特許第6016954号(P6016954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016954排ガス脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに排ガス脱硝システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016954
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】排ガス脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに排ガス脱硝システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20161013BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20161013BHJP
   F02B 37/10 20060101ALI20161013BHJP
   F02B 37/02 20060101ALI20161013BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20161013BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20161013BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20161013BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   F01N3/08 BZAB
   F01N3/24 T
   F02B37/10 Z
   F02B37/02 E
   F02B37/12 302Z
   F02B37/18 E
   F02B37/24
   F02D23/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-344(P2015-344)
(22)【出願日】2015年1月5日
(62)【分割の表示】特願2010-6830(P2010-6830)の分割
【原出願日】2010年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-96732(P2015-96732A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
(72)【発明者】
【氏名】樋口 純
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−013807(JP,A)
【文献】 特表2002−531745(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0044526(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0040288(US,A1)
【文献】 特開昭63−302131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38、9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、
尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、
該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、
前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、
前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、
該排ガスバイパス経路を流れる排ガスの流量を調整するバイパス制御弁と、
該排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて、前記舶用ディーゼルエンジンの掃気圧力を制御する掃気圧力制御手段と、
を備え、
前記掃気圧力制御手段は、前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が減少した場合、前記掃気圧力を適正値に維持するように減少させ、前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が増大した場合、前記掃気圧力を適正値に維持するように増大させるように制御することを特徴とする排ガス脱硝システム。
【請求項2】
前記排気ターボ過給機は、容量可変とされており、
前記掃気圧力制御手段は、前記排気ターボ過給機の容量を制御することによって掃気圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の排ガス脱硝システム。
【請求項3】
前記排気ターボ過給機は、排気タービン軸の回転力によって発電する一方で、該排気タービン軸の回転を付勢する発電機モータを備えたハイブリッド排気ターボ過給機とされており、
前記掃気圧力制御手段は、前記発電機モータの発電量を制御することによって掃気圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の排ガス脱硝システム。
【請求項4】
前記舶用ディーゼルエンジンからの排ガスが前記排気ターボ過給機をバイパスして流れる過給機バイパス経路が設けられ、
前記掃気圧力制御手段は、前記過給機バイパス経路を流れる排ガス量を調整することによって掃気圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の排ガス脱硝システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載された排ガス脱硝システムを備え、
前記舶用ディーゼルエンジンは、推進用主機とされていること特徴とする船舶。
【請求項6】
舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、
尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、
該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、
前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、
前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、
該排ガスバイパス経路を流れる排ガスの流量を調整するバイパス制御弁と、
を備えた排ガス脱硝システムの制御方法であって、
前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が減少した場合、前記舶用ディーゼルエンジンの掃気圧力を適正値に維持するように減少させ、前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が増大した場合、前記掃気圧力を適正値に維持するように増大させるように制御することを特徴とする排ガス脱硝システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ターボ過給機を備えた舶用2サイクルディーゼルエンジンをはじめ、排ガス温度の低いディーゼルエンジンにも使用可能な排ガス脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに排ガス脱硝システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するために、自動車や陸上発電設備などにおいては選択接触還元法(SCR;Selective Catalytic Reduction)を用いた脱硝装置が多用されている。このような脱硝装置の還元剤として、アンモニアガス、アンモニア水または尿素水が用いられる。しかし、アンモニアは刺激臭があり、含有量10%以下のアンモニア水を除いて劇物として扱われるので、市中に流通する含有量25〜30%のアンモニア水を還元剤とする場合、漏洩検知センサや二重配管、換気装置といった特別な設備を要求されることがある。これに対して、尿素水は、アンモニアのように刺激臭がなく劇物として扱われることがないので、付加的な設備が不要となる点でアンモニアに比べて取扱が容易である。舶用ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物が一部の海域で厳格に規制される国際的な方向性が定められる状況において、乗組員の健康と安全を最優先する立場から、自動車用ディーゼルエンジンの脱硝装置の還元剤として商品化されている含有量32.5%尿素水を用いた脱硝装置が切望されている。
下記の特許文献1〜4には、自動車用ディーゼルエンジンの脱硝装置の還元剤として尿素水を用いた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371831号公報
【特許文献2】特開2007−218146号公報
【特許文献3】特開2004−44405号公報
【特許文献4】特開平5−285343号公報
【0004】
特許文献1及び2では、自動車用ディーゼルエンジンが対象とされている。自動車用ディーゼルエンジンは4サイクルとされており、一般に排気温度が最高で約450℃程度と高いため、尿素水からアンモニアへの改質が十分に期待できる。したがって、特許文献1及び2では、ゼオライト等金属系脱硝触媒手前の排気管に尿素水を噴射する構成が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、船舶推進用の主機(舶用主機)としては、排気ターボ過給機を備えた舶用ディーゼルエンジンが多用される。
自動車用ディーゼルエンジンと異なり、このような構成の舶用主機では、例えば2サイクルディーゼルエンジンの場合、単体熱効率に優れているため、排気ターボ過給機を通過した後の排ガス温度が最高で約250℃程度まで低くなる傾向がある。脱硝触媒は250〜420℃、好ましくは320〜400℃の温度域で高活性を示すチタン・バナジウム系を採用するが、尿素水からアンモニアへ改質するための時間・助走距離を必要とし、尿素水噴射ノズルは触媒の排気上流にできる限り離して配置する構成となる。
排ガス温度が低い場合には、尿素水からアンモニアへの改質過程で、ビウレット、シアヌル酸他多様な固体副生成物が生じる。これらの固体副生成物は尿素が分解を始める温度レベル(約133℃)から、シアヌル酸が分解を始める温度レベル(320〜360℃)の範囲内で生成されるものとみられる。
特許文献3によれば、脱硝触媒に対して尿素水を排気管に直接噴霧した場合の現象について、次のとおり記されている。「ノズルから滴下された尿素水は、滴下される際にパイプ内を流通する排気ガスの熱により蒸発し、パイプ内にアンモニアガスが生成される。そして、アンモニアにより窒素酸化物が還元されて脱硝装置において窒素酸化物が脱硝される。尿素水は排気ガスの流速とパイプ内の温度が適度である場合は、尿素水をパイプの内部で十分に蒸発して拡散することができる。反対に燃焼装置の燃焼が弱まったような状態では、排気ガスの流速が小さく温度が下がるので、尿素水の蒸発が適度に行われず、ノズルから尿素水が滴下する。」「ノズルから尿素水が滴下する際に、尿素水がノズルの先端部で固化し、ノズルが閉塞することがあった。また、尿素はパイプ内の温度が下がると重合反応により、シアヌル酸等の副生物を生成する。シアヌル酸が生成してパイプの内周壁に付着すると、窒素酸化物の還元剤となるアンモニアの生成量が減少し、下流側にある脱硝装置の脱硝性能が低下してしまう。すなわち、尿素水の滴下量が多く、パイプの下流(底壁部)に尿素水が溜まると、パイプの周壁は外気と接していることから、パイプの内部と温度差があって、パイプの底壁部に滴下した尿素水がパイプの内周面を冷やしてシアヌル酸を生成することになる。」
頻繁な負荷変動の中で運航する船舶では、常に理想の排ガス温度・触媒温度を維持することは困難である。尿素水を排気管に直接噴射したのでは固体副生成物の生成が避けられず、排気管を船舶停泊時ごとに開放して保守することは困難であるから、固体副生成物の排気管への堆積を回避することが課題である。また、これら固体副生成物を保守不完全により放置しておくと時間の経過とともに固体副生成物が成長し、排気管が閉塞してしまうおそれがある。
【0006】
一方、排ガス脱硝のために必要なチタン・バナジウム系脱硝触媒は、前述のとおり排ガス温度が320〜400℃の温度域で高活性を示すが、排ガス温度が320℃未満では、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)とアンモニアから生成される重硫酸アンモニウム(酸性硫安)により脱硝触媒が被毒され、250℃レベルでは脱硝装置の性能劣化が著しい。
この問題を回避するため、舶用2サイクルディーゼル機関でも400℃レベルの排ガス温度が期待できる過給機上流側に脱硝装置を配置することがまず考えられるが、脱硝装置の熱容量が大きいため、過給機の応答性が低下、発停時や負荷変動時に排気ターボ過給機が追従せず、掃排気系にハンチングを生じ、機関性能に著しい影響を与え、船舶の安全航行に支障を来たす可能性がある。また、チタン・バナジウム系脱硝触媒の使用温度域としては一般的に400℃レベルの排ガス温度が上限値であり、これ以上の温度域での使用を継続すると触媒のシンタリング(焼結)により失活し、触媒寿命が低下する可能性がある。これらの理由により過給機上流側に脱硝装置を配置するシステムは実用化されていない。
特許文献4では、ディーゼルエンジン特に舶用2サイクルディーゼル機関の排気ターボ過給機下流に配置され、アンモニアを還元剤とする脱硝装置に関して、低温で短期間使用された脱硝触媒であれば、再度昇温すれば酸性硫安により脱硝触媒の活性が低下した状態からもとの活性状態に再生することができる特性を脱硝装置として実用化するために、触媒を収める脱硝装置本体を複数の流路に分割し、各流路で入口部にダンパーを設け、また各流路入口ダンパーの内側で触媒上流側に昇温・再生用の高温ガス注入ノズルを設け、この高温ガスはディーゼル機関の排気ターボ過給機の上流側の排気管より抽気して用いることを提案している。しかしながら、前述したようにアンモニアを還元剤とする舶用排ガス脱硝装置が安全性の点で求められていないことから、特許文献4の提案では不十分である。
【0007】
舶用ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物が一部の海域で厳格に規制される国際的な方向性が定められる状況において、その海域では使用燃料を従来の硫黄分4.5%以下の残渣油という規定から硫黄分0.1%以下の留出油という規定に代え、NOx規制値を現行から80%削減するという動きになっている。
排ガス温度の低いディーゼルエンジンにも使用可能な舶用排ガス脱硝装置を提供するには、排気ターボ過給機の下流に脱硝装置を配置して排ガス温度が250℃程度の低温でも酸性硫安による脱硝触媒の被毒を回避するという課題と、還元剤として含有量32.5%尿素水を用いるという課題の2つの課題の解決を迫られている。前者の課題は、硫黄分0.1%以下の留出油を使用することで解決の糸口がみつかるが、後者の課題が残っている。
【0008】
また、例えば、排ガス脱硝システムを備えた船舶が排ガスNOx規制が厳格とされている海域(排ガス規制海域(ECA;Emission Control Area))を航行する場合のようにNOx規制が行われる場合には、尿素水からアンモニアを生成するリアクタを動作させるために、排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスをリアクタへと導く排ガスバイパス経路へと排ガスが導かれるが、排ガスNOx規制が行われない場合には、脱硝の必要がないため排ガスバイパス経路に排ガスが導かれない。この場合、排気ターボ過給機に導かれる排ガス量は、排ガスバイパス経路に排ガスを導く場合に比べて多くなる。これにより、排気ターボ過給機の能力が増大してエンジンの最適掃気圧力を超えてしまうおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて掃気圧力を制御することができる排ガス脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに排ガス脱硝システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の排ガス脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに排ガス脱硝システムの制御方法は以下の手段を採用する。
本発明の参考例としての排ガス脱硝システムは、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記2サイクルディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、該排ガスバイパス経路によって前記リアクタへと導かれる排ガスまたは前記リアクタ内の排ガスを、前記尿素水噴射ノズルによって前記尿素水が供給される前に加熱するリアクタ用排ガス加熱手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
排ガスバイパス経路によって、舶用ディーゼルエンジンから排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスがリアクタに導かれることとしたので、リアクタ内の反応温度を上昇させることができる。これにより、尿素水からアンモニアへの改質過程で生じる固体副生成物の生成を抑制することができ、尿素水噴射ノズルの閉塞を防止することができ、かつ排気管に固体副生成物を持ち込まない構造となっているので排気管の閉塞を防止することができる。
また、排気ターボ過給機に供給される排ガスを一部抽気することによって排気ターボ過給機を通過する排ガス量が低下するので、排気ターボ過給機のタービン仕事が減少してエンジンに供給される空気量が低下するため、排ガス温度を更に上昇させることができる。これにより、さらに固体副生成物の生成を抑制することができる。
さらに、リアクタ用排ガス加熱手段によってリアクタへ導かれる排ガスまたはリアクタ内の排ガスを加熱することとしたので、リアクタ内の反応温度を上昇させることができる。これにより、起動時のようにエンジン出口排ガス温度が低いときであっても、所望の反応温度を得ることができる。
なお、リアクタ用排ガス加熱手段としては、典型的には、バーナや電気ヒータが挙げられる。また、リアクタ用排ガス加熱手段の設置位置としては、リアクタ内、排ガスバイパス経路、排ガスバイパス経路に分岐する前のメイン排ガス経路等が挙げられる。
また、リアクタ用排ガス加熱手段として電気ヒータを用いるとともに、排気タービン軸の回転によって発電するハイブリッド過給機から電気ヒータへ電力を供給する構成としても良い。
【0011】
さらに、本発明の参考例としての排ガス脱硝システムにおいて、前記リアクタ用排ガス加熱手段は、前記リアクタ内の温度が所定値以下の場合に起動され、前記所定値を超える場合には停止されることを特徴とする。
【0012】
排ガスバイパス経路から導かれる排ガスの温度が所定値以上となった場合には、所望のリアクタ内反応温度が得られるので、リアクタ用排ガス加熱手段を起動させる必要はない。そこで、リアクタ内の温度に基づいてリアクタ用排ガス加熱手段の起動停止を切り替えることとした。これにより、リアクタ用排ガス加熱手段によって消費されるエネルギー(バーナ用燃料や電気ヒータ用電力)を節約することができる。
【0013】
また、本発明の排ガス脱硝システムは、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、該排ガスバイパス経路を流れる排ガスの流量を調整するバイパス制御弁と、該排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて、前記舶用ディーゼルエンジンの掃気圧力を制御する掃気圧力制御手段とを備え、前記掃気圧力制御手段は、前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が減少した場合、前記掃気圧力を適正値に維持するように減少させ、前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が増大した場合、前記掃気圧力を適正値に維持するように増大させるように制御することを特徴とする。
【0014】
例えば、排ガス脱硝システムを備えた船舶が排ガスNOx規制が厳格とされている海域(排ガス規制海域(ECA;Emission Control Area))を航行する場合のようにNOx規制が行われる場合には、リアクタを動作させるために排ガスバイパス経路へと排ガスが導かれるが、排ガスNOx規制が行われない場合には、脱硝の必要がないため排ガスバイパス経路に排ガスが導かれない。この場合、排気ターボ過給機に導かれる排ガス量は、排ガスバイパス経路に排ガスを導く場合に比べて多くなる。これにより、排気ターボ過給機の能力が増大してエンジンの最適掃気圧力を超えてしまうおそれがある。そこで、本発明では、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて掃気圧力を制御する掃気圧力制御手段を設けることとした。
【0015】
さらに、本発明の排ガス脱硝システムでは、前記排気ターボ過給機は、容量可変とされており、前記掃気圧力制御手段は、前記排気ターボ過給機の容量を制御することによって掃気圧力を制御することを特徴とする。
【0016】
排気ターボ過給機としては、VG(Variable Geometry)ターボ等の可変ノズル過給機や、固定タービンノズルに導かれる排ガス流路面積を切り替える形式の過給機、或いは、容量の異なる複数台の過給機を備え、運転台数が可変とされた過給機システムが用いられる。掃気圧力を適正値に制御するために、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて排気ターボ過給機の容量を変化させる。具体的には、排ガスバイパス経路へ排ガスを流す場合は、排気ターボ過給機へ流れる排ガス量が減少するので排気ターボ過給機の容量を減少させ、排ガスバイパス経路へ排ガスを流さない場合は、排気ターボ過給機へ流れる排ガス量が増大するので排気ターボ過給機の容量を増大させる。
【0017】
さらに、本発明の排ガス脱硝システムでは、前記排気ターボ過給機は、排気タービン軸の回転力によって発電する一方で、該排気タービン軸の回転を付勢する発電機モータを備えたハイブリッド排気ターボ過給機とされており、前記掃気圧力制御手段は、前記発電機モータの発電量を制御することによって掃気圧力を制御することを特徴とする。
【0018】
掃気圧力を適正値に制御するために、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じてハイブリッド排気ターボ過給機の発電量を変化させる。具体的には、排ガスバイパス経路へ排ガスを流す場合は、排気ターボ過給機へ流れる排ガス量が減少するので発電機モータの発電量を減少させ、排ガスバイパス経路へ排ガスを流さない場合は、排気ターボ過給機へ流れる排ガス量が増大するので発電機モータの発電量を増大させる。
【0019】
さらに、本発明の排ガス脱硝システムでは、前記舶用ディーゼルエンジンからの排ガスが前記排気ターボ過給機をバイパスして流れる過給機バイパス経路が設けられ、前記掃気圧力制御手段は、前記過給機バイパス経路を流れる排ガス量を調整することによって掃気圧力を制御することを特徴とする。
【0020】
掃気圧力を適正値に制御するために、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて過給機バイパス経路を流れる排ガス量を変化させる。具体的には、排ガスバイパス経路へ排ガスを流す場合は、排気ターボ過給機へ向かう排ガス量が減少するので過給機バイパス経路へ流れる排ガス量を減少させ(好ましくは流量をゼロとし)、排ガスバイパス経路へ排ガスを流さない場合は、排気ターボ過給機へ向かう排ガス量が増大するので過給機バイパス経路へ流れる排ガス量を増大させる。
【0021】
また、本発明の参考例としての排ガス脱硝システムは、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、該排ガスバイパス経路によって前記リアクタへと導かれる排ガスまたは前記リアクタ内の排ガスを、前記尿素水噴射ノズルによって前記尿素水が供給される前に加熱するリアクタ用排ガス加熱手段とを備え、前記排気ターボ過給機は、排気タービン軸の回転力によって発電する一方で、該排気タービン軸の回転を付勢する発電機モータを備えたハイブリッド排気ターボ過給機とされ、前記ハイブリッド排気ターボ過給機へ流れる排ガスを加熱するバーナを備えていることを特徴とする。
【0022】
ハイブリッド排気ターボ過給機へ流れる排ガスを加熱するバーナを設けることにより、エンジンからの排ガス温度が低い起動時であっても、ハイブリッド排気ターボ過給機の下流側に位置する脱硝触媒部へ導かれる排ガス温度を上昇させることができる。
また、エンジン負荷が低い場合には排気エネルギーが小さいので、ハイブリッド排気ターボ過給機による掃気圧力の上昇が見込めない場合がある。本発明では、エンジン負荷が所定値以下となった場合に、バーナによって排ガスを加熱することにより掃気圧力を所望値まで上昇させる。これにより、バーナを補助ブロワの代替として用いることができる。
また、バーナの起動停止によってエンジンの掃気圧力を適正に制御することができる。つまり、脱硝が行われる場合には、リアクタ起動のために排ガスバイパス経路へ排ガスが導かれてハイブリッド排気ターボ過給機へ導かれる排ガス流量が相対的に減少するので、掃気圧力が適正値を下回るおそれがある。このような場合にはバーナを起動させ、掃気圧力を適正値まで上昇させる。
また、電力需要に対して発電量が少ないときは、バーナを起動させることによってハイブリッド排気ターボ過給機の発電量を増大させることができる。
【0023】
また、本発明の参考例としての排ガス脱硝システムは、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路とを備え、該排ガスバイパス経路に対して並列かつ切替可能に設けられ、排ガスによって駆動されて発電するパワータービンが設けられたパワータービン用経路を備えていることを特徴とする。
【0024】
パワータービン用経路を、排ガスバイパス経路に対して並列かつ切替可能に設けることにより、脱硝を行わない場合には排ガスバイパス経路からパワータービン用経路に排ガス流れを切り替えることができる。これにより、排気ターボ過給機へ導かれる排ガス流量の変動を抑えることができる。また、パワータービン用経路を流れる排ガスによってパワータービンを起動して電力を得ることができる。
【0025】
また、本発明の船舶は、上記のいずれかの排ガス脱硝システムを備え、前記舶用ディーゼルエンジンは、推進用主機とされていること特徴とする。
【0026】
上記のいずれかの排ガス脱硝システムを備えた船舶とすることにより、排ガス規制海域(ECA;Emission Control Area)の内外で脱硝システムの起動停止が円滑に実現される。
【0027】
また、本発明の参考例としての排ガス脱硝システムの制御方法は、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、該排ガスバイパス経路によって前記リアクタへと導かれる排ガスまたは前記リアクタ内の排ガスを、前記尿素水噴射ノズルによって前記尿素水が供給される前に加熱するリアクタ用排ガス加熱手段とを備えた排ガス脱硝システムの制御方法であって、前記リアクタ用排ガス加熱手段を、前記リアクタ内の温度が所定値以下の場合に起動し、前記所定値を超える場合には停止することを特徴とする。
【0028】
排ガスバイパス経路によって、舶用ディーゼルエンジンから排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスがリアクタに導かれることとしたので、リアクタ内の反応温度を上昇させることができる。これにより、尿素水からアンモニアへの改質過程で生じるシアヌル酸の発生を抑制することができるので、尿素水噴射ノズルや排気管の閉塞を防止することができる。
また、排気ターボ過給機に供給される排ガスを一部抽気することによって排気ターボ過給機を通過する排ガス量が低下するので、排気ターボ過給機のタービン仕事が減少してエンジンに供給される空気量が低下するため、排ガス温度を更に上昇させることができる。これにより、さらにシアヌル酸の生成を抑制することができる。
さらに、リアクタ用排ガス加熱手段によってリアクタへ導かれる排ガスまたはリアクタ内の排ガスを加熱することとしたので、リアクタ内の反応温度を上昇させることができる。これにより、起動時のように排ガス温度が低くリアクタ内温度が低いときであっても、所望の反応温度を得ることができる。
排ガスバイパス経路から導かれる排ガスの温度が所定値以上となった場合には、所望のリアクタ内反応温度が得られるので、リアクタ用排ガス加熱手段を起動させる必要はない。そこで、リアクタ内の温度に基づいてリアクタ用排ガス加熱手段の起動停止を切り替えることとした。これにより、リアクタ用排ガス加熱手段によって消費されるエネルギー(バーナ用燃料や電気ヒータ用電力)を節約することができる。
【0029】
また、本発明の排ガス脱硝システムの制御方法は、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、該排ガスバイパス経路を流れる排ガスの流量を調整するバイパス制御弁とを備えた排ガス脱硝システムの制御方法であって、前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が減少した場合、前記舶用ディーゼルエンジンの掃気圧力を適正値に維持するように減少させ、前記排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量が増大した場合、前記掃気圧力を適正値に維持するように増大させるように制御することを特徴とする。
【0030】
例えば、排ガス脱硝システムを備えた船舶が排ガスNOx規制が厳格とされている海域(排ガス規制海域(ECA;Emission Control Area))を航行する場合のようにNOx規制が行われる場合には、リアクタを動作させるために排ガスバイパス経路へと排ガスが導かれるが、排ガスNOx規制が行われない場合には、脱硝の必要がないため排ガスバイパス経路に排ガスが導かれない。この場合、排気ターボ過給機に導かれる排ガス量は、排ガスバイパス経路に排ガスを導く場合に比べて多くなる。これにより、排気ターボ過給機の能力が増大してエンジンの最適掃気圧力を超えてしまうおそれがある。そこで、本発明では、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて掃気圧力を制御することとした。
【0031】
また、本発明の参考例としての排ガス脱硝システムの制御方法は、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路と、該排ガスバイパス経路によって前記リアクタへと導かれる排ガスまたは前記リアクタ内の排ガスを、前記尿素水噴射ノズルによって前記尿素水が供給される前に加熱するリアクタ用排ガス加熱手段とを備えた排ガス脱硝システムの制御方法であって、前記排気ターボ過給機は、排気タービン軸の回転力によって発電する一方で、該排気タービン軸の回転を付勢する発電機モータを備えたハイブリッド排気ターボ過給機とされ、バーナによって、前記ハイブリッド排気ターボ過給機へ流れる排ガスを加熱することを特徴とする。
【0032】
ハイブリッド排気ターボ過給機へ流れる排ガスを加熱するバーナを設けることにより、エンジンからの排ガス温度が低い起動時であっても、ハイブリッド排気ターボ過給機の下流側に位置する脱硝触媒部へ導かれる排ガス温度を上昇させることができる。
また、エンジン負荷が低い場合には排気エネルギーが小さいので、ハイブリッド排気ターボ過給機による掃気圧力の上昇が見込めない場合がある。本発明では、エンジン負荷が所定値以下となった場合に、バーナによって排ガスを加熱することにより掃気圧力を所望値まで上昇させる。これにより、バーナを補助ブロワの代替もしくは補助手段として用いることができるため、補助ブロワの台数低減もしくは容量低減ができる。
また、バーナの起動停止によってエンジンの掃気圧力を適正に制御することができる。つまり、脱硝が行われる場合には、リアクタ起動のために排ガスバイパス経路へ排ガスが導かれてハイブリッド排気ターボ過給機へ導かれる排ガス流量が相対的に減少するので、掃気圧力が適正値を下回るおそれがある。このような場合にはバーナを起動させ、掃気圧力を適正値まで上昇させる。
また、電力需要に対して発電量が少ないときは、バーナを起動させることによってハイブリッド排気ターボ過給機の発電量を増大させることができる。
【0033】
また、本発明の参考例としての排ガス脱硝システムの制御方法は、舶用ディーゼルエンジンの排ガスによって駆動される排気ターボ過給機と、尿素水からアンモニアを生成するリアクタと、該リアクタ内に尿素水を供給する尿素水噴射ノズルと、前記排気ターボ過給機の下流側の排ガス通路に設けられ、前記リアクタから供給されたアンモニアを用いて排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記舶用ディーゼルエンジンから前記排気ターボ過給機に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスを前記リアクタへと導く排ガスバイパス経路とを備えた排ガス脱硝システムの制御方法であって、前記排ガスバイパス経路に対して並列かつ切替可能に設けられ、排ガスによって駆動されて発電するパワータービンが設けられたパワータービン用経路を備え、排ガス脱硝を行う場合には前記排ガスバイパス経路に排ガスを流し、排ガス脱硝を行わない場合には前記パワータービン用経路に排ガスを流すことを特徴とする。
【0034】
パワータービン用経路を、排ガスバイパス経路に対して並列かつ切替可能に設けることにより、脱硝を行わない場合には排ガスバイパス経路からパワータービン用経路に排ガス流れを切り替えることができる。これにより、排気ターボ過給機へ導かれる排ガス流量の変動を抑えることができる。また、パワータービン用経路を流れる排ガスによってパワータービンを起動して電力を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じて掃気圧力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の排ガス脱硝システムの第1参考実施形態を示した概略構成図である。
図2】本発明の排ガス脱硝システムの第1実施形態を示し、(a)は主要部の概略構成図、(b)はハイブリッド発電機モータから船内系統への構成を示した概略構成図である。
図3図2の第1変形例を示した概略構成図である。
図4図2の第2変形例を示した概略構成図である。
図5】本発明の排ガス脱硝システムの第2参考実施形態を示し、(a)は主要部の概略構成図、(b)はハイブリッド発電機モータから船内系統への構成を示した概略構成図である。
図6】本発明の排ガス脱硝システムの第3参考実施形態を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明に係る排ガス脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに排ガス脱硝システムの制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1参考実施形態]
図1には、本実施形態にかかる舶用排ガス脱硝システム1が設けられたディーゼルエンジン3まわりの概略構成が示されている。
船舶内には、船舶推進用の主機とされたディーゼルエンジン3と、ディーゼルエンジン3からの排ガスを脱硝するための脱硝システム1と、ディーゼルエンジン3の排ガスによって駆動される排気ターボ過給機5と、ディーゼルエンジン3の排ガスによって蒸気を生成する排ガスエコノマイザ11とを備えている。
【0038】
ディーゼルエンジン3は、舶用2サイクルエンジンとされており、下方から給気して上方へ排気するように1方向に掃気されるユニフロー型が採用されている。ディーゼルエンジン3からの出力は、図示しないプロペラ軸を介してスクリュープロペラに直接的または間接的に接続されている。
ディーゼルエンジン3の各気筒のシリンダ部13(図1では1気筒のみを示している。)の排気ポートは排ガス集合管としての排気マニホールド15に接続されている。排気マニホールド15は、第1排気経路L1を介して、排気ターボ過給機5のタービン部5aの入口側と接続されている。なお、図1において、符号8は排気弁、符号9はピストンである。
【0039】
一方、各シリンダ部13の掃気ポートは掃気トランク(図示せず)に接続されており、掃気マニホールドは、給気経路K1を介して、排気ターボ過給機5のコンプレッサ部5bと接続されている。また、給気経路K1には空気冷却器(インタークーラ)19が設置されている。
【0040】
排気ターボ過給機5は、タービン部5aと、コンプレッサ部5bとを備えている。タービン部5a及びコンプレッサ部5bは、回転軸5cによって同軸にて連結されている。タービン部5aは、ディーゼルエンジン3からの排ガスによって駆動され、タービン部5aにて得られたタービン仕事は回転軸5cを介してコンプレッサ部5bに伝達される。コンプレッサ部5bは、外気(空気)を吸い込み所定掃気圧まで昇圧する。
タービン部5aにてタービン仕事を与えた後の排ガスは、第2排気経路L2へと流出する。第2排気経路L2は、分岐点20にて、第3排気経路L3及び第4排気経路L4へと分岐される。分岐点20における排ガス経路の切り替えは、第3排気経路L3に設けられた排ガスエコノマイザ側開閉弁22と、第4排気経路L4に設けられた脱硝側開閉弁24とによって行われる。これらの開閉弁22,24は、択一的に選択されて開閉が行われる。すなわち、排ガスのNOx規制が厳格とされている海域(Emission Control Area,以下「ECA」という。)を航行する際のように排ガス脱硝が必要な場合は、脱硝側開閉弁24を開き、排ガスエコノマイザ側開閉弁22を閉じる。一方、排ガスのNOx規制が比較的緩やかなECA外の海域を航行する際のように排ガス脱硝を行わない場合は、脱硝側開閉弁24を閉じ、排ガスエコノマイザ側開閉弁22を開ける。
なお、これら開閉弁22,24は、1つの三方弁で代用することも可能である。
【0041】
排ガスエコノマイザ11は、排ガスエコノマイザ側開閉弁22の下流側に接続されており、ディーゼルエンジン3から排出された排ガスと、給水管23によって供給された水とを熱交換させて蒸気を発生させる。発生された蒸気は、船内の各所にて利用される。
第4排気経路L4の脱硝側開閉弁24の下流側には、後述するリアクタ2によって生成されたアンモニアガスを排ガスに対して供給するアンモニア供給部6と、選択接触還元法(SCR;Selective Catalytic Reduction)に用いられるSCR触媒部(脱硝触媒部)4とがこの順番で接続されている。
【0042】
舶用排ガス脱硝システム1は、上述したSCR触媒部4およびアンモニア供給部6と、尿素水からアンモニアガスを生成するリアクタ2とを備えている。
【0043】
SCR触媒部4では、排ガス中のNOxが触媒により選択的に還元され、無害な窒素と水蒸気に分解される。SCR触媒部4にて脱硝された排ガスは、下流側の合流点29にて、排ガスエコノマイザ11の下流側と合流され、図示しない煙突から外部へと排出される。SCR触媒部4の下流には、合流点29との間に遮断弁25が設けられ、排ガスのNOx規制が比較的緩やかな海域を航行する際に遮断弁を閉じることで、高硫黄分の排ガスが脱硝触媒側に一部流れて触媒を暴露するのを防ぐ。
【0044】
アンモニア供給部6は、混合容器27と、この混合容器27内に設けられ、多数の噴出孔が形成されたアンモニアガス噴出ノズル26とを備えている。アンモニアガス噴出ノズル26から噴出されたアンモニアガスと、混合容器27内に導かれた排ガスが混合された後に、SCR触媒部4へと導かれる。
【0045】
リアクタ2は、リアクタ容器30と、多数の噴射孔が形成された尿素水噴射ノズル32とを備えている。尿素水噴射ノズル32には、尿素水タンク34に貯留された尿素水が尿素水ポンプP1によって供給されるようになっている。また、尿素水ポンプP1の下流側の尿素水供給経路M1もしくは尿素水噴射ノズル32には、圧縮空気供給源36から供給される圧縮空気が合流されるようになっている。
【0046】
リアクタ2の上流側(図において下方)には、バーナ(リアクタ用排ガス加熱手段)50が設けられている。バーナ50は、リアクタ2の周囲に複数本設けられている。各バーナ50には、図示しない燃料供給源から燃料が供給され、リアクタ2内で火炎を形成してリアクタ2の排ガスを加熱する。また、各バーナ50は、図示しない制御部によって起動停止が制御されるようになっている。
【0047】
リアクタ2と排気マニホールド15との間には、排ガスの一部を抽気する排ガスバイパス経路B1が設けられている。排ガスバイパス経路B1には、図示しない制御部によって制御され、流量調整可能とされたバイパス制御弁40が設けられている。バイパス制御弁40によって調整される流量は、ディーゼルエンジン3からの排ガスの5〜20%、好ましくは10〜15%の範囲とされる。
【0048】
次に、上記構成の舶用排ガス脱硝システム1の制御方法について説明する。
ディーゼルエンジン3から排出された排ガスは、排気マニホールド15から第1排気経路L1を介して排気ターボ過給機5のタービン部5aへと導かれる。タービン部5aは、排ガスエネルギーを得て回転させられ、コンプレッサ5bを回転させる。コンプレッサ部5bでは、吸入した空気(外気)を圧縮して空気冷却器19を介してディーゼルエンジン3の掃気トランクへと送る。
【0049】
ECA外の海域を航行する場合には、排ガス脱硝を行わない。この場合、排ガスエコノマイザ側開閉弁22を開とし、脱硝側開閉弁24及びバイパス制御弁40及び遮断弁25を閉とする。
排気ターボ過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気経路L2から分岐点20を通過して第3排気経路L3を通り、排ガスエコノマイザ側開閉弁22を介して、排ガスエコノマイザ11へと導かれる。排ガスエコノマイザ11では、給水管23から供給される水が排ガスによって加熱されて蒸気が生成される。生成された蒸気は、船内の各所にて使用される。排ガスエコノマイザ11から排出された排ガスは、図示しない煙突から外部へと排出される。
【0050】
一方、ECA内を航行する場合には、排ガス脱硝を行う。この場合、排ガスエコノマイザ側開閉弁22を閉とし、脱硝側開閉弁24及びバイパス制御弁40及び遮断弁25を開とする。
【0051】
バイパス制御弁40の開度は、制御部の指令によって適宜調整される。バイパス制御弁40によって流量が調整された後、排ガスバイパス経路B1を介して排ガスがリアクタ2へと導かれる。
【0052】
リアクタ2へ導かれた排ガスは、リアクタ2内のバーナ50が設けられた領域を通過する。バーナ50は、以下のように動作が制御される。
ディーゼルエンジン3の起動時は排ガス温度が低いため、排ガスバイパス経路B1を流れる排ガス温度も低い。したがって、排ガスバイパス経路B1から排ガスを導いてもリアクタ内の反応温度を所望値まで上昇させることは期待できない。そこで、ディーゼルエンジン3の起動時には、図示しない制御部の指令により、バーナ50が起動され、リアクタ2内に火炎を形成し、その燃焼熱によって排ガスを加熱してリアクタ2内温度を所望値まで上昇させる。
ディーゼルエンジン3が起動して所定時間経過した後に、バーナ50の動作を停止する。これは、ディーゼルエンジン3の起動後で所定時間経過した後は、排ガス温度が所望値まで上昇していると判断できるからである。
【0053】
リアクタ2内では、バーナ50が設けられた領域を通過した排ガスに対して、圧縮空気供給源36から供給される圧縮空気とともに、尿素水タンク34から導かれる尿素水が尿素水噴射ノズル32から噴射される。そして、リアクタ2内で噴射された尿素水が改質され、アンモニアガスが生成される。この改質反応では、排ガスの顕熱によって加熱されているので、固体副生成物の生成が抑制されている。このように生成されたアンモニアガスは、アンモニア供給部6へと導かれ、アンモニアガス噴射ノズル26から排ガスに向けて噴射される。
【0054】
排気ターボ過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気経路L2から分岐点20を通過して第4排気経路L4を通り、アンモニア供給部6へと導かれる。アンモニア供給部6にてアンモニアガスと混合された排ガスは、SCR触媒部4へと導かれ、このSCR触媒部4にて脱硝される。脱硝後の排ガスは、合流点29を通過して図示しない煙突から外部へと排出される。
【0055】
上述の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
2サイクルとされたディーゼルエンジン3から排気ターボ過給機5に供給される排ガスの一部を抽気した排ガスがリアクタ2に導かれることとしたので、リアクタ2内の反応温度を上昇させることができる。これにより、尿素水からアンモニアへの改質過程で生じる固体副生成物の生成を抑制することができるので、尿素水噴射ノズル32や、リアクタ2よりも下流側に位置する排気管の閉塞を防止することができる。
また、排気ターボ過給機5に供給される排ガスを一部抽気することによって排気ターボ過給機5を通過する排ガス量が低下するので、排気ターボ過給機5のタービン仕事が減少してディーゼルエンジン3に供給される空気量が低下するため、排ガス温度を更に上昇させることができる。これにより、固体副生成物の生成をさらに抑制することができる。
さらに、バーナ50によってリアクタ2内の排ガスを加熱することとしたので、リアクタ2内の反応温度を上昇させることができる。これにより、ディーゼルエンジン3の起動時のように排ガス温度が低くリアクタ2内温度が低いときであっても、所望の反応温度を得ることができ、かつ酸性硫安による脱硝触媒の被毒を回避できる。
【0056】
なお、本実施形態では、バーナ50の起動は、ディーゼルエンジン3の起動時に行うこととして説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、リアクタ2内の温度もしくは排ガスバイパス経路B1を通過する排ガス温度が所定値以下の場合に行うこととしてもよい。この場合には、リアクタ2内もしくは排ガスバイパス経路B1内に温度センサを設け、この温度センサの出力温度に応じてバーナ50の起動停止を行うことが好ましい。
【0057】
また、本実施形態では、リアクタ2内の排ガスを加熱するためにバーナ50を用いることとしたが、これに代えて電気ヒータを用いることとしても良い。電気ヒータに供給される電力は、船内電力が使用され、例えば、発電用ディーゼルエンジンによって得られた電力、後述するハイブリッド過給機によって得られた電力、後述するパワータービンによって得られた電力等が挙げられる。
【0058】
また、本実施形態では、バーナ50の配置をリアクタ2の上流位置としたが、バーナ50や電気ヒータ等のリアクタ用排ガス加熱手段の位置はこれに限らず、例えば、図1の符号51に示すように、排ガスバイパス経路B1に設けても良い。この場合には、加熱後の温度低下を抑制するためにリアクタ2の直近に設けることが好ましい。あるいは、図1の符号52に示すように、排ガスバイパス経路B1に分岐する前のメイン排ガス経路に設けても良い。
【0059】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について図2を用いて説明する。
本実施形態は、第1参考実施形態の排気ターボ過給機5に代えて、ハイブリッド排気ターボ過給機(以下「ハイブリッド過給機5’」という。)を用いている点で相違する。また、本実施形態の図2ではバーナ50に代えて電気ヒータ53を用いている。その他の構成については第1参考実施形態と同様なので、同一符号を付しその説明を省略する。
【0060】
図2(a)に示されているように、ハイブリッド過給機5’は、タービン部5aと、コンプレッサ部5bと、ハイブリッド発電機モータ5eとを備えている。タービン部5a及びコンプレッサ部5bと、ハイブリッド発電機モータ5eとは、回転軸5dによって同軸にて連結されている。
ハイブリッド発電機モータ5eは、タービン部5aによって得られる回転出力を得て発電する一方で、船内系統46(図2(b)参照)から電力を得てコンプレッサ部5bの回転を加勢する。ハイブリッド発電機モータ5eと船内系統46との間には、図2(b)に示されているように、ハイブリッド発電機モータ5e側から順に、交流電力を直流電力に変換するコンバータ42と、直流電力を交流電力に変換するインバータ43と、開閉スイッチ44とが設けられている。
【0061】
本実施形態では、ハイブリッド発電機モータ5eによって発電された電力は、リアクタ2に設けられた電気ヒータ53へと供給できるようになっている。これにより、ハイブリッド過給機5’にて回収した電力を脱硝用として用いることができるので、高効率な脱硝システムを実現することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、上述した第1参考実施形態の制御に加えて、以下の制御が行われる。
<掃気圧力制御>
ディーゼルエンジン3の掃気圧力を適正に保つため、ECA内外でハイブリッド過給機5’の制御を分けて行う。ECA内を航行する場合のようにNOx規制が行われる場合には、リアクタ2を動作させるために排ガスバイパス経路B1へと排ガスが導かれるが、排ガスNOx規制が行われないECA外を航行する場合には、脱硝の必要がないため排ガスバイパス経路B1に排ガスが導かれない。この場合、ハイブリッド過給機5’に導かれる排ガス量は、排ガスバイパス経路B1に排ガスを導くECA内を航行する場合に比べて多くなる。これにより、排気ターボ過給機の能力が増大してエンジンの最適掃気圧力を超えてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、排ガスバイパス経路へ流れる排ガス量に応じてハイブリッド過給機5’の発電量を変化させる。具体的には、排ガスバイパス経路B1へ排ガスを流すECA内を航行する場合は、ハイブリッド過給機5’へ流れる排ガス量が減少するので発電機モータ5eの発電量を、ECA外を航行する場合に比べて減少させる。一方、排ガスバイパス経路B1へ排ガスを流さないECA外を航行する場合は、ハイブリッド過給機5’へ流れる排ガス量が増大するのでハイブリッド発電機モータ5eの発電量を、ECA内を航行する場合に比べて増大させる。
このように、本実施形態によれば、ECA内外で排ガスバイパス経路B1を切り替えても、ディーゼルエンジン3の掃気圧力を適正値に維持することができるので、低燃費とされた運転が実現される。
【0063】
[第1実施形態の変形例1]
図3に示したように、ハイブリッド過給機5’に代えて、容量可変式の過給機として、VG(Variable Geometry)ターボ等の可変ノズル過給機5”としても良い。可変ノズル過給機5”は、タービン部5aへ導かれる排ガスの流量を制御する可変ノズル58が設けられている。可変ノズル58の開度は、図示しない制御部によって制御される。
なお、図3に示した変形例は、電気ヒータ53ではなく、バーナ50が設けた例が示されている。
【0064】
可変ノズル過給機5”を用いた場合も、上述した掃気圧力制御と同等の制御を行う。具体的には、排ガスバイパス経路B1へ排ガスを流す場合は、可変ノズル過給機5”へ流れる排ガス量が減少するので可変ノズル過給機5”のノズル開度を小さくして容量を減少させる。一方、排ガスバイパス経路B1へ排ガスを流さない場合は、可変ノズル過給機5”へ流れる排ガス量が増大するので可変ノズル過給機5”のノズル開度を大きくして容量を増大させる。
また、容量可変式の過給機としては、他に、固定タービンノズルに導かれる排ガス流路面積を切り替える形式の過給機、或いは、容量の異なる複数台の過給機を備え、運転台数が可変とされた過給機システムが挙げられる。これらの過給機についても、上述と同様の掃気圧力制御を行うことができる。
【0065】
[第1実施形態の変形例2]
図4に示したように、可変容量式の過給機を用いない場合でも、排気ターボ過給機5をバイパスして流れる過給機バイパス経路60を設けることにより、掃気圧力制御を行うことができる。過給機バイパス経路60には、過給機バイパス弁62が設けられている。
具体的な制御は次のように行う。排ガスバイパス経路B1へ排ガスを流す場合は、排気ターボ過給機5へ向かう排ガス量が減少するので、過給機バイパス弁62を閉じて過給機バイパス経路60への排ガス流れを停止する。一方、排ガスバイパス経路B1へ排ガスを流さない場合は、排気ターボ過給機5へ向かう排ガス量が増大するので、過給機バイパス弁62を開けて過給機バイパス経路60へ流れる排ガス量を増大させる。
なお、過給機バイパス弁62は、開閉弁に限らず、掃気圧に応じて開度を制御できる制御弁としてもよい。
【0066】
[第2参考実施形態]
次に、本発明の第2参考実施形態について、図5を用いて説明する。本実施形態は、図2を用いて説明した第1実施形態の構成に対して、ハイブリッド過給機用バーナ65が設けられている点で相違する。その他の構成については第1実施形態と同様なので、同一符号を付しその説明を省略する。
ハイブリッド過給機用バーナ65は、ハイブリッド過給機5’のタービン部5aの上流側に設けられており、タービン部5aに流入する排ガスを加熱するために用いられる。バーナ65には、図示しない燃料供給源から燃料が供給され、バーナ65によって形成された火炎の燃焼熱によって排ガスが加熱される。バーナ65の起動停止は、図示しない制御部によって行われる。
【0067】
本実施形態では、上述した第1実施形態の制御に加えて、ハイブリッド過給機5’の上流側に設けたバーナ65により、以下の制御が行われる。
<バーナによる排ガス温度制御>
ディーゼルエンジン3の起動時のように排ガス温度が低い場合に、図示しない制御部によってバーナ65が起動される。これにより、ハイブリッド過給機5’の下流側に位置するSCR触媒部4へ導かれる排ガス温度を上昇させることができる。
【0068】
<バーナによるエンジン低負荷時の掃気圧力上昇>
ディーゼルエンジン3の負荷が低い場合には、排ガスエネルギーが小さいためハイブリッド過給機5’による掃気圧の上昇が見込めない場合がある。本実施形態では、ディーゼルエンジン3の負荷が所定値以下の場合には、図示しない制御部によってバーナ65が起動される。これにより、ハイブリッド過給機5’に導かれる排ガスが加熱され、掃気圧力を所望値まで上昇させることができる。このように、バーナ65を、従来設けられていた補助ブロワの代替あるいは補助手段として用いることができる。
【0069】
<バーナによる掃気圧力制御>
バーナ65の起動停止によってディーゼルエンジン3の掃気圧力を適正に制御する。
脱硝が行われるECA内航行時には、リアクタ2の起動のために排ガスバイパス経路B1へ排ガスが導かれ、ハイブリッド過給機5’へ導かれる排ガス流量が相対的に減少するので、掃気圧力が適正値を下回るおそれがある。このような場合には、図示しない制御部によってバーナ65を起動させて排ガスを加熱することにより、掃気圧力を適正値まで上昇させる。一方、ECA外航行時には脱硝が行われないので、ハイブリッド過給機5’には必要量の排ガスが導かれるので、バーナ65は停止される。
【0070】
<バーナによる発電量増大>
船内の電力需要に対して発電量が少ないときは、図示しない制御部によってバーナ65を起動させる。これにより、加熱された排ガスがハイブリッド過給機5’へと導かれ、ハイブリッド過給機5’の発電量が増大する。増大した発電量に相当する電力が、船内系統46へと供給される。
【0071】
なお、本実施形態では、バーナ65を、ハイブリッド過給機5’の上流側で、排ガスバイパス経路B1の分岐後の位置に設けることとしたが、図5(a)の符号52に示すように、排ガスバイパス経路B1に分岐する前のメイン排ガス経路に設けても良い。この位置にバーナ52を設けても、バイブリッド過給機5’へ導かれる排ガスの温度を上昇させることができるため、上述の各制御を行うことができる。また、この位置にバーナ52を設ければ、第1実施形態にて説明したように、排ガスバイパス経路B1を介してリアクタ2へと導かれる排ガスの温度をも上昇させることができる。
【0072】
[第3参考実施形態]
次に、本発明の第3参考実施形態について、図6を用いて説明する。本実施形態は、図1を用いて説明した第1参考実施形態の構成に対して、パワータービン70が設けられている点で相違する。その他の構成については第1参考実施形態と同様なので、同一符号を付しその説明を省略する。
パワータービン70は、排ガスによって回転駆動され、この回転エネルギーがパワータービン発電機72によって電力として回収される。パワータービン発電機72によって発電された電力は図示しない電力線を介して船内系統へと供給される。
パワータービン70は、排ガスバイパス経路B1に対して並列に設けたパワータービン用経路71に設けられている。パワータービン用経路71は、排ガスバイパス経路B1のバイパス制御弁40の下流側の分岐点73から分岐し、排気ターボ過給機5の下流側の第2排気経路L2に合流する。
排ガスバイパス経路B1の分岐点73の下流側には、リアクタ側開閉弁76が設けられている。また、パワータービン用経路71のパワータービン70の上流側にはパワータービン側開閉弁74が設けられている。これら開閉弁74,76を開閉することにより、排ガスをリアクタ2またはパワータービン70に導くようになっている。なお開閉弁74、76は、1つの三方弁で代用することも可能である。
【0073】
ECA内を航行する場合には脱硝を行うので、パワータービン側開閉弁74を閉とし、リアクタ側開閉弁76を開として、排ガスをリアクタ2へと導く。この場合には、パワータービン70は動作しない。
一方、ECA外を航行する場合には脱硝を行わないので、パワータービン側開閉弁74を開とし、リアクタ側開閉弁76を閉として、排ガスをパワータービン70へと導く。パワータービン70は、排ガスによって駆動され、パワータービン発電機72によって発電される。
また、本実施形態では、脱硝を行わずリアクタ2へ排ガスを導かない場合であっても、パワータービン70側へ排ガスを導く構成とされているので、脱硝の有無に関わらず排気ターボ過給機5へ導かれる排ガス流量の変動を抑えることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 舶用排ガス脱硝システム
2 リアクタ
3 ディーゼルエンジン(舶用ディーゼルエンジン)
4 SCR触媒部(脱硝触媒部)
5 排気ターボ過給機
5’ ハイブリッド過給機
32 尿素水噴射ノズル
34 尿素水タンク
40 バイパス制御弁
50,51,52 バーナ
53 電気ヒータ
65 ハイブリッド過給機用バーナ
70 パワータービン
71 パワータービン用経路
B1 排ガスバイパス経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6