特許第6017003号(P6017003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

特許6017003マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法
<>
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000008
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000009
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000010
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000011
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000012
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000013
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000014
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000015
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000016
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000017
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000018
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000019
  • 特許6017003-マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017003
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】マイクロストリップアンテナ、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/08 20060101AFI20161013BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20161013BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   H01Q21/08
   H01Q13/08
   H01P11/00
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-198748(P2015-198748)
(22)【出願日】2015年10月6日
【審査請求日】2016年5月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】細野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】官 寧
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−041807(JP,A)
【文献】 特開2002−151945(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/031173(WO,A1)
【文献】 特開昭57−188104(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102004044120(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、前記誘電体基板の表面に形成されたアンテナ導体であって、給電線路と複数の放射素子とを有するコムライン型のアンテナ導体と、前記誘電体基板の裏面に形成されたグランド導体と、を備え、
前記複数の放射素子の少なくとも1つは、前記給電線路上の同一の点から前記給電線路の一方の側と他方の側とに突出した1対のスタブにより構成されており、
前記1対のスタブの各々は、付根に上記給電線路の出力端側が開口した切り込みが形成された長方形状の導体であり、
前記切り込みの上記給電線路と直交する方向の幅は、前記複数の放射素子からの放射電力の分布が一様分布、Taylor分布、又はChebyshev分布になるように設定されている、
ことを特徴とするマイクロストリップアンテナ。
【請求項2】
前記1対のスタブの一方は、前記給電線路の中心軸に対して前記1対のスタブの他方と線対称である、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロストリップアンテナ。
【請求項3】
誘電体基板と、前記誘電体基板の表面に形成されたアンテナ導体であって、給電線路と複数の放射素子とを有するコムライン型のアンテナ導体と、前記誘電体基板の裏面に形成されたグランド導体と、を備えたマイクロストリップアンテナの製造方法において、
前記複数の放射素子の少なくとも1つは、前記給電線路上の同一の点から前記給電線路の一方の側と他方の側とに突出した1対のスタブにより構成されており、
前記1対のスタブの各々は、付根に上記給電線路の出力端側が開口した切り込みが形成された長方形状の導体であり、
前記切り込みの上記給電線路と直交する方向の幅を、前記複数の放射素子からの放射電力の分布が一様分布、Taylor分布、又はChebyshev分布になるように設定する工程を含む、
ことを特徴とするマイクロストリップアンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コムライン型のアンテナ導体を備えたマイクロストリップアンテナに関する。また、そのようなマイクロストリップアンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の高速化及び大容量化、並びに、無線機器の小型化の進展に伴い、ミリ波帯(30GHz以上300GHz以下)で動作するアンテナに対する需要が高まっている。ミリ波帯で動作するアンテナとしては、例えば、コムライン型のアンテナ導体を備えたマイクロストリップアンテナが知られている。ここで、コムライン型のアンテナ導体とは、幹となる給電線路に複数の放射素子が枝状に付加されたアンテナ導体のことを指す。
【0003】
このようなマイクロストリップアンテナにおいては、高い放射利得と低いサイドローブレベルとを実現するために、各放射素子の結合量が所望の値に一致するように各放射素子の形状及び配置を設計することが重要になる。
【0004】
例えば、アンテナ導体がN個の放射素子を備えている場合、利得を最大化するためには、各放射素子の放射電力(その放射素子から放射される電磁波の電力)を一様分布とする(各放射素子の放射電力をそれぞれ1/Nにする)ことが求められる。この場合、各放射素子の結合量をそれぞれ1/N、1/(N−1)、1/(N−2)、…、1/3、1/2、1にすることになる。なお、各放射素子の結合量は、その放射素子のSパラメータを用いて以下の式に従って算出することができる。各放射素子の放射電力は、その放射素子の入力電力(その放射素子に入力される高周波電流の電力)に、その放射素子の結合量を乗じたものになる。
【0005】
結合量=1−|S11|−|S21|
特許文献1〜2には、コムライン型のアンテナ導体を備えたマイクロストリップアンテナ(マイクロストリップアレーアンテナ)が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載のマイクロストリップアンテナは、給電線路の一方の側と他方の側とに交互に突出した複数の放射素を備えている。また、特許文献1には、各放射素子の幅を変更することによって、各放射素子の結合量を調整する調整方法が記載されている。
【0007】
特許文献2に記載のマイクロストリップアンテナは、給電線路の一方の側と他方の形とに交互に設けられた複数の放射素子を備えている。また、特許文献2には、給電線路と各放射素子とを接続するための副給電線路にスタブを設けることによって、各放射素子の幅を変更することなく、各放射素子の結合量を大きくする調整方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−314329号(公開日:2002年10月25日)
【特許文献2】特開2010− 41090号(公開日:2010年 2月18日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のマイクロストリップアンテナのように、給電線路の一方の側と他方の側とに交互に突出した放射素子を備えたマイクロストリップアンテナにおいては、以下の問題があった。
【0010】
すなわち、このようなマイクロストリップアンテナにおいては、各放射素子の幅及び長さ、並びに、各放射素子に隣接する他の放射素子との間隔を変更することによって、各放射素子の結合量を調整することができる。しかしながら、その調整範囲は、ごく限られたものであった。例えば、20個の放射素子を備えたマイクロストリップアンテナにおいて各放射素子の放射電力を一様分布とする場合、給電線路の入力端に最も近い放射素子の結合量を1/20程度とする必要が生じるが、このような小さい結合量を有する放射素子を実現することは困難であった。
【0011】
また、特許文献2に記載の調整方法は、各放射素子を給電線路に接続するための副給電線路にスタブを設けることによって、その放射素子の結合量を大きくするためのものである。したがって、上記のような小さい結合量を有する放射素子を実現するという問題の解決に資するものではなかった。
【0012】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、結合量の調整範囲の下限値が従来よりも小さい放射素子を含むマイクロストリップアンテナを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るマイクロストリップアンテナは、誘電体基板と、前記誘電体基板の表面に形成されたアンテナ導体であって、給電線路と複数の放射素子とを有するコムライン型のアンテナ導体と、前記誘電体基板の裏面に形成されたグランド導体と、を備え、
前記複数の放射素子の少なくとも1つは、前記給電線路上の同一の点から前記給電線路の一方の側と他方の側とに突出した1対のスタブにより構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、給電線路の一方の側と他方の側とに突出した1対のスタブ(両側スタブ)により構成された放射素子において、スタブの形状又は配置を変化させたときに得られる結合量の変動範囲と、給電線路の一方の側に突出した単一のスタブ(片側スタブ)により構成された放射素子において、スタブの形状又は配置を変化させときに得られる結合量の変動範囲とを比べると、前者の下限値の方が後者の下限値よりも小さくなる。
【0015】
このため、上記の構成によれば、結合量の調整範囲の下限値が従来よりも小さい放射素子を含むマイクロストリップアンテナを実現することができる。
【0016】
本発明に係るマイクロストリップアンテナによれば、前記1対のスタブの各々は、付根に上記給電線路の出力端側が開口した切り込みが形成された長方形状の導体である、
ことが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、上記切り込みの形状を変更することによって、給電線路の一方の側と他方の側とに突出した1対のスタブ(両側スタブ)により構成された放射素子の結合量の調整範囲を更に広げることができる。
【0018】
本発明に係るマイクロストリップアンテナによれば、前記1対のスタブの一方は、前記給電線路の中心軸に対して前記1対のスタブの他方と線対称である、ことが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、給電線路の一方の側に突出したスタブの形状と給電線路の他方の側に突出したスタブの形状とを独立に変更する必要がないので、所望の結合量を得るための放射素子の設計を簡単化することができる。
【0020】
なお、上記マイクロストリップアンテナの製造方法についても、本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、結合量の調整範囲の下限値が従来よりも小さい放射素子を含むマイクロストリップアンテナを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、第1の実施形態に係るマイクロストリップアンテナの平面図であり、(b)は、同マイクロストリップアンテナの側面図である。
図2図1のマイクロストリップアンテナが備える放射素子の平面図である。
図3】(a)は、図1のマイクロストリップアンテナが備える放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子を構成するスタブの幅と結合量との相関を示すグラフである。
図4】(a)は、図1のマイクロストリップアンテナが備える放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子を構成するスタブの長さと結合量との相関を示すグラフである。
図5】(a)は、図1のマイクロストリップアンテナが備える放射素子の平面図であり、(b)は、互いに隣接する放射素子間の間隔と結合量との相関を示すグラフである。
図6】(a)は、図1のマイクロストリップアンテナが備える放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子に形成される切り込みの長さと結合量との相関を示すグラフである。
図7】(a)は、図1のマイクロストリップアンテナが備える放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子に形成される切り込みの幅と結合量との相関を示すグラフである。
図8】(a)は、比較例に係る放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子を構成するスタブの幅と結合量との相関を示すグラフである。
図9】(a)は、比較例に係る放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子を構成するスタブの幅と結合量との相関を示すグラフである。
図10】(a)は、比較例に係る放射素子の平面図であり、(b)は、互いに隣接する放射素子間の間隔と結合量との相関を示すグラフである。
図11】(a)は、比較例に係る放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子に形成される切り込みの長さと結合量との相関を示すグラフである。
図12】(a)は、比較例に係る放射素子の平面図であり、(b)は、その放射素子に形成される切り込みの幅と結合量との相関を示すグラフである。
図13】(a)は、第2の実施形態に係るマイクロストリップアンテナの平面図であり、(b)は、同マイクロストリップアンテナの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪第1の実施形態≫
〔マイクロストリップアンテナの構成〕
本発明の第1の実施形態に係るマイクロストリップアンテナ10の構成について、図1を参照して説明する。図1において、(a)は、マイクロストリップアンテナ10の平面図であり、(b)は、マイクロストリップアンテナ10の側面図である。
【0024】
マイクロストリップアンテナ10は、図1に示すように、誘電体基板11、アンテナ導体12、グランド導体13を備えている。
【0025】
誘電体基板11は、長方形の主面を有する板状の部材であり、主に樹脂等の誘電体からなる。本実形態においては、液晶ポリマーからなるLCP(Liquid Crystal Polymer)基板を、誘電体基板11として用いる。
【0026】
なお、本明細書においては、誘電体基板11の表面(ひょうめん)を構成する6つの面のうち、最大の面積を有する2つの面を「主面」と呼び、その他4つの面を「端面」と呼ぶ。また、誘電体基板11の2つの主面を区別する必要があるときには、一方の主面を「表面」(おもてめん)と呼び、他方の主面を「裏面」と呼ぶ。
【0027】
アンテナ導体12は、誘電体基板11の表面に形成された箔状部材であり、金属などの導体からなる。本実施形態においては、誘電体基板11の表面に形成された銅箔を、アンテナ導体12として用いる。
【0028】
アンテナ導体12は、給電線路12aと複数(本実施形態においては20個)の放射素子12b1〜12b20とを備えた、コムライン型のアンテナ導体である。なお、以下の説明においては、放射素子12b1〜12b20の各々のことを、単に「放射素子12b」とも記載する。
【0029】
給電線路12aは、アンテナ導体12の幹となる帯状の導体であり、誘電体基板11の表面の中心(2つの対角線の交点)を通るように、かつ、誘電体基板11の表面の長辺と平行になるように、誘電体基板11の表面に形成される。
【0030】
給電線路12aは、誘電体基板11を介して対向するグランド導体13と共にマイクロストリップラインを構成する。すなわち、給電線路12aの入力端(図示した座標系においてy軸負方向側の端部)に入力された高周波電流は、このマイクロストリップライン内を給電線路12aの出力端(図示した座標系においてy軸正方向側の端部)に向かって伝送される。
【0031】
給電線路12aには、入力端側から順に、放射素子12b1、放射素子12b2、…、放射素子12b20が付加されている。各放射素子12bは、両側スタブ、すなわち、給電線路12a上の同一の点から、給電線路12aの一方の側(図示した座標系においてx軸負方向側)と他方の側(図示した座標系においてx軸正方向側)とに突出した1対のオープンスタブ(以下、単に「スタブ」と記載する)12bL,12bRにより構成されている。例えば、放射素子12b10は、給電線路12aの一方の側に突出したスタブ12b10Lと、給電線路12の他方の側に突出したスタブ12b10Rとにより構成されている。
【0032】
グランド導体13は、誘電体基板11の裏面に形成された箔状部材であり、金属などの導体からなる。本実施形態においては、誘電体基板11の裏面全体を覆う銅箔を、グランド導体13として用いる。
【0033】
〔各放射素子の構成〕
次に、マイクロストリップアンテナ10が備える各放射素子12bの構成について、図2を参照してより具体的に説明する。図2は、放射素子12bの周辺を拡大したマイクロストリップアンテナ10の拡大平面図である。
【0034】
上述したとおり、放射素子12bは、給電線路12a上の同一の点から、給電線路12aの一方の側と他方の側とに突出した1対のオープンスタブ12bL,12bRにより構成されている。本実施形態においては、図2に示すように、切り込み12bL1,12bR1が形成された長方形状のスタブ12bL,12bRを放射素子12bとして用いている。
【0035】
給電線路12aの一方の側(図示した座標系においてx軸負方向側)に突出したスタブ12bLは、給電線路12aからその(給電線路12aの)中心軸Nと垂直な方向に伸びている。すなわち、スタブ12bLの互いに対向する一組の辺が給電線路12aの中心軸Nと垂直になり、スタブ12bLの互いに対向するもう一組の辺が給電線路12aの中心軸Nと平行になるように配置されている。
【0036】
一方、給電線路12aの他方の側(図示した座標系においてx軸正方向側)に突出したスタブ12bRは、給電線路12aからその(給電線路12aの)中心軸Nと垂直な方向に伸びている。すなわち、スタブ12bRの互いに対向する一組の辺が給電線路12aの中心軸Nと垂直になり、スタブ12bRの互いに対向するもう一組の辺が給電線路12aの中心軸Nと平行になるように配置されている。
【0037】
切り込み12bL1は、給電線路12aの中心軸Nに直交する、スタブ12bLの1組の辺のうち、給電線路12aの出力端側の辺に対して開口した長方形の切り込みであり、スタブ12bLの付根に形成されている。
【0038】
一方、切り込み12bR1は、給電線路12aの中心軸Nに直交する、スタブ12bRの1組の辺のうち、給電線路12aの出力端側の辺に対して開口した長方形の切り込みであり、スタブ12bRの付根に形成されている。
【0039】
なお、本明細書においては、給電線路12aの中心軸Nと垂直になるスタブ12bL,12bRの1組の辺の長さを、それぞれ、スタブ12bL,12bRの「長さ」と記載し、給電線路12aの中心軸Nと平行になるスタブ12bL,12bRのもう1組の辺の長さを、それぞれ、スタブ12bL,12bRの「幅」と記載する。また、本明細書においては、給電線路12aの中心軸Nと垂直になる切り込み12bL1,12bR1の1組の辺の長さを、それぞれ、切り込み12bL1,12bR1の「幅」と記載し、給電線路12aの中心軸Nと平行になる切り込み12bL1,12bR1のもう1組の辺の長さを、それぞれ、切り込み12bL1,12bR1の「長さ」と記載する。
【0040】
また、本実施形態においては、図2に示すように、スタブ12bL,12bRの形状を、切り込み12bL1,12bR1も含めて、給電線路12aの中心軸Nに対して線対称としている。このため、スタブ12bRの長さ及び幅は、それぞれ、スタブ12bLの長さL及び幅Wと等しくなり、切り込み12bR1の長さ及び幅は、それぞれ、切り込み12bL1の長さL’及び幅W’と等しくなる。
【0041】
〔各放射素子の結合量〕
マイクロストリップアンテナ10において、各放射素子12bの結合量(その放射素子12bから放射される電磁波の電力/その放射素子に入力される高周波電流の電力)は、下記のパラメータと相関している。したがって、下記のパラメータの値を適宜設定することによって、各放射素子12bの放射電力(その放射素子12bから放射される電磁波の電力)を所望の値に一致させることができる。
【0042】
(1)その放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRの長さL、
(2)その放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRの幅W、
(3)その放射素子12b(例えば放射素子12b1)の中心軸Mと、その放射素子12bに隣接する放射素子12b(例えば放射素子12b2)の中心軸M’との間隔D、
(4)その放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRに形成された切り込み12bL1,12bR1の長さL’、
(5)その放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRに形成された切り込み12bL1,12bR1の幅W’。
【0043】
図1に示すマイクロストリップアンテナ10において、放射電力の一様分布を実現する、すなわち、各放射素子12bの放射電力を下記の表1に示す値に一致させるためには、各放射素子12bに関するパラメータW,L,D,L’,W’を、例えば、下記の表1に示す値に設定すればよい。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、上記の表1には、各放射素子12bの結合量及び放射電力の他に、各放射素子12bの入力電力(その放射素子12bに入力される高周波電流の電力)及び残電力(その放射素子12bに入力される高周波電流の電力−その放射素子から放射される電磁波の電力)を示している。結合量、入力電力、放射電力、残電力の間には、以下の関係がある(放射素子12b’は、放射素子12bに隣接する2つの放射素子のうち、放射素子12bよりも入力端側にある放射素子のことを指す)。
【0046】
放射素子12bの入力電力=放射素子12b’の残電力、
放射素子12bの放射電力=放射素子12bの入力電力×放射素子12bの結合量、
放射素子12bの残電力=放射素子12bの入力電力−放射素子12bの放射電力。
【0047】
また、図1に示すマイクロストリップアンテナ10において、放射電力のTaylor分布を実現する、すなわち、各放射素子12bの放射電力を下記の表2に示す値に一致させるためには、各放射素子12bに関するパラメータW,L,D,L’ ,W’を、例えば、下記の表2に示す値に設定すればよい。
【0048】
【表2】
【0049】
さらに、図1に示すマイクロストリップアンテナ10において、放射電力のChebyshev分布を実現する、すなわち、各放射素子12bの放射電力を下記の表3に示す値に一致させるためには、各放射素子12bに関するパラメータW,L,D,L’,W’を、例えば、下記の表3に示す値に設定すればよい。
【0050】
【表3】
【0051】
〔スタブの幅と結合量との相関〕
次に、放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRの幅Wと、その放射素子12bの結合量との相関について、図3を参照して説明する。
【0052】
図3の(b)は、スタブ12bL,12bRの幅Wと、放射素子12bの結合量との相関を示すグラフである。なお、このグラフは、図3の(a)に示すように、(1)放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRの長さLを1.32mm、(2)互いに隣接する放射素子12b,12b’間の間隔Dを1.64mm、(3)放射素子12bに形成される切り込み12bL1,12bR1の幅W’を0.1mm、(4)放射素子12bに形成される切り込み12bL1,12bR1の長さL’を0.1mmに設定したときに得られたものである。なお、図3の(b)の示すグラフの横軸は、上記の幅Wを、動作帯域の中心周波数(60GHz)に対応する自由空間波長λ(5.0mm)で規格化したものである。
【0053】
図3の(b)によれば、以下のことが分かる。すなわち、W/λを0.05以下に設定すれば、結合量を0.1以下に抑えることができる。例えば、アンテナ導体12に備わる放射素子12bの数が多い場合、給電線路12aの入力端に近い放射素子12bの結合量を0.1以下に抑える必要が生じることがあるが、W/λを0.05以下に設定すれば、この要求に応えることができる。
【0054】
図8の(a)に示すように放射素子を単一のスタブ(片側スタブ)により構成した場合、スタブの幅Wと結合量との相関は、図8の(b)に示すグラフのようになる。
【0055】
図3の(b)と図8の(b)とを比較すれば、以下のことが分かる。すなわち、放射素子を片側スタブにより構成した場合、W/λを0.05以下に設定しても、放射素子12bを両側スタブにより構成した場合のように、結合量を0.1以下に抑えることができない。なお、放射素子を片側スタブにより構成した場合であっても、W/λを0.33以上に設定すれば、結合量を0.1以下に抑えることができる。ただし、この場合、スタブの幅が大きくなるので、アンテナサイズが大型化するという問題を生じる。
【0056】
〔スタブの長さと結合量との相関〕
次に、放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRの長さLと、その放射素子12bの結合量との相関について、図4を参照して説明する。
【0057】
図4の(b)は、スタブ12bL,12bRの長さLと、放射素子12bの結合量との相関を示すグラフである。なお、このグラフは、図4の(a)に示すように、(1)スタブ12bL,12bRの幅Wを0.6mm、(2)隣接する放射素子12b’との間隔Dを1.64mm、(3)切り込み12bL1,12bR1の幅W’を0.1mm、(4)切り込み12bL1,12bR1の長さL’を0.1mmに設定したときに得られたものである。なお、図4の(b)の示すグラフの横軸は、上記の幅Lを、動作帯域の中心周波数(60GHz)に対応する自由空間波長λ(5.0mm)で規格化したものである。
【0058】
図4の(b)によれば、以下のことが分かる。すなわち、L/λを0.18以上0.24以下に設定すれば、結合量を0.1以下に抑えることができる。例えば、アンテナ導体12に備わる放射素子12bの数が多い場合、給電線路12aの入力端に近い放射素子12bの結合量を0.1以下に抑える必要が生じることがあるが、L/λを0.18以上0.24以下にすれば、この要求に応えることができる。
【0059】
図9の(a)に示すように放射素子を単一のスタブ(片側スタブ)により構成した場合、スタブの長さLと結合量との相関は、図9の(b)に示すグラフのようになる。
【0060】
図4の(b)と図9の(b)とを比較すれば、以下のことが分かる。すなわち、放射素子を片側スタブにより構成した場合、L/λを0.18以上0.24以下に設定しても、放射素子12bを両側スタブにより構成した場合のように、結合量を0.1以下に抑えることができない。なお、放射素子を片側スタブにより構成した場合であっても、W/λを0.435以上に設定すれば、結合量を0.1以下に抑えることができる。ただし、この場合、スタブの幅が大きくなるので、アンテナサイズが大型化するという問題を生じる。
【0061】
〔隣接する放射素子間との間隔と結合量との相関〕
次に、隣接する放射素子12b’間の間隔Dと、放射素子12bの結合量との相関について、図5を参照して説明する。
【0062】
図5の(b)は、隣接する放射素子12b’間の間隔Dと、放射素子12bの結合量との相関を示すグラフである。なお、このグラフは、図5の(a)に示すように、(1)スタブ12bL,12bRの幅Wを0.6mm、(2)スタブ12bL,12bRの長さLを1.32mm、(3)切り込み12bL1,12bR1の幅W’を0.1mm、(4)切り込み12bL1,12bR1の長さL’を0.1mmに設定したときに得られたものである。なお、図5の(b)の示すグラフの横軸は、上記の間隔Dを、動作帯域の中心周波数(60GHz)に対応する自由空間波長λ(5.0mm)で規格化したものである。
【0063】
図5の(b)によれば、以下のことが分かる。すなわち、D/λを0.17以上0.32以下に設定すれば、結合量を0.1以下に抑えることができる。例えば、アンテナ導体12に備わる放射素子12bの数が多い場合、給電線路12aの入力端に近い放射素子12bの結合量を0.1以下に抑える必要が生じることがあるが、D/λを0.17以上0.32以下に設定すれば、この要求に応えることができる。
【0064】
図10の(a)に示すように放射素子を単一のスタブ(片側スタブ)により構成した場合、隣接する放射素子との間隔Dと結合量との相関は、図10の(b)に示すグラフのようになる。
【0065】
図5の(b)と図10の(b)とを比較すれば、以下のことが分かる。すなわち、放射素子を片側スタブにより構成した場合、D/λを0.17以上0.32以下に設定しても、放射素子12bを両側スタブにより構成した場合のように、結合量を0.1以下に抑えることができない。それどころか、放射素子を片側スタブにより構成した場合、D/λを図示した範囲の如何なる値に設定しても、結合量を0.1以下に抑えることができない。すなわち、放射素子を片側スタブにより構成した場合、給電線路12aの入力端に近い放射素子12bの結合量を0.1以下に抑えるという上記の要求に応えることができない。
【0066】
〔スタブに形成された切り込みの長さとその放射素子の結合量との相関〕
次に、放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRに形成された切り込み12bL1,12bR1の長さL’と、その放射素子12bの結合量との相関について、図6を参照して説明する。
【0067】
図6の(b)は、切り込み12bL1,12bR1の長さL’と、放射素子12bの結合量との相関を示すグラフである。なお、このグラフは、図6の(a)に示すように、(1)スタブ12bL,12bRの幅Wを0.6mm、(2)スタブ12bL,12bRの長さLを1.32mm、(3)隣接する放射素子12b’との間隔Dを1.64mm、(4)切り込み12bL1,12bR1の幅W’を0.1mmに設定したときに得られたものである。なお、図6の(b)の示すグラフの横軸は、上記の長さL’を、動作帯域の中心周波数(60GHz)に対応する自由空間波長λ(5.0mm)で規格化したものである。
【0068】
図6の(b)によれば、以下のことが分かる。すなわち、切り込み12bL1,12bR1の長さL’を0.02≦L’/λ≦0.1の範囲で変化させた場合、結合量は、0.151≦結合量≦0.170の範囲で変化する。すなわち、放射素子12bを両側スタブにより構成した場合、結合量を0.16程度の小さい値に設定することができる。
【0069】
図11の(a)に示すように放射素子を単一のスタブ(片側スタブ)により構成した場合、スタブに形成される切り込みの長さL’と結合量との相関は、図12の(b)に示すグラフのようになる。
【0070】
図6の(b)と図11の(b)とを比較すれば、以下のことが分かる。すなわち、放射素子を片側スタブにより構成した場合、切り込みの長さL’を0.02≦L’/λ≦0.1の範囲で変化させた場合、結合量は、0.89≦結合量≦0.935の範囲で変化する。つまり、放射素子を片側スタブにより構成した場合、放射素子12bを両側スタブにより構成した場合のように、結合量を0.16程度の小さい値に設定することができない。
【0071】
〔スタブに形成された切り込みの幅と結合量との相関〕
次に、放射素子12bを構成するスタブ12bL,12bRに形成された切り込み12bL1,12bR1の幅W’と、放射素子12bの結合量との相関について、図7を参照して説明する。
【0072】
図7の(b)は、切り込み12bL1,12bR1の幅W’と、放射素子12bの結合量との相関を示すグラフである。なお、このグラフは、図7の(a)に示すように、(1)スタブ12bL,12bRの幅Wを0.6mm、(2)スタブ12bL,12bRの長さLを1.32mm、(3)隣接する放射素子12b’との間隔Dを1.64mm、(4)切り込み12bL1,12bR1の長さL’を0.1mmに設定したときに得られたものである。なお、図7の(b)の示すグラフの横軸は、上記の幅W’を、動作帯域の中心周波数(60GHz)に対応する自由空間波長λ(5.0mm)で規格化したものである。
【0073】
図7の(b)によれば、以下のことが分かる。すなわち、切り込み12bL1,12bR1の幅W’を0.02≦W’/λ≦0.08の範囲で変化させた場合、結合量は、0.1≦結合量≦0.9の範囲で変化する。すなわち、放射素子12bを両側スタブにより構成した場合、結合量を0.1程度の小さい値に設定することができる。
【0074】
図12の(a)に示すように放射素子を単一のスタブ(片側スタブ)により構成した場合、スタブに形成される切り込みの幅W’と結合量との相関は、図12の(b)に示すグラフのようになる。
【0075】
図7の(b)と図12の(b)とを比較すれば、以下のことが分かる。すなわち、放射素子を片側スタブにより構成した場合、切り込みの幅W’を0.02≦W’/λ≦0.08の範囲で変化させた場合、結合量は、0.936≦結合量≦0.952の範囲で変化する。つまり、放射素子を片側スタブにより構成した場合、放射素子12bを両側スタブにより構成した場合のように、結合量を0.1程度の小さい値に設定することができない。
【0076】
≪実施形態2≫
〔マイクロストリップアンテナの構成〕
本発明の第2の実施形態に係るマイクロストリップアンテナ20の構成について、図13を参照して説明する。図13において、(a)は、マイクロストリップアンテナ20の平面図であり、(b)は、マイクロストリップアンテナ20の側面図である。
【0077】
本実施形態に係るマイクロストリップアンテナ20は、第1の実施形態に係るマイクロストリップアンテナ10と同様、誘電体基板21、アンテナ導体22、グランド導体23を備えている。
【0078】
誘電体基板21及びグランド導体23については、第1の実施形態に係るマイクロストリップアンテナ10と同様に構成されているので、ここでは、その説明を省略する。以下、アンテナ導体22について説明する。
【0079】
アンテナ導体22は、給電線路22aと複数(本実施形態においては20個)の放射素子22b1〜22b20とを備えた、コムライン型のアンテナ導体である。
【0080】
給電線路22aは、アンテナ導体22の幹となる帯状の導体である。給電線路22aは、誘電体基板21の表面の中心を通るように、かつ、誘電体基板21の表面の長辺と平行になるように、誘電体基板21の表面に形成される。
【0081】
給電線路22aには、入力端側から順に、放射素子22b1、放射素子22b2、…、放射素子22b20が付加されている。これらの放射素子のうち、入力端側から数えて1番目から15番目までの放射素子22b1〜22b15は、両側スタブ、すなわち、給電線路22a上の同一の点から、給電線路12aの一方の側(図示した座標系においてx軸負方向側)と他方の側(図示した座標系においてx軸正方向側)とに突出した1対のオープンスタブ(以下、単に「スタブ」と記載する)により構成されている。一方、これらの放射素子のうち、入力端側から数えて16番目から20番目までの放射素子22b16〜22b20は、片側スタブ、すなわち、給電線路22aの一方の側(図示した座標系においてx軸負方向側)に突出した単一のスタブ(片側スタブ)により構成されている。
【0082】
放射素子22b1〜22b20の何れを構成するスタブも、切り込みが形成された長方形状の導体である。これらの切り込みは、給電線路22aの中心軸に直交するスタブの1組の辺のうち、給電線路22aの出力端側の辺に対して開口した長方形の切り込みであり、スタブの付根に形成されている。
【0083】
〔各放射素子の結合量〕
マイクロストリップアンテナ20においても、放射素子22b1〜22b20の結合量は、下記のパラメータと相関している。したがって、下記のパラメータの値を適宜設定することによって、各放射素子の放射電力を所望の値に一致させることができる。
【0084】
(1)その放射素子を構成するスタブの長さL、
(2)その放射素子を構成するスタブの幅W、
(3)その放射素子の中心軸と、その放射素子に隣接する放射素子の中心軸との間隔D、
(4)その放射素子を構成するスタブに形成された切り込みの長さL’、
(5)その放射素子を構成するスタブに形成された切り込みの幅W’。
【0085】
図13に示すマイクロストリップアンテナ20において、放射電力の一様分布を実現する、すなわち、各放射素子22bの放射電力を下記の表4に示す値に一致させるためには、各放射素子22bに関するパラメータW,L,D,L’,W’を、例えば、下記の表4に示す値に設定すればよい。
【0086】
【表4】
【0087】
また、図13に示すマイクロストリップアンテナ20において、放射電力のTaylor分布を実現する、すなわち、各放射素子22bの放射電力を下記の表5に示す値に一致させるためには、各放射素子22bに関するパラメータW,L,D,L’,W’を、例えば、下記の表5に示す値に設定すればよい。
【0088】
【表5】
【0089】
さらに、図13に示すマイクロストリップアンテナ20において、放射電力のChebyshev分布を実現する、すなわち、各放射素子22bの放射電力を下記の表6に示す値に一致させるためには、各放射素子22bに関するパラメータW,L,D,L’,W’を、例えば、下記の表6に示す値に設定すればよい。
【0090】
【表6】
【0091】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態(実施例)に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば、ミリ波帯で動作するアンテナとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10,20 マイクロストリップアンテナ
11,21 誘電体基板
12,22 アンテナ導体
12a,22a 給電線路
12b,12b1〜12b20,
22b1〜22b20 放射素子
12bL,12bR スタブ
12bL1,12bR1 切り込み
13,23 グランド導体
【要約】
【課題】結合量の調整範囲の下限値が従来よりも小さい放射素子を含むマイクロストリップアンテナを実現する。
【解決手段】誘電体基板11と、誘電体基板11の表面に形成されたアンテナ導体12であって、給電線路12aと複数の放射素子12b1〜12b20とを有するコムライン型のアンテナ導体12と、誘電体基板11の裏面に形成されたグランド導体13と、を備え、放射素子12b10は、給電線路12a上の同一の点から給電線路12aの一方の側と他方の側とに突出した1対のスタブ12b10L,12b10Rにより構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13