特許第6017189号(P6017189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電波工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000002
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000003
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000004
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000005
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000006
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000007
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000008
  • 特許6017189-圧電振動片及び圧電デバイス 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017189
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】圧電振動片及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20161013BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20161013BHJP
   H01L 41/18 20060101ALI20161013BHJP
   H01L 41/22 20130101ALI20161013BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   H03H9/19 A
   H03H9/19 B
   H03H9/19 C
   H01L41/08 C
   H01L41/18 101A
   H01L41/22
   H01L41/18 101B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-132642(P2012-132642)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-258520(P2013-258520A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 岳寛
(72)【発明者】
【氏名】水沢 周一
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−260739(JP,A)
【文献】 特開2008−219827(JP,A)
【文献】 特開2008−252859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/19
H01L 41/09
H01L 41/18
H01L 41/187
H01L 41/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸、Y’軸、Z’軸により規定されるATカットの水晶振動片であって、
所定の振動数で振動し、両主面に励振電極を有し、長辺が前記X軸の伸びる方向に伸び、短辺が前記Z’軸の伸びる方向に伸び、前記Y’軸が伸びる方向に厚さを有する矩形形状に形成されている振動部と、
前記振動部の周囲を囲む枠部と、
前記振動部と前記枠部とを連結する連結部と、を有し、
前記振動部の側面の少なくとも一部及び前記連結部の側面は前記振動部及び前記連結部の厚さが前記振動部及び前記連結部の外周に向かうに従って薄くなるようにテーパー状に形成され、
前記各励振電極からは、それぞれ前記連結部を介して前記枠部に引き出される引出電極が形成され、
一方の前記引出電極は、前記振動部及び前記連結部のテーパー状に形成された側面を介して一方の主面から他方の主面に引出され
前記引出電極が形成される前記振動部のテーパー状に形成された側面は、前記連結部に隣接して形成されている圧電振動片。
【請求項2】
前記一方の引出電極は、前記枠部の前記振動部に面する側面を介して前記一方の主面から前記他方の主面に引き出されている請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記連結部が、1本又は複数本形成されている請求項1又は請求項2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電振動片と、
前記枠部の他方の主面に接合されるベース板と、
前記枠部の一方の主面に接合され、前記振動部を密封するリッド板と、
を備える圧電デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠部が形成されている圧電振動片及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の振動数で振動する振動部と、振動部を囲むように形成される枠部と、振動部及び枠部を連結する連結部と、を有する圧電振動片が知られている。このような圧電振動片は、枠部の一方の主面及び他方の主面にそれぞれベース板及びリッド板が接合材を介して接合されて圧電デバイスが形成される。圧電振動片の振動部の両主面には一対の励振電極が形成され、各励振電極から枠部にまではそれぞれ引出電極が引き出される。
【0003】
圧電振動片に形成される一対の引出電極は、圧電振動片の一方の主面に接合されるベース板に形成される実装端子に電気的に接続される。そのため、圧電振動片のリッド板に面する主面に形成される励振電極から引き出される引出電極は、枠部のベース板に面する主面に引き出される。このとき、引出電極は振動部、連結部、又は枠部の少なくとも一つの側面を介して形成される。例えば特許文献1には連結部の側面に引出電極が形成された圧電振動片が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−90081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1では、引出電極が主に連結部等の主面と側面との間の直角に形成された角を介して主面から側面に引き出されていることにより、引出電極が断線する又は電気抵抗が高くなり、圧電振動片のクリスタルインピーダンス(CI)が上昇するという問題がある。
【0006】
本発明では、クリスタルインピーダンス(CI)の上昇が抑えられた圧電振動片及び圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電振動片は、所定の振動数で振動し両主面に励振電極を有し所定の厚さで形成されている振動部と、振動部の周囲を囲む枠部と、振動部と枠部とを連結する連結部と、を有し、振動部の側面の少なくとも一部が振動部の厚さが振動部の外周に向かうに従って薄くなるようにテーパー状に形成され、各励振電極からは、それぞれ連結部を介して枠部に引き出される引出電極が形成され、一方の引出電極が振動部のテーパー状に形成された側面を介して一方の主面から他方の主面に引出されている。
【0008】
第2観点の圧電振動片は、第1観点において、引出電極が形成される振動部のテーパー状に形成された側面が連結部に隣接して形成される。
【0009】
第3観点の圧電振動片は、第1観点又は第2観点において、一方の引出電極が連結部の側面を介して一方の主面から他方の主面に引き出されている。
【0010】
第4観点の圧電振動片は、第1観点から第3観点において、一方の引出電極が、枠部の振動部に面する側面を介して一方の主面から他方の主面に引き出されている。
【0011】
第5観点の圧電振動片は、第1観点から第4観点において、連結部が、1本又は複数本形成されている。
【0012】
第6観点の圧電デバイスは、第1観点から第5観点に記載の圧電振動片と、枠部の他方の主面に接合されるベース板と、枠部の一方の主面に接合され、振動部を密封するリッド板と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電振動片及び圧電デバイスによれば、クリスタルインピーダンス(CI)の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】圧電デバイス100の分解斜視図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】(a)は、圧電振動片130の平面図である。 (b)は、+Y’軸側から見た圧電振動片130の−Y’軸側の面の平面図である。 (c)は、図3(a)及び図3(b)のB−B断面図である。
図4】圧電ウエハW130の平面図である。
図5】圧電ウエハW130に圧電振動片130を形成する過程が示されたフローチャートである。
図6】圧電ウエハW130に圧電振動片130を形成する過程が示されたフローチャートである。
図7】(a)は、圧電振動片230の平面図である。 (b)は、図7(a)のD−D断面図である。
図8】(a)は、圧電振動片230の平面図である。 (b)は、+Y’軸側から見た圧電振動片330の−Y’軸側の面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の構成>
図1は、圧電デバイス100の分解斜視図である。圧電デバイス100は、リッド板110と、ベース板120と、圧電振動片130と、により構成されている。圧電振動片130には例えばATカットの水晶振動片が用いられる。ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶振動片の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100においては圧電デバイス100の長辺方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0017】
圧電振動片130は、所定の振動数で振動し矩形形状に形成された振動部131と、振動部131を囲む枠部132と、振動部131と枠部132とを連結する連結部133と、を有しており、振動部131と枠部132との間には圧電振動片130をY’軸方向に貫通する貫通溝136が形成されている。連結部133は、振動部131の−X軸側の辺の中央と、−X軸側の枠部132の側面とを連結している。振動部131の+Y’軸側の面と−Y’軸側の面とには、それぞれ励振電極134a及び励振電極134bが形成されている。励振電極134a及び励振電極134bからは連結部133を介して枠部132の−Y’軸側の面の−X軸側の+Z’軸側及び+X軸側の−Z’軸側にそれぞれ引出電極135a及び引出電極135bが引き出されている。また、振動部131には、励振電極134a及び励振電極134bが形成されるメサ領域138aと、メサ領域138aの周りに形成されメサ領域138aよりもY’軸方向の厚さが薄い周辺領域138bと、が形成されている。
【0018】
ベース板120は、+Y’軸側の面に、−Y’軸側に凹んだ凹部121と、凹部121を囲む接合面122と、接合面122の+X軸側の−Z’軸側及び−X軸側の+Z’軸側の角に配置される接続電極123と、が形成されている。接合面122は、圧電振動片130の枠部132の−Y’軸側の面に接合材140(図2参照)を介して接合される。また、ベース板120の−Y’軸側の面には一対の実装端子124が形成されている。さらに、ベース板120の四隅の側面にはキャスタレーション126が形成されており、+X軸側の−Z’軸側及び−X軸側の+Z’軸側のキャスタレーション126の側面にはキャスタレーション電極125が形成されている。キャスタレーション電極125は、接続電極123と実装端子124とを電気的に接続している。また、−X軸側の+Z’軸側の角に形成されている接続電極123は圧電振動片130の−Y’軸側の面の−X軸側の+Z’軸側の角に引き出されている引出電極135aに電気的に接続され、+X軸側の−Z’軸側の角に形成されている接続電極123は圧電振動片130の−Y’軸側の面の+X軸側の−Z’軸側の角に引き出されている引出電極135bに電気的に接続される。
【0019】
リッド板110は、−Y’軸側の面に、凹部111と、凹部111を囲む接合面112とが形成されている。接合面112は、圧電振動片130の枠部132の+Y’軸側の面に接合材140(図2参照)を介して接合される。
【0020】
図2は、図1のA−A断面図である。圧電デバイス100は、圧電振動片130の+Y’軸側にリッド板110が配置され、−Y’軸側にベース板120が配置されている。また、圧電デバイス100の内部には、リッド板110の凹部111及びベース板120の凹部121によりキャビティ150が形成されており、キャビティ150には圧電振動片130の振動部131が配置されている。キャビティ150は、リッド板110の接合面112と枠部132の+Y’軸側の面との間、及びベース板120の接合面122と枠部132の−Y’軸側の面との間に接合材140が形成されることにより密封されている。また、枠部132に形成される引出電極135a及び引出電極135bがベース板120に形成される接続電極123に電気的に接続されることにより、励振電極134a及び励振電極134bと実装端子124とが電気的に接続される。
【0021】
図3(a)は、圧電振動片130の平面図である。圧電振動片130の+Y’軸側の面には励振電極134a及び引出電極135aが形成されており、励振電極134aは振動部131のメサ領域138aに形成されている。引出電極135aは励振電極134aから−X軸方向に伸び、連結部133を介して枠部132の−X軸側の+Z’軸側にまで形成されている。また、引出電極135aは主に、振動部131の−X軸側の+Z’軸側の側面137a、連結部133の+Z’軸側の側面137b、及び枠部132の振動部131に面する内側側面の−X軸側の+Z’軸側の側面137cを介して−Y’軸側の面に引き出されている。
【0022】
図3(b)は、+Y’軸側から見た圧電振動片130の−Y’軸側の面の平面図である。振動部131の−Y’軸側の面のメサ領域138aに形成されている励振電極134bからは、−X軸方向に引出電極135bが伸びており、さらに連結部133を介して枠部132の−Y’軸側の面の+X軸側の−Z’軸側にまで形成されている。また、+Y’軸側の面から側面137a、137b、137cを介して引き出されている引出電極135aが、枠部132の−Y’軸側の面の−X軸側の+Z’軸側の角にまで引き出されている。
【0023】
図3(c)は、図3(a)及び図3(b)のB−B断面図である。振動部131の+Y’軸側の面に形成されている引出電極135aは、側面137aを介して振動部131の−Y’軸側の面に引き出されている。また、枠部132の+Y’軸側に形成されている引出電極135aは、側面137cを介し枠部132の−Y’軸側の面に引き出されている。圧電振動片130では、振動部131の周辺領域138bのY’軸方向の厚さを厚さT1とし、枠部132のY’軸方向の厚さを厚さT2とすると、厚さT1は厚さT2よりも薄く形成されている。また、振動部131の側面137aの+Y’軸側及び−Y’軸側は、振動部131の厚さが振動部131の外周に向かうに従って薄くなるようにテーパー状に形成されている。
【0024】
<圧電振動片130の作製方法>
図4は、圧電ウエハW130の平面図である。圧電振動片130は、圧電材により形成された圧電ウエハW130に複数の圧電振動片130の外形が形成され、さらに励振電極134a、励振電極134b、引出電極135a、及び引出電極135bが形成されることにより作製される。図4に示された圧電ウエハW130には、複数の圧電振動片130がX軸方向及びZ’軸方向に並んで形成されている。互いに隣接する圧電振動片130の間にはスクライブライン171が示されている。圧電振動片130は、圧電ウエハW130に形成された後に圧電ウエハW130がスクライブライン171に沿って切断されることにより、個々の圧電振動片130に分割される。
【0025】
図5及び図6は、圧電ウエハW130に圧電振動片130を形成する過程が示されたフローチャートである。また図5及び図6では、フローチャートの各ステップの右隣りに各ステップを説明するための圧電ウエハW130の部分断面図が示されている。この部分断面図は、図4のC−C断面に相当する断面図である。以下に、図5及び図6のフローチャートに従って圧電ウエハW130に圧電振動片130を形成する過程について説明する。
【0026】
図5のステップS101では、圧電ウエハW130が用意される。図5(a)は、ステップS101で用意された圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS101で用意される圧電ウエハW130は、+Y’軸側の面及び−Y’軸側の面が平坦に形成されている。
【0027】
ステップS102では、圧電ウエハW130の+Y’軸側及び−Y’軸側の両面に金属膜141及びフォトレジスト142が形成される。図5(b)は、金属膜141及びフォトレジスト142が形成された圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS102では、まずステップS101で用意された圧電ウエハW130に金属膜141が形成される。さらに金属膜141の表面にフォトレジスト142が形成される。金属膜141は、圧電ウエハW130に所定の金属をスパッタリングもしくは真空蒸着などを行うことにより形成される。金属膜141は、例えば圧電ウエハW130に下地としてニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)又はニッケル・タングステン(NiW)等の膜を形成し、下地の上面に金(Au)又は銀(Ag)等を成膜することにより形成される。フォトレジスト142は、金属膜141の表面にスピンコートなどの手法で均一に塗布される。
【0028】
ステップS103では、フォトレジスト142の露光及び現像が行われ、金属膜141の除去が行われる。図5(c)は、フォトレジスト142の露光及び現像が行われ、金属膜141の除去が行われた圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS103では、まず、圧電ウエハW130の+Y’軸側及び−Y’軸側にマスク161が配置されてフォトレジスト142が露光され、フォトレジスト142が現像される。さらに、金属膜141がエッチングにより除去される。マスク161を用いて露光されるフォトレジスト142は貫通溝136が形成される領域の+Y’軸側及び−Y’軸側の面であり、この領域のフォトレジスト142及び金属膜141が除去される。
【0029】
ステップS104では、圧電ウエハW130がエッチングされて貫通溝136が形成される。図5(d)は、貫通溝136が形成された圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS104では、圧電ウエハW130をエッチングすることにより圧電ウエハW130にY’軸方向に貫通する貫通溝136が形成される。
【0030】
図6のステップS105では、圧電ウエハW130に金属膜141及びフォトレジスト142が形成される。図6(a)は、金属膜141及びフォトレジスト142が形成された圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS105では、ステップS104で残った金属膜141及びフォトレジスト142の全てが除去され、再び圧電ウエハW130の全体に金属膜141及びフォトレジスト142が形成される。
【0031】
ステップS106では、フォトレジスト142の露光及び現像が行われ、金属膜141の除去が行われる。図6(b)は、フォトレジスト142の露光及び現像が行われ金属膜141が除去された圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS106では、マスク162を介して振動部131の周辺領域138b及び連結部133に形成されているフォトレジスト142が露光され、フォトレジスト142が現像される。さらに、金属膜141がエッチングにより除去される。ステップS106では、振動部131の周辺領域138b及び連結部133が露出される。
【0032】
ステップS107では、圧電ウエハW130がエッチングされる。図6(c)は、エッチングされた圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS107では、エッチングにより圧電ウエハW130の周辺領域138bの厚さが薄くされ、これによりメサ領域138aが形成される。また、周辺領域138bの外周の主面と側面との間の角はY’軸方向及び貫通溝136に面する側面の2つの方向からエッチングされるため、周辺領域138bの側面の+Y’軸側及び−Y’軸側が図3(c)及び図6(c)に示されるようにテーパー状に形成される。
【0033】
ステップS108では、圧電ウエハW130に励振電極及び引出電極が形成される。図6(d)は、励振電極及び引出電極が形成された圧電ウエハW130の部分断面図である。ステップS108では、図6(c)の圧電ウエハW130から全てのフォトレジスト142及び金属膜141が取り除かれた後に、圧電ウエハW130に励振電極134a、励振電極134b、引出電極135a、及び引出電極135bが形成される。引出電極135aは、側面137aを介して+Y’軸側の面と−Y’軸側の面とにまたがって形成される。また、引出電極135aは、連結部133の側面137b及び枠部132の側面137cにも形成される。ステップS108の後には、各圧電振動片130は、スクライブライン171で切断されて個片化される。
【0034】
圧電振動片は、引出電極が+Y’軸側の主面から−Y’軸側の主面に引き出される場合に、主面と側面との間の角等において引出電極が導通不良又は電気抵抗が増大し、圧電振動片のクリスタルインピーダンス(CI)が高くなる場合がある。引出電極の導通不良又は電気抵抗の増大は、主面と側面との間の角の角度が直角に近い場合にはこの角への引出電極の形成が困難であり、フォトレジストの塗布及び露光条件等をより厳しく制御しなければならないこと、及び、スパッタリング等による側面への電極形成では電極の材料が側面に回り込みにくく、側面における膜厚が薄くなること、に起因する。これに対して圧電振動片130は、振動部131の主面と側面との間の角の角度が90度よりも大きくなるように振動部131の側面がテーパー状に形成されている。これにより、フォトレジストの塗布及び露光条件等の制御が容易になり、角への引出電極の形成が容易になる。また、テーパー状に形成される側面には電極の材料が回り込み易くなり、側面の膜厚が薄くなることが改善される。そのため、引出電極135aに導通不良又は電気抵抗の増大等が起こりにくくなり、クリスタルインピーダンス(CI)の上昇が抑えられると共にクリスタルインピーダンス(CI)を低く保つことができる。
【0035】
また、圧電振動片130では+Y’軸側の面から−Y’軸側の面に引き出される引出電極135aが貫通溝136の側面を介して引き出されている。引出電極135aが貫通溝136の側面に形成される際には、引出電極135aが引き出される領域の周辺にも電極を構成する金属膜が付着する。すなわち、枠部132の振動部131に面する内側側面のみに引出電極を形成しようとしても、貫通溝136を介して引出電極の周辺の振動部131にも金属膜が形成されてしまう。このようにして振動部131に形成される金属膜は、振動部131の振動に悪影響を与える。圧電振動片130では、もともと振動に悪影響を与える連結部133及びその周辺に引出電極135aが形成されることにより、振動部131の一部に引出電極135aが形成されることの悪影響が顕在化されにくく好ましい。
【0036】
さらに圧電振動片130では、連結部133の側面137b及び枠部132の側面137cにも引出電極135aが形成されることによって+Y’軸側から−Y’軸側の面に引き出される引出電極135aの幅が広くなり、引出電極135aの電気抵抗が低く抑えられるため好ましい。また、圧電振動片130では連結部133の側面137bもテーパー状に形成されており、引出電極135aに導通不良又は電気抵抗の増大等が起こりにくくなり好ましい。
【0037】
(第2実施形態)
圧電振動片は、圧電振動片130とは異なる外形形状に形成されていても良い。以下に圧電振動片の変形例として圧電振動片230及び圧電振動片330について説明する。また、以下の説明では、第1実施形態と同様の部分に関しては、第1実施形態と同様の番号を付してその説明を省略する。
【0038】
<圧電振動片230の構成>
図7(a)は、圧電振動片230の平面図である。圧電振動片230は、振動部231と、枠部132と、連結部233と、により形成されている。振動部231は、平面形状がX軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びる矩形形状に形成されている。連結部233は、振動部231の−X軸側の辺の中央と、枠部132の−X軸側の内側側面とを連結している。また、振動部231にはメサ領域138aが形成され、連結部233に連結される部分には連結領域238cが形成され、それ以外の領域には周辺領域238bが形成されている。連結領域238cは振動部231の−X軸側の辺の中央に形成されており、連結領域238cとメサ領域138aとは連結されていない。また、圧電振動片230には、励振電極134a、励振電極134b、引出電極135a、及び引出電極135bが形成されている。引出電極135aは主に、振動部231の−X軸側の+Z’軸側の側面137a、連結部233の−Z’軸側の側面237b、及び枠部132の振動部131に面する内側側面の−X軸側の+Z’軸側の側面137cを介して−Y’軸側の面に引き出されている。圧電振動片230の−Y’軸側の面の平面形状は、図3(b)と同様である。また、図7(a)のB−B断面は、図3(c)と同様である。
【0039】
図7(b)は、図7(a)のD−D断面図である。圧電振動片230では、枠部132、連結部233、連結領域238c、及びメサ領域138aの厚さが厚さT2に形成されている。また、周辺領域238bの厚さは厚さT2よりも薄い厚さT1に形成されている。圧電振動片230では、連結部233が枠部132と同じ厚さに形成されていること、及び連結領域238cと連結部233とが同じ厚さに形成されていることにより、連結部233の機械的強度が強く形成され、圧電振動片230が落下等の衝撃に対して強くなっている。
【0040】
<圧電振動片330の構成>
図8(a)は、圧電振動片330の平面図である。圧電振動片330は、振動部131と、枠部132と、連結部333と、により構成されている。連結部333は、振動部131の−X軸側の辺の+Z’軸側及び−Z’軸側にそれぞれ連結されており、−X軸方向に伸びて枠部132に連結されている。連結部333の厚さは周辺領域138bと同じ厚さに形成されている。また、+Y’軸側の面のメサ領域138aには励振電極134aが形成されており、励振電極134aからは−X軸方向に引出電極335aが引き出されている。引出電極335aは、+Z’軸側の連結部333を通って枠部132の−X軸側の+Z’軸側にまで形成されている。また、引出電極335aは、側面137a、+Z’軸側の連結部333の+Z’軸側の側面337b、及び側面137cを介して+Y’軸側の面から−Y’軸側の面にまで引き出されている。また、図8(a)のB−B断面は、図3(c)と同様である。
【0041】
図8(b)は、+Y’軸側から見た圧電振動片330の−Y’軸側の面の平面図である。振動部131の−Y’軸側の面には励振電極134bが形成されており、励振電極134bからは、−X軸方向に引出電極335bが伸びており、この引出電極135bは−Z’軸側の連結部333を介して枠部132の−Y’軸側の面の+X軸側の−Z’軸側にまで形成されている。また、+Y’軸側の面から側面137a、337b、137cを介して引出電極335aが−Y’軸側の面に引き出されており、引出電極335aは枠部132の−Y’軸側の面の−X軸側の+Z’軸側の角にまで引き出されている。
【0042】
圧電振動片330は、2本の連結部333が形成されていることにより落下等の衝撃に対して強くなっている。また、圧電振動片130と同様に、引出電極335aがテーパー状に形成されている振動部131の側面137aを介して−Y’軸側に引き出されていることにより、クリスタルインピーダンス(CI)を低く保つことができる。
【0043】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0044】
例えば、上記の実施形態では圧電振動片にATカットの水晶振動片である場合を示したが、同じように厚みすべりモードで振動するBTカットの水晶振動片などであっても同様に適用できる。さらに圧電振動片は水晶材のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材に基本的に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
100 … 圧電デバイス
110 … リッド板
111 … 凹部
112 … 接合面
120 … ベース板
121 … 凹部
122 … 接合面
123 … 接続電極
124 … 実装端子
125 … キャスタレーション電極
126 … キャスタレーション
130、230、330 … 圧電振動片
131、231 … 振動部
132 … 枠部
133、233、333 … 連結部
134a、134b … 励振電極
135a、135b、335a、335b … 引出電極
136、336 … 貫通溝
137a … 振動部の側面
137b、237b、337b … 連結部の側面
137c … 枠部の側面
138a … メサ領域
138b、238b … 周辺領域
140 … 接合材
141 … 金属膜
142 … フォトレジスト
150 … キャビティ
161、162 … マスク
171 … スクライブライン
238c … 連結領域
W130 … 圧電ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8