特許第6016922号(P6016922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016922
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】スミレ葉着香剤
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20161013BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20161013BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20161013BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20161013BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20161013BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20161013BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20161013BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20161013BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20161013BHJP
   C07C 11/28 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   C11B9/00 B
   A61Q13/00 101
   A61K8/31
   A61Q9/02
   A61Q5/02
   A61Q5/10
   A61Q5/06
   A61Q19/00
   A61Q15/00
   !C07C11/28
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-525366(P2014-525366)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-528980(P2014-528980A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】EP2012063765
(87)【国際公開番号】WO2013020774
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年5月25日
(31)【優先権主張番号】11177220.8
(32)【優先日】2011年8月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シャピュイ
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−106902(JP,A)
【文献】 特開平08−060178(JP,A)
【文献】 特表2008−510787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00− 15/00
C11C 1/00− 5/02
C11D 1/00− 19/00
C07B 31/00− 63/04
C07C 1/00−409/44
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式
【化1】
(式中、それぞれのRは水素原子又はメチル基を表し、前記Rの少なくとも1つは水素原子であり;
は直鎖状又は分枝鎖状のC3〜8アルキル基又は不飽和基を表し;且つ
は水素原子又はメチル基を表す)
の化合物を、その立体異性体又はそれらの混合物のいずれか1つの形で、付香成分として用いる使用。
【請求項2】
前記Rのうち少なくとも2つが水素原子であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物(I)が以下の式
【化2】
(式中、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC4〜7アルキル基又は不飽和基を表し;且つ
はそれぞれ水素原子又はメチル基を表す)
の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも1つのRが水素原子を表すことを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
又はRが直鎖状のC3〜7アルキル基、アルキニル基又はアルケニニル基を表すことを特徴とする、請求項1又は3に記載の使用。
【請求項6】
前記化合物が、デカ−1−エン−4−イン、ドデカ−1,11−ジエン−4,8−ジイン、トリデカ−1,12−ジエン−4,9−ジイン、ノン−1−エン−4−イン、ウンデカ−1−エン−4−イン、ドデカ−1−エン−4−イン又は2−メチルデカ−1−エン−4−インであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
付香組成物であって、
i)請求項1又は3に規定される、少なくとも1種の式(I)の化合物;
ii)香料担体及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分;及び
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む、前記付香組成物。
【請求項8】
付香消費者製品であって、
i)請求項1又は3に規定される、少なくとも1種の式(I)の化合物;及び
ii)香料消費者ベース
を含む、前記付香消費者製品。
【請求項9】
香料消費者ベースが、香料、布地ケア製品、ボディケア製品、エアケア製品又は家庭用ケア製品であることを特徴とする、請求項8に記載の付香消費者製品。
【請求項10】
香料消費者ベースが、香水、コロン、アフターシェーブローション、液体又は固体洗剤、柔軟仕上げ剤、ファブリックリフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、シャンプー、カラーリング配合物、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラント又は制汗剤、着香石鹸、シャワー又はバスムース、オイル又はジェル、衛生製品、エアフレッシュナー、「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー、ワイプ、食器用洗剤又は硬質表面用洗剤であることを特徴とする、請求項8に記載の付香消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は香料分野に関する。更に詳細には、本発明は、特にスミレ葉調の香気ノートを付与するための、以下に規定される、式(I)の化合物の付香成分としての使用に関する。更に、本願明細書に記載されることに従って、本発明は、付香組成物の一部として又は付香消費者製品の一部として本発明の化合物を含む。
【0002】
先行技術
香料産業は、常に、調和物(accord)の生成において新たな可能性を与え、また、配合を容易に且つ安全にする新規な成分を求めている。これはこの系統のスミレ着香剤、重要なクラスの成分にとっても有効である。
【0003】
式(I)の複数の化合物は、一般に単純な化学物質として先行技術に記載されているが、本発明の化合物はいずれも感覚刺激性を有するものとして記載されず、更にいずれも着香剤成分として示唆されていない。例えば、以下の先行技術の引例が挙げられ得る:
−ドデカ−2−エン−5−インは、クリール生成物の揮発画分の一部としてBromatologial Chemia Toksykologiczna, 1992年, 25, 267に開示されているが、香気又は感覚刺激性は記載又は示唆されていない;
−デカ−1−エン−4−インは、化学中間体としてHelv. Chim. Acta, 1980年, 63, 2393-403頁に開示されているが、香気又は感覚刺激性は記載又は示唆されていない;
−デカ−1−エン−4−イン、ウンデカ−1−エン−4−イン及びノン−1−エン−4−インは、化学中間体としてJ.A.C.S, 1936, 58, 611に開示されているが、香気又は感覚刺激性は記載又は示唆されていない。
【0004】
構造上の観点から、最も近い公知の付香成分は、フローラル、グリーンガルバナム臭を有するものとしてEP694604号に開示された1,3−ウンデカジエン−5−インであり、これは本発明の化合物と同じ感覚刺激系統の香調である。しかしながら、前述の先行技術の化合物は、追加のエチレン基を有し且つ完全に共役した化合物であることによって、全く異なる化学構造を有する。前述の先行技術文献は、決して本発明の化合物の感覚刺激性を示唆していない。
【0005】
あるいは、他の構造的に関連する付香成分は、EP1784374号に開示されているものであり、これは同じ感覚刺激系統の本発明の化合物の香調も有する。しかしながら、前述の先行技術の化合物は、前の先行技術文献と同じ理由で全く異なる化学構造を有する上に、エーテル官能基をも含む。前述の先行技術文献は、決して本発明の化合物の感覚刺激性を示唆していない。
【0006】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、本発明者らはここで、以下の式
【化1】
(式中、それぞれのRは水素原子又はメチル基を表し、前記Rの少なくとも1つは水素原子であり;
は直鎖状又は分枝鎖状のC3〜8アルキル基又は不飽和基を表し;且つ
は水素原子又はメチル基を表す)
の化合物を、その立体異性体又はそれらの混合物のいずれか1つの形で、例えば、任意にグリーン香気ノートと一緒にスミレ葉調の香気ノートを付与するために、付香成分として使用できることを発見した。
【0007】
明瞭にするために、「不飽和基」との表現、又は類似表現は、当業者によって理解される通常の意味、即ち、アルキニル基、又アルケニニル基(本発明において、好ましくは共役していない、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合を含む基)を意味する。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、それぞれのRは水素原子又はメチル基を表し、前記Rのうち少なくとも2つは水素原子である。
【0009】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、前記化合物(I)は、以下の式
【化2】
(式中、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC4〜7アルキル基又は不飽和基を表し;それぞれのRは水素原子又はメチル基を表す)
の化合物である。
【0010】
式(II)の実施形態によれば、少なくとも1つのRが水素原子を表すか、又は更に両方のRが水素原子である。
【0011】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、前記R又はRは直鎖状C3〜7アルキル基又は不飽和基を表す。又は前記R又はRは直鎖状C3〜7アルキル基を表す。
【0012】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、前記R又はRは直鎖状基を表す。
【0013】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、前記化合物(I)はC〜C13化合物、又は更にC10〜C12化合物である。
【0014】
本発明の化合物の具体例としては、非限定例として、グリーン/ガルバヌム及びスミレ葉ノートによって特徴付けられる匂いを有し並びにフルーティー/セイヨウナシ及びフランスショウロ態様を有する、デカ−1−エン−4−インが挙げられ得る。これは、本発明の化合物が、完璧なスミレ着臭剤として知られているが、ここでは制限されているか又は様々な理由で使用されていない、メチルオクタンカーボネート又はメチルヘプチルカーボネートの匂いを思い出させると言える。
【0015】
デカ−1−エン−4−インの香気は、先行技術の1,3−ウンデカジエン−5−インの1つと比較した場合、強く且つ新鮮なガルバナム、フランスショウロやセイヨウナシの態様を有する点で並びに先行技術の化合物のうちの1種の約2倍である持続性/性能を有する点で異なっている。更に、当該化合物が、標準的な香料媒体において(化学的観点から)遙かに安定であることにも留意されていた。
【0016】
他の例としては、上記の化合物として、特徴的なグリーン/ガルバナム及びスミレ葉ノートの特徴的な香気を有するだけでなく、興味深いラベンダー態様をも有する、ドデカ−1,11−ジエン−4,8−ジインが挙げられ得る。前記化合物は、上記のデカ−1−エン−4−インよりもガルバナムであり、また、該化合物の不在下(並びに1,3−ウンデカジエン−5−インの不在下)でも芳香性の態様を有する。
【0017】
他の特定の、しかしながら、非限定的な本発明の化合物の例としては、以下のものが表1に挙げられ得る:
【表1】
【0018】
本発明の特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、デカ−1−エン−4−イン、ドデカ−1,11−ジエン−4,8−ジイン、トリデカ−1,12−ジエン−4,9−ジイン、ノン−1−エン−4−イン、ウンデカ−1−エン−4−イン、ドデカ−1−エン−4−イン又は2−メチルデカ−1−エン−4−インである。
【0019】
本発明の化合物の臭気を、先行技術の市販の化合物(特に1,3−ウンデカジエン−5−イン)と比較すると、本発明の化合物は、明らかに強力なグリーン/ガルバヌムによって、場合により追加の嗅覚的態様(例えば、アーシー又は芳香性の態様)を有することによって、さらにはより持続的であることによって明確に区別される。
【0020】
上述の通り、本発明は、式(I)の化合物を付香成分として用いる使用に関する。換言すれば、本発明は、付香組成物又は着香物品の香気性を付与、強化、改善又は変更するための方法であって、前記組成物又は物品に有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物を添加することを含む、前記方法に関する。「式(I)の化合物の使用」とは、本願明細書では、香料産業において有利に使用され得る化合物(I)を含有する組成物の使用であると理解すべきである。
【0021】
実際に付香成分として有利に使用され得る前記組成物も本発明の対象である。
【0022】
従って、本発明の別の対象は、
i)付香成分として、上で定義された少なくとも1種の本発明の化合物;
ii)香料担体及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;及び
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む、付香組成物である。
【0023】
「香料担体」とは、本願明細書では香料の観点から実質的に中性である材料を意味しており、即ち、該材料が付香成分の感覚刺激性を顕著に変更しないことを意味する。前記担体は、液体又は固体であってもよい。
【0024】
液体担体としては、非限定的例として、乳化系、即ち、溶媒及び界面活性剤系、又は香料に通常使用される溶媒が挙げられ得る。香料において通常使用される溶媒の性質及び種類の詳細な説明は網羅できない。しかしながら、非限定的例としては、最もよく使用されているジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はエチルシトレートなどの溶媒が挙げられる。香料担体及び香料ベースの両方を含む組成物の場合、既に記載されたもの以外の他の好適な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン又は他のテルペン、イソパラフィン、例えば、Isopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)の商標で知られたもの又はグリコールエーテル及びグリコールエーテルエステル、例えば、Dowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)の商標で知られたものであってもよい。
【0025】
固体担体としては、非限定的例として、吸着ガム又はポリマー、又は更に封入材料が挙げられる。かかる材料の例は、壁形成及び可塑化材料、例えば、単糖類、二糖類又は三糖類、天然又は化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、又は更にH. Scherz, Hydrokolloids : Stabilisatoren, Dickungs- und Gehermittel in Lebensmittel, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr's VerlagGmbH & Co., Hamburg, 1996などの参照テキストに引用された材料を含み得る。カプセル化は当業者に公知のプロセスであり、該プロセスは、例えば、噴霧乾燥、凝集又は更に押出などの技術を用いて実施され得るか;又はコーティングカプセル化、例えば、コアセルベーション及び複合コアセルベーション技術からなる。
【0026】
「香料ベース」とは、本願明細書では少なくとも1種の付香共成分を含む組成物を意味する。
【0027】
前記付香共成分は式(I)のものではない。更に、「付香共成分」とは、本願明細書では付香調製物又は快楽効果を付与する組成物において使用される化合物を意味する。換言すれば、付香成分であると考えられる、かかる共成分は、当業者によって、単に香りを有するだけでなく、積極的に又は心地よく、組成物の香りを付与するか又は変更することができるものとして認識されなければならない。
【0028】
ベースに存在する付香共成分の性質及び種類は、本願明細書で更に詳細な説明を保証せず、これらはいずれの場合も網羅されず、当業者は、一般的な知識に基づいて及び意図する使用又は用途並びに所望の感覚刺激効果によってそれらを選択することができる。一般的に、これらの付香共成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素含有又は硫黄複素環式化合物及び精油などの様々な化学種に属し、前記付香共成分は天然又は合成起源であり得る。これらの共成分の多くは、いずれの場合も、例えばS. Arctanderによる著書, Perfume and Flavor Chemicals, 1969年、モントクレア、ニュージャージー州、米国、又はその最新版、又は、他の類似の性質の論文、並びに香料分野の豊富な特許文献などの参照テキストに記載されている。また、前記共成分が、種々のタイプの付香化合物を制御された様式で放出することで知られた化合物であってもよいことも理解されている。
【0029】
「香料補助剤」とは、本願明細書では、色、特定の耐光性、化学的安定性などの更に追加される利益を付与することができる成分を意味する。一般に付香ベースで使用される補助剤の性質及び種類の詳細な説明は網羅できないが、前記成分が当業者によく知られていることは言及されるべきである。
【0030】
少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種の香料担体からなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施態様並びに少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種の香料担体、少なくとも1種の香料ベース、及び任意に少なくとも1種の香料助剤を含む付香組成物を表す。
【0031】
ここで、上述の組成物中に2種以上の式(I)の化合物を有し得ることが重要であると言及することは有用である。それによって、調香師が、本発明の種々の化合物の香調を有する、アコード(accord)、香水を製造することができ、従って調香師の仕事のために新しい道具を創り出すことができるからである。
【0032】
明確にするために、本発明の化合物が出発、中間又は最終生成物として含まれる、化学合成から直接得られる任意の混合物、例えば、適切な精製をしない反応媒体は、前記混合物が香料にとって適した形で本発明の化合物を提供しない限り、本発明による付香組成物として見なすことができないことも理解されている。従って、特に断りのない限り、未精製の反応混合物は、一般に、本発明から除外される。
【0033】
更に、本発明の化合物は、前記化合物(I)が添加される消費者製品の香りを積極的に付与又は変更するために、現代香料、即ち、微香料又は機能的香料の全分野でも有利に使用され得る。結果的に、
i)上で定義される通り、付香成分としての、少なくとも1種の式(I)の化合物;及び
ii)香料消費者ベース
を含む付香消費者製品も本発明の対象である。
【0034】
本発明の化合物は、そのままで又は本発明の付香組成物の一部として添加され得る。
【0035】
明確にするために、「付香消費者製品」とは、少なくとも付香効果を送達することが予想される消費者製品を意味しており、換言すれば、着香した消費者製品であることが言及されるべきである。明確にするために、「香料消費者ベース」とは、本願明細書では、機能性配合物だけでなく、場合により追加の有益剤(benefit agent)をも意味しており、これは付香成分と適合性であり且つ心地良い香りを適用面(例えば、皮膚、毛髪、繊維、又は家庭面)に送達することが予想される消費者製品に相当する。換言すれば、本発明による付香消費者製品は、機能性配合物だけでなく、場合により追加の利益剤を含み、これは所望の消費者製品、例えば、洗剤又はエアフレッシュナー、及び感覚刺激的に有効量の少なくとも1種の本発明の化合物に相当する。
【0036】
香料消費者ベースの構成成分の性質及び種類は、本願明細書では更に詳細な説明を保証せず、いずれの場合も網羅されないが、当業者は、一般的な知識に基づいて及び前記製品の性質及び所望の効果によってそれらを選択することができる。
【0037】
好適な香料消費者ベースの非限定的例は、香料、例えば、香水(fine perfume)、コロン又はアフターシェーブローション;布地ケア製品、例えば、液体又は固体洗剤、柔軟仕上げ剤、ファブリックリフレッシャー、アイロン水、紙、又は漂白剤;ボディケア製品、例えば、ヘアケア製品(例えば、シャンプー、カラーリング配合物又はヘアスプレー)、化粧品(例えば、バニシングクリーム又はデオドラント又は制汗剤)、又はスキンケア製品(例えば、着香石鹸、シャワー又はバスムース、オイル又はジェル、又は衛生製品);エアケア製品、例えば、エアフレッシュナー又は「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー;又は家庭用ケア製品、例えば、ワイプ、食器用洗剤又は硬質表面用洗剤であってよい。
【0038】
上記の消費者製品ベースの幾つかは、本発明の化合物に対する攻撃媒体を表すので、該化合物を、例えば、カプセル化によって又は酵素、光、熱又はpHの変化などの適切な外部刺激時に本発明の成分を放出するのに適した別の化学物質に化学結合させることによって、早期分解から保護する必要があり得る。
【0039】
本発明による化合物を、種々の前述の物品又は組成物中に組み込むことができる割合は、広範囲の値で変化する。これらの値は、付香されるべき物品の性質及び所望の感覚刺激効果に依存するだけでなく、本発明による化合物が当該技術分野で通常使用される付香共成分、溶媒又は添加剤と混合される時の所与のベース中の共成分の性質にも依存する。
【0040】
例えば、付香組成物の場合、本発明の化合物の典型的な濃度は、それらが組み込まれる組成物の質量を基準として、0.001質量%〜5質量%、又はそれ以上のオーダーである。これよりも低い濃度、例えば、0.01質量%〜1質量%のオーダーは、これらの化合物が着香物品中に組み込まれる時に使用でき、パーセンテージは物品の質量を基準とする。
【0041】
本発明の化合物は、実施例に記載される方法に従って調製され得る。
【0042】
実施例
本発明は、以下の実施例によって更に詳細に説明されるが、その際、省略形は当該技術分野における通常の意味を有し、温度は摂氏温度(℃)で示され;NMRスペクトルデータは(別記しない限り)H及び13Cについて360MHz又は400MHz機を用いてCDClで記録され、化学シフトδは標準としてのTMSに対してppmで示され、結合定数JはHzで表される。
【0043】
実施例1
式(I)の化合物の合成
a)デカ−1−エン−4−インの合成
ブロモエタン(43.6グラム、400ミリモル)のEtO溶液(280ml)を、Mg(9.6グラム、400ミリモル)のEtO懸濁液(140ml)に滴加した。3時間後に、1−ヘプチン(35.0グラム、360ミリモル)のEtO(140ml)溶液を反応媒体に滴加した。還流下で90分後に、CuCl(1.8グラム、18.2ミリモル)を冷反応混合物に加え、15分後に臭化アリル(48.4グラム、400ミリモル)のEtO溶液(140ml)を滴加した。還流下で18時間後に、冷反応混合物を0℃で10%のHCl水溶液(320ml)に注いだ。水相をEtOで抽出し、次いで有機相をHOで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ビグロー(Vigreux)カラム(65°/15ミリバール)を通して蒸留すると、純粋な所望の化合物(70%)が得られた。
【0044】
b)ウンデカ−1−エン−4−インの合成
a)に記載された手順に従って、1−オクチンから収率80%で得られた。
Bp:80°/1.6ミリバール
【0045】
c)ドデカ−1−エン−4−インの合成
a)に記載された手順に従って1−ノニンから収率60%で得られた。
Bp:80°/1.4ミリバール。
【0046】
d)トリデカ−1,12−ジエン−4,9−ジインの合成
a)に記載された手順に従って、ヘプタ−1,6−ジインから収率80%で得られるが、アリル化試薬の2倍の量を使用した。
Bp:85°/0.36ミリバール。
【0047】
e)ノナ−1−エン−4,8−ジインの合成
a)に記載された手順に従ってヘキサ−1,5−ジインから収率63%で得られた。
Bp:90°/1.5ミリバール。
【0048】
f)ドデカ−1,11−ジエン−4,8−ジインの合成
d)に記載された手順に従ってノナ−1−エン−4,8−ジインから収率61%で得られた。
Bp:90°/0.05ミリバール。
【0049】
g)ノン−1−エン−4−インの合成
a)に記載された手順に従って1−ヘキシンから収率76%で得られた。
Bp:60°/18ミリバール。
【0050】
h)トリデカ−1−エン−4−インの合成
a)に記載された手順に従って1−デシンから収率66%で得られた。
Bp:80°/6.6ミリバール
【0051】
i)2−メチル−デカ−1−エン−4−インの合成
a)に記載された手順に従ってメタリルクロリドを用いて1−ヘプチンから定量的に得られた。
Bp:70°/4.2ミリバール
【0052】
j)2−メチルウンデカ−2−エン−5−インの合成
a)に記載された手順に従って1−クロロ−3−メチルブタ−2−エン及びメタリルクロリドを用いて、1−ヘプチンから収率77%で得られた。
Bp:70°/3.7ミリバール
【0053】
k)(E)−ウンデカ−2−エン−5−インの合成
a)に記載された手順に従って1−ブロモ−ブタ−2−エン及びメタリルクロリドを用いて1−ヘプチンから(92:8E/Z混合物として)74%の収率で得られた。
Bp:70°/5ミリバール
【0054】
実施例2
付香組成物の調製
フローラル調の軟化剤用の付香組成物を、以下の成分を混合することによって調製した:
【表2】
【0055】
20重量部のデカ−1−エン−4−インの10%のジプロピレングリコール溶液を上記組成物に添加することで、該組成物に強い天然のスミレ葉の効果が付与され、これは同量のメチルオクチルカーボネート(快楽的に非常に価値があるが、法律によって使用が制限されている成分)の添加に非常に類似している。
【0056】
同量の先行技術の1,3−ウンデカジエン−5−インの添加は、明らかに弱く、ガルバナムが少なく、あまり自然でないが、同様の効果が付与された。
【0057】
実施例3
付香組成物の調製
グリーンフローラル調の香料を、以下の成分を混合することによって調製した:
【表3】
1)1−(2,6,6−トリメチル−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン、製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
2)テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
3)メチルシス−ジヒドロジャスモネート;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
4)(1S,1’R)−2−[1−(3’,3’−ジメチル−1’−シクロヘキシル)エトキシ]−2−メチルプロピルプロパノエート;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
5)メチルイオノン異性体の混合物;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
6)3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
【0058】
20質量部のデカ−1−エン−4−インの10%のジプロピレングリコール溶液を上記組成物に添加することで、該組成物に天然のスミレ葉の効果を、トリュフを想起させる僅かにアーシーなグリーンの様相と共に付与した。
【0059】
実施例4
付香組成物の調製
グリーンのフローラル調のヒト用のコロンを、以下の成分を混合することによって調製した:
【表4】
1)1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−g−2−ベンゾピラン;製造元:インターナショナルフレーバー&フレグランス、米国
2)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;製造元:インターナショナルフレーバー&フレグランス、米国
3)4/3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド;製造元:インターナショナルフレーバー&フレグランス、USA
4)ジヒドロジャスモン酸メチル;製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
5)製造元:フィルメニッヒSA、ジュネーブ、スイス
6)5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテニル)−3−メチルペンタン−2−オール;製造元:ジボダンSA、バーニア、スイス
7)(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,6,8,8−ヘキサメチル−2−ナフチル)−1−エタノン;製造元:ジボダンSA、バーニア、スイス
8)メチルセドリルケトン;製造元:インターナショナルフレーバー&フレグランス、米国
【0060】
20質量部のデカ−1−エン−4−インを上記組成物に添加することで、該組成物に、同量のメチルオクチルカーボネート(OMC)の添加によって付与されるのと同じスミレ葉ツイストが付与された。興味深いことに、かかるOMC濃度が、法律により推奨される最大濃度を約30倍上回るので、本発明の化合物を用いることで、安全な成分を有すると共にOMCと同じ快楽効果が得られることに留意されたい。