特許第6017218号(P6017218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017218
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】包丁差し
(51)【国際特許分類】
   A47J 47/16 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   A47J47/16 P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-170524(P2012-170524)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28077(P2014-28077A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592245890
【氏名又は名称】井上金物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 敬志
(72)【発明者】
【氏名】大澤 周子
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−067567(JP,A)
【文献】 特開平10−229947(JP,A)
【文献】 特開2004−194765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 39/00 − 47/20
A47B 77/00 − 88/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包丁の刃を下向きかつ斜めに差した状態で収納する包丁差しにおいて、
刃を差し込むスリットと、
柄に当接して包丁を斜めの姿勢に支持する傾斜面と、
斜めになった柄の下方にあり、刃面に沿って回転することによって刃の顎に対応する位置と刃から外れた位置との間を移動可能なロック部材と
前記ロック部材の移動軌跡の下面に倣う湾曲面と、
前記傾斜面と前記湾曲面の間に配置され包丁の柄の落下方向の位置を規定する段差と、を備え
前記スリットは前記傾斜面と前記湾曲面にわたって配置されていて、包丁の刃の顎は前記湾曲面に配置されたスリットを通過することを特徴とする包丁差し。
【請求項2】
当該包丁差しはさらに
前記湾曲面の上面に形成され、前記ロック部材が刃の顎に対応する位置にあるときにこれを係止する係止突起を備えていることを特徴とする請求項1に記載包丁差し。
【請求項3】
当該包丁差しは、引出の前板の裏側に取り付けられていて、包丁を前記前板と平行な面内で傾斜させて支持していることを特徴とする請求項1に記載の包丁差し。
【請求項4】
当該包丁差しは、引出の前板の裏側に取り付けられる収納容器の上面の開口に取り付けられるユニットであることを特徴とする請求項3に記載の包丁差し。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包丁を斜めに差した状態で収納する包丁差しに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キッチンの引出の内部に設けられる包丁差しについて、様々な構成が提案および提供されている。包丁差しの最も基本的な構造は、包丁の刃を差し込むスリットを有し、柄を突出させた状態でこれを支持する収納容器である。さらに、子どもが包丁を取り出してしまわないようにするために、ロック機構を備えている場合がある。
【0003】
特許文献1に記載された包丁差しは、包丁の刃の先端を垂直下向きに差した状態で収納する。包丁は刃面が前板と平行に支持される。特許文献1に記載のロック部材は、複数の差込口(スリット)にそれぞれ突出する櫛歯状の形状をしていて、差込口を部分的に覆って包丁が差込口から抜けるのを防止するロック位置と、差込口から退避して包丁が差込口から抜けるのを許容するロック解除位置との間で移動可能となっている。ロック位置とロック解除位置とを結ぶ線分は差込口の長手方向に対して斜めになっている。
【0004】
特許文献2に記載された包丁差しは、包丁の刃の先端を垂直下向きに差した状態で収納する。包丁は刃面が前板と垂直に支持される(刃先が引出の内部に向いている)。特許文献2に記載の包丁引抜防止金具は、包丁差しの角部を覆う蓋のような形状をしていて、全ての溝(スリット)の一部を一度に覆う構成となっている。
【0005】
ところで、包丁を斜めに差している方が、包丁差しの正面に立った使用者が引き抜きやすいため、利便性を向上させることができる。また、包丁を斜めに保持する構成の方が、包丁の柄と包丁差しをあわせた全体の高さを低くすることができ、引出の内部に設置する際のレイアウトの自由度が高くなるために好ましい。
【0006】
特許文献3に記載された包丁差しは、包丁の刃を下向きかつ斜めに差した状態で収納する。シンクの前板の裏に包丁差しが備えられていて、包丁は刃面が前板と平行に支持される。包丁の顎部を握柄保持部(ブロック状の部材)の内側に沈み込ませて、包丁の背をロック体で抑え込む構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−005914号公報
【特許文献2】実開昭52−075548号公報
【特許文献3】特開2008−264483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、引出の中に設置する包丁差しにおいては、包丁を斜めに保持する構成が好ましい。しかしながら包丁を斜めに保持する構成においては、ロック機構が問題となる。
【0009】
まず包丁を斜めに保持する包丁差しでは、刃の顎部が一列に並ばない。このため、特許文献1、2に示したようなロック機構を採用することができない。
【0010】
特許文献3に記載の構成では、握柄保持部の内側に沈み込ませて、刃の背を押さえている。したがって、ロックを解除した状態でも刃の顎が握柄保持部の内側に沈み込んだ状態である。このため、柄を十分に持ち上げてから引き抜かないと刃の顎が握柄保持部にあたってしまうため、引き抜きそこねる場合があり、利便性が低下するという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、包丁を斜めに差した状態で収納する包丁差しにおいて、ロック時には確実に引き抜きを防止し、ロック解除時には利便性を高くした包丁差しを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するために、本発明の代表的な構成は、包丁の刃を下向きかつ斜めに差した状態で収納する包丁差しにおいて、刃を差し込むスリットと、柄に当接して包丁を斜めの姿勢に支持する傾斜面と、斜めになった柄の下方にあり、刃面に沿って回転することによって刃の顎に対応する位置と刃から外れた位置との間を移動可能なロック部材と、ロック部材の移動軌跡の下面に倣う湾曲面と、傾斜面と湾曲面の間に配置され包丁の柄の落下方向の位置を規定する段差と、を備え、スリットは傾斜面と湾曲面にわたって配置されていて、包丁の刃の顎は前記湾曲面に配置されたスリットを通過することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、包丁の刃を下向きかつ斜めに差した状態で、包丁の顎を押さえて引き抜きを防止することができる。包丁を斜めに差していることから、包丁差しの正面に立った使用者が引き抜きやすいため、利便性を向上させることができる。また包丁を引き抜く力によってロック部材が外れることがないため、確実に不用意な引き抜きを防止することができ、子どもの誤使用を防止することができる。さらにロック部材が包丁差しの上面からはみ出すことがないため、設置箇所のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0014】
当該包丁差しはさらに湾曲面の上面に形成され、ロック部材が刃の顎に対応する位置にあるときにこれを係止する係止突起を備えていることが好ましい。

【0015】
上記構成によれば、ロック部材が斜めになった柄の下方にあるにもかかわらず、ロックおよびロック解除を容易にすることができるため、操作性を損なうことがない。またロックを解除している状態では包丁を引き出す操作を阻害するものがなく、利便性を低下させるおそれがない。
【0016】
当該包丁差しは、引出の前板の裏側に取り付けられていて、包丁を前板と平行な面内で傾斜させて支持していることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、引出の正面に立った使用者が包丁を引き抜きやすい。また包丁を斜めに差していることから全体の高さを押さえることができ、引出の内部に収容するために適している。
【0018】
当該包丁差しは、引出の前板の裏側に取り付けられる収納容器の上面の開口に取り付けられるユニットであることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、前板への取付構造を収納容器と共用にできる。また、取り外せば収納容器を通常の収納スペースとして利用することができるため、使用者の自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、包丁を斜めに差した状態で収納する包丁差しにおいて、ロック時には確実に引き抜きを防止し、ロック解除時には利便性を高くした包丁差しを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態にかかる包丁差しの外観斜視図である。
図2】包丁差しを説明する図である。
図3】ロック部材を説明する図である。
図4】収納容器の3面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は本実施形態にかかる包丁差しの外観斜視図であって、包丁差し100をキッチンの引出300の前板302の内側に取り付けた状態を示している。なお、図1ではキッチン本体の図示は省略している。
【0024】
図1に示すように、包丁差し100は、包丁200の刃202を下向きかつ斜めに差した状態で収納する。包丁差し100は、包丁200を前板302と平行な面内で傾斜させて支持している。これにより、引出300の正面に立った使用者が包丁を引き抜きやすい構成となっている。例えば図1の状態では、使用者が右手によって包丁200を引き抜きやすい。また包丁200を斜めに差していることから全体の高さを押さえることができ、引出300の内部に収容するために適している。
【0025】
包丁差し100は、収納容器150の上面の開口152に取り付けられるユニットである。そして、収納容器150が引出300の前板302の裏側に取り付けられている。包丁差し100は収納容器150に対して着脱可能となっていて、左右逆向きに取り付けることが可能である。これにより使用者の好みによって右勝手と左勝手を入れ替えることができる。また、包丁差し100を取り外せば収納容器150を収納スペースとして利用することができるため、使用者の自由度を向上させることができる。
【0026】
また、前板302への取付構造として包丁差し100の独自の構造を採用する必要がなく、収納容器150と共用にできるため、設計と配置の自由度を向上させることができる。
【0027】
図2は包丁差しを説明する図であって、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図、図2(c)は背面図である。包丁差し100の上面には、包丁の刃202(図1参照)を差し込むスリット102を、2行2列で合計4本有している。また包丁差し100の上面には、包丁の柄204に当接して包丁200を斜めの姿勢に支持する傾斜面104が形成されている。したがって包丁の刃202をスリット102に挿入し、柄204が傾斜面104に当接して支持されることにより、包丁200は斜めに保持される。
【0028】
また包丁差し100の上面には、斜めになった柄204の下方に、ロック部材110が備えられている。
【0029】
図3はロック部材110を説明する図であって、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図、図3(c)は動作を説明する図である。図3(a)(b)に示すように、ロック部材110は、包丁差し100の上面に露出してスリット102にまたがるバー112と、バー112から下方に延びる2本のアーム114、およびアーム114の下端に設けられたピンである回転軸116とから構成されている。
【0030】
アーム114は図2(b)に示すようにスリット102から包丁差し100の内部へと挿入されていて、包丁差し100の内部で軸支されている。これによりロック部材110は、図3(c)に示すように、刃面に沿って(刃202と平行な面の方向に)回転して、刃202の顎202aに対応する位置と、刃202から外れた位置との間を移動可能となっている。
【0031】
上記構成によれば、包丁の刃202を下向きかつ斜めに差した状態で、包丁の顎202aを押さえて引き抜きを防止することができる。また包丁200を引き抜く力の方向はロック部材110のアーム114の半径方向であるから、引き抜く力によってロック部材110が外れることがない。このため、確実に不用意な引き抜きを防止することができ、子どもの誤使用を防止することができる。なお、刃に顎がないナイフや小型のペティナイフなど上記構成ではロックできないものもあるが、一般的な家庭用の包丁であれば確実に引き抜きを防止することができる。さらにロック部材110が包丁差し100の上面からはみ出すことがないため、周囲に余分なスペースを必要としないため、設置箇所のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0032】
また図2に示すように、包丁差し100の上面には、ロック部材110のバー112の移動軌跡の下面に倣う湾曲面106が形成されている。傾斜面104と湾曲面106の間には段差が形成されていて、包丁の柄204の落下方向の位置を規定している。湾曲面106の上面には係止突起108、109が設けられていて、ロック部材110のバー112はこれに乗り上げることによって係止される。これによりロック部材110は、バー112が刃の顎202aに対応する位置と、刃から外れた位置とでそれぞれ係止される。
【0033】
上記構成によれば、ロック部材110が斜めになった柄204の下方にあるにもかかわらず、バー112を指で容易に操作することができる。したがって、ロックおよびロック解除を容易にすることができ、操作性を損なうことがない。またロックを解除している状態ではバー112がスリット102から退避しているために、包丁200を引き出す操作を阻害するものがなく、利便性を低下させるおそれがない。
【0034】
ロック部材110において、斜めに支持された包丁の刃202の上方は空きスペースである。そこで図2(a)(b)に示すように、この位置には窪みを設け、収納部130を形成している。また図2(a)(c)に示すように、包丁差し100の下部であって収納容器150に挿入される箇所に、収納容器150に形成された係合用穴154に挿入されるボタン132が形成されている。ボタン132の両脇にはスリット134が形成されていて、ボタン132が材料の弾性を利用してたわむことができるように構成されている。
【0035】
図4は収納容器150の3面図である。収納容器150の基本構造は、上面に開口152を有する箱体である。収納容器150の両側の端面には、包丁差し100のボタン132が挿入される係合用穴154が設けられている。収納容器150の開口152に包丁差し100を挿入すると、ボタン132が係合用穴154に係合して固定される。包丁差し100を収納容器150から取り外す際には、ボタン132を押し込んで係合を解除することができる。
【0036】
また収納容器150の一方の側面には、引出の前板302に設けられたネジに取り付けるための2つのダルマ穴156、158が設けられている。ダルマ穴156の大径部156aおよび小径部156b、ダルマ穴158の大径部158aおよび小径部158bは、横向きに配置している。これにより包丁200を引き抜くために上方向の力がかかっても収納容器150が前板302から外れることがない。またダルマ穴156の小径部156bは、ダルマ穴158の小径部158bよりも短くなっていて、収納容器150はかならずダルマ穴156によって横方向の位置決めがなされるように構成されている。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、包丁を斜めに差した状態で収納する包丁差しとして利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
100…包丁差し、102…スリット、104…傾斜面、106…湾曲面、110…ロック部材、112…バー、114…アーム、116…回転軸、108、109…係止突起、130…収納部、132…ボタン、134…スリット、150…収納容器、152…開口、154…係合用穴、156…ダルマ穴、156a…大径部、156b…小径部、158…ダルマ穴、158a…大径部、158b…小径部、200…包丁、202…刃、202a…顎、204…柄、300…引出、302…前板
図1
図2
図3
図4