(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016933
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】自動車に構造ユニット、特にポンプを固定するホルダ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20161013BHJP
F16F 1/373 20060101ALI20161013BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
F16F15/08 A
F16F15/08 V
F16F1/373
F16F1/36 K
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-539264(P2014-539264)
(86)(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公表番号】特表2014-533341(P2014-533341A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】EP2012067051
(87)【国際公開番号】WO2013064282
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】102011085558.0
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ハイン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター リール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス コトラルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ザミル マーフォウド
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−090761(JP,A)
【文献】
実開昭50−122309(JP,U)
【文献】
特開平08−004816(JP,A)
【文献】
特開平05−248466(JP,A)
【文献】
特開2011−027203(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0315235(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F16F 1/36
F16F 1/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に構造ユニット(2)を固定するホルダであって、
環状部(15)と、該環状部(15)に結合された固定要素(4)と、を有する環状の減衰要素(1)を備え、
前記環状部(15)の内側領域は、前記構造ユニット(2)を収容するために設けられており、
前記減衰要素(1)は、外側に固定要素(4)を備え、該固定要素(4)の、半径方向に前記減衰要素(1)の中心から離れる方向に向いた上面(14)は、自動車に対する接続部(5)として設けられており、
前記固定要素(4)内に、ほぼプレート状のインサート部分(8)が配置されており、該インサート部分(8)は、前記減衰要素(1)の局所的な補強のために設計されている、自動車に構造ユニット(2)を固定するホルダにおいて、
前記インサート部分(8)は、互いに反対側の2つの脚部(10)に、前記減衰要素(1)に入り込む翼状部(11)をそれぞれ備え、
前記インサート部分(8)は、折り曲げられた2つの前記脚部(10)を有するU字形の横断面を有し、両前記脚部(10)は、前記固定要素(4)に突入しており、前記翼状部(11)は、それぞれ前記脚部(10)から突出しており、
前記翼状部(11)は、前記環状部(15)に部分的に沿うように延在していることを特徴とする、自動車に構造ユニット(2)を固定するホルダ。
【請求項2】
前記翼状部(11)は、前記インサート部分(8)の前記脚部(10)のほぼ中央に配置されている、請求項1記載のホルダ。
【請求項3】
前記翼状部(11)は、前記インサート部分(8)の前記脚部(10)の長辺のほぼ中央に配置されている、請求項2記載のホルダ。
【請求項4】
前記翼状部(11)の材料、横断面及び長さは、前記減衰要素(1)を局所的に補強するように設計されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のホルダ。
【請求項5】
前記インサート部分(8)は、金属から成っている、請求項1から4までのいずれか1項記載のホルダ。
【請求項6】
前記減衰要素(1)は、エラストマから成っており、該エラストマに、前記インサート部分(8)が埋め込まれている、請求項1から5までのいずれか1項記載のホルダ。
【請求項7】
前記インサート部分(8)は、加硫処理により埋め込まれている、請求項6記載のホルダ。
【請求項8】
前記翼状部(11)は、前記減衰要素(1)に形状接続式に結合するための孔(13)をそれぞれ備える、請求項1から7までのいずれか1項記載のホルダ。
【請求項9】
前記インサート部分(8)は、前記減衰要素(1)にアンカー固定される接続ボルト(7)のための少なくとも1つの貫通部を有し、該接続ボルト(7)は、前記固定要素(4)の上面(14)から突出している、請求項1から8までのいずれか1項記載のホルダ。
【請求項10】
前記孔(13)は、長孔として形成されており、該長孔は、前記翼状部(11)の方向に方向付けられている、請求項8、又は請求項8を引用する請求項9項記載のホルダ。
【請求項11】
前記構造ユニット(2)は、ポンプである、請求項1から10までのいずれか1項記載のホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に構造ユニット、特にポンプを固定するホルダに関する。
【0002】
背景技術
ホルダは、環状の減衰要素を備え、減衰要素の内側領域は、構造ユニットを収容するために設けられている。外側で、減衰要素は、ブロック状の固定要素を備え、固定要素の、半径方向に減衰要素の中心から離れる方向に向いた上面は、自動車に対する接続部として設けられており、この場合、固定要素には、その上面の下に、ほぼプレート状のインサートが配置されており、インサートは、減衰要素を局所的に補強するために設計されている。
【0003】
この種のホルダは、既に市販されている。
【0004】
例えば自動車用の冷却回路ポンプのようなシステム構成要素の構想及び設計に際して、特に、例えばプリント基板やピン接続部のようなシステム構成要素の部品の、自動車の運転中に予想される動的負荷は、耐久性に関して開発者が挑む対象である。多くの場合、要求仕様における高い要求、狭い構造スペース及びコスト圧力は、臨界的な部品の規定を下回る寸法設定をもたらす。規定を下回る寸法設定は、個々の構成要素ひいては構造ユニットの故障を招く恐れがある。
【0005】
ここでは自動車の内燃機関への取付時の構造ユニットの振動耐性の要求が例として挙げられている。結果として生じる製品の動的応力は、多くの場合許容耐性よりはるか上にある。不足する又は不十分な材料減衰は、多くの場合、振動負荷に際して、励振の最大20倍の増大を有する臨界的な共振振動数を惹起し、従って製品の所望の耐用期間を大きく損なう。この場合、振動発生器、つまり内燃機関から、振動発生器(内燃機関)に固定された製品の個々の部品への振動エネルギの伝達の強度は、部品の結合形式及び部品の材料減衰に大きく依存する。エンジンにおけるポンプの不動の保持は、ポンプへの励振エネルギが減衰されない伝達を意味し、従ってポンプもしくはポンプの個々の構成要素の強すぎる負荷を意味する。
【0006】
製品の耐用期間は、製品の負荷に対して反比例的であり、この場合、減衰により負荷を著しく低減することができる。弾性ホルダのために、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)から成る高減衰のエラストマバッファが適しており、エラストマバッファは、振動エネルギを吸収し、振動エネルギを内部摩擦に変換する;熱が発生し、エラストマ材料は、この熱を外方へ放出する。
【0007】
公知のホルダでは、減衰要素は、典型的には、環状の保持−/分離要素として、構造ユニットと振動発生器との間に取り付けられる(例えば独国特許出願公開第102009029067号明細書参照)。この減衰要素は、減衰に関して効果的な構成手段であるが、この構成手段は、エラストマホルダの低い剛性に基づいて構造ユニットの不都合に大きな振れ(特に低周波範囲)を惹起し、隣り合う構成要素との衝突をもたらす恐れがある。更に、過度に弾性的なホルダは、例えばポンプにコネクタを取り付ける際に生じる取付力により、ポンプの伸長もしくは変位をもたらす。ポンプの伸長もしくは変位は、ポンプの後続の取付を困難にする。エラストマホルダから構造ユニットが揺動して緩む可能性を排除するために、通常、大抵は追加的な環状の保持金属板が必要である。
【0008】
エラストマホルダの設計に際して、一方ではポンプを分離するための最小減衰を設けなければならず、他方では最大の振れ(構造スペース及び取付条件に応じた)を超えてはならないことを考慮する必要がある。原則的には、このことは、例えばエラストマ混合物の適切なショア硬さにより、又は、好適には鋼又は熱硬化性樹脂から成るエラストマホルダを補強するためのインサートにより実現される。
【0009】
発明の開示
本発明の課題は、改善された、自動車に構造ユニットを固定するホルダを提供することである。その際、高められた剛性により内燃機関とポンプとの間の機械的な分離の他に、ポンプに設けられた別の構造ユニット、例えば電気的コネクタに対する取付性能を補助すべきである。
【0010】
本発明の課題は、請求項1に記載されたホルダにより解決される。本発明の別の態様は、従属請求項及び明細書から明らかである。
【0011】
本発明によるホルダでは、インサート部分が、それぞれ反対側の2つの縁部に、好適には狭幅で、好適には斜めに減衰要素に入り込む翼状部をそれぞれ備える。本発明は、エラストマホルダの剛性をインサート部分の拡大もしくは延長により位置に則して所期のように増加するが、狭幅の翼状部としての追加的なインサート部分面の適切な幾何学構成により、一方では存在する胴体スペースを最適に利用し、他方では減衰機能を損なうことになるエラストマ材料の大き過ぎる被覆を回避するという思想に基づいている。翼状部によるインサート部分の延長は、更に、エラストマ内のインサート部分のアンカー固定を改善するので、もはや大きな相対運動は不可能であり、エラストマ材料に亀裂が発生することはない。
【0012】
本発明の第1の改良態様によれば、翼状部は、インサート部分の縁部、特にその長辺のほぼ中央に配置されており、これにより翼状部は、エラストマ材料のできるだけ中心に埋め込まれており、取付過程に際して場合によっては更に幾分かエラストマ内で変形することができる。
【0013】
本発明の好適な改良態様によれば、翼状部の材料、横断面及び長さの選択により、要求される減衰との妥協を維持する減衰要素の局所的な最低剛性の、各使用例に必要な設計を行うことができる。
【0014】
インサート部分と減衰要素との間の付着に関して特に好適であるとみなされる、本発明の別の改良態様によれば、減衰要素は、加硫処理によりインサート部分を包囲しているエラストマから成っており、翼状部の端部は、エラストマ材料との形状接続式の結合のための孔をそれぞれ備える。
【0015】
以下に本発明を、実施の形態に基づいて詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】未だ自動車に組み付けられていない、ポンプを備える本発明に係るホルダの斜視図である。
【
図2】ホルダに埋め込まれて看取できない、本発明による第1の態様のインサート部分を追加的に示した、ポンプを備えていないホルダの同様の斜視図である。
【
図3】本発明による第2の態様のインサート部分を有するホルダの同様の斜視図である。
【
図4】ホルダに埋め込まれた一部が看取されるインサート部分を有するホルダの一部を破断した状態で示す斜視図である。
【0017】
図1には、環状の減衰要素1を有するホルダが概略斜視図で示されており、減衰要素1の内側空間には冷却循環ポンプ2が嵌入されている。ポンプ2には、電気接続部用のコネクタ3が設けられている。減衰要素1の周りの一領域は、ブロック状に補強された固定要素4として構成されており、顧客側の接続部5(例えばエンジン取付部)に向いた上面14(
図1では隠れている)を備える。更に減衰要素1は、環状部15を有し、環状部15は、ポンプ2を包囲している。減衰要素1に一体的に結合された固定要素4を機械的に安定させるために、
図1及び別の図面において看取されるように、支持リブ6を設けてよい。減衰要素1もしくは固定要素4の材料に2つの接続ボルト7がアンカー固定されており、接続ボルト7は、エンジン取付部5とのねじ結合部を形成するために設けられている。
【0018】
固定要素4の領域において、コネクタ3の後続の取付け(接続)時にエラストマホルダの振れを低減するための所望の剛性を形成するために、例えばプレート状のインサート部分をエラストマ射出成形金型に挿入し、続いて加硫処理することにより、固定要素4に、看取されないプレート状のインサート部分が埋め込まれている。より判りやすくするために、未だポンプ2を有しない環状の減衰要素1を示している
図2の図面では、インサート部分8は、
図1では固定要素4に埋め込まれているが、固定要素4の上面14の上側に示されている。インサート部分8の図示の第1の態様は、固定要素4に確実にアンカー固定するために設けられた短い脚部10を有する好適にはU字形の横断面を有する。各脚部10からそれぞれ狭幅の翼状部11が斜めに突出しており、この場合、図示の第1の態様では、翼状部11の先端は、それぞれ斜めに延在しており、これによって、翼状部11により伸ばされたインサート部分8の被覆は、要求される最低剛性に限定される。図示の態様では、翼状部11は、第1の区分16において、各脚部10に対して平行に、中央領域9から離れる方向に突出している。翼状部11の第2の区分17は、側方にプレート9から離れる方向に折り曲げられている。取付状態で、第1の区分16は、固定要素4内に配置されており、第2の区分17は、環状部15内に配置されている。翼状部11の自由端部は、端部に向かって先細りに形成されている。
図2の態様では、翼状部の幅は、脚部10の幅の20%〜50%の範囲にある。翼状部の幅は、これよりも大小してもよい。インサート部分8は、そのプレート状の中央領域9において、更に、接続ボルト7のための2つの孔並びに2つのブシュ12を備える。
【0019】
選択された態様に応じて、折り曲げられた脚部10を省略してよく、翼状部11は中央領域9から直接に突出している。
【0020】
材料の他に、インサート部分8の翼状部11の横断面及び長さが、インサート部分の曲げ剛性もしくはねじり剛性に対する大きな影響を有する。ポンプ2の機能に対して必要なエラストマホルダの減衰が、翼状部長さの決定に関連している。一般的に、エラストマホルダがより剛性的であるほど、エラストマホルダの減衰作用がより小さくなると云える。補強は、エラストマホルダ内のポンプ2の取付が、インサート部分8の急激な変形なく可能になるように、設計される。ポンプ取付時のインサート部分8の持続的な変形は、ポンプとエラストマホルダとの間のプレス結合部の破損ひいてはエラストマホルダ内のポンプ2の遊びを伴う嵌め込みを招く。
【0021】
図3には、減衰要素1の上側に、翼状部11が矩形に成形されていて、その端部領域に円形の横断面を有する孔13をそれぞれ1つ備えるインサート部分8の別の態様が示されている。これらの孔13は、インサート部分8と減衰要素1との接続部におけるせん断応力を低減し、ひいては形状接続(形状接続とは、嵌め合い又は噛み合いなどの部材相互の形状的関係に基づく接続を意味する)式の結合部により、両構成要素の間の付着性を高める働きを有する。取付状態で、インサート部分は、減衰要素1に埋め込まれており、この場合、翼状部11の第1の区分16は、固定要素4に埋め込まれており、翼状部11の第2の区分17は、環状部15に埋め込まれている。この場合、翼状部11の幅は、脚部10の幅の80%である。翼状部の幅は、これより大小してもよい。
【0022】
図4には、半分だけ示された減衰要素1と共に、インサート部分8の別の態様が取付状態で、斜視図で示されている。インサート部分のこの態様は、
図3の態様にほぼ一致しているが、孔13は、第2の区分17の長手軸線に対して平行に方向付けられた長孔として形成されている。これにより減衰要素1とインサート部分8との間の改善された形状接続式の結合が達成される。図示の態様では、固定要素4内の第1の区分16の埋め込み及び環状部内の第2の区分17の埋め込みが明確に看取される。翼状部11の幅は、脚部10の幅の80%の範囲にある。翼状部11は、これより狭くても広くてもよい。