(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016941
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】回転ロールの角位置を決定するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/22 20060101AFI20161013BHJP
D21F 3/06 20060101ALI20161013BHJP
B30B 3/00 20060101ALI20161013BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
G01B21/22
D21F3/06
B30B3/00 B
F16C13/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-547578(P2014-547578)
(86)(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公表番号】特表2015-511306(P2015-511306A)
(43)【公表日】2015年4月16日
(86)【国際出願番号】US2013021745
(87)【国際公開番号】WO2013109629
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】61/587,361
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511136119
【氏名又は名称】ストウ・ウッドワード・ライセンスコ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】キャントレル,クリフォード・ブルース
【審査官】
岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−331860(JP,A)
【文献】
特表2007−529724(JP,A)
【文献】
特開平08−006704(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02392728(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールの角位置を決定する方法であって、
(a)回転ロールの長さに沿って単一の螺旋状に配置され、作動パラメータを検出するように構成された複数のセンサを備えた回転ロールの端に取り付けられた加速度計によって生じた、正弦波曲線をなしている信号を検出するステップと、
(b)前記ステップ(a)において生じた信号が、前記正弦波曲線の極値の近くに位置するプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記プリトリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(a)を繰り返すステップと、
(c)もし前記ステップ(b)において前記信号が前記プリトリガ閾値に達したと判断されたなら、前記加速度計によって生じた次の信号を検出するステップと、
(d)前記ステップ(c)において検出された信号が、前記正弦波曲線の中点の近くに位置するトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記トリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(c)を繰り返すステップと、
(e)もし前記信号が前記トリガ閾値に達したなら、前記トリガ閾値に達した前記信号に基づいて、前記ロールの角位置を定めるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ閾値よりも高くなっている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トリガ閾値は、前記正弦波曲線の前記極値から約70°から110°離れている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ信号から約90°から130°離れている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記トリガ閾値は、前記複数のセンサのロールの端に最も近い最後のセンサの検出値に対応している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工業用ロールアセンブリであって、
円筒ロールであって、該ロールに取り付けられ、該ロールの長さに沿って単一の螺旋状に配置された複数のセンサおよび該ロールの端に取り付けられた加速度計を有している、円筒ロールと、
前記加速度計に操作可能に関連付けられた制御装置と、
を備え、前記制御装置は、
(a)加速度計によって生じた、正弦波曲線をなしている信号を検出し、
(b)前記ステップ(a)において生じた信号が、前記正弦波曲線の極値の近くに位置するプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記プリトリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(a)を繰返し、
(c)もし前記ステップ(b)において前記信号が前記プリトリガ閾値に達したと判断されたなら、前記加速度計によって生じた次の信号を検出し、
(d)前記ステップ(c)において検出された前記信号が、前記正弦波曲線の中点の近くに位置するトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記トリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(c)を繰返し、
(e)もし前記信号が前記トリガ閾値に達したなら、前記トリガ閾値に達した前記信号に基づいて、前記ロールの角位置を定める
ように構成されている、工業ロールアセンブリ。
【請求項7】
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ閾値よりも高くなっている、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記トリガ閾値は、前記正弦波曲線の前記極値から約70°から110°離れている、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ信号から約90°から130°離れている、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記トリガ閾値は、前記複数のセンサのロールの端に最も近い最後のセンサの検出値に対応している、請求項6に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2012年1月17日に出願された米国仮特許出願第61/587,361号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、一般的には、工業用ロールに関し、さらに詳細には、検出システムを有する工業用ロールに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な製紙プロセスでは、(紙料(paper stock)として知られる)セルロース繊維の水スラリーまたは懸濁液が、2つ以上のロール間を走行する金網および/または合成材料からなるエンドレスベルトの上側走行部の上に送給されるようになっている。「フォーミング織物(forming fabric)」と呼ばれることも多いこのベルトは、その上側走行部の上面に製紙面をもたらす。製紙面は、紙料のセルロース繊維を水性媒体から分離して湿った紙ウエブを形成するフィルターとして作用する。水性媒体は、重量によってまたは織物の上側走行部の下面(すなわち、「マシン側」)の減圧によって、排出孔として知られるフォーミング織物のメッシュ開口を通って排出されることになる。
【0004】
フォーミング部を出た後、紙ウエブは、抄紙機のプレス部に移送され、該プレス部において、一般的に「プレスフェルト(press felt)」と呼ばれる他の織物によって被覆された1つまたは複数の(ローラプレスと呼ばれることが多い)プレスのニップに通される。プレスによる圧力によって、ウエブからさらに水分が除去される。この水分除去は、多くの場合、プレスフェルトの「詰綿」層の存在によって、促進されるようになっている。次いで、紙は、さらなる水分除去のために、乾燥部に移送される。乾燥の後、紙は、二次加工および包装のための準備が整えられることになる。
【0005】
円筒状のロールが、典型的には、製紙機の種々の部分、例えば、プレス部に利用されている。このようなロールは、高動的負荷、高温度、および高侵襲性または高腐食性化学薬品に晒されることがある厳しい環境に置かれて、運転されている。一例として、典型的な製紙工場では、ロールは、繊維状ウエブシートを処理ステーション間で搬送するのに用いられるのみならず、プレス部のロールおよびカレンダーロールの場合、ウエブシート自体を紙に処理するためにも用いられている。
【0006】
典型的には、製紙に用いられるロールは、製紙機内における配置を考慮して構成されている。何故なら、製紙機内の種々の位置に配置されるロールは、種々の機能を果たすことが必要とされるからである。製紙用ロールが多くの異なる性能を要求されるという理由から、および全体が金属からなるロールの取換が著しく高価になるという理由から、多くの製紙用ロールは、典型的には金属からなるコアの周面を囲むポリマーカバーを備えている。カバーに用いられる材料を変更することによって、カバー設計者は、製紙用途が要求する種々の性能特性をロールにもたらすことができる。また、金属ロールを覆うカバーの補修、再研磨、または取換は、全体が金属からなるロールの取換よりも著しく安価である。カバー用の例示的なポリマー材料として、天然ゴム;ネオプレン、スチレン−ブタジエン(SBR)、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(DuPont 社のHYPALON(登録商標)でも知られる「CSPE」)、EDPM(エチレン−プロピレンジエンモノマーから生成されたエチレン−プロピレンターポリマーに与えられた名称)のような合成ゴム;ポリウレタン;熱硬化性複合材料;および熱可塑性複合材料が挙げられる。
【0007】
多くの場合、ロールカバーは、少なくとも2つの異なる層、すなわち、コアを覆ってコアに接合する基層と、基層を覆って該基層に接合し、ロールの外面として作用する上紙料層と、を備えている(ロールによっては、基層と上紙料層との間に挟まれた中間的な「繋ぎ」層を備えているものもある)。これらの材料の層は、典型的には、運転のための一組の所定の物理的特性をカバーにもたらすように、選択されている。これらの物理的特性の例として、必要な強度および弾性係数、ならびに製紙環境に耐えるための高温、水、および過酷な化学薬品に対する耐性が挙げられる。加えて、カバーは、典型的には、行われるプロセスに適する所定の表面高度を有するように、設計されており、典型的には、紙シートが該紙シートに損傷をもたらすことなくカバーから「離脱」することが必要とされている。また、節約するために、カバーは、耐擦過性および耐摩耗性を有しているべきである。
【0008】
紙ウエブは、製紙機を通って搬送されるので、紙ウエブが受ける圧力プロフィルを知ることが極めて重要である。圧力変動は、ウエブから排出される水分量に影響を与え、最終的なシートの水分量、厚み、および他の特性に悪影響を及ぼすことがある。従って、ロールに加えられる圧力の大きさは、抄紙機によって製造される紙の品質に影響を与えることがある。
【0009】
工業用ロールのカバー内に圧力センサおよび/または温度センサを設けることが知られている。例えば、Moschel らに付与された特許文献1は、ロールのポリマーカバー内に埋設された複数の圧力センサを備える螺旋状に配置されたリード線を有するロールを記載している。これらのセンサは、ロールの長さに沿った種々の軸方向位置における圧力測定値を得るために、螺旋状に配置されている。典型的には、これらのセンサは、センサ信号をプロセッサに伝達する2つのリード線または光ファイバーに接続されている。プロセッサは、信号を処理し、圧力情報および位置情報をもたらすようになっている。
【0010】
多数のセンサが2つの共通リード線またはファイバーに取り付けられているので、互いに異なるセンサからの信号は、同一のリード線またはファイバーに沿って伝送されることになる。従って、プロセッサは、どのセンサが特定の信号をもたらしたかを識別するなんらかの手法を有するべきである。さもなければ、プロセッサは、信号を供給するセンサの軸方向位置を認識することができないことになる。一般的な1つの技術は、ロールの回転ごとにプロセッサに警告を発する「トリガ(trigger)」信号を用いることである。前述の特許文献1に記載されているこの技術は、ロール上の特定位置が特定箇所を通過するごとに信号を供給するトリガ信号生成器を用いている。しかし、この技術は、信号のノイズによって誤測を生じやすい。このような状況から、信号ノイズの不正確さに対処するトリガ信号を用いる技術を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,699,729号明細書
【発明の概要】
【0012】
第1の態様として、本発明の実施形態は、ロールの角位置を決定する方法であって、 (a)回転ロールの端に取り付けられた加速度計によって生じた信号を検出するステップと、(b)ステップ(a)において生じた信号がプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし信号がプリトリガ閾値に達していなかったなら、ステップ(a)を繰り返すステップと、(c)もしステップ(b)において信号がプリトリガ閾値に達したと判断されたなら、加速度計によって生じた次の信号を検出するステップと、(d)ステップ(c)において検出された信号がトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし信号がトリガ閾値に達していなかったなら、ステップ(c)を繰り返すステップと、(e)もし信号がトリガ閾値に達したなら、トリガ閾値に達した信号に基づいて、ロールの角位置を定めるステップと、を含む、方法に向けられている。この方法によって、トリガ信号がノイズの結果によるよりもむしろロールの適切な位置を正確に示すことが確実になる。
【0013】
第2の態様として、本発明の実施形態は、工業用ロールアセンブリであって、円筒ロールであって、該ロールに取り付けられた複数のセンサおよび該ロールの端に取り付けられた加速度計を有している、円筒ロールと、加速度計に操作可能に関連付けられた制御装置と、を備える工業用ロールに向けられている。制御装置は、(a)加速度計によって生じた信号を検出し、(b)ステップ(a)において生じた信号がプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし信号がプリトリガ閾値に達していなかったなら、ステップ(a)を繰返し、(c)もしステップ(b)において信号がプリトリガ閾値に達したと判断されたなら、加速度計によって生じた次の信号を検出し、(d)ステップ(c)において検出された信号がトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし信号がトリガ閾値に達していなかったなら、ステップ(c)を繰返し、(e)もし信号がトリガ閾値に達したなら、トリガ閾値に達した信号に基づいて、ロールの角位置を定めるように構成されている。
【0014】
第3の態様として、本発明の実施形態は、ロールの角位置を決定するためのコンピュータプログラムプロダクトであって、実施されるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを有するコンピュータ読取可能な記憶媒体を含んでおり、コンピュータ読取可能なプログラムコードは、(a)加速度計によって生じた信号を検出し、(b)ステップ(a)において生じた信号がプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし信号がプリトリガ閾値に達していなかったなら、ステップ(a)を繰返し、(c)もしステップ(b)において信号がプリトリガ閾値に達したと判断されたなら、加速度計によって生じた次の信号を検出し、(d)ステップ(c)において検出された信号がトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし信号がトリガ閾値に達していなかったなら、ステップ(c)を繰返し、(e)もし信号がトリガ閾値に達したなら、トリガ閾値に達した信号に基づいて、ロールの角位置を定めるように構成されている、コンピュータプログラムプロダクトに向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による工業用ロールの正面図である。
【
図2】加速度計およびロール回転中に生じるベクトルを示す
図1のロールの拡大端面図である。
【
図3】
図1のロールの電子部品のサブアセンブリの概略図である。
【
図4】ロール角度の関数として加速度計ベクトルをプロットする図表であって、このプロットによって生じた曲線が正弦波であることを示す、図表である。
【
図5】本発明の実施形態による
図1のロールの操作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、例示されている実施形態に制限されることを意図しておらず、むしろ、これらの実施形態は、本発明を当業者に詳細かつ完全に開示することが意図されている。図面では、同様の番号は、全体を通して、同様の要素を指すものとする。構成部品によっては、明瞭にするために、それらの厚みおよび寸法が誇張されていることがある。
【0017】
よく知られている機能または構造は、簡潔および/または明瞭にするために、詳細に説明しないことがある。
【0018】
他に別段の定めがない限り、本明細書に用いられる技術用語および科学用語は、いずれも、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有している。本発明の詳細な説明に用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図するものではない。本発明の詳細な説明および添付の請求項に用いられる単数形の「a 」、「an」、および「 the」は、文脈に別の意味が明示されていない限り、複数形も含むことが意図されている。本明細書に用いられる「および/または(and/or)という用語は、1つまたは複数の互いに関連して記載される事項のいずれかおよび全ての組合せを含んでいる。本明細書に用いられる「付着される(attached)」、「接続される(connected)」、「相互接続される(interconnected)」、「接触している(contacting)」、「連結される(coupled)」、「取り付けられる(mounted)」、「覆っている(overlying)」などの用語は、他に別段の定めがない限り、要素間の直接的なまたは間接的な付着または接触のいずれかを意味している。
【0019】
いくつかの実施形態は、(アナログ回路および/またはデジタル回路を含む)ハードウエアおよび/または(ファームウエア、常駐ソフトウエア、マイクロコード、などを含む)ソフトウエアによって実施されるとよい。従って、本明細書に用いられる「信号」という用語は、連続波形および/または離散値、例えば、メモリまたはレジスター内のデジタル値の形態を取ることもある。さらに、種々の実施形態は、命令実行システムによって、または該システムと関連して用いられる媒体内で実施されるコンピューが使用可能、またはコンピュータが読取可能なプログラムコードを有するコンピュータが使用可能、またはコンピュータが読取可能な記憶媒体のコンピュータプログラムプロダクトの形態を取ることもある。従って、本明細書に用いられる「回路」および「制御装置」という用語は、デジタル回路、例えば、論理ゲートアレイおよび/または命令実行装置(例えば、汎用マイクロプロセッサおよび/またはデジタル信号プロセッサ)によって実行されるコンピュータが読取可能なプログラムコード、および/またはアナログ回路の形態を取ることもある。図表のいくつかは、通信の主方向を示す通信経路の矢印を含んでいるが、通信が図示されている矢印と反対の方向に生じてもよいことを理解されたい。
【0020】
製紙に用いられるロールのような工業用ロールが、
図1に示されており、総称的に20で表されている。ロール20は、コア(図示せず)およびポリマーカバー24を備えている。ポリマーカバー24は、典型的には、基層および上紙料層を備えている。コアおよびカバー24の例示的な材料および構造は、米国特許出願公開第2007/0111871号および第2005/0261115号に記載されている。これらの開示内容は、ここに含まれるものとする。
【0021】
図1は、検出システム29も示している。検出システム29は、ロール20の長さに沿って単一螺旋状に配置された複数のセンサ30を備えている。センサ30は、リード線28a,28bに取り付けられており、リード線28a,28bは、マイクロプロセッサ/トランスミッタ31に接続されている。信号は、マイクロプロセッサ/トランスミッタ31から無線で(無線リンク26を介して)遠隔プロセッサ/ディスプレイ32に送信されるようになっている。検出システムの種々の例示的な構成は、例えば、米国特許第5,562,027号、第699,729号、第6,981,935号、第7,572,214号、および第8,236,141号、および米国特許出願公開第2005/0261115号および第2011/0301003号に記載されている。これらのいずれも、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0022】
圧力センサまたは温度センサ30のようなセンサは、ロール20のような回転ロールに取り付けられると、各回転における特定の位置、すなわち、特定の角位置においてデータ収集またはいくつかの他の活動をトリガによって開始することが必要になる場合がある。以下、回転の同一点においてデータ収集をトリガによって開始するのに用いることができる技術について説明する。
【0023】
システムは、装置40(
図1)を備えている。装置40は、ロール20の端に取り付けられており、従来構造の加速度計42を含んでいる。加速度計42は、ロールの軸と直交する方向における加速度を検出するために取り付けられている。
図2に示されているように、典型的な取り付け位置は、ロール20の周辺の近くである。加速度計42がロール20に対して接線方向に取り付けられているので、ロール20が回転すると、重力の加速度によって生じる加速度計のベクトルも回転する。時計方向に回転するように図示されている
図2のロール20を参照すると、加速度計42が「3時」の位置にあるとき、加速度計のベクトルは、下方を向き、1Gの大きさを有することになる。加速度計42が「6時」の位置(すなわち、その最下点)にあるとき、加速度計42は、重力ベクトルが加速度計のベクトルと直交しているので、ゼロの大きさを示すことになる。加速度計42は、「9時」の位置にあるとき、−1Gを示し、「12時」の位置にあるとき、ゼロを示すことになる(ここでも、重力ベクトが加速度計のベクトルと直交するからである)。加速度計42が接線方向に取り付けられているので、回転によって生じる遠心力は、実質的に一定であり、加速度に影響を与える要因にならない。
【0024】
図3は、加速度計の信号を監視するのに用いることができる機構を示す電子部品の図である。アナログ−デジタル変換器50を用いて、加速度計50から伝達された信号を電圧からデジタルデータストリームに変換することができる。このデータストリームは、次いで、マイクロプロセッサ31に送られることになる。ロール20は、その軸を中心として回転しているので、加速度計のデータは、回転重力ベクトルを伴い、一般的には、角位置の関数としてプロットされたときに正弦波の形状を示すことになる。例示的な理論的正弦波関数の図が、
図4に示されている。
【0025】
トリガ点を定めるための方法が、
図5に示されている。この図におけるいくつかの用語は、
図4に示されている。加速度計からのデータサンプルが、採取される(ブロック100).この読取値は、予め定められた「プリトリガ(pre-trigger)」閾値と比較される(判断102)。成立しないと判断された場合、他のサンプルが採取され(ブロック100)、同様の比較がなされる。ある時点で加速度計データサンプルの値がプリトリガ閾値を下回ったとき、その時点で、このサンプルの角位置が注記される(ブロック104−
図4も参照)。
図5のフローチャートに従って、データレベルが「プリトリガボックス(pre-trigger box)」を通過し、予め定められた「トリガ点(trigger point)レベルに向かって前進するにつれて、付加的な加速度計データサンプルが採取される(ブロック106)。これらのサンプルは、トリガ点レベルと比較され(判断108)、サンプリングは、信号のレベルがトリガレベルを超えるまで継続される。この時点で、トリガが生じると(ブロック110、
図4も参照)、ロールの角位置が判明したことになるので、センサデータのサンプリングを開始することができる。
【0026】
図5のフローチャートは、本発明の種々の実施形態によるハードウエアおよび/またはソフトウエアの実施形態の構成、機能性、および操作を示している。フローチャートの各ブロックおよびフローチャートのブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令および/またはハードウエア操作によって実行されるとよいことを理解されたい。この点に関して、各ブロックは、特定の論理機能を実行するための1つまたは複数の実行可能な命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの部分を表している。
【0027】
他の実施例では、ブロックに注記されている機能は、
図5に示されている順序に従わずに行われてもよいことに留意されたい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行されてもよいし、または含まれている機能によっては、ブロックが逆の順序で実行されてもよい。
【0028】
コンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラム化可能なデータ処理装置のプロセッサに供給されてもよい。この場合、該コンピュータまたは他のプログラム化可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令がフローチャートにおいて特定された機能を実施するための手段をもたらすようなコンピュータマシンが得られることになる。
【0029】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータが使用可能なまたはコンピュータが読取可能なメモリに記憶され、コンピュータまたは他のプログラム化可能なデータ処理装置に特定の機能を果たすように指示するようになっていてもよい。この場合、コンピュータが使用可能なまたはコンピュータが読取可能なメモリに記憶された命令によって、フローチャートにおいて特定された機能を実行する命令を含む製品が得られることになる。
【0030】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム化可能な処理装置に、一連の操作ステップが該コンピュータまたは他のプログラム化可能な装置によって実行されるために、ローディングされてもよい。この場合、コンピュータまたは他のプログラム化可能な装置において実行される命令がフローチャートにおいて特定された機能を実施するためのステップをもたらすようなコンピュータ実行プロセスが得られることになる。
【0031】
トリガを生成するために加速度計データを用いることによって、ロールの位置をほぼ正確に見出すことができる。ロールは、サイクルにおける同一点において繰返しトリガを実行し、これによって、ロールの周りに配置されたセンサを識別することができる。低プリトリガレベルおよび高トリガレベルの両方を用いることによって、加速度計が
図4に示されている例において回転の底にあることを確実なものとすることができる。この方法によって、プリトリガレベルの信号がトリガレベルの信号を探す前に受信されることが確実になるので、信号ノイズによる偽陽性(false positive)を回避することができる。トリガ信号の正確な位置は、多数の組のセンサを有するロールのように回転ごとに多数の状況を読み取るセンサ構成において、特に重要である。
【0032】
とりわけ、前述した技術は、いくつかの実施形態では、プリトリガ閾値が、加速度計関数の正弦曲線の極値(例えば、最大または最小)の近くに配置され、および/またはトリガ閾値が正弦波曲線の中点の近くに配置されるように、行われるとよい。中点近くのデータ点は、極値に近いデータ点よりも大きい傾斜を示す傾向にあるので、トリガ閾値を中点の近くに配置させることによって、不正確な「ノイズ」信号がトリガを始動させる機会を低減させることができる。いくつかの実施形態では、トリガ閾値は、極値から約70°から110°離れている。他の実施形態では、トリガ閾値は、プリトリガ閾値から約90°から130°離れている。
【0033】
以上の説明は、本発明の単なる例示にすぎず、本発明を制限すると解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態を説明してきたが、当業者であれば、本発明の新規の示唆および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するだろう。従って、このような修正は、いずれも請求項に規定されている本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明は、以下の請求項によって定義され、請求項の等価物は、請求項に含まれるべきである。
[実施形態1]
ロールの角位置を決定する方法であって、
(a)回転ロールの長さに沿って単一の螺旋状に配置され、作動パラメータを検出するように構成された複数のセンサを備えた回転ロールの端に取り付けられた加速度計によって生じた、正弦波曲線をなしている信号を検出するステップと、
(b)前記ステップ(a)において生じた信号が、前記正弦波曲線の極値の近くに位置するプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記プリトリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(a)を繰り返すステップと、
(c)もし前記ステップ(b)において前記信号が前記プリトリガ閾値に達したと判断されたなら、前記加速度計によって生じた次の信号を検出するステップと、
(d)前記ステップ(c)において検出された信号が、前記正弦波曲線の中点の近くに位置するトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記トリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(c)を繰り返すステップと、
(e)もし前記信号が前記トリガ閾値に達したなら、前記トリガ閾値に達した前記信号に基づいて、前記ロールの角位置を定めるステップと、
を含む、方法。
[実施形態2]
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ閾値よりも高くなっている、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記加速度計によって生じた前記信号は、正弦波曲線をなしている、実施形態2に記載の方法。
[実施形態4]
前記プリトリガ閾値は、前記正弦波曲線の極値の近くに位置しており、前記トリガ閾値は、前記正弦波曲線の中点の近くに位置している、実施形態3に記載の方法。
[実施形態5]
前記トリガ閾値は、前記正弦波曲線の前記極値から約70°から110°離れている、実施形態1に記載の方法。
[実施形態6]
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ信号から約90°から130°離れている、実施形態1に記載の方法。
[実施形態7]
前記ロールは、作動パラメータを検出するように構成された複数のセンサをさらに備えている、実施形態1に記載の方法。
[実施形態8]
前記トリガ閾値は、前記複数のセンサのロールの端に最も近い最後のセンサの検出値に対応している、実施形態1に記載の方法。
[実施形態9]
前記複数のセンサは、前記ロールの長さに沿って単一の螺旋状に配置されている、実施形態7に記載の方法。
[実施形態10]
工業用ロールアセンブリであって、
円筒ロールであって、該ロールに取り付けられ、該ロールの長さに沿って単一の螺旋状に配置された複数のセンサおよび該ロールの端に取り付けられた加速度計を有している、円筒ロールと、
前記加速度計に操作可能に関連付けられた制御装置と、
を備え、前記制御装置は、
(a)加速度計によって生じた、正弦波曲線をなしている信号を検出し、
(b)前記ステップ(a)において生じた信号が、前記正弦波曲線の極値の近くに位置するプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記プリトリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(a)を繰返し、
(c)もし前記ステップ(b)において前記信号が前記プリトリガ閾値に達したと判断されたなら、前記加速度計によって生じた次の信号を検出し、
(d)前記ステップ(c)において検出された前記信号が、前記正弦波曲線の中点の近くに位置するトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記トリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(c)を繰返し、
(e)もし前記信号が前記トリガ閾値に達したなら、前記トリガ閾値に達した前記信号に基づいて、前記ロールの角位置を定める
ように構成されている、工業ロールアセンブリ。
[実施形態11]
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ閾値よりも高くなっている、実施形態6に記載のアセンブリ。
[実施形態12]
前記加速度計によって生じた前記信号は、正弦波曲線をなしている、実施形態11に記載のアセンブリ。
[実施形態13]
前記プリトリガ閾値は、前記正弦波曲線の極値の近くに位置しており、前記トリガ閾値は、前記正弦波曲線の中点の近くに位置している、実施形態12に記載のアセンブリ。
[実施形態14]
前記トリガ閾値は、前記正弦波曲線の前記極値から約70°から110°離れている、実施形態6に記載のアセンブリ。
[実施形態15]
前記トリガ閾値は、前記プリトリガ信号から約90°から130°離れている、実施形態6に記載のアセンブリ。
[実施形態16]
前記トリガ閾値は、前記複数のセンサのロールの端に最も近い最後のセンサの検出値に対応している、実施形態6に記載のアセンブリ。
[実施形態17]
前記複数のセンサは、前記ロールの長さに沿って単一螺旋状に配置されている、実施形態16に記載のアセンブリ。
[実施形態18]
ロールの角位置を決定するためのコンピュータプログラムプロダクトであって、
実施されるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを有するコンピュータ読取可能な記憶媒体を含んでおり、前記コンピュータ読取可能なプログラムコードは、
(a)加速度計によって生じた信号を検出し、
(b)前記ステップ(a)において生じた信号がプリトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記プリトリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(a)を繰返し、
(c)もし前記ステップ(b)において前記信号が前記プリトリガ閾値に達したと判断されたなら、前記加速度計によって生じた次の信号を検出し、
(d)前記ステップ(c)において検出された前記信号がトリガ閾値に達したかどうかを判断し、もし前記信号が前記トリガ閾値に達していなかったなら、前記ステップ(c)を繰返し、
(e)もし前記信号が前記トリガ閾値に達したなら、前記トリガ閾値に達した前記信号に基づいて、前記ロールの角位置を定める
ように構成されている、コンピュータプログラムプロダクト。