【実施例1】
【0011】
図1は、本実施形態に係る空気調和機の室内機、室外機、及びリモコンの正面図である。
図1に示すように、空気調和機Aは、室内機100と、室外機200と、リモコンReと、を備えている。室内機100と室外機200とは冷媒配管(図示せず)で接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機100が設置されている室内を空調する。また、室内機100と室外機200とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。
【0012】
リモコンReはユーザによって操作され、室内機100のリモコン受信部Qに対して赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求などの指令である。空気調和機Aは、これらの信号に基づいて、冷房モード、暖房モード、除湿モードなどの空調運転を行う。
【0013】
また、室内機100の前面パネル106の左右方向中央の下部には、撮像手段110が設置されている。なお、撮像手段110の詳細については後記する。
【0014】
図2は、室内機の側断面図である。筐体ベース101は、熱交換器102、送風ファン103、フィルタ108などの内部構造体を収容している。
【0015】
熱交換器102は複数本の伝熱管102aを有し、送風ファン103により室内機100内に取り込まれた空気を、伝熱管102aを通流する冷媒と熱交換させ、前記空気を加熱又は冷却するように構成されている。なお、伝熱管102aは、前記した冷媒配管(図示せず)に連通し、周知の冷媒サイクル(図示せず)の一部を構成している。
【0016】
左右風向板104は、室内機マイコン(図示せず)からの指示に従い、下部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして左右風向板用モータ(図示せず)により回動される。
【0017】
上下風向板105は、室内機マイコン(図示せず)からの指示に従い、両端部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして上下風向板用モータ(図示せず)により回動される。
【0018】
前面パネル106は、室内機100の前面を覆うように設置されており、下端を軸として前面パネル用モータ(図示せず)により回動可能な構成となっている。ちなみに、前面パネル106を、下端に固定されるものとして構成してもよい。
【0019】
図2に示す送風ファン103が回転することによって、空気吸込み口107及びフィルタ108を介して室内空気を取り込み、熱交換器102で熱交換された空気が吹出し風路109aに導かれる。さらに、吹出し風路109aに導かれた空気は、左右風向板104及び上下風向板105によって風向きを調整され、空気吹出し口109bから外部に送り出されて室内を空調する。
【0020】
撮像手段110は室内機100が設置される室内を撮像する。撮像手段110は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラであり、前面パネル106の左右方向中央の下部に設置されている(
図1参照)。また、撮像手段110は、レンズの光軸が水平線に対して所定角度だけ下方を向くように設置され、室内機100が設置されている室内を適切に撮像できるようになっている。
【0021】
駆動手段114は撮像手段110を左右方向に駆動し、撮像手段110で撮像される室内のエリアを変える。例えば、撮像手段110は駆動手段114であるステッピングモータの軸と接続され、モータの運転により所定の角度の範囲内で往復する。
【0022】
この場合、モータは、所定の角度の範囲内を複数に分割したエリア毎に撮像のため停止し、撮像後は次のエリアへ撮像手段110を向けるために運転を再開する。なお、撮像手段110の駆動の速さに比較して撮像に要する時間が十分に短い場合、ステッピングモータは連続して運転してもよい。
【0023】
本実施例では、駆動手段114は、室内の左エリア、中央エリア及び右エリアを撮像できる位置に撮像手段110を向ける。これにより、視野角の狭く安価な撮像手段110を使用しても、室内を広範囲に撮像することが可能となる。
【0024】
また、エリア毎の照度や輝度に合わせてノイズの除去や顔検出、人体検出などの画像の処理を変更することで、より高い精度で顔検出や人体検出、それらに基づく位置と活動量の推定を行うことが可能となる。
【0025】
図3は、撮像手段による撮像エリアを示した室内図である。
図4は、制御手段が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0026】
撮像手段110は、空調室内を経時的に撮像して、撮像した画像を画像情報としてA/D変換器(図示せず)に出力する。
【0027】
A/D変換器(図示せず)は、撮像手段110からアナログ信号として入力される画像情報をデジタル信号に変換し、人体判定手段111に出力する電子回路である。なお、A/D変換器(図示せず)を撮像手段110に内蔵することとしてもよい。
【0028】
制御手段(図示せず)は、人体情報作成手段111と、人体情報統合手段112と、空調制御手段113を備えている。
【0029】
まず、駆動手段114は室内の中央エリアを撮像できる位置に撮像手段110を向け、撮像手段110は中央エリアを撮像する。人体情報作成手段111は中央エリアの画像情報に基づいて人体の位置を含む人体情報を作成する。中央エリアの人体情報には、在室者Bが含まれる。
【0030】
次に、駆動手段114は右エリアを撮像できる位置に撮像手段110を向け、撮像手段110は室内の左エリアを撮像する。人体情報作成手段111は右エリアの画像情報に基づいて人体の位置を含む人体情報を作成する。中央エリアの人体情報には、在室者A及び在室者Bが含まれる。
【0031】
人体情報統合手段112は、中央エリア及び右エリアの人体情報と、記憶手段(図示せず)で記憶している一つ前のステップで作成された左エリアの人体情報を統合して、人体統合情報を作成する。
【0032】
図3に示すように、中央エリアと右エリアとは一部が重複しているので、在室者Bは両方のエリアで重複して撮像される。従って、中央エリアにおける人体情報には人体が1人、右エリアにおける人体情報に人体が2人いると判断される。なお、中央エリアと左エリアも一部が重複している。
【0033】
ここで、右エリアにおける人体情報に含まれる在室者Bと、中央エリアにおける人体情報に含まれる在室者Bとは、左右方向Xと遠近方向Y軸上において、同一の場所(設定範囲内を含む)に位置する。
【0034】
そこで、人体情報統合手段112は、中央エリアにおける人体情報に含まれる在室者Bの位置と、右エリアにおける人体情報に含まれる在室者Bの位置と、が同一の場所(設定範囲内を含む)に位置する場合、それぞれで検出された在室者Bを統合する。従って、人体情報統合手段112で検出される人体は、在室者Aと在室者Bの二人である。このように、本発明によれば、室内にいる人体の数を正確に検出することができる。
【0035】
空調制御手段113は人体をP回同一エリアで検出した場合に、人体統合情報に基づいて空調制御を行う。空調制御手段113は、検出された人体の位置に基づいて、上下風向板105に設置される上下風向板用モータ(図示せず)、左右風向板104に設置される左右風向板用モータ(図示せず)の設定位置を変更する。ここでのエリアは、室内を3つのエリアに分割する場合よりも狭いエリアを設定してもよい。
【0036】
また、空調制御手段113は、人体統合情報における人体の数に応じて、電源のON/OFF、設定温度、室外機が備える圧縮機モータの回転速度、及び圧縮機モータに供給される最大電流量のうち少なくとも一つの制御情報を変更し、変更した当該制御情報を目標値として空調制御を変更してもよい。
【0037】
本実施例では、人体情報統合手段112における人体の位置が2回連続して同じである場合に、当該位置に人体がいると確定し、空調制御手段113による制御に人体情報が反映される。
【0038】
人体の有無の判断に、所定の時間人体が同じ場所(設定範囲内を含む)にいることを要件とすることで、一時的な退室や入室による制御の頻繁な変更とそれに伴う室内温熱環境の悪化を防ぐことができる。
【0039】
その後、駆動手段114は中央エリアを撮像できる位置に撮像手段110を向け、撮像手段110は室内の中央エリアを撮像する。そして、駆動手段114は左エリアを撮像できる位置に撮像手段110を向け、撮像手段110は室内の左エリアを撮像する。
【0040】
このように、本実施例では、中央エリア及び左エリアの撮像と、中央エリア及び右エリアの撮像とを交互に実行する。左回り及び右回りとも撮像手段110は室内を撮像するので、全体としての検出速度を向上させることができる。
【0041】
図5は、撮像手段による撮像エリアを示した室内図である。
図5における室内には、右エリアにいる在室者A、中央エリアにいる在室者B、左エリアにいる在室者Cがいる。
【0042】
このとき、在室者Aは、右エリアに留まるか、中央エリア又は左エリアに移動する可能性がある。在室者Bは、中央エリアに留まるか、左エリア又は右エリアに移動する可能性がある。在室者Cは、左エリアに留まる、中央エリア又は右エリアに移動する可能性がある。
【0043】
ここで、右エリアにいる在室者Aが左エリアに移動する場合は中央エリアを横切る。また、左エリアにいる在室者Cが右エリアに移動する場合も中央エリアを横切る。つまり、中央エリアは、他のエリアに移動する場合において、中央エリアは横切るだけであるのに、中央エリアにいると誤検出される可能性がある。
【0044】
一方、中央にいる在室者Bが左エリア及び右エリアに移動する場合は他のエリアを横切ることはない。
【0045】
そこで、本実施例は、中央エリア及び左エリアの撮像と、中央エリア及び右エリアの撮像とを交互に実行するので、左エリア及び右エリアに比べて、中央エリアをより多く撮像する。そのため、より多くの中央エリアにおける画像情報が人体情報統合手段112での処理に反映される。従って、本発明によれば、誤検出する可能性が高い中央エリアを集中的に撮像し、誤検出の低減と処理速度の向上との両立を図ることができる。
【0046】
なお、あらかじめ風を当てる運転が選択されている場合は、当該位置に風が届くように上下風向板105、左右風向板104を向ける。一方、あらかじめ風を避ける運転が選択されている場合は、当該位置に風が届かないように上下風向板105、左右風向板104を制御する。
【0047】
また、人体を二人以上検出した場合、風当て運転では、左右風向板104を人のいる最も右側のエリアと最も左側のエリアの間をスイングし、上下風向板105を人のいる最も遠いエリアと最も近いエリアの間をスイングする。風避け運転では、左右方向も前後方向も、人のいるエリアの隣のエリアで、両側のうち広い方向に吹く。不在の場合、風向を変更しない。
【0048】
記憶手段(図示せず)は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)など含んで構成され、制御手段130による処理を記憶する。そして、ROMに記憶されたプログラムが制御手段130のCPU(Central Processing Unit)によって読み出されてRAMに展開され、実行される。
【0049】
人体の左右方向の位置は、撮像手段110の角度と画像情報における人体の顔の中心位置に基づいて計算する。
【0050】
また、人体の遠近方向の位置は、式1によって計算する。符号Dは人体からレンズgまでの距離であり、符号Pは撮像面pの顔の像の横幅であり、符号Fはレンズgから撮像面pまでの距離である。符号Hは人体の顔(又は頭部)の横幅であり、所定値として予め記憶手段140に格納されている。
【0051】
【数1】
【0052】
このように人体判定手段111は、人体の左右方向の位置、及び、遠近方向の位置を判定することで、人体の位置を正確に算出できる。
【0053】
そして、人体の左右方向の位置、及び、遠近方向の位置をそれぞれ3分割した場合において、どの位置にエリアに人体がいるか判定して、駆動制御手段113は、上下風向板105、左右風向板104の設定位置を変える。
【0054】
なお、撮像手段110によって間取りを検出し、風除け時に壁に向けて吹き出さないようにして、壁が冷えて壁表面や壁内部に結露するのを防止してもよい。また、据付時の据付位置設定から、風除け時に壁に向けて吹き出さないようにしてもよい。
【0055】
また、CO
2センサの出力から、高濃度時には人数も多いと判断して、人体判定手段111の人数判定を補正してもよい。
【0056】
また、所定の期間(例えば1時間)同一の位置に存在する場合、その人体がポスターや人形など人体と検出される特徴を併せ持つ人体以外の要素と判断し、人体として扱わない。なお、ポスターや人形など人体と検出される特徴を併せ持つ人体以外の要素を記憶し、検出結果から除いてもよい。
【0057】
このような処理によって、人体と検出される特徴を持つ要素を人体と判断する誤動作を防ぐことができる。
【0058】
また、撮像手段110が室内機100の前面パネル106の左右方向中央の下部に一台設置する場合について説明したが、これに限らない。例えば、撮像手段110を前面パネル106の右側又は左側に設置してもよい。
【0059】
また、前面パネル106に複数の撮像手段110を設置することとしてもよい。
【0060】
なお、人体情報表示手段(図示せず)に人体数を表示することで、制御内容を人体が知ることができ、どのような制御をしているのか示さない場合に比べて制御に対する不安を払しょくすることできる。人体の位置を表示する場合についても同じことがいえる。
【0061】
また、人体情報表示手段に人体数を表示することで、実際の人体数と人体情報表示手段に表示される人体数が違う場合、人体が人体情報統合手段112の特性(どのような人体を検出できて、どのような人体を検出できないのか)を知ることができ、どのような制御をしているのか示さない場合に比べて制御に対する不安を払しょくすることできる。人体の位置を表示する場合についても同じことがいえる。
【0062】
図6は、撮像手段110による撮像エリアを示した室内図である。人体の場所をX軸及びY軸上の位置に応じて特定する場合に代えて、室内を複数のエリアに分割し、どのエリアに人体がいるかを判定することで、人体の場所を特定してもよい。
【0063】
図6は、右エリアを4つに分け、中央エリアを4つに分け、左エリアを4つに分けている。右エリアのエリア右1及び中央エリアのエリア中央4で計測される人体は同一人物であると判定する。同様に、中央エリアのエリア中1と右エリアのエリア左1で計測される人体も同様に同一人物であると判定する。
【0064】
在室者Aは、右エリアのエリア右1及び中央エリアのエリア中央4で計測されるので、同一人物であると判断される。このように、本発明によれば、室内にいる人体の数を正確に検出することができる。
【0065】
なお、左右方向にエリアを分割した場合について説明したが、遠近方向にエリアを分割して、人体がどのエリアにいるか判定することで、人体の遠近方向における位置を計測してもよい。
【0066】
また、室内を複数のエリアに分割し、それぞれのエリアの一部が重複している場合について説明したが、それぞれのエリアが重複しないように室内を分割してもよい。かかる場合であっても、人体が両方のエリアに跨る位置にいるときや、人体が少し動くときに、両方のエリアで重複して検知される可能性がある。本発明によれば、人体を重複して検知することを防ぐことができ、人体の数の検出精度を向上させることができる。
【0067】
以上説明した通り、本発明の空気調和機は、室内機100が設置される室内を撮像する撮像手段110と、撮像手段110を左右方向に駆動し、撮像手段110で撮像される室内のエリアを変える駆動手段114と、撮像手段110で撮像される複数のエリアにおける画像情報に基づいて人体を検出し、検出結果に応じて空調制御を行う制御手段と、を備え、制御手段は、画像情報に基づいて人体の位置を含む人体情報を作成する人体情報作成手段111と、1つのエリアにおける人体情報と、他のエリアにおける人体情報と、を統合して人体統合情報を作成する人体情報統合手段112と、人体統合情報に基づいて空調制御を行う空調制御手段113と、を有し、人体情報統合手段112は、1つのエリアにおける人体情報に含まれる人体の位置と、他のエリアにおける人体情報に含まれる人体の位置と、が第1の設定範囲内にある人体を統合する。
【0068】
また、本発明の空気調和機は、制御手段は、人体統合情報に含まれる人体の位置が設定回数連続して第2の設定範囲内にある場合に、人体統合情報に基づいて空調制御を行う。
【0069】
また、本発明の空気調和機は、駆動手段114は、室内の左のエリア、中央のエリア及び右のエリアを撮像できる位置に撮像手段110を向け、撮像手段110は、中央のエリア及び右のエリアの順に室内を撮像する第1のセットと、中央のエリア及び左のエリアの順に室内を撮像する第2のセットと、を交互に実行し、人体情報統合手段112は、第1のセットにおける右のエリアの人体情報と、第1のセットよりも後に実行される第2のセットにおける中央のエリア及び左のエリアの人体情報と、を統合して人体統合情報を作成し、第2のセットにおける左のエリアの人体情報と、第2のセットよりも後に実行される第1のセットにおける中央のエリア及び右のエリアの人体情報と、を統合して人体統合情報を作成する。