【0008】
本願発明で原材料として使用される、可塑性坏土は通常、天然の水分を含んだ可塑性の粘土、あるいは粘土粉末に水を添加混練して調製された可塑性の粘土であり、一般に水分含有量が20〜25%である。
その粘土に、例えば桧屑、好ましくは平均粒径50〜500μmの桧屑、を外割で25%添加混練するには、数回に分けて添加・混練を行うことが好ましい。
すなわち、桧屑を最初は5%分を添加・混練し、次いで10%分を添加・混練し、最後に10%分を添加・混練する。
このように、添加混練を数回にわたって繰り返し行うことにより、桧屑を粘土生地に容易に均質に添加・混練することができる。
一度に、25%の桧屑を添加・混練しても、均質に混ぜることは殆ど不可能である。
また、粘土粉末に平均粒径50〜500μmの桧屑を外割で25%程度添加混合し、それに水を添加しながら混練すれば、容易に均質な混練物とすることができる。
なお、可塑性粘土を調製する際に、粘性を改善するためにメチルセルロース、ポリアクリル酸等の増粘剤を添加・混合してもよい。
香気を発生する香気発生成分としては、粘土生地に均質に混ざるものであれば何でもよく、例えばラベンダー香油、ばら香油等の香油、あるいはそれらのマイクロカプセル、又は桧、白檀、杉、松、桂皮、沈香、伽羅、薄荷、等の香気発生植物(香木)の細砕物、を使用することができる。
そして、特に個々の陶芸成形作業者毎に、各人の好みの香気を出す種類の成分を添加・混練した粘土を用意しておくことが好ましい。
その添加量は香気発生のみを目的とする場合は、極めて少ない量で良いが、多孔質の盆栽植木鉢などの陶芸品を製造する場合は、細孔の必要量等を考慮して、香木屑等を必要量添加・混練することが好ましい。
【実施例】
【0009】
以下の実施例は、本発明を実施する場合の好ましい例を具体的に示すことを意図するものであって、本発明がこれらの実施例によって限定されることは意図されていない。
【0010】
実施例1:
まず、桧を細かく破砕して、平均粒径100μmの桧屑を用意した。
次いで、第1工程として、可塑性粘土(信楽粘土)100重量部に対して、前記桧屑を5重量部添加混練した後、更に第2工程として、その添加・混練物に桧屑を10重量部を追加して添加・混練した。更に第3工程として、第2工程で得られた混練物に桧屑を10重量部を添加・混練した。
以上のようにして、可塑性粘土(信楽粘土)100重量部に対して、合計25重量部の桧屑を添加・混練した。
そこで、得られた桧屑25重量部添加粘土をろくろ上に載せて、盆栽植木鉢の成形作業を行った。
成形作業中において、粘土生地から桧の爽やかな香りが発散され、爽快な気分で創作をすることができ、十分に満足し得る作品が出来上がった。
なお、桧から出る香気成分のヒノキチョールは、爽やかな香気を与えるばかりでなく、抗菌作用も発揮するため、作業者の手指に少しの創傷があっても悪化することがなく、手指の皮膚病等の悪化を防止することができる。
図1は、本願発明の可塑性坏土を使用して陶芸成形品を手作り成形をしている状態の説明図であり、1は香気発生成分含有の可塑性粘土(坏土)、2はろくろ、3は創作者の手指である。
次に、成形を終えた成形体を自然乾燥してから、素焼窯に入れて約900℃で素焼きした。その際、桧屑は燃焼して消失し、焼成物素地には連続細孔の空洞が生成した。
その後、素焼きした成形体を本焼き窯に入れて1250℃で焼成した。その結果、吸水性の良い多孔質焼成物素地の盆栽植木鉢が製造された。
【0011】
実施例2:
まず、桧を細かく破砕して、平均粒径100μmの桧屑を用意した。
次いで、第1工程として、信楽粘土粉末140重量部に対して、前記桧屑を44重量部を添加・混合した後、更に第2工程として、その添加・混合物に水35重量部を添加して混練した。その結果、桧屑と粘土粉と水が容易に混合・混練され、均質な桧屑含有可塑性粘土が調製された。
使用した信楽粘土粉末は、例えば信楽粘土に多量の水を加えて泥漿としたものを、水簸し、フイルタープレスにかけて脱水した後、乾燥し、粉砕して得られたもので、含水率は10%以下である。
そこで、得られた桧屑含有可塑性粘土をろくろ上に載せて、盆栽植木鉢の成形作業を行った。
成形作業中において、粘土生地から桧の爽やかな香りが発散され、爽快な気分で創作をすることができ、十分に満足し得る作品が出来上がった。
【0012】
実施例3〜7:
これら実施例2〜7では、粘土粉末に香気発生成分を添加して混合するので、可塑性粘土に香気発生成分を添加・混合する場合に比して、簡単に均等に混合することができる。すなわち、可塑性粘土に香気発生成分を添加・混合すると、可塑性粘土が弾性固体状物質であるところ、香気発生成分は粉末又は液状物質であるため、相性が悪く均等に混合することは至難である。
そこで、先ず粘土粉末に香気発生成分添加混合し、次いで/又は同時に水を添加しながら混合して可塑性粘土を調製することが好ましい。こうすることによって、容易に均一混合が達成される。
【0013】
実施例3:
まず、信楽粘土粉末1360gに水340gとラベンダー香油1.7gを同時に混合・混練してラベンダー香油を含有せしめた香気成分含有可塑性坏土を調製した。
配合比(重量%)は、信楽粘土粉末80%、水19.9%、ラベンダー香油0.1%であった。
他に、ラベンダー香油添加量を、(1)0.01%、(2)0.05%、(3)1.0%の各添加量の香気成分含有可塑性坏土を調製して、香りのテストをした。
その結果、(1)0.01%のものは僅かだけの香りで、物足りなく、(2)0.05%のものは香りが薄く、また、(3)1.0%のものは少しきつい香りであった。0.1%添加量のものが非常に好ましいものであった。
【0014】
実施例4:
実施例3のラベンダー香油に換えて、バラ香油を使用した。
その結果は、実施例3の場合と同様であって、バラ香油0.1%添加のものが非常に好ましいものであった。
【0015】
実施例5:
実施例3のラベンダー香油に換えて、オレンジ香油を使用した。
その結果は、実施例3の場合と同様であって、オレンジ香油0.1%添加のものが非常に好ましいものであった。
【0016】
実施例6:
まず、信楽粘土粉末1380gに月桂樹葉乾燥粉末51.6gを添加・混合し、次いでそれに水252.4gを添加して混練し、月桂樹葉乾燥粉末を含有せしめた香気成分含有可塑性坏土を調製した。
配合比(重量%)は、信楽粘土粉末80%、水17%、月桂樹葉乾燥粉末3%であった。
他に、月桂樹葉乾燥粉末添加量を、(1)0.5%、(2)1%、(3)2%の各添加量の香気成分含有可塑性坏土を調製して、香りのテストをした。
その結果、(1)のものはほんの少しだけの香りで、(2)のものは香りが薄く物足りなく、また、(3)のものはまだ香りが十分でなかった。3%添加量のものが非常に好ましいものであった。
【0017】
実施例7:
まず、信楽粘土粉末1385gにシナモン樹皮乾燥粉末88.8gを添加・混合し、次いでそれに水3017gを添加して混練し、シナモン樹皮乾燥粉末を含有せしめた香気成分含有可塑性坏土を調製した。
配合比(重量%)は、信楽粘土粉末78%、水17%、シナモン樹皮乾燥粉末5%であった。
他に、シナモン樹皮乾燥粉末添加量を、(1)0.5%、(2)1%、(3)3%の各添加量の香気成分含有可塑性坏土を調製して、香りのテストをした。
その結果、(1)のものはほんの少しだけの香りで、(2)のものは香りが薄く物足りなく、また、(3)のものはまだ香りが十分でなかった。5%添加量のものが非常に好ましいものであった。
【0018】
実施例8:
まず、信楽粘土粉末1256gにラベンダー花乾燥粉末135gを添加・混合し、次いでそれに水284gを添加して混練し、ラベンダー花乾燥粉末を含有せしめた香気成分含有可塑性坏土を調製した。
配合比(重量%)は、信楽粘土粉末75%、水17%、ラベンダー花乾燥粉末8%であった。
他に、ラベンダー花乾燥粉末添加量を、(1)0.5%、(2)1%、(3)3%の各添加量の香気成分含有可塑性坏土を調製して、香りのテストをした。
その結果、(1)のものはほんの少しだけの香りで、(2)のものは香りが薄く物足りなく、また、(3)のものはまだ香りが十分でなかった。8%添加量のものが非常に好ましいものであった。