(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016975
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】非接触充電デバイス用可変利得基準アンテナ
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20161013BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20161013BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20161013BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
H02J50/10
H02J50/60
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-91075(P2015-91075)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-213423(P2015-213423A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2016年6月24日
(31)【優先権主張番号】14/269,701
(32)【優先日】2014年5月5日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599023978
【氏名又は名称】デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー・アール・トンプソン
【審査官】
赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/011729(WO,A1)
【文献】
特開2013−034292(JP,A)
【文献】
特開2014−057457(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0262002(US,A1)
【文献】
特表2012−533277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 50/10
H02J 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輛(12)のバッテリー(22)を充電するための非接触充電デバイス(16)であって、
前記非接触充電デバイス(16)は、
電気エネルギを前記車輛(12)の受電側共振器(20)に伝達するように形成された送電側共振器(30)と、
前記送電側共振器(30)から発せられた基準信号(54)を検出するように形成された基準アンテナ(52)とを備え、前記基準アンテナ(52)は、異物(36)の存在に対する感度が、前記基準アンテナ(52)と近接した異物(36)検出(FOD)アンテナよりも低いように形成されており、
前記非接触充電デバイス(16)は、また、
前記基準アンテナ(52)からの基準信号(54)を増幅するように形成された可変利得増幅器(56)を備える、デバイス(16)。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイス(16)であって、
前記増幅器(56)は、前記デバイス(16)が前記車輛(12)の前記バッテリー(22)を充電しているとき、選択された第1利得で作動し、前記デバイス(16)が前記車輛(12)の前記バッテリー(22)を充電していないとき、前記選択された第1利得よりも大きい選択された第2利得で作動する、デバイス(16)。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイス(16)であって、
前記増幅器(56)は、前記増幅器(56)の利得を複数の利得値に合わせて決定するように作動できる抵抗器ネットワーク(58)を含む、デバイス(16)。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイス(16)であって、
前記デバイス(16)は、複数の基準アンテナ(52)と、前記複数の基準アンテナ(52)のうちの一つ又はそれ以上を前記増幅器(56)に選択的に接続するように形成されたスイッチングデバイス(60)とを含む、デバイス(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、非接触充電デバイスに関し、更に詳細には、デバイスの基準アンテナからの基準信号を増幅するための可変利得増幅器を持つデバイスを提供することに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気自動車やハイブリッド電気自動車用の非接触充電システム即ち無線充電システムが提案されてきた。こうしたシステムは、充電デバイスを車輛に手作業で取り付けたり挿入したりする必要がないため、車輛の充電を行う上で便利である。電磁エネルギは、車両下の、代表的にはパーキング表面にあるベースユニットに配置された送電側共振器から、車輛に取り付けられた、代表的には車輛の下側に配置された受電側共振器に伝達され、即ち通信される。送電側共振器及び受電側共振器と近接した思わぬ異物、工具、玩具、又は愛玩動物に電磁エネルギが結合される場合があるため、こうした異物を検出するための手段を提供するのが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施例によれば、車輛のバッテリーを充電するための非接触充電デバイスが提供される。このデバイスは、送電側共振器と、異物検出器とを含む。送電側共振器は、車輛の受電側共振器に電気エネルギを伝達するように形成されている。異物検出器は、送電側共振器と近接した異物を検出するように形成されている。異物検出器は、送電側共振器上の異物を検出するように形成された垂直アンテナと、送電側共振器の側方にある(又は送電側共振器のそばにある)異物を検出するように形成された水平アンテナとを含む。
【0005】
別の実施例では、車輛のバッテリーを充電するための非接触充電デバイスが提供される。このデバイスは、送電側共振器と、基準アンテナと、可変利得増幅器とを含む。送電側共振器は、車輛の受電側共振器に電気エネルギを伝達するように形成されている。基準アンテナは、送電側共振器から発せられた基準信号を検出するように形成されている。基準アンテナは、異物の存在に対する感度が、基準アンテナと近接した異物検出(FOD)アンテナよりも低いように形成されている。可変利得増幅器は、基準アンテナからの基準信号を増幅するように形成されている。
【0006】
単なる非限定的例として与えられた好ましい実施例の以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことにより、この他の特徴及び利点が更に明瞭に明らかになるであろう。
【0007】
次に、本発明を、添付図面を参照して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施例に係る、車輛のバッテリーを充電するための、非接触充電システム及びデバイスの側面図である。
【
図2】
図2は、一実施例による
図1のデバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、車輛12のバッテリー22を充電するための車輛充電システムの非限定的例を例示する。以下、これをシステム10と呼ぶ。システム10は、全体として、非接触充電デバイスを含む。以下、これをデバイス16と呼ぶ。このデバイスは、代表的には、車輛12の下のガレージの床等のパーキング表面18に配置されたベースユニット14を含む。デバイス16は、全体として、ベースユニット14から、車輛12の下側24に配置された受電側共振器20まで電気エネルギを伝達するように形成されている。デバイス16は、制御パネル26を含んでいてもよい。制御パネル26は、例えば受電側共振器がベースユニット14上の中央にきたときにこれを表示し、バッテリー22の充電状態を表示し、ベースユニット14に送出される電気エネルギを調節するように形成されている。
【0010】
図2は、ベースユニット14の非限定的例を示す。ベースユニット14は、通常は保護カバーを含む。保護カバーは、単に例示を簡単にするため、示してない。ベースユニット14は、全体として、電磁エネルギ32を受電側共振器20(
図1参照)に向かって放出するように形成された送電側共振器30を含む。特定の物体を電磁エネルギ32に結合する、即ち露呈することは望ましくないと考えられる。従って、デバイス16には、送電側共振器30と近接した異物を検出するように形成された異物検出器34が設けられている。
【0011】
この非限定的例では、異物検出器34は、送電側共振器30上の、例えば送電側共振器30と受電側共振器20との間の異物を検出するように形成された垂直アンテナ38を含む。下側の送電側共振器30及び上側の受電側共振器20が形成する隙間領域42を越えて電磁エネルギ32の幾分かが移動し、即ち放出されることが観察される。従って、デバイス16は、有利には、送電側共振器30の側方にある(又は送電側共振器30のそばにある)、即ち隙間領域42の外側にある異物(例えば、異物36)を検出するように形成された水平アンテナ40を含んでいてもよい。一般的には、垂直アンテナ38は、受電側共振器20に向かって、また、ベースユニットの上方に、放出され、又は反射される電磁エネルギを優先的に検出する。一方、水平アンテナ40は、ベースユニット14から遠ざかる、半径方向又は水平方向と特徴付けられる方向に放出され、又は反射される電磁エネルギを優先的に検出する。
【0012】
例として、及び限定でなく、垂直アンテナ38は、基板44即ちデバイス16の回路基板アッセンブリ上に配置されていてもよい。垂直アンテナ38は、有利には、基板44の周囲内に配置されていてもよい。ここで、基板の周囲は、概ね、送電側共振器の形状によって決定される。このような形体により、垂直アンテナ38を、隙間領域42にある異物を検出する上で良好であるように配向できる。これとは対照的に、水平アンテナ40は、周囲に結合されていてもよいが、送電側共振器30に被さり、垂直アンテナに対して垂直であると特徴付けられる方向に配向されるように形成されていてもよい。このような形体により、水平アンテナ40を、パーキング表面18上で隙間領域42の外側にある異物を検出する上で良好であるように配向できる。
【0013】
別の例として、垂直アンテナ38は、垂直方向に差し向けられた素子46からなるアレイを含んでいてもよい。このような形体では、隙間領域42にある物体の大きさ、組成、及び/又は位置を良好に推定するため、垂直アンテナ38の感度及びフィーカスを変えることができる。これを行うため、基板44には、電気部品領域48が設けられていてもよい。この領域では、当業者に公知の様々な電気部品(図示せず)を、基板44に設けられた電気配線(図示せず)に接続でき、これによって、例えば異物検出器34のコントローラ又はプロセッサを形成する。同様に、水平アンテナ40は、水平方向に差し向けられた複数のエレメント50を含んでいてもよい。隙間領域42の外側にある物体の大きさ、組成物、及び/又は位置を良好に推定するため、これらのエレメントの機能的組み合わせを変えることができる。
【0014】
上文中に説明したように、車輛12のバッテリー22を充電するための非接触充電デバイス(デバイス16)は、全体として、電気エネルギ(即ち電磁エネルギ)を車輛12の受電側共振器20に伝達するように形成された送電側共振器30を含む。放出される電磁エネルギの量を決定するため、デバイス16のベースユニット14は、送電側共振器30から発せられた基準信号54を検出するように形成された基準アンテナ52を含んでいてもよい。垂直方向に差し向けられたエレメント46からなるアレイの一つのエレメントが、基準アンテナとすることができる。しかしながら、代表的な垂直エレメントよりも小型の基準アンテナが有利であるということが観察された。これは、異物が存在する場合、基準アンテナの大きさが小さい方が、こうした異物の存在に対する感度が低いためである。即ち、基準アンテナ52は、異物の存在に対し、垂直エレメントのうちの一つのエレメントとして使用するには望ましくないと考えられる所定の感度特性を持つのが好ましい。このように、基準アンテナ52は、好ましくは、異物36の存在に対する感度が、基準アンテナ52と近接した異物検出(FOD)アンテナ(例えば垂直アンテナ及び/又は水平アンテナ)よりも低い。
【0015】
基準アンテナ52に比較的小型のアンテナを使用するということは、基準アンテナ52の感度が比較的低いということを意味するため、デバイスが待機モードにある場合に基準アンテナを使用してもよい。待機モードは、デバイス16がバッテリー22を充電していないが、車輛が到着して受電側共振器がベースユニット14に近付き、充電を開始できることを「待ち受け」ている場合のモードである。待機モードでは、送電側共振器30は、近付いてくる車輛を検出できるように比較的少量のエネルギを放出するように作動されていてもよい。
【0016】
基準アンテナ52からの信号が低いため、基板44は、有利には、可変利得増幅器を含んでいてもよい。以下、これを増幅器56と呼ぶ。増幅器56は、基準アンテナ52によって検出された、即ち基準アンテナ52から出力された基準信号54を増幅するように形成されている。可変利得を提供することによって、基準アンテナ52からの信号のレベルを、異物検出器34のコントローラ又はプロセッサによって良好に分析されるレベルまでブースト(高めることが)できる。
【0017】
従って、増幅器56は、デバイス16が車輛12のバッテリー22を充電するとき、基準アンテナによって検出された信号が比較的強いように、選択された第1利得で作動できる。また、増幅器56は、デバイスが車輛のバッテリーを充電していないとき、基準アンテナ52によって検出された信号が比較的弱いため、選択された第1利得よりも大きい選択された第2利得で作動できる。増幅器56の利得は、当業者にわかるように、アンテナのフィードバックループの抵抗器の値によって決定されてもよい。このように、増幅器56は、増幅器56の利得を複数の利得の値に合わせて決定するように作動できる抵抗器ネットワーク58を含むのが有利である。例えば、抵抗器ネットワーク58の様々な抵抗器の値は、基準アンテナ52が出力する信号の強さに影響を及ぼす可能性のあるデバイス16の他の特徴の通常の変化を補償するため、デバイス16の較正手順中に個々に調節されてもよい。
【0018】
デバイス16は、更に、基板44に亘って配置された複数の基準アンテナ62と、これらの複数の基準アンテナ62のうちの一つ又はそれ以上を増幅器56に選択的に接続できるように形成されたスイッチングデバイス60とを含んでいてもよい。いずれが基準アンテナとして使用されるのかを選択することを、有利には、デバイス16の自己診断に使用でき、待機モードで作動している場合に小さな異物を良好に検出するのに使用できる。
【0019】
従って、車輛のバッテリーを充電するためのデバイス16とシステム10とが提供される。デバイス16は、垂直アンテナ38及び水平アンテナ40を含み、そのため、異物を多くの可能な方向で容易に検出でき、可変利得増幅器(増幅器56)を含み、そのため、送電側共振器30によって出力される基準信号を監視するために基準アンテナ52を更に良好に最適化できる。
【0020】
本発明をその好ましい実施例に関して説明したが、本発明をこれに限定しようとするものではなく、本発明は、以下の特許請求の範囲に記載の程度に限定されるものである。
【符号の説明】
【0021】
10 システム
12 車輛
14 ベースユニット
16 非接触充電デバイス
18 パーキング表面
20 受電側共振器
22 バッテリー
24 車輛12の下側
26 制御パネル