【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上の提案では、中間柱の支持構造が複雑になるため、戸境壁や間仕切壁が多く設けられるマンション等の集合住宅では、壁と梁との接合部分の施工に多くの手間がかかってしまい、施工コストが上昇する、という問題がある。
また、梁をトラス構造やアーチ構造にすると、梁せいに相当する上弦材と下弦材との間隔やライズを大きくする必要があり、その階の空間の利用効率が低下する。
また、フィーレンディール構造や吊構造を採用した場合には、建物の構造とともに施工が複雑化するため工期が長期化し、コストがさらに上昇する。
【0006】
本発明は、空間の利用効率が低下するのを防止しつつ、中間柱にかかる大きな軸力を簡易な構造で下階の柱に伝達できる架構構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の架構構造は、柱および梁を備える構造物の架構構造であって、n(nは自然数)階の一対の柱(例えば、後述の柱13、14)と、当該一対の柱間に架設された(n+1)階床の梁(例えば、後述の7階床梁33)と、当該梁の中間部の上に立設される(n+1)階の中間柱(例えば、後述の中間柱15)と、前記梁の下面に接しかつ前記一対の柱間に亘って設けられた壁(例えば、後述の壁51)と、を備え、当該壁は、前記中間柱にかかる鉛直荷重を前記一対の柱に伝達することを特徴とする。
また、中間柱は、n階床の梁の中間部の上に立設し、n階床から上階側に延びて設けられてもよい。
【0008】
この発明によれば、壁が梁とともに中間柱の軸力を鉛直せん断力として負担するため、中間柱にかかる軸力は、(n+1)階床の梁および壁を介して、n階の一対の柱に伝達され、さらに下層階の柱を経て、基礎から地盤に伝達される。言い換えると、壁がその上下の梁と一体になって一層分のせいを有するメガ梁を構成し、一対の柱間に作用する上層階の鉛直荷重を壁のせん断抵抗によって負担する。よって、長期荷重はもちろんのこと、地震時に中間柱の軸力が増加しても、この増加した軸力を一対の柱に壁の鉛直せん断力として伝達し、さらに下層階の柱へ伝達することができる。
一般的に、壁は地震時の水平せん断力を伝達する構造体として設計され、設計せん断力に対して壁厚、コンクリート強度、壁筋量を定める。ここでは、中間柱の直下の階に壁を設けることで、この壁が上下階の梁と協働して1層分の高さを有するメガ梁の役割を果たし、中間柱の軸力が壁のせん断抵抗によって両側の一対の柱に伝達される。
【0009】
よって、従来のように中間柱の軸力を下層階に伝達するための支持構造が複雑にならないので、マンション等の集合住宅の場合でも、戸境壁や中間柱と梁との接合部分が通常の鉄筋コンクリート造や鉄骨造の架構と同様の納まりとなるので、簡易な構造である。
また、梁せい自体を従来のように大きくする必要がないので、梁をトラス構造やアーチ構造にした場合に比べて、空間の利用効率が低下するのを防止できる。
また、建物の構造としてフィーレンディール構造や吊構造などの特殊な構造を採用した場合に比べて施工が容易になるので、コストがさらに上昇するのを抑制できる。
【0010】
本発明では、前記中間柱は、n階床の梁(例えば、後述の6階床梁23)まで延びること
が好ましい。
【0011】
この発明によれば、中間柱をn階床の梁まで延ばすことで、中間柱が壁の内部に定着されて力の伝達領域が拡がるとともに、壁自体の剛性も高められて、中間柱の軸力をより円滑に一対の柱に伝達できる。
【0012】
本発明の架構構造は、柱および梁を備える構造物の架構構造であって、少なくともm(mは自然数)階床から(m+2)階床まで延びる第1の柱(例えば、後述の柱13)と、少なくともm階床から(m+1)階床まで延びる第2の柱(例えば、後述の柱14)と、当該柱間に架設された(m+1)階床の梁(例えば、後述の7階床梁33)と、当該梁の中間部の上に立設される(m+1)階の中間柱(例えば、後述の中間柱15)と、当該中間柱と前記第1の柱の(m+1)階の部分との間に亘って設けられた第1の壁(例えば、後述の壁52)と、を備え、当該第1の壁は、前記中間柱にかかる鉛直荷重を前記柱に伝達すること
が好ましい。
また、本発明の別の架構構造では、下層階から上層階の異なる階まで第1の柱と外周柱の第2の柱とが設けられ、前記第2の柱は前記第1の柱より低い階まで立設さ
れ、中間柱の最下階と第1の柱の最上階
が同一階であること
が好ましい。
【0013】
この発明によれば、(m+1)階の中間柱にかかる軸力は、第1の壁を介して同じ階の隣の第1の柱に鉛直せん断力として伝達される。よって、長期荷重はもちろんのこと、地震時に中間柱の軸力が増加した場合でも、軸力を壁の鉛直せん断力として隣の第1の柱に伝達し、さらに下層階の柱へ伝達することができる。
一般的に、壁は、地震時の水平力を伝達する構造体として設計されるが、中間柱と隣の第1の柱とを鉄筋コンクリートや鋼板の壁で接合することで、壁のせん断抵抗を利用して、同じ階の第1の柱に中間柱の軸力を鉛直せん断力として伝達する。
【0014】
よって、上述の請求項1と同様の効果を奏するとともに、中間柱の直下に位置する梁が負担する軸力を軽減できる。
【0015】
本発明では、前記第1の柱を挟んで前記中間柱の反対側に設けられた第3の柱(例えば、後述の柱12)と、当該第3の柱と前記中間柱との間に架設されて前記柱の柱頭部が接合される(m+2)階の梁(例えば、後述の8階床梁42)と、前記第3の柱と前記第1の柱との間に亘って設けられた第2の壁(例えば、後述の壁53)と、を備え、当該第2の壁は、前記第1の壁とともに前記中間柱にかかる鉛直荷重を前記第3の柱に伝達すること
が好ましい。
【0016】
この発明によれば、中間柱にかかる軸力は、第2の壁を介して同じ階の第3の柱にも鉛直せん断力として伝達される。よって、長期荷重はもちろんのこと、地震時に中間柱の軸力が増加した場合でも、壁の鉛直せん断抵抗を利用して、中間柱の軸力を第1の柱と第3の柱に合理的に伝達することができる。
また、中間柱にかかる鉛直荷重を柱に伝達させると、この柱に曲げモーメントが発生するが、第3の柱を第2の壁で柱に接合することで、この柱に作用する曲げモーメントを打ち消すことができる。