(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016926
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ボビン巻取り機
(51)【国際特許分類】
B65H 54/28 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
B65H54/28 B
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-531176(P2014-531176)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-530155(P2014-530155A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】EP2012067979
(87)【国際公開番号】WO2013041442
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年7月8日
(31)【優先権主張番号】102011114025.9
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
(72)【発明者】
【氏名】ローラント エスターヴィント
【審査官】
松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−507824(JP,A)
【文献】
特開2000−007217(JP,A)
【文献】
特開平06−064838(JP,A)
【文献】
特開昭62−146880(JP,A)
【文献】
特開2004−144105(JP,A)
【文献】
米国特許第03362652(US,A)
【文献】
特開2001−139225(JP,A)
【文献】
特開平06−298455(JP,A)
【文献】
特開昭59−194977(JP,A)
【文献】
特開平05−155523(JP,A)
【文献】
特開2006−206327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00−55/04
B65H 61/00−63/08
F16J 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン巻取り機であって、
複数の巻取りステーション(5.1,5.2,5.3,5.4)であって、ボビン巻取りスピンドル(2,3)に沿って互いに隣接して配置されており、複数のボビン(6.1〜6.4)に複数の糸を並列に巻き取る、複数の巻取りステーションと、
綾振り装置(7)であって、各巻取りステーション(5.1〜5.4)のためのフライヤ綾振りユニット(8.1〜8.4)を有し、該フライヤ綾振りユニット(8.1〜8.4)は複数のドライブホイール(11.1〜11.4)に割り当てられており、該ドライブホイール(11.1〜11.4)は、互いに隣接して配置されており、かつ歯付ベルト(12)を介して、前記フライヤ綾振りユニット(8.1〜8.4)を駆動するための、駆動されるドライビングホイール(14)に連結されている、綾振り装置(7)とを備える、ボビン巻取り機において、
前記歯付ベルト(12)は、唯一の歯付側(27)を介して、全ての歯付のドライブホイール(11.1〜11.4)と、歯付のドライビングホイール(14)とに連結されていることを特徴とする、ボビン巻取り機。
【請求項2】
隣り合う前記ドライブホイール(11.1〜11.4)の間に、前記歯付ベルト(12)を逸らせて該歯付ベルト(12)を前記ドライブホイール(11.1〜11.4)に巻付けるための複数の逸らせローラ(16.1〜16.3)のうちの1つが配置されており、前記逸らせローラ(16.1〜16.3)は、前記歯付ベルト(12)を、反対側の平らな側(23)において案内する、請求項1記載のボビン巻取り機。
【請求項3】
前記逸らせローラ(16.1〜16.3)がそれぞれ、1つ又は2つ以上の連続的なガイド溝(29)を備えるガイドケーシング(28)を有し、前記歯付ベルト(12)は、前記平らな側(23)において、前記ガイドケーシング(28)によって、無端長手方向ウェブ(30)を用いて又は用いずに案内することができる、請求項2記載のボビン巻取り機。
【請求項4】
前記フライヤ綾振りユニット(8.1〜8.4)と、前記ドライブホイール(11.1〜11.4)と、前記ドライビングホイール(14)とは、機械スタンド(1)に可動に保持された板状の綾振りキャリヤ(21)に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のボビン巻取り機。
【請求項5】
前記綾振りキャリヤ(21)と前記機械スタンド(1)との間に複数のダンピングエレメント(32)が配置されている、請求項4記載のボビン巻取り機。
【請求項6】
前記フライヤ綾振りユニット(8.1〜8.4)のそれぞれが、逆方向に回転可能な2つのフライヤロータ(17.1,17.2)と、前記ドライブホイール(11.1〜11.4)に連結されたパワーディバイダ(13)とを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のボビン巻取り機。
【請求項7】
前記パワーディバイダ(13)は、前記フライヤロータ(17.1,17.2)において逆の回転方向を生ぜしめる2つの種類の歯車のうちの一方によって選択的に形成されている、請求項6記載のボビン巻取り機。
【請求項8】
前記歯付ベルト(12)の平らな側(23)は、ダンピング織物層(25)と、ポリウレタンから形成された歯付ベルト(12)の基礎材料と、該基礎材料に埋め込まれた複数のスチールコード(24)とを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のボビン巻取り機。
【請求項9】
前記歯付ベルト(12)の前記歯付側(27)は、4mm〜5mmの範囲の間隔(T)を備えた複数のベルト歯(22)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のボビン巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部による複数の巻取りステーションを有するボビン巻取り機に関する。
【0002】
一般的なボビン巻取り機は、欧州特許出願公開第0965554号明細書より公知である。
【0003】
この種類のボビン巻取り機は、糸をボビンに巻き取るために合成糸の製造において使用される。この場合、方法及び糸の種類に応じて、6000m/minを超える範囲となり得る高い糸走行速度が生ぜしめられる。溶融紡糸法では、糸は、押し出され、加工され、1つの糸グループとして紡糸位置内を案内されるので、糸及びボビンの巻取りは同様に互いに平行に行われる。このために、公知のボビン巻取り機は、突出したボビン巻取りスピンドルを有し、このボビン巻取りスピンドルに、配分された形式で配置された複数の巻取りステーションが形成されている。糸をボビンに交差巻で巻き取ることができるように、綾振り装置が設けられており、この綾振り装置は、各巻取りステーション用のフライヤ綾振りユニットを有する。この種類のフライヤ綾振りユニットは、特に、それぞれの糸を巻取りステーションにおいて高速で往復案内することができるように適している。このために、フライヤ綾振りユニットは、逆方向に回転する2つのフライヤロータを有し、これらのフライヤロータは、糸を交互に往復案内する。フライヤ綾振りユニットは同期して駆動され、電気モータのトルクはベルトドライブを介して各フライヤ綾振りユニットへ伝達される。
【0004】
各巻取りステーションにおいて、糸が巻き取られているときに均一なボビン積層を生じるために、トルク伝達は、歯付ベルトによって、滑りを生じることなく行われる。歯付ベルトは、互いに反対の2つのプロファイル側を有し、これらのプロファイル側に、複数の突出したベルト歯を有する歯形が形成されている。歯付ベルトは、少なくとも1つのドライビングホイールと複数のドライブホイールとによってベルトドライブ内を案内され、ドライビングホイールとドライブホイールとは、歯付ベルトの互いに反対のプロファイル側に係合している。これにより、フライヤ綾振りユニットが駆動されているときの位置精度を、歯付ベルトのプロファイル側のうちの一方のみによって決定することができ、前記プロファイル側はドライブホイールと協働する側である。これに対して、ドライビングホイールによって生ぜしめられる始動荷重及び制動荷重は、通常はより耐摩耗性であるように設計されている反対側のプロファイル側によって吸収される。しかしながら、歯付ベルトにおけるこのような交互の噛み合いは、歯付ベルトに振動を生ぜしめ、これは、多角形効果(polygon effect)として知られているように、巻取りステーションにおける綾振りの均一性に悪影響を及ぼす。多角形効果は、さらに、プロファイル側の不均一な製造公差によっても促進される。
【0005】
したがって、本発明の課題は、巻取りステーションにおいてフライヤ綾振り装置を高い均一性で駆動することができる、一般的な種類のボビン巻取り機を提供することである。
【0006】
本発明によれば、この課題は、歯付ベルトが歯付プロファイル側を介して歯付ドライブホイールと歯付ドライビングホイールとに連結されていることによって達成される。
【0007】
発明の有利な発展形は、それぞれの従属請求項の特徴及び特徴の組合せによって規定される。
【0008】
驚くべきことに、歯付ベルトの一方の歯付プロファイル側におけるドライブホイールとのドライビングホイールの共同係合は、フライヤロータを駆動するための位置決め精度に不都合な効果を生じないことが明らかになった。材料の適切な選択により、歯付ベルトの歯付プロファイル側においてドライビングホイールによって生ぜしめられる摩耗現象は、複数のドライブホイールが存在するとしても、フライヤ綾振りユニットの駆動されるフライヤロータの間に位相差が生じないように、制限することができる。全ての歯付ホイールが一方の側においてのみ歯付ベルトと接触するならば、歯付ベルトの他方の側は、同様に歯形が設けられていてもよいし、平坦であってもよい。
【0009】
ドライビングホイールと、互いに隣接して配置されたドライブホイールとが同じ回転方向を有する場合に、ドライブホイールにおける歯付ベルトの十分な巻付きを保証するために、さらに、複数の逸らせローラのうちの1つが、隣接するドライブホイールの間に配置されており、逸らせローラは、歯付ベルトを平らな反対側において案内する。その結果、各ドライブホイールにおいて、歯付ベルトを複数の噛み合ったベルト歯を介して駆動することができる。したがって、各ドライブホイールを、歯付ベルトを介して確実な位置決めで同一方向に駆動することができる。
【0010】
逸らせローラがそれぞれ、1つ又は2つ以上の連続的なガイド溝を備えるガイドケーシングを有し、かつ無端長手方向ウェブを備えた又は備えないガイドケーシングによって歯付ベルトを平らな側において案内することができることにより、ドライブホイールとドライビングホイールとの間のベルト案内をさらに改善することができる。これにより、歯付ベルトの横方向案内が生ぜしめられ、歯付ベルトが上下に移動することを防止する。特に、これによって達せられることは、ベルト歯が、同じ幾何学的条件の下でドライブホイール上で転動することができることである。
【0011】
フライヤ綾振りユニットを収容するために、フライヤ綾振りユニットは、好適には、ドライブホイール及びドライビングホイールと共に、機械スタンドに可動に保持された板状のキャリヤ上に配置されている。板状キャリヤの可動性の結果、フライヤロータと、後続の接触ローラとの間に形成された綾振り距離は、ボビン直径が増大したとしても、また可動な圧力ローラによって、一定に保つことができる。
【0012】
綾振り装置を切り離すために、好適には、綾振りキャリヤと機械スタンドとの間には複数のダンピングエレメントが設けられており、これにより、ボビン巻取りスピンドルの駆動と、ボビンの巻取りとによって生ぜしめられる振動は、綾振り装置のドライブシステムへ伝達されることはない。
【0013】
ドライブホイールによって生ぜしめられた回転運動を伝達及び変換するために、各フライヤ綾振り装置は、パワーディバイダを有し、このパワーディバイダは、ドライブホイールに連結されており、2つの回転可能なフライヤロータを逆方向に駆動する。この場合、隣接するフライヤロータを同一方向又は逆方向に駆動することができる。
【0014】
ドライブホイールが同一方向で駆動される場合、隣接するフライヤ綾振りユニットの回転可能なフライヤロータの重なり合いを得るために、ボビン巻取り機は、好適には、パワーディバイダが、フライヤロータにおいて反対の回転方向を生ぜしめる2つの種類の歯車のうちの一方によって交互に形成されるように設計されている。
【0015】
さらに、耐摩耗性に加えて、騒音の発生が、発明の発展形により好ましい影響を受けることができる。この発展形では、歯付ベルトの平らな側がダンピング織物層を支持しており、歯付ベルトの基礎材料がポリウレタンから形成されており、複数のスチールコードが基礎材料に埋め込まれている。この種類の高性能材料は、ボビン巻取り機において複数のフライヤ綾振りユニットを確実に駆動するために特に適していることが分かった。つまり、ボビン巻取り機における1つのベルトドライブによって、綾振り装置の10個、12個又はそれよりも多くのフライヤ綾振りユニットを確実に駆動することができる。
【0016】
さらに、糸の綾振り及びボビンへの糸の巻取りにおいて、ボビン積層を著しく妨害するパターン・ブレーキング巻取りを回避するために、綾振り作業中に迅速な周波数変化が必要であることを覚えておかなければならない。したがって、ベルト歯の間隔が歯付ベルトの励起周波数に影響することが示された。綾振り周波数と、歯付ベルトの励起周波数との重なり合った共振を回避するために、歯付ベルトのプロファイル側が、4mm〜5mmの範囲の間隔を備えた複数のベルト歯を有するという発明の発展形は特に有利である。驚くべきことに、4mm〜5mmの範囲の間隔は、フライヤ綾振りユニットの駆動及びボビンを形成するための糸の積層に特に有利な効果を有することが明らかになった。
【0017】
本発明によるボビン巻取り機の典型的な実施の形態は、本発明のさらなる説明のために以下にさらに詳細に記載される。そのために、以下の図面が記載に添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるボビン巻取り機の典型的な実施の形態の正面図を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の典型的な実施の形態の平面図を概略的に示す図である。
【
図3】逸らせローラの典型的な実施の形態の断面図を概略的に示す図である。
【
図4】逸らせローラの別の典型的な実施の形態の断面図を概略的に示す図である。
【
図5】
図1及び
図2による典型的な実施の形態の歯付ベルトの部分図を概略的に示す図である。
【
図6】
図5の歯付ベルトの断面図を概略的に示す図である。
【0019】
図1及び
図2は、本発明によるボビン巻取り機の典型的な実施の形態を様々な図で示している。
図1は、典型的な実施の形態の正面図を概略的に示しており、
図2は、平面図を概略的に示している。いずれか一方の図面を参照することが示されない限り、以下の説明は両方の図面に当てはまる。
【0020】
本発明によるボビン巻取り機の例示された典型的な実施の形態は、糸のグループを巻き取るための溶融紡糸装置における合成糸の製造プロセスにおいて慣用的に使用されており、前記糸のグループは、1つの糸グループとして押し出され、ドラフトされ、加工され、ボビン巻取り機へ送られる。ボビン巻取り機において、複数の巻取りステーションの1つがそれぞれの糸のために形成されている。
【0021】
図2における例示から分かるように、典型的な実施の形態は、各巻取りステーション5.1〜5.4において糸をそれぞれボビン6.1〜6.4に巻き取るために全部で4つの巻取りステーション5.1,5.2,5.3,5.4を有する。このために、ボビン6.1〜6.4は、突出したボビン巻取りスピンドル2において互いに隣接して保持されている。ボビン巻取りスピンドル2は、糸が実質的に一定の巻取り速度でボビン6.1〜6.4に巻き取られるように駆動される。各巻取りステーション5.1〜5.4においてボビンに糸を巻き取るために、ボビン巻取りスピンドル2の前に綾振り装置7が配置されている。綾振り装置7は、各巻取りステーション5.1〜5.4用にそれぞれ1つのフライヤ綾振りユニット8.1〜8.4を有する。フライヤ綾振りユニット8.1〜8.4は、電気モータ10によって駆動グループとして駆動される。トルクの伝達のために、電気モータ10はベルトドライブ9を介してフライヤ綾振りユニット8.1〜8.4に連結されている。このために、ベルトドライブ9は、各フライヤ綾振りユニット8.1〜8.4のためにそれぞれドライブホイール11.1〜11.4を有し、これらのドライブホイールは、歯付ベルト12を介してドライビングホイール14に連結されている。ドライビングホイール14は電気モータ10によって直接に駆動され、ドライビングホイール14及びドライブホイール11.1〜11.4は歯付ベルト12によって同一方向に回転する。歯付ベルト12は、一方のプロファイル側において複数のベルト歯を有し、これらのベルト歯は、ドライビングホイール14の歯と、ドライブホイール11.1〜11.4の歯とに係合している。
【0022】
ドライブホイール11.1〜11.4における十分な巻付けを形成してフライヤ綾振りユニット8.1〜8.4を駆動するために、複数の逸らせローラのそれぞれ1つが、隣接するドライブホイールの間に配置されている。すなわち、逸らせローラ16.1は、ドライブホイール11.1と11.2との間に配置されており、逸らせローラ16.2はドライブホイール11.2と11.3との間に配置されており、逸らせローラ16.3はドライブホイール11.3と11.4との間に配置されている。逸らせローラ16.1,16.2及び16.3は、歯付ベルト12の平らな側に配置されている。すなわち、歯付ベルト12は、ドライブホイール11.1〜11.4と、逸らせローラ16.1〜16.3とに交互に巻き掛けられることにより案内することができる。
【0023】
歯付ベルト9の戻りは、2つのガイドホイール15.1及び15.2を介して行われる。ガイドホイール15.1及び15.2は、歯を有し、歯付ベルト12のプロファイル側と協働する。
【0024】
図1及び
図2の例示から分かるように、各フライヤ綾振りユニット8.1〜8.4は、ドライブホイール11.1〜11.4のうちの1つに直接に連結されたパワーディバイダ13を有する。
図1には、フライヤ綾振りユニット8.4を有する巻取りステーション5.4が概略的に示されている。各フライヤユニット8.1〜8.4と、後続の巻取りステーション5.1〜5.4のそれぞれとは、同一に構成されているので、フライヤ綾振りユニット8.4を有する巻取りステーション5.4は、
図1における例示によって、例として説明される。
【0025】
第1のフライヤセットを有する第1のフライヤロータ17.1と、第2のフライヤセットを有する第2のフライヤロータ17.2とは、パワーディバイダ13によって反対方向に駆動される。フライヤロータ17.1及び17.2のフライヤは、ガイドルーラ26に割り当てられており、ガイドルーラ26のガイドエッジに沿って、糸を2つのフライヤセットを介して往復案内することができる。
【0026】
互いに隣接したフライヤ綾振りユニット8.1〜8.4のコンパクトな配列を得るために、フライヤロータ17.1及び17.2のフライヤセットは、隣接するフライヤ綾振り装置8.1及び8.2の隣接するフライヤロータが互いに噛み合うように設計されている。このために、パワーディバイダ13は、好適には、ロータフライヤにおいて反対方向の回転を生じる2種類の歯車によって形成されている。すなわち、パワーディバイダ13は、左回り歯車又は右回り歯車として設計することができる。
【0027】
しかしながら、基本的に、フライヤ綾振りユニット8.1〜8.4の駆動されるフライヤロータ17.1及び17.2のそれぞれを同じ回転方向で同一に駆動することができるように、パワーディバイダ13が同一に設計される可能性も存在する。
【0028】
フライヤ綾振りユニット8.4は、板状の綾振りキャリヤ21に配置されており、この綾振りキャリヤ21は、綾振り装置7全体にわたって延びており、ベルトドライブ9だけでなく、他のフライヤ綾振りユニット8.1〜8.3も支持している。この典型的な実施の形態では、綾振りキャリヤ21は、旋回アーム19に支持されており、この旋回アーム19は、複数のダンピングエレメント32を介して機械スタンド1に旋回可能に保持されており、その自由端部において押圧ローラ18を支持している。押圧ローラ18は、旋回アーム19に回転可能に取り付けられており、巻取り作業中はボビン6.1〜6.4の表面に当て付けられている。
【0029】
綾振りキャリヤ21は、旋回アーム19によって押圧ローラ18に隣接して保持されており、これにより、綾振りキャリヤ21は、機械スタンド1において旋回アーム19と共に可動に案内される。その結果、ガイドルーラ26と押圧ローラ18との間に形成された綾振り距離は、旋回アーム19のそれぞれの位置に拘わらず一定に保たれる。ある程度、押圧ローラ18のいずれの位置においても、フライヤ綾振りユニット8.1〜8.4によって同一の引きずり長さで糸を往復案内することができる。
【0030】
図1の例示から分かるように、機械スタンド1におけるスピンドルキャリヤ4は、ボビン巻取りタレットとして設計されており、このボビン巻取りタレットには、第2のボビン巻取りスピンドル3が突出した状態で保持されている。各ボビン巻取りスピンドル2及び3を互いに独立して駆動することができ、スピンドルキャリヤ4は同様に駆動装置に割り当てられている。この例示的な実施の形態には、駆動装置は示されていない。糸をボビン6.1〜6.4に巻き取るために、ボビン巻取りスピンドル2はスピンドルキャリヤ4の移動によって案内される。ボビン巻取り作業の終了及びボビン6.1〜6.4の完成後、ボビン巻取りスピンドル2は巻取り領域から交換領域へ案内され、ボビン巻取りスピンドル3は交換領域から巻き取り領域へ案内される。これにより、糸の連続的な巻取りが可能である。
【0031】
糸がボビン6.1〜6.4に巻き取られているとき、糸はフライヤ綾振りユニット8.1〜8.4によって所定の綾振り周波数で往復案内される。フライヤ綾振りユニット8.1〜8.4の綾振り周波数は、電気モータ10によって決定され、ドライビングホイール14から歯付ベルト12を介してドライブホイール11.1〜11.4へ伝達される。この場合、パターン・ブレーキング巻取りとして知られるものを回避するために糸の巻き取り中に綾振り周波数が変化させられるのが一般的である。この変化は同様に、電気モータ10及びベルトドライブ9を介して直接に行われる。これにより、高い動的荷重が歯付ベルト12において生じ、速度変化を伴う。ベルトドライブ9の安定性のために、歯付ベルトは好適には逸らせローラ16の周面上を確実に案内される。
【0032】
図3は、逸らせローラ16.1の典型的な実施の形態を断面図で概略的に示している。逸らせローラ16.1は、シャフト33に回転可能に取り付けられたガイドケーシング28を有する。ガイドケーシング28は、周面に、歯付ベルト12の平らな側23を収容するガイド溝29を有する。平らな側23とは反対側において、歯付ベルトは、ベルト歯22を有するプロファイル側27を有する。
【0033】
しかしながら、これに代えて、歯付ベルト12の平らな側23に1つ又は2つ以上の長手方向ウェブを配置する可能性も存在する。この種の典型的な実施の形態は、
図4に示されている。
図4は、逸らせローラ16.1を断面図で概略的に示す。この逸らせローラ16.1において、ガイドケーシング28は、平行に延びた2つのガイド溝29を有する。ガイド溝29は、歯付ベルト12の平らな側23における2つの長手方向ウェブ30をこれらのガイド溝29において案内することができるように設計されている。その結果、特にドライブホイール11.1〜11.4の領域において、歯付ベルト12の確実で静かな走行が達成される。
【0034】
ベルトドライブ9の歯付ベルト12の設計を、特に
図5及び
図6に属する例示によって説明することができる。
【0035】
図5は、歯付ベルト12の部分的な図を示しており、
図6は、歯付ベルト12の断面図を示している。いずれか一方の図面を参照することが示されない限り、以下の説明は両方の図面に当てはまる。
【0036】
歯付ベルト12は、プロファイル側27と、反対側の平らな側23とを有する。複数のベルト歯22がプロファイル側27に形成されている。歯付ベルト12は無端ベルトとして設計されている。プロファイル側に一体に形成されたベルト歯22は、それぞれ、完全に中実の歯先端を備えた放物線の形状を有する。ベルト歯22の放物線形状は、RPPで示される公知の高性能プロファイルと実質的に同じである。参照文字Tによって
図5に示された間隔は、この場合、プロファイル側27における隣り合うベルト歯22の間の距離を示す。綾振り装置7における歯付ベルト12の使用及び機能を考慮して、間隔Tは、4mm〜5mmの範囲の値に設定されている。この間隔Tにより、糸の巻取り及び変化する綾振り周波数に妨害的な効果を与えることがある妨害共振現象が有利には回避される。
【0037】
歯付ベルト12の構成は基本的に
図6における例示から分かる。歯付ベルト12は、熱可塑性基礎材料、好適にはポリウレタンから形成されている。基礎材料内に複数のスチールコード24が互いに隣接して埋め込まれている。平らな外側23及びプロファイル外側27には織物層25が提供されており、この織物層25は、歯付ベルト12の表面を覆っている。この種の織物層25は、騒音現象に対する特に有利な効果を有する。さらに、その結果、基礎材料の高い摩擦係数を減じることができる。
【0038】
熱可塑性基礎材料は、ボビン巻取り機において使用される場合、特に周囲環境において生じる条件に関して適切であることが分かった。つまり、例えば糸から解離された作製残留物などの揮発性構成成分が、歯付ベルトにおける不利な化学的反応につながる恐れはない。作製残留物による化学的攻撃による早期摩耗及び摩擦は、有利には回避可能である。
【0039】
基礎材料内の
図6に示されたスチールコード24は、強度を高めるためのストランド材料の一例である。例えば炭素繊維などの他のストランド材料も基本的に可能である。
【0040】
図1及び
図2に示されたドライブホイール11.1〜11.4、ドライビングホイール14及びガイドホイール15.1及び15.2は、好適には、ベルトドライブ9のための円形の歯プロファイルを備えて設計されている。高性能プロファイルとして例えば参照文字HDTでも知られるこの種のプロファイルは、ベルトにおいて選択された放物線プロファイルと共に、走行動作及び歯フランク摩耗、及び歯の転がり動作にも有利な効果を及ぼす。その結果、綾振り装置7のフライヤ綾振りユニット8.1〜8.4を確実に、滑りを生じることなく駆動することができる。
【0041】
特に、ドライビングホイール14を介したトルクの導入、及びドライブホイール11.1〜11.4へのトルクの伝達を、歯付ベルト12のプロファイル側27を介して有利には行うことができる。綾振り周波数の開始、変化及び制動の間にドライビングホイール14によって生ぜしめられる荷重は、フライヤ綾振りユニットの位相位置の位置決め精度に不都合な効果を与えない。その結果、各巻取りステーション5.1〜5.4における糸の巻き取りにおける高い均一性を達成することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 機械スタンド
2 ボビン巻取りスピンドル
3 ボビン巻取りスピンドル
4 スピンドルキャリヤ
5.1,5.2,5.3,5.4 巻取りステーション
6.1,6.2,6.3,6.4 ボビン
7 綾振り装置
8.1,8.2,8.3,8.4 フライヤ綾振りユニット
9 ベルトドライブ
10 電気モータ
11.1,...11.4 ドライブホイール
12 歯付ベルト
13 パワーディバイダ
14 ドライビングホイール
15.1,15.2 ガイドホイール
16.1,16.2,16.3 逸らせローラ
17.1,17.2 フライヤロータ
18 押圧ローラ
19 旋回アーム
20 ボビン巻取りチューブ
21 綾振りキャリヤ
22 ベルト歯
23 平らな側
24 スチールコード
25 織物層
26 ガイドルーラ
27 プロファイル側
28 ガイドケーシング
29 ガイド溝
30 長手方向ウェブ
31 糸
32 ダンピングエレメント
33 シャフト