(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016944
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ヘルメットの快適性ライナーのために調整装置を備えたヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/12 20060101AFI20161013BHJP
A42B 3/14 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
A42B3/12
A42B3/14
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-550777(P2014-550777)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2015-503683(P2015-503683A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】IB2012057784
(87)【国際公開番号】WO2013102834
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年8月21日
(31)【優先権主張番号】TV2012A000001
(32)【優先日】2012年1月4日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】502016471
【氏名又は名称】アルパインスターズ リサーチ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ マッツァローロ
(72)【発明者】
【氏名】デービッド ロジャース
(72)【発明者】
【氏名】デュコ ノールツァイ
【審査官】
一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−64821(JP,A)
【文献】
特公昭48−5685(JP,B1)
【文献】
特開2009−150043(JP,A)
【文献】
特開平10−140414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00 − 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収ライナー(30)と快適性ライナー(40)を備えたヘルメット(10)であって、
快適性ライナー(40)は、ヘルメット(10)の通常の使用中は、使用者の頭部の上部に配置され、少なくとも一つの調整装置(50)を備え、
該調整装置(50)は、該調整装置(50)の端部(64)に設けられたカップリング手段(80)によりヘルメット(10)の衝撃吸収ライナー(30)に固定されるのに適しており、
該カップリング手段(80)は、ヘルメット(10)の衝撃吸収ライナー(30)に設けられるアンカー手段(90)の内側に着脱自在に係合されるのに適し、
各アンカー手段(90)は、異なるアンカーポイント(94A 、94B、94C)を複数有し、
それにより、調整装置(50)のカップリング手段(80)によって係合するアンカーポイント(94A、94B、94C)を変更することにより、ヘルメット(10)の調整装置(50)の形態及び傾斜の調整が可能となる、ヘルメット(10)。
【請求項2】
前記調整装置(50)は、クッションパッド(70)とライナー懸架装置(60)を含む、請求項1に記載のヘルメット(10)。
【請求項3】
更に前記衝撃吸収ライナー(30)の上に配置される外部シェル(20)を含む、請求項1に記載のヘルメット(10)。
【請求項4】
ライナー懸架装置(60)が、外向きに複数の突起(64)の突出する中央本体(61)を含み、前記調整装置(50)の前記カップリング手段(80)が各突起(64)の上面に設けられている、請求項2に記載のヘルメット(10)。
【請求項5】
中央本体(61)が略矩形の形状を有し、各突起(64)が矩形の中央本体(61)のコーナーから、該本体(61)の長手軸(XL)に対して角度(θL)の方向に沿って突出する、請求項4に記載のヘルメット(10)。
【請求項6】
前記角度(θL)が好ましくは約30°から約50°の間の範囲内に含まれる、請求項5に記載のヘルメット(10)。
【請求項7】
部分的に発泡体層(72)によって覆われている上部成形クッション(71)を含むクッションパッド(70)であって、該クッションパッド(70)には中央開口(73)が設けられている、請求項2に記載のヘルメット(10)。
【請求項8】
前記調整装置(50)が、クッションパッド(70)上にライナー懸架装置(60)を直接射出することにより作成される、請求項2に記載のヘルメット(10)。
【請求項9】
前記カップリング手段(80)は、前記突起(64)の上部表面から直角に延びており、マッシュルーム形状を有する第一のピン(81)を含み、該第一のピン(81)はその自由端に丸みを帯びた頭部(83)を支える茎部(82)を持つ、請求項4に記載のヘルメット(10)。
【請求項10】
前記丸みを帯びた頭部(83)は、前記茎部(82)の長手方向軸(ZL)に対して非対称な形状を有する、請求項9に記載のヘルメット(10)。
【請求項11】
前記カップリング手段(80)が更に前記第一のピン(81)よりも高さの低い丸い頭部を有する第二のピン(86)を含む、請求項9に記載のヘルメット(10)。
【請求項12】
前記アンカー手段(90)が、略前頭骨及び後頭骨に対応する領域の、前記衝撃吸収ライナー(30)の前方及び後方に配置されており、該アンカー手段(90)が、前記ヘルメット(10)の中央垂直対称面(XH)に対して対称的に2個ずつ配置されている、請求項1に記載のヘルメット(10)。
【請求項13】
前記アンカー手段(90)が、前記衝撃吸収ライナー(30)内に設けられた適切なシートの内側にポリマー材料を射出することにより得られる、請求項1に記載のヘルメット(10)。
【請求項14】
各アンカー手段(90)が、底部輪郭(91)を有し、該底部輪郭(91)の上面に略直交する方向に支持手段(92)が延び、該支持手段(92)は該底部輪郭(91)が位置する平面に略平行の平面に沿うアンカー面(93)を支持する機能を有する、請求項1に記載のヘルメット(10)。
【請求項15】
各アンカー面(93)に異なるアンカーポイント(94A、94B、94C)が複数設けられ、該アンカーポイント(94A、94B、94C)は前記アンカー面(93)の長手軸(J)に沿って配置されている、請求項14に記載のヘルメット(10)。
【請求項16】
各アンカーポイント(94)は、2つの小さい穴(96)が前記アンカー面(93)の長手軸(J)と直交する方向で対称に延びる、中央穴(95)によって構成される、請求項15に記載のヘルメット(10)。
【請求項17】
中央穴(95)の直径が、前記カップリング手段(80)の前記第一のピン(81)の前記丸みを帯びた頭部(83)の外形よりも小さい、請求項9及び16に記載のヘルメット(10)。
【請求項18】
前記アンカーポイント(94A、94B、94C)は、前記衝撃吸収ライナー(30)上の異なる位置に配置され、互いに離間される、請求項1に記載のヘルメット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットの快適性ライナーのための調節装置を備えたヘルメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
当技術分野で知られているように、スポーツ活動中に使用されるヘルメットは、一般に、3つの主要な構成要素である、外部シェル、衝撃吸収ライナー及び快適性ライナー、に基づいて構造を利用する。例えば、ポリカーボネート又は繊維強化ポリマーのような、熱可塑性ポリマーで出来た剛性材料で作られた外側シェルが、地面や他の物体との衝突からヘルメットの着用者の頭部を保護する機能を有する。
【0003】
また、事故の場合に、外側シェルは、ヘルメットの第二の構成要素である衝撃吸収ライナーに、ヘルメットに加わる衝撃力を拡散及び転送することによって、少なくとも部分的に、分散するのに適している。衝撃吸収ライナーは外側シェルに隣接して配置され、着用者の頭部の形状に対応するように成形される。衝撃吸収ライナーの機能は、事故の際に生成される衝撃力を吸収して、それによって着用者の頭部を保護することである。一般的に、衝撃吸収ライナーは、発泡ポリスチレンのような比較的硬質の材料製である。
【0004】
第三の構成要素は、衝撃吸収ライナーの表面上に存在し、着用者の頭部に面する、快適性ライナーである。快適性ライナーは、通常、軟質発泡体及び織物材料の組み合わせで作られており、着用者の頭部が硬質の衝撃吸収ライナーと直接接触することを回避することで、ヘルメットの快適な着用の機能を有している。また、ヘルメットが、その保護機能を達成する最良の方法には、着用者の頭部上で安定かつ安全である必要があることが知られている。衝撃吸収ライナーが、着用者の頭部の形状及びサイズに非常に近い場合にのみそのようなことが実現できる。この場合には、快適性ライナーは、その横に配置された剛性の衝撃ライナーで支持されるので、ヘルメットの安定性に影響を与えることなく、ソフトで快適である。
【0005】
それにもかかわらず、世界の人々の頭部のサイズと形状が様々であることを考慮すると、ある人の頭にきちんと収まるヘルメットが、他人の頭の上に安定的かつ安全に収まることができることは非常に困難である。このような結果を達成するために、ほとんどのヘルメットメーカーは、高価で困難であっても、顧客がその頭の上に安全かつ同時に快適なヘルメットを見つける可能性を高めるために、異なるサイズ及び形状のヘルメットを選択する機会を、顧客に提供している。
【0006】
ヘルメットの一部として使用されるのに適した、新しい革新的な衝撃吸収ライナーが同一出願人によって国際特許出願され公開されている(WO2010122586として公開)。このような衝撃吸収ライナーは、簡単に衝撃吸収ライナーの内側の大きさや形状を変更することができる調整可能な手段を備えている。
【0007】
好ましい実施形態では、衝撃吸収ライナーの調節手段は、ヘルメットの着用者のこめかみ、耳及び後頭部骨に面した衝撃吸収ライナーの領域に、位置変位可能な複数のブロックを含む。着用者が彼/彼女の必要性に応じて内部の快適性ライナーの形状及びサイズを調整することは、着用者の頭の方へ又は離れる方へ置換可能なブロックを動かすことによって可能となる。このような衝撃吸収ライナーは、前述の上記の欠点を解決し、ヘルメットが安定し、異なる複数の頭部に対して安全である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/122586号(WO、A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それにもかかわらず、使用者の頭部がヘルメットの衝撃吸収ライナー内側に適切にフィットしていても、さらなる問題が依然として生じ得ることに留意すべきである。実際のところ、また、目、耳及び顔の位置が一定ではなく、頭部の大きさとは独立して変化する頭部を有する使用者が所定の割合で存在する。その結果、多くの使用者にとってヘルメットが顔に対して低すぎることである。この事は、使用者の眉毛に不要な圧力を引き起こす可能性があり、潜在的に、視野を狭めることになり、使用者の安全性に影響を与える。
【0010】
さらに、多くの使用者は、所定の割合で、頭部の上部形状(top profile)が異なる。この場合には、衝撃吸収ライナーと快適性ライナーの形状は、頭部の特定の形状に合わないので、ヘルメットが異常又は不快な角度で使用者の頭の上に乗っていることが生じる。また、この発生は、いくつかの問題につながる。実際のところ、ヘルメットの一部の領域は、頭部に不要な圧力をかけることになる。また、この場合において、使用者の視野を狭くする。
【0011】
いくつかのヘルメットは、衝撃吸収ライナーの上部の内部表面上に、ベルクロ(Velcro)(登録商標)で取り付けるのに適した1つ又は複数のパッドを備えている。それにもかかわらず、そのようなパッドを設けることは上記課題を解決するものではない。実際のところ、効果的に、使用者が頭の上のヘルメットの位置を調整するのを支援するため、パッドは異なる厚さを持っている必要があり、互いに交換することができなければない。
【0012】
上記の記載に鑑み、使用者の頭にヘルメットが適切に合うことを保証するため、すべてのヘルメットは、異なる厚さからなるパッドの少なくとも一つのセットを持つべきである。このような事は結局、コストの増加や、材料の無駄な消費をもたらす。実際、すべてのヘルメットが供給されるには複数の厚さのパッドが必要であるが、これまで1つのみの厚さのものが使用された。
【0013】
本発明の目的は、少なくとも部分的に上記の問題及び欠点を解決したヘルメットを提供することにある。特に、本発明の目的は、ヘルメットが使用者の頭部に着座する角度を調整するように、着用者の頭部の上部形状に簡単に適合させることができる快適性ライナーを有するヘルメットを提供することにある。また、本発明の他の目的は、使用者の目、耳及び顔に対して、ヘルメットの適切な位置決めを達成するように、ヘルメットの内部の高さの調整を可能にする快適性ライナーを有するヘルメットを提供することにある。これら及び他の目的は、請求項1に記載のヘルメットの快適性ライナー用の調節可能な装置を備えたヘルメットによって達成される。
【0014】
本発明によるヘルメットの以下の説明において、「底部」とは、着用者の頭部に比較的近い、ヘルメットの異なる構成部分の一部が、「上部」とは、比較的遠い異なる構成部分の部分として示される。
【0015】
図1、
図1A及び
図2、
図2Aをまず参照すると、本発明は、衝撃吸収ライナー30と快適性ライナー40を含む、ヘルメット10に関するものである。
図1A及び2Aに示されるように、ヘルメット10はまた、よく知られているように、衝撃吸収ライナー30の上に配置された外部シェル20を含むことができる。同様に、快適性ライナー40は、ヘルメット10の通常の使用中に、使用者の頭部の上部に配置される、少なくとも一つの調整装置50を含む。好ましくは、調整装置50は、ライナー懸架装置60とクッションパッド70(
図5参照)を含む。
図2及び
図2Aには、調整装置50の他の構成要素が取り除かれ、調整装置50の唯一のライナー懸架装置60のみが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、調整装置50は、調整装置50(
図5参照)の端部64に設けられたカップリング手段80によって、ヘルメット10の衝撃吸収ライナー30に固定されるのが適当である。詳細には、カップリング手段80は、ヘルメット10の衝撃吸収ライナー30に設けられたアンカー手段90の内側に着脱可能に係合されるのに適している。各アンカー手段90は、複数のアンカーポイント94A、94B、94Cを有する。
【0017】
従って、調整装置50のカップリング手段80が係合されるアンカーポイント94A、94B、94Cを変化させることにより、使用者が自分のニーズに応じて、ヘルメット10の調整装置50の形態及び傾きを調整することが許される。このようにして、ヘルメットの内部の高さとヘルメットが使用者の頭部に着座する角度を調整することができる。好ましくは、アンカー手段90のアンカーポイント94A、94B、94Cは、使用者が調整装置50の調整を広い範囲できるよう、衝撃吸収ライナー30上の異なる位置で互いに離間して配置されている(
図4参照)。上記予想通り、調整装置50は、ライナー懸架装置60とクッションパッド70によって形成することができる。
【0018】
ライナー懸架装置60は、好ましくはポリマー材料で作られ、好ましくは、周知の射出成形技術によって製造される。ライナー懸架装置60は、異なる形状及び寸法を有することができる。実際問題として、前記装置60が適切に機能するためには、ライナー懸架装置60が適切に支持されるように、衝撃吸収ライナー30の上に設けられた異なるアンカー手段90に容易に接続することを可能にする形状を有するライナー懸架装置60が事実上求められる。
【0019】
同時にまた、ライナー懸架装置60は、使用者の頭部の上に接触圧力ポイントを作成することなく、ヘルメットの重量を支持するのに適した寸法を有する表面領域を有していることが望ましい。好ましくは、ライナー懸架装置60は、外側に複数の突起64が突出する、中央本体61を備え、調整装置50のカップリング手段80が突起64のそれぞれの上面に設けられている。
【0020】
図2、
図2A、
図5及び
図6に示されるように、本発明の好ましい実施形態では、ライナー懸架装置60は、中央の矩形の開口部62を持った略矩形の本体61を有している。矩形の本体61の各コーナーに突起64が本体61の長軸X
Lに対して角度約θ
Lの角度で側に突出している。角度θ
Lは、好ましくは約30°から約50°の間の範囲に含まれる。
図5に示すように、ライナー懸架装置60の底面は、ライナー懸架装置60の本体61の外形を略再現する外部輪郭を有するクッションパッド70に結合されている。クッション材70は、部分的に発泡体層72によって覆われている上部成形クッション71を含むことができる。クッションパッド70は、一般にさらに完全にクッションパッド70の底面を覆う(添付の図面には示されていない)織物材料のメッシュを含む。上部成形クッション71及び発泡体層72は、好ましくは、それらの周縁エッジに沿って一緒に縫合されている。ライナー懸架装置60とクッションパッド70との間の結合は、接着剤によって、又は他の既知の技術によっても作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の利点及び特徴は、添付図面に示すヘルメットの好ましい、しかし排他的ではない、実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、本発明によるヘルメットの断面図を示す。
【
図2】
図2は
図1のヘルメットの簡略化した断面図を示している。
【
図3】
図3は、本発明に係るヘルメットの底面図を示す。
【
図4】
図4は、
図2のヘルメットの衝撃吸収ライナーの断面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明によるヘルメットの快適性ライナーの調整装置の底面図を示す。
【
図6】
図6は、
図5の調節可能な装置の第一の構成要素の上面図を示す。
【
図8】
図8は、
図7のAで参照される詳細の大きい斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明によるヘルメットの簡略化した断面図を示している。
【
図16】
図16は、本発明によるヘルメットの快適性ライナーの調整装置のいくつかの可能な調整の1つの模式図を示す。
【
図17】
図17は、本発明によるヘルメットの快適性ライナーの調整装置のいくつかの可能な調整の1つの模式図を示す。
【
図18】
図18は、本発明によるヘルメットの快適性ライナーの調整装置のいくつかの可能な調整の1つの模式図を示す。
【
図19】
図19は、本発明によるヘルメットの快適性ライナーの調整装置のいくつかの可能な調整の1つの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、ライナー懸架装置60と同様にまた、クッション材70には、中央開口部73が設けられている。そのような中央開口部73は、異なる形状を有することができ(
図5では開口部73は略菱形形状を有するように示されている)、調整装置の十分な通気を保証する機能を有している。実際のところ、開口部73は、ライナー懸架装置60の矩形の開口部62と対応するように設計されている。好ましくは、フォーム層72は、4つの別個のセクション72a、72b、72c及び72dに分割される。
【0023】
このようにして調整装置50は、より柔軟性があり、ヘルメットの着用者の頭上部に快適にフィットするのに適したより大きな表面積を有する。一般に、調節可能な装置50を得るために、ライナー懸架装置60とクッションパッド70との間の結合は、クッションパッド70の上に直接ライナー懸架装置60を射出することにより行われる。このようにして調整装置50の2つの構成要素の間の強固な接続が保証されている。調整装置50は、カップリング手段80によってヘルメット10の衝撃吸収ライナー30に固定されるのが適当である。このようなカップリング手段80は、本発明の好ましい実施形態では、ライナー懸架装置60の各突起64の上面に設けられる。
【0024】
図8から10に明瞭に示されるように、カップリング手段80は、好ましくは、突起64の上部表面から直角に延びており、マッシュルーム形状の第1ピン81を含んでいる。好ましくは、第一ピン81は、その自由端に丸みを帯びた頭部83を支える茎部82を持っている。丸みを帯びた頭部83は、茎部82の縦軸Z
Lに対して非対称形状となっている。実際のところ、
図10及び14に示されているように、頭部83の表面84は、クッションパッド70に向けて内部に面しており、外表面85に対してより湾曲した輪郭をした丸い頭部83の茎部82とマージされる。
【0025】
以下に詳細に説明するように、表面84は、アンカー手段90を安定してキャッチするのに適した、一種のフックを形成する。また、
図8から10に示すように、第二のピン86は、各突起64の頂面から直角に延びることができ、第二ピン86は外表面85と対向している。第二ピン86は第一のピン81よりも低く、丸みを帯びた頭部を有している。
【0026】
以下に詳細に説明するように、一旦、第一のピン81がアンカー手段90の内部に挿入された後は、第二のピン86が、第一のピン81の表面84がアンカー手段90に付着して留まるようにし、第一ピン81とアンカー手段90の間の意図しない分離を引き起こす可能性のある曲げ運動を避けるようにして、安全機能を達成する。
【0027】
アンカー手段90は、ヘルメット10の衝撃吸収ライナー30に既知の方法で固定されている。本発明の好ましい実施形態において、アンカー手段90は、衝撃吸収ライナー30に設けられる適切なシートの内側にポリマー材料を射出することによって得られる。このようにして、衝撃吸収ライナー30とアンカー手段90との間の接続は、非常に安全で強固である。ヘルメット10は、好ましくは、ヘルメット10の中央垂直対称面に対して対称に2対2で配置される、4つの異なるアンカー手段90を備えている(
図3の線X
Hを参照)。より正確には、アンカー手段90は、衝撃吸収ライナーの前後で、略前頭骨と後頭骨に、それぞれ略対応する領域に位置していることを意味する。
【0028】
図11、12、13を参照すると各アンカー手段90は、好ましくは矩形状の底部形状(bottom profile)91を有している。支持手段92は、底部形状91の上面から略直交する方向に延びている。このような支持手段92は、底部形状91が位置する平面に平行な略平面に沿ったアンカー面93を支持する機能を有する。また、好ましくは、アンカー面93は、矩形の形状を有する。アンカー面93には、異なるアンカーポイント94が複数設けられている。好ましくは、三つの異なるアンカーポイント94A、94B、94Cは、表面93の長手方向軸Jに沿って配置されている。これは
図4及び
図15から19に示すように、異なるアンカー点94A、94B、94Cは、異なる位置に配置し、互いに離間されている。実際のところ、各アンカー面93は、下部アンカーポイント94A、中央のアンカー点94Bと上部アンカーポイント94Cを設けてもよい。このようにして前に予想されたように、調整装置50のカップリング手段80に係合するアンカーポイント94A、94B、94Cを変更することにより、ヘルメット内部の高さを調整することも可能である(
図16及び17参照)。
【0029】
また、ヘルメット10は、使用者の頭部に着座する角度を変更することも可能である。実際のところ、例えば前部固定手段の底部アンカーポイント94Aと後部固定手段の上部アンカーポイント94Cを選択することにより、調整装置50の傾きを変化させることで、着用者がそのニーズに従ってヘルメット10をこのようにカスタマイズする助けとなる(
図18参照)。特に、各アンカーポイント94は、2つの小さい穴96が長手軸Jと直交する方向で対称に延びる中央穴95で構成される。中央穴95の直径は、第一のピン81の丸みを帯びた頭部83の外形よりも小さく、その結果、第一のピン81を中央穴95に連結するには、少しの押し動作が必要である。2つの小さな横穴96を設けることは、中央穴95が湾曲してピン81の挿入がなされるが、しかしながら同時にアンカーポイント94の剛性を保持する。実際のところ、第一のピン81は、中央穴95が位置する平面上の法線方向に沿って向けられる、引っ張り動作を行うことによってのみ解放することができる。また、アンカーポイント94の具体的な形状は、各アンカーポイント94の中央穴95が互いに近接配置されることを可能にしている。このようにして、着用者に調整装置の正確な調整をする可能性が提供される。
【0030】
ヘルメット10の快適性ライナー40の調整装置50の動作を以下、説明する。使用者がヘルメット10を着用したとき、彼はヘルメット10が彼の頭上で安定して、安全であるかどうかを確認する必要がある。ヘルメット10のサイズが使用者の頭部に非常に適切である場合でも、前述のように実際のところ、ヘルメット10の快適性ライナー40の上部は、使用者の頭部の頂部とは異なる形状を有する可能性がある、或いは、快適性ライナー40が、使用者の頭部の正面又は頂部に対して過度の圧力を加える可能性がある。
【0031】
最初のケースではヘルメットは通常ではないか又は不快な角度で使用者の頭の上に乗っている。第二のケースでは、快適性ライナー40によって加えられる圧力によって、使用者が快適な方法でヘルメット10を着用できない。また、使用者の頭部が適切にヘルメット10の内部に収容されていないことが生じる可能性があり、ヘルメットが提供する安全性が低減されている。
【0032】
先に述べた内容によれば、使用者が、ヘルメットが彼の頭の上で適切にフィットしていないと感じた場合、彼は調整装置50を操作することによって、本発明によるヘルメット10の快適性ライナー40を調整することができる。実際のところ、ヘルメット10の内部の高さを調整するために、引っ張り動作をすることで、使用者は、アンカー手段90と調整装置50の懸架ライナー装置60との間のカップリングを解放することができる。
【0033】
例えば、各カップリング手段80の第1ピン81が、それまでは、アンカー面93の上部中央穴94Cに挿入されたとした場合(
図16参照)、各カップリング手段80の第1ピン81を中央中心穴94B又は底部中央の穴94A(
図17参照)に挿入することにより、ヘルメット10の内部の高さを低減することができる。同様に、快適性ライナーが使用者の頭部の頂部上に過度の圧力を加える場合で、各カップリング手段80が、それまでは、底部の中央穴94A(
図17参照)に挿入されていた場合に、第1ピン81を上部中央穴94C(
図16参照)又は中間の中央穴94Bに挿入することによって、ヘルメットの内部の高さを増加させることができ、使用者頭部の頂部上のいかなる圧力点も解消する。
【0034】
有利な事には、調整装置50上で動作させることにより、ヘルメットが使用者の頭部に着座する角度を変更することも可能である。実際のところ、ヘルメットの前部と後部にあるカップリング手段80を、異なる位置の中央穴94に挿入することにより、調整装置50の傾きは、その元の構成から変更することができる。
【0035】
例えば、このようにして、アンカー手段90の中間の中央穴94Bに、調整装置50の前方及び後方のカップリング手段80を連結して、ヘルメットの内部の高さを調整した場合に、後に、調節装置50が頭部の上部の後方部分に比較して正面部分により圧力を及ぼしていることを使用者が感じるとすると、使用者はカップリング手段80を後部の下部中央穴94Cと前部の上部中央穴94A(
図19参照)に挿入することにより調整装置50の傾きを調整する機会を持つ。或いは、例えば、使用者が、前面部に比べて頭部の頂部の後部上に、調整装置が大きな圧力を働かせていると感じる場合、カップリング手段80を、前面の底部中央の穴94Aと後方の上部中央穴94Cに挿入することによって、使用者がいかなる圧力点も解消する機会を有する(
図18参照)。無論、上記の例以外にも、使用者の異なる具体的なニーズを満たすために調節装置50によるヘルメット10の他の構成が可能となる。
【0036】
カップリング手段80と対応するアンカーポイント90の具体的な形状は、両者の容易な係合を可能にする一方で、他方、衝撃吸収ライナー30に対する調整装置50の堅固な接続を可能にする。
図14に示すように実際のところ、第一のピン81を選択したアンカーポイント94内に挿入した後、懸架ライナー60は、模式的に
図14中のFによって表される方向に引っ張り作用を受ける。このような引っ張り作用は、第一のピン81の表面84で強制的にアンカーポイント94を捉え、同時に、第二のピン86は、選択したアンカーポイント94の内側に挿入することができる。このようにして、第一のピン81は、その適切な係合位置に留まることが保証され、それがカップリング手段80とアンカー手段90間の意図しない離脱が発生する危険性が排除される。
【0037】
実際のところ、アンカー手段90からカップリング手段80を取り外すために、使用者はまず、ライナー懸架装置60の各末端を曲げることが必要であり、そのような曲げによって、アンカーポイント94からの第二のピン86の解除が可能になる。次に、使用者は、アンカー面93と垂直方向、すなわち、軸Z
Lに沿って第一のピン81の丸みを帯びた頭部を引っ張る必要がある。各中央穴95の両側に設けられた二つの小さな穴96が、中央穴の弾性変形と、その結果として、カップリング手段80及びアンカー手段90の間の解放を可能としている。
【0038】
上記の説明から、本発明のヘルメットは、有利には、先行技術に述べた問題及び欠点を解決するのに適した特性を有することが明らかである。特に、調整装置50を用いて、使用者が自分自身の個人的な好みに応じて、ヘルメット内部の高さと角度をカスタマイズすることが可能である。また、雄(カップリング手段80)と雌受(アンカー手段90)との間の結合の提供は、衝撃吸収ライナーに快適性ライナーをしっかり接続するので、ヘルメットの快適さだけでなく安全性も改善している。本発明は、好ましい実施形態を参照して説明したが、機械的に同等の解決策は、特許請求の範囲内で予見可能である。