(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法においては、直方形状の基材を切断して勾配面を一つずつ形成する切断工程と、当該切断工程を経たもの同士を貼り合せる工程とを経て、ようやく一つの勾配板が形成されることとなる。このように、二面勾配部の下方に配置される勾配板を形成することは、複雑な工程を経る必要があったため、非常に時間と手間のかかるものであった。
【0007】
更に、直方形状の基材を切断する際には、当該基材の約半分の体積を占める部分が端材として捨てられてしまっていた。このため、資源の利用効率の観点から無駄の多いものであった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、傾斜方向が互いに異なる二つの勾配面が一本の稜線を挟んで隣り合う形状の勾配板を、簡単且つ効率的に形成することのできる勾配板の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る勾配板の加工方法は、防水層の下地として配置される勾配板の加工方法であって、矩形状の底面と、前記底面に対して垂直な矩形状の第一側面と、前記第一側面と平行で且つ上辺の位置が前記第一側面よりも高い矩形状の第二側面と、前記第一側面の上辺と前記第二側面の上辺とを繋ぐ勾配面と、前記第一側面及び前記底面のいずれ対しても垂直であり且つ台形を成す二つの台形側面と、を有する下方基材を準備する第一準備工程と、前記下方基材と同一の形状である上方基材を準備する第二準備工程と、前記下方基材の底面と前記上方基材の底面とが平行な状態で、前記下方基材の前記勾配面に対して上方から前記上方基材の前記勾配面を当接させ、前記下方基材と前記上方基材との全体が略直方形状をなす状態とする積層工程と、前記下方基材と前記上方基材のうち一方の前記台形側面から、前記下方基材と前記上方基材のうち他方の前記台形側面に向けて、直線状の切断線を通過させることにより、前記下方基材と前記上方基材をそれぞれ切断する切断工程と、を有しており、前記切断工程において、前記切断線は、一平面内を通過し、且つ、前記切断工程の終了時点において、前記切断線が通過して切断される一対の前記台形側面が、いずれも三角形部と矩形部とに分かれるように通過することを特徴としている。
【0010】
本発明に係る勾配板の加工方法では、第一準備工程において下方基材が準備され、第二準備工程において上方基材が準備される。これら下方基材及び上方基材は、いずれも勾配板を加工する際の基材となるものであって、その形状は互いに同一である。
【0011】
下方基材及び上方基材は、矩形状の底面と、底面に対して垂直な矩形状の第一側面と、第一側面と平行で且つ上辺の位置が第一側面よりも高い矩形状の第二側面と、第一側面の上辺と第二側面の上辺とを繋ぐ勾配面と、第一側面及び底面のいずれ対しても垂直であり且つ台形を成す二つの台形側面と、を有している。
【0012】
積層工程では、上記のような下方基材及び上方基材を、互いに重ねて積層し、両者の全体が略直方形状をなす状態とする。具体的には、下方基材の底面と上方基材の底面とが平行な状態で、且つ下方基材の勾配面に対して上方から上方基材の勾配面を当接させた状態とする。
【0013】
切断工程では、下方基材と上方基材のうち一方の台形側面から、下方基材と上方基材のうち他方の台形側面に向けて、直線状の切断線を通過させる。これにより、下方基材と上方基材をそれぞれ切断する。このとき、切断線は一平面内を通過し(一平面をなす軌跡を描くように通過し)、且つ、切断線が通過して切断される一対の台形側面が、いずれも三角形部と矩形部とに分かれるように通過する。尚、切断線とは、例えば電流が流れて高温の状態となったニクロム線(熱線)や、糸鋸の歯など、下方基材や上方基材を切断可能な線状のものが広く含まれる。
【0014】
切断線を上記のように通過させることで、下方基材及び上方基材は、いずれも、傾斜方向が互いに異なる二つの勾配面が一本の稜線を挟んで隣り合う形状に加工される。また、その形状は互いに同一である。下方基材及び上方基材をそれぞれ上面視した場合において、当該稜線は矩形を成す外形の対角線を通るような位置に形成される。
【0015】
このように、本発明に係る勾配板の加工方法によれば、二つの基材(下方基材と上方基材)を積層した状態で切断線を一回通過させるという簡単な工程により、同一形状の勾配板を同時に二つ形成することができる。二つの基材を貼り合わせるような工程がなく、しかも同時に二つの勾配板が形成されるため、非常に高い効率で勾配板を形成することができる。また、下方基材及び上方基材において、切断して捨てられる部分(端材)が占める割合は比較的小さいため、資源の利用効率を高めることができる。
【0016】
また本発明に係る勾配板の加工方法では、前記下方基材及び上方基材はいずれも発泡樹脂素材により形成されており、前記切断線は熱線であることも好ましい。
【0017】
この好ましい態様では、下方基材及び上方基材はいずれも発泡樹脂素材により形成されている。このため、例えば電流が流れて高温の状態となったニクロム線等の熱線を切断線として用いることで、切断工程において容易に下方基材及び上方基材を切断することができる。
【0018】
また本発明に係る勾配板の加工方法では、請求項2に記載の勾配板の加工方法を繰り返すことで、複数の前記下方基材及び前記上方基材を連続して切断していく勾配板の加工方法であって、前記切断工程において、前記熱線は、前回において通過した前記一平面と同一平面内を通過し、且つ、前回の通過方向とは逆方向に通過することも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、第一準備工程、第二準備工程、積層工程、切断工程を繰り返すことで、複数の下方基材及び上方基材を連続して切断する。その際、切断工程において下方基材及び上方基材を通過する熱線は、前回において通過した(軌跡である)一平面と同一平面内を通過し、且つ、前回の通過方向とは逆方向に通過する。このため、切断工程が終了する度に熱線の位置を初期位置に戻す必要がないため、加工の効率を更に向上させることができる。
【0020】
また本発明に係る勾配板の加工方法では、前記積層工程と前記切断工程との間には荷重工程を更に有しており、前記荷重工程は、前記上方基材の底面に荷重をかけ、前記下方基材の前記勾配面に対して前記上方基材の前記勾配面を押し付けた状態とするものであることも好ましい。
【0021】
切断工程で切断線が通過する際は、下方基材及び上方基材が切断線から力を受けるため、当該力によって下方基材と上方基材とがずれてしまうことがある。切断工程において下方基材と上方基材とがずれると、それぞれに形成される稜線が直線でなくなるなど、勾配板が設計とは異なる形状に形成されることとなる。
【0022】
この好ましい態様では、積層工程と切断工程との間に荷重工程を更に有している。荷重工程は、(上方を向いている)上方基材の底面に荷重をかけ、下方基材の勾配面に対して上方基材の勾配面を押し付けた状態とするものである。このような荷重工程を経てから切断工程に移行することで、切断工程において下方基材と上方基材とがずれてしまうことを防止することができる。
【0023】
また本発明に係る勾配板の加工方法では、前記荷重工程において前記上方基材の前記底面にかけられる荷重は、前記上方基材の前記第二側面寄りとなる位置、及び、前記上方基材の前記台形側面のうち前記切断線が通過する方の前記台形側面寄りとなる位置に偏ってかけられることも好ましい。
【0024】
切断工程において下方基材と上方基材とがずれてしまう現象は、切断線が通過する方向に沿って、特に上方基材が切断線から力を受けてしまうことに起因することが多い。上方基材が切断線から受ける力は、特に、上面視で第二側面に近い部分、及び、台形側面のうち切断線が通過する方の台形側面に近い部分に対して強く働く。
【0025】
この好ましい態様では、荷重工程において上方基材の底面にかけられる荷重は、上方基材の第二側面寄りとなる位置、及び、上方基材の台形側面のうち切断線が通過する方の台形側面寄りとなる位置に偏ってかけられる。すなわち、上方基材が切断線から力を受けやすい位置の上方となる位置に偏って荷重がかけられる。その結果、上方基材の底面全体に強い荷重をかけることなく、全体の荷重は小さくしながらも効率的にずれを防止することができる。
【0026】
また本発明に係る勾配板の加工方法では、前記荷重工程は、長尺状に形成された第一ウェイトを、その長手方向が前記上方基材の前記第二側面と平行な状態で前記上方基材の前記底面に対して載せ、長尺状に形成された第二ウェイトを、その長手方向が前記上方基材の前記台形側面と平行な状態で前記上方基材の前記底面に対して載せるものであることも好ましい。
【0027】
この好ましい態様では、長尺状に形成された二つのウェイト(第一ウェイト、第二ウェイト)を上方基材の底面のうち所定位置に載せるという簡単な方法により、ずれを防止するための効率的な荷重(偏荷重)をかけることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、傾斜方向が互いに異なる二つの勾配面が一本の稜線を挟んで隣り合う形状の勾配板を、簡単且つ効率的に形成することのできる勾配板の加工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0033】
まず、睦屋根の防水下地構造の一例を、
図1を参照しながら説明する。
図1は、屋上の防水層が水勾配を形成するように下地として敷設される、複数の勾配板を上面視で示した図である。防水層は、このような勾配板の上部に、塩化ビニル等からなるシートを配置することによって形成される。
【0034】
図1に示したように、この例に示す水勾配は寄棟形式となっている。すなわち、1つの大棟部615と4つの隅棟部611、612、613、614を有しており、これらを境界線(稜線)とする4つの傾斜面601、602、603、604が形成されている。
【0035】
傾斜面601は、大棟部615から軒先621に向かって下るような勾配を有する傾斜面であって、隅棟部611を介して傾斜面604と隣り合い、隅棟部612を介して傾斜面602と隣り合っている。傾斜面602は、大棟部615から軒先622に向かって下るような勾配を有する傾斜面であって、隅棟部612を介して傾斜面601と隣り合い、隅棟部613を介して傾斜面603と隣り合っている。傾斜面603は、大棟部615から軒先623に向かって下るような勾配を有する傾斜面であって、隅棟部613を介して傾斜面602と隣り合い、隅棟部614を介して傾斜面604と隣り合っている。傾斜面604は、大棟部615から軒先624に向かって下るような勾配を有する傾斜面であって、隅棟部614を介して傾斜面603と隣り合い、隅棟部611を介して傾斜面601と隣り合っている。
【0036】
図1に示したように、これら傾斜面601等は、上面視で正方形状をなす複数の勾配板200を複数枚並べて敷設することにより形成されている。それぞれの勾配板200は、その上部に勾配面を有する板状のものであって、当該勾配面は隣り合う勾配板の勾配面と連続する(段差がない)ように形成されている。
【0037】
勾配板200のうち一部の勾配板200aは、上面視において隅棟部611等の稜線がその対角線上を通っている。すなわち、これら(
図1の例では8枚存在する)の勾配板200aは、傾斜方向が互いに異なる二つの勾配面が一本の稜線を挟んで隣り合う形状となっている。
【0038】
勾配板200aの具体的な形状を、
図2を参照しながら説明する。
図2は勾配板200aの外観を示した斜視図である。
図2に示したように、勾配板200aは、上面視で正方形状をなす板であって、底面201と、矩形側面210、220と、台形側面230、240と、勾配面250、260とを有している。
【0039】
底面201は、勾配板200aの最下部の面であって、平面視で正方形状に形成された水平面である。
【0040】
矩形側面210は、底面201に対して垂直な側面であって、上辺211、下辺212、側辺213、214に囲まれている。上辺211の長さと下辺212の長さは同一であり、側辺213の長さと側辺214の長さは同一である。
【0041】
矩形側面220は、底面201に対して垂直な側面であって、上辺221、下辺222、側辺213、224に囲まれている。上辺221の長さと下辺222の長さは同一であり、側辺213の長さと側辺224の長さは同一である。矩形側面210と矩形側面220とは互いに垂直となっており、側辺213を共有している。
【0042】
台形側面230は、底面201に対して垂直な側面であって、
図2に示したように平面視で台形状をなすように形成されている。台形側面230は、上辺231、下辺232、側辺214、235に囲まれている。側辺235は側辺214よりも長くなっている。このため、側辺235は台形の長辺に相当する部分であり、側辺214は台形の短辺に相当する部分である。側辺214の上端と側辺235の上端とを繋ぐ上辺231は、水平方向に対して傾斜している。台形側面230と矩形側面210とは互いに垂直となっており、側辺214を共有している。
【0043】
台形側面240は、底面201に対して垂直な側面であって、
図2に示したように平面視で台形状をなすように形成されている。台形側面240は、上辺241、下辺242、側辺235、224に囲まれている。側辺235は側辺224よりも長くなっている。このため、側辺235は台形の長辺に相当する部分であり、側辺224は台形の短辺に相当する部分である。側辺224の上端と側辺235の上端とを繋ぐ上辺241は、水平方向に対して傾斜している。台形側面240と台形側面230とは互いに垂直となっており、側辺235を共有している。また、台形側面240と矩形側面220とは互いに垂直となっており、側辺224を共有している。
【0044】
勾配面250は、側辺235の上端と側辺213の上端とを繋ぐ直線状の稜線TLから上辺211に向かって下るような勾配を有する面であり、稜線TL、上辺211、上辺231に囲まれている。勾配面260は、稜線TLから上辺221に向かって下るような勾配を有する面であり、稜線TL、上辺221、上辺241に囲まれている。
【0045】
このように、勾配板200aは、傾斜方向が互いに異なる二つの勾配面250、260が一本の稜線TLを挟んで隣り合う形状となっている。以下に説明する、本発明の一実施形態である勾配板の加工方法は、特に上記のような形状を有する勾配板200aを形成するためのものである。
【0046】
勾配板200aを形成するための加工方法を、
図3乃至
図5を参照しながら説明する。まず、
図3に示したような形状の下方基材300を準備する(第一準備工程)。
【0047】
下方基材300は、勾配板200aを形成するための基材であって、発泡ポリスチレンにより形成されている。
図3に示したように、下方基材300は、底面301と、第一側面310と、第二側面320と、第一台形側面330と、第二台形側面340と、勾配面350とを有している。
【0048】
底面301は、下方基材300の最下部の面であって、平面視で正方形状に形成されている。底面301は、後に勾配板200aの底面201となる部分である。
【0049】
第一側面310は、底面301に対して垂直な矩形状の側面であって、上辺311、下辺312、側辺313、314に囲まれている。上辺311の長さと下辺312の長さは同一であり、側辺313の長さと側辺314の長さは同一である。第一側面310は、後に勾配板200aの矩形側面220となる部分である。
【0050】
第二側面320は、底面201に対して垂直な矩形状の側面であって、上辺321、下辺322、側辺323、324に囲まれている。上辺321の長さと下辺322の長さは同一であり、側辺323の長さと側辺324の長さは同一である。
【0051】
一方、側辺324は側辺314よりも長くなっている。このため、第二側面320の上辺321の位置は、第一側面310の上辺311の位置よりも高い。
【0052】
第一台形側面330は、底面201に対して垂直な側面であって、
図3に示したように平面視で台形状をなすように形成されている。第一台形側面330は、上辺331、下辺332、側辺314、323に囲まれている。側辺323は側辺314よりも長いため、側辺323は台形の長辺に相当する部分であり、側辺314は台形の短辺に相当する部分である。側辺314の上端と側辺323の上端とを繋ぐ上辺331は、水平方向に対して傾斜している。第一台形側面330と第一側面310とは互いに垂直となっており、側辺314を共有している。また、第一台形側面330と第二側面320とは互いに垂直となっており、側辺323を共有している。
【0053】
第二台形側面340は、底面201に対して垂直な側面であって、
図3に示したように平面視で台形状をなすように形成されている。第二台形側面340は、上辺341、下辺342、側辺313、324に囲まれている。側辺324は側辺313よりも長いため、側辺324は台形の長辺に相当する部分であり、側辺313は台形の短辺に相当する部分である。側辺313の上端と側辺324の上端とを繋ぐ上辺341は、水平方向に対して傾斜している。第二台形側面340と第一側面310とは互いに垂直となっており、側辺313を共有している。また、第二台形側面340と第二側面320とは互いに垂直となっており、側辺324を共有している。第二台形側面340は、後に勾配板200aの台形側面240となる部分である。
【0054】
勾配面350は、第一側面310の上辺311と、第二側面320の上辺321とを繋ぐ面であって、上辺321から上辺311に向かって下るような勾配を有する面である。勾配面350は、上辺321、上辺331、上辺311、上辺341に囲まれている。
【0055】
このような形状の下方基材300は、例えば発泡ポリスチレンからなる直方形状の板に対し、上面を斜めにカットする加工を予め施すこと等によって準備される。
【0056】
続いて、下方基材300と同一形状且つ同一素材からなる上方基材400を準備する(第二準備工程)。上方基材400の形状は
図3を参照しながら説明した下方基材300の形状と同一であるから、その詳細な説明を省略する。尚、以下の説明においては、上方基材400のうち底面301に対応する部分を「底面401」と表記し、他の部分も同様に表記する。
【0057】
続いて、下方基材300の上方に上方基材400を重ねて、
図4に示した状態とする(積層工程)。この状態においては、上方基材400の勾配面450が下方を向いており、下方基材300の底面301と上方基材400の底面401とが平行となっている。また、下方基材300の勾配面350に対して上方基材400の勾配面450が上方から当接している。下方基材300の上辺311の位置と、上方基材400の上辺421の位置とが一致している。また、下方基材300の上辺321の位置と、上方基材400の上辺411の位置とが一致している。その結果、
図4に示したように、下方基材300と上方基材400との全体が略直方形状をなした状態となっている。
【0058】
続いて、
図5に示したように、下方基材300の第一台形側面330から、上方基材400の第二台形側面440に向けて(矢印AR1、AR2に沿って)、電流が流れて高温の状態となったニクロム線(熱線HL)を通過させる。下方基材300及び上方基材400のうち熱線HLが通過した部分は、熱により溶融して切断される(切断工程)。
【0059】
熱線HLは一直線をなすものであって、常に下辺332と平行な状態を保ちながら移動する。熱線HLは、
図5に示すように側辺314の上端を通る位置において第一台形側面330を切断しながら下方基材300に入り込み、側辺324の上端に向かって(矢印AR1、AR2に沿って)、一平面をなす軌跡を描くように移動する。その後、側辺324の上端を通る位置において第二台形側面440を切断する位置(
図5の点線HLDで示した位置)まで移動する。
【0060】
熱線HLが上記のような軌道に沿って移動しながら下方基材300及び上方基材400を通過する結果、第一台形側面330は矩形部330Sと三角形部330Tとに分かれる。同様に、第二台形側面440は矩形部440Sと三角形部440Tとに分かれる。
【0061】
以上のような切断工程が終了した後、三角形部330Tを有する部分(端材)を下方基材300から取り除くと、下方基材300の形状は
図2に示した勾配板200aと同一になっている。また、三角形部440Tを有する部分(端材)を上方基材400から取り除くと、上方基材400の形状も
図2に示した勾配板200aと同一になっている。このように、二つの勾配板200aが同時に形成される。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る勾配板の加工方法によれば、二つの基材(下方基材300と上方基材400)を積層した状態で熱線HLを一回通過させるという簡単な工程により、同一形状の勾配板200aを同時に二つ形成することができる。二つの基材を貼り合わせるような工程がなく、しかも同時に二つの勾配板200aが形成されるため、非常に高い効率で勾配板200aを形成することができる。また、下方基材300及び上方基材400において、切断して捨てられる部分(端材)が占める割合は比較的小さいため、資源の利用効率を高めることができる。
【0063】
続いて、以上に説明した加工方法を繰り返すことにより、複数の下方基材300及び上方基材400を連続して切断していく方法の例を、
図6を参照しながら説明する。
図6においては、第一準備工程、第二準備工程、及び積層工程が完了して
図4に示した状態となった下方基材300及び上方基材400(以下、積層体500と称する)が、図示しないベルトコンベアー上に複数個一列に並んでいる。複数の積層体500は、ベルトコンベアーの進行方向(矢印AR10が示す方向)に沿って並んでいる。それぞれの積層体500は、第一台形側面330の法線方向がベルトコンベアーの進行方向に対して垂直であり、且つコンベアーの進行方向に向かって左向き(
図6において手前側を向く)となるように配置されている。
【0064】
図6(A)に示したようにベルコンベアーの途中には、熱線HLが移動可能に配置されている。熱線HLの移動方向は、ベルトコンベアーの進行方向に対して垂直である。ベルトコンベアーは、熱線HLの位置に積層体500が到達した時点でその動作を一時的に停止し、積層体500を静止させる。この状態で、既に説明したような切断工程が行われる。すなわち、熱線HLが矢印AR1及びAR2に沿って移動し、積層体500を切断する。このときの熱線HLの移動方向は、第一台形側面330から第二台形側面440に向かう方向である。切断工程が終了すると、熱線HLはその位置(第二台形側面440の近傍)に留まる。
【0065】
その後、ベルトコンベアーは動作を再開し、切断された積層体500が矢印AR10の方向に移動する。同時に、積層体500の後方側に並んでいた別の積層体500(積層体500a)が、矢印AR20に沿って移動して熱線HLの位置に到達し、
図6(B)の状態となる。
【0066】
積層体500aが当該位置に到達した時点で、ベルトコンベアーは再びその動作を一時的に停止し、積層体500aを静止させる。この状態で、積層体500aを切断する切断工程が行われる。
【0067】
このとき、熱線HLは第二台形側面440の近傍にある。従って、積層体500aを切断する際は、熱線HLは前回とは逆方向に移動する。すなわち、熱線HLが矢印AR1、AR2に沿って移動した際に通過した平面と同一の平面を通過しながら、矢印AR1、AR2とは逆方向に移動する。その結果、
図6(B)に示したように、熱線HLは矢印AR3、AR4に沿って、第二台形側面440から第一台形側面330に向かって移動する。
【0068】
以下においても同様であって、積層体500aの後方側に並んでいる積層体500bが続いて切断される。このとき、熱線HLが通過する方向は、
図6(A)の矢印AR1、AR2で示した方向となる。
【0069】
このように、熱線HLが通過する方向を交互に変更することにより、切断工程が終了する度に熱線HLの位置を初期位置に戻す必要がない。このため、加工の効率を更に向上させることができる。
【0070】
以上においては説明及び図示を省略したが、本実施形態においては、積層工程が完了した段階で上方基材400の底面401に荷重をかけ、下方基材300の勾配面350に対して上方基材400の勾配面450を押し付けた状態としている(荷重工程)。このように荷重をかけた状態で切断工程に移行することにより、切断工程において下方基材300と上方基材400とがずれてしまうことを防止している。
【0071】
荷重工程を経て切断工程が行われる状態を、
図7に示した。上方基材400の底面401には、長尺状に形成された金属からなる第一ウェイトW1、及び第二ウェイトW2が載せられている。これら第一ウェイトW1、及び第二ウェイトW2に働く重力によって、下方基材300の勾配面350に対して上方基材400の勾配面450を押し付けるような荷重をかけている。
【0072】
ここで、切断工程において下方基材300と上方基材400とがずれてしまう現象は、熱線HLが通過する方向に沿って、特に上方基材400が熱線HLから力を受けてしまうことに起因することが多い。上方基材400が熱線HLから受ける力は、特に、上面視で第二側面420に近い部分、及び、第二台形側面440(切断線が通過する方の台形側面)に近い部分に対して強く働く。
【0073】
そこで本実施形態においては、第一ウェイトW1を上方基材400の第二側面420寄りとなる位置に配置し、第二ウェイトW2を上方基材400の第二台形側面440寄りとなる位置に配置している。また、第一ウェイトW1はその長手方向が第二側面420と平行な状態で配置されており、第二ウェイトW2はその長手方向が第二台形側面440と平行な状態で配置されている。
【0074】
これにより、上方基材400が熱線HLから力を受けやすい位置の上方となる位置に偏って荷重がかけられている。その結果、上方基材400の底面401の全体に強い荷重をかけることなく、全体の荷重は小さくしながらも効率的にずれを防止することが可能となっている。
【0075】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。