(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記囲み部は、前記酸素ガス導入手段の、前記空間に前記酸素ガスを限定的に導入する部分が設けられた領域を囲んで設けられ、前記導入する部分側から該導入する部分と対向する側に向かって延在する延在部を有し、
前記空間は、前記領域、前記延在部、および前記基板保持面により形成されることを特徴とする請求項1に記載の酸化処理装置。
前記シャワープレートと前記基板保持面とは対向して配され、前記シャワープレートと前記基板保持面との間の距離は、0.042m乃至0.12mの範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載の酸化処理装置。
前記囲み部の、該囲み部の延在方向と垂直に切断した断面は、前記基板保持面の外形と相似形状であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の酸化処理装置。
前記相対位置を変化させる手段は、前記基板ホルダを、前記領域に近づける方向、および前記領域から遠ざかる方向に移動させるように構成され、かつ前記空間を形成する際には、前記基板ホルダを前記近づける方向に移動させて前記基板保持面を前記囲み部の内部に収容するように構成されていることを特徴とする請求項2、4乃至7のいずれか1項に記載の酸化処理装置。
前記基板ホルダは、移動する方向とは垂直な方向に張り出した張り出し領域を備え、該張り出し領域と、前記囲み部との間の距離は3mm以下であることを特徴とする請求項9に記載の酸化処理装置。
前記張り出し領域は前記移動する方向に所定の厚みを有しており、前記酸化処理時において、前記基板ホルダの少なくとも前記所定の厚み分が前記囲み部の内部に収容されている状態で、前記酸素ガスが前記空間に導入されることを特徴とする請求項10に記載の酸化処理装置。
前記相対位置を変化させる手段により、前記囲み部の内部において前記基板保持面が前記近づける方向および前記遠ざかる方向に移動しても、前記間隙における前記空間からのガスの排気コンダクタンスが変化しないことを特徴とする請求項9又は10に記載の酸化処理装置。
基板を保持するための基板保持面を有する誘電体部と、前記基板保持面に形成された溝部とを備える基板ホルダが内部に設けられた処理容器内で、前記基板に対して酸化処理を行う酸化方法であって、
前記基板保持面上に前記基板を保持させる工程と、
前記基板と前記誘電体部との間の前記溝部に形成される第2の空間内に加熱ガスおよび冷却ガスの少なくとも一方を導入する工程と、
前記基板ホルダの前記処理容器に対する相対位置を変化させて、前記基板保持面と、前記処理容器内に設けられた囲み部とにより形成される空間を、前記処理容器内に形成する工程であって、前記囲み部により前記基板ホルダの側面が囲まれ、かつ該囲み部と前記基板ホルダとの間に間隙が形成されるように前記空間を形成する工程と、
前記空間内に酸素ガスを限定的に導入して、前記基板保持面上に保持された基板の酸化処理を行う工程とを有し、
前記空間内に導入された前記酸素ガスと、前記第2の空間内に導入された前記加熱ガスおよび冷却ガスの少なくとも一方とは、前記間隙を通して該空間および該第2の空間から排気されることを特徴とする酸化方法。
前記酸化処理を行う工程は、前記基板ホルダと対向するように設けられたシャワープレートにより前記酸素ガスを導入することを特徴とする請求項17に記載の酸化方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に示される複雑なトンネル磁気抵抗素子構造を形成するための酸化処理を短時間で行うことで、スループットの低下を抑制しつつ、且つRA分布を均一にすることが可能であることを見出した。具体的には、1つの酸化処理装置で処理する時間は約2分以下であることが好ましい。また、本発明の一実施形態に係る酸化処理装置は、真空度劣化による界面への不純物吸着を抑制するため、超高真空を保つことができる。本発明者らは、これにより、特に素子特性に寄与する膜を酸化処理し、不純物の吸着を抑制することが可能であり、金属積層膜構造における結晶欠陥の発生や特性劣化を低減してトンネル磁気抵抗素子を製造することができることを見出した。また、本発明の一実施形態に係る真空処理装置は、処理容器を小さくしなくても酸化処理空間(基板に対する酸化処理が行われる空間)を区画する壁の表面積を小さくすることができる。よって、酸化処理空間を区画する壁に吸着する酸素の量を低減することができ、さらに、酸化処理空間自体を小さくするので、酸化プロセスまでの立ち上げ時間、および酸化プロセスを終了させるのに要する時間を短くすることができ、スループット低下を抑制することができる。
【0021】
本発明の一実施形態では、基板に対して酸化処理を行う酸化処理装置において、該酸化処理装置が備える処理容器の内部に、該処理容器の内壁により区画される空間よりも小さいある空間を形成し、該ある空間を酸化処理空間(基板に対する酸化処理が行われる空間)とする。本発明の一実施形態では、処理容器内に設けられた囲み部(上記酸化処理空間を区画するための区画部)と、処理容器内に設けられた基板ホルダ(具体的には、例えば基板保持面)とにより上記酸化処理空間を形成し、該形成された酸化処理空間内に酸化処理のための酸素ガスが限定的に導入される。さらに、囲み部を、上記酸化処理空間の形成時に、基板保持面を囲み、基板ホルダとの間に間隙が形成されるように構成し、上記酸化処理空間内に導入された酸素ガスを、上記間隙を通して酸化処理空間から排気する。
【0022】
本発明の一実施形態では、このような酸化方法を用いて電子デバイス(例えば、トンネル磁気抵抗素子など)を製造することができる。
【0023】
図1は、非特許文献1に記載の面内磁化型素子(以下、MTJ素子)の積層構造の模式図である。MTJ素子100では、まず、処理基板の上に、下部電極層108として、例えばタンタル(Ta)と銅(Cu)を含む化合物を積層する。例えばTa(5nm)/CuN(20nm)/Ta(5nm)のような構造とする。上部のTaは下地膜の役目を兼ね備えており、Ta以外でもハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)などの金属としても良い。さらに、その上に例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ルテニウム(Ru)のうち少なくとも1つの元素を含む層を成膜しても良い。
【0024】
その上に例えばIrMn、PtMn、FeMn、NiMn、RuRhMnまたはCrPtMn等からなる反強磁性層107を3〜20nm程度成膜する。その上に例えばCoFe等の磁性膜からなる厚さ1〜5nm程度のリファレンス層106と、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)のうち少なくとも1つから選ばれる、またはこれらの金属のうち2つ以上の合金からなる厚さ0.85nm程度の非磁性中間層105と、例えばCoFeまたはCoFeB等の磁性膜からなる厚さ1〜5nm程度のリファレンス層104を成膜する。反強磁性層107、固定磁性層106、非磁性中間層105、固定磁性層104はシンセティック型のリファレンス層を形成する。このリファレンス層は反強磁性層とリファレンス層106の2層構造から成る構成でも良い。リファレンス層は磁化方向が固定された層である。
【0025】
その上にバリア層103を形成する。バリア層103は高いMR比を得るためにMgOが好適である。その他、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)の少なくとも1つまたは2つ以上を含有する酸化物でも良い。尚、酸化物はRFスパッタなどを用いてダイレクトに形成する方法、金属を成膜してから酸化する方法のどちらでも良い。酸化はチャンバを封止酸化、排気を行いながらのフロー酸化、活性酸素を利用したラジカル酸化またはプラズマ酸化などで行われる。その上に、例えばCoFeBもしくはCo、Fe、Ni等の少なくとも1つまたは2つ以上の合金からなる材料を、1層または2層以上形成する構造であるフリー層102を1〜10nm程度成膜する。フリー層は磁化が固定されていない層であり、リファレンス層の磁化との相対角度によって抵抗を変化させる。その上に上部電極層101として、例えばTa(8nm)/Ru(5nm)/Cu(30nm)/Ru(7nm)のような積層構造を成膜する。この層は素子を保護する機能を有しており、Taの部分は、例えばルテニウム(Ru)、Ti(チタン)またはPt(プラチナ)などの材料に置き換えても良い。このようなTMR素子はクラスタ型基板処理装置によって、真空一貫で作製される。
【0026】
なお、
図1では、反強磁性層107は15nmのPtMnであり、リファレンス層106は2.5nmのCo
70Fe
30であり、非磁性中間層105は0.85nmのRuであり、リファレンス層104は3nmのCo
60Fe
20B
20であり、バリア層103は1.0nmのMgOであり、フリー層102は3nmのCo
60Fe
20B
20である。
【0027】
図2は、非特許文献2に記載の垂直磁化型素子(以下、p−MTJ素子)の積層構造の模式図である。p−MTJ素子200では、まず、基板上に、バッファー層211、210を成膜する。例えば、バッファー層211にはニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ルテニウム(Ru)少なくとも1つの元素を含む材料が用いられる。また、バッファー層210にはタンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)などの金属が良く、その他、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)の少なくとも1つまたは2つ以上を含有する酸化物としても良い。
【0028】
その上に、フリー層209として、例えばCoFeBを成膜する。さらにCoFeBとMgOの間にCo、Feの少なくとも1つまたは2つ以上の合金を配置してもよい。CoFeBもしくはCoFeB/CoFe磁性層の膜厚はトータルで0.8〜2.0nm程度である。その上に、バリア層208を形成する。バリア層は高いMR比を得るためにMgOが好適である。その他、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)の少なくとも1つまたは2つ以上を含有する酸化物でも良い。尚、酸化物はRFスパッタなどを用いてダイレクトに形成する方法、金属を成膜してから酸化する方法のどちらでも良い。酸化はチャンバを封止酸化、排気を行いながらのフロー酸化、活性酸素を利用したラジカル酸化またはプラズマ酸化などで行われる。
【0029】
その上に、CoFe等からなる厚さ0.2〜1nm程度のリファレンス層207と、CoFeB等からなる厚さ0.5〜2.0nm程度のリファレンス層206と、Taなどからなる配向分離層205と、垂直磁気異方性をリファレンス層206およびリファレンス層207に付与するリファレンス層204を成膜する。
図2では、例としてリファレンス2層はCo/Pdの積層構造を示したが、その他にもCo/Pd、Co/Pt、Co/Niのような積層構造、TbTeCo、GdFeCoのようなアモルファス材料、FePt、CoPt、MnGa、MnAlのような規則化合金のいずれの形態でも良い。また、リファレンス層207を省いて、リファレンス層206のCoFeBが直接バリア層208に接する形としても良い。さらに、配向分離層205はTa以外にも、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)の少なくとも一つもしくは2つ以上の合金やマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)の少なくとも1つまたは2つ以上を含有する酸化物としても良い。
【0030】
その上に、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)のうち少なくとも1つまたは2つ以上の合金からなる厚さ0.8nm程度の非磁性中間層203を形成する。その上に、Co/PdやCo/Pd、Co/Pt、Co/Niのような積層構造、TbTeCo、GdFeCoのようなアモルファス材料、FePt、CoPt、MnGa、MnAlのような規則化合金で構成されるリファレンス層202を形成する。リファレンス層207、リファレンス層206、配向分離層205、リファレンス層204の積層構造部と非磁性中間層203と、リファレンス層202とでシンセティック型のリファレンス層を形成する。尚、リファレンス層は非磁性中間層203とリファレンス層202を省き、リファレンス層207、リファレンス層206、配向分離層205、リファレンス層204で形成される構造としても良い。その上にキャップ層201として、Ta(5nm)を形成する。Taは、例えばルテニウム(Ru)、Ti(チタン)、Pt(プラチナ)などの材料に置き換えても良い。このようなTMR素子はクラスタ型基板処理装置によって、真空一貫で作製される。
【0031】
なお、
図2では、バッファー層211は5nmのRuCoFeであり、バッファー層210は2nmのTaであり、フリー層209は0.8nmのCoFeBであり、バリア層208は0.9nmのMgOであり、リファレンス層207は0.5nmのFeであり、リファレンス層206は0.8nmのCoFeBであり、配向分離層205は0.3nmのTaであり、リファレンス層204は0.25nmのCoと0.8nmのPtとの積層体を4個設けた構造であり、非磁性中間層203は0.9nmのRuであり、リファレンス層202は0.25nmのCoと0.8nmのPtとの積層体を14個設けた構造であり、キャップ層201は20nmのRuである。
【0032】
図3は、非特許文献3に記載の面内磁化型素子(以下、MTJ素子)の積層構造の模式図である。MTJ素子300では、まず、処理基板の上に、バッファー層309として、例えばTa(5nm)を成膜する。上部のTaは下地膜の役目を兼ね備えており、Ta以外でもハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)などの金属としても良い。さらに、その上に例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ルテニウム(Ru)等の少なくとも1つの元素を含む層を成膜しても良い。その上に例えばIrMn、PtMn、FeMn、NiMn、RuRhMn、CrPtMn等からなる反強磁性層308を3〜20nm程度成膜する。その上に例えばCoFe等からなる厚さ1〜5nm程度のリファレンス層307と、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)のうち少なくとも1つまたは2つ以上の合金からなる厚さ0.8nm程度の非磁性中間層306と、例えばCoFe、CoFeB等からなる厚さ1〜5nm程度のリファレンス層305を成膜する。反強磁性層308、固定磁性層307、非磁性中間層306、固定磁性層305はシンセティック型のリファレンス層を形成する。このリファレンス層は反強磁性層とリファレンス2層の2層構造から成る構成でも良い。リファレンス層は磁化方向が固定された層である。
【0033】
その上にバリア層304を形成する。バリア層304は高いMR比を得るためにMgOが好適である。その他、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)の少なくとも1つまたは2つ以上を含有する酸化物でも良い。尚、酸化物はRFスパッタなどを用いてダイレクトに形成する方法、金属を成膜してから酸化する方法のどちらでも良い。酸化はチャンバを封止酸化、排気を行いながらのフロー酸化、活性酸素を利用したラジカル酸化、またはプラズマ酸化などで行われる。その上に、例えばCoFeBもしくはCo、Fe、Ni等の少なくとも1つまたは2つ以上の合金からなる材料を1層または2層以上形成した構造であるフリー層303を1〜10nm程度成膜する。フリー層303は磁化が固定されていない層であり、リファレンス層の磁化との相対角度によって電気抵抗を変化させる。
【0034】
その上に酸化物キャップ層302を形成する。この層はフリー層の磁化に垂直磁気異方性を付与し、よりスピントルクによる磁化反転をしやすくし、磁化反転する臨界電流密度Jc0を低減する効果を持つ。酸化物キャップ層はマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)の少なくとも1つまたは2つ以上を含有する酸化物などを適用することができる。酸化はチャンバを封止酸化、排気を行いながらのフロー酸化、活性酸素を利用したラジカル酸化またはプラズマ酸化などで行われる。その上にキャップ層301として、Ta(5nm)を形成する。Taは、例えばルテニウム(Ru)、Ti(チタン)またはPt(プラチナ)などの材料に置き換えても良い。このようなTMR素子はクラスタ型基板処理装置によって、真空一貫で作製される。
【0035】
なお、
図3では、反強磁性層308は15nmのPtMnであり、リファレンス層307は2.5nmのCo
70Fe
30であり、非磁性中間層306は0.85nmのRuであり、リファレンス層305は3nmのCo
60Fe
20B
20であり、バリア層304は1nmのMgOであり、フリー層303は2nmのFe
80B
20であり、酸化物キャップ層302は0〜2.4nmのMgOキャップであり、キャップ層301は5nmのTaである。
【0036】
(第1の実施形態)
図4は、本実施形態に係る酸化処理装置400の構成を示す模式図であって、基板搬送状態における図である。
図5は、本実施形態に係る酸化処理装置400の構成を示す模式図であって、酸化処理状態(酸化プロセス状態)における図である。本実施形態では、酸化処理装置400により、例として挙げた
図1〜
図3に示す各素子のバリア層を形成する。本実施形態では、バリア層はMgOであり、Mgが形成された基板を酸化処理装置400内において酸化処理してMgOを形成する。
【0037】
図4、5において、酸化処理装置400は、処理容器401と、処理容器内を排気するための排気部としての真空ポンプ402と、処理容器401内に設けられた基板403を保持するための基板ホルダ404と、処理容器401内に設けられており囲み部の一部を構成する筒部材405と、処理容器401内に酸素ガスを導入する酸素ガス導入手段としてのガス導入部406と、基板搬送口407とを備えている。該基板搬送口407には図示しないスリットバルブが設けられている。
【0038】
なお、酸化処理装置400は、処理容器401の外部に設けられた加熱装置(不図示)をさらに設けても良い。処理容器401の内部にヒータといった加熱装置を設置することにより、酸化処理装置400の内部部品に吸着した水分を除去することはできるが、さらに外部より加熱する構造を備えることにより、酸化処理装置400全体を加熱することができる。バリア層生成の際の酸化処理によってRA分布を良くするためには、酸化処理装置内部の不純物を抑制し、超高真空の装置に高清浄ガスを導入することが好ましい。これに対して、上記外部に設けられた加熱装置を用いることにより、酸化処理装置400内部の真空度を改善し、不純物の存在を低減することができるため、導入ガスの純度による酸化処理を行うことができる。
【0039】
基板ホルダ404は、基板403を保持するための基板保持面404aと、該基板保持面404aが形成された載置部404bとを有しており、該基板保持面404a上に基板403が載置される。また、基板ホルダ404の内部には加熱装置としてのヒータ408が設けられている。また、基板ホルダ404には、基板ホルダ404と筒部材405との相対位置を変化させる位置変化手段としての基板ホルダ駆動部409が接続されている。基板ホルダ駆動部409は、基板ホルダ404を、矢印方向P(基板ホルダ404を酸化処理空間410に近づける方向、および基板ホルダ404を酸化処理空間410から遠ざける方向)に移動させる。
【0040】
基板ホルダ404は、移動する方向とは垂直な方向に張り出した張り出し領域を備え、張り出し領域と、囲み部の一部を構成する筒部材405との間の距離を3mm以下とすることが好適である。張り出し領域は、移動する方向に所定の厚みを有する。酸化処理の実行時には、基板ホルダ404の少なくとも該所定の厚み分が筒部材405の内部(すなわち、筒部材405によって囲まれている空間)に収容された状態で、酸素ガスが酸化処理空間410内に導入されることが好適である。
【0041】
本実施形態では、基板搬送時においては、基板ホルダ駆動部409の制御により、基板ホルダ404を
図4に示す位置に移動させる。基板搬入時には、この状態で、基板搬送口407を介して基板403を処理容器401内に搬入し、基板保持面404a上に基板403を載置する。基板搬出時には、基板保持面404a上に保持された基板403を基板搬送口407を介して処理容器401から搬出する。一方、酸化処理時においては、基板ホルダ駆動部409の制御により、基板ホルダ404を
図5に示す位置に移動させる。この状態で、ガス導入部406により酸化処理空間410に限定的に酸素ガスを導入することにより(処理容器401内の一空間に限定的に酸素ガスを導入することにより)、酸化処理が行われる。
【0042】
尚、図示した本実施形態に係る酸化処理装置400では、囲み部の一部を構成する筒部材405は、処理容器401内の上部に設けられ、処理容器の側部に基板403の搬送口407が設けられている。そして、搬送口407の上端近傍の高さ位置に、筒部材405の延在部の先端が位置している。このような配置とすることで、基板403の移動距離を少なくして搬送の途中段階での不必要な酸化を抑制することができ、かつ酸化処理装置400の小型化を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ヒータ408を設けているので、酸化工程において、基板403を加熱しつつ酸化処理を行うことができる。よって、酸化処理対象が厚い膜であったり、酸化されにくい材料であっても、ヒータ408から付与された熱エネルギーを用いることにより酸化反応を加速させることができる。
【0044】
ガス導入部406は、基板ホルダ404と対向する処理容器401の壁401aから離間して設けられ、多数の孔を有するシャワープレート411と、上記壁401aに設けられ、処理容器401内に酸素ガスを導入するガス導入口を有する酸素導入経路412と、シャワープレート411と壁401aとの間の空間であって、酸素導入経路412から導入された酸素ガスを拡散するための拡散空間(ガス拡散空間)413とを有する。本実施形態では、拡散空間413に酸素ガスが導入されるように酸素導入経路412が設けられており、酸素導入経路412から導入され拡散空間413にて拡散された酸素ガスは、シャワープレート411を介して、基板面内に均等に供給される。なお、酸素導入経路412を複数設けても良い。
【0045】
筒部材405は、処理容器401の壁401aの、酸素導入経路412が接続された部分を少なくとも含む領域401bおよびシャワープレート411をぐるりと囲むように壁401aに取り付けられ、壁401a(ガスを導入する部分側)から該壁401aと対向する側(ここでは基板ホルダ404側)に向かって延在する延在部405aを有する部材である。本実施形態では、筒部材405は、延在方向に垂直に切断した断面が円状である筒状部材であるが、該断面が多角形など他の形状であっても良い。また、筒部材405は、例えばアルミニウム製である。アルミニウムは筒部材405を容易に加工することができるので好ましい。また、他には例えば、チタンやSUSであっても良い。また、筒部材405が壁401aに対して着脱可能に該筒部材405を構成しても良い。延在部405aにより囲まれた空間、すなわち、筒部材405の中空部にはシャワープレート411が設けられており、筒部材405のシャワープレート411よりも壁401a側の部分と、該壁401aにおける上記領域401bの少なくとも一部と、シャワープレート411とにより拡散空間413が形成されている。
【0046】
MgOの酸化分布を良くして酸化処理により形成されるMgOの面内のRA分布を良くするためには、酸化対象であるMgの表面での酸素圧力をさらに均一にする必要がある。例えばMgのように反応性が高い材料の場合、この圧力勾配により酸化分布が劣化することが解っている。従って、シャワープレート411が設けられた構造が好ましい。さらに筒部材405が設けられた構造が好ましい。すなわち、シャワープレート411と筒部材405を設けることにより、酸素導入経路412と排気部としての真空ポンプ402とが同軸上に存在しない場合(例えば、
図4、5に示すように、酸素導入経路412の酸素導入方向と真空ポンプ402の排気方向とが直角の関係にある場合)であっても、
図5の位置にある基板403の表面に対して均一に酸素ガスを供給することができ、酸化により生じるMgOの基板403面内における酸化分布の偏りを低減することができる。よって、RA分布を向上させることができる。
【0047】
上記シャワープレート411の孔から酸化処理空間410へと酸素ガスが導入されるので、シャワープレート411は、ガス導入部406の、酸化処理空間内に酸素ガスを限定的に導入するための部分が設けられた領域(「酸素ガス導入領域」とも呼ぶ)と言える。
なお、一例としてシャワープレート411を設けない場合は、酸素ガスは、酸素導入経路412から酸化処理空間410内に限定的に導入されるので、領域401bが酸素ガス導入領域となる。
本実施形態では、酸素ガス導入領域、筒部材405、および基板ホルダ404(基板保持面404a)により、酸化処理空間410が形成されると言える。
【0048】
また、筒部材405は、
図5に示すように、該筒部材405の開口部405b内に基板ホルダ404が挿入された場合、延在部405aと基板ホルダ404の少なくとも一部(載置部4b)との間に間隙415が形成されるように設けられている。すなわち、筒部材405は、酸化処理空間410の形成時において、基板保持面404aを囲み、かつ基板保持面404aが形成された載置部404bと延在部405aとの間に間隙415が設けられるように構成されている。よって、ガス導入部406から酸化処理空間410内に導入された酸素ガスは、間隙415を通して酸化処理空間410から該酸化処理空間410の外部空間414に排気される。酸化処理空間410から間隙415を介して外部空間414へと排気された酸素ガスは、真空ポンプ402により処理容器401から排気される。
【0049】
基板ホルダ駆動部409は、基板保持面404aが筒部材405の内部に収容されるように基板ホルダ404を矢印方向Pにおいて移動させ、基板保持面404a(載置部404b)が開口部405bに挿入された所定の位置で基板ホルダ404の移動を停止する。このようにして、
図5に示すように、間隙415のみにより外部空間414と連通する酸化処理空間410が形成される。このとき、酸化処理空間410は、シャワープレート411と、延在部405aと、基板ホルダ404(基板保持面404a)とにより形成される。
図5に示すように、シャワープレート411と基板保持面404aとは対向して配されており、シャワープレート411と基板保持面404aとの間は距離h離れている。
【0050】
よって、本実施形態においては、本発明の囲み部は、シャワープレート411、および筒部材405の延在部405aである。よって、筒部材405は、酸化処理時において、ガス導入部406により導入された酸素ガスが処理容器401内の酸化処理空間410内に限定的に導入されるように、該酸化処理空間410をシャワープレート411と基板ホルダ404(基板保持面404a)と共に区画するための囲み部材である。
なお、上述のように一例としてシャワープレート411を設けない場合は、酸化処理空間410は、領域401bと、延在部405aと、基板ホルダ404とにより形成されるので、この場合は、本発明の囲み部は、処理容器401の内壁の一部である領域401b、および筒部材405の延在部405aである。
【0051】
なお、本実施形態では、基板ホルダ駆動部409により基板ホルダ404と筒部材405との相対位置を変化させて酸化処理空間410を形成可能にすることが重要であり、そのために、基板ホルダ駆動部409を、基板ホルダ404を一軸方向である矢印方向Pにおいて移動可能に構成している。しかしながら、この構成に限定されず、少なくとも酸化処理時には基板保持面404aを筒部材405の内部に位置させて酸化処理空間410を形成でき、かつそれ以外(例えば、基板搬送時)には、基板保持面404aを筒部材405の外部に位置させることができれば、いずれの構成を採用しても良い。例えば、基板ホルダ404を固定し、筒部材405およびガス導入部406をユニット化し、該ユニットを、ユニット化された筒部材405およびガス導入部406を基板ホルダ404に近づけることによって酸化処理空間410を形成するように構成しても良い。あるいは、基板ホルダ404を、
図4、5の左右方向にもスライド移動可能に構成し、酸化処理空間410の形成時以外には、基板ホルダ404が開口部405bに対向しない位置に移動させるように構成しても良い。
【0052】
本実施形態に係る酸化処理装置400においては、酸化処理空間410の容積を0.0042m
3乃至0.012m
3の範囲内とすることが、シャワープレート411から基板403の表面に到達する酸素ガスの均一な圧力分布を考慮すると好適である。より好ましくは、酸化処理空間410の容積を0.0047m
3乃至0.0093m
3の範囲内とするのが望ましい。このときの、シャワープレート411と基板保持面404aと間の距離hを0.042m乃至0.12mの範囲内とするのが好適である。より好ましくは、距離hを0.047m乃至0.093mの範囲内とするのが望ましい。
【0053】
また、基板ホルダ駆動部409は、基板保持面404aが該基板保持面404aの面内方向に回転可能に構成されていても良い。すなわち、基板ホルダ404を、基板保持面404aの法線方向を中心に基板保持面404aが回転するように構成しても良い。酸素分布を良くし、RA分布を良くするためには、基板403表面における酸素圧力を均一にすることが好ましい。従って、シャワープレート411からのガス導入が不均一であった場合でも、基板保持面404aが回転することで基板403を回転させ、基板403の表面に供給される酸素ガスのガス濃度分布を均一にすることができる。よって、RA分布を向上することができる。
【0054】
本実施形態では、基板保持面404aの形状は円状であり、筒部材405の、延在部40aの延在方向と垂直に切断した断面は、基板保持面404a(載置部404b)の外形と相似形状である。すなわち、上記断面は円状である。また、酸化処理空間410の形成時において、シャワープレート411と基板保持面404aとは対向し、かつ間隙415もシャワープレート411と対向している。このとき、間隙415の大きさを基板保持面404aの周方向において同一にすることが好ましい。このように構成することで、基板保持面404aの周方向に形成される間隙415の全てにおいて排気コンダクタンスを同一の値にすることができる。すなわち、酸化処理空間410からの排気口として機能する間隙415の全周囲において均一に排気することができる。よって、酸化処理空間410の形成時において基板ホルダ404に載置された基板403の表面における酸素圧力を均一にすることができ、RA分布を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、基板ホルダ駆動部409は、基板ホルダ404を筒部材405の内部において、延在部405aの延在方向に沿って移動させるように構成されている。すなわち、基板ホルダ駆動部409は、筒部材405の内部において、基板ホルダ404を酸素ガス導入領域としてのシャワープレート411に近づける方向、およびシャワープレート411から遠ざかる方向に移動させることができる。
【0056】
酸素分布を良くし、RA分布を良くするためには、高清浄な酸素ガスを基板の処理表面に曝すことが好ましく、酸化処理装置内の水分等の不純物を抑制し、超高真空の酸化処理装置に高清浄な酸素ガスを導入し、酸化処理を行うことが望ましい。これに対して、本実施形態では、
図6に示すように、ヒータ408を駆動させた基板ホルダ404を酸化処理空間410内を延在部405aの延在方向に沿って移動させることができるので、筒部材405を加熱するための加熱装置を別途設けなくても、ヒータ408による加熱効果を上記延在部405aに及ぼすことができる。すなわち、ヒータ408により加熱された基板ホルダ404を、筒部材405の内部において矢印方向Qに沿って移動させることにより、ヒータ408により基板ホルダ404から発せられる熱601を上記矢印方向Qに沿って延在部405aに対して走査することができる。よって、筒部材405を加熱するための加熱装置を設けなくても、基板ホルダ404からの熱61を用いて筒部材405を効率的に温めることができ、筒部材405から水分等を脱離させることができる。また、上記走査により、筒部材405を均等に加熱することができる。従って、酸化処理空間410内を高純度の酸素雰囲気にすることができる。一般的に水分を除去するためには、120℃程度の加熱温度が必要であり、これに近い温度まで加熱できる構造が好ましい。
【0057】
さらに、筒部材405の内側から加熱することができるので、酸化処理空間410の真空度をより向上させることができる。また、入射パワー密度が同じであれば、筒部材405の外側から加熱するより内側から加熱する方が筒部材405の内側表面温度を上昇させやすいので、ヒータ408のパワーが低くても真空度を上げやすくすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、基板保持面404aを有し、基板ホルダ404の、間隙415を形成する領域である載置部404bは、間隙415が延在部405aの延在方向に沿って同一の大きさとなるように構成されている。すなわち、延在部405aの延在方向に沿って筒部材405の径は一定であり、かつ載置部404bの上記延在方向に沿った径も一定であり、筒部材405の内部において、基板ホルダ404の、延在部405aと最も近い部分である載置部404bを、シャワープレート411に近づける方向、および遠ざける方向に移動させても、間隙415における酸化処理空間410からのガスの排気コンダクタンスが変化しないように、基板ホルダ404および筒部材405は構成されている。よって、基板ホルダ404を筒部材405の内部において移動させても、酸化処理空間410から酸素ガスを同様に排気することができ、処理制御の複雑化を低減することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、筒部材405の内壁部に、例えば電解研磨処理や化学研磨処理を施して滑らかにすることが好ましい。すなわち、本実施形態では、筒部材405の内壁は平坦化されている。このように筒部材405の内壁において、面粗さを低減することにより、筒部材405の内壁に対する酸素ガスの吸着、および該内壁に吸着した酸素ガスの放出を低減することができる。また、筒部材405の内壁表面に、酸素ガスが吸着しないような膜(例えば、酸化被膜など不動態膜)をコーティングすることも好ましい。このように、筒部材405の内壁表面に不動態膜を形成することにより、該内壁表面への酸素の吸着を低減することができる。例えば、筒部材405をアルミニウムとし、筒部材405の内側に対して上記化学研磨を行うと、筒部材405の内壁面を平坦化すると共に、酸化被膜を形成することができる。平坦化による効果と共に、該酸化被膜により、筒部材405への酸素の吸着を低減することができる。
【0060】
図7は、本実施形態に係る酸化処理を示すフローチャートである。
ステップS71では、基板搬送口407を介して、Mgが形成された基板403を処理容器401内に搬送し、
図4に示す位置にある基板ホルダ404の基板保持面上に保持させる。ステップS72では、基板ホルダ駆動部409を駆動して、基板ホルダ404を、
図5に示すように酸化処理空間410が形成される位置まで基板ホルダ404を移動させる。これにより、処理容器401の内部に、該処理容器401よりも小さい空間である酸化処理空間410が形成される。次にステップS73において、該小さい空間に酸素ガスを限定的に導入することにより、基板403上に形成されたMgの酸化処理を行う。このとき、
図6に示すように、基板ホルダ404を筒部材405内にて移動させながら酸化処理を行っても良い。ステップS74では、ステップS72で形成された酸化処理空間410への酸素ガスの供給を停止させ、酸化処理空間410内を所定の圧力まで排気する。本実施形態において、処理容器401に接続された真空ポンプ402は常に駆動しており、上述したステップS71〜S74において常に処理容器401内は排気されている。ただし、これに限らず、真空ポンプ402を各ステップに合わせて限定的に駆動させても良い。
【0061】
(第1の実施例)
本実施形態に係る酸化処理装置400を用いて
図3及び非特許文献3に記載のトンネル磁気抵抗素子300のバリア層304を形成する実施例について、以下で説明する。基板温度は25℃〜500℃、酸素ガス流量は1〜2000sccm、基板回転速度は0〜100rpm、基板位置は0〜100mm(基板が筒部材405の開口部405bに位置した状態を0mmとする)の範囲内で適宜決定することができる。例えば、基板温度を25℃、酸素流量を700sccm、基板回転速度を100rpm、基板位置を100mmとして酸化処理を行う。
【0062】
(第2の実施例)
本実施例では、筒部材405を用いない従来の酸化処理装置で酸化処理を行った場合と、本実施形態に係る酸化処理装置400にて酸化処理を行った場合とのタクトタイムについて検討を行った。具体的には、排気速度の違いについてシミュレーションを行った。各条件、および該条件における排気速度を表1に示す。
【0064】
表1から分かるように、1Paの圧力から排気完了までの排気時間を比較すると、従来に比べて本実施例の方が約12倍も速い。すなわち、従来に比べて、本実施例の方がタクトタイムを小さくすることができる。
【0065】
従来では、酸素ガスを処理容器内全体に流して酸化処理を行っている。また、ウェハサイズの増大とともに処理装置の容積も増大し、酸化処理後において酸素ガスが排気されるまでの時間が長くなってしまっていた。これに対して、本実施形態によれば、処理容器401の内部に、該処理容器401の内壁により区画される空間よりも小さい空間(酸化処理空間410)を形成し、該酸化処理空間410を区画する一部を基板保持面404aとし、該酸化処理空間410に基板保持面404aに保持された基板403を曝している。そして、該酸化処理空間410内に限定的に酸素ガスを供給して基板403の酸化処理を行う。このとき、筒部材405と基板ホルダ404との間に形成された間隙415により酸化処理空間410の排気を行っている。このように、本実施形態では、酸化処理の際に、処理容器401の限られた空間(酸化処理空間410)にのみ酸素ガスを供給し、酸化処理を行っているので、酸化処理のために酸素ガスが充満される空間(従来では、処理容器全体、これに対して本実施形態では、酸化処理空間410)が所定の圧力になるまでの時間を低減することができ、また排気にかかる時間も低減することができる。また、ウェハサイズが増大して処理容器の容積が増大しても、本実施形態に係る酸化処理空間410は、該増大された処理容器よりも小さい空間である。よって、従来よりも酸化処理後における酸素ガスの排気にかかる時間を低減することができる。よって、スループットの低下を低減することができる。
【0066】
また、処理容器401の内部に該処理容器401の内壁により区画される空間よりも小さい空間(酸化処理空間410)を形成し、その中で酸化処理を行っているので、従来に比べて酸化処理が行われる空間を区画する部材の表面積を大幅に小さくすることができる。従って、酸化処理が行われる酸化処理空間410を形成する筒部材405に付着する酸素の付着量を低減することができ、排気後において、筒部材405の内壁から放出されてしまう酸素の量を大幅に低減することができる。よって、ある酸化処理時において、酸化処理空間410への意図しない酸素導入(上記放出された酸素の導入)を低減することができ、MR比やRA分布の悪化を抑制することができる。さらに、酸化処理毎の酸素圧力の変動を無くす、あるいは小さくすることができ、作製された素子毎のMR比やRA分布といった素子特性を安定にすることができる。
【0067】
例えば、バリア層としてMgOを用いる場合、Mgを酸化する必要がある。酸化処理が行われる空間において酸化処理のための所定の圧力に達するまでに要する時間においては、Mg表面が酸素以外の他の不純物ガスに接触している。このため、可及的速やかに酸化処理を行わなければ、素子特性の劣化に繋がる恐れがある。これに対して、本実施形態では、Mg表面に不純物ガスが接触している時間を短くすることができ、Mgへの不純物の混入を低減することができる。さらには、Mg表面をできるだけ早く所定の圧力の純粋酸素ガスに接触させることができる。
【0068】
さらに、処理容器401の内部に、該処理容器401の内壁とは別個の部材である筒部材405を用いて酸化処理空間410を区画しているので、酸化処理空間410の形状を自由に設定することができる。よって、酸化処理空間410の、基板403(基板保持面404a)の表面と平行に切断した断面形状を、基板403(基板保持面404a)の外形と相似形状にすることができる。従来では、処理容器が円筒状である場合において、基板(基板保持面)の外形が四角形である場合、酸化処理が行われる空間の、基板(基板保持面)の表面と平行に切断した断面は円形となり、基板(基板保持面)の外形とは異なる。これに対して、本実施形態では、例えば、処理容器401が円筒状であり、基板403(基板保持面404a)の外形が四角形である場合、その断面が四角形となる筒部材405を処理容器401の内部に取り付けることにより、酸化処理空間410の断面形状を基板403(基板保持面404a)の外形と相似形状にすることができる。このように、酸化処理空間410の断面形状と基板403(基板保持面404a)の外形とを相似形状にすれば、基板403(基板保持面404a)の周方向において間隙415の幅を同一にすることができ、排気コンダクタンスを同一にすることができる。よって、基板403表面の酸化分布を低減することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
本実施形態では、基板ホルダ404に静電チャック(ESC)を設け、さらに、基板403の裏面(基板保持面側)から所定のガス(加熱ガスおよび/または冷却ガス)を供給する。
【0070】
図8は、本実施形態に係るESCを有する基板ホルダ404を示す図である。
図8において、基板ホルダ404は、基板保持面404aが形成された、誘電体部(基部)901と、誘電体部901の内部に設けられ、基板403を静電吸着するための電極902と、基板保持面404aに形成された溝部903と、基板ホルダ404の内部に設けられ、溝部903に基板ホルダ404の内部から所定のガスを導入する導入経路904と、溝部903から所定のガスを基板ホルダ404の内側に排出する排出経路905とを備えている。上記導入経路904により溝部903に導入される所定のガスは、加熱ガスおよび冷却ガスの少なくとも一方である。本実施形態では、また、酸化処理空間410の形成時においては、誘電体部901の縁部(側面)は延在部405aに近接して位置する。すなわち、誘電体部901の縁部(側面)と延在部405aとの間に間隙415が形成される。なお、本実施形態では、排出経路905を設けているが、該経路を設けなくても良い。この場合は、基板保持面404aと基板403との間に形成される隙間から溝部903内に供給された所定のガスを排出する。
【0071】
本実施形態では、基板保持面404aに溝部903が設けられているので、基板保持面404a上に基板403が載置された場合、基板403と溝部903とにより空間(第2の空間としての界面空間)が形成される。溝部903には導入経路904により加熱ガスおよび冷却ガスの少なくとも一方が導入されるので、上記界面空間内に加熱ガスおよび冷却ガスの少なくとも一方が供給される。
【0072】
基板を加熱、冷却する場合、基板ホルダに基板を載置するだけでは、熱伝導があまり良く無く、基板昇温及び降温時間は非常に長くなることが解っている。これに対して、本実施形態では、基板403を基板ホルダ404に対して静電吸着することができるため、基板昇温及び降温時間を短くすることができ、さらに加熱ガスおよび冷却ガスの少なくとも一方を導入可能であるため、基板ホルダ404からの熱を基板403に均等に伝達することができる。
【0073】
ただし、例えば、基板保持面404aに基板403を載置した場合、基板保持面404aと基板403との間に隙間が生じているため、溝部903に供給された所定のガスは、上記隙間から外に漏れ出す。本実施形態では、基板保持面404aの縁部においては間隙415が形成されているので、上記隙間から漏れた所定のガスは、間隙415における排気の気流に乗って該間隙415から外部空間414へと排気される。よって、上記溝部903(界面空間)から漏れたガスが酸化処理空間410内へと浸入することを防止、または低減することができる。酸素分布を良くし、RA分布を良くするためには、基板403の表面における酸素圧力を均一にすることが望ましい。従って、基板403の裏面から漏れたガス(加熱ガスや冷却ガス)が基板403の表面側に回り込んだ場合、基板403の端部の酸素圧力が低くなり、均一性が悪くなる恐れがある。しかしながら、本実施形態では、上述のように、漏れたガスが基板403の表面が位置する基板処理空間410内に侵入することを低減できるので、上記漏れたガスによる基板403表面への回り込みを低減することができる。
【0074】
なお、誘電体部901の縁部が延在部405aに近接して位置する際に、該縁部と延在部405aとは接触せず、かつ上記縁部と延在部405aとの間の距離、すなわち、間隙415の幅が3mm以下であることが好ましい。このように設定することで、排気ポンプ位置がどの様な位置にあっても基板円周方向に対して均等に排気することができる。
【0075】
(第3の実施形態)
上述の実施形態では、酸素導入経路412を、処理容器401の、基板ホルダ404と対向する壁(上壁)401aに設けているが、酸素導入経路412の設ける場所は特に限定は無い。例えば、
図9に示すように、酸素導入経路412を、処理容器401の、基板ホルダ404と対向していない壁(側壁)401cに設けても良い。
【0076】
他の例として、例えば、
図10に示すように、拡散空間413を、中央部413aと外周部413bとに区画し、中央部413aに酸素導入経路412を設け、外周部413bにも酸素導入経路412とは別個の酸素導入経路412aを設けても良い。中央部413aは、円筒状の壁413cにより区画されている。よって、外周部413bは、リング状の形状である。
【0077】
また、上述した実施形態では、基板ホルダ404が駆動することで、基板403に酸化処理を施すための基板処理空間410を形成したが、筒部材405を駆動させる機構を設け、筒部材405を駆動させて基板ホルダ404に近接させることで基板処理空間410を形成してもよい。