(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地中に埋設された撤去すべき既設杭の径及び長さより大きい径及び長さを有する円筒状のケーシングと、前記ケーシングをその中心軸の周りに軸回転させるケーシング駆動機構と、前記ケーシング駆動機構及びケーシングを昇降可能に支持するクレーンと、前記ケーシングに組み込まれる既設杭のつかみ機構とを備えた既設杭撤去装置において、前記つかみ機構は、前記ケーシングの上端部の外周面の対角位置にロッドを下向きにして設けられる2個のシリンダ機構と、各シリンダ機構のロッドの先端に連結され前記ケーシングの外周面に沿ってケーシングの下端部まで垂下する2本の昇降ロッドと、前記ケーシングの下端の開口縁に開閉可能に取り付けられる対をなすつかみ片と、各昇降ロッドの下端部と各つかみ片との間に設けられ各昇降ロッドを引き上げる力を各つかみ片を閉じる方向の力に変換し各昇降ロッドを押し下げる力を各つかみ片の開く方向の力に変換するつかみ片開閉機構とを備えており、前記の各つかみ片の先端部には複数の爪板が突設され、各爪板の先端部には既設杭の周囲の地盤を堀削しかつ既設杭を切断することが可能な刃が設けられており、前記つかみ片開閉機構は、前記の各昇降ロッドの下端部にそれぞれ連設された矩形状の駆動板と、前記の各つかみ片の両側端部につかみ片と一体に設けられる回動板と、前記の各駆動板を挟む両側位置にそれぞれ設けられ前記の各回動板を正逆各方向へ回動自由に支持する支持機構と、前記駆動板と前記回動板との間に設けられ駆動板の昇降動作を回動板の正逆各方向への回動動作に変換する変換機構とを含んでなる既設杭撤去装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビル、マンション、工場などの建築構造物は、その荷重を支持するために地中の固い地盤までコンクリート製の杭が埋め込まれている。建築構造物を建て替える場合、古い建物を解体撤去した後、地中深くに埋まった古い既設杭を引き抜くことが必要となる。出願人は先般、既設杭撤去装置として、
図6に示す構成のものを提案した(例えば特許文献1参照)。この既設杭撤去装置は、下端の開口縁に沿って複数の堀削刃110が設けられた円筒状のケーシング100と、ケーシング100をその中心軸の周りに軸回転させて堀削刃110により地盤を堀削するケーシング駆動機構101と、ケーシング100の内部の堀削刃110の上方位置に開閉動作可能に設けられた左右一対のつかみ片9A,9Bとを含むものである。
【0003】
前記の各つかみ片9A,9Bは、閉状態のときに突き合わされて上面開口のうつわ形状となるものであり、つかみ片開閉機構90により開閉駆動される。つかみ片開閉機構90は、ケーシング100の外周面に沿う半筒状の昇降板91と、昇降板91と各つかみ片9A,9Bとの間を連結する一対の作動ロッド92A,92Bと、ケーシング100の上端部に設けられる単一のシリンダ機構93と、シリンダ機構93のロッドと昇降板91との間を連結する1本の昇降ロッド94とで構成されている。
【0004】
上記した構成の既設杭撤去装置により、地中の既設杭を撤去するには、ケーシング100内に既設杭の上端が入るように既設杭撤去装置を移動させた後、ケーシング駆動機構101によりケーシング100をその中心軸の周りに軸回転させ、ケーシング100の下端の掘削刃110により既設杭の周辺の地盤を掘削してケーシング100を徐々に下降させる。ケーシング100の下降時、シリンダ機構93は昇降ロッド94及び昇降板91を介して作動ロッド92A,92Bを押し下げており、これによりつかみ片9A,9Bは開状態となっている。ケーシング100の下端が既設杭の下端の少し下方に達したところでケーシング駆動機構101の駆動を停止させ、掘削刃110による掘削を停止させる。
【0005】
その後、シリンダ機構93を駆動して昇降ロッド94及び昇降板91と一体に作動ロッド92A,92Bを引き上げると、各つかみ片9A,9Bが閉動作する。各つかみ片9A,9Bは、閉状態のとき、上面開口のうつわ形状となり、既設杭を掬うようにしてつかむことができる。昇降板91を引き上げた状態を保持することにより各つかみ片9A,9Bは閉成状態に保たれるので、図示しないクレーンによりつかみ片9A,9Bにより把持されたケーシング100内の既設杭をケーシング100と一体に地上まで引き上げる。
【0006】
一方のつかみ片9Aの先端部に既設杭を切断するための切断刃(図示せず)を設けることができ、この場合、堀削途中でシリンダ機構93を駆動して各つかみ片9A,9Bを閉動作させる。これにより、ケーシング100と一体回転する切断刃により既設杭が切断される。既設杭を寸断しつつ複数回に分けて引き上げることで、長くて重量が嵩む既設杭であっても地中より引き上げて撤去することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した構成の既設杭撤去装置において、つかみ片9A,9Bを開閉するのに、シリンダ機構93のロッドを伸縮動作させて1本の昇降ロッド94を昇降させ、この昇降ロッド94により昇降板91を引き上げたり押し下げたりするもので、引き上げ時や押し下げ時に昇降板91が傾動し、昇降板91の昇降、延いてはつかみ片9A,9Bの開閉に支障をきたすおそれがある。
【0009】
また、つかみ片9A,9Bはケーシング100の内部に設けられているため、故障時の対応や保守・点検が容易でなく、特に、つかみ片9A,9Bに既設杭を切断するための切断刃を設けた場合、保守、点検にさらなる手数がかかるだけでなく、地盤を削るための切削刃と既設杭を切断するための切断刃との2種類の刃を設けるため、構造が複雑化してコスト高となる。
【0010】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、つかみ片の開閉動作が円滑であり、そのうえ、故障時の対応や保守・点検が容易であり、構造の簡易化によりコストの低減を実現した既設杭撤去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による既設杭撤去装置は、地中に埋設された撤去すべき既設杭の径及び長さより大きい径及び長さを有する円筒状のケーシングと、前記ケーシングをその中心軸の周りに軸回転させるケーシング駆動機構と、前記ケーシング駆動機構及びケーシングを昇降可能に支持するクレーンと、前記ケーシングに組み込まれる既設杭のつかみ機構とを備えるものである。前記つかみ機構は、前記ケーシングの上端部の外周面の対角位置にロッドを下向きにして設けられる2個のシリンダ機構と、各シリンダ機構のロッドの先端に連結され前記ケーシングの外周面に沿ってケーシングの下端部まで垂下する2本の昇降ロッドと、前記ケーシングの下端の開口縁に開閉可能に取り付けられる対をなすつかみ片と、各昇降ロッドの下端部と各つかみ片との間に設けられ各昇降ロッドを引き上げる力を各つかみ片を閉じる方向の力に変換し各昇降ロッドを押し下げる力を各つかみ片の開く方向の力に変換するつかみ片開閉機構とを備えている。前記の各つかみ片の先端部には複数の爪板が突設され、各爪板の先端部には既設杭の周囲の地盤を掘削しかつ既設杭を切断することが可能な刃が設けられている。
【0012】
上記した構成の既設杭撤去装置により地中の既設杭を撤去するには、まず、撤去すべき既設杭の上端部を地表にわずかに露出させ、ケーシング内に既設杭の上端部が入るように既設杭撤去装置を移動させる。つぎに、ケーシング駆動機構によりケーシングをその中心軸の周りに軸回転させ、各つかみ片の先端部に設けられた複数の爪板の刃により既設杭の周辺の地盤を掘削しつつケーシングを徐々に下降させる。このケーシングの下降時、各シリンダ機構のロッドは突出して2本の昇降ロッドを一斉に押し下げており、これにより
つかみ片は開状態を保っているので、各爪板の刃により地盤が堀削される。ケーシングの下端が既設杭の下端の少し下方まで達したところでケーシングの軸回転を停止させ、地盤の掘削を停止する。
【0013】
つぎに、各シリンダ機構のロッドを引き込んで2本の昇降ロッドを一斉に引き上げ、これにより各つかみ片を閉動作させる。昇降ロッドを引き上げた状態が保持されることで、各つかみ片は閉じた状態を保っているので、爪板が既設杭をつかみ、クレーンによりケーシングとともに既設杭を引き上げる。
【0014】
既設杭を短く寸断しつつ撤去する場合は、ケーシングの下端が既設杭の適所まで達したところで、ケーシングを軸回転した状態で各シリンダ機構のロッドを引き込み、2本の昇降ロッドを一斉に引き上げてゆく。これにより、各つかみ片が閉動作するとき、各爪板の先端部の刃が既設杭の外周面に当接し、既設杭を切断してゆく。切断後はケーシングの軸回転を停止させ、寸断された既設杭をつかみ片の各爪板によりつかみ、クレーンによりケーシングとともに寸断した既設杭を引き上げる。
【0015】
また、この発明の
既設杭撤去装置においては、前記つかみ片開閉機構は、前記の各昇降ロッドの下端部にそれぞれ連設された矩形状の駆動板と、前記の各つかみ片の両側端部につかみ片と一体に設けられる回動板と、前記の各駆動板を挟む両側位置にそれぞれ設けられ前記の各回動板を正逆各方向へ回動自由に支持する支持機構と、前記駆動板と前記回動板との間に設けられ
駆動板の昇降動作を回動板の正逆各方向への回動動作に変換する変換機構とを含むものである。
【0016】
この
構成によると、2本の昇降ロッドの昇降動作に対応して各駆動板が一斉に昇降し、各昇降板の昇降動作が変換機構により各回動板の正逆各方向の回動動作に変換されるので、各回動板と一体に各つかみ片が回動して開閉動作する。
【0017】
前記変換機構として種々の態様のものが考えられるが、その一実施態様は、前記の各駆動板の両側縁の上下位置にそれぞれ半円形に切り欠かれた第1、第2の凹部と、前記の各回動板の内面の外周部に沿って第1、第2の各凹部に対応させて設けられた第1,第2の円筒状の突部とを備えており、各駆動板が決められた位置まで下降したとき第1の凹部に第1の突部が嵌まりかつ第2の凹部から第2の突部が押し出された状態となって各つかみ片を開き、各駆動板が決められた位置まで上昇したとき第2の凹部に第2の突部が嵌まりかつ第1の凹部から第1の突部が押し出された状態となって各つかみ片を閉じるものである。
【0018】
この実施態様によると、各駆動板が一斉に下降したときの各つかみ片の開く動作と、各駆動板が一斉に上昇したときの各つかみ片の閉じる動作とが、駆動板の第1、第2の各凹部に対して回動板の第1、第2の各突部の一方が嵌まり他方が押し出されることによって行われるとともに、各凹部への対応する突部の嵌合によりつかみ片が開いた状態及び閉じた状態に保たれるもので、構成が簡易にしてつかみ片の円滑かつ確実な開閉動作が実現される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、2本の昇降ロッドによってつかみ片を直接開閉動作させるようにし、また、ケーシングの下端の開口縁に取り付けた各つかみ片の先端部に複数の爪板を突設し、各爪板の先端部に地盤の切削と既設杭の切断との両方の機能を併せ持つ刃を設けたから、つかみ片の開閉動作が円滑であるうえに、故障時の対応や保守・点検が容易となり、構造の簡易化によりコストの低減を実現できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はこの発明の一実施例である既設杭撤去装置の全体構成を、
図2はこの既設杭撤去装置の主要部分の構成を、それぞれ示している。この既設杭撤去装置は、主として、建築構造物を立て替えるときに、地中に埋設されている既設杭(
図5においてPで示す)を地中より地上へ引き抜いて撤去するのに用いられるが、地中に埋まった既設杭以外の埋設物を寄せ集めてつかみ上げたり、地中に埋設されたコンクリート板などを切断してつかみ上げたりするなど、種々の撤去作業に用いることが可能である。
【0022】
図示例の既設杭撤去装置は、円筒状のケーシング1と、このケーシング1をその中心軸の周りに軸回転させるケーシング駆動機構5とを備えている。ケーシング1は、撤去すべき地中の既設杭の周囲を既設杭の全長にわたって囲むことが可能なように既設杭より大きな径を有するものである。また、ケーシング1は、既設杭の埋設深さまで既設杭を挿入することが可能なように既設杭より大きな長さを有している。
【0023】
ケーシング1の下端の開口縁には、つかみ機構3を構成する対をなすつかみ片2A,2Bが開閉可能に取り付けられている。各つかみ片2A,2Bは、
図3に示すように、ケーシング1の下端の開口縁に沿って湾曲する形状を有しており、各つかみ片2A,2Bの先端縁に沿って複数個の爪板4がボルト41の締付によって等間隔に固設されている。各爪板4はケーシング1の長さ方向に突出し、先端部に超硬合金チップやダイヤモンドなどの刃40を有している。各爪板4の刃40は、地中に埋設された既設杭の周囲の地盤を掘削して既設杭と地盤との関わりを切る機能と、地中に埋まった状態の既設杭の外周面に当接して既設杭を寸断する機能とを併せ持つものである。
【0024】
ケーシング1は鋼管などを用いて構成されている。ケーシング1の周面には所定の大きさの開口12が複数個形成されている。これらの開口12を通してケーシング1の内部を貫通する既設杭の状態を目視することが可能であり、また、空気や水などをケーシング1の内外に流通させることができる。
【0025】
ケーシング1の上端は、ケーシング1をその中心軸の周りに軸回転させるケーシング駆動機構5に連結されている。ケーシング駆動機構5は内部にケーシング1を回転させるための回転力を発生させるモータ(図示せず。)を有している。ケーシング駆動機構5の下部には、前記モータによって回転する環状の回転駆動軸51が突出し、この回転駆動軸51の下部に一体に設けられた連結部52に、ケーシング1の上端部の結合部53が連結されている。この連結部分を介して回転駆動軸51の回転運動がケーシング1に伝達され、また、クレーン10の起伏動作によってケーシング1及びケーシング駆動機構5が一体に昇降する。
【0026】
ケーシング1の上端部の外周面には、2個のシリンダ機構(以下、「第1のシリンダ機構6x」「第2のシリンダ機構6y」という。)がロッド(ピストンロッド)60を下向きにして、それぞれ支持金具64により対角位置に取り付けられている。なお、
図1〜
図4では、第2のシリンダ機構6yと第2のシリンダ6yを駆動源として昇降動作する各機構は図示されていないが、それらの機構の符号は第1のシリンダ機構6xを駆動源として昇降動作する各機構の符号とともに括弧書きで示してある。各シリンダ機構6x,6yは、既設杭をつかむためのつかみ機構3の駆動源であり、つかみ機構3は、ロッド60の先端に連結されケーシング1の外周面に沿ってケーシング1の下端部まで垂下する2本の昇降ロッド70x,70yと後述するつかみ片開閉機構7とを介して各つかみ片2A,2Bを開閉動作させる。なお、図中、72は昇降ロッド70x,70yをケーシング1の外周面上を上下方向に摺動自由に支持する昇降ガイド、73はシリンダ機構6x,6yのロッド60の先端部と昇降ロッド70x,70yの上端部とを連結する連結具である。
【0027】
各シリンダ機構6x,6yは同特性の油圧シリンダであって、内部のシリンダ室に対して作動油を導出入するための2本の管61,62が接続されている。第1の管61より作動油を導入されるとき、内部のピストンが下方へ押圧されてロッド60が下方へ突出する。このとき第2の管62から作動油が外部へ導出される。また、第2の管62より作動油が導入されるとき、内部のピストンが上方へ押圧されてロッド60が引っ込む。このとき第1の管61から作動油が外部へ導出される。各シリンダ機構6x,6yに対する作動油の導出入は油圧制御回路(図示せず)による制御の下に行われる。各シリンダ機構6x,6yは同期して作動し、各シリンダ機構6x,6yのロッド60が同じ速度で一斉に突出動作するとともに引込動作する。
【0028】
図1に示すクレーン10は、ケーシング1及びケーシング駆動機構5を吊下状態で昇降可能に支持するもので、ケーシング1内の既設杭をつかみ片2A,2Bによりつかんだ状態でケーシング1と一体に地上まで引き上げる。ケーシング駆動機構5の上部にはフック54が取り付けられ、このフック54がクレーン10に取り付けられたフック11に引っ掛けられている。なお、図中、13はケーシング1が地面を掘削中に歳差運動するのを防止するための振れ止め板である。
【0029】
各つかみ片2A,2Bは、
図3に示すように、ケーシング1の下端の開口縁に沿ってほぼ半周する湾曲形状のものであって、ケーシング1とほぼ同じ曲率で湾曲している。各つかみ片2A,2Bが開いた状態のとき、
図3及び
図5−1に示すように、ケーシング1の外周面と各つかみ片2A,2Bの外周面とはほぼ揃って連続している。この開放状態のとき、各爪板4は下方へ突き出ている。このとき各爪板4の刃40は鉛直方向を向いて切り立っているので、ケーシング1の軸回転に伴って地盤が堀削される。
【0030】
ケーシング1の軸回転が停止した状態でつかみ片2A,2Bが閉じたとき、各爪板4は、
図5−3に示されるように、各つかみ片2A,2Bと一体に内方へ傾き、爪板4同士が互いに接近する。これにより、既設杭Pの下端を掬うようにしてつかむことも、既設杭Pの外周面をつかむことも可能である。また、ケーシング1が軸回転した状態で、各つかみ片2A,2Bを開状態から閉状態へ移行させるとき、
図5−2に示すように、内方へ傾いた各爪板4の刃40が既設杭Pに外周面に対して斜めに当接することで、既設杭Pを切断することが可能である。
【0031】
各つかみ片2A,2Bは、ケーシング1の下端の開口縁に沿ってほぼ半周しており、各つかみ片2A,2Bの両側端縁は、
図3に示されるように、一定距離隔てて対向している。一方のつかみ2Aの両側端部には回動板21a,21aが、他方のつかみ片2Bの両側端部には回動板21b,21bが、それぞれ外側より溶接により一体接合されている。各回動板21a,21bは、前記昇降ロッド70x、70yの下端部に連設された矩形状の駆動板71x,71yを挟む両側に位置し、支持機構22a,22bによって正逆各方向へ回動自由に支持され、これにより各つかみ片2A,2Bが傾動するようになっている。
【0032】
図示例の支持機構22a,22bは、ケーシング1の下端部に各駆動板71x,71yを挟むように溶接により下向きに取り付けられた矩形状の支持板23a,23bと、各支持板23a,23bの外面に外向きに突設された短軸状の支持軸24a,24bと、各回動板21a,21bの内面、すなわち、支持板23a,23bと対向する面に形成され支持軸24a,24bを回動自由に支持する軸受穴25a,25bとで構成されている。支持軸24a,24bによって回動板21a,21bは正逆各方向へ回動自由に支持され、これによって各つかみ片2A,2Bが傾動して開閉動作する。
【0033】
上記した駆動板71x,71y、回動板21a,21b、支持機構22、及び後述する変換機構8は、つかみ片2A,2Bを開閉動作させるつかみ片開閉機構7を構成している。各駆動板71x,71yは、上下方向に長い矩形状をなすものであり、ケーシング1の下端の開口縁の対角位置に形成された矩形状の切欠部14内を昇降する。各切欠部14には、
図4に示すように、駆動板71x,71yの両側縁を上下方向に摺動自由に支持するコ字形のガイド枠15がそれぞれ取り付けられている。なお、駆動板71x,71yおよびガイド枠15は、ケーシング1の湾曲に合わせて湾曲させてもよい(
図4で一点鎖線で示す。)。
【0034】
つかみ片開閉機構7は、各昇降ロッド70x,70yの下端部と各つかみ片2A,2Bとの間に設けられ、各昇降ロッド70x、70yを引き上げる力を各つかみ片2A,2Bを閉じる方向の力に変換し、各昇降ロッド70x,70yの押し下げる力を各つかみ片2A,2Bを開く方向の力に変換するもので、
図5−1〜
図5−3に示された動作を行う変換機構8を具備している。
【0035】
変換機構8は、一方の駆動板71xと一方の回動板21a,21bとの間、及び反対側の他方の駆動板71yと他方の回動板21a,21bとの間に設けられており、各駆動版71x,71yの上下方向の昇降動作を各回動板21a,21bの正逆各方向への回動動作に変換するものである。
図示例の変換機構8は、各駆動板71x,71yの両側縁の上下位置に所定の距離隔ててそれぞれ半円形に切り欠かれた第1の凹部81a,81b及び第2の凹部82a,82bと、各回動板21a,21bの内面に第1、第2の各凹部81a,81b、82a,82bに対応させて所定の角度隔てて突設された円筒状をなす第1、第2の各突部83a,83b、84a,84bとを備えたものである。各突部83a,83b、84a,84bの径は各凹部81a,81b、82a,82bの内径とほぼ一致し、両者が互いに嵌まり合うようになっている。
【0036】
各駆動板71x、71yは、
図5−1に示される位置まで下降し、
図5−3に示される位置まで上昇するように、第1、第2の各シリンダ機構6x,6yの動作が制御されている。各駆動板71x,71yの昇降動作に応じて第1、第2の各凹部81a,81b、82a,82bに対して第1、第2の各突部83a,83b、84a,84bの一方が嵌まり込み、他方が押し出されることにより、各回動板21a,21bが正逆各方向に回動するようになっている。
【0037】
図5−1は、第1、第2の各シリンダ機構6x,6yのロッド60が突出して昇降ロッド70x、70yが一斉に押し下げられ、各駆動板71x,71yが決められた同じ位置まで下降した状態を示している。この状態では、各駆動板71x,71yの第1の凹部81a,81bに回動板21a,21bの第1の突部83a,83bが完全に嵌まり込んでおり、一方、第2の突部83a,83bが第2の凹部82a,82bから押し出されており、このとき、各つかみ片2A,2Bは開いた状態となっている。
【0038】
図5−3は、第1、第2の各シリンダ機構6x,6yのロッド60が引っ込まれて昇降ロッド70x,70yが一斉に引き上げられ、各駆動板71x,71yが決められた同じ位置まで上昇した状態を示している。この状態では、各駆動板71x,71yの第2の凹部82a,82bに回動板21a,21bの第2の突部84a,84bが完全に嵌まり込んでおり、一方、第1の突部83a,83bが第1の凹部81a,81bから押し出されており、このとき、各つかみ片2A,2Bは閉じた状態となっている。
【0039】
図5−2は、第1、第2の各シリンダ機構6x,6yのロッド60が半ば突出し、各駆動板71x,71yが同じ中間位置にある状態を示している。この状態では、各駆動板71x,71yの第1の凹部81a,81bに回動板21a,21bの第1の突部83a,83bが、第2の凹部82a,82bに第2の突部83a,83bが、わずかに浮いた状態で嵌まっており、各つかみ片2A,2Bは半ば閉じた状態となっている。
【0040】
なお、この実施例の変換機構8は、各駆動板71x,71yの両側縁に第1,第2の各凹部81a,81b、82a,82b、各駆動板71x,71yを挟む各回動板21a,21bに第1,第2の各突部83a,83b、84a,84bをそれぞれ形成して、各駆動板71x,71yの往復直線運動を回動板21a,21bの正逆各方向の回転運動に変換する構成のものであるが、変換機構8はこの実施例に示す態様のものに限らず、例えば、各駆動板71x,71yの両側縁にラック、各回動板21a,21bにラックに噛み合うピニオンギヤを設けたような構成のものであってもよい。
【0041】
上記した構成の既設杭撤去装置により地中の既設杭を撤去するには、まず、撤去すべき既設杭Pの上端部を地表にわずかに露出させ、ケーシング1内に既設杭Pの上端が入るように既設杭撤去装置を移動させる。つぎに、ケーシング駆動機構5によりケーシング1をその中心軸の周りに軸回転させ、各つかみ片2A,2Bの先端部に設けられた複数の爪板4の刃40により既設杭Pの周辺の地盤を掘削しつつケーシング1を徐々に下降させる。
図5−1は、ケーシング1を下降させるときのつかみ片2A,2Bの状態を示している。
【0042】
このケーシング1の下降時、第1、第2の各シリンダ機構6x,6yのロッド60は突出して2本の昇降ロッド70x,70yを一斉に押し下げており、各駆動板71x,71yの第1の凹部81a,81bに各回動板21a,21bの第1の突部83a,83bが完全に嵌まり込んだ状態となっている(
図5−1参照)。これにより、回動板21a,21bと一体の各つまみ片2A,2Bは開状態を保ち、各爪板4の刃40が地盤を掘削する。上記の動作では、2個のシリンダ機構6x,6yが同期して作動し、個別に昇降ロッド70x,70yを一斉に押し下げ、それぞれの押し下げ力を各昇降板71x,71yに直接伝えて各つかみ片2A,2Bを開動作させるので、つかみ片2A,2Bの開動作が円滑かつ安定して行われる。ケーシング1の下端が既設杭Pの下端の少し下方まで達したところでケーシング駆動機構5の駆動を停止させてケーシング1の軸回転を止め、地盤の掘削を停止する。
【0043】
つぎに、第1,第2の各シリンダ機構6x、6yはロッド60を引き込んで2本の昇降ロッド70x,70yを一斉に引き上げる。これにより、各駆動板71x,71yの第1の凹部81a,81bより各回動板21a,21bの第1の突部83a,83bが押し出され、一方、第2の凹部82a,82bに各回動板21a,21bの第2の突部84a,84bが完全に嵌まり込む(
図5−3参照)。上記の動作に伴って回動板21a,21bが回動し、この回動板21a,21bと一体に各つかみ片2A,2Bが閉動作する。
【0044】
上記の動作では、2個のシリンダ機構6x,6yが同期して作動し、個別に昇降ロッド70x,70yを一斉に引き上げ、それぞれの引き上げ力を各昇降板71x,71yに直接伝えて各つかみ片2A,2Bを閉動作させるので、つかみ片2A,2Bの閉動作が円滑かつ安定して行われる。昇降ロッド70x,70yが引き上げられた状態を保持することで、各つかみ片2A,2Bは閉じた状態に保たれ、爪板4により既設杭Pを掬うようにしてつかむもので、クレーン10によりケーシング1とともに既設杭Pを引き上げることができる。
なお、ケーシング1の引上げ時、つかみ片2A,2Bに既設杭Pの過度な荷重がかかったときは、昇降ロッド70x,70yの引張力を解除することで、つかみ片2A,2Bを開いて既設杭Pを容易に解放できる。これにより過度な荷重によってつかみ片2A,2Bが破壊されるおそれはない。
【0045】
既設杭Pを短く寸断しつつ撤去する場合は、ケーシング1の下端が既設杭Pの適所まで達したところで、ケーシング1を軸回転した状態で第1,第2の各シリンダ機構6x,6yのロッド60を引き込み、2本の昇降ロッド70x,70yを一斉に引き上げてゆく。これにより、各つかみ片2A,2Bが閉動作するとき、各爪板4の先端部の刃40が既設杭Pの外周面に当接するもので(
図5−2参照)、昇降ロッド70x、70yを引き続き引き上げることにより既設杭Pを切断してゆく。切断後はケーシング駆動機構5の駆動を停止させてケーシング1の軸回転を止め、寸断された既設杭をつかみ片2A,2Bの各爪板4によりつかみ、クレーン10によりケーシング1とともに寸断した既設杭を引き上げる。
【0046】
上記した既設杭撤去装置の構成によると、第1、第2の各シリンダ機構6x,6yに連結された2本の昇降ロッド70x,70yによってつかみ片2A,2Bを直接開閉動作させるので、つかみ片2A,2Bの開閉動作が円滑に行われる。また、つかみ片2A,2Bはケーシング1の下端の開口縁に取り付け、各つかみ片2A,2Bの先端部に地盤の切削と既設杭の切断との両方の機能を併せ持つ刃40を有する複数の爪板4を設けているので、ケーシングの内部につかみ片を設け、ケーシングの下端とつかみ片とに地盤の堀削のための刃と既設杭の切断のための刃を個別に設けた従来例と比較して、故障時の対応や保守・点検が容易となり、構造の簡易化によりコストの低減が実現される。
【解決手段】既設杭撤去装置を構成する既設杭のつかみ機構3は、ケーシング1の上端部の外周面の対角位置に設けられる2個のシリンダ機構6x,6yと、各シリンダ機構6x,6yのロッドの先端に連結されケーシング1の下端部まで垂下する2本の昇降ロッド70x,70yと、ケーシング1の下端の開口縁に開閉可能に取り付けられるつかみ片2A,2Bと、各昇降ロッド70x,70yを引き上げる力及び押し下げる力を各つかみ片2A,2Bを閉じる方向の力及び開く方向の力に変換するつかみ片開閉機構7とを備えている。各つかみ片2A,2Bの先端部には複数の爪板4が突設され、各爪板4の先端部には既設杭の周囲の地盤を切削しかつ既設杭を切断するための刃40が設けられている。