特許第6017084号(P6017084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017084
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】床施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   E04G21/14
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-134241(P2016-134241)
(22)【出願日】2016年7月6日
【審査請求日】2016年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500337266
【氏名又は名称】株式会社富士昭技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦好
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−7229(JP,A)
【文献】 特開昭63−181860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14−2/22
E04B 5/32−5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄筋トラス付きデッキプレートを地上の作業場に搬入して建造物の床施工階の相対する梁間のスペースに対応する大きさおよび形状の床版ユニットを組み立てる工程と、前工程で組み立てられた床版ユニットを仮置き場へ搬送して仮置く工程と、前工程で仮置かれた床版ユニットを吊り上げて建造物の床施工階へ搬送して各階の床を施工する工程とを含み、前記仮置き場に仮置かれる床版ユニットは複数段に積み重ねられて仮置かれ、仮置きに際して、前記床版ユニットはその下段の床版ユニットの鉄筋トラスの鉄筋上に各鉄筋トラスと直交する方向にほぼ全幅にわたって並行して置かれる複数本の合成樹脂製のパイプを中間に介在させて積み重ねられることを特徴とする床施工方法。
【請求項2】
前記鉄筋トラス付きデッキプレートは、基板上に所定の間隔で配設された複数の吊り材の頂部の下面に鉄筋トラスの鉄筋が溶接により固着されることにより鉄筋トラスが吊持されたものであり、前記の各パイプは上面が前記吊り材の上方へ突出するように形状が定められている請求項1に記載の床施工方法。
【請求項3】
前記パイプは、塩化ビニル製のパイプである請求項1または2に記載の床施工方法。
【請求項4】
前記パイプは、径方向の断面形状が円形である請求項1〜3のいずれかに記載の床施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地上の作業場で組み立てられた床版ユニットを建造物の床施工階へ吊り上げて各階の床を施工するための床施工方法に関し、この発明は特に、地上で組み立てられた床版ユニットを仮置き場に仮置くのに実施される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造の建築物の床を施工するのに、施工すべき建築物の骨組みが完成した後、所定の枚数を梱包した鉄筋トラス付きデッキプレート(以下、「鉄筋トラス付きデッキプレート」または単に「デッキプレート」という。)の複数個を床施工階までクレーンで吊り上げて仮置きし、床の施工位置に敷き込んだ後、作業者が現場でデッキプレートの上に乗ってデッキプレートの端部等を1枚、1枚梁に溶接している。しかし、この種の作業は、「労働安全衛生法」に定められた「高所作業」となるため、作業者の墜落、転落災害を防止するための諸施設やデッキプレートや作業工具などの飛来、落下を防止するための安全設備をスラブ下方の全域に設置する必要がある(特許文献1の従来の技術の欄および特許文献2の発明が解決しようとする課題の欄参照)。
【0003】
上記した問題に鑑み、地上において、複数枚のデッキプレートを連ねたものに複数本の小梁を力骨として固着させた構造物(以下、「デッキプレート構造物」という。)を組み立て、これに玉掛けワイヤーの下端部を引っ掛けて吊り上げ、仮置き場へ運んで他の床版ユニット上に積み重ねられて仮置かれた後、床施工階の建て方が完了したとき、最上位置のデッキプレート構造物に前記の玉掛けワイヤーの下端部を引っ掛けて吊り上げ、建造物の床施工階へ運び上げるという工法が提案された(特許文献1、2参照)。
【0004】
この種のデッキプレート構造物やこの発明の実施に用いられる床版ユニット(以下、単に「床版ユニット」という。)を製作するのに用いられるデッキプレートとして、図12に示す構造のものがあり、金属製の基板10上に長さ方向に所定の間隔で配設された複数の吊り材12の頂部の下面に鉄筋トラス11の上端筋13が溶接により固着されることにより鉄筋トラス11が吊持されている。なお、図中、14は上端筋と平行な下端筋、15は上端筋13と下端筋14との間に設けられるラチス筋である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−62875号公報
【特許文献2】特許第5723235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した構成のデッキプレート1においては、前記吊り材12は、鉄線を伸長したり折り曲げたりするなどして加工されており、これがため、特に曲げ加工部分等に赤錆が発生し易い。吊り材12の頂部は、上段の床版ユニットの基板10の下面に当接するので、吊り材12の頂部に赤錆が発生していると、溶融亜鉛メッキ鋼板よりなる基板10の下面に赤錆が付着し、見栄えを著しく低下させるばかりでなく、赤錆が基板10の表層の溶融亜鉛メッキ層を損なって母材の発錆を引き起こすおそれがある。また、鉄筋トラス11を構成する上端筋13や下端筋14に赤錆が発生していることが多く、上端筋13が上段の床版ユニットの基板10の下面に接したとき、基板10の下面に赤錆が付着し、同様に見栄えを著しく低下させる。
さらに、基板10は亜鉛メッキ鋼板であって薄く、床版ユニットが多段に積み上げられると、各段の床版ユニットにはその段より上段の床版ユニットの荷重が掛かるため、その荷重によって基板10の下面にその下段の床版ユニットの吊り材10が押し付けられて基板10が変形するおそれがある。
【0007】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、床版ユニットを複数段に積み重ねて仮置きするとき、床版ユニットの基板の下面にその下段の床版ユニットの構成部材に発生した赤錆が付着して見栄えを損ねたり、基板がその下段の床版ユニットの構成部材より押圧を受けて変形したりすることがない床施工方法を提供することを目的とする。
【0008】
この発明による床施工方法は、複数の鉄筋トラス付きデッキプレートを地上の作業場に搬入して建造物の床施工階の相対する梁間のスペースに対応する大きさおよび形状の床版ユニットを組み立てる工程と、前工程で組み立てられた床版ユニットを仮置き場へ搬送して仮置く工程と、前工程で仮置かれた床版ユニットを吊り上げて建造物の床施工階へ搬送して各階の床を施工する工程とを含むものであり、前記仮置き場に仮置かれる床版ユニットは複数段に積み重ねられて仮置かれ、仮置きに際して、前記床版ユニットはその下段の床版ユニットの鉄筋トラスの鉄筋上に各鉄筋トラスと直交する方向にほぼ全幅にわたって並行して置かれる複数本の合成樹脂製のパイプを中間に介在させて積み重ねられる。
【0009】
上記した床施工方法において、仮置き場に積み重ねられて仮置かれる床版ユニットは、その下段の床版ユニットの鉄筋トラスの鉄筋上に各鉄筋トラスと直交する方向にほぼ全幅にわたって平行して置かれる複数本の合成樹脂製のパイプを中間に介在させて積み重ねられるので、積み重ねられる床版ユニットの基板は、その下段の床版ユニットの鉄筋トラスの構成部材と直接接触しない。このため、仮に、下段の床版ユニットの構成部材に赤錆が発生していても、積み重ねられる床版ユニットの基板の下面に赤錆が付着することがない。また、基板の下面に下段の床版ユニットの構成部材が押し付けられることがなく、基板が変形するおそれもない。
【0010】
この発明の一実施態様においては、前記鉄筋トラス付きデッキプレートは、基板上に所定の間隔で配設された複数の吊り材の頂部の下面に鉄筋トラスの鉄筋が溶接により固着されることにより鉄筋トラスが吊持されたものであり、前記の各パイプは上面が前記吊り材の上方へ突出するように形状が定められている。
【0011】
この実施態様においては、各パイプの上面が吊り材の上方へ突出するので、パイプ上に載せられた鉄筋トラス付きデッキプレートの基板の裏面はその下段の鉄筋トラス付きデッキプレートの吊り材に接触することがなく、基板の裏面に吊り材に発生した赤錆が付着したり、吊り材の押圧により基板が変形したりすることがない。
【0012】
この発明の上記した構成において、前記パイプは安価で軽量な塩化ビニル製のパイプを用いることが望ましいが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0013】
また、好ましい実施態様においては、前記パイプは径方向の断面形状が円形のものが用いられる。
【0014】
上記の実施態様においては、鉄筋トラスの鉄筋上でパイプが転動するので、パイプを移動するのが容易であり、決められた位置にパイプを容易に位置決めできる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複数の床版ユニットを複数段に積み重ねて仮置きするとき、床版ユニットの基板の下面にその下段の床版ユニットの構成部材に発生した赤錆が付着して見栄えを損ねたり、基板が上段の床版ユニットの構成部材に押圧されて変形したりするおそれがないばかりか、赤錆が基板の表層の溶融亜鉛メッキ層を損なって母材の発錆を招くおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に係る床施工方法の流れを示すフローチャートである。
図2】鉄筋トラス付きデッキプレートの搬入工程を示す説明図である。
図3】床版ユニットの組立工程を示す説明図である。
図4】棒材組付工程を示す説明図である。
図5】結束工程を示す説明図である。
図6】床版ユニットの側面図である。
図7】玉掛け工程を示す説明図である。
図8】床版ユニット仮置き工程を示す正面図である。
図9】床版ユニット仮置き工程を示す側面図である。
図10】床版ユニットが積み重ねれた状態を拡大して示す中間を省略した正面図である。
図11】床版ユニットにより施工された床を示す平面図である。
図12】この発明の実施に用いられる鉄筋トラス付きデッキプレートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、この発明の一実施例である床施工方法の流れを示している。この床施工方法は、地上の作業場に複数のデッキプレートを搬入して床版ユニットを組み立てた後、その床版ユニットを床施工階に吊り上げて床を施工するもので、図1(1)に示す床版地組工程と図1(2)に示す床施工工程とで構成されている。床版地組工程は、デッキプレートの搬入(図中、「ST1」で示す。以下同様)、床版ユニットの組立(ST2)、棒材の組付(ST3)、結束(ST4)、玉掛け(ST5)、床版ユニットの搬送(ST6)、床版ユニットの仮置き(ST7)の各工程を含んでいる。上記のST1〜7は、作業場へのデッキプレートの搬入がなくなるまで、すなわち、図1(1)のST8の判定が「YES」になるまで繰り返し実行される。
【0018】
床施工工程は、床施工階の仮組立が完了すると、ST9が「YES」となり、床版ユニットの搬送(ST10)、床の施工(ST11)の各工程が実行され、最上階に達するまで、すなわち、ST12の判定が「YES」になるまで上記のST10,11が繰り返し実行される。
【0019】
前記した図12に示したデッキプレート1の構成をさらに詳しく説明すると、図示のデッキプレート1は、溶融亜鉛メッキ鋼板よりなる金属製の基板10と、基板10上に一定の間隔Lで並設された複数の鉄筋トラス11とを備えている。なお、以下の説明において、鉄筋トラス11が並べられる方向を「幅方向」、鉄筋トラス11が延びる方向を「長さ方向」という。基板10上には、長さ方向に沿って所定の間隔で複数の吊り材12が平行に配設され、各吊り材12の頂部に各鉄筋トラス11の上端筋13が溶接により固着されて各鉄筋トラス11が吊持されている。各鉄筋トラス11は、上端筋13と、上端筋13と平行な下端筋14と、上端筋13と下端筋14との間に設けられるラチス筋15とを含んでおり、吊り材12と直交する方向、すなわち、長さ方向に配設されている。基板10の上面には長さ方向に沿って複数の補強用リブ16が一体に形成されている。また、基板10の両側縁には隣のデッキプレートと繋ぐための継ぎ手部17が一体に形成されている。
【0020】
図1(1)に戻って、ST1のデッキプレートの搬入工程では複数のデッキプレート1が地上の作業場に搬入される。地上の作業場には、図2に示されるように、2本の架台2,2が平行に設置されており、この架台2,2上に複数のデッキプレート1が積み置かれている。この場合、各デッキプレート1は、2枚を1組として、鉄筋トラス11が互いに噛み合うように重ねて段積みされるので、デッキプレート1の基板10の下面に赤錆が付着することはない。なお、架台2,2にはH形鋼などの鋼材が用いられるが、これに限られるものではない。
【0021】
ST2の床版ユニットの組立工程では、図3に示されるように、前工程で搬入された複数のデッキプレート1を架台2,2上に鉄筋トラス11の長さ方向と直交する方向へ基板10が連なるように敷き並べて建造物の相対する梁間のスペースに対応する大きさおよび形状の床版ユニット3を組み立てる。この作業は二人の作業員がデッキプレート1の両端部を持って移動させることにより行われる。基板10と隣のデッキプレート1の基板10とは継ぎ手部17を介して連結される。
【0022】
ST3の棒材の組付工程では、図4に示されるように、前工程で組み立てられた床版ユニット3に2本の金属製の棒材4,4が組み付けられる。各棒材4は基板10が連なる方向に沿う床版ユニット3の中心線cに対して線対称の位置に全長にわたり配置される。棒材4として上端筋13より大きな径の鋼棒が用いられるもので、図6に示されるように、各棒材4は各鉄筋トラス11の上端筋13の下方、下端筋14の上方を通っており、両端は両端位置のデッキプレート1,1まで延びている。
【0023】
ST4の結束工程では、図5に示されるように、各棒材4を鉄筋トラス11の上端筋13との交差位置において上端筋13に固定する。各棒材4の上端筋13への固定は溶接によることもできるが、この実施例では、上端筋13が溶接による熱の影響を受けないようにするために、各棒材4は各上端筋13との交差位置において金属製の線材40により上端筋13に結束している。なお、各棒材4の上端筋13への結束位置は棒材4の上端筋13との全ての交差位置において行ってもよいが、選択されたいくつかの交差位置で行ってもよい。この結束工程により複数のデッキプレート1は連なった状態が保持され、建造物の柱と梁とで囲まれるスペースに対応する大きさおよび形状の床版ユニット3が完成する。
【0024】
図7は、ST5の玉掛け工程およびST6の床版ユニットの搬送工程を示している。玉掛け工程では、吊り具5を構成する矩形枠50を介して複数本の玉掛けワイヤー6a,6bを垂下させ、各玉掛けワイヤー6a,6bの下端に設けられたフック61を架台2,2上に支持された床版ユニット3の各棒材4,4に引っ掛ける。前記吊り具5の矩形枠50は、床版ユニット3の外形にほぼ一致する形状であり、2本の平行な棒状の枠材51a,51bと、枠材51a,51bの両端間を結ぶ2本の端枠材52と、中間の3箇所に設けられる中間枠材53,54,55とを含んでいる。
【0025】
各枠材51a,51bの上面の中間枠材53,54,55が設けられる位置にはクレーン(図示せず)より吊り下げられた複数本のワイヤーロープ7の下端部が繋がれる接続部56が形成されている。また、各枠材51a,51bの下面には一定間隔毎に同様の接続部57が形成され、一方の枠材51aの各接続部57より床版ユニット3の一側縁に達する玉掛けワイヤー6aを、他方の枠材51bの各接続部57より床版ユニット3の他側縁に達する玉掛けワイヤー6bを、それぞれ垂下させている。各玉掛けワイヤー6a,6bとして同一長さのフック付きワイヤーロープが用いられ、上端部のシンブル62が前記接続部57に接続され、下端部のシンブル63には床版ユニット3の各棒材4に引っ掛けられるフック61が取り付けられている。
【0026】
ST6の床版ユニットの搬送工程では、吊り具5をクレーン(図示せず)より下ろされたワイヤーロープ7により引き上げることにより床版ユニット3を吊り上げ、これにより床版ユニット3を仮置き場へ搬送する。搬送されてきた床版ユニット3は、ST7の床版ユニットの仮置き工程で仮置き場に置かれるもので、上記したST1〜ST7が繰り返されることにより、搬送されてきた床版ユニット3は、図8および図9に示すように、複数段に積み重ねられて段積み状態で仮置かれる。なお、同図では各床版ユニット3は模型的に表してある。また、同図において、100は地面上に敷かれた木製の敷板である。
【0027】
この仮置きに際して、各床版ユニット3は、図10に示すように、その下段の床版ユニット3の鉄筋トラス11の上端筋13上に各鉄筋トラス11と直交する方向にほぼ全幅にわたって並行して置かれる複数本の合成樹脂製のパイプ8を中間に介在させて積み重ねられる。各パイプ8は上面が吊り材12の上方へ突出するように形状および大きさ(径)が定められている。この実施例の各パイプ8は、塩化ビニル製のパイプであり、径方向の断面形状が円形をなす。なお、パイプ8の材質は塩化ビニル以外の合成樹脂であってもよく、また、径方向の断面形状も円形に限らず、楕円形、多角形などであってもよい。
また、この実施例では、パイプ8の本数は2本であって両端部位置にのみ配置されているが、図10において一点鎖線で示すように、両端部位置のパイプ8に加えて、その内側にさらに2本、さらにはそれ以上の本数のパイプ8を適当な間隔で配置してもよい。
【0028】
鉄骨造の建築物の床を施工する場合、施工すべき建築物の仮組立を完了した後(図1(2)のST9)、ST10の床版ユニットの搬送工程では、仮置き場に積み重ねられた床版ユニット3を最上位置のものから順々に前記吊り具5により吊り上げて建築物の床施工階へ搬送し、ST11の床の施工工程において、図11に示すように、施工すべき床の位置に床版ユニット3を順次位置決め固定する。なお、図中、9は支柱、91は大梁鉄骨、92は小梁鉄骨である。
【0029】
上記した床施工方法において、仮置き場に搬入されて複数段に積み重ねられる各床版ユニット3は、その下段の床版ユニット3の鉄筋トラス11の上端筋13上に各鉄筋トラス11と直交する方向にほぼ全幅にわたって平行して置かれる複数本の合成樹脂製のパイプ8を中間に介在させて積み重ねられる。この場合、パイプ8は軽量な塩化ビニル製のパイプが用いられているので、取扱が容易であり、積み上げられた床版ユニット3上に手作業により持ち上げることが可能である。また、径方向の断面形状が円形のパイプ8を用いているので、パイプ8は鉄筋トラス11の上端筋13上を転動させることができ、パイプ8の移動および位置決めが容易である。
【0030】
上端筋13上に支持された各パイプ8はその上面が吊り材12の上方へ突出するので、積み重ねられる床版ユニット3の基板10は、その下段の床版ユニット3の鉄筋トラス11の吊り材12と直接接触しない。このため、仮に、下段の床版ユニット3の吊り材12や上端筋13に赤錆が発生していても、積み重ねられる床版ユニット3の基板10の下面に赤錆が付着することがない。また、基板10の下面に下段の床版ユニット3の吊り材12が押し付けられることがなく、基板10が変形するおそれもない。
【符号の説明】
【0031】
1 デッキプレート
3 床版ユニット
8 パイプ
10 基板
11 トラス
12 吊り材
13 上端筋
【要約】
【課題】複数の床版ユニットを積み重ねて仮置きするとき、床版ユニットの基板の下面にその下段の床版ユニットの構成部材に発生した赤錆が付着して見栄えを損ねたり、基板がその下段の床版ユニットの構成部材より押圧を受けて変形したりしないようにする。
【解決手段】地上の作業場において建造物の床施工階の相対する梁間のスペースに対応する大きさおよび形状の床版ユニット3を組み立てる工程と、前工程で組み立てられた床版ユニット3を仮置き場へ搬送して仮置く工程とを含み、前記仮置き場に仮置かれる床版ユニット3は複数段に積み重ねられて仮置かれ、仮置きに際して、前記床版ユニット3はその下段の床版ユニット3の鉄筋トラス11の上端筋13上に各鉄筋トラス11と直交する方向にほぼ全幅にわたって並行して置かれる複数本の合成樹脂製のパイプ8を中間に介在させて積み重ねられる。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12