特許第6016916号(P6016916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016916ディーゼルパティキュレートフィルタ及び排気ガス浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016916
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ディーゼルパティキュレートフィルタ及び排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/035 20060101AFI20161013BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161013BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20161013BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20161013BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20161013BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20161013BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20161013BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20161013BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20161013BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20161013BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20161013BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   F01N3/035 A
   F01N3/28 301P
   F01N3/10 A
   F01N3/022 C
   B01J23/50 A
   B01J23/44 A
   B01J23/42 A
   B01J23/46 311A
   B01J35/04 301E
   B01J37/00 K
   B01J37/02 301L
   B01D53/94 241
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-522528(P2014-522528)
(86)(22)【出願日】2013年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2013066241
(87)【国際公開番号】WO2014002772
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-145301(P2012-145301)
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】大道 中
【審査官】 永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−11195(JP,A)
【文献】 特開2009−255055(JP,A)
【文献】 特開2012−36821(JP,A)
【文献】 特開2010−221155(JP,A)
【文献】 特開2007−21430(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/041741(WO,A1)
【文献】 特開2009−39632(JP,A)
【文献】 特開2006−159134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38,
B01J 23/00−23/96,35/02−35/10,
37/00−37/02,
B01D 53/86−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ基材の隔壁内部を排気ガスが流通するディーゼルパティキュレートフィルタであって、排気ガスが流入する側の前記隔壁の表面の一部又は全部に、銀及びパラジウムを含む銀合金を触媒活性成分として含有すると共に複数の粒子状の無機多孔質体を含有し、且つ、前記銀合金が前記粒子状の無機多孔質体に担持された状態で存在する銀触媒層を形成してなる構成を備えたディーゼルパティキュレートフィルタであって、
前記銀触媒層の表面に、前記銀触媒層の厚さの50%以上の平均厚さを有し、銀触媒層に添加された前記複数の粒子状の無機多孔質体によって形成される表面凹凸部を備えることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
排気ガスの上流側を開口し、下流側が封鎖されたガス流入セルと、排気ガスの上流側が封鎖され、下流側を開口してなるガス流出セルとを、基材隔壁を介して隣接して設けてなる構成を有するフィルタ基材を備えたディーゼルパティキュレートフィルタであって、
前記ガス流入セルの隔壁表面の一部又は全部に、銀及びパラジウムを含む銀合金を触媒活性成分として含有すると共に複数の粒子状の無機多孔質体を含有し、且つ、前記銀合金が前記粒子状の無機多孔質体に担持された状態で存在する銀触媒層を形成してなる構成を備えたディーゼルパティキュレートフィルタであって、
前記銀触媒層の表面に、前記銀触媒層の厚さの50%以上の平均厚さを有し、銀触媒層に添加された前記複数の粒子状の無機多孔質体によって形成される表面凹凸部を備えることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
前記ガス流出セルの隔壁の一部又は全部に、Pt、Pd及びRhのよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を、触媒活性成分として含有する貴金属触媒層を備えた請求項2に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
前記銀及びパラジウムを含む銀合金における、銀とパラジウムの比率は99:1〜1:3であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
前記銀触媒層は、銀及びパラジウムを含む銀合金が、前記粒子状の無機多孔質体に担持されてなる触媒担持体を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項6】
前記銀触媒層の厚さは、70μm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項7】
前記銀触媒層中の銀は、基材体積に対して1g/L以上の割合で含有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタを備えた排気ガス浄化装置。
【請求項9】
内燃機関から排出される排気ガスが流動するガス流通路内において、請求項1〜7の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタの上流側に、Pt、Pd及びRhのよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む触媒構造体を備えた排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、特にディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するのに用いるディーゼルパティキュレートフィルタ(「DPF」と称する)及びこれを用いた排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガスには、燃料中の硫黄分にもとづく硫酸塩や、不完全燃焼に由来するタール状の微粒子状物質(「PM」と称する)、窒素酸化物(NOx)などが含まれている。
【0003】
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるPMを除去する装置として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(「DPF」と称する)でPMを捕集し、捕集したPMを適宜タイミングで燃焼除去する排気ガス浄化装置が知られている。
このようなDPFは、通常、ハニカム構造を呈する多孔質製のフィルタ基材が骨格を為し、該基材の隔壁内部を排気ガスが流通する際に、該隔壁表面でPMを捕集するようになっている。
【0004】
ところで、この種のDPFにおいては、高価なプラチナ(白金)の代わりに、銀を触媒活性成分として用いたものが、最近提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2003−286835号公報)には、エンジン排気ガスの排気路に、γ−アルミナにチタンおよび銀を担持した粒状またはモノリス状の脱硝触媒と酸化触媒とを直列に配置し、エンジン排気ガスを、燃料の一部を取り出した燃料還元剤の存在下に脱硝触媒に接触させ、その後、酸化触媒に接触させるエンジン排気ガスの浄化方法が開示されている。
【0006】
特許文献2(特開2007−196135号公報)には、内燃機関から排出される排ガス中に含まれる粒子状物質を浄化する排ガス浄化触媒に関し、銀が担持されたベーマイトを焼成してなる排ガス浄化触媒が開示されている。
【0007】
特許文献3(特開2007−315328号公報)には、ディーゼル機関に接続された排ガス管と、前記排ガス管内の排ガス通路に配置され且つセリアと銀とを含む酸化触媒を備えるPM浄化体と、前記排ガス管内の排ガス通路に配置され且つゼオライトと前記ゼオライトに担持された遷移金属とを含むNOx選択還元型触媒を備えるNOx浄化体と、を備えたディーゼル排ガス浄化用構造体が開示されている。
【0008】
特許文献4(特表2009−513335号公報)には、ディーゼルエンジンの排気通路に挿入される排気ガス浄化装置において、銀(Ag)成分、銅(Cu)成分またはこれらの混合物が担持されてなる窒素酸化物低減触媒部と、Pt、Pd、Ir及びRhからなる群から選ばれた1種以上からなる白金族触媒が担持されている粒子除去フィルター部とを、排気ガスの流れに対して上流から順次に設け、窒素酸化物低減触媒部の前端部にディーゼル噴射インジェクターが設けられたディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置が開示されている。
【0009】
特許文献5(特開2009−112962号公報)には、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、排ガスが流通するガス流路と、このガス流路に設けられ且つ多数の細孔が形成されたパティキュレートフィルタと、を備え、排ガスに接触する前記パティキュレートフィルタの導入面は、その略全体が、前記細孔よりも小さい孔径を有する微細孔が形成された微多孔体で被覆され、前記微多孔体は、酸素貯蔵・放出性の酸化物からなる担体と、この担体に担持されたAgを含有する触媒と、を備える排ガス浄化装置が開示されている。
【0010】
特許文献6(特開2010−42396号公報)には、一方の端部を排ガス流入部とし、他方の端部を排ガス流出部とするウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材と、該多孔質フィルタ基材に担持された触媒とを備え、該多孔質フィルタ基材は、軸方向に貫通して形成された複数の貫通孔のうち、排ガス流入部が開放されるとともに排ガス流出部が閉塞された複数の流入セルと、該複数の貫通孔の排ガス流入部が閉塞されるとともに排ガス流出部が開放された複数の流出セルと、該流入セル及び該流出セルを隔てるセル隔壁とを備え、該触媒は、該セル隔壁の少なくとも該流入セル側の表面に担持された第1の触媒層と、該セル隔壁を形成する該多孔質フィルタ基材の気孔の壁面表面に担持された第2の触媒層とからなり、該排ガス流入部から流入する内燃機関の排ガスを該セル隔壁を介して該流出セルに流通させる間に、該排ガス中のパティキュレートを前記触媒により酸化し、浄化された該排ガスを該排ガス流出部から流出せしめる排ガス浄化用酸化触媒装置において、該触媒は、一般式Y1−xAgMn1−yTiで表される複合金属酸化物と、酸化ジルコニウムとの混合物の多孔質体からなることを特徴とする排ガス浄化用酸化触媒装置が開示されている。
【0011】
特許文献7(特開2010−284583号公報)には、一方の端部を排ガス流入部とし、他方の端部を排ガス流出部とするウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材と、該多孔質フィルタ基材に担持され複合金属酸化物からなる酸化触媒とを備える排ガス浄化用酸化触媒装置において、該複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物の水溶液を、スプレードライ法、噴霧熱分解法、凍結乾燥法のいずれか1種の方法により、該多孔質フィルタ基材の表面に塗布し、焼成することにより形成され、該排ガス流入部から流入した排ガスが導入される該多孔質フィルタ基材の表面を被覆するとともに、該多孔質フィルタ基材の細孔よりも孔径が小さい細孔を有する多孔質体からなる該酸化触媒を備え、該酸化触媒は、化学式YMnO、Y1−xAgMnO(0.01≦x≦0.30)、Y1−xAgMn1−y(0.01≦x≦0.30かつ0.005≦y≦0.30、AはTi、Nb、Ta、Ru、Ce、Feからなる群から選択される1種の金属)で表されるいずれか1種の複合金属酸化物からなることを特徴とする排ガス浄化用酸化触媒装置が開示されている。
【0012】
特許文献8(特開2011−152529号公報)には、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を浄化するためのフィルターであって、フィルター基材の表面に銀被膜を有し、さらに銀被膜上に触媒を有していることを特徴とする排ガス浄化用フィルターが開示されている。
【0013】
特許文献9(特開2012−36821号公報)には、Pt、Pd及びRhのよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む第一酸化触媒、銀および/または銀の酸化物を含む銀含有DPF触媒、並びに、Pt、Pd及びRhのよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む第二酸化触媒が、内燃機関から排出される排気ガスの上流側から下流側に沿ってこの順序で配置されていることを特徴とする排気ガス浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−286835号公報
【特許文献2】特開2007−196135号公報
【特許文献3】特開2007−315328号公報
【特許文献4】特表2009−513335号公報
【特許文献5】特開2009−112962号公報
【特許文献6】特開2010−42396号公報
【特許文献7】特開2010−284583号公報
【特許文献8】特開2011−152529号公報
【特許文献9】特開2012−36821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
流通する排気ガスが接触するフィルタ基材表面に、銀を含有する銀触媒層を形成した場合、高温になると銀触媒層中の銀が拡散して基材内に移動し、基材成分(例えばSiO2)と反応して失活するようになるため、特に高温でのPM燃焼能力が低下するという課題が明らかになってきた。
また、白金などの貴金属を含有する貴金属触媒層を、前記銀触媒層を形成した基材の反対面に形成した場合、銀触媒層中の銀が上記のように基材内を移動して貴金属触媒層中の貴金属と接触し、貴金属の触媒活性をも失活させてしまうという課題も明らかになってきた。
【0016】
そこで本発明は、流通する排気ガスが接触するフィルタ基材表面に、銀を触媒活性成分として含有する銀触媒層を形成してなる構成を備えたディーゼルパティキュレートフィルタに関し、銀の拡散性を抑制し、特に高温でのPM燃焼能力を安定して発揮させることができる、新たなディーゼルパティキュレートフィルタを提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、フィルタ基材の隔壁内部を排気ガスが流通するディーゼルパティキュレートフィルタであって、排気ガスが流入する側の前記隔壁の表面の一部又は全部に、銀及びパラジウムを含む銀合金を触媒活性成分として含有する銀触媒層を形成してなる構成を備えたディーゼルパティキュレートフィルタ(「DPF」と称する)を提案する。
【0018】
本発明は、好ましい一例として、排気ガスの上流側が開口され、下流側が封鎖されたガス流入セルと、排気ガスの上流側が封鎖され、下流側が開口されたガス流出セルとを、基材隔壁を介して隣接して設けてなる構成を備えたDPFであって、ガス流入セルの隔壁の表面の一部又は全部に、銀又は銀合金又はこれら両方を含む銀触媒層を備えたDPFを提案する。
【発明の効果】
【0019】
本発明が提案するDPFは、銀にパラジウムを加えて合金化させ、これを用いて、排気ガスが流入する側のフィルタ基材の隔壁の表面に銀触媒層を形成することにより、銀触媒層中の銀の高温時における拡散性を抑制することができ、高温でのPM燃焼能力を安定して発揮させることができるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のDPFの一例を模式的に示した斜視図である。
図2図1に示したDPFの一部を拡大して示した断面図である。
図3図1の変形例に係るDPFの一部を拡大して示した断面図である。
図4図3の変形例に係るDPFの一部を拡大して示した断面図である。
図5】本発明の排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態の一例としてのディーゼルパティキュレートフィルタ(「本DPF」と称する)1について説明する。
【0022】
<本DPF>
本DPF1は、フィルタ基材2における、排気ガスが流入する側の隔壁の表面の一部又は全部に、銀及びパラジウムを含む銀合金を触媒活性成分として含有する銀触媒層5を形成してなる構成を備えたディーゼルパティキュレートフィルタである。
【0023】
本DPF1は、フィルタ基材1の隔壁内部を排気ガスが流通することができ、排気ガスが該隔壁内部を流通する際、該隔壁表面でガス中のPMを捕集することができ、捕集したPMは銀触媒層5における銀の燃焼触媒作用により燃焼させることができる。
【0024】
(基材)
本DPFの骨格をなすフィルタ基材2は、図1及び図2に示すように、ハニカム構造を呈し、排気ガスの流動方向に連通した複数のセル3を有し、各セル3は隔壁で互いに仕切られ、隣接するセルの端部が交互に目封じされている。これにより、排気ガスの上流側を開口し、下流側が封鎖されたガス流入セル3Aと、排気ガスの上流側が封鎖され、下流側が開口してなるガス流出セル3Bとが、基材隔壁を介して隣接して配置してなる構成を備えたものとなっている。
【0025】
但し、本DPFのフィルタ基材2の形状は、上記のような形状に限定されるものではない。例えば、ウォールスルー型、フロースルーハニカム型、ワイヤメッシュ型、セラミックファイバー型、金属多孔体型、粒子充填型、フォーム型など、DPFとして公知の基材を採用することが可能である。
【0026】
フィルタ基材2の材質は、セラミックス等の耐火性材料や金属材料などからなる多孔質材料であればよい。
セラミック製基材の材質としては、耐火性セラミック材料、例えば炭化ケイ素(SiC)、コージライト、コージライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルファアルミナおよびアルミノシリケート類などを挙げることができる。
金属製基材の材質としては、耐火性金属、例えばステンレス合金、Fe-Cr-Al合金、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム等が挙げられる。
これらの中でも、PdによるFeの基材への浸透抑制効果の観点から、炭化ケイ素(SiC)が特に好ましい。
【0027】
セル3の形成密度は、特に限定するものではないが、基材断面1cm2当たり10〜100個のセルが形成されたものが好ましい。
【0028】
隔壁の厚さは、特に限定するものではないが、10μm〜300μmの範囲内であるのが好ましい。
【0029】
(銀触媒層)
本DPFでは、上記フィルタ基材2において、ガスが流入する側の隔壁の表面の一部又は全部に、銀及びパラジウムを含む銀合金を触媒活性成分として含有する銀触媒層5を形成する。
例えば、図1及び図2に示すフィルタ基材2であれば、ガス流入セル3Aの隔壁の表面の一部又は全部に銀触媒層5を形成するのが好ましい。この際、ガス流入セル3Aの隔壁のうち、排気ガスが隔壁を通過する部分の表面に銀触媒層5を形成すればよい。
【0030】
前記銀触媒層5中の銀は、基材体積に対して1g/L以上含有するのが好ましく、中でも1.5g/L以上或いは10g/L以下、その中でも2.0g/L以上の割合で含有するのがさらに好ましい。
【0031】
前記銀及びパラジウムを含む銀合金における、銀とパラジウムの比率は99:1〜1:3であるのが好ましい。
銀に対してパラジウムを1wt%以上含有させることで、高温時における銀の拡散をより効果的に抑制することができる。また、75wt%以下であれば、銀の触媒活性効果を妨げることもない。
かかる観点から、銀とパラジウムの比率は5:1〜1:3であるのがさらに好ましい。
【0032】
前記銀合金は、銀及びパラジウムの効果を妨げない限りにおいて、銀及びパラジウム以外の元素を含有していてもよい。例えばNb、La、Fe、Y、Pr、Ba、Ca、Mg、SnおよびSrよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の元素又はその酸化物を含有してもよい。この際、銀及びパラジウムの効果を妨げない観点から、これらの含有量は1〜35質量%とするのが好ましい。
【0033】
前記銀触媒層5において、銀及びパラジウムを含む銀合金は、無機多孔質体に担持された状態で存在するのが好ましい。
【0034】
ここで、無機多孔質体としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される無機多孔質体、或いは、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などのOSC材からなる多孔質体を挙げることができる。
より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質体を挙げることができる。
中でも、セリウム酸化物の量が5〜50重量%であるであるセリウム-ジルコニウム複合酸化物からなる無機多孔質体が特に好ましい。セリウム酸化物の量が50重量%以下であれば、高温時、例えば700℃以上の温度に加熱された場合であっても、担体の比表面積が低下することがなく、触媒の熱劣化を引き起こすことを防止できるから好ましい。
また、当該無機多孔質体は、Nb、La、Fe、Y、Pr、Ba、Ca、Mg、SnおよびSrよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子の酸化物を含有していてもよい。
【0035】
前記銀触媒層5は、その他の成分、例えばバインダー成分や安定剤成分などを含んでいてもよい。
バインダー成分としては、SiO2、TiO2、ZrO2およびAl23よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のバインダー成分を挙げることができる。
安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、ホウ素、トリウム、ハフニウム、ケイ素、カルシウム、カリウム、ナトリウム、セシウム及びストロンチウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。
【0036】
前記銀触媒層5の厚さは、70μm以下であるのが好ましい。銀触媒層5の厚さが大きすぎると、銀触媒層中の銀と排気ガスとの接触機会へ減るため、分解効率が低下してしまう。他方、薄過ぎると、耐熱性が低下してしまう。かかる観点から、前記銀触媒層の厚さは5μm以上或いは50μm以下であるのがさらに好ましく、中でも10μm以上或いは40μm以下であるのがより一層好ましい。
【0037】
銀触媒層5の表面は、凹凸を有するように形成してもよい。例えば、銀触媒層5の厚さの50%以上の平均厚さを有する表面凹凸部を銀触媒層5の表面に形成するようにしてもよい。
銀触媒層5の表面にこのような表面凹凸部を形成すれば、表面凹凸部による隙間を通じて排気ガスが流れるため、排ガスによる背圧の上昇を抑制することができると共に、滞留したPM粒子の燃焼効率も向上させることができる。
かかる観点から、当該表面凹凸部の平均厚さは、銀触媒層5の厚さの50%以上であるのが好ましく、中でも60%以上、中でも65%以上、その中でも75%以上或いは95%以下であるのが好ましい。
【0038】
なお、銀触媒層5の表面凹凸部の平均厚さは、上述のように凹部の中でも一番低い凹部の底から凸部までの高さの平均値であり、その測定に際しては、例えば株式会社キーエンス製「3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800」を用いて測定することができる。
測定原理としては、最初に試料を水平にしてSEM画像を撮影し、次に、試料を所定角度(θ)傾けて再度SEM画像を撮影する。このように試料をθ傾けて、観察像上でaの移動距離を計測してaの高さを求め、観察像からaに相当する点を自動的に数万ポイント抽出して演算し、3D像を構築することにより、表面凹凸部の平均厚さを測定するものである。
【0039】
このような表面凹凸部を備えた銀触媒層5を形成する方法としては、銀触媒層5の原料、例えば銀とパラジウムが溶解している銀溶液中に、シリカやアルミナなどの無機多孔質体粉末を添加して混合し、これを湿式粉砕して粉砕スラリーを得、この粉砕スラリーに、必要に応じてその他の成分、例えばバインダー成分や安定剤成分などを加えてコート組成物を調製して、これをコートし、焼成して銀触媒層5を形成することができる。
この際、スラリーを湿式粉砕する際の粉砕エネルギーを制御することで、銀触媒層5の表面凹凸部の平均厚さを調整することができる。例えばボールミルを使用して粉砕する場合であれば、ボールミルの大きさ、スラリー量に対するボールミルの個数割合、回転数及び回転時間などを調整して粉砕エネルギーを制御すればよく、粉砕エネルギーを大きくすれば、銀触媒層5の表面凹凸部の平均厚さを小さくすることができる。
【0040】
(貴金属触媒層)
本DPFは、図3に示すように、さらに前記ガス流出セル3Bの隔壁の表面の一部又は全部に、Pt、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む貴金属触媒層6を積層するようにしてもよい。
また、図4に示すように、貴金属触媒層6をガス流出セル3Bの隔壁の表面から内部に向けて埋設するように設けてもよいし、また、貴金属触媒層6の一部をガス流出セル3Bの隔壁の表面に設け、一部を埋設するように設けてもよい。
ガス流出セル3Bの隔壁の一部又は全部に貴金属触媒層6を設けることにより、排ガス温度を上げるために添加した燃料の未燃焼分であるCOやHCなどを、この貴金属触媒層6によって効率的に処理することができる。
但し、該貴金属触媒層6は必要に応じて設けるのが好ましく、必ず設ける必要はない。
【0041】
このように貴金属触媒層6を設けた場合、銀が拡散して貴金属触媒層6中の貴金属と接触すると、該貴金属は即座に触媒活性を失活してしまう。しかし、本DPFは、銀の拡散を抑制することができるため、該貴金属の失活を防止することができる。
【0042】
貴金属触媒層6中の貴金属としては、銀(Ag)よりも電気陰性度の高いRh、Pt、Pd、Ir、Auのいずれかの貴金属を単独であるいは組み合わされて採用するのが好ましい。特にRh、Pt及びPdが好ましく、これらは単独であるいは組み合わせて使用するのが好ましい。
【0043】
貴金属触媒層6中の貴金属は、多孔質基材の体積1リットルに対して、0.01g〜10g、中でも0.1g以上或いは5g以下の範囲内の量で含有されるのが好ましい。このような量で触媒が貴金属を含有することにより、排気ガスを効率的に浄化することができる。
【0044】
貴金属触媒層6において、貴金属は、無機多孔質体に担持された状態で存在するのが好ましい。
【0045】
ここで、無機多孔質体としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される無機多孔質体、或いは、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などのOSC材からなる多孔質体を挙げることができる。
より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質体を挙げることができる。
中でも、セリウム酸化物の量が5〜50重量%であるであるセリウム-ジルコニウム複合酸化物からなる無機多孔質体が特に好ましい。セリウム酸化物の量が50重量%を上回る場合には、高温時、例えば700℃以上の温度に加熱すると担体の比表面積が低下して、最終的に触媒の熱劣化を引き起こす傾向が生ずる。
また、当該無機多孔質体は、Nb、La、Fe、Y、Pr、Ba、Ca、Mg、SnおよびSrよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子の酸化物を含有していてもよい。
【0046】
貴金属触媒層6は、その他の成分、例えばバインダー成分や安定剤成分などを含んでいてもよい。
バインダー成分としては、SiO2、TiO2、ZrO2およびAl23よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のバインダー成分を挙げることができる。
安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、ホウ素、トリウム、ハフニウム、ケイ素、カルシウムおよびストロンチウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。
【0047】
貴金属触媒層6の厚さは、10μm〜100μmであるのが好ましい。貴金属触媒層6の厚さが大きすぎると、貴金属触媒層6中の触媒活性成分と排気ガスとの接触機会へ減るため、分解効率が低下してしまう。薄過ぎると、耐熱性が低下してしまう。かかる観点から、前記貴金属触媒層6の厚さは10μm以上或いは70μm以下であるのがさらに好ましく、中でも20μm以上或いは50μm以下であるのがより一層好ましい。
【0048】
<製法>
次に、本DPFの製造方法の一例について説明する。
【0049】
銀触媒層5は、銀とパラジウムが溶解している銀溶液中に、シリカやアルミナなどの無機多孔質体粉末を添加してスラリーを調製し、これをフィルタ基材表面の一部又は全部、より具体的には、例えば上記ガス流入セル3Aの隔壁の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥し、例えば空気中、酸素富化空気などの酸化性雰囲気において、例えば400〜700℃で焼成するか還元することにより銀触媒層5を形成すればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0050】
銀化合物を溶媒に溶解している銀が溶解している銀溶液を調製すればよい。
該銀化合物としては、例えば硝酸銀、酢酸銀、フッ化銀などを用いることができ、溶媒としては、酢酸、アンモニア水などを用いることができる。
【0051】
可溶性銀化合物の溶液から銀化合物を金属銀に還元して担体上に析出させることで、銀が微細粒子として担体上に付着し、銀の表面積が大きくなることが考えられる。このような効果は上記の担体粒子以外の担体粒子を用いた場合にも得られると考えられるが、上記の担体粒子を用いた場合に特に顕著である。
この際、還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ハイドロサルファイト、チオ硫酸ソーダ、ホルマリン、亜硝酸カリウム、亜硝酸水素カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アンモニウム、グリコース、クエン酸第一鉄溶液、タンニン酸、ヒドラジンヒドラード、エチレンジアミン四酢酸、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、次亜リン酸などを挙げることができる。
【0052】
なお、銀触媒層5の形成に関しては、なるべく基材内に銀溶液が浸透しないようにするのが好ましい。銀溶液中の銀が基材内に浸透して例えばSiCなどと反応すると、銀が失活するからである。但し、基材は多孔質であるため、多少は基材内に銀溶液が浸透するのはやむを得ない。
【0053】
銀触媒層5を形成する際、上述したように、スラリーを湿式粉砕する際の粉砕エネルギーを制御することで、銀触媒層5の表面に表面凹凸部を形成することができると共に、該表面凹凸部の平均厚さを調整することができる。例えばボールミルを使用して粉砕する場合であれば、ボールミルの大きさ、スラリー量に対するボールミルの個数割合、回転数及び回転時間などを調整して粉砕エネルギーを制御すればよく、粉砕エネルギーを大きくすれば銀触媒層5の表面凹凸部の平均厚さを小さくすることができる。
【0054】
他方、貴金属触媒層6は、貴金属が溶解している銀溶液中に、シリカやアルミナなどの無機多孔質体粉末を添加してスラリーを調製し、これをフィルタ基材表面の一部又は全部、より具体的には、例えば上記ガス流出セル3Bの隔壁の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥し、焼成することにより貴金属触媒層6を形成すればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0055】
<本排気ガス浄化装置>
次に、前述した本DPFを用いた排気ガス浄化装置(「本排気ガス浄化装置」と称する)について説明する。
【0056】
本排気ガス浄化装置は、例えば図5に示すように、内燃機関から排出される排気ガスが流動するガス流通路10内において、上記本DPF1を配置すると共に、該本DPF1の上流側に、Pt、Pd及びRhのよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む第1触媒構造体11を配置し、さらにその上流側に、排気ガスの温度を調整するための加熱手段12を配置するのが好ましい。
【0057】
この際、同一ケーシング内に本DPF1と第1触媒構造体11を配置するようにしてもよいし、また、別のケーシング内にそれぞれ本DPF1と第1触媒構造体11を配置するようにしてもよい。
【0058】
(第1触媒構造体)
第1触媒構造体11は、例えば、多孔質セラミックス製の基材を用いて形成することができる。
多孔質セラミックス製基材は、例えばコージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素などで形成することができる。また、メタルハニカム基材も第一酸化触媒21の基材として有効に使用することもできる。
【0059】
この多孔質基材(メタルハニカムを含む)としては、長手方向に多数の貫通孔(セル)が形成された形態を有しており、それぞれの貫通孔が隔壁で区画されたものを好ましく使用することができる。
隔壁の厚さ(T)は、10〜300μmの範囲内にあることが好ましい。
また、この多孔質基材は、排気ガスとの接触面積が大きいことが好ましく、基材の表面積は10〜50cm2/cm3の範囲内にあることが好ましい。
このような多孔質基材の断面1cm2あたり、15〜200個のセルが形成された多孔質基材を使用することが好ましい。
【0060】
このような多孔質基材の直径は、この触媒を含有する排気ガス流路径にあわせて適宜設置することができるが、触媒を設ける部分のケーシングである排気ガス流路径(内径)の90〜98%程度の直径を有する多孔質基材が使用しやすく、しかも、排気ガスのほとんど全部が触媒と接触して排気されるので好ましい。
【0061】
この第1貴金属触媒体11には、Rh、Pt、Pd、Ir、Auのいずれかの貴金属を単独であるいは組み合わされて含有するものが好ましい。中でもRh、Pt、Pdが好ましく、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0062】
これらの第一酸化触媒構造体11には、上記のような貴金属が、多孔質基材の体積1リットルに対して、0.1〜10g、好ましくは1〜5gの範囲内の量で含有されるのが好ましい。このような量で触媒が貴金属を含有することにより、排気ガスを効率的に浄化することができる。
【0063】
多孔質基材に固着されている触媒成分は、無機多孔質体に担持された状態で存在するのが好ましい。
ここで、無機多孔質体としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される無機多孔質体、或いは、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などのOSC材からなる多孔質体を挙げることができる。
【0064】
第一酸化触媒は、さらに耐熱性を強化したアルミナやアルミナ複合酸化物を含有することができる。
【0065】
(加熱手段)
排気ガス中のPMが本DPFの表面に捕集され堆積すると、DPFのPM捕集能力が低下するため、適宜のタイミングで本DPFの表面に堆積したPMを燃焼させることにより、本DPFを再生させる必要がある。
内燃機関からの排気ガス中には、PMが含まれており、500℃以下の低温では、有効に触媒が作用しない。この内燃機関からの排気ガスの温度は150〜180℃程度であり、この温度では、煤(PM)を燃焼させることはできないので、煤が燃焼する550℃以上、好適には600〜650℃にまで排気ガスの温度を上げることで、本DPFの銀触媒層に堆積した煤(PM)を、銀の触媒作用により効率よく燃焼させることができ、本DPFを短時間で再生することができる。
【0066】
加熱手段12としては、例えば内燃機関で使用した燃料を直接噴霧する手段などを挙げることができる。
【0067】
また、本排気ガス浄化装置は、さらにNOx処理触媒(図示なし)を配置するようにしてもよい。NOx処理触媒を配置することで、NOxの大部分を処理してN2として排気することができる。
ここで使用されるNOx触媒は、通常使用されている尿素SCR触媒やNOx触媒を用いることができる。
【0068】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0070】
(実施例1)
Al23(80質量部)に、硝酸銀水溶液及び硝酸パラジウム水溶液を含浸させ、120℃で蒸発乾固させた。これを800℃×20時間焼成し、AgとPdを合金化させてAgPd合金パティキュレート焼成触媒粉末を得た。この際、AgPd合金におけるAgとPdのモル比率は99:1であった。
このAgPd合金パティキュレート燃焼粉末200g、アルミナ濃度20質量%のアルミナゾル500g及び純水300gを混合し、ボールミルで湿式粉砕し、AgPdスラリーを得た。なお、この際のボールミルは、メディア(球石)としてアルミナ製ボールミル(大きさ20nm)を使用し、スラリー量に対するボールミルの個数割合を30%とし、回転数40rpm、回転時間5時間で行った。
【0071】
直径143.8mm、長さ152.4mmのSiC製DPF(300セル/平方インチ、壁厚12ミル)に、該DPFの入口側から長さ方向で80%の位置まで、加熱溶解したパラフィンを含浸させ、吸引により余分なパラフィンを除液した。その後、冷却してパラフィンを硬化させた。これにより、入口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁内の細孔をパラフィンで埋めた。空気、スラリーがセル内を流れるようにするために出口側20%のセル壁内はパラフィンを埋め込まなかった。
【0072】
DPFの出口側から減圧にして、入口側からAgPdスラリーを押し込み、ガス流入セルにスラリーを注入した。余剰スラリーは、吸引により取り除き、70℃で3時間乾燥後、500℃で1時間焼成してパラフィンを除去し、ガス流入セルの入口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁表面全面に、AgPd合金を含有する銀触媒層を形成してなるAgPd合金パティキュレート燃焼触媒を得た。
この際、銀触媒層の厚さは30μmであった。
【0073】
(比較例1)
実施例1において、AgPd合金を含有する銀触媒層を形成する代わりに、硝酸銀水溶液のみを含浸させて、Pdを含有しない同量の銀触媒層を形成してAgパティキュレート燃焼触媒を得た。
この際、銀触媒層の厚さは30μmであった。
【0074】
(比較例2)
実施例1において、AgPd合金を含有する銀触媒層を形成する代わりに、硝酸Pt水溶液のみを含浸させて、同量のPt触媒層を形成してなるPtパティキュレート燃焼触媒を得た。
この際、Pt触媒層の厚さは30μmであった。
【0075】
(実施例2)
実施例1と同様に、AgPd合金を含有する銀触媒層を形成してなるAgPd合金パティキュレート燃焼触媒を得た。
次いで、Pt粉末200g、アルミナ濃度20質量%のアルミナゾル500g、純水300gを混合し、ボールミルで湿式粉砕し、Ptスラリーを得た。なお、この際のボールミルは、メディア(球石)としてアルミナ製ボールミル(大きさ20nm)を使用し、スラリー量に対するボールミルの個数割合を30%とし、回転数40rpm、回転時間5時間で行った。
【0076】
該DPFの出口側から長さ方向で80%の位置まで、加熱溶解したパラフィンを含浸させ、吸引により余分なパラフィンを除液した。その後、冷却してパラフィンを硬化させた。これにより、出口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁内の細孔をパラフィンで埋めた。空気、スラリーがセル内を流れるようにするために入口側20%のセル壁内はパラフィンを埋め込まない。
DPFの入口側から減圧にして、出口側からPtスラリーを押し込み、ガス流出セルにスラリーを注入した。余剰スラリーは、吸引により取り除き、70℃で3時間乾燥後、500℃で1時間焼成しパラフィンを除去して、ガス流出セルの出口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁表面全面に、Ptを含有するPt触媒層を形成してなるAgPd合金パティキュレート燃焼触媒を得た。
この時のPtは、基材体積に対して0.5g/L含有していた。
【0077】
(実施例3〜13・比較例3)
AgPd合金におけるAgとPdのモル比率を表2のように変化させた以外は、実施例2と同様にAgPd合金パティキュレート燃焼触媒を得た。
【0078】
(比較例4〜9)
AgPd合金におけるAgとPdのモル比率を、表2のように変化させて実施例1と同様にAgPdスラリーを得た。次いで、直径143.8mm、長さ152.4mmのSiC製DPF(300セル/平方インチ、壁厚12ミル)に、当該AgPdスラリーを、DPFの入口側から長さ方向で80%の位置まで含浸させ、乾燥、焼成して、ガス流入セルの入口側から80%の位置までの基材隔壁の表面から内部にかけて、銀及びパラジウムを含む合金が散在してなるAgPd合金パティキュレート燃焼触媒を得た。
次いで、実施例2と同様に、ガス流出セルの出口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁表面全面に、Ptを含有するPt触媒層を形成してなるAgPd合金パティキュレート燃焼触媒を得た。
【0079】
<PM燃焼速度試験>
実施例及び比較例で作製したパティキュレート燃焼触媒を、電気炉で900℃、75時間耐久処理した。900℃耐久処理しないパティキュレート燃焼触媒(表中の「Fresh」)と、900℃耐久処理したパティキュレート燃焼触媒(表中の「900℃耐久」)それぞれについて、下記の方法でPM燃焼速度(g/min)を測定した。測定結果は表1及び表2に示す。
【0080】
2.4Lディーゼルエンジンの排気管の途中の上流側に、直径143.8mm、長さ76.2mmのコージェライト製ハニカム型酸化触媒(Pt担持量:2.4g/L、Pd担持量:0.6g/L)を設置し、下流側に実施例・比較例で作製したパティキュレート燃焼触媒を配置した。
【0081】
エンジン回転数1100rpm、負荷140Nmで1時間運転し、排ガス中のPMをパティキュレート燃焼触媒1リットル当たり4g堆積させた。
その後、ハニカム型酸化触媒の上流側から、JIS2号軽油を0.97L/h噴霧し、軽油成分を該酸化触媒で燃焼させることで、パティキュレート燃焼触媒入口の排ガス温度を10分間、600℃に保持した。これにより、パティキュレート燃焼触媒上に堆積したPMを燃焼させることができた。この時、PM燃焼前後でのパティキュレート燃焼触媒の質量変化量を測定し、この値からPM燃焼速度(g/min)を算出した。
【0082】
次のような基準で判定し、判定結果を表1及び表2に示した。
○○○:0.95g/min以上
○○:0.83g/min以上0.95g/min未満
○:0.80g/min以上0.83g/min未満
△:0.60g/min以上0.80g/min未満
×:0.60g/min未満
【0083】
<CO/THC酸化性能評価試験>
実施例及び比較例で作製したパティキュレート燃焼触媒を、電気炉で700℃、75時間耐久処理し、その後、エンジン回転数2600rpm、負荷140Nmで10分間運転し、前処理をおこなった。その後、負荷変動により温度を昇降温し、各成分に対する浄化性能(T50)を測定した。
【0084】
次のような基準で判定し、判定結果を表2に示した。
=CO(℃)=
○○○:130℃以下
○○:130℃より高く135℃以下
○:135℃より高く140℃以下
△:140℃より高く145℃以下
×:145℃より高い
【0085】
=THC(℃)=
○○○:135℃以下
○○:135℃より高く140℃以下
○:140℃より高く145℃以下
△:145℃より高く150℃以下
×:150℃より高い
【0086】
なお、下記表1及び表2に示したAg及びPdの「g/L」は、基材1L換算でAgが担持されている質量(g)を示すものである。
表1及び表2中の「コート状態」において「メンブレン」とは、基材隔壁の表面に、銀及びパラジウムを含む合金を含む表面層を、薄膜状に形成した状態を意味し、「通常」とは、基材隔壁の表面から内部にかけて、銀及びパラジウムを含む合金が散在した状態で担持されている状態を意味する。
表1及び表2中の「CO(℃)」「THC(℃)」は50%浄化温度(T50)を意味するものである。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
実施例のDPFは、基材の隔壁の表面に銀触媒層を形成すると共に、銀にパラジウムを加えて合金化させ、高温時における銀の拡散性を抑制しているため、銀の失活を抑制することができた。そのため、900℃での耐久処理後も、PM燃焼速度の低下を抑えることができることを確認できた。
これに対し、銀にパラジウムを加えて合金化した銀合金を、基材の隔壁内部に担持させたものは、900℃での耐久処理後、PM燃焼速度が顕著に低下した。これは、基材の隔壁内部に担持することで、基材中のケイ素(Si)と銀が接触し易い環境にあるためであると考えることができる。
また、基材の隔壁の表面に銀触媒層を形成した場合でも、パラジウムを加えない場合には、やはり900℃での耐久処理後、PM燃焼速度が顕著に低下することが認められた。
【0090】
(実施例14)
Al23(80質量部)に、硝酸銀水溶液及び硝酸パラジウム水溶液を含浸させ、120℃で蒸発乾固させた。これを800℃×20時間焼成し、AgとPdを合金化させてAgPd合金パティキュレート焼成粉末を得た。この際、AgPd合金におけるAgとPdのモル比率は99:1であった。
このAgPd合金パティキュレート燃焼粉末200gと、アルミナ濃度20質量%のアルミナゾル500gと、純水300gとを混合し、ボールミルで湿式粉砕し、AgPdスラリーを得た。
この際のボールミルは、メディア(球石)としてアルミナ製ボールミル(大きさ5mm)を使用し、スラリー量に対するボールミルの個数割合を30%とし、回転数20rpm、回転時間5時間で行った。
【0091】
直径143.8mm、長さ152.4mmのSiC製DPF(300セル/平方インチ、壁厚12ミル)に、該DPFの入口側から長さ方向で80%の位置まで、加熱溶解したパラフィンを含浸させ、吸引により余分なパラフィンを除液した。その後、冷却してパラフィンを硬化させた。これにより、入口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁内の細孔をパラフィンで埋めた。空気、スラリーがセル内を流れるようにするために出口側20%のセル壁内はパラフィンを埋め込まなかった。
【0092】
DPFの出口側から減圧にして、入口側から前記AgPdスラリーを押し込み、ガス流入セルにスラリーを注入した。余剰スラリーは、吸引により取り除き、70℃で3時間乾燥後、500℃で1時間焼成してパラフィンを除去し、ガス流入セルの入口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁表面全面に、表面凹凸部を備えた銀触媒層を形成してなるパティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。
この際、当該銀触媒層の厚さは30μmであった。
【0093】
(実施例15)
実施例14において、ボールミルの条件を、アルミナ製ボールミル(大きさ5mm)、スラリー量に対するボールミルの個数割合30%、回転数30rpm、回転時間5時間に変更した以外、実施例14と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、銀触媒層の厚さは30μmであった。
【0094】
(実施例16)
実施例14において、ボールミルの条件を、アルミナ製ボールミル(大きさ10mm)、スラリー量に対するボールミルの個数割合30%、回転数20rpm、回転時間5時間に変更した以外、実施例14と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、銀触媒層の厚さは30μmであった。
【0095】
(実施例17)
実施例14において、ボールミルの条件を実施例1などと同様、すなわちアルミナ製ボールミル(大きさ20nm)、スラリー量に対するボールミルの個数割合30%、回転数40rpm、回転時間5時間に変更した以外、実施例14と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、銀触媒層の厚さは30μmであった。
【0096】
(実施例18)
実施例14において、ボールミルによる湿式粉砕を、ディスクミル(Retsch製ディスク)、回転数500rpm、回転時間10分に変更した以外、実施例14と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、銀触媒層の厚さは30μmであった。
【0097】
<コート層の表面凹凸測定およびコート層厚み>
測定装置としては、株式会社キーエンス製「3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800」を用いて、下記条件・手順で、実施例14−18で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)における銀触媒層の表面凹凸部の平均厚さ(凹凸高さの平均値)を測定した。
【0098】
(測定条件)
倍率:150X
WD:16.6mm
加速電圧:2kV
検出器:2次電子検出器
真空度:高真空
【0099】
(測定手順)
(1)実施例14−18で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)を、高さ1cm×横2cm×奥行2cmの大きさにサンプリングした。そのとき、銀触媒層の表面が表面に位置するようにした。
(2)水平状態でSEM画像を撮影し、次に角度を5度傾けた状態でSEM画像を撮影した。
(3)撮影したSEM画像から装置付属ソフトにより、銀触媒層の表面凹凸部の平均厚さを算出した。
(4)次に、サンプルをセル断面が表面(上側)にくるようにし、SEM画像を撮影した。
(5)撮影したSEM画像から装置付属ソフトにより、銀触媒層の厚みを算出した。
(6)(3)、(4)で算出された数値より、銀触媒層の厚みに対する表面凹凸部の平均厚さの割合(%)={ (表面凹凸厚み)/( 銀触媒層厚み) }×100を算出した。
【0100】
<煤捕集背圧測定試験>
実施例14−18で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)について、下記の方法で圧損増加量(ΔkPa/hr Δ:デルタ)を測定した。測定結果を表3に示す。
【0101】
2.4Lディーゼルエンジンの排気管の途中の上流側に、直径143.8mm、長さ76.2mmのコージェライト製ハニカム型酸化触媒(Pt担持量:2.4g/L、Pd担持量:0.6g/L)を設置し、その下流側に実施例14−18で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)を配置した。
【0102】
エンジン回転数1100rpm、負荷140Nmで1時間運転し、初期圧損(煤捕集前の圧損)から1時間運転終了後の圧損(煤捕集後の圧損)の増加量(△kPa/hr)を測定し、結果を表3に示した。
圧損増加量(△kPa/hr)=(煤捕集後の圧損‐煤捕集前の圧損)/煤堆積時間
【0103】
次のような基準で判定し、判定結果を表3に示した。
○○○:4.0△kPa/hr以下
○○:4.0△kPa/hr以上5△kPa/hr未満
○:5.0△kPa/hr以上6.5△kPa/hr未満
△:6.5△kPa/hr以上
【0104】
【表3】
【0105】
DPF隔壁の表面に形成する銀触媒層の表面に、銀触媒層の厚さの50%以上の平均厚さを有する表面凹凸部を設けることにより、表面凹凸部による隙間を通じて排気ガスが流れるため、排ガスによる背圧の上昇を抑制することができることが分かった。同時に、滞留したPM粒子の燃焼効率も向上させることができることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5