【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例であるフットウェア10を示す画像である。フットウェア10は、2つの指袋6,7からなる爪先部2が足袋形状をしており、カバー部3の編目方向がソール部4と直行する。更にカバー部3とソール部4の編糸の色も異なる。また、カバー部3を編成する際に、足甲側の前後針床に係止するそれぞれの編地端部の編目に対して減らし編成を行い、足挿入口5の前方部から指股に向けてカバー部3のセンターライン9が形成される。
【0017】
図2は、フットウェア10の編成概略図である。編成する爪先部2、ソール部4、カバー部3の各領域の編成経過をそれぞれ(A)〜(C)で示す。爪先部2、ソール部4、カバー部3の各領域を順次編成して接合することで一体化したアッパー部1が形成できる。図中、各領域の編成方向(ウェール方向)は矢印で示す。(A)では、親指用の指袋6と親指以外の指袋7を構成する爪先部2が厚みのある足袋形状であるが、先丸や5本指であっても良い。
【0018】
図2の(B)は、(A)に対してソール部4の追加を示す図である。後述する
図3で示す爪先部2の一部となるFBの始端編目列16fは、そのままFBの編針に係止され、BBの始端編目列16bは、編幅方向の一方(右方)に移動しながらソール部4の編成と、カバー部3が連続する左辺12および右辺13を形成して、終端編目列17に至る。(C)は、(B)に対してカバー部3の追加を示す図である。爪先部2のFBの始端編目列16fと、右方に移動したBBの編針に係止する終端編目列17、更に左辺12および右辺13として示す編目列に続けて新たな編目を形成しながら、踵部11近傍で踵の形状に合わすために減らし編成を行うことで立体的なカバー部3を形成する。その際、足甲側の編地端部の編目に対し足甲側の傾斜を付けるために減らし編成を行うことで、足挿入口5の前方部から爪先部2に向けて、減らし編成の重ね目によるセンターライン9が形成される。
【0019】
図3は、フットウェア10の編成手順における前半部分を示す編成図である。S1は、爪先部2となる親指用の指袋6と親指以外の指袋7の編出しを編成する。前針床FBと後針床BB(以降はFB,BBで示す。)の編針A,b,C,dと、編針E,f,G,h,I,j,K,lとに異なる給糸口より給糸して掛け目を形成し、親指用の指袋6の編出し14と親指以外の指袋7の編出し15を設ける。FB側は足甲側、BB側は足底側の編目である。
【0020】
S2は、S1で編出した指袋6と指袋7の各編出し14,15に対してそれぞれ筒状編成を行い、周回する編成回数により指袋の長さを調整する。親指用の指袋6はFBの編針C,A、BBの編針b,dに係止する編目に続く新たな編目を編成する。親指以外の指袋7はFBの編針K,I,G,Eと、BBの編針f,h,j,lに係止する編目に続く新たな編目を編成する。本実施例では異なる給糸口を用いて同時に2つの指袋を編成したが、1つの給糸口で指袋6をまず形成し、続いて指袋7を形成しても良い。
【0021】
S3は、指袋6と指袋7を繋ぐ編成である。FBの編針K,I,G,E,C,Aと、BBの編針b,d,f,h,j,lに係止する編目に続く新たな編目を編成する。2つの指袋の隣接する編目を重ねたり、その境界を越えてタック編成を行えば指股部に孔が発生するのを抑えることができる。また、BBの編針b,d,f,h,j,lに係止する編目は、ソール部4の始端となる始端編目列16bとなる。なおS1〜S3の編成により、
図2の(A)で示す部分の爪先部2が編成できる。
【0022】
S4では、爪先部2の一部の編目列となるBBの編針b,d,f,h,j,lに係止する編目、つまりソール部4の始端となる始端編目列16bの編目をFBの空針を経由して、それぞれBBの編針d,f,h,j,l,nに移動する。この移動後、空針となったBBの編針bと編針nに対向するFBの編針Mには掛け目8を、BBの編針d,f,h,j,l,nに係止する編目には連続して新たな編目を編成する。編針bに形成された掛け目8はソール部4の右辺13を形成する最初の編目となり、編針Mに形成された掛け目8はソール部4の左辺を形成する最初の編目12となる。
【0023】
S5は、S4と同様の編成を更に5回繰り返し、ソール部4を右方に移動しながら、所望のソール部4の長さを得る状態を示す。ソール部4の始端となるBBの始端編目列16bに連続して編成する新たな編目列16b´は編目数の増減をせずにソール部4の終端近傍まで同じ目数で移動していく。S6では、S3〜S5まで右方に移動しながら同数の新たな編目を形成してきたBBの始端編目列16bに連続して編成する新たな編目列16b´に続いて、踵の形状に合すために両端の2目(編針p,z)をミス編成することで編成する編目を減らしている。踵部11を形成するにあたり、ソール部4の終端近傍となる箇所を成型するための編成である。編針r,t,v,xに係止する編目に続く新たな編目列16b´と、BBの編針nとFBの編針Yとに掛け目8を編成する。
【0024】
S7は、ソール部4の左辺12および右辺13となる掛け目8を含むソール部4の外周縁を構成する編目に続けて新たな編目を編成する。FBの編針Yから編針Aに向けて1本置きの編針に係止する編目に続く新たな編目を編成し、BBの編針bから編針zに向けて1本置きの編針に係止する編目に続く新たな編目を編成する。これらS4〜S7の編成により、
図2の(B)に追加したソール部4が編成できる。FBの編針A,C,E,G,I,Kには足甲側としてのFBの始端編目列16fに連続して編成する新たな編目列16f´が、BBの編針p,r,t,v,x,zには踵部11側としての新たな編目列16b´が、BBの編針b,d,f,h,j,lにはソール部4の右辺13の編目列が、FBの編針M,O,Q,S,U,W,Yにはソール部4の左辺12の編目列が係止されている。
【0025】
図4は、フットウェア10の編成手順における後半部分を示す編成図である。S8では、S7の筒状編地を時計回りの方向に回し込む編成を示す。つまり、FBには足甲側の編目列16f´とソール部4の左辺12の編目列が、BBには踵部11側の編目列16b´とソール部4の右辺13の編目列が係止され、足甲側が正面(FB側)を向いている状態であるが、筒状編地の左右両端で編地を時計回りの方向に目移しすることを繰り返すことで前記足甲側の編目列16f´を前後針床の長手方向左側に位置するように移動している。BBを右方に針1本分ラッキングし、FBの編針Aに係止する編目を編針z´に目移しし、BBの編針zに係止する編目を編針AAに目移しする。同様の編成を2回繰り返すことで、前記足甲側の編目列16f´が針床の長手方向左側に位置するようになり、足甲側の編目列がFBとBBに3目ずつ均等に配置される。この時、BBの踵部11側の編目列16b´もFBとBBに3目ずつ均等に配置される。つまり、カバー部3のセンターライン9の位置がFBの編針Eと編針G間からFBとBB間に移動することになる。
【0026】
S9では、前記S8の回し込みにより足甲側の編目列16f´と踵部11側の編目列16b´が、FBとBBに均等に配置された状態から、減らし編成で足の形状に合わす編成を行う。S7から前後の編地が時計方向に回転した状態で、更に針床の長手方向の左方側では、前後針床に係止するそれぞれの編目列の端部の編目に対して減らし編成を行うことで足甲側の傾斜を設ける。その結果、減らし編成の重ね目によるセンターライン9が形成される。針床の右方側では、踵部11に沿う形状を減らし編成で形成する。これらの編成により足にフィットするフットウェア10が得られる。足甲側ではBBの編針v´に係止する編目を編針x´に、FBの編針Gに係止する編目を編針Iに移動し重ね目とする。また踵部11側では、BBの編針tに係止する編目を編針rに、FBの編針EEに係止する編目を編針CCに移動し重ね目とする。
【0027】
S10は、前記S9の減らし編成で形成された重ね目も含めて足挿入口5に向けてウェール方向に編成を行う。FBの編針CCから編針Iに向けて1本置きの編針で新たな編目を形成し、BBの編針x´から編針rに向けて1本置きの編針で新たな編目を形成する。S11は、S9とS10と同様の編成を3回繰り返した状態を示す。針床の左方側では足甲側の傾斜を設け、針床の右方側では、踵部11を形成する。S12は、所望の足挿入口5の口径の編目数まで減らし編成を行った後、筒状編成を行う。このS12の筒状編成を繰り返し、終端部の編目を公知の伏目で解れ止めする。S8〜S12の編成により、
図2の(C)に追加した部分が編成できる。
【0028】
尚、本実施例では素材(編糸)については触れていないが、
図2の(A)〜(C)で示すように、各編成領域を独立させることができるため、それぞれ編糸や編成方法を変えることも可能である。また編成工程図は天竺組織で示しているが、ソール部4は吸湿・抗菌素材を使って両面組織で厚みを出したり、カバー部3では、メッシュ組織で通気を良くすることも可能である。更には、非熱融着糸と熱融着糸とを含んだ編糸を用いて、シューズアッパーとしての使用も可能である。熱融着することでしっかりとしたアッパーが形成できるが、この時カバー部3の編目方向が足挿入口方向に向く周回編成のため、例えば足首近傍の位置を熱融着しない非熱融着糸で編成する。足の動きに沿った曲がりやすいシューズが形成できる。