(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は実施形態の光電流センサの構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、この実施形態の光電流センサは、光ファイバーのファラデー効果を用いて電流を測定する装置であり、第1の光分岐器2、第1の偏光フィルタ3、第2の光分岐器4、位相変調器5、電流検出コイル6、受光器7、同期検波器8、発振回路9、第1の1/4波長板16、第2の1/4波長板17などを有する。
【0012】
第1の光分岐器2、第1の偏光フィルタ3および第2の光分岐器4は、光源1 から出射された光を電流検出コイル6内に左回り光および右回り光として送り込む。
【0013】
位相変調器5は、左回り光および右回り光を位相変調し、対応する1/4波長板16(または17)を通じて電流検出コイル6に入射する。位相変調器5は、例えば左回り光を位相変調し、第1の1/4波長板16を通じて電流検出コイル6に入射する。位相変調器5は、例えば第1の1/4波長板16を通過した右回り光を位相変調し、第2の光分岐器4、第1の偏光フィルタ3、第1の光分岐器2を通過して受光器7に受光させる。
【0014】
電流検出コイル6は、検出対象の電流Iが流れるケーブルの周囲に回巻するように配置される。電流検出コイル6はファラデー効果による位相差を検出する。電流検出コイル6では、第1の1/4波長板16、第2の1/4波長板17から入射された光がそれぞれの方向に周回して伝搬し、順次、第2の光分岐器4、第1の偏光フィルタ3、第1の光分岐器2を通過して受光器7へ到達し受光される。
【0015】
受光器7は、第1の光分岐器2を通過した光を受光する。受光器7は受光した光を光電変換して電気信号に変換する。発振回路9は、参照信号を発振する。同期検波器8は、発振回路9から供給される信号を参照信号として、電流検出コイル6に印加される磁界に比例する位相差の検波出力を得る。
【0016】
ここで、
図2を参照して電流検出コイル6の第1実施形態を説明する。
図2に示すように、第1実施形態の電流検出コイル6は、光が実際に伝搬する部分であるコア61の周囲に、コア61よりも僅かに屈折率の小さいクラッド62の層を形成した、センサである導光用の光ファイバー63と、例えばシリコーンゴム等で形成したゴム弾性を有する円筒状の筒状部材64と、この筒状部材64の長手方向に沿って配置された補強のための支持部材(補強用部材)としての光ファイバー65と、この光ファイバー65と筒状部材64とを固着する固着部材としての接着剤66とを備える。
【0017】
センサである光ファイバー63はそのコアまたはクラッドが例えば石英またはガラスを素材とするものである。接着剤66は光ファイバー65と筒状部材64とを部分的または対向する部位全体で接着する。筒状部材64は、石英またはガラスに対してヤング率が十分小さな素材で形成されていると、支持部材に筒状部材64の形状が拘束されるため好ましい。この例では、補強用の支持部材は、光ファイバー63と同じ(同等な)熱膨張特性を有する光ファイバー65を用いている。
【0018】
補強用の支持部材は、光ファイバー65の他、光ファイバー63と熱膨張特性が同等のもの、つまり熱膨張係数が同等のものが適用可能である。
【0019】
筒状部材64は光ファイバー63の外径よりも内径が大きい筒状部を有し、この筒状部に光ファイバー63を収容している。光ファイバー63は筒状部材64の内部(筒状の部分)に筒状部材64の内壁面からすき間を空けて収容されており、外部の影響を受けないよう保護(保持)されている。
【0020】
つまり、筒状部材64は、光ファイバー63の外径と比べて内径が大きくその内部には空間(すき間)が設けられており中空構造とされている。このような中空構造とすることは、振動などの衝撃が加わった際に、その衝撃を外郭の筒状部材64で吸収し内部の光ファイバー63を保護することができる。
【0021】
例えば光ファイバー63の回りがシリコーンゴム等で満たされているような状態であれば、衝撃により、光ファイバー63を圧縮する力(圧力)が加わるが、この実施形態のような中空構造の場合、衝撃で光ファイバー63に圧力が加わることはない。
【0022】
この実施形態の光電流センサの機能を説明する。
この実施形態では、筒状部材64にシリコーンゴムなどのゴム弾性を持った素材を使用している。このようにゴム弾性を持った素材は、一般に、熱膨張係数が光ファイバー63のそれよりも格段に大きく、温度変化による伸縮によって、光ファイバー63に伸縮方向の力を加えることになる。
【0023】
これを防ぐには、筒の内径を、温度による伸縮以上に大きくすることが考えられるが、この場合、光ファイバー63を保持する本来の機能が果たせなくなる。またこの場合、筒の中で光ファイバー63に蛇行しながら保持されるようになり、光ファイバー63の曲げによる複屈折が生じることとなる。さらにこれでは光ファイバー63の形状が安定しないことから、複屈折もまた安定しなくなるという問題を生じる。
【0024】
光ファイバー63に伸縮方向の力を加えないためのもう一つの方策は、筒状部材64の熱膨張を光ファイバー63のそれと揃えることであるが、ゴム弾性と光ファイバー63並の低膨張率の2つの特性を併せ持った材料がないことから筒状部材64自体での対策はできない。
【0025】
そこで、この実施形態では、ゴム弾性を持った筒状部材64の伸縮を、光ファイバー63のそれと揃えるための機構を新たに設けることで、光ファイバー63に圧縮力が加わらないようにする機能を実現している。
【0026】
すなわち、この第1実施形態では、筒状部材64の側に、補強用の光ファイバー65を配置し、筒状部材64と光ファイバー65の間を接着剤66で固着(結合)する。
【0027】
この場合、筒状部材64の全長(長手方向)に亘って接着剤66を塗布して光ファイバー65と筒状部材64を結合することが理想的ではあるが、筒状部材64に曲がりが発生しない程度に接着剤66を点在させて塗布し、筒状部材64と光ファイバー65を固着(結合)しても実用上は差し支えない。
【0028】
このようにこの第1実施形態によれば、光ファイバー63を収容した筒状部材64の長手方向に沿って補強用の光ファイバー65を配置し、光ファイバー65と筒状部材64を接着剤66で固着(結合)し、温度変化による伸縮が筒状部材64に生じなくすることで、筒状部材64内部の光ファイバー63に圧力が加わらなくなり、光ファイバー63の複屈折を低減することができる。この結果、電流検出精度をより高精度化することができる。
【0029】
次に、
図3を参照して第2実施形態を説明する。
上記第1実施形態では、補強用の支持部材として、センサである光ファイバー63と同じ光ファイバー65を使用したが、補強用の支持部材は光ファイバー63と必ずしも同一である必要はない。
【0030】
つまり、補強用の支持部材としては、例えば光ファイバー63と同じかそれに近い値(光ファイバー63以上)の熱膨張係数でかつ筒状部材64よりも熱膨張係数が小さいものであればよい。
【0031】
そこで、第2実施形態では、
図3に示すように、補強用の支持部材として、大口径のマルチモードファイバー70を用いる。
【0032】
すなわち、この第2実施形態の電流検出コイル6は、光が実際に伝搬する部分であるコア61の周囲に、コア61よりも僅かに屈折率の小さいクラッド62の層を形成した、センサである導光用の光ファイバー63と、例えばシリコーンゴム等で形成したゴム弾性を有する筒状部材64と、この筒状部材64の長手方向に沿って配置された補強のための支持部材(補強部材)としてのマルチモードファイバー70と、このマルチモードファイバー70と筒状部材64とを固着する固着部材としての接着剤66とを備える。
【0033】
センサである光ファイバー63が、例えば石英を素材とするファイバー(石英ファイバー)等の場合、シングルモードファイバーの外径は、例えば125μm等の標準的な石英外径であるのに対し、マルチモードファイバー70はその外径が例えば250μm〜400μmといったように大口径のものが製作可能である。
【0034】
このような大口径のマルチモードファイバー70を支持部材として用いることで、ファイバーが折れ曲がり難くなり、コイル状に成型した場合に、全長に渡ってほぼ同じ曲率半径で、綺麗な円形形状を形作ることができる。
【0035】
大口径のマルチモードファイバー70は、ファイバーが折れ曲がり難いことから、ファイバーの曲げ半径が小さくならず、この大口径のマルチモードファイバー70で補強された筒状部材64の中に収納された光ファイバー63は、曲げ半径の小さな部分がない綺麗な円形形状に保たれることから、複屈折を最小に保つことができる。
【0036】
このようにこの第2実施形態によれば、補強用の支持部材としてのマルチモードファイバー70を用いることで、筒状部材64をさらに補強でき、複屈折を最小に保つことができる。
【0037】
次に、
図4を参照して第3実施形態を説明する。
上記第1実施形態では、筒状部材64の収縮を拘束するための補強用の支持部材として、一本の光ファイバー65を用いたが、この部材は必ずしも1本である必要はなく、例えば
図4に示すように、筒状部材64の周囲に複数の光ファイバー65を配置し筒状部材64に接着剤66で固着(結合)してもよい。この例では、筒状部材64の周囲に4本の光ファイバー65をほぼ90°の間隔を隔てて配置し、筒状部材64に接着剤66で接着している。
【0038】
この第3実施形態によれば、第1実施形態よりもさらに強力に筒状部材64の温度変化による伸縮を生じ難くすることができ、光ファイバー63の複屈折を低減することができる。この結果、電流検出精度をより高精度化することができる。
【0039】
次に、
図5を参照して第4実施形態を説明する。
上記第1実施形態では、センサである光ファイバー63を中空の筒状部材64に収容した例を示したが、この第4実施形態では、これらを一体化した例を説明する。
【0040】
すなわち、この第4実施形態の電流検出コイル6は、光が実際に伝搬する部分であるコア71の周囲に、コア71よりも僅かに屈折率の小さいクラッド72の層を形成した、センサである導光用の光ファイバー73と、この光ファイバー73の上に形成された1次コーティング74と、この1次コーティング74の上に形成された2次コーティング75と、この2次コーティング75の上部に、すき間を隔てて形成された3次コーティング77とを有するセンサファイバーと、このセンサファイバーの長手方向に沿って配置された補強のための支持部材(補強部材)としての光ファイバー65と、この光ファイバー65と筒状部材64とを固着する固着部材としての接着剤66とを備える。
【0041】
センサファイバーを形成する際に、1次コーティングを行った光ファイバー73に捻りを加え、その周囲に捻りを固定するための2次コーティング75を形成する。
【0042】
この第4実施形態では、2次コーティング75と3次コーティング77との間には、すき間76が設けられているので、光ファイバー73側は3次コーティング77を形成する際の熱膨張の影響を受けることがなく、このため、2次コーティング75よりも固い3次コーティング77を形成することができる。
【0043】
したがって、1次コーティング74のヤング率を低くして、光ファイバー73に加わる応力を最小にすることができると共に、光ファイバー73側に熱膨張の影響を与える2次コーティング75は、捻りを固定するのに必要な程度の固さとし、外力からの保護はさらに固い3次コーティング77で行うことにより、波長分散や複屈折の発生の防止と損傷の防止をより確実にすることができる。
【0044】
この第4実施形態によれば、光ファイバー73に多重にコーティングした一体型のセンサファイバーを設け、このセンサファイバーに対して、第1実施形態と同様に光ファイバー65を接着剤で固着(結合)することで、3次コーティング77の温度変化による伸縮が光ファイバー65によって拘束される一方、温度変化による膨張は光ファイバー65と同じになるので、さらに複屈折は安定し、電流の測定を高精度に行うことができるようになる。
【0045】
また、2次コーティング75と3次コーティング77との間に設けたすき間76が、第1実施形態の場合と同様に、振動などの外力が加わったときの緩衝層として機能することで、外力がそのまま光ファイバー73に伝わることがなく、低複屈折を維持することができる。
【0046】
次に、
図6を参照して第5実施形態を説明する。
この第5実施形態は、第1実施形態のように、補強用の光ファイバー65及び接着剤66で筒状部材64を拘束(固定または固着ともいう)するのではなく、これの代わりに、石英のキャピラリー80の表面及び裏面にシリコーンコーティング81を形成した筒状部材とし、この筒状部材のシリコーンコーティング81の内側の空間に、外径が小さい光ファイバー63を収納して電流検出コイル6を構成している。すなわちこの例も筒状部材の中が中空構造とされている。
【0047】
例えばセンサである光ファイバー63と石英のキャピラリー80との間がシリコーン等で満たされているものの場合、振動などの外力が、収縮力となって光ファイバー63に伝わってしまうが、この第5実施形態の場合、筒状部材82の内側に空間が設けられていることで、低複屈折を維持することができる。
【0048】
この中空構造は、石英のキャピラリー80に予めシリコーンコーティングを施した後、その筒内に光ファイバー63を通すことによって容易に実現することができる。コーティングはシリコーンゴムに限定されるものではなく、例えばポリイミドなどの樹脂など、石英に対して十分にヤング率の小さい材料であれば、同様の効果を得ることができる。
【0049】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
上記実施形態では、固着部材として接着剤66を用いたが、接着剤66に限らず、例えば粘着テープなどを筒状部材64の周囲に巻き付けて固定(固着)してもよい。つまり粘着テープで光ファイバー65と筒状部材64とを一体的に包んで固着する。