(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が93%以上である請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂(β)。
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量が5000〜100000の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する前記エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が50000〜200000の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
非晶性成分により形成される海相と結晶性成分により形成される島相とからなる相分離構造を有し、透過型電子顕微鏡像における前記島相の平均径が50nm〜500nmの範囲にある請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
前記プロピレン系樹脂(α)50〜98重量部およびオレフィン系樹脂(β)2〜50重量部(プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)の合計は100重量部である) を含有することを特徴とする請求項9に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかるオレフィン系樹脂[β]、当該樹脂の製造方法、プロピレン系樹脂組成物および成形体について詳説する。
<オレフィン系樹脂[β]>
本発明のオレフィン系樹脂[β]は、オレフィン系重合体一種のみで構成されていてもよいし、二種以上のオレフィン系重合体から構成されていてもよいが、必ず下記要件(I)〜(VI)を全て満たすことを特徴としている。
(I)オレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖およびプロピレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体の割合をPwt%としたとき、Pが5〜60の範囲にある。
(III)オルトジクロロベンゼンを溶媒としたクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク温度が65℃未満である成分の前記オレフィン系樹脂(β)に対する割合をEwt%としたとき、該Eと前記Pにおいて、下記関係式(Eq−1)で表される値aが1.4以上である。
【0024】
【数2】
(IV)示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が120〜165℃の範囲にあり、ガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲にある。
(V)熱キシレン不溶解量が3wt%未満である。
(VI)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0dl/gの範囲にある。
【0025】
以下、これらの要件(I)〜(VI)について具体的に説明する。
〔要件(I)〕
オレフィン系樹脂(β)は、前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]を必須の構成成分として含む。該グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖およびプロピレン重合体からなる側鎖を有するグラフト共重合体である。
【0026】
なお、本発明において「グラフト共重合体」という語は、主鎖に対し側鎖が1本以上結合したポリマーである。
【0027】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、非晶性または低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖にプロピレン重合体からなる側鎖が化学的に結合した構造であるので、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)は、直鎖構造のエチレン・αオレフィン共重合体プロピレン系樹脂に比べて高い相溶性を示す。このため、オレフィン系樹脂(β)と後述するプロピレン系樹脂(α)とを含むプロピレン系樹脂組成物は極めて優れた物性バランスを発現することができる。
【0028】
また、オレフィン系樹脂(β)は上記構造のグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むことから、一般的なエチレン系エラストマー(例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体やエチレン/オクテン共重合体)に比べ、べたつきが小さく、製品ペレットのハンドリング性に優れるという特徴を持つ。
【0029】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、上述のとおり、主鎖および側鎖を有するグラフト共重合体である。本発明において、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖および側鎖は、下記(i)〜(iv)の要件を満たすことが好ましい。
(i)主鎖が、エチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位とからなり、前記α−オレフィンから導かれる単位の割合が、主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し10〜50mol%の範囲である。
(ii)主鎖が、重量平均分子量が10000〜200000であるエチレン・α−オレフィン共重合体に由来する。
(iii)側鎖が、実質的にプロピレンから導かれる繰り返し単位からなる。
(iv)側鎖が、重量平均分子量が5000〜100000であるプロピレン重合体に由来する。
【0030】
以下、これらの要件(i)〜(iv)について具体的に説明する。
〔要件(i)〕
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖はエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、グラフト型オレフィン系重合体[R1]において、柔軟性や、改質材として要求される低温特性などの特性を担う部位となる。そのような特性を担保するために、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖は、エチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位とからなる。
【0031】
ここでエチレン・α−オレフィン共重合体においてエチレンと共重合している炭素原子数3〜20のα−オレフィンの具体例としてはプロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
【0032】
より好ましくは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、さらより好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状オレフィン、および4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができ、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが更に好ましい。エチレンと共重合する炭素原子数3〜20のα−オレフィンとして1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、または1−オクテンを用いることで、最も剛性と耐衝撃性との物性バランスが良好なプロピレン系樹脂組成物が得られる。
【0033】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖中のエチレンから導かれる繰り返し単位の割合は、主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し50〜90mol%、好ましくは60〜90mol%の範囲である。また、α−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合は主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し10〜50mol%、好ましくは10〜40mol%の範囲である。
【0034】
用いるα−オレフィンの種類によって上記エチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合とガラス転移温度(Tg)の関係は異なるが、前記要件(IV)に記載のガラス転移温度(Tg)の範囲を達成するうえで、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンの繰り返し単位の割合は上記範囲にあることが好ましい。
【0035】
主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が上記範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)は柔軟性に富み低温特性に優れた性質となるので、オレフィン系樹脂(β)を含むプロピレン系樹脂組成物は低温耐衝撃性に優れる。一方、α−オレフィンから導かれる繰り返し単位が10mol%より少ないと、得られるオレフィン系樹脂が柔軟性や低温特性に劣る樹脂となるため、該樹脂を含むプロピレン系樹脂組成物は低温耐衝撃性に劣る場合がある。
【0036】
主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位のモル比は、主鎖を製造する工程で重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンの濃度との割合を制御することにより調整できる。
【0037】
なお、主鎖に含まれるα−オレフィンから導かれる繰り返し単位のモル比(mol%)、すなわち主鎖中のα−オレフィン組成は、例えば、後述する末端不飽和ポリプロピレンを含まない条件下で得られるエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン組成を常法により求めることや、オレフィン系樹脂(β)のα−オレフィン組成から末端不飽和ポリプロピレンや側鎖に由来する影響を差し引くことから求められる。
〔要件(ii)〕
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する前記エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が50000〜200000の範囲にある。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、機械強度を保持しながら樹脂の成型性(流動性)を向上させるためには、100000〜200000の範囲であることが好ましい。前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められるポリエチレン換算の重量平均分子量である。
【0038】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が上記範囲にあると、オレフィン系樹脂(β)を含むプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性および靭性のバランスがより良好になる傾向がある。一方、前記重量平均分子量が50000より小さいと、耐衝撃性や靭性が低下し、200000より大きいと、プロピレン系樹脂への分散不良がおこり所望の物性バランスを得ることが困難になる場合がある。
【0039】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量は、後述する製造工程において、重合系中のエチレン濃度を制御することで調整できる。エチレン濃度の制御方法としては、エチレン分圧調整や重合温度の調整が挙げられる。主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量の調整は重合系中に水素を供給することでも可能である。
【0040】
主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量は、例えば、後述する末端不飽和ポリプロピレンを含まない条件下で製造した場合のエチレン・α−オレフィン共重合体を分析することや、オレフィン系樹脂(β)を分析し末端不飽和ポリプロピレンや側鎖に由来する影響を差し引くことから求められる。
〔要件(iii)〕
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、実質的にプロピレンから導かれる繰り返し単位からなる。グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、実質的にプロピレンから導かれる繰り返し単位からなるアイソタクチック規則性を有するプロピレン重合体である。
【0041】
実質的にプロピレンから導かれる繰り返し単位からなるプロピレン重合体とは、好ましくはプロピレンから導かれる繰り返し単位のモル比が、該プロピレン重合体に含まれる全繰り返し単位に対し99.5〜100mol%からなる重合体を示す。すなわち、その役割と特徴を損なわない範囲でエチレンおよびプロピレン以外のα−オレフィンが少量共重合されてもよい。
【0042】
さらに好ましくは、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が93%以上のプロピレン系重合体鎖である。
【0043】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖が上記特徴を有することにより、側鎖は結晶性を示し、融点を持つ。グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖が高融点のアイソタクチックポリプリプロピレン重合体であることが、オレフィン系樹脂(β)のプロピレン樹脂への相溶性を高めることになる。このため、得られるプロピレン系樹脂組成物は、良好に耐衝撃性を発現しながら、剛性および硬度を良好に保持する。
【0044】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造工程(B)において、工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンとエチレンおよびα−オレフィンを共重合することにより得ることができる。すなわち、末端不飽和ポリプロピレンの組成および立体規則性が、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の組成および立体規則性に相当する。従って工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンの組成および立体規則性を公知の方法を用いて算出し、その組成および立体規則性をグラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の組成および立体規則性と定義できる。
〔要件(iv)〕
側鎖が、重量平均分子量が5000〜100000であるプロピレン重合体に由来する。すなわち、グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、重量平均分子量が5000〜100000であるプロピレン重合体であるマクロモノマーがエチレン・α−オレフィン共重合体に結合してなる構造を有し、プロピレン重合体部位が側鎖となる。前記重量平均分子量は、好ましくは5000〜60000、さらに好ましくは5000〜25000の範囲である。
【0045】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量が上記範囲にあることで、プロピレン重合体とオレフィン系樹脂(β)との相溶性が高まり、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)とを含むプロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性や破断伸びが良好に発現され、さらに射出成形時の流動性も良好になる。
【0046】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量が5000より小さいと、プロピレン系樹脂との界面強度が弱くなり、プロピレン系樹脂組成物の伸びや耐衝撃性が低下する場合がある。
【0047】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量が100000より大きいと、オレフィン系樹脂(β)を含む樹脂組成物の成形時における流動性が悪くなり、加工性の悪化の原因となる場合がある。また、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)との相溶性が低下して、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)とを含むプロピレン系樹脂組成物の引張伸びや耐衝撃性が低下したり、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の表面硬度が低下する場合がある。
【0048】
なお、側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量は上述した「要件(iii)」の記載と同様に、工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンの重量平均分子量を常法にて測定することで求めることができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる前記末端不飽和ポリプロピレンのポリプロピレン換算の重量平均分子量を、側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量として用いことが出来る。
【0049】
側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量の調整方法としては、後述する製造工程(A)において、重合温度や重合圧力を調整する方法が挙げられる。
〔要件(II)〕
前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体の割合(以下、割合Pともいう)をPwt%としたとき、Pが5〜60%の範囲にある。ここで、オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体とは、後述する重合工程(B)において主鎖に取り込まれたポリプロピレン側鎖と主鎖に取り込まれなかったポリプロピレン直鎖状ポリマーとの総和を示す。
【0050】
割合Pは好ましくは8〜50wt%、より好ましくは8〜40wt%である。
【0051】
割合Pが上記範囲にあると、プロピレン重合体とオレフィン系樹脂(β)との相溶性が高まり、プロピレン系重合体とオレフィン系樹脂(β)とを含むプロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性や破断伸びが良好に発現される。割合Pが5より小さいと、プロピレン重合体との相溶性が低く、得られるプロピレン系樹脂組成物は耐衝撃性や破断伸びにおいて良好な物性を発現しない場合がある。割合Pが60より大きいと、相対的なエチレン・α−オレフィン共重合体の含量が少ないことにより、得られるプロピレン系樹脂組成物が低温耐衝撃性や破断伸びにおいて良好な物性を発現しない場合がある。
【0052】
割合Pは、たとえば後述する重合工程(B)に用いる末端不飽和ポリプロピレンの重量と、得られたオレフィン系樹脂(β)の重量の比率から求められる。
【0053】
また、末端不飽和ポリプロピレンとは、下記末端構造(I)〜(IV)で表される不飽和末端をもつポリプロピレンを意味する。末端構造(I)〜(IV)における「Poly」は、末端構造と、該末端構造以外のプロピレン重合体分子鎖との結合位置を示す。
【0054】
【化2】
前記末端不飽和ポリプロピレンにおける不飽和末端の割合は1000炭素原子あたり通常0.1〜10であるが、より好ましくは0.4〜5.0である。さらに、一般的に末端ビニルと呼ばれる末端構造(I)で表される不飽和末端割合は炭素原子1000個あたり、通常0.1〜2.0個であるが、好ましくは、0.4〜2.0個の範囲にある。
【0055】
前記不飽和末端の定量は、末端不飽和ポリプロピレンの末端構造を
1H−NMRで決定することにより求められる。
1H−NMRは常法に従って測定すればよい。末端構造の帰属は、Macromolecular Rapid Communications 2000, 1103等に記載の方法に従って行うことができる。
【0056】
例えば、末端構造(I)の場合、δ4.9〜5.1(2H)の積分値A、プロピレン重合体に由来する全積分値をBとすると、1000炭素原子あたりの末端構造(I)の割合は1000×(A/2)/(B/2)の式で求められる。他の末端構造の割合を求める場合も、水素の比に注意しながら各構造に帰属されるピークの積分値に置き換えればよい。
〔要件(III)〕
オレフィン系樹脂(β)は、オルトジクロロベンゼンを溶媒としたクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク温度が65℃未満である成分の割合(以下、割合Eともいう)をEwt%としたとき、下記関係式(Eq−1)で表される値a (以下、a値ともいう)が1.4以上であり、好ましくは1.6以上、さらに好ましくは2.2以上である。
【0057】
【数3】
前記微分溶出曲線は、溶出温度が−20℃〜140℃の範囲において、得られる累積溶出曲線を微分して得られるものである。さらに前記微分溶出曲線において現れる各溶出ピークを正規分布曲線にピーク分離することで、各溶出ピークの成分比を求めることができる。ここで、−20℃未満での可溶成分割合(CFC測定の冷却工程において−20℃においても温度上昇溶離分別(TREF)カラム内にコーティングされない成分の割合)をE
(<-20℃
)wt%、−20℃以上65℃未満にピークを持つ溶出成分の割合の和をE
(<65℃
)wt%、65℃以上140℃以下にピークを持つ溶出成分の割合の和をE
(≧
65℃
)wt%、140℃で溶解しない成分割合をE
(>140℃
)wt%とし、E
(<-20℃
)+E
(<65℃
)+E
(≧
65℃
)+E
(>140℃
)=100とした場合、E=E
(<-20℃
)+E
(<65℃
)、と定義される。
【0058】
通常、オレフィン樹脂(β) は140℃のオルトジクロロベンゼンに対して全量可溶であり、65℃以上にピーク分離が容易である明瞭なピークを検出できることから、E
(>140℃
)=0の場合、E=100−E
(≧
65℃
)と定義される。
前記CFC測定における検出計としては、赤外分光高度計(検出波長3.42μm)を用いることが好ましい。
【0059】
なお、前述のオレフィン系樹脂(β)全量に対する割合Eと割合Pにおいて、全量というのは後述する重合工程を経て得られた樹脂のみに対するものであり、別途加えられた樹脂、添加剤等は前述の全量には含まれない。
【0060】
前記a値が前記範囲にあることは、オレフィン系樹脂(β)が、グラフト型オレフィン系重合体[R1]、すなわちプロピレン重合体部位を側鎖として有すエチレン・α−オレフィン共重合体を相当量含むことを示している。
【0061】
割合E(wt%)と割合P(wt%)とa値との関係について示した図が
図4である。
【0062】
図4において、a=1の関係を示す点線は、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含まない場合、すなわちエチレン・α−オレフィン系共重合体とプロピレン重合体の混合物の場合を示す。一方、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の生成効率が高まるにつれ、割合Pに対する割合Eの値は小さくなる。
図4に示すように、a値が大きな値をとることは、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の生成効率が高いことを示す。本発明のオレフィン系樹脂(β)は、a値が1.4以上であることを特徴とする。
【0063】
通常、ポリプロピレン樹脂改質材等に使用される市販のオレフィン系エラストマーは、エチレン・α−オレフィン共重合体(例えば、エチレン/ブテン共重合体やエチレン/オクテン共重合体)からなり、エチレンの組成が90mol%〜50mol%程度に調整されたポリマーである。従って、通常のエチレン・α−オレフィン共重合体の溶出成分割合Eは実質的に100%となる。
【0064】
エチレン・α−オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーをとプロピレン系樹脂に配合した場合、オレフィン系エラストマーは、プロピレン系樹脂中に分散し、耐衝撃性の向上を付与する役割を担う。オレフィン系エラストマーの配合量を増加させると耐衝撃性が向上する反面、プロピレン系樹脂本来の剛性や機械強度を低下させる。このため、一般的に、ポリプロピレン樹脂組成物において、衝撃強度と剛性とは相反物性となる。
【0065】
オレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体に結晶性のプロピレン重合体が化学的に結合しているグラフト型オレフィン系重合体[R1]を高含量含むので、エチレン・α−オレフィン共重合体の含量に対してEが小さいという特徴がある。
【0066】
このようなオレフィン系樹脂(β)は、プロピレン系樹脂に配合した場合、グラフト型オレフィン系重合体[R1]のポリプロピレン側鎖がプロピレン系樹脂と良好に親和するので、結果的にプロピレン系樹脂の中にエチレン・αオレフィン共重合体が微細に分散した相分離構造を形成する特徴を有す。このとき、相互に非相溶的な関係にあるエチレン・α−オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂との界面において、グラフト型オレフィン系重合体[R1]のポリプロピレン側鎖がプロピレン系樹脂の結晶に入り込み、該界面の強度を高める効果を発揮すると考えられる。このため、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を高含量で含むオレフィン系樹脂(β)が配合されたプロピレン系組成物は、耐衝撃性に優れ、剛性および機械強度が高く、伸びにも優れ、得られる成形体の表面硬度も高くなり、各物性バランスが著しく向上された組成物となる。
〔要件(IV)〕
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が120〜165℃の範囲にあり、ガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲にある。
【0067】
オレフィン系樹脂(β)前記融点は、好ましくは130〜160℃、より好ましくは140℃〜160℃である。すなわち、オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピークを120〜165℃、好ましくは130〜160℃、より好ましくは140℃〜160℃の範囲に有する。
【0068】
上記融解ピークが現れる温度、すなわち融点(Tm)および後述する融解熱量(ΔH)は、試料をDSCにより一度昇温工程により融解させた後、30℃までの冷却工程により結晶化させ、2度目の昇温工程(昇温速度10℃/分)で現れる吸熱ピークを解析したものである。
【0069】
上記範囲に観測される融点(Tm)および融解熱量(ΔH)は、主にオレフィン系樹脂(β)を構成するグラフト型オレフィン系重合体[R1]のポリプロピレン側鎖に起因している。融点(Tm)が上記範囲にあり、さらに好ましくは融解熱量(ΔH)が後述する範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)はプロピレン系樹脂に良好に相溶することができ、その結果、オレフィン系樹脂(β)およびプロピレン重合体を含むプロピレン系樹脂組成物は、剛性、耐熱性および靭性のバランスが良好となる。上記範囲の融点(Tm)に調整する方法として、後述する製造工程(A)において、重合温度や重合圧力を調整する方法が挙げられる。
【0070】
オレフィン系樹脂(β)の前記ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−80〜−40℃、より好ましくは−70℃〜−50℃である。
【0071】
ガラス転移温度(Tg)は、主にグラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖のエチレン・α−オレフィン共重合体の性質に起因する。ガラス転移温度(Tg)が、−80℃〜−30℃の範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性を良好に発現する。
【0072】
前記範囲のガラス転移温度(Tg)は、エチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンの種類や組成を制御することで得ることができる。
〔要件(V)〕
オレフィン系樹脂(β)は、熱キシレン不溶解量が3.0wt%未満、好ましくは2.5wt%未満、より好ましくは2.0wt%未満である。
【0073】
熱キシレン不溶解量は、次の方法で算出される値である。
【0074】
試料を熱プレス(180℃、加熱5分間、冷却1分間)により厚み0.4mmのシート状にし、細かく裁断する。それを約100mg秤量し、325メッシュのスクリーンに包んで、密閉容器中にて30mlのp−キシレンに140℃で3時間浸漬する。次に、そのスクリーンを取り出し、80℃にて2時間以上、恒量になるまで乾燥する。熱キシレン不溶解量(wt%)は、次式で表わされる。
【0075】
熱キシレン不溶解量(wt%)=100×(W3−W2)/(W1−W2)
W1:試験前のスクリーンおよびサンプルの合計の質量、W2:スクリーン質量、W3:試験後のスクリーンおよびサンプルの合計の質量
オレフィン系樹脂(β)は、上記の通り、熱キシレン不溶解量を全く含まないか、含んでも少量であるので、プロピレン重合体に良好に分散することができ、その結果、所望の効果を発現する。一方、熱キシレン不溶部量が3wt%以上であると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体においてブツと呼ばれる外観不良が生じる場合がある。
【0076】
後述する製造方法に示した通り、重合工程から直接グラフト型オレフィン系重合体を得る方法を採用することで、熱キシレン不溶解成分が上記範囲のオレフィン系樹脂(β)を得ることができる。
〔要件(VI)〕
オレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0dl/gの範囲にある。前記極限粘度[η]は、好ましくは1.0〜4.0dl/g、さらに好ましくは1.0〜3.0dl/gである。前記極限粘度[η]が前記範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性に加え、良好な剛性や機械強度を有し、さらに良好な成形加工性も有する。
【0077】
オレフィン系樹脂(β)は、上記要件(I)〜(VI)に加え、下記要件(VII)〜(XI)のうち1つ以上を満たすことが好ましい。
〔要件(VII)〕
オレフィン系樹脂(β)全体の中におけるエチレンから導かれる繰り返し単位の割合が、オレフィン系樹脂(β)に含まれる全繰り返し単位に対し20〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは30〜80mol%、さらに好ましくは40〜80mol%、特に好ましくは40〜75mol%である。エチレンから導かれる繰り返し単位が上記範囲にあると、オレフィン系樹脂(β)はエチレン・α−オレフィン共重合体をより多く含んだ態様であることになり、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性や破断伸びが良好になる。
〔要件(VIII)〕
要件(VIII)は、弾性率が200MPa以下であることである。弾性率は、より好ましくは100MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下である。
【0078】
オレフィン系樹脂(β)は、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含み、その主鎖であるエチレン・α−オレフィン共重合体部位を豊富に含むので、当該共重合体部位に起因する柔軟性を有している。オレフィン系樹脂(β)の弾性率が上記範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性を良好に発現する。なお、弾性率はASTM D638に準拠した引張弾性率である。
〔要件(IX)〕
要件(IX)は、非晶性成分を示す海相と結晶性成分を示す島相とからなる相分離構造を有し、透過型電子顕微鏡像における島相の平均径が、50nm〜500nmの範囲にあることである。前記島相の平均径は、より好ましくは50nm〜300nmである。
【0079】
前述の相構造を有しているかどうかの観察は、例えば以下のように行う。
【0080】
まず、オレフィン系樹脂を混練成形評価装置に投入し、200℃、60rpmで5分間溶融混練する。このオレフィン系樹脂を170℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間余熱後、10MPa加圧下、1分間かけて成形したのち、20℃で10MPaの加圧下で3分間冷却することにより所定の厚みのプレスシートを作製する。
【0081】
上記のプレスシートを0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO
4)によって染色する。さらにダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで前記小片を約100nmの膜厚の超薄切片とする。この超薄切片にカーボンを蒸着させて、透過型電子顕微鏡(加速電圧100kV)で観察する。島相の平均粒径は、得られた観察像を、市販の画像解析ソフトを用いて、画像処理および画像解析をすることにより、島相の平均長径として得ることができる。
【0082】
このような観察方法によると、プロピレン系重合体成分は、該成分が形成するラメラ構造の結晶間非晶部位が選択的にオスニウム酸に染色にされるため、より高いコントラストとして観察される。
【0083】
オレフィン系樹脂(β)の相分離構造において、海相は、非晶性または低結晶性であるエチレン・α−オレフィン共重合体から形成され、島相は結晶性であるプロピレン重合体から形成されたものである。
【0084】
エチレン・α−オレフィン共重合体が海相となることは、該重合体成分が主成分として存在していることを示している。このことにより、プロピレン系樹脂組成物に耐衝撃性を付与することができる。さらに、オレフィン系樹脂(β)が上記のような非常に微細なミクロ相分離構造を形成することは、オレフィン系樹脂(β)に、非晶成分または低結晶性成分と結晶成分との相溶効果を高めるグラフト型オレフィン系重合体[R1]が高含量に含まれていることを示している。このことにより、オレフィン系樹脂(β)を含むプロピレン系樹脂組成物の物性バランスは著しく優れる。
【0085】
一方、エチレン・α−オレフィン共重合体を主成分として十分に含まない樹脂は、結晶成分に起因する相が明瞭な島相とならず、連続相が形成される場合がある。このような樹脂を用いた場合、耐衝撃性の著しく劣る樹脂組成物が得られる。また、エチレン・α−オレフィン共重合体とプロピレン系重合体との単なるポリマーブレンドやグラフト型オレフィン系重合体[R1]を十分に含まない樹脂の場合は、上記のような微細な相分離構造は形成されず、粗大な島相が観測される。このような樹脂を用いた場合、得られるプロピレン系樹脂組成物は良好な物性バランスを発現しない。
〔要件(X)〕
要件(X)は、示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)における融解熱量ΔHが5〜50J/gの範囲にあることである。前記融解熱量ΔHは、好ましくは5〜40J/g、より好ましくは10〜30J/gの範囲にある。
【0086】
上記範囲に観測される前記融解ピーク(Tm)は、グラフト型オレフィン系重合体[R1]のプロピレン重合体からなる側鎖と、オレフィン系樹脂(β)に含まれる不飽和末端を持つプロピレン重合体と、に由来しており、前記融解熱量(ΔH)が上記範囲に観測されるということは、オレフィン系樹脂(β)に含まれるグラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖部位を相当量含んでいることを示している。本発明のオレフィン系樹脂(β)において、グラフト型オレフィン系重合体[R1]のポリプロピレン側鎖の存在により、べたつきが少なく、耐熱エラストマー様の物性を発現させる。
【0087】
一方、融解熱量(ΔH)が上記範囲を下回る場合には、ポリプロピレン側鎖の割合が少ないことを意味し、直鎖状のオレフィン系エラストマー同様、耐熱性を有さず、べたつきが高い。また、上述したようなプロピレン系中の改質効果も十分ではない。また、融解熱量(ΔH)が上記範囲を上回る場合には、柔軟性や低温特性等のエチレン・α−オレフィン共重合体に由来する特性が損なわれるおそれがある。
〔要件(XI)〕
要件(XI)は、本発明のオレフィン系樹脂(β)は、クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定した50℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合が50wt%以下であることである。前記割合は、好ましくは40wt%以下である。
【0088】
前述の要件(III)に加え、要件(X)を満たすことで、前述のグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むことによる効果がより高くなり、オレフィン系樹脂(β)のベタつきが低くハンドリングがきわめて良好になる。さらにオレフィン系樹脂(β)を配合したプロピレン系組成物においても、耐衝撃性に優れ、剛性および機械強度が高く、伸びにも優れ、得られる成形体の表面硬度も高くなり、各物性バランスが一層向上された組成物になると推察される。
【0089】
オレフィン系樹脂(β)は、さらに、着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質を含まないことが好ましい。
【0090】
前記着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質としては、具体的には、ヘテロ原子含有化合物が挙げられ、前記ヘテロ原子含有化合物としては、塩素原子、臭素原子などハロゲン原子を含有する化合物、酸原子、硫黄原子などのカルコゲン原子を含有する化合物、窒素原子やリン原子などのプニクトゲン化合物を含有する化合物などが挙げられる。前記酸素原子を含有する化合物としては、具体的には、無水マレイン酸や無水マレイン酸反応物が挙げられる。
【0091】
また、前記着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質としては、金属原子含有化合物も挙げられ、具体的にはナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属含有化合物、マグネシウムやカルシウムのようなアルカリ土類金属含有化合物が挙げられる。
【0092】
オレフィン系樹脂(β)は、前記ヘテロ原子含有化合物の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下である。また、オレフィン系樹脂(β)は、前記金属原子含有化合物の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
<オレフィン系樹脂(β)の製造方法>
オレフィン系樹脂(β)は、たとえば下記(A)、(B)の各工程を含む製造方法により製造される。
【0093】
(A)ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合し、末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程
(B)下記一般式[B]で表される架橋メタロセン化合物[B]を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程
【0094】
【化3】
(式[B]中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
8、R
9およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R
1〜R
4のうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0095】
R
6およびR
11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R
7およびR
10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R
6およびR
7は互いに結合して環を形成していてもよく、R
10およびR
11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R
6、R
7、R
10およびR
11が全て水素原子であることはない。
【0096】
R
13およびR
14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
M
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Y
1は炭素原子またはケイ素原子を示す。
【0097】
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
以下、(A)、(B)の工程について順に説明する。
〔工程(A)〕
工程(A)は、グラフト型オレフィン系重合体[R1]のポリプロピレン側鎖の原料となる末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
【0098】
本工程は、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]の存在下で、プロピレンを重合し末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
【0099】
前記末端不飽和ポリプロピレンの不飽和末端とは前述の末端構造 (I)〜(IV)を意味する。前記不飽和末端のうち末端構造(I)の占める割合は通常、30%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましく60%以上である。なお、前述の不飽和末端のうち末端構造(I)の占める割合は、末端不飽和ポリプロピレンに含まれる1000炭素原子あたりに存在する前述の末端構造 (I)〜(IV)のそれぞれの個数の和に対する、1000炭素原子あたりに存在する末端構造 (I)の個数の比を百分率で表したものである。
【0100】
遷移金属化合物[A]は後述する化合物[C]と組み合わせて末端不飽和ポリプロピレンを製造する重合触媒として機能する。
【0101】
末端不飽和ポリプロピレンを製造するオレフィン重合用触媒としては、Resconi, L. JACS 1992, 114, 1025−1032などで古くから知られているが、オレフィン系共重合体[R1]の側鎖としては、アイソタクチック又はシンジオタクチックな末端不飽和ポリプロピレン、より好ましくはアイソタクチックな末端不飽和ポリプロピレンが好適である。
【0102】
このような高立体規則性かつ、末端構造(I)を持つ末端不飽和ポリプロピレン含量の高いポリプロピレンを製造するのに用いられるオレフィン重合用触媒に含まれる遷移金属化合物[A]としては、特開平6−100579、特表2001−525461、特開2005−336091、特開2009−299046、特開平11−130807、特開2008−285443等により開示されている化合物を好適に用いることができる。
【0103】
上記遷移金属化合物[A]としてより具体的には、架橋ビス(インデニル)ジルコノセン類又はハフノセン類からなる群から選択される化合物を好適な例として挙げることができる。より好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセン又はハフノセンである。さらに好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセンであり、ジルコノセンを選択することで、末端不飽和ポリプロピレンの挿入反応により生じる長鎖分岐ポリマーの生成が抑制され、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、所望の物性を発現する。一方、工程(A)において前記長鎖分岐ポリマーが多く生成される場合、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、剛性等の物性を損なう恐れがある。
【0104】
より具体的には、ジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド又はジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチルを好適な化合物として用いることができる。
【0105】
工程(A)は、気相重合、スラリー重合、バルク重合、溶液(溶解)重合のいずれの方法においても実施可能であり、特に重合形態は限定されない。
【0106】
工程(A)が、溶液重合で実施される場合、重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、後処理工程の負荷低減の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0107】
また、工程(A)の重合温度は、通常50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲、より好ましくは、80℃〜130℃の範囲であり、重合温度を適切にコントロールすることで、所望の分子量及び立体規則性の末端不飽和ポリプロピレンを得ることが可能となる。
【0108】
工程(A)の重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0109】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間である。
【0110】
工程(A)における、ポリマー濃度は、定常運転時は、5〜50wt%であり、好ましくは、10〜40wt%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)の負荷及び生産性の観点から、15〜50wt%であることが好ましい。
【0111】
工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンの重量平均分子量は、5000〜100000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5000〜60000、さらにより好ましくは5000〜25000の範囲である。前記範囲の重量平均分子量を有する末端不飽和ポリプロピレンであることにより、後述する工程(B)において、末端不飽和ポリプロピレンのモル濃度をエチレンあるいはα−オレフィンに対して相対的に高めることができ、主鎖への導入効率が高くなる。一方、上記範囲を上回る場合、末端不飽和ポリプロピレンのモル濃度が相対的に低くなり、主鎖への導入効率が低くなる。また、上記範囲を下回る場合、融点が低下など実用上の問題がある。
【0112】
工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜3.0、典型的には1.7〜2.5程度である。場合によっては、異なる分子量を有する側鎖の混合物を用いてもよい。
【0113】
工程(A)において製造される末端不飽和ポリプロピレンの
1H−NMRにて測定する不飽和末端の割合は、1000炭素原子あたり通常0.1〜10個であるが、より好ましくは0.4〜5.0個である。さらに末端構造(I)を持つ不飽和末端の割合、いわゆる末端ビニル量は、炭素原子1000個あたり、通常0.1〜2.0個であるが、好ましくは、0.4〜2.0個の範囲にある。末端ビニル量が少ない場合、後工程(B)における当該末端不飽和ポリプロピレンの主鎖への導入量が低くなり、グラフト型オレフィンポリマーの生成量が少なくなるため所望の効果が得られない場合がある。
【0114】
1H−NMR測定による不飽和末端の量および各末端構造の割合の算出は、前述したとおり、例えばMacromolecular Rapid Communications 2000, 1103に記載の方法に従って行うことができる。
〔工程(B)〕
工程(B)は、上記式[B]で表わされる架橋メタロセン化合物[B]を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程である。
【0115】
工程(B)において、高温にて十分な活性を発現し、高共重合性かつ高分子量化可能な触媒の選定が重要となる。末端ビニルポリプロピレン(前記末端構造(I))は、4位にメチル分岐を有し、立体的に嵩高い構造を有するので、直鎖状のビニルモノマーに比べ重合が難しい。また、末端ビニルポリプロピレンは、ポリマーが析出してくる低温条件では、共重合されにくい。このため、触媒には、好ましくは、90℃以上の重合温度にて十分な活性を発現し、主鎖を所望の分子量にする性能が求められる。
【0116】
このような観点から、本発明に係る高含量のポリプロピレンを含有したオレフィン系樹脂(β)に得るには、工程(B)において、架橋メタロセン化合物[B]が好適に用いられる。
【0117】
架橋メタロセン化合物[B]は、後述する化合物[C]と組み合わせて工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合するオレフィン重合用触媒として機能する。
【0118】
以下、本発明で用いられる架橋メタロセン化合物[B]の化学構造上の特徴について説明する。
【0119】
架橋メタロセン化合物[B]は、構造上、次の特徴[m1]および[m2]を備える。
【0120】
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう。)である。
【0121】
[m2]二つの配位子が、アリール(aryl)基を有する炭素原子またはケイ素原子からなるアリール基含有共有結合架橋部(以下「架橋部」ともいう。)によって結合されている。
【0122】
以下、架橋メタロセン化合物[B]が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他特徴について、順次説明する。
【0123】
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式[B]中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示すものであり、末端ビニルポリプピレンを良好に取り込む構造として、R
1、R
2、R
3およびR
4は全て水素原子であるか、またはR
1、R
2、R
3およびR
4のいずれか一つ以上がメチル基である構造が特に好ましい。
【0124】
(置換フルオレニル基)
式[B]中、R
5、R
8、R
9およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。R
6およびR
11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R
7およびR
10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R
6およびR
7は互いに結合して環を形成していてもよく、R
10およびR
11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、“R
6、R
7、R
10およびR
11が全て水素原子であること”はない。
【0125】
重合活性の視点からは、R
6およびR
11がいずれも水素原子でないことが好ましく;R
6、R
7、R
10およびR
11がいずれも水素原子ではないことがさらに好ましく;R
6およびR
11が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であり、且つR
7とR
10が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であることが特に好ましい。また、R
6およびR
7が互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R
10およびR
11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。
【0126】
R
5〜R
12における炭化水素基の例示および好ましい基としては、例えば、炭化水素基(好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基、以下「炭化水素基(f1)」として参照することがある。)またはケイ素含有基(好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基、以下「ケイ素含有基(f2)」として参照することがある。)が挙げられる。その他、置換シクロペンタジエニル基における置換基としては、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)を挙げることもできる。炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基が挙げられる。R
5〜R
12におけるケイ素含有基(f2)としては、好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基であり、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられ、具体的には、アルキルシリル基(例:トリメチルシリル基)、アリールシリル基(例:トリフェニルシリル基)が挙げられる。
【0127】
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0128】
炭化水素基(f1)の中でも、炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などが好適な例として挙げられる。
【0129】
R
6およびR
7(R
10およびR
11)が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する一般式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
【0130】
(架橋部)
式[B]中、R
13およびR
14はそれぞれ独立にアリール基を示し、Y
1は炭素原子またはケイ素原子を示す。オレフィン重合体の製造方法において重要な点は、架橋部の架橋原子Y
1に、互いに同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基であるR
13およびR
14を有することである。製造上の容易性から、R
13およびR
14は互いに同一であることが好ましい。
【0131】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびこれらが有する芳香族水素(sp2型水素)の一つ以上が置換基で置換された基が挙げられる。置換基としては、上記炭化水素基(f1)およびケイ素含有基(f2)や、ハロゲン原子およびハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0132】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などの炭素原子数6〜14、好ましくは6〜10の非置換アリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基などのアルキル基置換アリール基;シクロヘキシルフェニル基などのシクロアルキル基置換アリール基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジクロロフェニル基、ジブロモフェニル基などのハロゲン化アリール基;(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのハロゲン化アルキル基置換アリール基が挙げられる。置換基の位置は、メタ位および/またはパラ位が好ましい。これらの中でも、置換基がメタ位および/またはパラ位に位置する置換フェニル基がさらに好ましい。
【0133】
(架橋型メタロセン化合物のその他の特徴)
式[B]中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0134】
Qにおける炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が挙げられる。
【0135】
Qにおけるハロゲン化炭化水素基としては、Qにおける上記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
式[B]中、M
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、ハフニウム原子が末端不飽和ポリプロピレンを高効率で共重合し、また高分子量に制御出来る点でも好ましい。末端不飽和ポリプロピレンを高効率で共重合し、また高分子量に制御出来る性能を備えた触媒を用いることは、高い生産性を確保するために重要である。なぜなら、高い生産性を確保するために高温条件下で反応を行うことが望ましいが、高温条件下では生成分子量の低下が起こる傾向となるためである。
【0136】
(好ましい架橋型メタロセン化合物[B]の例示)
以下に架橋型メタロセン化合物[B]の具体例を式[II]〜[VI]に示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[II]で示される構造の化合物に由来する基を指し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[III]で示される構造の化合物に由来する基を指し、ジベンゾフルオレニルとは式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[V]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
【0141】
【化8】
架橋メタロセン化合物[B]としては、例えば、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドが挙げられる。
【0142】
架橋メタロセン化合物[B]としては、上記例示の化合物の「ジクロリド」を「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」または「メチルエチル」などに代えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに替えた化合物を挙げることもできる。
【0143】
以上の架橋メタロセン化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、本出願人による国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第04/029062号パンフレットに記載の方法が挙げられる。
【0144】
以上のような架橋メタロセン化合物[B]は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0145】
工程(B)は、溶液(溶解)重合において実施可能であり、重合条件については、オレフィン系ポリマーを製造する溶液重合ポロセスを用いれば、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0146】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用いて、架橋メタロセン化合物[B]、好ましくは、前記一般式[B]におけるY
1に結合しているR
13、R
14がフェニル基、あるいは、アルキル基またはハロゲン基により置換されたフェニル基であり、R
7、R
10がアルキル置換基を有する遷移金属化合物を含むメタロセン触媒の存在下に、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンとの共重合体の重合反応液を得る工程である。
【0147】
工程(B)では、工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンが溶液状またはスラリー状にて工程(B)における反応器にフィードされる。フィード方法は、特段限定されるものではなく、工程(A)にて得られた重合液を連続的に工程(B)の反応器にフィードしても、工程(A)の重合液を一旦バッファータンクに溜めたのちに、工程(B)にフィードしても良い。
【0148】
工程(B)の重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、工程(B)の重合溶媒は、工程(A)の重合溶媒と同一でも異なっていてもよい。なお、これらのうち、工業的観点からはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素が好ましく、さらにオレフィン系樹脂(β)との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0149】
また、工程(B)の重合温度は、90℃〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは、100℃〜200℃の範囲である。このような温度が好ましいのは、上述の重合溶媒として工業的に好ましく用いられるヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素中で、不飽和末端ポリプロピレンが良好に溶解する温度が90℃以上であるためである。より高温であることがポリプロピレン側鎖の導入量を向上させる上で好ましい。さらに生産性向上の観点からもより高温であることが好ましい。
【0150】
工程(B)の重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0151】
工程(B)の反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間である。
【0152】
工程(B)における、ポリマー濃度は、定常運転時は、5〜50wt%であり、好ましくは、10〜40wt%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)負荷及び生産性の観点から、15〜35wt%であることが好ましい。
【0153】
得られる共重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、後述の化合物[C1]の使用量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
[化合物[C]]
本発明にかかるオレフィン系樹脂(β)の製造方法では、上述した工程(A),(B)においてオレフィン重合用触媒として用いられる遷移金属化合物[A]および架橋ハメタロセン化合物[B]と共に、後述する化合物[C]を用いることが好ましい。
【0154】
化合物[C]は、遷移金属化合物[A]および架橋メタロセン化合物[B]と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、[C1]有機金属化合物、[C2]有機アルミニウムオキシ化合物、および、[C3]遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれるものである。以下、[C1]〜[C3]の化合物について順次説明する。
([C1]有機金属化合物)
本発明で用いられる[C1]有機金属化合物として、具体的には下記の一般式(C1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物、一般式(C1−b)で表わされる周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、および一般式(C1−c)で表わされる周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物が挙げられる。なお、[C1]有機金属化合物には、後述する[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は含まないものとする。
【0155】
【化9】
上記一般式(C1−a)中、R
aおよびR
bは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+r+s=3である。)
【0156】
【化10】
上記一般式(C1−b)中、M
3はLi、NaまたはKを示し、R
cは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
【0157】
【化11】
上記一般式(C1−c)中、R
dおよびR
eは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M
4はMg、ZnまたはCdである。
【0158】
前記一般式(C1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物としては、次のような一般式(C−1a−1)〜(C−1a−4)で表わされる化合物を例示できる。
【0159】
【化12】
(式中、R
aおよびR
bは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0160】
【化13】
(式中、R
aは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0161】
【化14】
(式中、R
aは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0162】
【化15】
(式中、R
aおよびR
bは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0163】
一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルブチルアルミニウム、トリ2−メチルペンチルアルミニウム、トリ3−メチルペンチルアルミニウム、トリ4−メチルペンチルアルミニウム、トリ2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i−C
4H
9)
xAl
y(C
5H
10)
z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
R
a2.5Al(OR
b)
0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、R
aおよびR
bは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0164】
また(C1−a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物として例えば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C
2H
5)
2AlN(C
2H
5)Al(C
2H
5)
2などを挙げることができる。
【0165】
前記一般式(C1−b)に属する化合物としては、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4などを挙げることができる。
【0166】
前記一般式(C1−c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
【0167】
またその他にも、[C1]有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0168】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを、前記[C1]有機金属化合物として使用することもできる。
【0169】
上記のような[C1]有機金属化合物は、1種類単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
([C2]有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0170】
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0171】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0172】
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0173】
なお前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0174】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0175】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0176】
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0177】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0178】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
【0179】
本発明で用いられる[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0180】
【化16】
(一般式(III)中、R
17は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、4つのR
18は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
前記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0181】
【化17】
(一般式(IV)中、R
19は前記一般式(III)におけるR
17と同じ基を示す。)
前記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0182】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0183】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0184】
上記のような[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
([C3]遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物)
本発明で用いられる、遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物[C3](以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0185】
具体的には、前記ルイス酸としては、BR
3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどである。
【0186】
前記イオン性化合物としては、例えば下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0187】
【化18】
(一般式(V)中、R
20はH
+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R
21〜R
24は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)。
【0188】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0189】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0190】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0191】
R
15としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0192】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0193】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0194】
前記N,N−ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、例えばN,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0195】
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、例えばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0196】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VI)または(VII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0197】
【化19】
(式(VI)中、Etはエチル基を示す。)
【0198】
【化20】
(式(VII)中、Etはエチル基を示す。)
イオン化イオン性化合物(化合物[C3])の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0199】
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、例えば4−カルバノナボラン、1,3−ジカルバノナボラン、6,9−ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン、2,7−ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルウンバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0200】
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0201】
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の例えば周期表第1族または第2族の金属、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0202】
上記のようなイオン化イオン性化合物([C3]遷移金属化合物[A]、架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0203】
遷移金属化合物[A]、架橋メタロセン化合物[B]に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの[C2]有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
【0204】
上記のような[C3]イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0205】
有機金属化合物[C1]は、有機金属化合物[C1]と、工程(A)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C1/M)が、工程(B)においては架橋メタロセン化合物[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C1/M)が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
【0206】
有機アルミニウムオキシ化合物[C2]は、有機アルミニウムオキシ化合物[C2]中のアルミニウム原子と、工程(A)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C2/M)が、工程(B)においては架橋メタロセン化合物[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C2/M)が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
【0207】
イオン化イオン性化合物[C3]は、イオン化イオン性化合物[C3]と、工程(A)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C3/M)が、工程(B)においては架橋ハフノセン化合物[B]中の遷移金属原子(M)(ハフニウム原子)とのモル比(C2/M)が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
〔工程(C)〕
オレフィン系樹脂(β)の製造方法は、工程(A)および(B)に加え、必要に応じて、工程(B)で生成する重合体を回収する工程(C)を含んでも良い。本工程は、工程(A)および(B)において用いられる有機溶剤を分離してポリマーを取り出し製品形態に変換する工程であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する過程であれば特段制限はない。
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(α)と前記オレフィン系樹脂(β)を含有することを特徴とする。
前述のオレフィン系樹脂(β)は、任意の配合割合にて、プロピレン系樹脂(α)と良好に相容することから、本発明のプロピレン系樹脂組成物におけるプロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との含有割合に特段の制限はないが、プロピレン系樹脂本来の剛性や硬度などの物性を良好に保持しながら、耐衝撃性や靱性を改良する含有割合として、プロピレン系樹脂(α)は50〜98重量部であることが好ましく、より好ましくは60〜95重量部、さらに好ましくは65〜95重量部である。また、オレフィン系樹脂(β)は2〜50重量部が好ましく、より好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは5〜35重量部である。ただし、プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との各重量部の合計は100重量部である。
【0208】
プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)の含有割合が上記範囲にあることにより、本発明のプロピレン系樹脂組成物はプロピレン系樹脂本来の剛性や硬度などの物性を良好に保持しながら、耐衝撃性や靱性が改良され、さらに各種成形品の製造に好適に使用することができる。
【0209】
次に、プロピレン系樹脂(α)について以下に説明する。
【0210】
プロピレン系重合体(α)は、プロピレンの単独重合体であるか、または、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体から構成される。共重合体としては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても構わない。前述の炭素数4〜20のα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。この中でも1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンのα−オレフィンを好ましく用いることができる。
プロピレン系樹脂(α)は前記重合体のうち単独の重合体から構成されてもよいし、複数の重合体から構成されていてもよい。上記プロピレン樹脂(α)はチーグラーナッタ触媒等で重合される。
【0211】
プロピレン系樹脂(α)としては、市販のプロピレン系樹脂の中から、特に制限なく用いることができる。市販のプロピレン系樹脂の例として、いわゆるホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、が挙げられる。
ホモポリプロピレン樹脂は実質プロピレンの単独重合体からなる樹脂であり、安価で製造が容易であり、剛性や表面硬度に優れる半面、耐衝撃性や靱性に劣る。本発明のプロピレン系樹脂組成物に、ホモポリプロピレン樹脂をプロピレン系樹脂(α)として用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、ホモポリプロピレン樹脂の剛性等優れた特徴を保持しながら、耐衝撃性や靱性を著しく改良することができる。
ランダムポリプロピレン樹脂は主にコモノマーを少量含むプロピレン重合体からなる樹脂であり、ホモポリプロピレン樹脂と比較して耐衝撃性や透明性が高い。本発明のプロピレン系樹脂組成物に、ランダムポリプロピレン樹脂をプロピレン系樹脂(α)として用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、ランダムポリプロピレン樹脂の剛性を保持しながら、耐衝撃性や靱性や表面硬度を改良でき、特に低温衝撃性を大幅に改良できる。
【0212】
ブロックポリプロピレン樹脂は背景技術において述べたとおり、プロピレン重合体とエチレンプロピレン共重合体の二段重合組成物であり、ブロックポリプロピレン樹脂の「ブロック」の語は、「ブロックコポリマー」を意味しない。ただしエチレンプロピレン共重合体を含むことにより、ブロックポリプロピレン樹脂はホモポリプロピレン樹脂と比し剛性と耐衝撃性のバランスが改良されている。発明のプロピレン系樹脂組成物に、ブロックポリプロピレン樹脂を用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、通常のブロックポリプロピレン樹脂では達成できないレベルに、剛性と耐衝撃性等との相反物性を高度にバランスよく高めることができる。
【0213】
以下、プロピレン系樹脂(α)の好ましい態様について説明する。プロピレン系樹脂(α)は、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)は、0.1〜500g/10分、下限値は好ましくは0.2g/10分、より好ましくは0.3g/10分、上限値は好ましくは300g/10分、より好ましくは100g/10分、特に好ましくは50g/10分である。プロピレン系樹脂(α)のMFRが0.1g/10分より小さい場合、プロピレン系樹脂組成物中のプロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との分散性が悪化し、樹脂組成物の機械強度が低下する。プロピレン系樹脂(α)のMFRが500g/10分より大きい場合、プロピレン系樹脂(α)自体の強度が低下し、樹脂組成物の機械的強度が低くなる。
【0214】
MFRはプロピレン系樹脂(α)の分子量の指標となるが、プロピレン系樹脂(α)は好ましくはさらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリプロピレン換算の重量平均分子量が8万〜90万、より好ましくは10万〜70万、特に好ましくは15万〜70万の範囲にある。
【0215】
さらにプロピレン系樹脂(α)は、引張弾性率が500〜3000MPaであることが好ましく、より好ましくは600〜2500MPa、さらにより好ましくは650〜2200MPaである。引張弾性率は、JIS K7113−2に準拠し、2mm厚みのプレスシートを23℃で測定した値である。プロピレン系重合体(α)が上記範囲の引張弾性率であることで、プロピレン系重合体(α)を含むプロピレン系樹脂組成物は、高い剛性および高い硬度を有する。
【0216】
プロピレン系樹脂(α)は、オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体とは異なる。実質的にプロピレン系樹脂(α)の末端構造は飽和炭化水素であり、具体的には不飽和末端の割合は1000炭素原子あたり通常0.1未満である。
【0217】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、ゴム、無機充填剤、有機充填剤などを配合することができ、また耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。本発明にかかるプロピレン系樹脂組成物においては、前記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0218】
本発明におけるプロピレン系樹脂組成物の調製方法は、溶融法、溶液法等、特に限定されないが、実用的には溶融混練方法が好ましい。溶融混練方法としては、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練方法が適用できる。例えば、粉状または粒状の各成分を、必要であれば付加的成分の項に記載の添加物等と共に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等により均一に混合した後、一軸または多軸混練押出機、混練ロール、バッチ混練機、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練することにより調製することができる。
【0219】
各成分の溶融混練温度(例えば、押出機ならシリンダー温度)は、通常170〜250℃、好ましくは180〜230℃である。さらに各成分の混練順序および方法は、特に限定されるものではない。
<成形体>
前記プロピレン系樹脂組成物は、剛性を保持したまま耐衝撃性の向上を図れることができ、剛性と耐衝撃性のバランスに優れることから、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができ、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途の包材など公知の多様な用途に適用することができる。
【0220】
前記プロピレン系樹脂組成物からなる成形体は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、かつ表面硬度が高く、耐薬品性にも優れることから、各種自動車部品に使用できる。例えば、バンパー、サイドモール、空力アンダーカバーなどの自動車外装部品、インストルメントパネル、内装トリムなどの自動車内装部品、フェンダー、ドアパネル、ステップなどの外板部品、エンジンカバー、ファン、ファンシェラウドなどのエンジン周囲部品などに使用することができる。
【0221】
食品用途や医療用途などの容器としては、例えば、食器、レトルト容器、冷凍保存容器、レトルトパウチ、電子レンジ耐熱容器、冷凍食品容器、冷菓カップ、カップ、飲料ボトルなどの食品容器、レトルト容器、ボトル容器などや、輸血セット、医療用ボトル、医療用容器、医療用中空瓶、医療バッグ、輸液バッグ、血液保存バック、輸液ボトル薬品容器、洗剤容器、化粧品容器、香水容器、トナー容器などが挙げられる。
【0222】
包材としては、例えば、食品包材、食肉包材、加工魚包材、野菜包材、果物包材、発酵食品包材、菓子包装材、酸素吸収剤包材、レトルト食品用包材、鮮度保持フィルム、医薬包材、細胞培養バック、細胞検査フィルム、球根包材、種子包材、野菜・キノコ栽培用フィルム、耐熱真空成形容器、惣菜容器、惣菜用蓋材、業務用ラップフィルム、家庭用ラップフィルム、ベーキングカートン、などが挙げられる。
【0223】
フィルム・シート・テープとしては、例えば、 偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、マスキングフィルム、コンデンサー用フィルム、反射フィルム、積層体(ガラス含む)、耐放射線フィルム、耐γ線フィルム、多孔フィルムなどの保護フィルム、
その他の用途としては、例えば、家電製品の筐体、ホース、チューブ、電線被覆材、高圧電線用碍子、化粧品・香水スプレー用チューブ、医療用チューブ、輸液チューブ、パイプ、ワイヤーハーネス、自動二輪・鉄道車両・航空機・船舶等の内装材、インストルメントパネル表皮、ドアトリム表皮、リアーパッケージトリム表皮、天井表皮、リアピラー表皮、シートバックガーニッシュ、コンソールボックス、アームレスト、エアバックケースリッド、シフトノブ、アシストグリップ、サイドステップマット、リクライニングカバー、トランク内シート、シートベルトバックル、インナー・アウターモール、ルーフモール、ベルトモールなどのモール材、ドアシール、ボディシールなどの自動車用シール材、グラスランチャンネル、泥よけ、キッキングプレート、ステップマット、ナンバープレートハウジング、自動車用ホース部材、エアダクトホース、エアダクトカバー、エアインテークパイプ、エアダムスカート、タイミングベルトカバーシール、ボンネットクッション、ドアクッションなどの自動車内外装材、制振タイヤ、静動タイヤ、カーレースタイヤ、ラジコンタイヤなどの特殊タイヤ、パッキン、自動車ダストカバー、ランプシール、自動車用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ、タイミングベルト、ワイヤーハーネス、グロメット、エンブレム、エアフィルタパッキン、 家具・履物・衣料・袋物・建材等の表皮材、建築用シール材、防水シート、建材シート、建材ガスケット、建材用ウインドウフィルム、鉄芯保護部材、ガスケット、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等、床材、天井材、壁紙、健康用品(例:滑り止めマット・シート、転倒防止フィルム・マット・シート、)、健康器具部材、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ、プロテクター)、スポーツ用防具、ラケット、マウスガード、ボール、ゴルフボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、制振パレット、衝撃吸収ダンパー、インシュレーター、履物用衝撃吸収材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルムなどの衝撃吸収材、グリップ材、雑貨、玩具、靴底、靴底ソール、靴のミッドソール・インナーソール、ソール、サンダル、吸盤、歯ブラシ、床材、体操用マット、電動工具部材、農機具部材、放熱材、透明基板、防音材、クッション材、電線ケーブル、形状記憶材料、医療用ガスケット、医療用キャップ、薬栓、ガスケット、ベビーフード・酪農製品・医薬品・滅菌水等を瓶に充填後、煮沸処理、高圧蒸気滅菌等高温処理される用途のパッキング材、工業用シール材、工業用ミシンテーブル、ナンバープレートハウジング、ペットボトルキャップライナーなどのキャップライナー、 文房具、オフィス用品、OAプリンタ脚、FAX脚、ミシン脚、モータ支持マット、オーディオ防振材などの精密機器・OA機器支持部材、OA用耐熱パッキン、アニマルケージ、ビーカー、メスシリンダー等の理化学実験機器、光学測定用セル、衣装ケース、クリアーケース、クリアーファイル、クリアーシート、デスクマット、繊維としての用途として、例えば、不織布、伸縮性不織布、繊維、防水布、通気性の織物や布、紙おむつ、生理用品、衛生用品、フィルター、バグフィルター、集塵用フィルター、エアクリーナー、中空糸フィルター、浄水フィルター、ガス分離膜、などが挙げられる。
【0224】
この中でも、前記プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、剛性を保持したまま耐衝撃性の向上が図れることができ、剛性と耐衝撃性のバランスに優れることから、特にバンパー、インストルメントパネルなどの自動車内外装材、外板材、食品容器、飲料容器に好適に利用することができる。
【0225】
[実施例]
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
【0226】
以下の実施例において、オレフィン系樹脂 (β)、プロピレン系樹脂(α)、プロピレン系樹脂組成物の物性は、下記の方法によって測定した。
(オレフィン系樹脂(β)および末端不飽和ポリプロピレンの物性測定方法)
(1)融点(Tm)および融解熱量ΔHの測定
融点(Tm)および融解熱量ΔHの測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
【0227】
示差走査熱量計〔SII社 RDC220〕を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、その融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。また、融解熱量ΔHは前記融解解ピークの面積を算出して求めた。なお融解ピークが多峰性の場合は、全体の融解ピークの面積を算出して求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス転移温度(Tg)の測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
【0228】
示差走査熱量計〔SII社 RDC220〕を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で−100℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(3)熱キシレン不溶解量
試料を熱プレス(180℃、加熱5分−冷却1分)により厚み0.4mmのシート状にし、細かく裁断した。それを約100mg秤量し、325メッシュのスクリーンに包んで、密閉容器中にて30mlのp−キシレンに、140℃で3時間浸漬した。次に、そのスクリーンを取り出し、80℃にて2時間以上恒量になるまで乾燥した。熱キシレン不溶解量(wt%)は、次式で表わされる。
【0229】
【数4】
W1:試験前のスクリーンおよびサンプルの質量、W2:スクリーン質量、W3:試験後のスクリーンおよびサンプルの質量。
(4)オレフィン系樹脂に含まれるプロピレン重合体のオレフィン系樹脂(β)に対する割合Pの測定
前述したとおり、工程(B)に用いる末端不飽和ポリプロピレンの重量と、得られたオレフィン系樹脂(β)の重量の比率から算出した。
【0230】
(5)クロス分別クロマトグラフ(CFC)測定
オルトジクロロベンゼンを溶媒としたクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク値が65℃未満である成分のオレフィン系樹脂に対する割合Eおよび50℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合(wt%)の算出方法については、要件(III)および要件(XI)の項に記載したが、実施例および比較例において具体的には、以下のとおりである。
装置:クロス分別クロマトグラフCFC2(Polymer ChAR)、検出器(内蔵):赤外分光光度計 IR
4(Polymer ChAR)、検出波長:3.42μm(2,920cm−1);固定、試料濃度:120mg/30mL、注入量:0.5mL、降温時間:1.0℃/min、溶出区分:4.0℃間隔(−20℃〜140℃)、GPCカラム:Shodex HT−806M×3本(昭和電工社)、GPCカラム温度:140℃、GPCカラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)、分子量較正法:汎用較正法(ポリスチレン換算)、移動相:o−ジクロロベンゼン(BHT添加)、流量:1.0mL/min。
【0231】
ピーク温度が65℃未満である成分のオレフィン系樹脂に対する割合Eの算出においては、前記CFC測定による微分溶出曲線を正規分布曲線によりピーク分離し、65℃以上ににピーク温度を持つ溶出成分の割合(wt%)の和E
(>65℃
)を求め、、E=100−E
(>65℃
)として求めた。
【0232】
50℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合(wt%)は、前記CFC測定による累積溶出曲線の50℃における累積溶出量(−20℃可溶成分を含む)である。
(6)弾性率(引張弾性率)
引張弾性率は、ASTM D638に準拠し測定した。
(7)極限粘度測定
極限粘度測定[η]は135℃のデカリン中で測定した。
【0233】
具体的には、約20mgの樹脂をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、前記と同様にして比粘度ηspを測定した。
この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式1参照)。
【0234】
【数5】
(8)
13C−NMR測定
ポリマーのエチレンおよびα−オレフィンの組成比分析、および末端不飽和ポリプロピレンの立体規則性の確認を目的に、次の条件で
13C−NMR測定を実施した。装置:ブルカーバイオスピン社製AVANCEIII500CryoProbe Prodigy型核磁気共鳴装置、測定核:
13C(125MHz)、測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:45°(5.00μ秒)、ポイント数:64k、測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:512回、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d
6(4/1 v/v)、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)、ケミカルシフト基準:ベンゼン−d
6(128.0ppm)。
【0235】
(9)
1H−NMR測定
末端不飽和ポリプロピレンの末端構造の分析のため、次の条件で
1H−NMR測定を実施した。装置:日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置、測定核:
13H(400MHz)、測定モード:シングルパルス、パルス幅:45°(5.25μ秒)、ポイント数:32k、測定範囲:20ppm(−4〜16ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:64回、測定溶媒:1,1,2,2,−テトラクロロエタン−d2、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:0.12Hz)、ケミカルシフト基準:1,1,2,2,−テトラクロロエタン(5.91ppm)。
【0236】
(10)GPC測定
ポリマーの分子量分析のために、次の条件でGPC分析を実施した。装置:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:TSKgel GMH6−HTx2 TSKgel GMH6−HTLx2(いずれも東ソー社製、内径7.5mmx長さ30cm)、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)、検出器:示差屈折計、流量:1.0mL/分、試料濃度:0.15%(w/v)、注入量:0.5mL、サンプリング時間間隔:1秒、カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)。
【0237】
(11)透過型電子顕微鏡観察
オレフィン系樹脂の相構造の観察は透過型電子顕微鏡を用いて以下の通り実施した。オレフィン系樹脂40g、酸化防止剤Irganox(40mg)をラボプラストミル(東洋精機社製)に投入し、200℃、60rpmで5分間溶融混練し、ブレス加工によりシート状に成形した。得られた成形体を、0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO
4)によって染色した。さらにダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで得られた小片を約100nmの膜厚の超薄切片とした。この超薄切片にカーボンを蒸着させて透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−7650)を用いて相構造を観察した。島相の平均粒径は、得られた観察像を、画像解析ソフト「macview」を用いて、画像処理および画像解析をすることにより、島相の平均長径として得た。
(プロピレン系樹脂(α)およびプロピレン系樹脂組成物の物性測定方法)
プロピレン系重合体(α)およびプロピレン系樹脂組成物の物性測定方法を以下に示す。
【0238】
(12)メルトフローレート(MFR:〔g/10分〕)
メルトフローレートは、ASTM D1238Eに準拠して、2.16kg荷重で測定した。測定温度は230℃とした。
(13)融点
融点は、上記(1)と同様の方法によって測定した。
【0239】
(14)アイソタクチックペンタド分率(mmmm:〔%〕)
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタド分率(mmmm,%)は、プロピレン系樹脂(α)においてMacromolecules 8,687(1975)に基づいて帰属した13C−NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C−NMRスペクトルは、日本電子製EX−400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。アイソタクチックペンタド分率は、末端不飽和ポリプロピレンM−1〜M−3についても測定した。
【0240】
(15)プロピレンおよびエチレンに由来する骨格の含量
プロピレン系ランダム共重合体および、プロピレン系ブロック共重合体の室温n−デカン可溶成分(Dsol、詳細は後述)中のエチレンに由来する骨格濃度を測定するために、サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(質量比:2/1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を行った。プロピレン、エチレンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。プロピレン−エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式により求めた。
【0242】
【数7】
(16)曲げ弾性率
曲げ弾性率(FM:〔MPa〕)は、JIS K7171に従って、下記の条件で測定した。
【0243】
<測定条件>
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm
(17)シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験(〔kJ/m2〕)は、JIS K7111に従って、下記の条件で行った。
【0244】
<試験条件>
温度:−30℃、23℃
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
ノッチは機械加工である
(18)引張破断伸び
引張試験はJIS K7202に従って、下記の条件で行った。
【0245】
<測定条件>
試験片 : JIS K7162-BA ダンベル
5mm(幅)×2mm(厚さ)×75mm(長さ)
引張速度 : 20mm/分
スパン間距離 : 58mm
(19)ロックウェル硬度
ロックウェル硬度(Rスケール)は、JIS K7202に従って、下記の条件で測定した。
<測定条件>
試験片:幅30mm、長さ30mm、厚さ2mm
試験片を2枚重ねして測定した
(20)透過型電子顕微鏡観察
プロピレン系樹脂組成物の相構造の観察は、上記(11)と同様の方法によって測定した。
(使用試薬)
トルエンはGlassContour社製有機溶媒精製装置を用いて精製したものを用いた。アルミノキサンのトルエン溶液は、日本アルキルアルミ社製の20wt%メチルアルミノキサン/トルエン溶液を用いた。トリイソブチルアルミは東ソー・ファインケム社製のものをトルエンで希釈(1.0M)して用いた。
【0246】
[実施例1]
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M−1)の製造
触媒として使用したジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドは特許第3737134号に開示されている方法に従って合成した。
【0247】
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、トルエン1.5Lを入れたのち、85℃に昇温した。そこに600rpmで重合器内部を撹拌しながらプロピレンを240リットル/hrで連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きプロピレンを連続的に供給した状態で、メチルアルミノキサン(DMAOとも記す)のトルエン溶液(1.5mol/L)を5.0mL(7.5mmol)、ついでジメチルシリルビス(2−メチル−4−フィニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0020mol/L)を6.0mL(0.012mmol)加え、常圧下、85℃で30分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む5Lのメタノール中に加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、プロピレン重合体(末端不飽和ポリプロピレン(M−1))63.4gを得た。得られた重合体の分析結果を表1−2に示す。
工程(B):オレフィン系樹脂(β−1)の製造
触媒として使用した下記式で示される化合物(1)は公知の方法によって合成した。
【0248】
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(M−1)5.0gとキシレン500mlを入れたのち、97℃に昇温し末端不飽和ポリプロピレン(M−1)を溶解させた。そこに、600rpmで重合器内部を撹拌しながら、エチレンおよび1−ブテンをそれぞれ120リットル/hrおよび15リットル/hrで連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよび1−ブテンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu
3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を1.0mL(1.00mmol)、前記化合物(1)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を5.0mL(0.01mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph
3CB(C
6F
5)
4とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を6.25mL(0.025mmol)加え、常圧下、97℃で40分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、29.3gのオレフィン系樹脂(β−1)を得た。 オレフィン系樹脂(β−1)の分析結果を表1−1に示す。
【0249】
後述の比較例1において末端不飽和ポリプロピレン(M−1)を添加しない以外は実施例1と同様に重合して得られた樹脂(β'−1)を既述の方法で分析した結果を表1−3に示す。この樹脂(β’−1)を、オレフィン系樹脂(β−1)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
【0250】
【化21】
[実施例2]
末端不飽和ポリプロピレン(M−1)の仕込み量を10.0gにして工程(B)を実施したこと以外は実施例1と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−2)を32.9g得た。
【0251】
オレフィン系樹脂(β−2)の分析結果を表1−1に示す。
【0252】
また、得られた樹脂をラボプラスとミルで混練した後、透過型電子顕微鏡で相構造を観察した。その結果、オレフィン系樹脂(β−2)は非晶性成分により形成される海相と結晶性成分により形成される島相とからなる相分離構造を有し、島相の平均径は250nmであった。得られた像(倍率4000倍)を
図1に示す。
[実施例3]
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M−2)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、窒素流通下でトルエン500mLおよびメチルアルミノキサン(PMAOとも記す)のトルエン溶液(1.5mol/L)0.67mL(1.0mmol)を入れた。その後オートクレープを閉鎖し、85℃に昇温した。次に600rpmで重合器内部を撹拌しながらプロピレン分圧を0.3MPaに昇圧し、引き続き85℃を維持した。そこにジメチルシリルビス(2−メチル−4−フィニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0010mol/L)を1.0mL(0.001mmol)圧入し重合を開始した。プロピレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、85℃で20分間重合を行った後、5mLのメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノールに加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、末端不飽和ポリプロピレン(M−2)14.9gを得た。得られた重合体の分析結果を表1−2に示す。
工程(B):オレフィン系樹脂(β−3)の製造
末端不飽和ポリプロピレン(M−1)に替えて末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を使用して工程(B)を実施したこと以外は実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−3)を31.4g得た。
【0253】
オレフィン系樹脂(β−3)の分析結果を表1−1に示す。
[実施例4]
工程(B):オレフィン系樹脂(β−4)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(M−2)10.0gとキシレン500mlを入れたのち、93℃に昇温し、末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を溶解させた。そこに、600rpmで重合器内部を撹拌しながら、エチレンおよび1−ブテンをそれぞれ120リットル/hrおよび30リットル/hrで連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよび1−ブテンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu
3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を1.0mL(1.00mmol)、前記化合物(1)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を4.5mL(0.009mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph
3CB(C
6F
5)
4とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を6.25mL(0.025mmol)加え、常圧下、93℃で40分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、30.0gのオレフィン系樹脂(β−4)を得た。オレフィン系樹脂(β−4)の分析結果を表1−1に示す。
【0254】
末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を添加しないこと以外は実施例4と同様に重合を行って得られた樹脂(β'−4)を既述の方法で分析して分析した結果を表1−3に示す。この樹脂(β’−4)を、オレフィン系樹脂(β−4)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
[実施例5]
工程(B):オレフィン系樹脂(β−5)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(M−2)8.0gとキシレン500mlを入れたのち、90℃に昇温し末端不飽和ポリプロピレンを溶解させた。そこに、600rpmで重合器内部を撹拌しながら、エチレンおよびプロピレンをそれぞれ100リットル/hrおよび35リットル/hrで連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよびプロピレンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu
3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を6.0mL(6.00mmol)、前記化合物(1)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を7.5mL(0.015mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph
3CB(C
6F
5)
4とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を15mL(0.06mmol)加え、常圧下、90℃で40分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、25.8gのオレフィン系樹脂(β−5)を得た。オレフィン系樹脂(β−5)の分析結果を表1−1に示す。
【0255】
末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を添加しないこと以外は実施例5と同様に重合を行って得られた樹脂(β'−5)を既述の方法で分析した結果を表1−3に示す。この樹脂(β’−5)を、オレフィン系樹脂(β−5)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
[実施例6]
工程(B):オレフィン系樹脂(β−6)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(M−2)10.0gとキシレン500mlを入れたのち、95℃に昇温し末端不飽和ポリプロピレンを溶解させた。そこに、600rpmで重合器内部を撹拌しながら、エチレンおよびプロピレンをそれぞれ100リットル/hrおよび17リットル/hrで連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよびプロピレンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu
3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を6.0mL(6.00mmol)、前記化合物(1)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を7.5mL(0.015mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph
3CB(C
6F
5)
4とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を15mL(0.06mmol)加え、常圧下、95℃で30分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え、重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、25.2gのオレフィン系樹脂(β−6)を得た。オレフィン系樹脂(β−6)の分析結果を表1−1に示す。
【0256】
末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を添加しないこと以外は実施例6と同様に重合を行って得られた樹脂(β’−6)を既述の方法で分析して分析した結果を表1−3に示す。この樹脂(β’−6)を、オレフィン系樹脂(β−6)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
【0257】
[実施例7]
工程(B):オレフィン系樹脂(β−7)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(M−2)10.0gとキシレン500mlを装入したのち、85℃に昇温し末端不飽和ポリプロピレンを溶解させた。そこに600rpmで重合器内部を撹拌しながら、エチレン120リットル/hrおよび1−ブテン18リットル/hrを連続的に供給し液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよび1−ブテンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu
3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を1.0mL(1.00mmol)、前記化合物(1)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を3.5mL(0.007mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph
3CB(C
6F
5)
4とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を6.25mL(0.025mmol)加え、常圧下、85℃で40分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、29.5gオレフィン系樹脂(β−7)を得た。 オレフィン系樹脂(β−7)の分析結果を表1−1に示す。
【0258】
末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を添加しない以外は同様に重合して得られた樹脂(β’−7)を既述の方法で分析した結果を表1−3に示す。この樹脂(β’−7)を、オレフィン系樹脂(β−7)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
[実施例8]
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M−3)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、窒素流通下でトルエン500mLおよびメチルアルミノキサン(PMAOとも記す)のトルエン溶液(1.5mol/L)を0.67mL(1.0mmol)、を装入した。その後オートクレープを閉鎖し、85℃に昇温した。次に600rpmで重合器内部を撹拌しながらプロピレン分圧を0.5MPaに昇圧し、引き続き85℃を維持した。そこにジメチルシリルビス(2−メチル−4−フィニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0010mol/L)を0.5mL(0.0005mmol)圧入し重合を開始した。プロピレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、85℃で8分間重合を行った後、5mLのメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られた重合反応液は少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノールに加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、プロピレン系重合体12.3gを得た。得られた重合体の分析結果を表1−2に示す。
工程(B):オレフィン系樹脂(β−8)の製造
実施例2の工程(B)および工程(C)において、末端不飽和ポリプロピレン(M−1)に変えて末端不飽和ポリプロピレン(M−3)を用いた以外は同様に実施した。オレフィン系樹脂(β−8)を32.4g得た。
【0259】
オレフィン系樹脂(β−8)の分析結果を表1−1に示す。
[実施例9]
末端不飽和ポリプロピレン(M−2)の仕込み量を2.5gにして工程(B)を実施したこと以外は実施例3と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−9)を26.9g得た。
【0260】
オレフィン系樹脂(β−9)の分析結果を表1−1に示す。
[比較例1]
末端不飽和ポリプロピレン(M−1)を加えずに重合して工程(B)を実施したこと以外は実施例1と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(β’−1)は24.2gであった。得られたオレフィン系樹脂(β’−1)の分析結果を表1−1および1−3に示す。
[比較例2]
1−ブテンの供給量を16リットル/hrに、重合温度を102℃にし、さらに末端不飽和ポリプロピレン(M−1)を加えずに重合して工程(B)を実施したこと以外は実施例1と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(β’−2)は21.4gであった。得られたオレフィン系樹脂(β’−2)の分析結果を表1−1および1−3に示す。
[比較例3]
末端不飽和ポリプロピレン含量が30.4重量%となるように、樹脂(β’−1)と末端不飽和ポリプロピレン(M−1)を既述の方法で混練し、樹脂(B−1)を得た。分析結果を表1−1に示す。
【0261】
また、透過型電子顕微鏡で相構造を観察した。得られた像(倍率4000倍)を
図2に示す。
図2から明らかなように、樹脂(B−1)は相分離構造が観察されたが、その島相は粗大でμmオーダーでの分散が認められた。
[比較例4]
末端不飽和ポリプロピレン含量が31.9重量%となるように、樹脂(β’−1)と末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を既述の方法で混練し、樹脂(B−2)を得た。分析結果を表1−1に示す。
【0262】
なお、表1−1に示した比較例1〜4のオレフィン重合体の分析結果は、エチレン・α−オレフィン共重合体、あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体と混合したプロピレン重合体を示すものであり、当該比較例で得られた樹脂はグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含まない。
【0263】
実施例1〜9で得られたオレフィン系樹脂(β)は、重合工程のみにより製造されるため、副生成物や残留基質による、着色や異臭、溶出成分による汚染等、製品の品質面での懸念が少ない。
[比較例5]
化合物(1)のトルエン溶液(0.0020mol/L)5.0mL(0.01mmol)に変えて化合物(2)のトルエン溶液(0.0020mol/L)6.0mL(0.012mmol)としたこと以外は、実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(D−1)は33.6gであった。得られたオレフィン系樹脂(D−1)の分析結果を表1−1に示す。化合物(2)は特表2006−52
5314に記載されている方法により合成した。
【0264】
【化22】
[比較例6]
化合物(1)のトルエン溶液(0.0020mol/L)5.0mL(0.01mmol)に変えて、化合物(2)のトルエン溶液(0.0020mol/L)3.0mL(0.006mmol)としたこと以外は、実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(D−2)は21.1gであった。得られたオレフィン系樹脂(D−2)の分析結果を表1−1に示す。
【0265】
化合物(1)に変えて化合物(2)を用いたこと以外は、比較例1と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(D'−1)は43.4gであった。得られたオレフィン系樹脂(D'−1)の分析結果を表1−3に示す。この樹脂(D'−1)を、オレフィン系樹脂(D−1)およびオレフィン系樹脂(D−2)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
[比較例7]
化合物(1)に変えて化合物(3)で表される[ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドを用いたこと以外は、実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(D−3)は11.8gであった。得られたオレフィン系樹脂(D−3)の分析結果を表1−1に示す。ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドは公知の方法により合成した。
【0266】
【化23】
末端不飽和ポリプロピレン(M−1)を添加しない以外は同様に重合して得られた樹脂(D'−3)を既述の方法で分析した結果を表1−3に示す。この樹脂(D'−3)を、オレフィン系樹脂(D−3)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
[比較例8]
化合物(1)に変えて化合物(4)で表されるrac−エチレンビス(インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリドを用いたこと以外は、実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(D−4)は60.2gであった。得られたオレフィン系樹脂(D−4)の分析結果を表1−1に示す。rac−エチレンビス(インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリドはSTREM CHEMICHALS社製のものを用いた。
【0267】
【化24】
末端不飽和ポリプロピレン(M−1)を添加しない以外は同様に重合して得られた樹脂(D'−4)を既述の方法で分析した結果を表1−3に示す。この樹脂(D'−4)を、オレフィン系樹脂(D−4)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
【0268】
上記、実施例および比較例において、割合E(wt%)と割合P(wt%)とa値との関係を示した図が
図5である。
【0271】
【表1-3】
上記、実施例と比較例の対比について以下詳細に説明する。
(実施例1〜9と比較例1〜8の対比)
実施例1〜9で得られた樹脂β−1〜β−9は、a値が1.4以上であり、グラフト型オレフィン重合体[R1]を多く含んでいる。そのため実施例1〜9で得られた樹脂β−1〜β−9は、耐熱性があり、ベタつきが小さい。一方、比較例1〜8で得られた樹脂は、a値は1.4未満であり、グラフト型オレフィン重合体を多く含まず、耐熱性に優れず、ベタつきが大きい。
(実施例2と比較例3の相構造の対比)
実施例2で得られた樹脂β−2と比較例3で得られた樹脂B−1は、同等のエチレン・α−オレフィン共重合体と同等のプロピレン重合体を各同等量含んでいるが、a値から明らかなように、樹脂β−2はエチレン・α−オレフィン共重合体とプロピレン重合体に結合しているグラフト型オレフィン重合体[R1]を多く含んでいる。このため樹脂β−2の相構造の方が、結晶性のプロピレン成分を示す島相がより微細に分散している。これは、グラフト型オレフィンポリマーを含むことに起因する相溶化効果の表れであり、樹脂β−2が樹脂B−1と比較して高い相溶化効果を有していることが推察できる。
[製造例1] プロピレン系単独重合体樹脂(α―h−1)の製造
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0272】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下した。滴化終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、2時間同温度にて攪拌した。
【0273】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0274】
ここで、この遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。上記固体触媒成分の洗浄液10mlを注射器で採取して、予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに入れた。次に、窒素気流にてヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを入れ、30分間攪拌した。この水溶液をろ紙に通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃H
3PO
4 1mlとチタンの発色試薬として3%H
2O
2 5mlを加え、イオン交換水で100mlにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後に、UV測定器を用い、420nmの吸光度を観測した。この吸光が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
【0275】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン2.3重量%、塩素61重量%、マグネシウム19重量%、DIBP 12.5重量%であった。
(2)前重合触媒の製造
固体触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに入れ、内温15〜20℃に保ち、プロピレンを600g入れ、60分間攪拌しながら反応させ、触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を177NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.58g/時間、トリエチルアルミニウムを3.1ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを3.3ml/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.53MPa/Gであった。
【0276】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へ、プロピレンを45kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が3.2mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.28MPa/Gで重合を行った。
【0277】
得られたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)は、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系単独重合体樹脂(α―h−1)の物性は、メルトフローレート(MFR)が30g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が97.8%であった。
[製造例2]プロピレン系ランダム共重合体樹脂(α−r−1)の製造
(1)マグネシウム化合物の調製
攪拌機付き反応槽(内容積500リットル)を窒素ガスで充分に置換し、エタノール97.2kg、ヨウ素640g、及び金属マグネシウム6.4kgを入れ、攪拌しながら還流条件下で系内から水素ガスの発生が無くなるまで反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応性生物を含む反応液を減圧乾燥させることにより目的のマグネシウム化合物(固体触媒の担体)を得た。
(2)固体触媒成分の調製
窒素ガスで充分に置換した攪拌機付き反応槽(内容積500リットル)に、前記マグネシウム化合物(粉砕していないもの)30kg、精製ヘプタン(n−ヘプタン)150リットル、四塩化ケイ素4.5リットル、及びフタル酸ジ−n−ブチル5.4リットルを加えた。系内を90℃に保ち、攪拌しながら四塩化チタン144リットルを入れ、110℃で2時間反応させた後、固体成分を分離して、80℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン228リットルを加え、110℃で2時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得た。
(3)前処理
内容積500リットルの攪拌機付き反応槽に精製ヘプタン230リットルを入れ、前記の固体触媒成分を25kg、トリエチルアルミニウムを固体触媒成分中のチタン原子に対して1.0mol/mol、ジシクロペンチルジメトキシシランを1.8mol/molの割合で供給した。その後、プロピレンをプロピレン分圧で0.03MPa−Gになるまで導入し、25℃で4時間反応させた。反応終了後、固体触媒成分を精製ヘプタンで数回洗浄し、更に二酸化炭素を供給し24時間攪拌した。
(4) 重合
内容量200リットルの攪拌機付き重合装置に、前記処理済の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/hrで、トリエチルアルミニウムを2.5mmol/kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.25mmol/kg−PPでそれぞれ供給した。重合温度82℃、重合圧力2.8MPa−Gでプロピレン、エチレン、1−ブテンをそれぞれ46.0kg/hr、2.0kg/hr、2.4kg/hrで連続的に供給し、反応させた。この時、重合内のエチレン濃度は2.4mol%、1−ブテン濃度は1.8mol%、水素濃度を8.2mol%であった。
【0278】
その結果、エチレン由来の構成単位の含有量が3.6wt%、1−ブテン由来の構成単位の含有量が2.4wt%、MFRが7.0g/10分、融点(Tm)が138℃であるプロピレン系ランダム共重合体樹脂(α−r−1)を得た。
[製造例3]プロピレン系ブロック重合体樹脂(α―b−1)の製造
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0279】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下した。滴化終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、2時間同温度にて攪拌した。
【0280】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0281】
ここで、この遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。上記固体触媒成分の洗浄液10mlを注射器で採取して、予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに入れた。次に、窒素気流にてヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを入れ、30分間攪拌した。この水溶液をろ紙に通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃H
3PO
4 1mlとチタンの発色試薬として3%H
2O
2 5mlを加え、イオン交換水で100mlにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後に、UV測定器を用い、420nmの吸光度を観測した。この吸光が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
【0282】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン2.3重量%、塩素61重量%、マグネシウム19重量%、DIBP 12.5重量%であった。
(2)前重合触媒の製造
固体触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに入れ、内温15〜20℃に保ち、プロピレンを600g入れ、60分間攪拌しながら反応させ、触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を197NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.59g/時間、トリエチルアルミニウムを3.1ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを3.3ml/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.60MPa/Gであった。
【0283】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へ、プロピレンを45kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が6.0mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.35MPa/Gで重合を行った。
【0284】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)として0.23(モル比)、水素/エチレンとして0.031(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.0MPa/Gで重合を行った。
【0285】
得られたプロピレン系ブロック共重合体樹脂(α―b−1)は、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系ブロック重合体樹脂(α―b−1)の物性は、メルトフローレート(MFR)が20g/10分であった。
また、本重合の工程で得られたポリプロピレンホモポリマーパウダー、すなわち、ブロック共重合体のホモポリプロピレン部のメルトフローレート(MFR)は35g/10分かつアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が97.7であった。
【0286】
プロピレン系ブロック重合体樹脂(α―b−1)を、ガラス製の測定容器に約3g(10
-4gの単位まで測定した。また、この重量を、下式においてb(g)と表した。)、n−デカン500mL、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン系ブロック共重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mLを採取し、これを減圧乾燥して室温n−デカン可溶成分の一部を得、この重量を10
-4gの単位まで測定した(この重量を、下式においてa(g)と表した)。室温n−デカン可溶成分(Dsolともいう)量下記式によって決定した。
【0287】
【数8】
Dsol量は12.0wt%、Dsol中のエチレン由来の構成単位が42モル%、135℃デカリン中の極限粘度[η]が3.4dl/gであった。なお、[η]は前述の「(7)極限粘度測定」と同様の方法で測定した。
[実施例10]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β―2)25重量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)75重量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて下記の条件で試験片を作成した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表2に示す。なお、表2および3において「組成」の欄に示された数値はすべて重量部を意味する。
【0288】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 KZW−15、(株)テクノベル 社製
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:品番 EC40、東芝機械(株)製
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間 : 15秒
【0289】
[比較例9]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β―2)25重量部に替えて、比較例2で製造されたオレフィン系樹脂(β’−2)25重量部を使用したこと以外は実施例10と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表2に示す。
【0290】
[実施例11]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β―2)25重量部、製造例2で製造されたプロピレン系ランダム共重合体樹脂(α−r−1)75重量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、実施例10と同様に、二軸押出機にて溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて試験片を作成した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表2に示す。
[比較例10]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β―2)25重量部に替えて、比較例2で製造されたオレフィン系樹脂(β’−2)25重量部を使用したこと以外は実施例11と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表2に示す。
【0291】
【表2】
[実施例12]
実施例1で製造されたオレフィン系樹脂(β―1)20重量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)60重量部、タルク(JM−209(商標)、浅田製粉(株)製)20重量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて下記の条件で試験片を作成した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0292】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 KZW−15、(株)テクノベル 社製
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:品番 EC40、東芝機械(株)製
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間 : 15秒
【0293】
[実施例13]
実施例1で製造されたオレフィン系樹脂(β−1)20重量部に替えて、実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β−2)20重量部を使用したこと以外は実施例12と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。実施例13で得られたプロピレン組成物の透過型電子顕微鏡で相構造を観察した結果が
図3である。
【0294】
[実施例14]
実施例1で製造されたオレフィン系樹脂(β−1)20重量部に替えて、実施例3で製造されたオレフィン系樹脂(β−3)20重量部を使用したこと以外は実施例12と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0295】
[実施例15]
実施例1で製造されたオレフィン系樹脂(β−1)20重量部に替えて、実施例4で製造されたオレフィン系樹脂(β−4)20重量部を使用したこと以外は実施例12と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0296】
[実施例16]
実施例1で製造されたオレフィン系樹脂(β−1)20重量部に替えて、実施例5で製造されたオレフィン系樹脂(β−5)20重量部を使用したこと以外は実施例12と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0297】
[比較例11]
比較例1で製造されたオレフィン系樹脂(β’―1)20重量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)60重量部、タルク(JM−209(商標)、浅田製粉(株)製)20重量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、実施例12と同様に、二軸押出機にて溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて試験片を作成した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0298】
[比較例12]
比較例1で製造されたオレフィン系樹脂(β’―1)の使用量を22重量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)の使用量を58重量部に替えたこと以外は比較例10と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0299】
[比較例13]
比較例1で製造されたオレフィン系樹脂(β’―1)10重量部、製造例3で製造されたプロピレン系ブロック共重合体樹脂(α−b−1)70重量部、タルク(JM−209(商標)、浅田製粉(株)製)20重量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、実施例12と同様に、二軸押出機にて溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製、射出成形機にて試験片を作成した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0300】
[比較例14]
比較例1で製造されたオレフィン系樹脂(β'―1)の使用量を15重量部に替え、製造例3で製造されたプロピレン系ブロック共重合体樹脂(α−b−1)の使用量を65重量部に替えたこと以外は比較例12と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0301】
[比較例15]
比較例1で製造されたオレフィン系樹脂(β'―1)に替えて、比較例6で製造されたオレフィン系樹脂(D―2)を23重量部、製造例3で製造されたプロピレン系単独共重合体(α−h−1)の使用量を57重量部に替えたこと以外は比較例12と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0302】
[実施例17]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β―2)8重量部、比較例1で製造されたオレフィン系樹脂(β’―1)12重量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)60重量部、タルク(JM−209(商標)、浅田製粉(株)製)20重量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて下記条件で試験片を作成した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0303】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 KZW−15、(株)テクノベル 社製
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:品番 EC40、東芝機械(株)製
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間 : 15秒
【0304】
[実施例18]
実施例3で製造されたオレフィン系樹脂(β―3)5重量部、比較例1で製造されたオレフィン系樹脂(β’―1)18重量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)57重量部、タルク(JM−209(商標)、浅田製粉(株)製)20重量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、実施例17と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0305】
[実施例19]
実施例3で製造されたオレフィン系樹脂(β―3)5重量部に替えて、実施例6で製造されたオレフィン系樹脂(β―6)5重量部を使用したこと以外は、実施例18と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0306】
【表3】
(実施例10〜19と比較例9〜15の対比)
実施例10〜19で得られたプロピレン系樹脂組成物は、オレフィン系樹脂(β)を含むため、伸び、剛性、衝撃強度および強度の物性バランスが、対比となる比較例に比べ優れている。