特許第6016923号(P6016923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016923生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016923
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/78 20060101AFI20161013BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20161013BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   C08G63/78ZBP
   C08G63/16
   !C08L101/16
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-528259(P2014-528259)
(86)(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公表番号】特表2014-527568(P2014-527568A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】KR2012006093
(87)【国際公開番号】WO2013032140
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年4月9日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0089132
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508130188
【氏名又は名称】ロッテ精密化學株式会社
【氏名又は名称原語表記】LOTTE Fine Chemical Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】カン,ギョン・ドン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,キ・チュル
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ジョン・ピル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン・ペ
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−037870(JP,A)
【文献】 特開平08−059810(JP,A)
【文献】 特開平10−330468(JP,A)
【文献】 特表2011−518941(JP,A)
【文献】 特開昭52−013526(JP,A)
【文献】 特開昭49−006082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/78−63/87
C08G 63/16−63/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ブタンジオール(BDO)のヒドロキシル基を脂肪族ジカルボン酸化合物のカルボキシル基と170〜190℃の温度で1次反応させる段階と、
1,4−ブタンジオール(BDO)の残余ヒドロキシル基を芳香族ジカルボン酸化合物のカルボキシル基と230〜260℃の温度で2次反応させる段階と、を含む生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法であって、
上記1,4−ブタンジオール(BDO)は、脂肪族および芳香族のジカルボン酸化合物に対して1〜1.5当量の量で使用されることを特徴とする生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【請求項2】
上記脂肪族ジカルボン酸化合物は、下記化学式1で表される化合物、その無水物または誘導体である請求項1に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
[化学式1]
HOOC−(CH−COOH
(化学式1中、nは、2〜12である。)
【請求項3】
上記芳香族ジカルボン酸化合物は、フタル酸(PA)、無水フタル酸、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸からなる群より選択される1種以上である請求項1又は2に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【請求項4】
上記1,4−ブタンジオール(BDO)、脂肪族ジカルボン酸化合物および芳香族ジカルボン酸化合物を同時に反応器に投入し、反応温度を170〜190℃に定めて、1次反応を進行させた後、反応温度を230〜260℃に定めて、2次反応を進行させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【請求項5】
上記1,4−ブタンジオール(BDO)および脂肪族ジカルボン酸化合物を反応器に投入し、反応温度を170〜190℃に定めて、1次反応を進行させた後、上記芳香族ジカルボン酸化合物を反応器に投入し、反応温度を230〜260℃に定めて、2次反応を進行させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【請求項6】
上記1次および2次反応によって得られた脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体を、220〜250℃、2torr未満の真空度で40〜300分間、重縮合反応させる段階をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【請求項7】
上記重縮合反応の後に、鎖延長剤を加えて反応させる段階をさらに含む請求項に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【請求項8】
上記反応において、分岐剤、触媒または熱安定剤を使用する請求項1〜7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【請求項9】
上記1次反応は、理論流出量である水が流出されるまで進行される請求項1〜8のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル共重合体樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的物性が向上した脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体およびそれを含む生分解性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂は、バクテリア、藻類、かびのような自然に存在する微生物によって水と二酸化炭素または水とメタンに分解されるゆえに環境汚染問題を起こさない、新しい素材として開発された合成樹脂である。
【0003】
セルロース系のポリマーや澱粉類とともに広く使用されている生分解性樹脂は、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリエチレンスクシネート(PES)、ポリカプロラクトン(PCL)などの脂肪族ポリエステルから製造されている。
【0004】
これら脂肪族ポリエステル樹脂は、生分解性に優れているが、機械的物性に劣るという短所がある。そのため、脂肪族ポリエステル樹脂の機械的強度を補完するために、生分解性樹脂の製造過程に芳香族モノマーを含ませて合成を行うことによって、脂肪族−芳香族共重合体の形態を有する生分解性樹脂を製造する方法が開発された。
【0005】
この際、芳香族モノマーとしては、ジメチルテレフタレート(dimethylterephthalate;DMT)が典型的に使用される。ジメチルテレフタレートは、190℃以下の反応温度でも反応が可能であるため、反応を容易に誘導することができるという長所を有する。しかし、ジメチルテレフタレートは、高価であるため、製造コストが大きいという問題点がある。
【0006】
このため、ジメチルテレフタレートよりも安価な芳香族モノマーを使用して、共重合体を製造しようとする試みが続いてきた。例えば、テレフタル酸(terephthalic acid;TPA)を共重合体の合成反応で使用する方法が提示されている。しかし、テレフタル酸は、ジメチルテレフタレートとは異なり、融点を有さず、高温で昇華する性質がある。また、テレフタル酸は、生分解性ポリエステル樹脂の製造過程で代表的なモノマーとして使用される1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol;BDO)には、常圧下で230℃以上の温度で溶解されるので、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとの均一な反応を誘導するためには、230℃以上の反応温度が要求される。しかし、1,4−ブタンジオールは、酸性条件の下で190℃の温度に至れば、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)に変換して消費されてしまうため、テレフタル酸のような高温の反応条件が要求される芳香族モノマーとの共重合体を製造する過程でテトラヒドロフランに消耗する量を勘案して、過剰な量で使用しなければならないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂肪族および芳香族ジカルボン酸化合物を使用して、脂肪族−芳香族共重合体の形態を有する生分解性樹脂を製造する過程において、出発原料である脂肪族ジヒドロキシ化合物を、ジカルボン酸化合物に対して過剰な量で使用せず、また、芳香族ジカルボン酸化合物として、比較的安価な化合物を使用する、ポリエステル共重合体の製造方法、並びに、該ポリエステル共重合体を含む生分解性樹脂の製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明は、機械的物性が低下せずに維持される脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体の形態を有する生分解性樹脂を製造するための効率的な製造工程を用いた、生分解性樹脂の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、脂肪族ジヒドロキシ化合物のヒドロキシル基(ヒドロキシ基)を脂肪族ジカルボン酸化合物のカルボキシル基(カルボキシ基)と1次反応させる段階と、脂肪族ジヒドロキシ化合物の残余ヒドロキシル基を芳香族ジカルボン酸化合物のカルボキシル基と2次反応させる段階とを含む生分解性ポリエステル共重合体樹脂(生分解性ポリエステル共重合樹脂)の製造方法を提供する。
【0010】
好ましくは、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol、BDO)である。
【0011】
好ましくは、上記脂肪族ジカルボン酸化合物は、下記化学式1で表される化合物、その無水物またはその誘導体である。
【0012】
[化学式1]
HOOC−(CH−COOH
化学式1中、nは、2〜12でありうる。
【0013】
好ましくは、上記芳香族ジカルボン酸化合物は、フタル酸(phthalic acid、PA)、無水フタル酸(phthalic anhydride)、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸(naphthalene−2,6−dicarboxylic acid)からなる群より選択される1種以上である。
【0014】
好ましくは、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物は、上記脂肪族および上記芳香族のジカルボン酸化合物に対して1〜1.5当量の量で使用される。
【0015】
好ましくは、上記1次反応を170〜190℃範囲の温度で先に行い、2次反応を230〜260℃範囲の温度で次に行うことができる。
【0016】
好ましくは、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物、上記脂肪族ジカルボン酸化合物および上記芳香族ジカルボン酸化合物を反応器に同時に投入し、170〜190℃の反応温度で1次反応させた後、230〜260℃の反応温度で2次反応させることができる。
【0017】
好ましくは、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物および上記脂肪族ジカルボン酸化合物を反応器に投入し、170〜190℃の反応温度で1次反応させた後、上記芳香族ジカルボン酸化合物を反応器に投入し、230〜260℃の反応温度で2次反応させることができる。
【0018】
好ましくは、本発明は、上記1次および2次反応によって得られた脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体を220〜250℃、2torr未満の真空度で40〜300分間重縮合反応させる段階をさらに含む。
【0019】
好ましくは、本発明は、上記重縮合反応後に鎖延長剤を投入し、鎖延長反応させる段階をさらに含む。
【0020】
好ましくは、上記反応では、分岐剤、触媒または熱安定剤を使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、脂肪族および芳香族の各ジカルボン酸化合物から、共重合体の形態を有する生分解性樹脂を製造するに際して、脂肪族ジヒドロキシ化合物を、無駄遣いすることなく、効率的に反応に利用することができる。また、芳香族ジカルボン酸化合物としては、比較的安価の化合物を使用することができる。
【0022】
一方、本発明によって製造される生分解性樹脂は、脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体の形態を有する生分解性樹脂の従来の機械的物性および熱的特性をそのまま維持する。
【0023】
したがって、本発明によれば、経済的で且つ効率的な方法によって、好ましい機械的物性を有する生分解性ポリエステル樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、脂肪族ポリエステル重合体からなる生分解性樹脂の機械的物性を強化するために、芳香族モノマーを使用して脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体の形態を有する生分解性樹脂を製造する方法に関する。上記共重合体は、脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂肪族および芳香族の各ジカルボン酸化合物の反応で得られる脂肪族−芳香族ポリエステルである。
【0025】
本発明では、上記芳香族カルボン酸化合物としてフタル酸(phthalic acid、PA)、無水フタル酸(phthalic anhydride)、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)またはナフタレン−2,6−ジカルボン酸(naphthalene−2,6−dicarboxylic acid)を使用する。例えば、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)は、芳香族モノマーとして典型的に使用されるジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate、DMT)に比べて安価であるという長所がある一方で、190℃以下の温度でも反応が可能なジメチルテレフタレートとは異なって、230℃以上の温度で、脂肪族ジヒドロキシ化合物との均一なエステル化反応を起こさせることができる。
【0026】
しかし、本発明において脂肪族ジヒドロキシ化合物の一実施例として使用する1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol、BDO)は、190℃以上の温度でテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)に変換して、消費される。したがって、芳香族モノマーとしてテレフタル酸を使用する場合には、ジカルボン酸の総量に対して脂肪族ジヒドロキシ化合物を2.5〜3当量の量で使用しなければならない。
【0027】
本発明では、このような脂肪族ジヒドロキシ化合物の過度な消費を防止するために、脂肪族ジヒドロキシ化合物を、比較的低温で反応が可能な脂肪族ジカルボン酸化合物と先に反応させて、固定(定着、維持)させる方法を使用する。
【0028】
より具体的には、本発明において、脂肪族ジヒドロキシ化合物のヒドロキシル基を脂肪族ジカルボン酸化合物のカルボキシル基と1次反応させること、および、脂肪族ジヒドロキシ化合物の残余ヒドロキシル基を芳香族ジカルボン酸化合物のカルボキシル基と2次反応させることによって、脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体が製造される。
【0029】
上記脂肪族ジヒドロキシ化合物と反応する脂肪族ジカルボン酸化合物は、低温の反応で脂肪族ジヒドロキシ化合物とオリゴマーを形成することができ、以後高温反応で消費されないように固定させることができる脂肪族ジカルボン酸化合物であれば任意のものを使用可能である。本発明の一実施例として、脂肪族ジカルボン酸化合物として、下記化学式1で表される化合物、その無水物または誘導体を使用することができる。
【0030】
[化学式1]
HOOC−(CH−COOH
化学式1中、nは、2〜12でありうる。
【0031】
好ましくは、上記nは、2〜8である。このような脂肪族ジカルボン酸化合物の具体例として、コハク酸(succinic acid、SA)、グルタル酸(glutaric acid、GA)、アジピン酸(adipic acid、AA)またはこれらの無水物もしくは誘導体を使用することができる。
【0032】
上記脂肪族ジカルボン酸化合物に含まれた2個のカルボン酸は、脂肪族ジヒドロキシ化合物に含まれたヒドロキシ基とエステル化反応を行う。この際、脂肪族ジカルボン酸化合物は、脂肪族ジヒドロキシ化合物に対して0.5当量未満の量(重量)で使用される。すなわち、1つの脂肪族ジカルボン酸化合物に対して2つの脂肪族ジヒドロキシ化合物が結合して固定されるものである。
【0033】
具体的に、本発明の一実施例において脂肪族ジヒドロキシ化合物として使用される1,4−ブタンジオールは、アジピン酸と反応し、BDO−AA−BDOの形態のオリゴマーを形成する。このようなオリゴマーを形成した1,4−ブタンジオールは、たとえ、昇温して、高温で追加的な反応が進行しても、テトラヒドロフランに変換して消費されることがない。
【0034】
本発明において、脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオールに限定されず、脂肪族−芳香族ポリエステル生分解性樹脂の製造で出発原料として使用されるものであれば、限定されることなく、使用可能である。特に、高温の反応で消費されてしまう可能性が大きい脂肪族ジヒドロキシ化合物は、有利に使用されることができる。
【0035】
上記脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジカルボン酸化合物の反応は、そのエステル化反応から流出される水の量が、理論的に計算される流出量(すなわち、脂肪族ジカルボン酸化合物に含まれたカルボン酸の総モル数に相当する水の量)に到達する時点で終了させる。
【0036】
低温での脂肪族ジカルボン酸との脂肪族ジヒドロキシ化合物の1次反応が完了した時、芳香族ジカルボン酸化合物との2次反応を行う。上記2次反応は、1次反応よりも高い温度で行う。具体的に、芳香族ジカルボン酸化合物としてテレフタル酸(terephthalic acid、TPA)を使用する場合には、230℃以上の温度でエステル化反応が均一に進行するので、2次反応の温度は、好ましくは、230〜260℃である。
【0037】
本発明では、芳香族ジカルボン酸化合物として、フタル酸(phthalic acid、PA)、無水フタル酸(phthalic anhydride)、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)またはナフタレン−2,6−ジカルボン酸(naphthalene−2、6−dicarboxylic acid)を使用することができるものの、これらに芳香族ジカルボン酸化合物が限定されるものではない。脂肪族ポリエステルの単独重合体(ホモポリマー)からなる生分解性樹脂の機械的物性を向上させるために使用され、特に高温での脂肪族ジヒドロキシ化合物とのエステル化反応を誘導することができる芳香族モノマーであれば、任意の芳香族ジカルボン酸化合物が、有利に使用されうる。
【0038】
本発明において、脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂肪族および芳香族ジカルボン酸化合物のエステル化反応におけるジカルボン酸化合物の総量に対する脂肪族ジヒドロキシ化合物の使用量(重量)は、1〜2当量、好ましくは1〜1.5当量の量である。1次反応段階で、ジヒドロキシ化合物を脂肪族ジカルボン酸化合物に対して過剰な量で使用して、脂肪族ジカルボン酸の両末端で脂肪族ジヒドロキシ化合物が縮合及び固定されたオリゴマーを合成し、次いで、2次反応段階で、両末端の残余ヒドロキシ基が芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基と脱水縮合反応して、脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体を形成させる。
【0039】
上述の本発明の製造方法は、脂肪族ジヒドロキシ化合物をジカルボン酸化合物に対して2.5当量以上の過剰な量(重量)で使用する従来技術と比較して、脂肪族ジヒドロキシ化合物の使用量を画期的に低減することができる。
【0040】
本発明は、特に上記2次反応に該当する場合、すなわち、脂肪族ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸化合物の間の反応が高温で起きる場合、および、この反応において脂肪族ジヒドロキシ化合物の変換および消費が問題になる場合に有利である。
【0041】
本発明において2次反応に使用される芳香族ジカルボン酸化合物は、1次反応の終了後に反応器に投入されることもでき、または、反応初期に脂肪族ジカルボン酸化合物とともに反応器に投入されることもできる。後者の場合、反応器にすべての化合物を一度に投入したとしても、1次反応および2次反応が、反応温度を調節することによって、順序通りに起きるようにする。これは、1次反応と2次反応がそれぞれ異なる温度で進行されるので可能である。すなわち、170〜190℃の温度範囲で行われる反応において、脂肪族ジヒドロキシ化合物のエステル化反応の間に流出する水の量が、理論的に計算される量に到逹した時に、220〜260℃の温度に昇温し、2次反応を行う。
【0042】
2次反応では、反応が終結すれば、これ以上気化されて流出する水がなくなる。したがって、コンデンサーの上部に水蒸気が通過しなくなり、温度が低下する。本発明の一実施例において、コンデンサーの上部の温度が90℃以下の温度に下がり始めた時点で、反応を終結させる。
【0043】
上記1次および2次反応は、連続式またはバッチ式(batchwise)で行われることができる。
【0044】
本発明において、上記1次および2次反応によって脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体を得て、次いで、重縮合反応または鎖延長反応を通じて分子量を増加させることによって、所望の物性を有する生分解性樹脂を得ることができる。
【0045】
好ましくは、本発明において、1次および2次反応から得られる脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体について、2torr未満の真空状態(減圧状態)および220〜250℃の温度で40〜300分間、重縮合反応を行う。
【0046】
上記の重縮合反応は、1次および2次反応から生成されたオリゴマーまたはまだ好ましい分子量に至らない重合体の間に反応を起こすために行われる。このためには、重合体の末端または重合体の鎖にて反応せずに残っている官能基を用いて、重縮合反応を進行させなければならないので、真空(減圧)および高温下で重縮合反応を行う。重縮合反応の反応時間は、後述する触媒の使用量および投入方法によって調節されることができる。
【0047】
また、本発明では、上記1次および2次反応から得られる脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体を重縮合反応させたものを2つ以上連結するためには、鎖延長剤を加えて鎖延長反応を行う。上記鎖延長剤としては、多価イソシアネート化合物(ポリイソシアネート化合物)、芳香族アミン系化合物などを使用することができる。好ましくは、鎖延長剤は、共重合体に対して0.1〜5重量部の量で使用することができる。また、本発明は、大韓民国特許出願10−2011−0009435号に記載されたように、少量の多価イソシアネート化合物を使用する場合をも含む。
【0048】
多価イソシアネート化合物としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびトリフェニルメタントリイソシアネートからなる群より選択される1種以上を使用することができ、芳香族アミン系化合物としては、特に、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエンと3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエンが20重量部:80重量部の比率で混合されてなるロンザ(Lonza)社のDETDA80(製品名)を使用することができる。
【0049】
本発明の上記1次および2次反応、重縮合反応および鎖延長反応では、3価以上の官能基を有する化合物(分岐剤)を選択的に加えて、分岐反応を生じさせ、分子量の増加と同時に、分岐構造(branching structure)を有する重合体を製造することができる。
【0050】
上記分岐剤としては、3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物、および3官能以上のヒドロキシカルボン酸からなる群より選択された1種以上の多官能性化合物を使用することができる。そうでなければ、大韓民国特許出願10−2011−0010269号に記載された分岐剤溶液を、脂肪族および芳香族のジカルボン酸化合物1molに対して0.1〜3gの量で使用することができる。
【0051】
本発明において、上記分岐剤の使用の有無またはその使用量は、メルトフローインデックスなどで示される生分解性樹脂の物性に大きな影響を及ぼす因子である。したがって、本発明では、樹脂の物性を調節するために、樹脂の製造のための各反応において、分岐剤の使用の有無および使用量を決定する。
【0052】
また、本発明では、反応を促進させ、安定的な反応を起こすことによって、反応の効率を向上させるために、触媒または熱安定剤を使用することができる。
【0053】
上記触媒としては、好ましくは、テトラ−n−ブチルチタネート(Ti(OC)またはVertec(登録商標)VEXP 0641(チタン型触媒、ジョンソン・マッセイ社製)などの有機チタン触媒を使用することができる。好ましくは、触媒は、脂肪族および芳香族のジカルボン酸化合物1molに対して0.1〜1.5gの量で使用することができる。
【0054】
上記熱安定剤は、トリフェニルフォスフェートまたはトリメチルフォスフェートなどのリン化合物を含むことができる。上記リン化合物は、分子量増加反応が高温で進行するときに、熱分解を防止するので、反応を安定に維持することができる。
【0055】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。しかし、実施例は、発明の理解を容易にするためのものであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1
500mLの3−ネック反応器の中で、1.3molの1,4−ブタンジオール(SK)、0.52molのアジピン酸(Rhodia)、テトラ−n−ブチルチタネート0.4g、トリフェニルフォスフェート0.1g、および大韓民国特許出願10−2011−0010269号に記載されている分岐剤溶液1.3gを混合した後、昇温させ、180℃で1次エステル化反応を行った。反応は、理論流出量である18.72mLの水(0.52×2mol)が流出されるまで進行させた後、終結させた。
【0057】
次に、反応器に0.48molのテレフタル酸(三星石油化学)をさらに投入した後、昇温 し、240℃で2次反応を進行させた。反応は、反応器コンデンサーの上部の温度が90℃以下に下がり始めた時点で終結させた。
【0058】
次に、上記1次および2次反応で得られた反応物を、230℃、1torr未満の真空度(減圧状態)で135分間、重縮合反応させて、生分解性樹脂を得た。
【0059】
実施例2
反応器に、1,4−ブタンジオール、アジピン酸、テレフタル酸、テトラ−n−ブチルチタネート0.3g、トリフェニルフォスフェート0.1g、および大韓民国特許出願10−2011−0010269号に記載されている分岐剤溶液1.3gを同時に投入した後、1次および2次エステル化反応を順次に進行させることを除いて、実施例1と同様の方法で、1次および2次反応を進行させた。すなわち、反応器の温度を180℃に昇温した後、理論流出量である18.72mLの水が流出されるまで1次エステル化反応を進行させ、次いで、反応器の温度を240℃に昇温した後、2次反応を進行させた。2次反応の終結後、テトラ−n−ブチルチタネート0.3gをさらに反応器に投入し、230℃、1torr未満の真空度で90分間、重縮合反応を進行させて、生分解性樹脂を得た。
【0060】
実施例3
実施例1で製造された重合体を高温真空乾燥器に入れ、20Torr以下、80℃で4時間以上、真空乾燥させた。こうして得られた重合体200gに、鎖延長剤としてジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)40mgを加え、さらに、酸化防止剤(テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン、AO−60)40mgおよびワックス(エチレンビスステアルアミド、EBS)40mgを加えて混合した。その後、170℃で、混合物を押出しながら反応させた。最終的な生分解性樹脂を得た。
【0061】
実施例4
実施例1で製造されて実施例3で使用された重合体の代わりに、実施例2で製造された重合体を使用したことを除いて、実施例3と同様の方法によって、最終的な生分解性樹脂を得た。
【0062】
実施例5
実施例2の分岐剤溶液を使用しないことを除いて、実施例2と同様の方法によって、生分解性樹脂を得た。
【0063】
比較例1
反応器に、1.3molの1,4−ブタンジオールと0.48molのテレフタル酸を入れ、180℃に昇温して反応を進行させた。しかし、反応水は流出しなかった。したがって、上記温度では2つのモノマー間の反応が誘導されないことを確認した。
【0064】
比較例2
反応器に、1.3molの1,4−ブタンジオール、0.52molのアジピン酸および0.48molのテレフタル酸を入れ、240℃に昇温し、240分間、反応を進行させた。反応が進行し、反応水が流出した。
【0065】
実験例
(生分解性樹脂の物性評価)
実施例1〜4で得られた生分解性樹脂に対して、下記のように物性を評価した。物性の比較のために、商業的に入手可能なポリブチレンアジペート−コ−テレフタレート(polybutylene adipate−co−terephthalate、PBAT)の生産品として、既存のジメチルテレフタレートを使用して製造された製品(S−Enpol社)と、BASF社のEcoflex(登録商標)C1200を、対照群として使用した。
【0066】
樹脂のメルトフローインデックス(MFI)および分子量を測定した。
【0067】
メルトフローインデックス(MFI)は、MELTINGINDEXER(GOTPFERT、MI−3)を用いて、190℃で2160gの荷重の下に10分間で流れる量を測定した。また、分子量は、樹脂に対して0.1重量%のクロロホルム溶液を製造した後、GPC(Gel Permeation Chromatography)(Agilent 1200 Infinity Series)を用いて、35℃で1mL/分の流速で測定した。それぞれの結果を表1に示した。
【0068】
また、樹脂の熱分析を示差走査熱量計法(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を用いて行った。熱分析から、樹脂のガラス転移温度(glass transition temperature、T)、融点(melting temperature、T)および結晶化温度(crystallization temperature、T)を求めた。結果を表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すとおり、本発明によって製造される生分解性樹脂は、機械的物性および熱的特性の点で既存の製品と同等であることが確認された。
【0071】
特に、分岐剤を使用せずに合成された実施例5の樹脂は、同一の合成条件下で分岐剤を使用して合成された実施例2の樹脂に比べて、大きく減少したメルトフローインデックスと、低い結晶化温度Tを有していた。すなわち、機械的物性の点で向上していた。このことから、本発明において、分岐剤の使用の有無またはその使用量によって、樹脂の物性を調節することができることが分かる。
【0072】
次に、実施例1で得られた樹脂と、Ecoflex(登録商標)樹脂を、色度計(SpectraMagic NX、コニカ・ミノルタ社)を用いて、比較および分析した。結果を表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
フィルム色相データにおいて、「L」値が大きいほど、色相が明るく現われ、また、「a」と「b」の値が0に近いほど、色相が良好に現われる。対照群の製品と比較して、本発明で製造された樹脂は、色相の点で大きな差異がなかった。
【0075】
(反応流出水の分析)
実施例1、2および比較例2の反応の結果としての流出水を、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析した。分析の結果、比較例2の反応流出水では、約20%のテトラヒドロフラン(THF)が検出された。一方、実施例1、2の場合には、5〜7%程度の少量のテトラヒドロフランが検出された。
【0076】
したがって、本発明によれば、脂肪族ジヒドロキシ化合物の消費を最小化し、大部分の脂肪族ジヒドロキシ化合物を反応に含ませることによって、効率的な反応を誘導することができることが分かる。