおよびクラッチなどの回転結合装置に関し、特に、装置を係合するのに使用する磁気回路からの磁束漏れを低減する構造体を有する回転結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチおよびブレーキなどの回転結合装置は、回転体間のトルク伝達を制御するために使用される。従来の装置の1つのタイプが、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,119,918号明細書、同第5,285,882号明細書、同第5,971,121号明細書、同第7,493,996号明細書、同第7,527,134号明細書、および同第7,732,959号明細書と、米国特許出願公開第2006−0278491号明細書、同第2009−0229941号明細書、および同第2010−0116616号明細書とに示されており、これらの特許の全開示は、参照により本明細書に援用するものとする。この装置は、回転軸のまわりにシャフトと共に回転するようにシャフトに結合される回転子を含む。フィールドシェルも回転子の片側で回転軸のまわりに配置され、回転しないように固定される。フィールドシェルは、半径方向に離間し、軸方向に延びる内側および外側磁極を画定し、電気導体が、回転子に対向して、内側磁極と外側磁極との間に配置される。ブレーキ板は、フィールドシェルに結合され、フィールドシェルから軸方向に離間する。ブレーキ板は、回転子の電気導体とは反対の側に配置される。プーリーなどのトルク伝達部材に結合された電機子は、回転子のブレーキ板と同じ側に配置され、軸方向で回転子とブレーキ板との間に配置される。電機子は、複数の板ばねによってトルク伝達部材に結合される。電気導体に通電することで、フィールドシェル、回転子、および電機子に磁気回路が形成され、この磁気回路は、電機子を引き寄せて回転子と係合させ、シャフトおよびトルク伝達部材を共に回転するように結合する。電気導体の通電を切ると、板ばねは電機子を引き寄せて、回転子との係合から切り離し、ブレーキ板と係合させて、電機子およびトルク伝達部材にブレーキをかける。永久磁石もブレーキ板に結合することができ、電機子およびトルク伝達部材にブレーキをかける際に板ばねの助けとなるように、ブレーキ板、フィールドシェル、および電機子間に別の磁気回路を形成するのに使用することができる。
【0003】
結合装置を係合させるために使用される、フィールドシェル、回転子、および電機子間の磁気回路は、様々な磁路に沿った磁束の漏れによって弱体化されることがある。特に、磁束は、電機子および/またはブレーキ板から隣接するトルク伝達部材に漏れることがある。この場合に、磁束は、回転子に戻る前に、支持ベアリングと、場合によっては、結合装置が取り付けられたシャフトとを含むことができる利用可能なすべての磁路を通って半径方向内側に進む。この磁路(または漏れ回路)がこのように存在することで、回転子/電機子の境界部から磁束が流出し、それにより、境界部の磁束密度および回転子と電機子との間の引付け力が低下する。そのため、結合トルクが小さくなり、結合装置の摩耗寿命が短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、上記の欠陥の1つまたは複数を最小化する、かつ/またはなくす回転結合装置が必要であると認識した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転結合装置を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態による回転結合装置は、シャフトと共に回転するためにシャフトに結合するように構成され、回転軸のまわりに配置された回転子を含む。回転子は、第1のクラッチ係合面を画定する。装置は、回転軸のまわりに配置され、回転しないように固定されたフィールドシェルと、回転子の第1の側でフィールドシェル内に配置された電気導体とをさらに含む。装置は、電気導体とは反対側の回転子の第2の側に配置された電機子をさらに含む。電機子は、第2のクラッチ係合面を画定する。電機子、回転子、およびフィールドシェルは、磁気回路の部材を構成する。装置は、電機子と共に回転するように電機子に結合されたトルク伝達部材をさらに含む。トルク伝達部材は回転軸のまわりに配置され、回転軸のまわりに配置されたベアリングによって支持される。装置は、回転軸のまわりでベアリングの半径方向内側に配置されたスリーブをさらに含む。スリーブは、磁気回路の部材の透磁率よりも低い透磁率を有する。
【0007】
本発明の別の実施形態による回転結合装置は、シャフトと共に回転するためにシャフトに結合するように構成され、回転軸のまわりに配置された回転子を含む。回転子は、第1のクラッチ係合面を画定する。装置は、回転軸のまわりに配置され、回転しないように固定されたフィールドシェルと、回転子の第1の側でフィールドシェル内に配置された電気導体とをさらに含む。装置は、電気導体とは反対側の回転子の第2の側に配置された電機子をさらに含む。電機子は、第2のクラッチ係合面を画定する。装置は、電機子と共に回転するように電機子に結合されたトルク伝達部材をさらに含む。トルク伝達部材は回転軸のまわりに配置され、回転軸のまわりに配置されたベアリングによって支持される。トルク伝達部材は、ベアリングの上で支持された、軸方向に延びる部分と、軸方向に延びる部分から半径方向に延びるフランジとを有する支持カップを含む。装置は、電機子と支持カップのフランジとの間に延びるばねをさらに含む。支持カップのフランジは、支持カップの軸方向に延びる部分から半径方向外側に延びる。
【0008】
本発明による回転結合装置は、トルク伝達部材を通る磁路に沿った磁束漏れを低減する、またはなくすことにより、従来の装置に勝る改良点を示す。上記の第1の実施形態では、スリーブは、トルク伝達部材および支持ベアリングを通って回転子に戻る磁路(または漏れ回路)に沿った磁束遮断器として機能し、それにより、磁路に沿った磁束漏れを低減する。上記の第2の実施形態では、トルク伝達部材の支持カップ上で半径方向外側に向けられたフランジは、支持カップと、シャフトおよび/または回転子との間の空隙を大きくし、それにより、同じ磁路に沿った磁束漏れを低減する。
【0009】
以下の詳細な説明、および例として本発明の特徴を示す添付図面から、本発明のこれらのおよび他の利点が当業者に明らかになるであろう。
【0010】
【0011】
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による回転結合装置の断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による回転結合装置の断面図である。
図3】本発明の別の実施形態による回転結合装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで図面を参照すると、様々な図において同一の構成要素を特定するために、同じ参照数字が使用されており、図1は、本発明の一実施形態による回転結合装置10を示している。装置10は、シャフト12と別の装置(図示せず)との間でトルクを選択的に伝達するクラッチとして機能する。装置10はまた、トルクが伝達されない場合にブレーキとして機能する。装置10は、乗用型芝刈り機または同様の装置で使用するために用いることができる。しかし、クラッチおよび/またはブレーキを必要とする広範な用途で装置10を使用することができると、当業者には分かるであろう。装置10は、回転子14、スペーサー16、18、ベアリング20、22、フィールドシェル24、電導アセンブリ26、電機子28、ブレーキ板30、ばね32、トルク伝達部材34、およびスリーブ36を含むことができる。
【0014】
シャフト12は、装置(図示せず)から延びており、その装置からのトルクを結合装置10を介して別の装置(図示せず)に伝達する入力シャフトとして機能することができる。あるいは、シャフト12は、結合装置10を介して別の装置(図示せず)からトルクを受け取り、そのトルクを装置(図示せず)に伝達する出力シャフトとして機能することができ、シャフト12は装置から延びる。シャフト12は、従来の金属および金属合金から作ることができ、中実または管状とすることができる。シャフト12は回転軸38を中心とし、入力シャフトとして機能する場合に、エンジン、電気モータ、または他の従来からの動力源によって駆動することができる。図示した実施形態では、シャフト12は、装置10のトルク伝達部材34と同じ側で装置10に挿入されている(「逆取り付け」)。しかし、シャフト12およびスペーサー16の向きは、シャフト12がトルク伝達部材34とは反対の側で装置10に挿入されるように逆にすることもできるのは当然のことである(「標準取り付け」。
【0015】
回転子14は、シャフト12と部材34との間でトルクを伝達するために、電機子28と選択的に係合するように設けられている。回転子14は回転軸38のまわりに配置され、スリーブ36を介してシャフト12と共に回転するようにシャフト12に結合されている。回転子14は、従来の金属および金属合金から作ることができ、ハブ40および回転子ディスク42を含む。
【0016】
ハブ40は管状であり、シャフト12およびスリーブ36が中に延びる中心穴を画定する。穴の直径(すなわち、ハブ40の内径)は、スリーブ36の一方の軸方向端部部分の外径と実質的に同じであり、穴は、スリーブ36のこの部分を受け入れる大きさとされている。穴の直径は、シャフト12の外径よりも大きいので、シャフト12がスリーブ36の軸方向端部を越えて延びる範囲まで、空隙がハブ40とシャフト12との間に存在し、それにより、シャフト12を通る磁束漏れの可能性がさらに低くなる。ハブ40は、キー(図示せず)と相補的に成形され、キーを受け入れるように構成された、軸方向に延びるキー溝(図示せず)を画定することができる。キー溝は、スリーブ36の対応するキー溝と対向することができ、キーは、シャフト12への装置10の組み込み時にキー溝に挿入される。あるいは、ハブ40およびスリーブ36の一方は、ハブ40およびスリーブ36の他方のキー溝内に受け入れられるように構成された、半径方向に延びる一体キーを有して成形することができる。ハブ40は、軸方向両端部で、ベアリング20、22に対接し、これらを支持するショルダ部を画定する。さらに、全開示が参照により本明細書に援用される米国特許第7,527,134号明細書でさらに詳細に説明されているように、ハブ40は、ハブ40の軸方向両端面に配置され、スペーサー16、18の対応するノッチまたはラグと係合するように構成された1つまたは複数のノッチ44またはラグを画定することができる。ノッチ44またはラグの数量、形状、および向きは異なってもよく、両端部のノッチまたはラグは、互いに一列に、または同位相に並んでよいし、あるいはハブ40の製造上の改良に考慮して、位相をずらされてもよい(例えば、各端面は、直径方向に対向するノッチ44またはラグを含むことができ、一方の端面のノッチ44またはラグは、反対側の端面のノッチ44またはラグに対して90°だけ位相をずらされる)。ハブ40は、その半径方向外側の直径部で、軸方向に延びる内側回転子磁極46を画定する。ハブ40は、下記に説明する目的のために、磁極46の半径方向内側で軸方向に延びる凹部48をさらに画定する。
【0017】
ディスク42は、ハブ40から半径方向外側に延び、電機子28に対向するクラッチ係合面を画定する。ディスク42は、例えば、複数の相補的ラグおよびノッチを含む圧入の関係によってハブ40に結合される。当技術分野において公知なように、ディスク42は、角度的に離間したバナナ形のスロット(図示せず)からなる、半径方向に離間した複数の列を含むことができる。電導アセンブリ26に通電すると、スロットにより、磁束が空隙を横断してディスク42と電機子28との間を往復し、回転子14と電機子28との間の高いトルクによる係合を可能にする。ディスク42は、その外径部で、軸方向に延びる外側回転子磁極50を画定する。磁極50は、磁極46と半径方向に整列し、磁極46の半径方向外側に離間して配置されている。
【0018】
スペーサー16は、装置10の他の構成要素と共に組み立てられた関係において、フィールドシェル24を支持するために設けられ、粉末金属を含む従来の材料で作ることができる。しかし、本発明の一態様によれば、スペーサー16は、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28よりも低い透磁率を有することができ、例えば、特定のステンレス鋼などの非強磁性材料で作ることができる。スペーサー16は、回転軸38のまわりに配置され、形状が略円筒状である。スペーサー16は、スペーサー16を貫通し、シャフト12内に延びる留め具52を受け入れるように構成されている。本発明の一態様によれば、留め具52は、スペーサー16と同様に、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28よりも低い透磁率を有することができ、例えば、特定のステンレス鋼などの非強磁性材料で作ることができる。スペーサー16は、一方の軸方向端部で、スペーサー16がトルクを留め具52に加えながら固定されるのを可能にする複数の平坦部を有するヘッド54を画定することができる。スペーサー16は、ヘッド54から軸方向に延びる胴体56をさらに画定することができる。胴体56は、略円筒状の外側面を有し、ベアリング20は、その外側面で、回転子ハブ40およびスペーサー16内に画定された、対向するショルダ部間に支持することができる。スペーサー16は、スペーサー16の胴体56の軸方向端面に、軸方向に突出した1つまたは複数のラグ58またはノッチをさらに画定することができる。ラグ58は、スペーサー16と回転子ハブ40とを回転可能に結合するために、回転子ハブ40のノッチ44内に受け入れられるように構成されている。ラグ58は、テーパーを付けることができ、ノッチ44内に圧入することができる。ラグ58またはノッチの数量、形状、および向きは、この場合も異なってよい。
【0019】
スペーサー18は、装置10の他の構成要素と共に組み立てられた関係において、ベアリング22およびトルク伝達部材34を支持するために設けられ、粉末金属を含む従来の材料で作ることができる。しかし、本発明の一態様によれば、スペーサー18は、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28よりも低い透磁率を有し、例えば、非強磁性材料で作ることができる。スペーサー18は、回転軸38のまわりに配置され、形状が略円筒状である。スペーサー18は、スリーブ36を受け入れる大きさとされた内径を有し、スリーブ36の上で支持され、軸方向で回転子ハブ40の一方の軸方向端部とスリーブ36の半径方向に延びるフランジとの間に配置されている。スペーサー18は、略円筒状の外側面を有し、ベアリング22は、その外側面で、回転子ハブ40およびスペーサー18内に画定された、対向するショルダ部間に支持することができる。
【0020】
ベアリング20は、フィールドシェル24に対して回転子ハブ40およびスペーサー16が回転するのを可能にするために設けられている。ベアリング20は技術上一般的である。ベアリング20の内輪は、スペーサー16および回転子ハブ40の上で支持され、スペーサー16および回転子ハブ40内に画定された、対向するショルダ部に当接している。ベアリング20の外輪は、フィールドシェル24を支持している。
【0021】
ベアリング22は、入力シャフト12、回転子14、およびスリーブ36に対してトルク伝達部材34が回転するのを可能にするために設けられている。ベアリング22は技術上一般的である。ベアリング22の内輪は、スペーサー18および回転子ハブ40の上で支持され、スペーサー18および回転子ハブ40内に画定された、対向するショルダ部に当接している。ベアリング22の外輪は、トルク伝達部材34を支持している。
【0022】
フィールドシェル24は、電導アセンブリ26を収容するために設けられている。シェル24はまた、回転子14と電機子28とを選択的に係合させる磁気回路の一部を形成している。フィールドシェル24は、鋼を含む従来の金属および金属合金から作ることができる。シェル24は円筒状であり、回転軸38のまわりに配置され、ベアリング20の外輪の上で支持されている。シェル24は、例えば、シェル24のスロット(図示せず)を貫通する留め具(図示せず)によって、回転しないように固定される。シェル24は、断面が略U字形であり、半径方向内側の環状部材60および半径方向外側の環状部材62を含む。
【0023】
内側部材60は、ベアリング20の外輪の上で支持されている。部材60は、断面が略L字形であり、軸方向に延びる内側磁極64を画定する。磁極64は、回転子14のハブ40の凹部48に延び、したがって、内側回転子磁極46の半径方向内側に配置されている。参照により、全開示が本明細書に援用される、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第7,493,996号明細書にさらに完全に説明されているように、磁極46、64の相対的な配置は、いくつかの理由から有利である。第1に、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28を含む磁気回路の磁気効率が、回路内の磁束の少なくとも一部に対する空隙の数量を減らすことで向上する。第2に、電導アセンブリ26が配置される環状間隙が拡大されて、アセンブリ26のフィールドシェル24内へのより容易な挿入および固定が可能になる。
【0024】
外側部材62は、内側部材60に結合され、内側部材60の上で支持されている。外側部材62は、端部壁66、軸方向に延びる外側磁極68、およびフランジ70を画定する。端部壁66は、部材60から半径方向外側に延びている。磁極68は、端部壁66と一体であり、端部壁66から軸方向に延びている。磁極68は、回転子14の磁極50から半径外側に配置されている。フランジ70は、端部壁66とは反対側の磁極68の端部で磁極68と一体になり、磁極68から半径方向外側に延びている。フランジ70は、磁極68の円周の少なくとも一部分に沿って延びている。
【0025】
電導アセンブリ26は、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28間で磁気回路を形成して、電機子28を回転子14と係合するように移動させ、シャフト12とトルク伝達部材34との間でトルクを伝達させるために設けられている。電導アセンブリ26は略環状であり、フィールドシェル24内で回転軸38のまわりに配置されている。特に、アセンブリ26は、シェル24の内側磁極64と外側磁極68との間に配置されている。アセンブリ26は、電気導体72および電気導体シェル74を含む。
【0026】
電気導体72として、従来の銅製コイルがあり得るが、代替として、他の公知の電気導体を使用することもできる。電気導体72は、バッテリーなどの電源(図示せず)に電気的に接続することができる。電気導体72への通電時に、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28間に磁気回路が形成される。磁束は、シェル24の外側磁極68から空隙を横断して回転子14の外側磁極50に流れる。次いで、磁束は、ディスク42と電機子28との間の空隙を横断して、ディスク42と電機子28との間を往復する。次いで、磁束は、回転子14のディスク42から回転子14のハブ40に流れる。最後に、磁束は、ハブ40からいくつかの磁路に沿ってフィールドシェル24の部材60、62に戻る。特に、磁束の一部は、内側回転子磁極46からシェル24の外側部材62に直接流れる。磁束の別の部分は、外側部材62に流れる前に、ハブ40から、内側部材60によって画定されたシェル24の内側磁極64を通って流れる。磁束のさらに別の部分は、ベアリング20の半径方向内側で、ハブ40からスペーサー16(少なくとも、これらの実施形態において、スペーサー16は、別の磁路に沿った構造体よりも低い透磁率を有する材料でできていない)に流れ、次いで、内側部材60および外側部材62に流れて、磁束の一部分が、内側回転子磁極46および内側フィールドシェル磁極64の高密度領域を回避するのを可能にし、回路の磁気効率をさらに向上させる。
【0027】
電気導体シェル74は、電気導体72を収容するために設けられ、フィールドシェル24内に電気導体72を取り付けるためにも使用される。シェル74は、従来のプラスチックから型成形することができる。シェル74は、組み込み端子コネクタ76を含むことができ、電気導体72は、組み込み端子コネクタ76を通じて、電源に電気的に接続することができる。シェル74はまた、電導アセンブリ26の回転を防止するために、フィールドシェル24の端部壁66の凹部内に受け入れられる大きさとされた1つまたは複数のラグを画定することができる。参照により、全開示が本明細書に援用される、本発明の譲渡人に譲渡された、係属中の米国特許出願第11/150,670号明細書に説明されているように、シェル74は、フィールドシェル24の外側磁極68に近接して配置され、複数の地点でシェル24に固定された、半径方向外側に延びるフランジを含むことができる。
【0028】
電機子28は、ブレーキトルクをトルク伝達部材34に伝達し、回転子14と部材34との間で駆動トルクを選択的に伝達するために設けられている。電機子28は、鋼を含む様々な従来の金属および金属合金から作ることができる。電機子28は構造的に環状であり、回転軸38のまわりに配置され、回転子ディスク42に対向するクラッチ係合面を画定する。電機子28は、空隙分だけ回転子ディスク42から軸方向に離間している。回転子ディスク42と同様に、電機子28は、電導アセンブリ26の通電時に、磁束が回転子14と電機子28との間を往復するのに寄与する、角度的に離間したスロット(図示せず)からなる半径方向に離間した複数の列を含むことができる。電機子28は、伝達部材34に結合されている。特に、電機子28は、複数の板ばね32によってトルク伝達部材34に結合することができる。
【0029】
ブレーキ板30は、電機子28が係合してトルク伝達部材にブレーキをかけるためのブレーキ面を提供する。ブレーキ板30は、鋼などの従来の金属および金属合金を含む、比較的高い透磁率を有する従来の材料で作ることができる。ブレーキ板30は、装置10の円周の少なくとも一部分、好ましくは、装置10の円周の一部分だけのまわりに延び、フィールドシェル24に結合されている。特に、ブレーキ板30は、フィールドシェル24のフランジ70に結合され、1つまたは複数の留め具78を使用して、フランジ70から吊されている。留め具78は、電導アセンブリ26が通電された場合に、ブレーキ板30とフィールドシェル24との間の磁束の転流を少なくするか、またはなくし、それにより、クラッチの係合を容易にするために、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28の透磁率よりも低い透磁率を有する1つまたは複数の材料(非磁性材料を含む)から作ることができる。ブレーキ板30は、参照により、全開示が本明細書に援用される、本発明の譲渡人に譲渡された、同時係属中の米国特許出願公開第2010/0116616号明細書に説明されているスペーサーおよびシムなどの1つまたは複数のスペーサー80またはシムを使用して、フィールドシェル24のフランジ70から軸方向に離間することができる。スペーサー80は、ブレーキ板30の位置調整により、回転子14および電機子28のそれぞれのクラッチ係合面、ならびに電機子28およびブレーキ板30のブレーキ係合面の摩耗が補償されるのを可能にする。スペーサー80は、留め具78が貫通する穴を含むことができる。スペーサー80も同様に、ブレーキ板30とフィールドシェル24との間の磁束の転流を少なくするか、またはなくすために、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28の透磁率よりも相対的に低い透磁率を有する1つまたは複数の材料(非磁性材料を含む)から作ることができる。例えば、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第7,732,959号明細書を参照すると、板30は、1つまたは複数の磁石(図示せず)を収容し、それにより、電機子28および磁石を含む磁気回路の一部を形成して、ブレーキトルクをトルク伝達部材34に供給するために、電機子28を引き寄せてブレーキ板30と係合させる際にばね32を手助けすることができる。
【0030】
ばね32は、駆動およびブレーキトルクを電機子28からトルク伝達部材34に伝達し、電機子28の部材34に対する軸方向移動、ならびに回転子ディスク42に向かう、および回転子ディスク42から離れる軸方向移動を可能にする。ばね32は、ステンレス鋼で作ることができ、リベット、ねじ、ボルト、またはピンなどの従来の留め具82を使用して、一方の端部で電機子28に結合され、反対側の端部で部材34に結合されている。
【0031】
トルク伝達部材34は、シャフト12と芝刈り機ブレードなどの別の装置との間でトルクを伝達する。部材34は、トルク伝達ベルトが巻き付けられ、装置に連結される従来のプーリー84を含むことができる。部材34は、プーリー84が支持された支持カップ86をさらに含み、プーリー84は、支持カップ86から半径方向外側に延びている。支持カップ86は、ベアリング22の外輪の上で支持され、軸方向に延びる部分88と、部分88に対して半径方向に延びるフランジ90とを含む。各ばね32の一方の端部は、留め具82を使用して、従来の態様でフランジ90に結合されている。
【0032】
スリーブ36は磁束遮断器であり、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28を含む磁気回路からの磁束漏れを低減する手段を提供する。特に、スリーブ36は、電機子28からトルク伝達部材34を通ってベアリング22およびシャフト12に入り、回転子14に戻る磁路(または漏れ回路)に沿った磁束漏れを低減する手段を提供する。スリーブ36は、例えば、オーステナイトステンレス鋼などの非強磁性材料を含む、磁気回路の部材(すなわち、回転子14、フィールドシェル24、および電機子28)よりも低い透磁率を有する材料でできている。その結果、より多くの磁束が、回転子/電機子境界部に残り、それにより、境界部での磁束密度および引付け力が大きくなる。スリーブ36は、ベアリング22の半径方向内側で回転軸38のまわりに配置され、形状が略円筒状である。スリーブ36は、受け入れたシャフト12に合わせた大きさとされた内径を有する。図示した実施形態では、スリーブ36は、シャフト12の一方の軸方向端部にある、シャフト12の直径が小さい部分を受け入れている。スリーブ36は、従来のキー/キー溝の関係を使用してシャフト12に結合することができる。特に、スリーブ36は、キー(図示せず)と相補的に成形され、キーを受け入れるように構成された、軸方向に延びるキー溝(図示せず)を画定することができる。キー溝は、シャフト12の対応するキー溝と対向することができ、キーは、シャフト12へのスリーブ36の組み込み時にキー溝に挿入される。あるいは、スリーブ36およびシャフト12の一方は、スリーブ36およびシャフト12の他方のキー溝内に受け入れられるように構成された、半径方向に延びる一体キーを有して成形することができる。スリーブ36は、スリーブ36の軸方向長さに沿って変わる外径を有する。特に、スリーブ36は、ハブ40の一部分およびスペーサー18の一部分が、共に半径方向でベアリング22とスリーブ36との間に配置されるような位置において、回転子ハブ40およびスペーサー18内に受け入れられる大きさとされた外径を有する1つの部分92を有する。スリーブ36は、一方の軸方向端部に、部分92の外径よりも大きい外径を有する別の部分96を有する。部分92、96は、スペーサー18の一方の軸方向端部が対接するショルダ部を共同して画定する。
【0033】
ここで図2を参照すると、本発明の別の実施形態による回転結合装置110が示されている。装置110は装置10と同様である。したがって、同様の構造体は同じ参照番号で特定され、同様の構造体についての説明は上記に見出すことができる。装置110は、軸方向で回転子114のハブ140とスペーサー18との間に配置されたスリーブ136を含むという点で装置10と異なる。スリーブ136は、基本的に、回転子ハブ140が装置10のハブ40と比べて軸方向に短縮されるように、回転子ハブの一部分と置き換わる。スリーブ136は、この場合も磁束遮断器であり、回転子114、フィールドシェル24、および電機子28を含む磁気回路からの磁束漏れを低減する手段を提供する。特に、スリーブ136は、電機子28からトルク伝達部材34を通ってベアリング22およびシャフト112に入り、回転子114に戻る磁路(または漏れ回路)に沿った磁束漏れを低減する手段を提供する。スリーブ136は、例えば、オーステナイトステンレス鋼などの非強磁性材料を含む、磁気回路の部材(すなわち、回転子114、フィールドシェル24、および電機子28)よりも低い透磁率を有する材料でできている。その結果、より多くの磁束が、回転子/電機子境界部に残り、それにより、境界部での磁束密度および引付け力が大きくなる。スリーブ136は、ベアリング22の半径方向内側で回転軸38のまわりに配置され、形状が略円筒状である。スリーブ136は、受け入れたシャフト112に合わせた大きさとされた内径を有する。スリーブ136は、従来のキー/キー溝の関係を使用してシャフト112に結合することができる。特に、スリーブ136は、キー(図示せず)と相補的に成形され、キーを受け入れるように構成された、軸方向に延びるキー溝(図示せず)を画定することができる。キー溝は、シャフト112の対応するキー溝と対向することができ、キーは、シャフト112へのスリーブ136の組み込み時にキー溝に挿入される。あるいは、スリーブ136およびシャフト112の一方は、スリーブ136およびシャフト112の他方のキー溝内に受け入れられるように構成された、半径方向に延びる一体キーを有して成形することができる。スリーブ136は、スリーブ136の軸方向長さに沿って変わる外径を有する。特に、スリーブ136は、一方の軸方向端部に、回転子ハブ140の軸方向端面に形成された凹部内に受け入れられる大きさとされた外径を有する1つの部分192を有する。スリーブ136は、一方の軸方向端部に、部分192の外径よりも小さい外径を有する別の部分196を有する。部分192、196は、ベアリング22の一方の軸方向端部が対接するショルダ部を共同して画定する。
【0034】
ここで図3を参照すると、本発明の別の実施形態による回転結合装置210が示されている。装置210は装置10、110と同様である。したがって、同様の構造体は同じ参照番号で特定され、同様の構造体についての説明は上記に見出すことができる。装置210は、装置210のトルク伝達部材234がフランジ290を有する支持カップ286を含み、フランジ290は、支持カップ286の軸方向に延びる部分288から半径方向外側に伸びている点で装置10、110と異なっている。フランジ290は、半径方向外側に延びているので、フランジ290と、回転子ハブ40およびシャフト12との間の空隙が大きくなっている。その結果、より多くの磁束が、回転子/電機子境界部に残り、それにより、境界部での磁束密度および引付け力が大きくなる。
【0035】
本発明による回転結合装置は、トルク伝達部材を通る磁路に沿った磁束漏れを低減するか、またはなくすことにより、従来の装置に勝る改良点を示す。上記のいくつかの実施形態では、スリーブ36またはスリーブ136は、電機子28からトルク伝達部材34および支持ベアリング22およびシャフト12を通って回転子14、または回転子114に戻る磁路(または漏れ回路)に沿った磁束遮断器として機能し、それにより、磁路に沿った磁束漏れを低減する。上記の他の実施形態では、トルク伝達部材234の支持カップ286の半径方向外側に向けられたフランジ290は、支持カップ286と、シャフト12および/または回転子14との間の空隙を大きくし、かつ/あるいは比較的低い透磁率を有する材料でできており、それにより、同じ磁路に沿った磁束漏れを低減する。
【0036】
本発明が、本発明の1つまたは複数の特定の実施形態に関連して図示および説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができると当業者には分かるであろう。
図1
図2
図3