(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017191
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】シャッターケースのまぐさ構造、及び、当該構造を備えたシャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
E06B9/17 W
E06B9/17 M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-136515(P2012-136515)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-1537(P2014-1537A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 國夫
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−144153(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/17
E06B 9/06
E06B 5/16
E05F 15/00−15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッターケースの下端は、建物躯体に近い側である後側に位置するまぐさと、建物躯体から遠い側である前側に位置するケース下面板と、前記まぐさの前端と前記ケース下面板の後端との間に形成されたシャッターカーテン移動路と、からなり、前記まぐさの前端は、前記シャッターカーテン移動路に対向して開口幅方向に延びており、
前記まぐさの前端は、当該前端の中央部位が、当該前端の両端部位よりも後側に退避するように平面視凹状に形成されている、シャッターケースのまぐさ構造。
【請求項2】
前記まぐさの底面の前端には立ち上がり片が形成されており、前記前端の中央部位の立ち上がり片の高さは、前記前端の両端部位の立ち上がり片の高さよりも高い、請求項1に記載のシャッターケースのまぐさ構造。
【請求項3】
開口部上方に設けたシャッターケースと、
シャッターケース内に設けられ、開口幅方向に延びる巻取シャフトと、
シャッターケース内において、開口幅方向の一側に寄って配置された開閉機と、
上端が巻取シャフトに連結されており、幅方向両端部が開口部左右のガイドレールに案内されながら昇降移動するシャッターカーテンと、
を備え、
前記シャッターケースの下端は、建物躯体に近い側である後側に位置するまぐさと、建物躯体から遠い側である前側に位置するケース下面板と、前記まぐさの前端と前記ケース下面板の後端との間に形成されたシャッターカーテン移動路と、からなり、前記まぐさの前端は、前記シャッターカーテン移動路に対向して開口幅方向に延びており、
前記まぐさの前端は、当該前端の中央部位が、当該前端の両端部位よりも後側に退避するように平面視凹状に形成されている、
シャッター装置。
【請求項4】
前記まぐさの底面は、中央の幅狭部と、両端の幅広部と、からなり、前記幅狭部の前端とシャッター芯との距離D2は、前記幅広部の前端とシャッター芯との距離D1よりも大きく、
前記開閉機と同じ側の幅広部の開口幅方向の長さL1は、前記開閉機の長さよりも大きい、
請求項3に記載のシャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッターケースのまぐさ構造、及び、当該構造を備えたシャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャッターケースの下端には、ケース下面と内まぐさとの間に開口幅方向に延びる溝部が形成されており、かかる溝部を通ってシャッターカーテンが昇降移動するようになっている。溝部を通って昇降移動するシャッターカーテンと内まぐさの前端との間には、シャッターカーテンの昇降動作時にシャッターカーテンが内まぐさに接触することがないようなクリアランス(隙間)が設けてある(特許文献1の
図1、並びに、本願の
図8)。
【0003】
シャッターに防火性能を付与した防火シャッターを開口部に設けた場合に、シャッターカーテンと内まぐさの前端との隙間が大きいと、当該防火シャッターが屋外で発生した火災を遮炎する時に、シャッターケース内を回って、内まぐさとシャッターカーテンとの隙間から屋内に火が出る可能性がある。また、シャッターケース内で可燃物(開閉機の要素等)が燃焼した際に、シャッターケース内を回って内まぐさ6´とシャッターカーテンの隙間から屋内に火が出る可能性がある(
図8参照)。また、シャッターケース内の可燃物(ケース内面に貼着したシート状の制振部材等)が、内まぐさとシャッターカーテンの隙間から室内に落下する可能性がある。
【特許文献1】特開2003−193769
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シャッターケースのまぐさの構成に特徴を持たすことで、防火性能が向上されたシャッターケース及びシャッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するべく本発明が採用した技術手段は、
シャッターケースの下端に位置するまぐさの前端は、シャッターカーテン移動路に対向して開口幅方向に延びており、
前記まぐさの前端は、当該前端の中央部位が、当該前端の両端部位よりも後側に退避するように平面視凹状に形成されている、シャッターケースのまぐさ構造、である。
1つの態様では、前記まぐさの底面は、中央の幅狭部と、両端の幅広部と、からなり、当該底面の前端は、前記幅狭部の前端と、前記幅広部の前端と、から構成されている。
後述する実施形態では、前記凹状の前端は、前記幅狭部の前端と前記幅広部の前端とから段状となっているが、凹状の前端は、平面視弧状ないし弓状の連続状の端縁であってもよい。
【0006】
1つの態様では、前記まぐさの底面の前端には立ち上がり片が形成されており、前記前端の中央部位の立ち上がり片の高さは、前記前端の両端部位の立ち上がり片の高さよりも高い。
【0007】
本発明が採用した他の技術手段は、
開口部上方に設けたシャッターケースと、
シャッターケース内に設けられ、開口幅方向に延びる巻取シャフトと、
シャッターケース内において、開口幅方向の一側に寄って配置された開閉機と、
上端が巻取シャフトに連結されており、幅方向両端部が開口部左右のガイドレールに案内されながら昇降移動するシャッターカーテンと、
を備え、
シャッターケースの下端に位置するまぐさの前端は、シャッターカーテン移動路に対向して開口幅方向に延びており、
前記まぐさの前端は、当該前端の中央部位が、当該前端の両端部位よりも後側に退避するように平面視凹状に形成されている、
シャッター装置、である。
【0008】
1つの態様では、前記まぐさの底面は、中央の幅狭部と、両端の幅広部と、からなり、前記幅狭部の前端とシャッター芯との距離D2は、前記幅広部の前端とシャッター芯との隙間D1よりも大きく、
前記開閉機と同じ側の幅広部の開口幅方向の長さL1は、前記開閉機の長さよりも大きい。
【0009】
1つの態様では、前記巻取シャフトは、当該巻取シャフトの構成要素を内装する外筒を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、まぐさの前端を、当該前端の中央部位が、当該前端の両端部位よりも後側に退避するように平面視凹状に形成したことによって、シャッターカーテンの昇降動作時にシャッターカーテンとまぐさとの接触を防止するものでありながら、火炎が発生し易い開口幅方向両端部のクリアランスを小さくしたので、当該クリアランスからの屋内側に火が出たり、部品(例えば、熱によりケース内面から剥がれた制振部材)が落下したりすることを可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】内まぐさの(A)平面図、(B)屋外側から見た正面図、(C)側面図、である。
【
図5】内まぐさとシャッターカーテンの関係を示す窓シャッターの平面図であり、(A)シャッターカーテンの設計上の位置、(B)シャッターカーテンが屋内側に膨出した状態、を示している。
【
図8】従来のシャッターケースの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、
図2に示すように、窓シャッター装置は、窓開口部の上方に位置して、外壁Wに持ち出し状に取り付けられたシャッターケース1と、窓開口部の幅方向両側に位置して外壁Wに対して持ち出した位置に設けられた左右のガイドレール2と、外壁Wに取り付けられており、左右のガイドレール2を持ち出し状に支持する支持枠20と、シャッターケース1内に形成された収納部に設けた巻取シャフト3と、上端が巻取シャフト3に連結されており、巻取シャフト3に巻き取られ/繰り出されることで、幅方向両端部がガイドレール2に案内されながら昇降して窓開口部の室外側部位を開閉するシャッターカーテン4と、窓開口部の下方に位置して、外壁Wに持ち出し状に取り付けられた下枠(水切板)5と、を備えている。なお、窓シャッターは、本発明が適用される好適な実施形態の一つであって、本発明は窓シャッターに限定されるものではない。
【0013】
シャッターケース1は、巻取シャフト3の上側の空間を覆うケース上面板10と、巻取シャフト3の前側の空間を覆うケース前面板11と、ケース前面板11の下端から後方に延びるケース下面板12と、シャッターケース1の後側の下面を形成する内まぐさ6と、を備えている。ケース下面板12の後端には開口幅方向に延びる長尺部材120が設けてあり、長尺部材120の立ち上がり片と内まぐさ6の前端の立ち上がり片との間には、開口幅方向に延びる溝部Gが形成されている。ガイドレール2の上端は当該溝部Gの開口幅方向両端部に位置しており、当該溝部Gはシャッターカーテン4の移動路となっている。図示の態様では、シャッターケース1内の巻取シャフト3の後側の周面がかかる溝部Gの上方に位置しており、シャッターカーテン4は、巻取シャフト3の後側の周面から巻き取られ、繰り出される。
【0014】
巻取シャフト3は開口幅方向に延びており、長さ方向の両端部は、建物躯体Wから持ち出し状に延びる左右のブラケット7の面部にそれぞれ支持されている(
図5では、巻取シャフト3の両端部の支持部は省略されている。)。
図6に示すように、巻取シャフト3は、内部シャフト30と、内部シャフト30に外装されたホイール31、中間ホイール32、スプリング33と、内部シャフト30及び内部シャフト30に外装されたホイール31、中間ホイール32、スプリング33を内装する外筒34と、を備えている。
【0015】
シャッターケース1内において、ケース下面板12の上方には、開口幅方向の一側に寄った部位に開閉機Mが配置されている。開閉機Mは、巻取シャフト3の長さ方向の一端側部位と離間対向しており、開閉機Mの出力を巻取シャフト3に伝動することで、巻取シャフト3を回転駆動するようになっている。
【0016】
シャッターケース1のケース上面板10の内面には、雨滴等による不快音の発生を抑制するために制振部材(図示せず)を設けてもよい。制振部材は、例えば、樹脂製ゴムとアルミ板材とを貼り合わせたシート体であり、高温の影響を受け易い樹脂製要素を含んでいる。制振部材は、例えば、方形状のシートからなり、シャッターケース1の幅方向に間隔を存して複数枚貼り付けられる。シャッターケース1が火災時の高温に晒されると、シート状の制振部材が軟化してケース上面板10の下面から剥がれてシャッターケース1の下部へ落下するおそれがある。シャッターケースの下部に落下した制振部材が発火した時には、シャッターケースの下部の隙間からケース外に火炎が出たり、当該隙間から室内に落下したりするおそれがある。
【0017】
本明細書において、
図2に示すように、シャッターカーテン4が開口幅方向に平面視直線状に納まっている状態(設計上のスラット位置)のスラット中心線をシャッター芯Sと言う。換言すると、シャッター芯Sは、左右のガイドレール2の溝部の屋内外方向の中心を通る垂直面である(
図7参照)。
【0018】
図3、
図4に示すように、内まぐさ6は、開口幅方向に延びる水平状の底面60を備えており、底面60がシャッターケース1の後方の下面を形成している。内まぐさ6の底面60の前端は、シャッターカーテン移動路に対向して開口幅方向(溝部Gの長さ方向)に延びている。内まぐさ6の底面60の前端は、当該前端の中央部位が、当該前端の両端部位よりも後側に退避するように平面視凹状に形成されており、前記前端の中央部位は、前記前端の両端部位よりもシャッター芯Sから離間している。
【0019】
具体的には、
図2〜
図4に示すように、前端が凹状に形成された底面60は、開口幅方向両端部位の幅広部61と、中央部位の幅狭部62と、からなり、幅狭部62の前端620は、左右の幅広部61の前端610に対して後方側(外壁側)へ退避している。
図7に示すように、幅狭部62の前端620とシャッター芯Sとの距離D2は、幅広部61の前端610とシャッター芯Sとの距離D1よりも大きい。したがって、
図2に示すように、シャッターカーテン4が開口幅方向に平面視直線状に納まっている状態(設計上のスラット位置)において、幅狭部62の前端620とシャッターカーテン4とのクリアランスC2は、幅広部61の前端610とシャッターカーテン4とのクリアランスC1よりも大きい。
【0020】
幅狭部62の前端620とシャッター芯Sとの距離D2(幅狭部62の前端620とシャッターカーテン4とのクリアランスC2)は、シャッターカーテン4が室内側へ膨出した状態であっても、膨出したシャッターカーテン2の室内側面部が幅狭部62の前端620に接触することがないように設定される(
図5(B)参照)。シャッターカーテン4の幅方向両端部はガイドレール2の溝内で拘束されているので、シャッターカーテン4が室内側へ膨出した場合であっても、シャッターカーテン4の幅方向両端部は設計上のスラット位置から大きく移動することはなく、したがって、幅広部61の前端610とシャッター芯Sとの距離D1(幅広部61の前端610とシャッターカーテン4とのクリアランスC1)を可及的に狭くすることができる。従来の内まぐさでは、前端とシャッター芯との距離D´(
図8参照)は開口幅方向に一定であるため、シャッターカーテンが室内側へ膨出した場合を考慮して、距離D´を大きく設定する必要がある。
【0021】
図5に示すように、開閉機M側に位置する一方の幅広部61の長さ寸法L1は、開閉機Mの長さよりも大きく設定されている。開閉機Mの長さ方向一側は、ブラケット7に近接して配置されており、幅広部61の長さ方向一側の位置と略一致しており、したがって、開閉機Mは、シャッターケース1の幅方向において、一方の幅広部61に対応する幅内に納まっている。火災時において、シャッターケース1内にある要素として、開閉機Mが最も着火しやすく(油成分やグリースの存在が一因であると考えられる)、シャッターケース1の幅方向において、開閉機Mが位置する側において火炎が発生するおそれがある。また、シャッターケース1のケース上面板10の幅方向において、開閉機Mの上方に位置する制振部材(可燃物)が火炎の影響で落下したり、着火したりするおそれがある。本実施形態では、内まぐさ6の開閉機Mが位置する側の底面60は、幅広部61となっており、幅広部61の前端610とシャッターカーテン4とのクリアランスC1が狭くなっているので、仮に開閉機Mが着火した場合であっても、従来の内まぐさに比較して、クリアランスC1から室内側に火が出たり、着火した可燃物が落下したりすることを抑えることができる。
【0022】
上述のように、本実施形態の巻取シャフト3の構成要素(内部シャフト30、ホイール31、中間ホイール32、スプリング33)は外筒34に内装されている。火災時の熱に晒された時に、巻取シャフト3の構成要素が着火するおそれがあるが、仮に着火した場合には、外筒34の内周面に案内されて、巻取シャフト3の長さ方向の端部から火が出ることになる。本実施形態では、内まぐさ6の底面60において、巻取シャフト3の長さ方向の両端部に対応する部位は、幅広部61となっており、幅広部61の前端610とシャッターカーテン4とのクリアランスC1が狭くなっているので、仮りに巻取シャフト3の長さ方向の端部から火が出た場合であっても、従来の内まぐさに比較して、クリアランスC1から室内側に火が出たり、着火した可燃物が落下したりすることを抑えることができる。
【0023】
図3、
図4に示すように、内まぐさ6の底面60の前端には立ち上がり片が形成されており、幅狭部62の前端620の立ち上がり片64の高さは、幅広部61の前端610の立ち上がり片63の高さよりも高い。立ち上がり片64の高さ寸法は、内まぐさ6の加熱やシャッターケース1内を回って吹き出ようとする火炎流の影響で、立ち上がり片64が室外側(溝部G側)に倒れるように変形した場合に、幅狭部62の前端620とシャッターカーテン4とのクリアランスC2を少なくとも部分的に塞ぐことができるような寸法となっている。
【0024】
内まぐさ6は、底面60の後端の後側立ち上がり片65と、後側立ち上がり片65の上端から後方に向かって水平状に延びる水平片66(底面60よりも長さ寸法が小さい)と、水平片66の先端から立ち上がる装着片67と、底面60の長さ方向の両端の垂下片68と、を備えている。内まぐさ6は、底面60の長さ方向の両端の垂下片68が支持枠20の上端に支持されると共に、装着片67が螺子によって躯体(外壁W)に固定されている。
【0025】
本実施形態では、内まぐさ6の底面60を、中央の幅狭部62と、両端の幅広部61と、から形成し、底面60の前端を、幅狭部62の前端620と、幅広部61の前端610と、から平面視凹状に形成したことによって、
図5(B)に示すように、シャッターカーテン4の昇降動作時にシャッターカーテン4が室内側に膨出した場合であっても、内まぐさ6の前端610、620との接触が防止される。シャッターカーテン4の昇降動作時にシャッターカーテン4の幅方向両端部は左右のガイドレール2の溝内で拘束されているので、シャッターカーテン4の幅方向両端部位は
図5(A)に示す態様から大きく移動することがなく、火炎が発生し易い開口幅方向両端部のクリアランスC1を小さく設定することができ、クリアランスC1から室内側に火が出ることや部品(例えば、熱によりケース内面から剥がれた制振部材)の落下を可及的に防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 シャッターケース
3 巻取シャフト
6 内まぐさ
60 底面
61 幅広部
610 前端
62 幅狭部
620 前端
63 立ち上がり片
64 立ち上がり片