(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくともインヘレント粘度が1.2〜7dl/gであるポリフッ化ビニリデン、ケン化度が80〜90mol%であるポリビニルアルコール、負極活物質および溶剤を含み、
前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計100質量%あたり、前記ポリビニルアルコールを5〜90質量%含む非水電解質二次電池用負極合剤。
【背景技術】
【0002】
近年電子技術の発展はめざましく、小型携帯機器の高機能化が進み、これらに使用される電源には小型・軽量化(高エネルギー密度化)が求められている。高いエネルギー密度を有する電池として、リチウムイオン二次電池などに代表される非水電解質二次電池が、広く使用されている。近年、小型携帯機器の高機能化が進むに従い、非水電解質二次電池の更なる高エネルギー密度化、耐久性の向上などが期待されている。
【0003】
一方、地球環境問題や省エネルギーの観点から二次電池とエンジンを組み合わせたハイブリッド自動車や二次電池を電源にした電気自動車などが開発され実用化が進んでいる。
【0004】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの電源として使用される車載用電源は、小型携帯機器用電源として使用されている二次電池と比べ、大型で高価で自動車の主要部品となるため使用途中で電池の交換が困難であり高い耐久性が求められている。また、自動車の使用される地域や季節は多岐に渡るため、高温や低温時の耐久性や性能維持も求められる。さらに、これらの自動車では燃費の向上のために、ブレーキ時の制動エネルギーを電池に蓄えることが重要であり、そのために高い急速充電が求められる。自動車の加速性向上には、短時間でエネルギーを放出する能力、いわゆる高出力密度化も求められる。このように、車載用の非水電解質二次電池では、小型携帯機器用二次電池に求められる性能以外にも安全性を含む種々の性能向上が求められている。
【0005】
このような特性を有する非水電解質二次電池を得るために、該電池を構成する各部材について、様々な研究、開発が行われている。非水電解質二次電池は、主として正極、負極、これらを隔てるセパレータ、そして電解液で構成されている。正極や負極はそれぞれ、粉末状の活物質を集電板に接着することにより構成されており、活物質の性能を電池性能として引出すには、これらの活物質の接着剤となるバインダーの性能向上が不可欠となっている。
【0006】
これまで非水電解質二次電池の負極活物質を接着するバインダー樹脂としては、優れた電気化学安定性、機械物性およびスラリー特性などを有していることから、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が多く使用されている。
【0007】
非水電解質二次電池は、充放電を繰返しても充放電容量の低下が少ないほど好ましく、そのためには活物質の構造が充放電を繰り返しても安定であることが必要である。さらに、バインダーは電極中において長期間使用しても活物質同士あるいは、活物質と集電板とを接着することが重要である。小型携帯機器用の二次電池と比べ車載用の大型二次電池は、高い耐久性が求められており、耐久性の向上のためにバインダーの接着性の向上も求められている。
【0008】
接着性を向上させるには、多くのバインダーを使用すればよいが、バインダーの使用量が多くなると、非水電解質二次電池内の活物質の量を減らすことになり、非水電解質二次電池の充放電容量が低下することになるので好ましくない。
【0009】
さらに、使用するバインダー量が増加すると、多くのバインダーが活物質の表面を被覆することになり、高い入出力特性が求められる車載用二次電池では活物質表面のバインダー層が抵抗成分となり、入出力特性を低下させる原因となるため好ましくない。
【0010】
一方で負極活物質表面では電解液の還元分解により、SEI(Solid Electrolyte Interface)膜と呼ばれる表面被膜が形成されることにより負極活物質表面における電解液の分解が抑制されることが知られているが、電解液の過剰な分解により被膜が厚くなるとSEI被膜は抵抗成分となり容量低下や入出力特性を低下させるという問題がある。
【0011】
バインダー樹脂としては、バインダー量を増加させることなく、接着性を向上させることが可能であり、かつ電解液の過剰な分解を抑制することが可能な皮膜を負極表面を効率的に被覆するものが望まれている。
【0012】
これまで正極活物質または負極活物質と集電体との接着性、活物質同士の接着性に優れるバインダー樹脂組成物として、ポリビニルアルコール誘導体等の(A)水溶性樹脂およびフッ化ビニリデン系樹脂等の(B)含フッ素系樹脂を必須成分とするバインダー樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載されているバインダー樹脂組成物は未だ接着性が充分ではなかった。
【0013】
また、正極合剤層の均一性、耐久性および生産性に優れたリチウムイオン二次電池用正極として、正極合剤層がリチウム複合酸化物を含む正極活物質、導電材および主結着剤である第1高分子、第2高分子を含有するリチウムイオン二次電池用正極が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、第1高分子として、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン‐クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンマレイン酸変性体、およびポリテトラフルオロエチレンが例示されており、第2高分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが例示されている。特許文献2では、第2高分子は正極合剤層を形成するのに用いられる正極合剤スラリーの流動性を確保するために用いられており、第2高分子を用いることにより正極合剤スラリーにおいて分散媒の使用量が過度に増大しないことが開示されている。また、第2高分子の使用量は全固形分に対して0.01〜3%であることが好ましく、3%を超えると、得られる正極の剛性が増加しすぎて巻回時に割れが発生することが有ることが開示されている。
【0014】
さらに、長寿命のリチウム二次電池として、充放電サイクルに伴う容量や出力の低下を抑制するために、バインダーの主成分である熱硬化性可塑化ポリビニルアルコール系樹脂組成物にポリフッ化ビニリデンを混合して用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、主成分として使用するポリビニルアルコールはポリビニルアルコール系樹脂に対しコハク酸無水物等を用いて変性された熱硬化性ポリビニルアルコール(第一成分)しか使用することが出来ていない。またこの第一成分の合成反応は、ポリビニルアルコールのエステル化反応であるが、反応系の高粘度化、ゲル化の抑制のため有機溶剤を多量に使用する必要があり、溶媒中に存在する水分の管理も困難であるため、酸無水物が残存水分と反応しエステル化率が低くなるなどの課題があった。さらに環状無水物の未反応物や反応触媒が電池性能を劣化させるなど性能面の課題もあった。さらに、プロセスが煩雑になること等から、製造コストが非常に高くなるという問題もあった。
【0015】
さらに、実施例には熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂のみで高い性能を発揮された例は開示されておらず、第二の樹脂成分としてアクリル樹脂系可塑剤を用いた実施例が例示されているのみであり、第二成分の添加が必須であることを示すものである。このように、主成分として使用されるバインダーの製造には煩雑な工程を経る必要があり、可塑剤等の添加物も必要であるなどこれらを実施するには多くの工程が必要になるという問題点もある。さらに、容量維持率や直流抵抗(特許文献3、表2)において実施例が比較例と比較し特段に優れた効果が得られておらず、よりいっそうの改良が課題となっている。
【0016】
また、電極集電体に対する密着力、活物質の保持力に優れた電極用バインダーとして、−(CH
2−CHOH)−で示される構成単位を重合体鎖中30〜95重量%の割合で有するビニルアルコール系重合体を含有する非水電解質二次電池電極用バインダーが提案されている(例えば、特許文献4参照)。前記非水電解質二次電池電極用バインダーとしては、前記ビニルアルコール系重合体を単独で使用しても、他の電極用バインダーと併用してもよいことが開示されており、併用可能なバインダーの例として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂が開示されている。
【0017】
しかしながら、特許文献4で開示されたビニルアルコール系重合体は、−(CH
2−CHOH)−で示される構成単位以外の構成単位として、さまざまな構造を許容しており、−(CH
2−CHOH)−で示される構成単位以外の構成単位が、非水電解質二次電池の物性にどのような影響を与えるかについては、充分に検討がされていなかった。
【0018】
また、特許文献4に記載されている非水電解質二次電池電極用バインダーを用いて非水電解質二次電池を製造しても、急速放電時の容量保持率が充分な電池を得ることはできていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に本発明について具体的に説明する。
【0031】
本発明の非水電解質二次電池用バインダーは、本発明の非水電解質二次電池用バインダーは、少なくともインヘレント粘度が1.2〜7dl/gであるポリフッ化ビニリデン、およびケン化度が80〜90mol%であるポリビニルアルコールを含み、前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計100質量%あたり、前記ポリビニルアルコールを5〜90質量%含むことを特徴とする。
【0032】
本発明の非水電解質二次電池用バインダー溶液は、前記非水電解質二次電池用バインダーおよび溶剤からなる。
【0033】
また、本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、少なくともインヘレント粘度が1.2〜7dl/gであるポリフッ化ビニリデン、ケン化度が80〜90mol%であるポリビニルアルコール、負極活物質および溶剤を含み、前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計100質量%あたり、前記ポリビニルアルコールを5〜90質量%含むことを特徴とする。
【0034】
なお、本明細書において非水電解質二次電池用負極合剤を、単に負極合剤、または合剤とも記す。
【0035】
本発明では、インヘレント粘度が1.2〜7dl/gであるポリフッ化ビニリデンが用いられる。
【0036】
インヘレント粘度は、高分子の分子量を表す指標である。ポリフッ化ビニリデンのインヘレント粘度が低いと、集電体から合剤層の剥離強度が低下するので好ましくない。ポリフッ化ビニリデンのインヘレント粘度は、好ましくは1.3dl/g以上、さらに好ましくは1.5dl/g以上、特に好ましくは2.0dl/g以上である。また、インヘレント粘度が高すぎると溶剤に溶解することが困難になるので好ましくない。ポリフッ化ビニリデンのインヘレント粘度は、好ましくは6.0dl/g以下、さらに好ましくは5.0dl/g以下、特に好ましくは4.0dl/g以下である。
【0037】
本発明に用いられるポリフッ化ビニリデンは、モノマーとして主にフッ化ビニリデンを用いて得られる重合体であり、フッ化ビニリデンの単独重合体でも、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体でもよい。前記ポリフッ化ビニリデンとしては、電気化学的な安定性や良好な加工性の観点から、フッ化ビニリデン由来の構成単位が好ましくは90モル%(全モノマー由来の構成単位を100モル%とする。)以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、特に好ましくはフッ化ビニリデンの単独重合体である。共重合可能なモノマーとしては、フッ素系単量体および炭化水素系単量体などを用いることができ、フッ素系単量体としては、パーフルオロメチルビニルエーテルに代表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等を挙げることができ、炭化水素系単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等を用いることができる。前記フッ化ビニリデンの単独重合体とは、通常は該重合体が、フッ化ビニリデンに由来する構成単位のみから構成されるが、本発明においては、他のモノマー由来の構成単位を不純物量有していてもよい。不純物量とは具体的には、フッ化ビニリデン由来の構成単位と他のモノマー由来の構成単位との合計100モル%あたり、他のモノマー由来の構成単位が0〜0.05モル%であることを意味する。
【0038】
前記ポリフッ化ビニリデンの製造方法としては特に限定はないが、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の製造方法によって製造することが可能である。なお、製造方法としては、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましく、乳化剤を用いる必要がなく不純物の少ないポリフッ化ビニリデンが得られることから懸濁重合が特に好ましい。
【0039】
本発明では、ケン化度が80〜90mol%であるポリビニルアルコールが用いられる。
【0040】
本発明に用いられるポリビニルアルコールとしては、ポリフッ化ビニリデンに対し良好な溶媒であるN‐メチル‐2‐ピロリドン(以下NMPと省略して記載することがある)に対し可溶であり、非水電解質二次電池を構成する電解質溶媒への溶解性が低いことが求められる。ポリビニルアルコールの溶媒に対する溶解性を表す指標としてケン化度を用いることができ、ケン化度が低すぎると電解液溶媒に対する溶解度が高くなり好ましくなく、ケン化が高すぎるとNMPなどのポリフッ化ビニリデンに対する良溶媒に対する溶解度が低下するため好ましくない。ポリビニルアルコールのケン化度としては80〜90mol%であり、さら好ましくは85〜90mol%である。また、ポリビニルアルコールのケン化度が前記範囲にあると、得られた非水電解質二次電池の急速放電時の容量保持率に優れるため好ましい。
【0041】
前記ポリビニルアルコールの平均重合度は100〜4000が好ましく、150〜3800がさらに好ましく、200〜3600が特に好ましい。
【0042】
なお、ポリビニルアルコールのケン化度および平均重合度は、JIS K 6726:ポリビニルアルコールの試験方法に準拠して、測定することができる。
【0043】
前記ポリビニルアルコールは、熱可塑性樹脂の一種であり、一般にポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。このため、前記ポリビニルアルコールは、−(CH
2−CHOH)−で表される構成単位以外に、酢酸ビニル由来の構成単位を有している。前記ポリビニルアルコールとしては、−(CH
2−CHOH)−で表される構成単位および酢酸ビニル由来の構成単位以外の構成単位(他の構成単位)を、0〜8モル%程度有していてもよいが、他の構成単位は有さないことが好ましい。
【0044】
また、他の構成単位を有する場合であっても、有機溶剤への溶解性を確保する観点からエチレン由来の構成単位を有さないことが好ましい。
【0045】
なお有していてもよい他の構成単位としては、例えばプロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル等があげられる。
【0046】
本発明の非水電解質二次電池用バインダーは、少なくとも前記ポリフッ化ビニリデン、および前記ポリビニルアルコールを含むことが大きな特徴であり、接着性に優れ、本発明の非水電解質二次電池の初期不可逆容量を低減することが可能であり、急速放電時の容量保持率にも優れる。この理由は明らかではないが、前記ポリビニルアルコールが負極活物質を効果的に被覆するためであると本発明者らは推測した。より詳細には、前記ポリビニルアルコールが負極活物質を効果的に被覆することにより、接着性に優れ、被覆することにより負極活物質表面における電解液の分解反応が低減されることにより、初期不可逆容量の低減が可能となり、さらに急速放電時の容量保持率に優れると本発明者らは推測した。
【0047】
本発明の非水電解質二次電池用バインダーは、前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコール以外の樹脂(他の樹脂)を含有していてもよい。本発明の非水電解質二次電池用バインダーとしては、全バインダー樹脂に占める前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計割合が大きいほど好ましく、全バインダー樹脂100質量%あたり、前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計が、60質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0048】
また、本発明の非水電解質二次電池用バインダーの機能を発現するためには、前記ポリフッ化ビニリデンに対し適切な割合の前記ポリビニルアルコールを添加することが重要である。本発明の非水電解質二次電池用バインダーは、前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計100質量%あたり、前記ポリビニルアルコールを5〜90質量%含む。前記ポリビニルアルコールの含有率が少なすぎると活物質表面での電解液の分解反応を抑制する効果が低下するので好ましくない。前記ポリビニルアルコールの含有量は5質量%以上であり、好ましくは6質量%以上である。一方、前記ポリビニルアルコールの含有率が大きすぎると活物質表面に形成される被膜が厚すぎて活物質と電解液界面の抵抗が増加し、入出力特性が低下するので好ましくない。前記ポリビニルアルコールの含有量は90質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。前記範囲内では非水電解質二次電池の入出力特性とバインダーの接着性が優れるため好ましい。
【0049】
本発明の非水電解質二次電池用バインダー溶液は、前記非水電解質二次電池用バインダーおよび溶剤からなる。
【0050】
溶剤としては通常有機溶剤が用いられる。前記溶剤としては、前記ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコールを溶解する作用を有するものが通常は用いられ、好ましくは極性を有する溶剤が用いられる。前記溶剤の具体例としては、N‐メチル‐2‐ピロリドン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスフォアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチルウレア、トリエチルホスフェイト、トリメチルホスフェイトなどが挙げられ、N‐メチル‐2‐ピロリドン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが好ましい。また、有機溶剤は1種単独でも、2種以上を混合してもよい。
【0051】
本発明の非水電解質二次電池用バインダー溶液の製造方法としては、前記ポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコールの少なくとも一部を溶剤に溶解できればよく、特に限定は無い。前記非水電解質二次電池用バインダー溶液の製造方法としては例えば、前記ポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコールを同時に溶剤と混合することにより非水電解質二次電池用バインダー溶液を製造する方法、前記ポリフッ化ビニリデンを溶剤と混合し、次いで得られた混合液と前記ポリビニルアルコールとを混合することにより非水電解質二次電池用バインダー溶液を製造する方法、前記ポリビニルアルコールを溶剤と混合し、次いで得られた混合液と前記ポリフッ化ビニリデンとを混合することにより非水電解質二次電池用バインダー溶液を製造する方法、前記ポリフッ化ビニリデンと溶剤との混合液、前記ポリビニルアルコールと溶剤との混合液を別々に調製し、次いで該二種の混合液を混合することにより非水電解質二次電池用バインダー溶液を製造する方法等が挙げられる。
【0052】
なお、ポリビニルアルコールを予め溶剤と混合することにより、得られた混合液は、ろ過を行ってから使用すると、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体に塗布、乾燥することにより形成される合剤層がより均一になるため好ましい。
【0053】
前記非水電解質二次電池用バインダー溶液は、前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計100質量部に対して、溶剤を通常は100〜9000質量部、好ましくは150〜4900質量部、より好ましくは250〜3500質量部含む。前記範囲内ではバインダー溶液の安定性と電極作製時の作業性に優れるため好ましい。
【0054】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤は、少なくとも前記ポリフッ化ビニリデン、前記ポリビニルアルコール(非水電解質二次電池用バインダー)、溶剤、負極活物質を含む。また、前記非水電解質二次電池用負極合剤は、必要に応じて導電助剤を含んでいてもよい。なお、溶剤としては、前述の非水電解質二次電池用バインダー溶液を構成する溶剤として記載したものを用いることができる。
【0055】
前記非水電解質二次電池用負極合剤は、前記ポリフッ化ビニリデンおよび前記ポリビニルアルコールの合計100質量%あたり、前記ポリビニルアルコールを5〜90質量%含む。前記ポリビニルアルコールの含有量は、好ましくは6質量%以上である。また、前記ポリビニルアルコールの含有量は好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。
【0056】
前記負極活物質としては、リチウムを挿入・放出可能な材料であれば特に限定は無いが、炭素系材料、金属・合金材料、金属酸化物等からなる負極活物質を用いることができる。負極活物質としては、炭素質材料からなる負極活物質、すなわち炭素系負極活物質を用いることが好ましい。
【0057】
前記非水電解質二次電池用負極合剤における活物質の割合は、前記ポリフッ化ビニリデンと、ポリビニルアルコールと、負極活物質との合計100質量部あたり、負極活物質が70〜99.9質量部であることが好ましく、75〜99.5質量部であることがより好ましく、80〜99質量部であることが特に好ましい。また、添加剤としてカーボンブラックなどの導電助剤やポリビニルピロリドンなどの分散剤等を含んでいてもよい。
【0058】
前記非水電解質二次電池用負極合剤における溶剤の割合は、前記ポリフッ化ビニリデンと、前記ポリビニルアルコールと、負極活物質との合計100質量部に対して、溶剤を通常は3〜300質量部、好ましくは4〜200質量部含む。前記範囲内では合剤の安定性と塗工性に優れるため好ましい。本発明の非水電解質二次電池用負極合剤の粘度は、2000〜50000mPa・sが好ましく、さらに好ましくは5000〜30000mPa・sである。
【0059】
本発明の非水電解質二次電池用負極合剤の製造方法としては、前記ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、負極活物質、および溶剤を均一なスラリーとなるように混合すればよく、特に限定は無い。非水電解質二次電池用負極合剤の製造方法としては例えば、前記非水電解質二次電池用バインダー溶液に負極活物質を加え混合することにより非水電解質二次電池用負極合剤を製造する方法、非水電解質二次電池用負極合剤に含まれる全成分を同時に混合することにより非水電解質二次電池用負極合剤を製造する方法、前記非水電解質二次電池用バインダーに、前記負極活物質および溶剤を添加し、混合することにより非水電解質二次電池用負極合剤を製造する方法、前記ポリフッ化ビニリデンと前記溶剤との溶液、および前記ポリビニルアルコールと溶剤との溶液を調製し、該2種の溶液と、負極活物質と溶剤とを混合することにより非水電解質二次電池用負極合剤を製造する方法等が挙げられる。
【0060】
なお、ポリビニルアルコールを予め溶剤と混合することにより、得られた溶液は、ろ過を行ってから使用すると、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体に塗布、乾燥することにより形成される合剤層がより均一になるため好ましい。
【0061】
前記炭素系負極活物質としては、黒鉛質材料と難黒鉛化性炭素や易黒鉛化性炭素などの乱層構造を有する炭素質材料(以下、乱層構造炭素とも記す)とを挙げることができる。このような炭素系材料からなる負極活物質を使用すると、高い耐久性を有し、高エネルギー密度を有する二次電池の製造が可能となるので好ましい。
【0062】
黒鉛質材料としては、易黒鉛化性炭素を高温(例えば2000℃以上)の熱処理するにより得られる人造黒鉛と、天然に産する天然黒鉛とがある。黒鉛質材料の特徴は、乱層構造を有する炭素質材料と異なり、炭素六角網平面が3次元的な規則性を有しながら積層構造を有していることである。この構造は粉末X線回折法により測定される回折線の内、100回折線と101回折線、および110回折線と112回折線がそれぞれ分離して観測されることにより知ることができる。また、炭素質材料の六角網平面の平均層面間隔は、黒鉛構造に近づくに従い減少し理想的な黒鉛構造の平均層面間隔、0.3354nmに近づくことが知られており、その値は粉末X線回折法により測定することができる。黒鉛質材料は結晶構造が発達しているほど多くのリチウムを格納することが可能となることから、その指標である平均層面間隔の好ましい値は、0.345nm以下であり、さらに好ましくは0.340nm以下である。黒鉛質材料は真密度が難黒鉛化性炭素のそれと比べ大きいため、小さな体積に大きなエネルギーを蓄えることができるため、体積エネルギー密度の向上には負極活物質として黒鉛質材料を使用することが好ましい。
【0063】
また、理想的な構造を有する黒鉛質材料の真密度は2.26g/cm
3であり、結晶構造が乱れるに従い真密度が低くなる傾向がある。黒鉛質材料の真密度は、好ましくは1.9g/cm
3以上、より好ましくは2.0g/cm
3以上、さらに好ましくは2.1g/cm
3以上である。
【0064】
乱層構造を有する炭素質材料は、易黒鉛化性炭素と難黒鉛化性炭素に大別され、粉末X線回折の測定において3次元的な規則性を示唆する回折線が観測されず、10回折線や11回折線など2次元反射による回折線が観測されるのが特徴である。
【0065】
易黒鉛化性炭素は、高温で(例えば2000℃以上)熱処理することにより黒鉛質材料と変化する性質を有する。易黒鉛化性炭素の負極活物質としての特徴は、難黒鉛化性炭素と類似した充電量に対し電圧がなだらかに変化する充放電曲線を示すことであり、これを用いた電池では端子電圧から充電状態を検知することが容易である。さらに充電カット電位との電位差が大きいため急速な充電に有利であるなどの特徴がある。易黒鉛化性炭素は充放電時に膨張・収縮を伴うため、難黒鉛化性炭素と比べ質量当たりの充電容量や耐久性に劣るが、易黒鉛化性炭素の真密度が大きいため体積当たりの容量が得やすい。また、難黒鉛化性炭素と比較して比表面積が小さく、吸水性が低いため、保存時の酸化劣化による不可逆容量の増加が少ないという好ましい性質も有している。易黒鉛化性炭素が乱層構造を有することは粉末X線回折法により調べることができるが、易黒鉛化性炭素は原料や炭素化反応の条件により電気化学的性質が異なる。易黒鉛化性炭素はそれらの製造条件により構造が変化し、その特徴を真密度により知ることができ、真密度が低いと炭素化度が不充分で不可逆容量が増加するので好ましくない。また、真密度が高すぎると放電容量が減少するので好ましくない。好ましい易黒鉛化性炭素の真密度は1.8g/cm
3以上2.1g/cm
3以下である。
【0066】
前記易黒鉛化性炭素としては、X線回折法により求めた(002)面の平均層間隔(d
002)が0.335〜0.360nmである易黒鉛化性炭素が好ましい。また、前記易黒鉛化性炭素としては、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc
(002))が10nm以上である易黒鉛化性炭素であることが好ましい。なお、負極活物質としてd
002が前記範囲にある易黒鉛化性炭素を用いると、非水電解質二次電池の不可逆容量を低減することができるため好ましい。
【0067】
一方、難黒鉛化性炭素は、黒鉛質材料や易黒鉛化性炭素と比べ真密度は小さいが微細な層空間にリチウムを多量に格納することが可能であり、充放電を繰り返しても結晶構造の変化が少ないため、高い耐久性を有することが特徴である。また、炭酸プロピレンなど低温度で使用可能な電解液でも電解液の分解が少ないため、低温特性に優れている。さらに、易黒鉛化性炭素と同様に充電率により端子電圧がなだらかな充放電曲線を有することから、これを用いた電池では端子電圧から充電状態を検知することが容易である、さらに充電カット電位との電位差が大きいため急速な充電に有利であるなどの特徴がある。
【0068】
前記難黒鉛化性炭素としては、真密度が1.4g/cm
3以上1.8g/cm
3未満であることが好ましい。また、前記難黒鉛化性炭素としては、X線回折法により求めた(002)面の平均層間隔(d
002)が0.365〜0.400nmであることが好ましい。
【0069】
前記難黒鉛化性炭素の真密度としては、1.4〜1.7g/cm
3であることがより好ましく、1.4〜1.6g/cm
3であることが特に好ましい。
【0070】
真密度が前記範囲を超えると、充電容量、放電容量が減少する場合があるため好ましくない。
【0071】
前記難黒鉛化性炭素の平均面間隔(d
002)は、0.370〜0.395nmであることがより好ましく、0.375〜0.390nmであることが特に好ましい。
【0072】
前記難黒鉛化性炭素のLc
(002)は、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、更に好ましくは3nm以下である。また、Lc
(002)が1.0nm未満では炭素骨格の形成が不十分であるため好ましくない。従って、好ましいLc
(002)は1.0nm以上10nm以下、更に好ましくは1.0nm以上5nm以下、更に好ましくは1.0nm以上3nm以下である。
【0073】
前記炭素系負極活物質の例示の中で、人造黒鉛、天然黒鉛は黒鉛質材料に分類され、易黒鉛化性炭素や難黒鉛化性炭素は、乱層構造炭素に分類される。また、前記負極活物質は、種々の異なった特徴を有していることから、目的に合わせて1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。前記負極活物質としては、非水電解質二次電池の優れた入出力特性と耐久性のためには、難黒鉛化性炭素がより好ましい。なお、難黒鉛化性炭素を用いた場合には、非水電解質二次電池の初期不可逆容量が比較的大きいことが、技術上の問題点として存在していたが、本発明ではバインダーとして前記ポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコールを用いることにより、初期不可逆容量を低減することが可能である。
【0074】
前記負極活物質の平均粒径は小さすぎると比表面積が大きくなり、不可逆容量が増加し、粒子径が小さいと平均自由行程が短くなり、短絡時の安全性が低くなるので好ましくない。一方、平均粒径が大きすぎると電極の活物質層が不均一になり、また粒子内でのリチウムの拡散自由行程が増加するため、急速な充放電が困難となるため好ましくない。また、入出力特性を高くするには、電極面積を広げる必要があり、限られた体積内で電極面積を広くするためには電極の活物質層を薄くする必要があり、そのためには粒子径が小さいことが求められる。このような観点から負極活物質の平均粒子径は1〜40μmが好ましく、より好ましく2〜30μmであり、特に好ましくは3〜15μmである。
【0075】
前記負極活物質の比表面積は、小さすぎると、結着剤の活物質中への取り込みが起こり難く、充分な接着性が確保されるため、好ましくない。さらに、充放電するための反応面積が少なくなり、急速な充放電が困難となるため好ましくない。一方、比表面積が大きすぎると、電解質の分解量が増加し、初期の不可逆容量が増えるため好ましくない。
【0076】
前記負極活物質の比表面積は、好ましくは0.3〜25m
2/g、さらに好ましくは0.5〜20m
2/g、特に好ましくは2〜10m
2/gである。
【0077】
金属酸化物からなる負極活物質としては、例えばチタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム等を用いることができる。
【0078】
前記炭素系負極活物質の製造方法としては特に限定はないが、例えば椰子殻炭等を脱灰して得られた脱灰炭を焼成することにより製造することができる。
【0079】
また、前記負極活物質としては市販品を用いてもよく、炭素系負極活物質の市販品としては、カーボトロンP S(F)(株式会社クレハ製、難黒鉛化性炭素)、BTR(登録商標)918(BTR NEW ENERGY MATERIALS INC社製、天然黒鉛)等を用いることができる。また、金属酸化物からなる負極活物質としては、エナマイト(登録商標)LTシリーズLT106(石原産業株式会社製、チタン酸リチウム)等を用いることができる。
【0080】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前記非水電解質二次電池用負極合剤を、集電体に塗布・乾燥することにより得られる。
【0081】
なお、本発明において、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体に塗布・乾燥することにより形成される、非水電解質二次電池用負極合剤から形成される層を、合剤層と記す。
【0082】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、集電体と合剤層との剥離強度に優れる。前記非水電解質二次電池用負極においては、本発明の非水電解質二次電池用負極合剤を用いることを特徴としており、集電体と合剤層との剥離強度に優れる。
【0083】
本発明の非水電解質二次電池用負極が、集電体と合剤層との剥離強度に優れる理由は明らかではないが、合剤が前記ポリビニルアルコールを含有するため、集電体と合剤層との剥離強度に優れると推測した。
【0084】
本発明に用いる集電体としては、例えば銅、ニッケルなどが挙げられ、その形状としては例えば金属箔や金属網等が挙げられる。集電体としては、銅箔が好ましい。
【0085】
集電体の厚さは、好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは5〜20μmである。
【0086】
また、合剤層(片面あたり)の厚さは、好ましくは10〜250μmであり、より好ましくは20〜150μmである。
【0087】
本発明の非水電解質二次電池用負極を製造する際には、前記非水電解質二次電池用負極合剤を前記集電体の少なくとも一面、好ましくは両面に塗布を行う。塗布する際の方法としては特に限定は無く、バーコーター、ダイコーター、コンマコーターで塗布する等の方法が挙げられる。また、塗布した後に行われる乾燥としては、通常50〜150℃の温度で1〜300分行われる。また、乾燥の際の圧力は特に限定はないが、通常は、大気圧下、又は減圧下で行われる。さらに、乾燥を行ったのちに、熱処理が行われてもよい。熱処理を行う場合には、100〜160℃の温度で1〜300分行われる。なお、熱処理の温度は前記乾燥と重複するが、これらの工程は、別個の工程であってもよく、連続的に行われる工程であってもよい。
【0088】
また、さらにプレス処理を行ってもよい。プレス処理を行う場合には、プレス圧力は特に限定されることはないが、好ましくは1.0MPa(0.2t/cm
2)〜52.0MPa(10t/cm
2)であり、より好ましくは1.6MPa(0.3t/cm
2)〜41.6MPa(8t/cm
2)である。プレス処理を行うと電極密度を向上できるため好ましい。
【0089】
以上の方法で、本発明の非水電解質二次電池用負極を製造することができる。なお、非水電解質二次電池用負極の層構成としては、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体の一面に塗布した場合には、合剤層/集電体の二層構成であり、非水電解質二次電池用負極合剤を集電体の両面に塗布した場合には、合剤層/集電体/合剤層の三層構成である。
【0090】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前記非水電解質二次電池用負極合剤を用いることにより、集電体と合剤層との剥離強度に優れるため、プレス、スリット、捲回などの工程で電極に亀裂や剥離が生じにくく、生産性の向上に繋がるために好ましい。
【0091】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、前述のように集電体と合剤層との剥離強度に優れるが、具体的には、集電体と合剤層との剥離強度は、JIS K6854に準拠して、180°剥離試験により測定を行った際に通常は0.5〜20gf/mmであり、好ましくは1〜15gf/mmである。
【0092】
本発明の非水電解質二次電池用負極は、集電体と合剤層との剥離強度に優れる。
【0093】
本発明の非水電解質二次電池は、前記非水電解質二次電池用負極を有することを特徴とする。
【0094】
本発明の非水電解質二次電池としては、前記非水電解質二次電池用負極を有していること以外は特に限定は無い。非水電解質二次電池としては、前記非水電解質二次電池用電極を負極として有し、負極以外の部位、例えば正極、セパレータ等は従来公知のものを用いることができる。
【0095】
前記正極としては、正極反応の担い手となる正極活物質を有し、かつ集電機能を有するものであれば特に限定されないものの、多くの場合、正極活物質を含む正極合剤層と、集電体として機能するとともに正極合剤層を保持する役割を果たす正極集電体とからなる。
【0096】
非水電解質二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、正極合剤層を構成する正極活物質として、少なくともリチウムを含むリチウム系正極活物質が好ましい。
【0097】
リチウム系正極活物質としては例えば、LiCoO
2、LiNi
xCo
1-xO
2(0≦x≦1)等の一般式LiMY
2(Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、V等の遷移金属の少なくとも一種:YはO、S等のカルコゲン元素)で表わされる複合金属カルコゲン化合物、LiMn
2O
4などのスピネル構造をとる複合金属酸化物、LiFePO
4などのオリビン型リチウム化合物等が挙げられる。なお、前記正極活物質としては市販品を用いてもよい。
【0098】
前記正極活物質の比表面積は、0.05〜50m
2/gであることが好ましい。
【0099】
正極合剤層を形成する際に用いられるバインダー樹脂としては、特に限定されないものの、従来公知のリチウムイオン二次電池において広く用いられているものを好適に用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体およびその水素化物、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等を用いることができる。また、前記含フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン系共重合体を用いることもできる。フッ化ビニリデン系共重合体としては、フッ化ビニリデン‐マレイン酸モノメチルエステル共重合体等を用いることができる。
【0100】
非水電解質二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、正極集電体として、アルミニウムまたはその合金からなるものが好ましく、その中でもアルミニウム箔が好ましい。集電体の厚さは、通常は5〜100μmである。
【0101】
前記セパレータとしては、非水電解質二次電池を構成するセパレータであり、正極と負極とを電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。セパレータとしては、特に限定されないものの、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系高分子、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系高分子、芳香族ポリアミド系高分子、ポリエーテルイミドなどのポリイミド系高分子、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セラミックス等、及びこれらの混合物からなる単層、及び多層の多孔膜、不織布などを挙げる事ができる。特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いることが好ましい。ポリオレフィン系高分子多孔膜としては、例えば、ポリポア株式会社製からセルガード(登録商標)として市販されている、単層ポリプロピレンセパレータ、単層ポリエチレンセパレータ、およびポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどを挙げることができる。
【0102】
本発明の非水電解質二次電池は初期不可逆容量が従来の非水電解質二次電池と比べ低減することが可能であり、急速放電時の容量保持率に優れ、充放電サイクル特性を改善することが可能である。
【0103】
なお、本明細書におけるバインダーの分析方法を以下に記す。
【0104】
〔ポリフッ化ビニリデンのインヘレント粘度測定方法〕
前記インヘレント粘度とは、樹脂4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の30℃における対数粘度である。インヘレント粘度η
iの算出は、ポリフッ化ビニリデン80mgを20mlのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解して、30℃の恒温槽内でウベローデ粘度計を用いて次式により行うことができる。
【0105】
η
i=(1/C)・ln(η/η
0)
ここでηは重合体溶液の粘度、η
0は溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド単独の粘度、Cは0.4g/dlである。
【0106】
〔ポリビニルアルコールのケン化度測定方法〕
ポリビニルアルコールのケン化度および平均重合度は、JIS K 6726:ポリビニルアルコールの試験方法に準拠して、測定することができる。
【0107】
〔負極合剤の粘度測定方法〕
測定方法の詳細を以下に説明する。測定前にE型粘度計(東機産業株式会社製RE550R)の検出ヘッドに3°×R14(コーン角度3°、半径14mm)の円錐ロータをロータ軸にねじ込んで取り付けた。また温度調整機能付きのサンプルカップは25℃に調整しておいた。
【0108】
測定は以下のように行った。検出ヘッドからサンプルカップを取り外し、均質な合剤をシリンジを用いて0.55mLサンプルカップの中央部分に注入した。サンプル注入後、サンプルカップを再び検出ヘッドに取り付けた。サンプル注入後1分間静置し、サンプル温度を25℃にしたのち、せん断速度2s
-1で5分間の測定を行った。測定開始5分後の粘度を測定し、合剤の粘度とした。
【実施例】
【0109】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0110】
実施例、比較例で用いた負極活物質の物性を以下の表1に示す。なお、以下の表1において、LT106と表記した活物質はチタン酸リチウムであり、他の活物質は炭素系負極活物質である。
【0111】
【表1】
【0112】
前記表1における各物性は以下に記載の方法で測定した。
【0113】
(1)平均粒径(Dv50(μm))
負極活物質約0.1gに対し分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、負極活物質に分散剤を馴染ませる。つぎに、純水30mlを加え、超音波洗浄で約2分間分散させたのち、粒径分布測定器(島津製作所「SALD‐3000J」)で、粒径0.5〜3000μmの範囲の粒径分布を求めた。
【0114】
前記粒径分布から、累積容積が50%となる粒径を平均粒径(Dv50(μm))とした。
【0115】
(2)炭素系負極活物質の平均層面間隔(d
002)およびc軸方向の結晶子の大きさ(Lc
(002))
炭素系負極活物質粉末を試料フォルダーに充填し、PANalytical社製X'PertPROを用いて、対称反射法にて測定した。印加電流/印加電圧は45kV/40mAの条件で、Niフィルターにより単色化したCuKα線(波長λ=0.15418nm)を線源とし、X線回折図形を得た。回折図形の補正には、ローレンツ偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、Kα
1、Kα
2の2重線の補正のみをRachingerの方法により行った。(002)回折角は、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線を用いて補正し、CuKα線の波長を0.15418nmとし、下記Braggの公式よりd
002を計算した。また、(002)回折線の積分法により求められた半値幅と標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線の半値幅からAlexander曲線を用いてβ
1/2を求め、下記Scherrerの式によりc軸方向の結晶子の厚みLc
(002)を計算した。ここで、形状因子Kは、0.9とした。
【0116】
【数1】
【0117】
(3)ブタノール法による真密度(JIS R7212)(ρ
B)
炭素系負極活物質のブタノール法による真密度を、JIS R7212に定められた方法に従い測定した。概要を以下に記す。
【0118】
内容積40mlの側管付比重びんの質量(m
1)を正確に量る。次に、その底部に試料を約10mmの厚さになるように平らに入れた後、その質量(m
2)を正確に量る。これに1−ブタノールを静かに加えて、底から20mm程度の深さにする。次に比重びんに軽い振動を加えて、大きな気泡の発生がなくなったのを確かめた後、真空デシケーター中にいれ、徐々に排気して2.0〜2.7kPaとする。その圧力に20分間以上保ち、気泡の発生が止まった後取り出して、更に1−ブタノール満たし、栓をして恒温水槽(30±0.03℃に調整してあるもの)に15分間以上浸し、1−ブタノールの液面を標線に合わせる。次に、これを取り出して外部をぬぐって室温まで冷却した後質量(m
4)を正確に量る。
【0119】
次に同じ比重びんに1−ブタノールだけを満たし、前記と同じようにして恒温水槽に浸し、標線を合わせた後、質量(m
3)を量る。
【0120】
また、使用直前に沸騰させて溶解した気体を除いた蒸留水を比重びんにとり、前と同様に恒温水槽に浸し、標線を合わせた後質量(m
5)を量る。
【0121】
ρ
Bは次の式により計算する。ρ
B=(m
2−m
1)(m
3−m
1)d/[{m
2−m
1−(m
4−m
3)}(m
5−m
1)]
ここでdは水の30℃における比重(0.9946(g/cm
3))である。
【0122】
(4)比表面積(SSA)
BETの式から誘導された近似式vm=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりvmを求め、次式により試料(負極活物質)の比表面積を計算した。
【0123】
比表面積=4.35×vm(m
2/g)
前記BETの式から誘導された近似式において、vmは試料表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量(cm
3/g)、vは実測される吸着量(cm
3/g)、xは相対圧力である。
【0124】
具体的には、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質物質への窒素の吸着量を測定した。
【0125】
粒子径約5〜50μmに粉砕した負極活物質を試料管に充填し、窒素ガスを30モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、負極活物質に窒素を吸着させる。つぎに試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量vとした。
【0126】
前記表1中において椰子殻炭由来の炭素系負極活物質と記載した負極活物質は以下に記載の方法で製造した。
【0127】
〔椰子殻炭由来の炭素系負極活物質の製造〕
平均粒径1mm以下に粉砕した椰子殻炭(フィリピン産)30gと35%塩酸100gを入れ、150℃で2時間攪拌した後、ろ過し、さらにろ過残分を100℃のイオン交換水にて充分に水洗し120℃で2時間乾燥し、脱灰炭を得た。
【0128】
このようにして得られた脱灰炭を粉砕、分級し、平均粒子径が約10μmの炭素前駆体微粒子とした後、1250℃で1時間本焼成を行い、椰子殻炭由来の炭素系負極活物質を得た。なお、椰子殻炭由来の炭素系負極活物質は、難黒鉛化性炭素である。
【0129】
前記表1中において前記椰子殻炭由来の炭素系負極活物質以外の負極活物質としては、以下に示すように市販品を用いた。
【0130】
表1中、カーボトロンPと記載した負極活物質は、カーボトロンP S(F)(株式会社クレハ製)(難黒鉛化性炭素)であり、BTR918と記載した負極活物質は、BTR(登録商標)918(BTR NEW ENERGY MATERIALS INC社製、天然黒鉛)であり、LT106と記載した負極活物質は、エナマイト(登録商標)LTシリーズLT106(石原産業株式会社製、チタン酸リチウム)である。
【0131】
〔実施例1〕
ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFとも記す)(株式会社クレハ製KF#7200、インヘレント粘度(η
i)、2.2dl/g)をN‐メチル‐2‐ピロリドン(以下、NMPとも記す)に溶解させた、ポリフッ化ビニリデン(#7200)含有量8質量%のNMP溶液63.8質量部と、ポリビニルアルコール(以下、PVAとも記す)(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−205)をNMPに溶解させた、PVA含有量10質量%のNMP溶液9質量部と、活物質(カーボトロンP)94質量部と、さらにNMPとを加えて攪拌し、固形分濃度が56質量%の電極合剤を調製した。活物質とPVDFと、PVAとの質量分率は94:5.1:0.9である。
【0132】
〔剥離強度の測定〕
(剥離強度測定用電極の作製)
前記電極合剤を厚み10μmの銅箔の片面上に、スペーサーで乾燥後の合計厚み100μmになるようにし、バーコーターを用いて均一に塗布し、これを窒素雰囲気下110℃30分加熱乾燥し、電極構造体(剥離強度測定用電極)を作製した。
【0133】
(電極構造体における電極合剤層の剥離強度の測定)
集電体(銅箔)に電極合剤を塗布、加熱乾燥することにより得られた前記電極構造体を試料とし、電極合剤層の集電体からの剥離強度をJIS K6854(剥離強度の測定)に準拠して180°剥離試験により測定した。
【0134】
具体的には前記電極構造体を幅2cm×長さ5cmに押切を用いて切りだし、電極構造面(電極合剤層表面)にテープ(NITTO TAPE)を接着し、7mPa・s で20秒プレスし、テープを電極構造面に充分に接着させたものを試料として用いた。
【0135】
前記試料の銅箔を90°の角度で2.7cmまで引き剥がしたのち、圧縮試験機(ORIENTEC社製STA−1150)に試料を固定し、200mm/minで180°に引張り、変位量7mm〜23mm間での荷重の平均値を構造体幅(20mm)で除した値を剥離強度とした。
【0136】
〔電池性能の評価、不可逆容量の測定〕
(充放電試験用電極の作製)
前記電極合剤を厚み18μmの銅箔の片面上に均一に塗布し、これを120℃25分加熱・乾燥した。直径15mmの円盤状に打ち抜き、これをプレスすることで負極電極(なお、該負極電極を、充放電試験用電極、炭素極とも記す)を作製した。なお、電極中の活物質質量は10mgに調整した。
【0137】
(充放電試験方法)
前記活物質(カーボトロンP)は非水溶媒二次電池の負極を構成する負極活物質として用いるものであるが、本発明の効果である、添加バインダー(PVDFやPVA)による電池活物質中に脱ドープされずに残存する容量、すなわち不可逆容量の低減効果を、対極の性能のバラツキに影響されることなく精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極(負極)として用い、上記で得られた電極を正極とするリチウムイオン二次電池を構成し、その特性を評価した。
【0138】
すなわち、本願発明は非水電解質二次電池用負極合剤や非水電解質二次電池用負極等であるが、不可逆容量および後述の急速放電時容量保持率の評価を行う際は例外的に、電極を負極ではなく正極として用いた。
【0139】
(充放電試験用電池の作製)
前記充放電試験用電極を、2016サイズ(直径20mm、厚さ1.6mm)のコイン型電池用缶の内蓋にスポット溶接された直径17mmのステンレススチール網円盤に、プレスにより加圧して圧着し、電極とした。
【0140】
リチウム極の調整はAr雰囲気中のグローブボックス内で行った。予め2016サイズのコイン型電池用缶の外蓋に直径17mmのステンレススチール網円盤をスポット溶接した後、厚さ0.5mmの金属リチウム薄板を直径15mmの円盤状に打ち抜いたものをステンレススチール網円盤に圧着し、電極(対極)とした。
【0141】
このようにして製造した電極の対を用い、電解質としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとを容量比で1:2:2に混合した混合溶媒に1.5モル/リットルの割合でLiPF
6を加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜をセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
【0142】
(電池容量の測定)
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った。充放電試験用電極へのリチウムのドープ反応を定電流定電圧法により行い、脱ドープ反応を低電流法で行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。そこでここでは、便宜上炭素極へのリチウムのドープ反応を便宜上「充電」と記述することにする。
【0143】
逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、負極活物質からのリチウムの脱ドープ反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した充電方法は定電流定電圧法であり、具体的には端子電圧が0mVになるまで0.5mA/cm
2で定電流充電を行い、端子電圧を0mVに達した後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに達するまで充電を継続した。このとき、供給した電気量を電極の炭素材の質量で除した値を炭素材の単位質量当たりの充電容量(mAh/g)と定義した。
【0144】
充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は0.5mA/cm
2で定電流放電を行い、終止電圧を1.5Vとした。このとき放電した電気量を電極の炭素材の質量で除した値を炭素材の単位質量当たりの放電容量(mAh/g)と定義する。不可逆容量は、充電容量−放電容量として計算される。
【0145】
同一試料を用いて作成した試験電池(合計3個)についての測定値を平均して充放電容量および不可逆容量を決定した。
【0146】
〔電池性能の評価、急速放電時容量保持率の測定〕
(急速放電性試験)
上記構成のリチウム二次電池(充放電試験用電池)について、上記(電池容量の測定)の通りに充放電を行った後、再度同様の方法で充放電を行った。
【0147】
次に端子電圧が0Vになるまで0.5mA/cm
2で定電流充電を行った後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに減衰するまで充電を行った。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が1.5Vに達するまで一定の電流密度12.5mA/cm
2(5C相当)と25mA/cm
2(10C相当)とで行い、それぞれの放電容量を求めた。各放電容量を、0.5mA/cm
2における放電容量で除した値を、急速放電時容量保持率(%)と定義した。
【0148】
同一試料を用いて作成した試験電池(合計3個)についての測定値を平均した。
【0149】
結果を表3に示す。
【0150】
〔実施例2〜4、比較例1、2〕
前記ポリフッ化ビニリデン(#7200)含有量8質量%のNMP溶液およびPVA含有量10質量%のNMP溶液の使用量を変更することにより、表2に記載のようにPVDFと、PVAとの質量比を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0151】
結果を表3に示す。
【0152】
〔実施例5、比較例3〜6〕
表2に記載のように前記ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#7200、インヘレント粘度(η
i)、2.2dl/g)をポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#1700、インヘレント粘度(η
i)、1.7dl/g)または、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#1100、インヘレント粘度(η
i)、1.1dl/g)に変更し、該ポリフッ化ビニリデンのNMPに対する量を変更することにより、ポリフッ化ビニリデン(#7200)含有量8質量%のNMP溶液を、ポリフッ化ビニリデン(#1700)含有量10質量%のNMP溶液、ポリフッ化ビニリデン(#1100)含有量12質量%のNMP溶液に変更した。
【0153】
前記ポリフッ化ビニリデンのNMP溶液およびPVA含有量10質量%のNMP溶液の使用量を変更することにより、表2に記載のようにPVDFと、PVAとの質量比を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0154】
結果を表3に示す。
【0155】
〔実施例6〜8、比較例7〜11〕
表2に記載のように前記活物質(カーボトロンP)を、椰子殻炭由来の炭素系負極活物質に変更し、前記ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#7200、インヘレント粘度(η
i)、2.2dl/g)をポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#7300、インヘレント粘度(η
i)、3.1dl/g)または、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#1100、インヘレント粘度(η
i)、1.1dl/g)に変更し、該ポリフッ化ビニリデンのNMPに対する量を変更することにより、ポリフッ化ビニリデン(#7200)含有量8質量%のNMP溶液を、ポリフッ化ビニリデン(#7300)含有量5質量%のNMP溶液、ポリフッ化ビニリデン(#1100)含有量12質量%のNMP溶液に変更した。
【0156】
また、表2に記載のようにポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−205)をポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−217)または、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−505)に変更した。
【0157】
前記ポリフッ化ビニリデンのNMP溶液およびPVA含有量10質量%のNMP溶液の使用量を変更することにより、表2に記載のようにPVDFと、PVAとの質量比を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0158】
結果を表3に示す。
【0159】
〔実施例9〜11、比較例12〜22〕
表2に記載のように前記活物質(カーボトロンP)を、活物質(BTR918)に変更し、前記ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#7200、インヘレント粘度(η
i)、2.2dl/g)をポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#7300、インヘレント粘度(η
i)、3.1dl/g)または、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#1100、インヘレント粘度(η
i)、1.1dl/g)に変更し、該ポリフッ化ビニリデンのNMPに対する量を変更することにより、ポリフッ化ビニリデン(#7200)含有量8質量%のNMP溶液を、ポリフッ化ビニリデン(#7300)含有量5質量%のNMP溶液、ポリフッ化ビニリデン(#1100)含有量12質量%のNMP溶液に変更した。
【0160】
また、表2に記載のようにポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−205)をポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−217)、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−105)、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−706)、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−235)、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバールPVA−505)、ポリビニルアルコール(クラレ製LMポリマーLM10HD)、またはポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製特殊ポバールJMR150L)に変更した。
【0161】
前記ポリフッ化ビニリデンのNMP溶液およびPVA含有量10質量%のNMP溶液の使用量を変更することにより、表2に記載のようにPVDFと、PVAとの質量比を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0162】
結果を表3に示す。
【0163】
〔実施例12、比較例23〜26〕
表2に記載のように前記活物質(カーボトロンP)を、活物質(LT106)に変更し、前記ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#7200、インヘレント粘度(η
i)、2.2dl/g)をポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#7300、インヘレント粘度(η
i)、3.1dl/g)または、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#1100、インヘレント粘度(η
i)、1.1dl/g)に変更し、該ポリフッ化ビニリデンのNMPに対する量を変更することにより、ポリフッ化ビニリデン(#7200)含有量8質量%のNMP溶液を、ポリフッ化ビニリデン(#7300)含有量5質量%のNMP溶液、ポリフッ化ビニリデン(#1100)含有量12質量%のNMP溶液に変更した。
【0164】
前記ポリフッ化ビニリデンのNMP溶液およびPVA含有量10質量%のNMP溶液の使用量を変更することにより、表2に記載のようにPVDFと、PVAとの質量比を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0165】
結果を表3に示す。
【0166】
なお、非水電解質二次電池を実際に用いる際には、電池としての特性だけではなく、生産性、価格等様々な条件を検討した上で、どのような非水電解質二次電池を用いるか決定される。また、非水電解質二次電池用負極合剤に含有される成分の中で、非水電解質二次電池の電池としての特性(電気的特性)に影響が大きい成分は、負極活物質である。このため、本発明の実施例、比較例においては、同一の活物質を用いた実施例、比較例の中で本発明の効果を検討した。なお、活物質としてカーボトロンPを用いた場合には、剥離強度3.5gf/mm以上、不可逆容量70mAh/g以下、急速放電時容量保持率が、5C相当において90%以上、10C相当において55%以上の態様を、活物質として椰子殻炭由来の炭素系負極活物質を用いた場合には、剥離強度3.5gf/mm以上、不可逆容量70mAh/g以下、急速放電時容量保持率が、5C相当において90%以上、10C相当において70%以上の態様を、活物質としてBTR918を用いた場合には、剥離強度3.5gf/mm以上、不可逆容量20mAh/g以下、急速放電時容量保持率が、5C相当において80%以上、10C相当において52%以上の態様を、活物質としてLT106を用いた場合には、剥離強度3.5gf/mm以上の態様を、実用上充分な性能を有すると判断した。
【0167】
なお、LT106は元来不可逆容量が少なく、急速放電時の容量保持率にも優れる負極活物質として知られており、該活物質を用いた場合の技術課題は剥離強度の改善で有るため、剥離強度についてのみ分析した。
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
〔実施例13〕
(サイクル試験)
(負極電極の作製)
実施例7の電極合剤を厚み18μmの銅箔の片面上に均一に塗布し、これを120℃25分加熱・乾燥した。乾燥後、直径15mmの円盤状に打ち抜き、これをプレスすることで負極電極を作製した。なお円盤状負極電極が有する活物質の質量は10mgとなるように調整した。
【0171】
(正極電極の作製)
コバルト酸リチウム(日本化学工業性「セルシードC−5」)94質量部、カーボンブラック3質量部、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製KF#1300)3質量部、カーボンブラック3質量部にNMPを添加し、混合して正極用合剤を調整した。得られた合剤を厚さ50μmのアルミ箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径14mmの円盤状に打ち抜き、正極電極を作製した。なお、前述の(電池容量の測定)に記載の方法で測定した実施例7における活物質の単位質量あたりの充電容量の95%となるよう正極電極中のコバルト酸リチウムの量を調整した。コバルト酸リチウムの容量を150mAh/gとして計算した。
【0172】
このようにして製造した電極の対を用い、電解液としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとを容量比で1:2:2に混合した混合溶媒に1.5モル/リットルの割合でLiPF
6を加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜をセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いてArグローブボックス中で2032サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
【0173】
ここではじめに3回充放電を繰り返してエージングを行った後、サイクル試験を開始した。サイクル試験で採用した定電流定電圧条件は、電池電圧が4.2Vになるまで、一定の電流密度2.5mA/cm
2で充電を行い、その後、電圧を4.2Vに保持するように(定電圧に保持しながら)電流値を連続的に変化させて電流値が50μAに達するまで充電を継続する。充電終了後、10分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が3.0Vに達するまで一定の電流密度2.5mA/cm
2で行った。この充電および放電を50℃で250回繰り返し、30回後と250回後の放電容量を初回の放電容量で除し、容量維持率(%)を求めた。
【0174】
結果を表4に示す。
【0175】
〔実施例14、比較例27、28〕
前記実施例7の電極合剤を、実施例9の電極合剤(実施例14)比較例8の電極合剤(比較例27)、または比較例14の電極合剤(比較例28)に代え、実施例7における活物質の単位質量あたりの充電容量を、実施例9における活物質の単位質量あたりの充電容量(実施例14)、比較例8における活物質の単位質量あたりの充電容量(比較例27)、または比較例14における活物質の単位質量あたりの充電容量(比較例28)とした以外は実施例13と同様に行い、容量維持率(%)を求めた。
【0176】
結果を表4に示す。
【0177】
〔実施例15〕
実施例9から、ポリフッ化ビニリデンのNMP溶液およびPVA含有量10質量%のNMP溶液の使用量を変更することにより、活物質とPVDFと、PVAとの質量分率が94:4.5:1.5である電極合剤を調製した。
【0178】
実施例1の(電池容量の測定)に記載した方法と同様の方法により、活物質の単位質量あたりの充電容量を求めた。
【0179】
前記実施例7の電極合剤を、前記電極合剤に代え、実施例7における活物質の単位質量あたりの充電容量を、前記活物質の単位質量あたりの充電容量とした以外は実施例13と同様に行い、容量維持率(%)を求めた。
【0180】
結果を表4に示す。
【0181】
非水電解質二次電池用負極合剤に含有される成分の中で、非水電解質二次電池の容量維持率に影響が大きい成分は、負極活物質である。このため、本発明の実施例、比較例においては、同一の活物質を用いた実施例、比較例の中で本発明の効果を検討した。なお、活物質として椰子殻炭由来の炭素系負極活物質を用いた場合には、30回後の容量維持率が91%を超える態様を、活物質としてBTR918を用いた場合には、30回後の容量維持率が50%を超える態様を実用上充分な容量維持率を有すると判断した。
【0182】
【表4】