(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、例えば、蛍光画像のバッククラウンドレベルよりも20%高い信号レベルを閾値に設定し、この閾値と各画素の信号レベルとを比較することにより、蛍光領域を抽出している。しかしながら、組織から発せられる蛍光は微弱であるため、観察条件が変動すると蛍光領域を正確に抽出することが難しい。また、蛍光領域が抽出されたとしても、その蛍光領域の輝度値が低いために画像において蛍光領域がユーザに認識されない可能性がある。
【0005】
例えば、蛍光画像における蛍光の信号レベルは、観察距離に依存する。すなわち、同一の観察視野に存在する凹部と凸部とから発せられた2つの蛍光は、両方の蛍光の強度が同一の観察条件(距離や励起光強度など)の下では同一の蛍光強度を発するものであったとしても、蛍光画像においては、凹部からの蛍光は観察距離が大きいために、凸部からの蛍光よりも弱い信号レベルとして捉えられる。その結果、凹部内の蛍光領域は抽出されない可能性がある。
【0006】
また、例えば、蛍光画像から抽出した蛍光領域を該蛍光領域の輝度値に応じて組織の白色光画像に重畳表示する場合、白色光画像の輝度値よりも蛍光領域の輝度値が低く、その差異が大きいと、蛍光領域が白色光画像に重畳表示されていたとしても蛍光領域を鮮明に視認することが難しい。特に、蛍光領域の表示色と、該蛍光領域の背景の組織の色とが類似している場合には、蛍光領域を視認することが一層難しい。したがって、蛍光領域が抽出されて画像に表示されていたとしても、その存在にユーザが気が付かない可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、観察条件の違いに依らずに観察視野内の蛍光領域の存在を確実にユーザに報知することができる蛍光観察装置および蛍光観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明
の第1の態様は、観察対象に参照光および励起光を照射する光源と、該光源からの前記励起光の照射により前記観察対象において発生した蛍光を撮影し蛍光画像を生成する蛍光画像生成部と、前記光源からの前記参照光の照射により前記観察対象から戻る戻り光を撮影し参照画像を生成する参照画像生成部と、該参照画像生成部により生成された前記参照画像に前記蛍光画像生成部により生成された前記蛍光画像を重畳することにより合成画像を生成する画像合成部と、前記参照画像生成部により生成された前記参照画像内の各位置における輝度値を所定の閾値と比較し、前記輝度値が前記所定の閾値以下である位置の有無を判別する判別部と、該判別部によって輝度値が前記所定の閾値以下である位置が存在すると判別された場合に、その存在を報知する報知部とを備え
、前記蛍光画像生成部が、前記蛍光を撮影する撮像素子を備え、前記判別部が、前記撮像素子の前記蛍光に対する検出限界と一致する蛍光の強度に対応する強度を有する前記戻り光を撮影したときの前記参照画像の輝度値である検出限界閾値を前記所定の閾値として有する蛍光観察装置
である。
本発明の第2の態様は、観察対象に参照光および励起光を照射する光源と、該光源からの前記励起光の照射により前記観察対象において発生した蛍光を撮影し蛍光画像を生成する蛍光画像生成部と、前記光源からの前記参照光の照射により前記観察対象から戻る戻り光を撮影し参照画像を生成する参照画像生成部と、該参照画像生成部により生成された前記参照画像に前記蛍光画像生成部により生成された前記蛍光画像を重畳することにより合成画像を生成する画像合成部と、前記参照画像生成部により生成された前記参照画像内の各位置における輝度値を所定の閾値と比較し、前記輝度値が前記所定の閾値以下である位置の有無を判別する判別部と、該判別部によって輝度値が前記所定の閾値以下である位置が存在すると判別された場合に、その存在を報知する報知部と、前記参照画像生成部により生成された前記参照画像内の前記各位置における色相を識別する色相識別部とを備え、前記画像合成部が、前記蛍光画像に所定の色相を付して前記蛍光画像を前記参照画像に重畳し、前記判別部が、前記所定の色相と前記色相識別により識別された色相とのコントラストに応じて前記参照画像内の各位置に対して視認限界閾値を前記所定の閾値として設定する蛍光観察装置である。
【0009】
本発明によれば、光源から発せられた励起光が観察対象に照射されると、蛍光画像生成部により観察対象において発生した蛍光の蛍光画像が生成され、光源から励起光とともに発せられた参照光が観察対象に照射されると、参照画像生成部によりその戻り光の参照画像が生成される。そして、画像合成部において、蛍光画像が参照画像に重畳されることにより蛍光領域と観察対象の形態とが対応付けられた合成画像が生成される。
【0010】
この場合に、参照画像のうち所定の閾値以下の輝度値を有する位置が存在する場合、その存在が判別部によって判別されて報知部により報知される。蛍光画像生成部および参照画像生成部により撮影される蛍光と戻り光の強度は、観察距離などの観察条件が変動したとしても互いに比例関係を保持する。したがって、参照画像において所定の閾値以下の輝度値を有する位置は、蛍光画像生成部により撮影された蛍光の強度が所定の値よりも低い位置と対応する。すなわち、
判別部は、参照画像の輝度値に基づいて、観察対象において蛍光が発生しているにもかかわらず、蛍光画像生成部により撮影される蛍光の強度が不十分であるために、蛍光画像において視認可能な輝度値として表示されていない可能性がある位置の有無を判別している。
【0011】
戻り光の強度は、観察条件の変動によって変化したとしても、蛍光に比べて十分に高く維持されるので、このような戻り光を用いることにより、蛍光画像において視認可能な輝度値として表示されていない蛍光領域の存在が正確に判別される。これにより、観察条件の違いに依らずに観察視野内の蛍光領域の存在を確実にユーザに報知することができる。
【0012】
上記
第1の態様においては、前記蛍光画像生成部が、前記蛍光を撮影する撮像素子を備え、前記判別部が、前記撮像素子の前記蛍光に対する検出限界と一致する蛍光の強度に対応する強度を有する前記戻り光を撮影したときの前記参照画像の輝度値である検出限界閾値を前記所定の閾値として
有する。
このようにすることで、蛍光の強度が撮像素子により検出できないレベルであったときに、当該蛍光が発生している位置と対応する参照画像内の位置の輝度値が検出限界閾値以下となり、その位置の存在が判別部によって判別される。これにより、蛍光が発生しているにも関わらず、その蛍光が撮像素子の感度に対して微弱であるために蛍光画像に表示されていないことを報知することができる。
【0013】
上記
第2の態様においては、前記画像合成部が、前記蛍光画像に所定の色相を付し前記蛍光画像を前記参照画像に重畳し、前記参照画像生成部により生成された前記参照画像内の前記各位置における色相を識別する色相識別部を備え、前記判別部が、前記所定の色相と前記色相識別
部により識別された色相とのコントラストに応じて前記参照画像内の各位置に対して視認限界閾値を前記所定の閾値として設定
する。
【0014】
合成画像における蛍光領域の視認性は、背景となる参照画像の色相と蛍光領域の色相とのコントラストにも依存する。すなわち、参照画像の色相と蛍光領域の色相とが類似しているときは蛍光領域を視認し難くなり、参照画像の色相と蛍光領域の色相とが対比しているときは、蛍光領域を視認し易くなる。参照画像の各位置における色相は観察対象の形態によって異なる。このように、参照画像の各位置にその位置の色相に応じた視認限界閾値を設定することで、蛍光画像生成部によって撮影される蛍光の強度に加えて、色相のコントラストも加味してユーザが認識し難い蛍光領域の存在を報知することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記判別部によって前記輝度値が前記所定の閾値以下であると判別された位置を抽出する抽出部を備え、前記報知部が、前記抽出部により抽出された位置を報知してもよい。
このようにすることで、認識できないまたは認識し難い蛍光領域の位置をユーザに報知することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記報知部が、前記抽出部により抽出された位置を示すマーカを前記合成画像に表示させてもよい。
このようにすることで、認識できないまたは認識し難い蛍光領域の位置を合成画像に表示されたマーカによってユーザに報知することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記判別部が
、前記所定の閾値
未満の複数の閾値を有し、前記報知部は、前記判別部によって前記所定の閾値以下であると判別された前記各位置の輝度値が、前記複数
の閾値によって区分される複数の範囲のうちいずれの範囲に該当するかに応じて、異なる表示態様の前記マーカを前記合成画像に表示させてもよい。
このようにすることで、ユーザは、マーカによって示されている位置のうち、蛍光が撮影されていない可能性の程度、または、視認し難さの程度を表示態様の違いによって認識することができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記報知部が、出力する音を変化させることにより前記存在を報知してもよい。
このようにすることで、ユーザは、報知部が出力する音の変化から診断不能領域の存在を認識することができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記判別部によって前記輝度値が前記所定の閾値以下であると判別された前記参照画像内の位置を当該参照画像と対応付けて記憶する記憶部を備え、前記報知部が、判別部によって輝度値が前記所定の閾値以下である位置が存在すると判別された参照画像を前記記憶部に記憶されている参照画像と照合し、該当する参照画像が前記記憶部に記憶されている場合に、報知を中止してもよい。
このようにすることで、既にユーザに報知された蛍光領域について、その後も報知が繰り返されることを防ぐことができる。
【0020】
本発明
の第3の態様は、上記
第1の態様に係る蛍光観察装置と、前記
判別部において用いられる前記検出限界閾値を設定する較正装置とを備え、該較正装置が、前記光源からの前記励起光および参照光の照射により蛍光および戻り光を発生する標準試料と、該標準試料に照射される前記励起光および参照光の強度を変化させる光強度調節部と、該光強度調節部により異なる強度の前記励起光および参照光が前記標準試料に照射されたときの前記蛍光および戻り光を撮影することにより作成された複数の前記
参照画像および前記蛍光画像の輝度値の関係に基づいて前記検出限界閾値を決定して該検出限界閾値を前記
判別部に設定する閾値決定部とを備える蛍光観察システム
である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、観察条件の違いに依らずに観察視野内の蛍光領域の存在を確実にユーザに報知することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る蛍光観察装置1について、
図1〜
図10を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1は、内視鏡装置であって、
図1に示されるように、体内に挿入される細長い挿入部2と、光源3と、該光源3からの励起光および白色光を挿入部2の先端2aから観察対象Xに向けて照射する照明ユニット4と、挿入部2の先端2aに設けられ、観察対象Xである生体組織の画像情報S1,S2を取得する撮像ユニット5と、挿入部2の基端側に配置され、撮像ユニット5により取得された画像情報S1,S2を処理する画像処理部6と、該画像処理部6により処理された画像Gを表示する表示部7とを備えている。
【0024】
光源3は、キセノンランプ31と、該キセノンランプ31から発せられた光から、励起光および白色光(照明光:波長帯域400〜740nm)を切り出すフィルタ32と、フィルタ32により切り出された励起光および白色光を集光するカップリングレンズ33とを備えている。
【0025】
照明ユニット4は、挿入部2の長手方向のほぼ全長にわたって配置されたライトガイドファイバ41と、挿入部2の先端2aに設けられた照明光学系42とを備えている。ライトガイドファイバ41は、カップリングレンズ33によって集光された励起光および白色光を導光する。照明光学系42は、ライトガイドファイバ41によって導光されてきた励起光および白色光を拡散させて、挿入部2の先端2aに対向する観察対象Xに照射する。
【0026】
撮像ユニット5は、観察対象Xの所定の観察範囲から戻る光を集光する対物レンズ51と、該対物レンズ51によって集光された光のうち、励起波長以上の光(励起光および蛍光)を反射し、励起波長より短い波長の白色光(戻り光)を透過するダイクロイックミラー52と、該ダイクロイックミラー52により反射された蛍光およびダイクロイックミラー52を透過した白色光をそれぞれ集光する2つの集光レンズ53,54と、集光レンズ53,54によって集光された白色光および蛍光を撮影するCCDのような2個の撮像素子55,56とを備えている。
【0027】
撮像素子55,56は、一定のフレームレートで白色光画像情報S1および蛍光画像情報S2を取得するようになっている。
図中、符号57は、ダイクロイックミラー52によって反射された光のうち励起光を遮断する(例えば、波長帯域760〜850nmの光だけを透過する)励起光カットフィルタである。
【0028】
画像処理部6は、撮像素子55により取得された白色光画像情報S1から白色光画像(参照画像)G1を生成する白色光画像生成部(参照画像生成部)61と、撮像素子56により取得された蛍光画像情報S2から蛍光画像G2を生成する蛍光画像生成部62と、白色光画像G1のうち所定の検出限界閾値以下の輝度値を有する画素を抽出する診断不能領域抽出部(判別部、抽出部)63と、蛍光画像G2のうち所定の蛍光閾値以上の輝度値を有する画素を抽出する蛍光領域抽出部64と、診断不能領域抽出部63および蛍光領域抽出部64により抽出され画素と白色光画像G1とを用いて合成画像Gを生成する画像合成部(報知部)65とを備えている。
【0029】
診断不能領域抽出部63は、白色光画像生成部61から入力される白色光画像G1の各画素の輝度値を所定の検出限界閾値と比較し、該検出限界閾値以下の輝度値を有する画素群を、
図4に示されるように、診断不能領域Eとして抽出する。ここで、検出限界閾値は、後述するように、撮像素子55,56を用いて白色光画像G1および蛍光画像G2を予め取得し、取得された各画像G1,G2の輝度値同士の関係に基づいて決定される値である。
蛍光領域抽出部64は、蛍光画像生成部62から入力される蛍光画像G2の各画素の輝度値を所定の蛍光閾値と比較し、該蛍光閾値以上の輝度値を有する画素群を蛍光領域Fとして抽出する。
【0030】
図2(a)〜(c)は、観察対象Xの形状と、撮像素子55,56によって検出される白色光および蛍光の強度Iw,Ifと、各画像生成部61,62において生成される白色光画像G1および蛍光画像G2との関係を説明する図である。
図2(a)は、観察対象Xの形状を示している。
図2(b)は、
図2(a)に示される観察対象Xを撮影した白色光画像G1および蛍光画像G2を互いに重畳した状態で示している。
図2(c)は、
図2(b)のII−II線と対応する位置において撮像素子55,56が検出する白色光の強度Iwおよび蛍光の強度Ifを示している。
【0031】
観察対象Xに照射される白色光および励起光は、挿入部2の先端2aに近い観察対象Xの平坦な部分X’または凸部には十分に高い強度で照射されるが、挿入部2の先端2aから遠い凹部X”の内部においては強度が低くなる。しかし、観察対象Xに照射される白色光は十分な強度を有するため、観察対象Xにおいて反射されて撮像素子55に入射する白色光も、
図2(c)に示されるように、凹部X”においても十分な強度Iwを有する。したがって、観察対象X全体が十分に明瞭に撮影された白色光画像G1が得られる。
【0032】
一方、一般的に、観察対象Xにおいて発生する蛍光の強度は、反射光(白色光)のそれに比べて弱い。したがって、平坦な部分X’と凹部X”とおいて同一の強度の蛍光が発生していた場合、挿入部2の先端2aに近い平坦な部分X’から撮像素子56に入射する蛍光は十分な強度Ifを有するが、挿入部2の先端2aから遠い凹部X”の内部から撮像素子56に入射する蛍光は強度Ifが不十分となる。
【0033】
つまり、凹部X”の内部から撮像素子56に入射する蛍光の強度Ifは、
図2(c)に示されるように、撮像素子56の蛍光に対する検出限界Lim未満となって撮像素子56により検出されないか、または、検出されたとしても蛍光画像G2において所定の蛍光閾値未満の輝度値として表わされる。その結果、
図2(b)に示されるように、凹部X”内の蛍光領域Fは蛍光領域抽出部64によって抽出されないこととなる。
【0034】
このように、観察対象Xから各撮像素子55,56に入射する白色光および蛍光の強度Iw,Ifは、観察距離に依存して互いに比例関係を維持したまま変化する。そして、観察距離が大きくなったときに、白色光の強度Iwが撮像素子55の検出限界に到達するよりも先に、蛍光の強度Ifが撮像素子56の検出限界Limを下回る。この撮像素子56の検出限界Limと一致する蛍光の強度Ifに対応する強度Iwを有する白色光を撮影したときの白色光画像G1の輝度値が、診断不能領域抽出部63における検出限界閾値に設定される。
【0035】
画像合成部65は、診断不能領域抽出部63により抽出された診断不能領域Eの位置を示すマーカMを作成する。そして、画像合成部65は、マーカMおよび蛍光領域抽出部64により抽出された蛍光領域Fを白色光画像G1に重畳することにより合成画像Gを生成する(
図6参照。)。画像合成部65は、生成した合成画像Gを表示部7に出力する。マーカMとしては、例えば、診断不能領域Eに施されたハッチングや、診断不能領域Eを囲む円、矢印などが用いられる。
表示部7は、画像合成部65から入力された合成画像Gを表示する。
【0036】
次に、このように構成された蛍光観察装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1を用いて観察対象Xである体内の生体組織を観察するには、体内に挿入部2を挿入し、挿入部2の先端2aを観察対象Xに対向させる。そして、光源3を作動させて励起光および白色光を発生させる。励起光および白色光は、カップリングレンズ33によってライトガイドファイバ41に入射され、ライトガイドファイバ41内を挿入部2の先端2aまで導光され、照明光学系42によって拡散されて観察対象Xに照射される。
【0037】
観察対象Xにおいては、内部に含まれている蛍光物質が励起光によって励起されることにより蛍光が発せられるとともに、観察対象Xの表面において白色光が反射させられる。蛍光および反射された白色光は、観察対象Xから挿入部2の先端2aに戻り、対物レンズ51によって集光される。
【0038】
図3に、本実施形態に係る蛍光観察装置1による合成画像Gの生成処理を説明するフローチャートを示す。
対物レンズ51によって集光された蛍光および白色光はダイクロイックミラー52によって波長毎に分岐され、例えば400〜700nmの波長帯域の白色光は、集光レンズ53によって集光され、撮像素子55により白色光画像情報S1として取得される(ステップS1)。
【0039】
また、対物レンズ51によって集光された蛍光および白色光の内、ダイクロイックミラー52を反射した光、例えば700〜850nmの波長帯域の励起光および蛍光を含む光からは、励起光カットフィルタ57によって励起光(例えば740nm以下の光)が除去された後に、蛍光のみが集光レンズ54によって集光されて撮像素子56によって蛍光画像情報S2として取得される(ステップS2)。
【0040】
各撮像素子55,56によって取得された画像情報S1,S2は、画像処理部6に送られる。画像処理部6においては、白色光画像情報S1が白色光画像生成部61に入力されて白色光画像G1が生成される(ステップS3)。一方、蛍光画像情報S2が蛍光画像生成部62に入力されて蛍光画像G2が生成される(ステップS4)。
【0041】
生成された白色光画像G1は診断不能領域抽出部63に送られ、
図4に示されるように、診断不能領域抽出部63において、所定の検出限界閾値以下の輝度値を有する診断不能領域Eが白色光画像G1から抽出される(ステップS5)。抽出された診断不能領域Eは画像合成部65に送られ、該画像合成部65において診断不能領域Eの位置を示すマーカMが作成される(ステップS6)。
【0042】
一方、生成された蛍光画像G2は蛍光領域抽出部64に送られ、
図5に示されるように、蛍光領域抽出部64において、所定の蛍光閾値以上の輝度値を有する蛍光領域Fが蛍光画像G2から抽出される(ステップS7)。抽出された蛍光領域Fは画像合成部65に送られる。
【0043】
画像合成部65は、
図6に示されるように、生成したマーカMと蛍光領域Fとを白色光画像G1に重畳することにより合成画像Gを生成し(ステップS8)、該合成画像Gを表示部7に出力する(ステップS9)。
図6には、マーカMとして診断不能領域E全体に施されたハッチングが示されている。
【0044】
ユーザは、表示部7に表示されている合成画像Gに蛍光領域Fが出現した場合には、この蛍光領域Fを病変部として認識することができる。また、ユーザは、合成画像GにマーカMが出現した場合には、このマーカMの示す位置において病変部が正常に検出されていない可能性があることを認識し、例えば、挿入部2の先端2aをマーカMが示している領域に近接させて該領域を拡大観察することにより、病変部の有無を確認することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る蛍光観察装置1によれば、診断不能領域抽出部63において、発生している蛍光が撮像素子56によって検出されていない可能性がある白色光画像G1における暗い領域が診断不能領域Eとして抽出され、抽出された診断不能領域Eの存在が合成画像GにマーカMとして提示される。これにより、蛍光が発生しているにも関わらず合成画像Gにおいて蛍光領域Fとして表示されていない偽陰性の領域が存在している可能性があることをユーザに確実に認識させ、ユーザがより正確な診断することを支援することができるという利点がある。
【0046】
なお、本実施形態においては、マーカMとして、診断不能領域E全体に均一に施されたハッチングを例示したが、複数の表示態様を用いて診断不能領域Eにおける白色光画像G1の輝度値の分布を示すようなマーカMを作成してもよい。
【0047】
すなわち、診断不能領域抽出部63は
、複数の閾値を有し、画像合成部65が、
検出限界閾値以下の輝度値を有する各画素の輝度値が、複数の閾値によって区分される範囲のうちいずれに該当するかを判別し、範囲毎に異なるパターンのハッチングを用いてマーカMを作成する。これにより、
図7に示されるように、異なる輝度値を有する領域が、異なるパターンのハッチングにより示される。
このようにすることで、ユーザは、診断不能領域Eのうち、発生している蛍光が検出されていない可能性の程度を表示態様の違いによって認識することができる。
【0048】
次に、上述した実施形態に係る蛍光観察装置1の変形例について説明する。
蛍光観察装置1においては、撮像素子56の検出限界Limと対応する白色光画像G1の輝度値を所定の検出限界閾値に設定し、該検出限界閾値以下の輝度値を有する領域を診断不能領域Eとして抽出することとした。本変形例に係る蛍光観察装置1’は、これに代えて、または、これに加えて、白色光画像G1の各位置における色相に基づいて位置毎に所定の視認限界閾値を設定する点において、蛍光観察装置1と相違している。すなわち、蛍光観察装置1’は、
図8に示されるように、画像処理部6において、白色光画像G1の各画素の色相を識別する色相識別部66を備える。
【0049】
また、本変形例においては、合成画像Gの生成方法として以下のような方法が用いられる。すなわち、撮像素子55は、白色光のうち赤色、緑色および青色に対してそれぞれ感度を有する3種類の受光素子を備える。白色光画像生成部61は、各種類の受光素子によって得られた画像情報から、赤色、緑色および青色の擬似色をそれぞれ付したR画像、G画像およびB画像を生成し、これら3つの単色画像を画像合成部65に出力する。
【0050】
画像合成部65は、蛍光領域抽出部64から入力された蛍光領域Fに緑色の擬似色を付し、この蛍光領域Fの信号をG画像内の同一の位置に加算することによりG’画像を生成する。そして、画像合成部65は、R画像、G’画像およびB画像を重畳することにより、カラー画像である合成画像Gを生成する。合成画像Gにおいて、蛍光領域Fは、緑色の明るい領域として表示される。
【0051】
色相識別部66は、白色光画像G1の各画素について、R画像、G画像およびB画像における輝度値の比を算出し、算出された比に基づいてその画素が有する色相が予め設定された複数の色相領域のうちいずれに属するかを識別する。
診断不能領域抽出部63は、色相識別部66によって識別された各画素の色相領域に基づいて、各画素に対する視認限界閾値を設定する。例えば、上述のように蛍光領域Fを緑色として表示する場合、赤色の色相領域に属する色相を有する画素に対してはより低い視認限界閾値を設定し、黄色や白色の色相領域に属する色相を有する画素に対してはより高い視認限界閾値を設定する。
【0052】
次に、本変形例に係る蛍光観察装置1’による合成画像Gの生成処理を
図9のフローチャートを参照して説明する。
蛍光観察装置1’によれば、ステップS3において白色光画像G1が生成されると、色相識別部66により、白色光画像G1の各画像の色相が識別され(ステップS10)、続いて、診断不能領域抽出部63により、各画素の色相に基づいて該各画素に対する視認限界閾値が設定される(ステップS11)。
【0053】
ここで、蛍光領域Fの背景となる生体組織の色相が赤色である場合には、蛍光領域Fの色相と生体組織の色相とが対比色となるため、ユーザは合成画像Gにおいて蛍光領域Fの輝度値が比較的低くても蛍光領域Fを視認し易い。一方、生体組織の色相が黄色や白色である場合には、蛍光領域Fの色相と生体組織の色相とが類似色となるため、ユーザは合成画像Gにおいて蛍光領域Fの輝度値が比較的高くても蛍光領域Fを視認し難い。このように、蛍光領域Fの視認性は、蛍光領域Fの輝度値の高低の他に、蛍光領域Fの色相と背景の色相とのコントラストにも依存する。ステップS11において診断不能領域抽出部63により設定される視認限界閾値は、蛍光領域Fの色相と類似する色相を有する画素に対しては高いものとなり、蛍光領域Fの色相と対比する色相を有する画素に対しては低いものとなる。
【0054】
次に、ステップS5において、蛍光画像G2内の蛍光領域Fのうち輝度値が不十分である蛍光領域Fと対応する白色光画像G1内の領域が診断不能領域Eとして抽出される。ただし、背景の組織の色相が赤色である蛍光領域については輝度値が比較的低い場合にのみ診断不能領域Eとして抽出され、背景の組織の色相が黄色または白色である蛍光領域については、輝度値が比較的高い場合でも診断不能領域Eとして抽出される。次に、ステップS6において、ステップS5において診断不能領域Eとして抽出された蛍光領域Fを示すマーカが作成される。
【0055】
このように、本変形例によれば、合成画像Gに表示されているものの、輝度値が低く、かつ、背景となる組織と類似した色相で表示されているためにユーザによって視認され難い蛍光領域Fをマーカで示すことにより、このような蛍光領域Fもユーザに確実に認識させ、ユーザがより正確に診断することを支援することができるという利点がある。
【0056】
また、上記実施形態およびその変形例においては、診断不能領域抽出部63による診断不能領域Eの抽出の有無を、合成画像GにおけるマーカMの表示・非表示を用いてユーザに報知することとしたが、これに代えて、音の変化を用いてもよい。すなわち、蛍光観察装置は、音を出力するスピーカを備え、診断不能領域Eの抽出の有無に応じてスピーカから出力する音の高さや、リズム、音量を変化させ、または音のオンオフを切り替える。このようにしても、診断不能領域Eの存在をユーザに確実に報知することができる。
【0057】
また、挿入部2の先端2aを操作することによる白色光画像G1内での診断不能領域Eの移動と連動して音の高さや、リズム、音量を変化させることにより、診断不能領域Eと挿入部2の先端2aとの位置関係をユーザに報知し、ユーザが音の変化を手掛かりにして挿入部2の先端2aを診断不能領域Eの方向へ容易に導くことができるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態およびその変形例においては、
図10に示されるように、診断不能領域抽出部63において白色光画像G1から診断不能領域Eが抽出された場合に当該白色光画像G1を記憶する記憶部67を備え、画像合成部65は、診断不能領域Eが入力される度に、当該診断不能領域Eが抽出された白色光画像G1を記憶部67に記憶されている白色光画像G1と照合し、該当する白色光画像G1が記憶部67に存在した場合には、当該診断不能領域Eを示すマーカMの作成を中止する、または、マーカMを変更するように構成されていてもよい。
図10に例示されている蛍光観察装置1”は、蛍光観察装置1をベースとしている。
【0059】
ユーザが視野を移動しながら観察対象Xを観察する際に、既に確認が済んだ診断不能領域Eであるにも関わらず、その診断不能領域Eを示すマーカMがユーザに繰り返し提示されると、ユーザは、煩わしく感じたり同じ診断不能領域Eを再度確認したりする可能性がある。そこで、一度報知された診断不能領域Eについてはそれ以後報知されないようにすることで、使い勝手を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、診断不能領域抽出部63の所定の検出限界閾値が、挿入部情報に基づいて設定されるように構成されていてもよい。すなわち、蛍光観察装置が、挿入部2として、挿入部情報を記憶するICチップ(図示略)を有し光源3および/または画像処理部6に着脱可能なものを備え、光源3または画像処理部6がICチップに記憶されている挿入部情報を判別する挿入部判別部(図示略)を備えていてもよい。挿入部情報としては、各挿入部2に対応した観察対象Xの部位や、蛍光物質の種類、各光学系の仕様などに係る情報等が挙げられる。
【0061】
この場合、挿入部2が光源3または画像処理部6に接続されると、挿入部判別部がICチップに記憶されている挿入部情報を読み出してその挿入部情報を診断不能領域抽出部63に送る。診断不能領域抽出部63は、挿入部情報と所定の検出限界閾値とを対応付けたテーブルを保持しており、挿入部判別部から入力された挿入部情報に対応する検出限界閾値を選択して設定する。
このようにすることで、ユーザが使用する挿入部2に応じて検出限界閾値を設定する必要が無く、使い勝手を向上することができる。
【0062】
次に、蛍光観察装置1と、該蛍光観察装置1により用いられる検出限界閾値を較正する較正装置10とを備える蛍光観察システムについて、
図11および
図12を参照して説明する。
本実施形態に係る較正装置10は、
図11に示されるように、挿入部2を固定するホルダ11と、該ホルダ11に固定された挿入部2の先端2aに対して観察距離Dをあけて対向させられる標準試料12と、挿入部2の先端2aと標準試料12との間の観察距離Dを変更するステージ(光強度調節部)13と、該ステージ13を制御する制御部14と、各観察距離Dで撮影された白色光画像G1および蛍光画像G2の輝度値に基づいて検出限界閾値を決定する閾値決定部15とを備えている。
【0063】
標準試料12は、挿入部2の先端2aに対向配置される観察面においては均一な構造を有し、その観察面全体にわたって白色光を均一に反射し、また、均一に蛍光を発生するように構成されている。
【0064】
制御部14は、ステージ13を駆動させることにより観察距離Dを段階的に変更し、変更する度に観察距離Dを閾値決定部15に出力する。閾値決定部15は、制御部14から観察距離Dを受け取ると、その観察距離Dの条件で生成された白色光画像G1および蛍光画像G2を白色光画像生成部61および蛍光画像生成部62から受け取る。
【0065】
これにより、閾値決定部15は、観察距離Dと、白色光画像G1の輝度値および蛍光画像G2の輝度値とが対応付けられたデータを得る。
図12は、閾値決定部15が得た、観察距離Dと白色光画像G1の輝度値Vwおよび蛍光画像G2の輝度値Vfとの関係を示すグラフを示している。
【0066】
図12に示されるように、白色光画像G1の輝度値Vwおよび蛍光画像G2の輝度値Vfはともに、観察距離Dに反比例して変化する。ここで、十分な強度を有する白色光を撮影した白色光画像G1は、観察距離Dが十分に大きい範囲においても十分な輝度値Vwを有する。一方、白色光に比べて微弱な蛍光を撮影した蛍光画像G2は、白色光が十分な強度を有している観察距離Dの範囲において蛍光の強度が撮像素子56の検出限界Limを下回ることにより、輝度値Vfが一定のレベルとなる。閾値決定部15は、蛍光画像G2の輝度値Vfが立ち上がる観察距離Dにおける、白色光画像G1の輝度値Vwを検出限界閾値Thに決定し、決定した検出限界閾値Thを診断不能領域抽出部63に設定する。
【0067】
なお、本実施形態に係る較正装置10においては、制御部14が、ステージ13を制御して観察距離Dを変更することに代えて、光源(光強度調節部)3を制御して標準試料12に照射する白色光および励起光の強度を変更してもよい。
このようにしても、
図12に示されるような白色光画像の輝度値Vwと蛍光画像の輝度値Vfとの関係が得られ、同様にして検出限界閾値Thを決定することができる。