【実施例】
【0061】
(実施例1〜5)
以下の実施例1〜5に記載される研究では、関連物質(RS)の存在および有効性は、UV検出器付きの高速液体クラマトグラフィー(HPLC−UV)によって測定し、安定性の指標として、分解生成物の存在を示す、検出される関連物質のパーセンテージの増加を用いた。これらの研究において、上記HPLC−UVは、流速1.2ml/分でZorbax XDB−C8, 5μM, 4.6mm×150mmカラムを利用した。移動相AおよびBは、以下のとおりであった: 移動相A:650mLの1.1mg/mL 1−オクタンスルホン酸(pH3.0):50mLのミリQ(Milli−Q)水:300mL メタノール。ミリQ水:300mL メタノール; 移動相B:300mLの1.1mg/mL 1−オクタンスルホン酸(pH 3.0):50mLのミリQ水:650mL メタノール。使用した希釈液は、移動相Aであった。40分間で100% Aから100% Bへの勾配を使用した。280nm UV検出器を使用した。
【0062】
(実施例1:保存剤および抗酸化剤の使用に依存した、および種々の緩衝液を使用した、製剤の安定性の比較)
2種の活性薬学的成分(API)であるフェニレフリンHCl(PE)およびケトロラクトロメタミン(KE)(各々、水性溶液中に5mMもしくは1mMのいずれかの等濃度)の併用の種々の製剤を比較する実験を行った。2種の異なる緩衝系を利用して、上記溶液を3種の異なるpHで維持した:pH7.4については20mM リン酸ナトリウム緩衝液(二塩基性リン酸ナトリウムおよび一塩基性リン酸ナトリウム);pH6.5については20mM クエン酸ナトリウム緩衝液(クエン酸一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物);ならびにpH5.5については20mM クエン酸ナトリウム緩衝液。これらのAPIの4種の保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有製剤を開発した(各々、以下のように、貯蔵およびサンプル採取のために複数の1mLバイアルへとアリコートに分けた):
【表3】
【0063】
次いで、さらなる製剤を、保存剤も抗酸化剤も添加せずに(コントロール群)、あるいは以下のように保存剤であるエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(エデト酸二ナトリウムもしくはEDTAともいわれる)、またはEDTA+抗酸化剤であるメタ重亜硫酸ナトリウムを添加することによって、調製した:
【表4】
【0064】
次いで、これらの群の中の各々における種々の製剤のサンプルを、遮光条件下で、2〜8℃、25℃、40℃もしくは60℃のいずれかの制御された温度で貯蔵した。各製剤のサンプルを、12ヶ月の期間にわたって種々の時点で引抜き、各APIに関する関連物質を測定することによって決定されるとおり、APIの分解について分析した。この実験結果を、
図1〜12の表に示し、以下の結論に達した。
【0065】
貯蔵1ヶ月後の安定性評価に基づいて:
1.コントロール群(G1)は、両方のAPIがpH7.4のリン酸Na緩衝液中で、ならびにpH6.5およびpH5.5のクエン酸Na緩衝液中で安定であることが実証された。コントロール群は60℃でいくらかの分解を示し、pH4.5(クエン酸Na)で最大を示した。
2.G2群をG1群と比較すると、EDTAがより高温でPEの分解を阻害することが実証される。
3.G3群は、驚くべきことに、メタ重亜硫酸Naが高温でAPI、特にKEの分解を有意に増大させることを実証する。さらに、1ヶ月では、40℃および60℃で貯蔵したいくつかのG3サンプルが黄みがかった。
【0066】
6ヶ月の貯蔵後の安定性評価に基づいて:
4.EDTAは、驚くべきことに、いずれのAPIの安定性に対しても、特にpH6.5のクエン酸緩衝液中では、有意な効果を有しないようである。
5.6ヶ月での関連物質の%単位での最大増加が、60℃で保持したサンプルで起こる。
6.両方のAPIが4℃および25℃で安定なようである。40℃では、関連物質の%単位での小さな増加が、特にpH6.5のクエン酸緩衝液中で伴う。
7.6ヶ月では、40℃および60℃のサンプルは、明るい黄色に見えるが、目に見える沈殿または結晶化はない。
【0067】
(実施例2:安定性に対する窒素重層の効果)
次いで、窒素重層(すなわち、バイアルをシールする前に、バイアル中の上部空間から空気を窒素で排除する)の効果を決定する研究を行った。実施例1の処方F2(水性溶液中でpH6.5に調節したクエン酸ナトリウム緩衝液中の5mM ケトロラク、5mM フェニレフリン)を、いかなる保存剤も抗酸化剤も添加しない(群1, G1)、または保存剤として0.05% w/v EDTAを添加する(群2, G2)かのいずれかで評価した。各APIに関する関連物質を、4℃〜60℃の範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵後1年の期間にわたる時点で測定した。
【0068】
この研究の結果を
図13および
図14に示し、窒素重層の使用が、酸素含有空気の存在と比較して、特に40℃および60℃という高温で両方のAPIの分解を有意に減少させたことを実証する。窒素重層を使用した場合、EDTAの存在もしくは非存在はAPIの安定性に対してほとんど差異を生まなかった。
【0069】
(実施例3:安定性に対する種々の抗酸化剤の効果)
次いで、保存剤として0.05% w/v EDTAも含む実施例1の処方F2(水性溶液中でpH6.5に調節したクエン酸ナトリウム緩衝液中の5mM ケトロラク、5mM フェニレフリン)(群2, G2)に代替の抗酸化剤を添加する効果を評価する研究を行った。評価した抗酸化剤は、0.1% アスコルビン酸(A1)、0.1% L−システインHCl一水和物(A2)、0.1% L−グルタチオン(還元型)(A3)および0.1% モノチオグリセレート(A4)であった。各APIに関する関連物質を、2〜8℃から60℃までの範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵後1ヶ月の期間にわたる時点で測定した。
【0070】
この研究の結果を
図15〜
図18に示し、1ヶ月の時点で、これらの4種の抗酸化剤は、各々驚くべきことに、各APIの分解を、特に、40℃および60℃という高温で増大させたことを示す。
【0071】
(実施例4:より高濃度のフェニレフリンの安定性の評価)
フェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミン併用製剤中のフェニレフリンの濃度を、フェニレフリンの安定性に対する有害な効果なしに増大し得るかを評価するために、pH6.5に調節した、保存剤も抗酸化剤も他の賦形剤も添加なしのクエン酸カルシウム緩衝液中の450mM フェニレフリンの水性製剤を調製し、サンプルを4℃〜40℃の間の温度で4ヶ月の期間にわたって貯蔵した場合に評価した。
【0072】
この研究の結果を
図19に提供する。この高濃度フェニレフリン製剤は、4ヶ月間にわたって4℃〜30℃の間で安定であった。
【0073】
(実施例5:フェニレフリンおよびケトロラク併用の長期安定性の評価)
pH6.5に調節した20mM クエン酸ナトリウム緩衝液中の固定したフェニレフリンHCl(12.37mg/mL)およびケトロラクトロメタミン(4.24mg/mL)の併用製剤に関して、いかなる保存剤も抗酸化剤も添加せずに、長期安定性研究を行った。5mL USPタイプ1ガラスバイアルにアリコートに分け、Daiko D777−1 Flurotec(登録商標)被覆20mmストッパーで閉じた上記製剤のサンプルを、逆さにして貯蔵し、遮光するためにホイルで包み、次いで、長期貯蔵条件(5±3℃)および加速貯蔵条件(25±2℃/60±5% RH)下で維持した。各バイアルは、4.5mLの溶液(0.5mL過剰充填を含む)を含んだ。
【0074】
これらの条件下で30ヶ月貯蔵した後に測定した場合、生成物の外観、溶液のpH、もしくは有効性において測定可能な変化はなかった。この30ヶ月の時点で、5℃および25℃での貯蔵は、それぞれ、合計で1.17%および1.36%の関連物質を生じた。2℃〜8℃という表示された貯蔵条件下で保持されたこの製剤に関するフェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミンの測定された有効性のグラフ表示を、それぞれ
図20Aおよび
図20Bに提供する。これらの図面で証明されるように、30ヶ月を通じて観察された有効性における有意な減少は何らなかった(3本のバイアルを各時点でアッセイした)。
【0075】
(実施例6〜9)
以下の実施例6〜9は、灌流溶液への注入によって希釈され、その後レンズ置換および交換手術の間に眼内灌流のために使用された、本発明に従うフェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミン併用製剤のインビボ研究の結果を提供する。以下の製剤を、この一連の研究で評価した:(a)フェニレフリンHClのみ(PE)、(b)ケトロラクトロメタミンのみ(KE)、(c)フェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミンの併用(PE−KE)、または(d)活性な薬学的成分なし(ビヒクルコントロール)。各場合において、いかなる保存剤も抗酸化剤も添加せずに、pH6.5に調節した20mM クエン酸ナトリウム緩衝液を含む水性溶液中に製剤化し、各場合で2.5mL アリコートで提供した。各場合に、上記製剤のアリコートを、灌流ビヒクルキャリアとしての平衡塩類溶液(BSS, Baxter Healthcare, 製造コード1A7233)の中に、以下に記載されるとおりの特定の最終投与濃度になるように注入した。上記研究はまた、プロパラカインHCl(0.5%, Bausch & Lomb)、トロピカミド(1.0%, Bausch & Lomb)およびシプロフロキサシンHCl(3%, Alcon)を以下に記載される程度まで利用した。
【0076】
試験薬剤の散瞳特性および抗炎症特性を、ヒトの超音波水晶体乳化吸引手術のアフリカミドリザルモデルで評価した。手術前に、ベースラインの測定値および評価を、各サルの両眼に対して行って、生体顕微鏡法、ならびにKowa FM−500機器を使用する定量的フレア光度計測法下で定量的にスコア付けすることによって、瞳孔直径、レンズおよび虹彩完全性、角膜厚、および前眼房フレアおよび細胞数を決定した。超音波水晶体乳化吸引手術とポリメチルメタクリレート(PMMA)人工レンズでのレンズ置換を、Storz Premier前方超音波水晶体乳化吸引機械(anterior phacoemulsification machine)を使用して行った。上記処置を右眼に対してのみ行って、手術位置変動性を最小限にし、左眼がコントロールとして働くようにし、可能性のある誘発される任意の視力喪失の結果を最小限にした。
【0077】
試験動物を、1滴の局所プロパラカインを用いて増大させたケタミン/キシラジン麻酔の下で腹臥位に置いた。MVR 20 Gランスブレード(lance blade)で右眼の角膜を小さく切開し、そこから0.4〜0.6mLの粘弾性物質(2% ヒドロキシプロピルメチルセルロース, EyeCoat, Eyekon Medical)を、粘弾性注射器を介して前眼房へと導入した。2.65mmストレートクリア角膜両斜角ブレード(straight clear cornea bi−beveled blade)を使用して、角膜縁の1.0mm前に角膜切開を行った。超音波水晶体乳化吸引ハンドピースで灌流を適用して、粘弾性物質を除去し、試験灌流液を導入した。合計で4分間の灌流後、灌流を停止し、前眼房を粘弾性物質で再度満たした。嚢切開(capsulorhexis)を行い、超音波水晶体乳化吸引チップを、超音波水晶体乳化吸引エネルギーを印加して前眼房に再導入して、レンズを破壊し、吸引およびレンズ断片除去を可能にした。レンズ除去後に灌流をある期間延長して、全ての処置群にわたって眼内灌流液送達を標準化した(灌流のこの超音波水晶体乳化吸引セグメントの間に合計で14分間)。上記超音波水晶体乳化吸引および灌流処置の後に、PMMA眼内レンズ(IOL)を挿入し、さらに2分間の灌流を行い、その後、角膜切開を2本の12.0ナイロン縫合糸で閉じた。以下に記載されるとおり、試験流体もしくはビヒクルコントロールでの灌流は、超音波水晶体乳化吸引およびレンズ置換の前、その間およびその後に、合計で20分間、流速20mL/分で行った。
【0078】
これらの研究において、レーザーフレア光度計測法を、Kowa FM−500(Kowa Company, Tokyo Japan)を使用してベースラインで、手術処置を開始した後4.5時間、24時間、48時間および1週間で行った。上記Kowa FM−500は、前眼房フレアを定量するために、レーザー光散乱を測定する。レーザーは、前眼房および炎症応答の間に前眼房へと放出されるタンパク質に向けられ、焦点を通過してレーザー光を散乱させる。この光散乱は、ミリ秒あたりの光子数として光電子倍増管によって定量される。各観察点で、7回の許容可能な読み取り(2回のバックグラウンド測定値間の差異<15%)が得られるまで測定値を集め、最低および最高の読み取りを消去し、製造業者によって指定されるように、平均値±標準偏差を計算した。
【0079】
散瞳効果のタイムコースを、灌流処置の間の瞳孔の映像記録によって記録した。瞳孔直径および開瞼器の固定幅(11mm)を映像から測定して、瞳孔直径をミリメートル単位で計算した。各記録された処置についての映像時間記録(video time log)に従って注入処置の過程の間に周期的間隔で測定を行った。
【0080】
主要効力変数は、瞳孔直径およびレーザーフレア光度計測法による測定値であった。主要効力変数を、SAS(SAS Institute Inc.)を用い、一元配置反復測定ANOVA法と事後Student Newman−Keuls検定を使用して、プロトコル補正集団(protocol correct population)(大きなプロトコル逸脱なしに研究を完了した全ての被験体)において分析した。ANOVA分析の項は、シーケンス(=時間, キャリーオーバー効果と混同される)、眼、サルおよび処置を含んだ。適切なモデルベースの比較を用いて、全ての時点での瞳孔直径およびフレア測定値に関して有意レベルp<0.05で処置の差異を検出した。
【0081】
(実施例6:超音波水晶体乳化吸引手術モデルでの術中灌流後のフェニレフリンおよびケトロラクの濃度範囲研究)
非GLP研究を濃度範囲効力研究として行って、白内障手術の間にBSS中の眼内灌流によって個々に与えられる、および併用して与えられる場合の、PEおよびKEを評価した。目的は、散瞳および炎症エンドポイントの両方に対して各薬剤の利益を評価することであった。
【0082】
第1シリーズの実験(フェーズ1と称する)では、16匹の動物を4匹の群に分け、超音波水晶体乳化吸引手術のこのモデルにおいてBSS灌流溶液中のフェニレフリンの最大有効濃度を確立するために研究した。フェーズ1コホートにおけるサルのうちの4匹にはトロピカミド(ムスカリン様散瞳薬)を与えて、陽性コントロールとして働くようにし、標準的な局所的術前送達経路によって十分な瞳孔拡張下での目的のエンドポイント測定値の決定を可能にした。上記フェニレフリン処置群に、低濃度(3μM)、中間濃度(10μM)、高濃度(30μM)および最高濃度(90μM)のフェニレフリン含有BSS灌流液を与えた。低濃度および最高濃度の処置群は各2匹の動物からなり、フェーズ1の一部が進行中のときの、より高い濃度のフェニレフリンを評価するための決定をなした。フェニレフリン効力の主要エンドポイントは、散瞳であった。術後の炎症エンドポイントもまた、評価した。
【0083】
BSS灌流液を、フェニレフリンなしか、または濃度3.0μM、10μM、30μMもしくは90μM(表1を参照のこと)のフェニレフリンを含むかのいずれかで、超音波水晶体乳化吸引針を通して送達した。ステージ1灌流(0:00〜2:00分)を、上記粘弾性物質を除去およびフェニレフリンの散瞳効果を評価するために適用し、ステージ2灌流(2:00〜4:00分)の間中継続した。その後、粘弾性物質を前眼房に再導入し、嚢切開を行った。ステージ3灌流(4:00〜18:00分)を上記嚢切開の後に開始し、合計で14分間継続した。その初期段階の間に、レンズを断片化し、超音波水晶体乳化吸引エネルギーの印加によって吸引した。ステージ4灌流をPMMAレンズの導入後に行って、その処置のために導入された粘弾性物質を排出および任意のさらなるレンズ断片を除去した。上記トロピカミドコントロール動物を、BSSのみでの前眼房灌流を開始する20分前に、2滴の1% トロピカミドで予備処置した。
【0084】
最初の数匹の動物の手術の後に、最初の超音波水晶体乳化吸引前の灌流の継続時間を2分から4分へと延ばして、最大の瞳孔拡張を得た。
【0085】
第2シリーズの実験(フェーズ2と称される)は、低濃度、中濃度および高濃度のケトロラクを含む、もしくはケトロラクなし(陰性コントロール)のBSS灌流液を使用した超音波水晶体乳化吸引手術の後に散瞳および炎症を評価した。前眼房灌流を、灌流溶液中に散瞳薬なしを使用して開始して、ケトロラクおよびBSSのみの散瞳効果を評価した。2分の灌流および散瞳の評価の後に、フェーズ1実験で散瞳をもたらすことにおいて有効であると判明したフェニレフリンの濃度(30μM)を、灌流溶液中に含めて、超音波水晶体乳化吸引処置を行うために十分な拡張をもたらした。ケトロラク効力の二次的エンドポイントは、散瞳であり、主要エンドポイントは、前眼房炎症の確認された尺度であるレーザーフレア光度計測法であった。
【0086】
BSS灌流液を、ケトロラクなしもしくは濃度3.0μM、10μM、もしくは30μMのケトロラクを含むかのいずれかで、超音波水晶体乳化吸引針を通じて送達した(表1を参照のこと)。ステージ1灌流(0:00〜2:00分)を適用して、粘弾性物質を除去およびケトロラクの散瞳効果を評価した。次いで、高濃度フェニレフリンを灌流液瓶に(濃度30μMを達成するように)添加し、ラインを洗い流し、灌流をステージ2(2:00〜4:00分)の間中継続した。その後、粘弾性物質を前眼房に再導入し、嚢切開を行った。ステージ3灌流(4:00〜18:00分)を嚢切開の後に開始し、合計で14分間継続し、その初期段階の間に、超音波水晶体乳化吸引エネルギーを印加した。ステージ4灌流を、PMMAレンズの導入後に行った。
【0087】
(結果)
前眼房灌流の開始の最初の1分以内の1〜2mmの初期瞳孔拡張の後に、瞳孔直径は、直径に対する時間の有意な効果(F=2.75, P<0.0001)を伴って全ての処置群に関して約5分以内に最大拡張に漸近的に近づいた(
図21および
図22を参照のこと)。第1の実験セットでは、傾向から、BSS灌流液中のフェニレフリンの存在が瞳孔直径の濃度依存性増大に寄与したことが示唆される。BSSのみでの灌流の20分前に局所的トロピカミドを受けたコントロール群で示された初期拡張(0〜2分)は、薬理学的効果ではなかった可能性があり、全ての群における前眼房灌流の開始の最初の2分以内に測定した拡張の成分は、角膜切開を作ることおよび可能性のある灌流/吸引の流体力学的影響を可能にするために導入された粘弾性物質のクリアランスに関連したことを反映する。しかし、注目すべきは、トロピカミドコントロール群における初期のさらなる拡張は、上記処置の開始時に全ての他の処置群より大きなベースライン拡張から始まり(F=7.73, P<0.0001)、中濃度、高濃度および最高濃度のフェニレフリン群が示すものより低い最大拡張を生じた。最高、高および中のフェニレフリン群と低フェニレフリン群の間の差異は、6:00分、8:00分、10:00分、14:00分、18:00分および19:00分の時点で有意であった(それぞれ、F=2.41, p<0.043; F=2.66, p<0.0315; F=3.24, p<0.0136; F=6.62, p<0.0002; F=9.26, p<0.0001; F=3.79, p<0.005;Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=23,
図21を参照のこと)。このことから、術中の散瞳の大きさに対するフェニレフリン灌流液の濃度依存性効果が確認された。低濃度フェニレフリンおよびトロピカミドコントロール群に対する最高濃度、高濃度および中濃度のフェニレフリン群間の差異は、14:00および18:00分の時点で有意であった(それぞれ、F=6.62, p<0.0002; F=9.26, p<0.0001;Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=23,
図21を参照のこと)。このことは、術中の散瞳を長引かせることにおけるフェニレフリンの濃度依存性効果を示していた。全ての他の時点での全ての他の群の間の差異は、Student Newman−Keuls判定基準では有意でなかったが、群内での平均瞳孔直径において認められる傾向は、フェニレフリン群にわたる開始速度と散瞳効果の大きさの両方に対する濃度依存性を示唆する。より後の時点では、高フェニレフリン処置群における平均拡張は、この種の成体の眼では、8.3mmという瞳孔散瞳の解剖学的限界(角膜縁の内径に対応する)に近い。
【0088】
3〜30μM ケトロラクを含むBSSもしくはBSSのみで、30μM フェニレフリンを導入する前に前眼房を2分間灌流した第2の実験セットでは、灌流開始の30秒以内に瞳孔直径の急速な1〜2mmの増加、続いて、30秒〜2分の間にそれほど急速ではない濃度非依存性の増加があった。最初の2分間の間には、ケトロラク処置群とBSS処置動物との間に統計的な差異は認められなかった。同じ挙動がBSSコントロール群によって示されると仮定すると、この初期の拡張は、第1の実験セットにおいてフェニレフリン群およびトロピカミドコントロール群の挙動によって証明されるように、粘弾性物質のクリアランスおよび灌流/吸引の流体力学的影響に関連する可能性がある。2分で全てのケトロラク処置動物およびBSS処置動物に30μM フェニレフリンを導入した後、全ての群において、瞳孔直径のさらに急速な増加があり、4分で最大拡張に達した。最大拡張は、4分間の最初の灌流と、嚢切開を行ったときの超音波水晶体乳化吸引の開始との間の間隔で瞳孔直径が僅かに減少した後の残りの灌流期間を通じて持続された。14:00分および18:00分の時点で、BSS群および高濃度ケトロラク群に対して低濃度および中濃度のケトロラク群の間を除いて、統計的に有意な群の差異は全くなかった(低および中>BSSおよび高;それぞれ、F=6.62, p<0.0002; F=9.26, p<0.0001;Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=23,
図2を参照のこと)。しかし、この差異に関する処置のグループ分けは、差異がケトロラク効果から生じなかったことを示唆し、おそらく、制限されたサンプルサイズに関連し、動物間および処置間の差異を反映した。両方の実験セットの全ての処置群において、瞳孔は処置の最後のレンズ配置後に収縮した。
【0089】
ベースラインの術前前眼房フレアの測定値は、全ての処置群において処置した(右)眼で3.0〜12.7光子単位/ミリ秒の範囲に及んだ(平均=6.0±2.4 SD)。コントロール(左)眼でのフレア測定値は、研究の継続期間の間中、この範囲内のままであった。これらの測定値は、細隙灯顕微鏡検査によって行った前眼房フレア評価(眼の自然な静止状態において前眼房中のタンパク質密度を定量することにおけるレーザーフレア光度計測法の有用性を確認する)に適合した。全ての処置群において、処置した眼におけるフレア測定値に対する時間の有意な効果があった(F=2.16, p<0.0034)。このことは、介入関連炎症を定量することにおけるフレア光度計測法の有用性をさらに確認した(
図23、
図24および
図25を参照のこと)。ベースライン 対 4.5時間および24時間 対 48時間および168時間での処置した眼でのフレア測定値は、全ての処置群にわたって有意に異なった(F=2.16, p<0.0034; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=75)。コントロールの眼と処置した眼との間の差異は、全ての被験体にわたって全ての術後の試験時点で異なった(F=236.64, P<0.0001; Studentt Newman−Keuls検定, α=0.05, df=195)。
【0090】
第1の実験セットでは、超音波水晶体乳化吸引継続期間は、理想のパラメーターを精密にしていたので、処置群内で異なった。超音波水晶体乳化吸引時間が、重篤な炎症応答を引き起こしていることおよび超音波水晶体乳化吸引の低減が賛同されることが、最初の4回の手術処置で確立された。4.5時間および24時間の時点での、より短い継続期間(15〜25秒)の超音波水晶体乳化吸引の群に対するより長い継続期間(45〜55秒)の超音波水晶体乳化吸引の群の分析から、超音波水晶体乳化吸引継続時間に伴ってフレア測定値において統計的に有意な増加があることが明らかになった(F=4.42, p<0.0018; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=14;
図24を参照のこと)。このことから、前眼房損傷および炎症の程度を定量することにおける、レーザーフレア光度計測法の有用性が確認された。この差異は、48時間および1週間の時点まで解明された。
【0091】
高い超音波水晶体乳化吸引エネルギーを受けた被験体(これは、高フェニレフリン群およびトロピカミド群の各々において2匹のサルを含んだ)を排除して分析したところ、全ての時点で、トロピカミドコントロールと比較して、フェニレフリンのフレア測定値に対して処置効果がないことが明らかになった(Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=7)。
【0092】
第2の実験セットでは、群サイズが小さいにも拘わらず、中ケトロラク群および高ケトロラク群におけるフレア測定値の一致した減少傾向があった。BSSコントロール群 対 4.5時間の時点で有意性を達成した中濃度および高濃度のケトロラク群(これらの2つの処置群を合わせて分析に検出力を加える場合)において、フレア測定値間に統計的有意差があった(F=5.17, P<0.0223; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=13;
図25を参照のこと)。高用量および中用量のケトロラク群におけるフレア測定値は、24時間および48時間の時点で、コントロール群と比較して低いままであったが、これらの差異は、分析の検出力を考慮すれば、高用量および中用量のケトロラク群が合わせて分析されようが別個に分析されようが、統計的有意に達しなかった。1週間では処置群のうちのいずれの間でも統計的有意差はなかったが、高濃度ケトロラク群は、同様の傾向を維持した。
【0093】
(結論)
アフリカミドリザル超音波水晶体乳化吸引モデルは、ヒト臨床エンドポイントに関連する散瞳および炎症測定の定量を可能にした。これらの測定値のうち、映像瞳孔直径評価および前眼房フレア光度計測法は、評価した時点での処置効果に対して最も応答性であった。映像瞳孔データは、前眼房灌流液中でのフェニレフリンの術中の送達が、手術処置の間中維持される散瞳の急速な開始を生じることを実証した。得られた最大散瞳は、濃度依存性であり、超音波水晶体乳化吸引手術処置に十分な散瞳が、評価した全濃度で達成された。10μM以上の濃度によって、術前の局所的1% トロピカミド(白内障処置の標準ケア)によって得られたものを越える散瞳が生じた。フレア光度計測および角膜厚測定(pachymetry)の測定値は、前眼房灌流液へのフェニレフリンの添加と関連する前眼房炎症もしくは角膜浮腫の低減を示さなかった。
【0094】
映像瞳孔データは、前眼房灌流液中でのケトロラクの術中送達が、BSSのみで観察されたものとは実質的に異なる散瞳変化を生じないことを実証した。しかし、濃度30μMでのフェニレフリンを灌流液にいったん添加した後は、急速な拡張が起こった。このことは、フェニレフリンの術中送達の以前に実証された有用性を確認した。フレア光度計測の測定値は、手術直後の前眼房炎症に対して4.5時間でケトロラクの正の効果を示した。
【0095】
(実施例7:超音波水晶体乳化吸引手術モデルにおけるフェニレフリンおよびケトロラク併用の研究)
非GLP研究を、90μM PEおよび30μM KEを含む灌流溶液で行って、散瞳および炎症エンドポイントに対する、白内障手術の間の眼内灌流によって投与された場合の併用効果を評価した。この実験シリーズでは、14匹のサルを7匹の群に分け、BSSのみ 対 PEおよびKE併用を含むBSS灌流液の効力を確立するために研究した。効力エンドポイントは、散瞳および前眼房炎症の尺度としてのレーザーフレア光度計測法を含んだ。コントロール群には、超音波水晶体乳化吸引手術のアフリカミドリザルモデルを使用するためにムスカリン性散瞳薬であるトロピカミドを術前にさらに与えて十分な拡張を可能にした。
【0096】
(結果)
PE−KE併用で灌流した動物は、灌流の約60秒内に6.0〜6.5mmの瞳孔拡張を達成した(
図26を参照のこと)。これらの値は、トロピカミドでの術前処置後に得られたものに等しかった。前眼房灌流を開始して最初の1分以内での3.0〜4.0mmの初期の瞳孔拡張の後に、トロピカミドコントロール群およびPE−KE処置群の両方で、瞳孔直径に対する時間の有意な効果を伴って(F=86.69, P<0.0001; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=12)それぞれ約2.5分および3.5分以内に、瞳孔直径がプラトーに達した(
図1を参照のこと)。BSSのみでの灌流の20分前に局所的トロピカミドを受けたコントロール群で示された初期の拡張(0〜2分)は、薬理学的効果でなかった可能性があり、灌流/吸引の流体力学的効果および/または角膜切開の作製を可能にするために誘導した粘弾性物質のクリアランスと関連する拡張を反映する。しかし、注目すべきは、トロピカミドコントロール群における初期のさらなる拡張は、処置の開始時に処置群より大きなベースライン拡張から始まり(F=86.69, P<0.0001;
図26を参照のこと)、PE−KE処置群によって示されたものより小さな最大拡張を生じたことである。PE−KE媒介性瞳孔拡張は、前眼房灌流開始から90秒以内にトロピカミドの術前投与によって達成された拡張を越えた。コントロール群とPE−KEを受けている処置群との間の差異は、0:00分、3:30分、4:00分、4:30分、5:00分、5:30分、6:00分、8:00分、10:00分、12:00分、12:30分および13:00分の時点で、有意であった(それぞれ、F=25.08, p<0.003; F=5.61, p<0.0355; F=9.95, p<0.0083; F=14.71, p<0.0024; F=18.01, p<0.0011; F=9.93, p<0.0084; F=10.39, p<0.0073; F=14.77, p<0.0023; F=14.77, p<0.0023; F=28.65, p<0.0002; F=20.51, p<0.0007; F=8.66, p<0.0134; F=5.48, p<0.0391; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=12;
図26を参照のこと)。
【0097】
観察された群の差異は、術中の散瞳の大きさにおよび術中の散瞳の長期化に対する、フェニレフリンおよびケトロラクを含むPE−KE灌流液の処置効果を確認した。初期の時点での2群間の差異は、群内変動性を反映してStudent Newman−Keuls判定基準によって有意ではなかったが、平均瞳孔直径で認められた傾向は、開始速度および散瞳効果の大きさの両方に対する処置効果を示唆する。より後の時点では、PE−KE処置群の中のいくらかの被験体での平均拡張は、この種の成体の眼において約10.5mmという散瞳の解剖学的限界(角膜縁の内径に対応する)に近づいた。
【0098】
ベースラインの術前前眼房フレア測定値は、両方の処置群において、手術した(右)眼で1.6〜9.9光子単位/ミリ秒(平均=5.3±2.3)の範囲に及んだ。両方の処置群において、処置した眼のフレア測定値に対して時間の有意な効果があった。このことから、介入関連炎症を定量することにおいてフレア光度計測法の有用性が確認された(
図27を参照のこと)。ベースライン 対 2時間、4.5時間、24時間、48時間および1週間での処置した眼のフレア測定値は、両方の処置群にわたって有意に異なっていた(F=4.94, p<0.0008; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=59)。
【0099】
PE−KE処置群は、トロピカミドコントロール群と比べて経時的により低い値のフレア測定値を有したが、それらは、いかなる時点でも統計的有意に達せず(F=3.32, P<0.0935; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=12;
図27を参照のこと)、一部は、実験的介入に対する被験体応答において大きな変動性を反映した。1匹のPE−KE処置被験体は、レンズ除去を複雑にする、前眼房灌流の間のより制限された瞳孔拡張を示した。この動物を除いたフレア測定値の分析は、2時間、4.5時間、24時間および48時間の時点で、PE−KE処置群とトロピカミドコントロール群間の統計的有意差を明らかにする(F=9.74, P<0.0097; Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=11;
図28を参照のこと)。1週間では、処置群の間に統計的有意差はなかった。
【0100】
(結論)
上記アフリカミドリザル超音波水晶体乳化吸引モデルは、ヒト臨床エンドポイントに関連する散瞳および炎症測定の定量を可能にした。これらの測定値のうち、映像瞳孔直径評価および前眼房フレア光度計測法は、評価した時点での処置効果に対して最も応答性であった。映像瞳孔データは、前眼房灌流液中のPE−KEの術中送達が急速な散瞳の開始を生じ、手術処置の間中散瞳が維持されることを実証した。得られた散瞳は、超音波水晶体乳化吸引手術処置が灌流の最初の60秒以内に行われるのに十分であった。散瞳の程度は、術前の局所的1% トロピカミド(白内障処置の標準ケア)によって得られるものを越えていた。フレア光度計測法の測定値は、手術直後に前眼房炎症に対するPE−KEの正の効果を示唆する。
【0101】
(実施例8:超音波水晶体乳化吸引手術モデルにおけるフェニレフリンおよびケトロラク併用の用量応答研究)
この非GLP研究を、低濃度、中濃度および高濃度のPEおよびKEを含む灌流溶液をアフリカミドリザルに房内送達した後に、用量応答および散瞳のタイムコースを確立するために行った。PE−KE製剤は、20mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)中に3:1の固定比で45mM フェニレフリンおよび15mM ケトロラクを含んだ。さらに濃厚450mM フェニレフリンHCl(PE)製剤を、高用量群でフェニレフリン濃度を上昇させるために提供した。散瞳のタイムコースを、4匹のサルで低濃度のPEおよびKE(90:30μM)灌流溶液を、4匹のサルにおいて中濃度(268:89μM)灌流溶液を、および4匹のサルにおいて高濃度(1165:89μM)灌流溶液を、房内投与した後に映像によって評価した。全ての房内投与の容積は、150μLであり、前眼房へのシリンジ容積の射出を約5秒間にわたって行った。
【0102】
低濃度(PE:KEは90:30μM)を混合するために、PE−KE薬物組成物の1本のバイアルから1.0mLを引き出し、500mL BSS灌流瓶の中に注入した。中濃度(PE:KEは268:89μM)に関してはPE−KE薬物組成物の3本のバイアルを、各バイアルから1.0mLを引き出して使用し、500mL BSS灌流瓶に注入した。高濃度群(PE:KEは1165:89μM)に関しては、さらなるフェニレフリンHClをBSS溶液中のPE:KEに添加した。
【0103】
(結果)
房内PE/KE灌流溶液を注射したサルは、灌流の60秒以内に約6〜7mmの瞳孔拡張を達成した。
図29に示されるように、初期の急速な瞳孔拡張の後に、瞳孔直径は、全ての処置群の間で瞳孔直径に対する時間の有意な効果を伴って約1分の時点でプラトーに達した(F=64.33, p<0.0001)。低用量群(90:30μM)と高用量群(1165:89μM)との間の差異は、1:30分、3:00分および3:30分の時点で統計的に有意であった(Student Newman−Keuls検定, α=0.05, df=9)。
【0104】
(結論)
アフリカミドリザル散瞳モデルは、ヒト臨床エンドポイントに関連する瞳孔応答の定量を可能にした。映像瞳孔データは、前眼房へのPE−KEの房内送達が、急速な散瞳の開始を生じ、これが映像記録が行われた10分の期間の間中維持されることが実証された。得られた散瞳は、超音波水晶体乳化吸引手術処置が投与後の最初の60秒以内に行われるために十分であった。散瞳の程度は、局所的1% トロピカミドの術前送達(白内障処置の標準ケア)による以前の効力研究のコントロールアームで得られたもの(平均瞳孔直径5.9mm)より大きかった。
【0105】
(実施例9:超音波水晶体乳化吸引手術モデルにおけるフェニレフリンおよびケトロラク併用の安全性研究)
非臨床的GLP毒性研究を、アフリカミドリザルで行った。この研究では、12匹の雄性サルおよび12匹の雌性サルに、超音波水晶体乳化吸引手術とレンズ置換を受けさせ、2週間回復させた。前眼房および関連する眼の構造全体にわたるPE−KE灌流溶液の連続灌流を、手術の間に行った。これは、この生成物の意図した投与経路を代表する。3種の濃度を評価した:低濃度群において720μM PEと90μM KE(720:90 μM)、中濃度群において2160μM PEと270μM KE(2160:270μM)、および高濃度群において7200μM PEと900μM KE(7200:900μM)。
【0106】
別個のコントロール群を同様に評価した。等しい数の雄性動物および雌性動物を、釣り合った平均体重を達成するために体重ランクに基づいて割り当てて、各群に分配した。全ての動物に、0日目に眼内レンズを置き換える手術処置を受けさせた。
【0107】
(結果)
手術処置を十分に許容した全ての動物は、無事な回復を有し、予定された屠殺および剖検まで生き残った。処置関連効果は、呼吸および心血管の観察および全ての臨床検査パラメーターに対して観察されなかった。
【0108】
各PE/KE灌流溶液の150μLの初期の房内送達は、30秒以内に急速な瞳孔拡張を生じ、拡張は、6.76±0.15〜7.29±0.15mm(平均±SD)へと用量依存性様式で増大した。BSSのみの150μlの房内送達の30秒後に、トロピカミドコントロール群の瞳孔直径は、5.18±0.18mmであった。
【0109】
低濃度処置群は、4.5時間および14日でトロピカミドコントロール群と比較してより低いフレア測定値を有したが、それらは、いかなる時点でも統計的有意性に達しなかった一方で、高濃度処置群におけるフレア応答は、全ての時点でコントロール群のものにほぼ等しかった。中濃度処置群は、全ての術後時点でトロピカミドコントロール、低濃度、および高濃度と比較してより高いフレア測定値を有し、2時間、4.5時間、および24時間で有意に達した。これらの知見は、中濃度処置群におけるより大きな手術外傷に対して二次的であると考えられる。フレアに対する濃度依存性効果は全く認められなかった。2週間では、処置群の間で統計的有意差はなかった。
【0110】
コントロール、低濃度、および高濃度処置群では、超音波水晶体乳化吸引手術後に眼内圧が低下したが、ベースラインからの差異は有意に達しなかった。4.5時間の時点で、中濃度処置群の眼内圧は、他の処置群におけるより有意に高かったが、ベースラインからの有意差はなかった(not different than baseline)。全体的な傾向としては、術後眼内圧の低下があった。
【0111】
瞳孔、角膜、レンズ、および虹彩のベースラインの臨床評価は、全ての動物の手術した(右)眼および手術しない(左)眼において正常範囲内であった。瞳孔直径は、24時間の時点でベースラインに戻った。このことは、残存する処置関連の散瞳効果もしくは縮瞳効果が最小であったことを示していた。
【0112】
(実施例10:臨床研究)
フェーズ2bヒト臨床試験は、本発明の処方1に従って製剤化したケトロラクおよびフェニレフリン併用薬物組成物を、術中の散瞳(瞳孔拡張)の維持ならびに白内障および他のレンズ置換手術から生じる術後疼痛および過敏の低減に対するその効果に関して評価した。併用薬物組成物を、眼内手術処置の間の眼内投与の前に、平衡塩類溶液灌流キャリア中で希釈した。
【0113】
主題のフェーズ2b研究は、無作為化並行群間比較のビヒクル対照要因計画試験(randomized, parallel group, vehicle−controlled, factorial design study)であり、同軸超音波水晶体乳化吸引プロセスとアクリルレンズ挿入を使用して、一側性の白内障摘出とレンズ置換(CELR)を受けている被験体において、フェニレフリン(PE)、ケトロラク(KE)およびPEとKEの両方を含む併用薬物組成物を比較するために行った。試験灌流溶液の投与を、二重盲検様式で行った。上記研究は、4アーム完全要因計画において、平衡塩類溶液(BSS)中で希釈して投与した場合の、2種の活性薬学的成分(PEおよびKE, 単独でおよび併用して)の、散瞳の維持および術後疼痛低減に対する寄与を評価した。上記研究はまた、術後炎症に対する併用薬物組成物、PE、およびKEの効果を調査した。被験体を、以下の4つの処置アームのうちの1つに、1:1:1:1様式で無作為化した:
a.BSSビヒクル
b.BSS中483μM PE
c.BSS中89μM KE
d.BSS中483μM PEおよび89μM KEを含む併用薬物組成物
【0114】
この研究の全ての被験体に、術前の散瞳薬および麻酔薬を与えた。上記4群の各々に、CELR手術処置の間に眼の前眼房の単回の灌流として、この研究では平均8分間の曝露で、それぞれの灌流処置を施した。さらに、上記処置の最後に、前眼房を灌流処置で満たした。外科的ベースライン(外科的切開の直前)から手術処置の最後(創傷閉鎖)までの経時的な瞳孔直径変化を、手術の日における術後疼痛であるときに測定し、ならびに、疼痛レスキュー薬物療法をとる前に、視覚的アナログスケール(VAS)によって、2時間、4時間、6時間、8時間および10〜12時間に、および患者によって記録された他の時間測定に測定した。
【0115】
この223名の患者のフェーズ2b臨床試験では、併用薬物組成物で処置した被験体は、BSS群もしくはKE群のいずれと比較しても、白内障処置の間中ずっと、統計的に有意な(p<0.0001)かつ臨床的に有意義な散瞳の維持を示した。散瞳の維持は、眼科医が瞳孔を通して手術するとことを考慮すれば、安全かつ上手くレンズ交換を行うために重要である。散瞳が上記処置の間中維持されなければ、眼内の構造体を損傷するリスクが増大し、必要とされる手術時間をしばしば長引かせる。手術の間の瞳孔サイズの任意の低減は、手術手技を妨げる。この研究では、平均瞳孔直径は、切開の時に8.3mmであった。2.5mm以上の低減(「極度の収縮」)は、処置に対して極度の潜在的な影響とともに、直径のうちの30%および平均瞳孔面積のうちの52%が失われることを表す。予測外なことには、この研究から、併用薬物組成物群の被験体のうちのわずか4%と比較して、BSS群の被験体のうちの21%およびKE群の被験体のうちの21%は、この極度の収縮を経験することを実証した。
【0116】
術中の合併症は、レンズ交換手術の間に瞳孔直径が6mm未満であるときに増大する。瞳孔収縮のこのレベルを経験した研究被験体の特性を同定するための、術中の瞳孔直径の治療を意図した集団に基づく(intent−to−treat basis)での分類別分析(categorical analysis)。この研究において、併用薬物組成物は、他の3つの処置アームの各々と比較した場合、この瞳孔収縮の程度、すなわち6mm未満の直径への縮瞳を防止することにおいて統計的に有意に優れていた(表XX)。
【表5】
【0117】
瞳孔直径の臨床的に有意な減少は、処置関連合併症(後嚢断裂、レンズ断片の残留および硝子体漏出が挙げられる)の増大と関連している。これらの知見は、フェニレフリンおよびケトロラクが臨床的に意義深い縮瞳を防止することにおいて各々寄与しかつ相乗的に作用することを実証する。
【0118】
この知見は驚くべきことである。なぜなら、フェニレフリンは強力な散瞳薬であり、縮瞳のみを阻害すると予測されているからである。驚くべきことに、ケトロラクはまた、フェニレフリンの効果に加えて抗縮瞳効果を提供した。
【0119】
さらに、併用薬物組成物はまた、PE群(p=0.0089)もしくはBSS群(p=0.0418)のいずれかと比較して術後初期(術後10〜12時間)の疼痛を有意に低減した。驚くべきことに、併用薬物組成物はまた、中程度および重度の疼痛の訴えの頻度を減少させた(BSS処置被験体では、2.5倍以上の訴え)。薬物組成物は、安全でかつこの研究で十分許容された。
【0120】
この研究は、上記で同定された出願において特許請求された本発明の組成物および使用が驚くべき程度の極度の瞳孔収縮を妨げ、手術の間に試験薬物に曝したほんの数分後に手術後最大10〜12時間まで中程度および重度の術後疼痛の予測外の低減を生じることを実証する。
【0121】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で、図示および例証によって幾分詳細に記載されてきたものの、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の趣旨からも範囲からも逸脱することなく本発明に対して行われ得ることは、本発明の教示に鑑みて、当業者に容易に明らかである。
【0122】
独占的な特性もしくは権利が請求される本発明の実施形態は、以下のとおりに定義される。