(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017009
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】線形振動モーター
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20161013BHJP
H02K 33/02 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
B06B1/04 S
H02K33/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-240466(P2015-240466)
(22)【出願日】2015年12月9日
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】201520495045.0
(32)【優先日】2015年7月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515342457
【氏名又は名称】エーエーシー テクノロジーズ ピーティーイー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC TECHNOLOGIES PTE.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ロングワン
(72)【発明者】
【氏名】マオ ルビン
【審査官】
柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−299971(JP,A)
【文献】
特開2011−245409(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/013570(WO,A1)
【文献】
特開平8−65990(JP,A)
【文献】
特開2007−130582(JP,A)
【文献】
特開平11−197601(JP,A)
【文献】
特開平6−315255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00−3/04
H02K 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納空間を内部に有するケーシングと、
振動方向に順に配列した第1の振動子及び第2の振動子を含み、前記格納空間内に収納される磁性振動子と、を備える線形振動モーターにおいて、
前記磁性振動子を、片持ちで前記ケーシング内に支持するための第1のバネがさらに設けられ、
前記第1の振動子と前記第2の振動子とは、第2のバネにより連結され、
前記第1の振動子及び前記第2の振動子の少なくとも一方に、永久磁石が設けられ、
前記ケーシングにおける、前記永久磁石と対応する箇所に、駆動コイルが設けられ、
前記駆動コイルは、ローレンツ力による反動力で前記磁性振動子を駆動するように構成されている
ことを特徴とする線形振動モーター。
【請求項2】
前記第1の振動子には第1の永久磁石が設けられており、
前記ケーシングにおける、前記第1の永久磁石と対応する箇所に、第1の駆動コイルが設けられ、
前記第2の振動子には第2の永久磁石が設けられ、
前記ケーシングにおける、前記第2の永久磁石と対応する箇所に、第2の駆動コイルが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の線形振動モーター。
【請求項3】
前記第1の永久磁石における、前記第1の駆動コイルから離れる側に、透磁シートが貼り付けられ、
前記第2の永久磁石における、前記第2の駆動コイルから離れる側に、透磁シートが貼り付けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の線形振動モーター。
【請求項4】
前記第1のバネは、
前記磁性振動子と連結する第1の端と、
前記ケーシングと連結する第2の端と、
前記第1の端と前記第2の端とを繋ぐ連結部と、
を含むU字型バネである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の線形振動モーター。
【請求項5】
前記第2のバネは、スパイラルバネである
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の線形振動モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動モーターに関し、特に携帯型の消費者向け電子製品に用いられる線形振動モーターに関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の発展に伴い、例えば携帯電話、携帯型ゲーム機、ナビゲーション、携帯型マルチメディア娯楽用機器などの消費者向けの携帯型電子製品がますます人々から好まれるようになる。これらの電子製品には、例えば携帯電話の着信通知、情報通知、ナビ通知、ゲーム機の振動フィードバックなどのようなシステムフィードバックとして、振動モーターが通常に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の線形振動モーターには1つの共振周波数しか用いられていない。タッチフィードバック技術の重要性が日々高まることにより、1つの共振周波数では、振動感に対する多種多様な需要を満たすことはほぼ不可能である。
【0004】
そのため、上記の問題を解決する新たな振動モーターを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の振動子及び複数の共振周波数を有し、且つ、複数の周波数のいずれにおいても有効な振動感を外部に出力することができる新規な線形振動モーターを提供することを目的とする。
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係わる線形振動モーターは、格納空間を内部に有するケーシングと、振動方向に順に配列した第1の振動子及び第2の振動子を含み、前記格納空間内に収納される磁性振動子とを備える線形振動モーターであって、磁性振動子を、片持ちでケーシング内に支持するための第1のバネがさらに設けられ、前記第1の振動子と前記第2の振動子とは、第2のバネにより連結され、前記第1の振動子及び前記第2の振動子の少なくとも一方に永久磁石が設けられ、前記ケーシングにおける、永久磁石と対応する箇所に駆動コイルが設けられ、前記駆動コイルは、ローレンツ力による反動力で前記磁性振動子を駆動することを、特徴とする線形振動モーター。
好ましくは、前記第1の振動子には第1の永久磁石が設けられており、ケーシングにおける、第1の永久磁石と対応する箇所に、第1の駆動コイルが設けられ、前記第2の振動子には第2の永久磁石が設けられ、ケーシングにおける、第2の永久磁石と対応する箇所に、第2の駆動コイルが設けられている。
【0007】
好ましくは、前記第1の永久磁石における、前記第1の駆動コイルから離れる側に、透磁シートが貼り付けられ、前記第2の永久磁石における、前記第2の駆動コイルから離れる側に、透磁シートが貼り付けられている。
【0008】
好ましくは、前記第1のバネは、磁性振動子と連結する第1の端と、ケーシングと連結する第2の端と、第1の端と第2の端とを繋ぐ連結部と、を含むU字型バネである。
【0009】
好ましくは、前記第2のバネは、スパイラルバネである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の振動子及び複数の共振周波数を有し、且つ、複数の周波数のいずれにおいても有効な振動感を外部に出力することができ、製品の使用体験を向上させる新規な線形振動モーターを提供できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る線形振動モーターを分解した斜視図である。
【
図2】本発明に係る線形振動モーターの一部を組み合わせた模式斜視図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る線形振動モーターの組み合わせの模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本発明が提供する線形振動モーターは、格納空間を内部に有する長方体状のケーシング1と、この格納空間内に収納され、このケーシング1の長軸方向に沿って振動する磁性振動子3と、この磁性振動子3を固定する支持バネ2とを含む。本実施形態では、ケーシング1は、パネル状の下ケーシング12と、下ケーシング12をカバーして、下ケーシング12と共同で格納空間を形成する上ケーシング11とで構成される。下ケーシング12には、さらに、外部と電気的に接続するための可撓性回路基板7が設けられている。もちろん、選択可能な別の実施形態では、ケーシング1は、一体化された構造であってもよい。また、下ケーシング12はパネル状に限定されない。また、ケーシング1は長方体状に限定されない。さらに、可撓性回路基板7の代わりに導線を用いてもよく、電気的接続が可能なものであれば、実施可能である。
【0014】
磁性振動子3は、振動方向(本実施形態では、ケーシング1の長軸方向)に順に配列した第1の振動子31及び第2の振動子32を含む。支持バネ2は、磁性振動子3を片持ちでケーシング1内に支持するための第1のバネ21と、第1の振動子31と第2の振動子32との間に位置してこれら2つの磁性振動子を連結するように働く第2のバネ22とを含む。第1のバネ21は、一端が磁性振動子3と連結し、他端がケーシング1に固定される。
【0015】
第1の振動子31及び第2の振動子32の少なくとも一方は、振動方向における駆動力を提供することができる。本実施形態では、第1の振動子31及び第2の振動子32の少なくとも一方には永久磁石4が設けられている。ケーシング1における、永久磁石4と対応する箇所には、駆動コイル5が設けられている。駆動コイル5は、ローレンツ力による反動力を利用して第1の振動子31や第2の振動子32を振動させるように駆動する。
【0016】
図1〜
図3は、本発明による第1の実施例を示している。本実施例では、第1の振動子31に永久磁石4が設けられており、ケーシング1における、永久磁石4と対応する箇所に駆動コイル5が設けられている。第2の振動子32は、永久磁石4が設けられておらず、第1の振動子31から提供される駆動力により振動する。この場合、第2の振動子32は被振動子であり、磁性を有してもよく、有さなくてもよい。もちろん、駆動力を提供できるように第2の振動子32に永久磁石4を設け、永久磁石4が設けられていない第1の振動子31を被振動子としてもよく、いずれの構成も実施可能である。ここで、磁性振動子3という用語は、保護範囲に対して具体的に限定するものではない。なお、永久磁石4における、駆動コイル5から離れる側に透磁シート6が貼り付けられていてもよい。
【0017】
図4〜
図5は、本発明の第2の実施例を示している。本実施形態では、2つの磁性振動子の両方にも永久磁石が設けられている。また、ケーシング1における永久磁石と対応する箇所のいずれにも駆動コイルが設けられている。具体的には、第1の振動子31’に第1の永久磁石41’が設けられ、ケーシング1における、第1の永久磁石41’と対応する箇所に第1の駆動コイル51’が設けられている。また、第2の振動子32’に第2の永久磁石42’が設けられ、ケーシング1における、第2の永久磁石と対応する箇所に第2の駆動コイル52’が設けられている。この場合、2つの磁性振動子は両方とも駆動力を提供する。
【0018】
本発明において、
図2に示すように、第1のバネ21は、磁性振動子3と連結する第1の端211と、ケーシング1と連結する第2の端212と、第1の端と第2の端とを繋ぐ連結部213とを含むU字型バネであることが好ましい。第2のバネ22はスパイラルバネ(圧縮コイルバネ)であることが好ましい。もちろん、上記構成は好ましい実施形態に過ぎず、実際には両方のバネがU字型バネまたはスパイラルバネであってもよく、他の形態のバネであってもよく、いずれも実施可能である。
【0019】
本実施形態において、2つの磁性振動子の固有周波数ωの式は下記の通りである。ただし、m
1及びm
2は、それぞれ第1の振動子及び第2の振動子の質量である。k
1及びk
3は、2つの第1のバネ21それぞれの弾性率である。k
2は、第2のバネ22の弾性率である。
(式1)
【0021】
上記の式から分かるように、2つの磁性振動子3の振動周波数は、共振システムの固有特性であり、磁性振動子3の質量m及び支持バネの弾性率kに関係するが、与えられる外力に関係しない。
【0022】
本発明において、2つの磁性振動子3の質量が同じであってもよく、異なってもよい。また、2つの第1のバネ21のバネ定数が同じであってもよく、異なってもよい。具体的には、所望の振動感に応じて支持バネ2の弾性率及び磁性振動子3の質量を合理的に設定し、磁性振動子の共振周波数を調整することにより線形振動モーターの振動感を制御する必要がある。2つの磁性振動子の固有周波数が異なるため、複数の振動感を得ることができる。
【0023】
本発明は、複数の振動子及び複数の共振周波数を有し、且つ、複数の周波数のいずれにおいても有効な振動感を外部に出力することができ、製品の使用体験を向上させる新規な線形振動モーターを提供することができる。
【0024】
なお、第1の永久磁石41’における、第1の駆動コイル51’から離れる側に透磁シート6が貼り付けられていてもよいし、第2の永久磁石42’における、第2の駆動コイル52’から離れる側に透磁シート6が貼り付けられていてもよい。
【0025】
以上に記述された構成は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。本発明の保護範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。当業者が本発明に開示されている構成に基づいて同等に改良または変化することができるが、これらの改良及び変化は全て特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1 ケーシング
2 支持バネ
3 磁性振動子
4 永久磁石
5 駆動コイル
6 透磁シート
7 可撓性回路基板
11 上ケーシング
12 下ケーシング
21 第1のバネ
22 第2のバネ
31 第1の振動子
31' 第1の振動子
32 第2の振動子
32' 第2の振動子
41' 第1の永久磁石
42' 第2の永久磁石
51' 第1の駆動コイル
52' 第2の駆動コイル
211 第1の端
212 第2の端
213 連結部
【要約】
【課題】 複数の振動子及び複数の共振周波数を有し、且つ、複数の周波数のいずれにおいても有効な振動感を外部に出力することができ、製品の使用体験を向上させる新規な線形振動モーターを提供する。
【解決手段】 格納空間を内部に有するケーシング1と、振動方向に順に配列した第1の振動子31及び第2の振動子32を含み、格納空間内に収納される磁性振動子3とを設ける。磁性振動子3を、片持ちでケーシング1内に支持するための第1のバネを設け、第1の振動子31と第2の振動子32とを第2のバネ22により連結し、第1の振動子31及び第2の振動子32の少なくとも一方に永久磁石を設け、ケーシング1における、永久磁石と対応する箇所に、駆動コイルを設ける。この駆動コイルはローレンツ力による反動力で磁性振動子3を駆動する。
【選択図】
図1