(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放置工程を終了する直前の前記変圧器内の油のポリ塩化ビフェニル濃度が0.15mg/kg未満となるまで、前記第1抜油工程から前記放置工程までを繰り返して行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の浄化方法。
【背景技術】
【0002】
変圧器などの電気機器に用いられる絶縁油が微量のポリ塩化ビフェニル(以下、「PCB」という。)により汚染されていることが明らかになってから、PCBによって汚染された電気機器の処理方法について検討されてきた。
【0003】
その処理方法として、現在、PCBに汚染された電気機器を、ダイオキシンが発生しない高温下で焼却処理する方法が行われている。しかしながら、このような焼却処理を行える施設には限りがあるため、すべてのPCBに汚染された電気機器を処分するのが困難な状況にある。そのため、PCBに汚染された変圧器を浄化し、一般の廃棄物と同様の処理が行えるようにしたり、廃棄せずに再利用したりすることが望まれている。
【0004】
そこで、従来、PCBに汚染された変圧器の浄化方法として、PCBに汚染された変圧器を、温められたPCBに汚染されていない油で洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
具体的に、特許文献1に記載されている浄化方法では、変圧器からPCBに汚染されている油を抜き取った後、当該変圧器にPCBに汚染されていない油を注入し、その後、この油を抜き取ることで、変圧器内を洗浄するようになっている。そして、この浄化方法では、PCBに汚染されていない油を、変圧器に注入する前に、40〜90℃に加熱している。このように、温められた油を変圧器に注入することで、変圧器内の部材に染みこんだPCBを油に溶出しやすくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的に、変圧器には、変圧器内の絶縁油を冷却するためのラジエータが設けられている。そのため、上述した技術においては、変圧器内の油は、ラジエータを通ることにより冷却されるので、変圧器内の油の温度を所望の温度に保つのが困難であり、加熱効率が悪かった。また、変圧器内の油の温度を保つため、変圧器を、保温機能を有する保温容器に入れて洗浄作業を行うことが考えられるが、大型の変圧器であった場合、当該変圧器を保温容器内へ移動させるのは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、変圧器内の油の加熱効率がよく、また、大型の変圧器であっても簡単に作業することができるPCBに汚染された油が収容された変圧器の浄化方法および浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するため、本発明の浄化方法は、ポリ塩化ビフェニルに汚染された油が収容された、
筐体および当該筐体内との油の循環が可能に設けられたラジエータを有する変圧器の浄化方法であって、前記変圧器からポリ塩化ビフェニルに汚染された油を抜き取る第1抜油工程と、前記第1抜油工程の後、油が抜き取られた前記変圧器にポリ塩化ビフェニルに汚染されていない油を
、前記ラジエータで前記筐体内の油と熱交換可能な程度に注入する注入工程と、前記注入工程により前記変圧器に注入された油を所定温度まで加熱する加熱工程と、前記加熱工程により加熱された前記変圧器内の油を前記所定温度に保ちながら、前記変圧器を放置する放置工程と、前記放置工程の後、前記変圧器から油を抜き取る第2抜油工程と、を備え、前記加熱工程において、
前記変圧器内に前記注入工程で注入された油が入った状態で、前記変圧器のラジエータに
取り付けた加熱装置
により当該ラジエータを加熱すること
で、前記
筐体内の油を加熱することを特徴とする。
【0010】
このような浄化方法によれば、加熱装置により高い熱交換機能を有するラジエータを加熱することで油を加熱するので、変圧器内の油の加熱効率がよい。また、従来のように、ラジエータから油の熱が外部へ逃げないので、変圧器内の油の加熱効率がよい。さらに、ラジエータに加熱装置を取り付けるだけで油を加熱することができ、変圧器を移動させる必要がないので、大型の変圧器であっても簡単に作業することができる。
【0011】
そして、前記した浄化方法において、前記放置工程では、前記加熱装置により、前記変圧器内の油を保温することが望ましい。
【0012】
このように、高い熱交換機能を有するラジエータを加熱して保温することで、保温の効率が向上する。
【0013】
また、少なくとも前記放置工程において、前記ラジエータを断熱部材で被覆することが望ましい。
【0014】
このような浄化方法によれば、より油の加熱効率および保温効率が向上する。
【0015】
そして、前記した所定温度は、80℃以上である。
【0016】
また、前記した浄化方法において、前記放置工程は、所定時間毎に前記変圧器内の油のポリ塩化ビフェニル濃度を測定する濃度測定工程を有し、前記濃度測定工程において、ポリ塩化ビフェニル濃度が略一定となったときに、前記放置工程を終了するのが望ましい。
【0017】
このような浄化方法によれば、変圧器内のPCBを油に十分に溶出させた後、油を抜き取ることができる。
【0018】
そして、前記した浄化方法において、前記放置工程を終了する直前の前記変圧器内の油のポリ塩化ビフェニル濃度が0.15mg/kg未満となるまで、前記第1抜油工程から前記放置工程までを繰り返して行うことが望ましい。
【0019】
このような浄化方法によれば、変圧器内のPCBを十分に除去した状態で浄化作業を終了することができる。
【0020】
また、前記した浄化方法は、前記第1抜油工程において前記変圧器から抜き取った油を浄化し、当該油をポリ塩化ビフェニルに汚染されていない油にする浄化工程を備え、前記注入工程では、前記浄化工程により得られたポリ塩化ビフェニルに汚染されていない油を前記変圧器に注入することが望ましい。
【0021】
このような浄化方法によれば、PCBに汚染された油を再利用することができるので、廃棄する油を減らすことができる。
【0022】
そして、前記した目的を達成するため、本発明の浄化システムは、ポリ塩化ビフェニルに汚染された油が収容された変圧器を浄化するための浄化システムであって、前記変圧器と接続され、前記変圧器から抜き取られた油を貯留する汚染油タンクと、前記汚染油タンクと接続され、前記汚染油タンクから注入されるとともに前記変圧器へ移送されるポリ塩化ビフェニルに汚染されていない油を貯留する浄化装置と、前記浄化装置と接続されるとともに前記変圧器に接続され、前記浄化装置から注入されるポリ塩化ビフェニルに汚染されていない油を貯留し、当該油が前記変圧器へ移送される浄化油タンクと、前記変圧器内の油を加熱する加熱装置と、を備え、前記加熱装置は、前記変圧器のラジエータに取り付けられ、当該ラジエータを加熱することで、前記変圧器内の油を所定温度に加熱することを特徴とする。
【0023】
このように構成された浄化システムによれば、加熱装置が、高い熱交換機能を有するラジエータを加熱することで油を加熱するので、変圧器内の油の加熱効率がよい。また、従来のように、ラジエータから油の熱が外部へ逃げないので、変圧器内の油の加熱効率がよい。さらに、ラジエータに加熱装置を取り付けるだけで油を加熱することができ、変圧器を移動させる必要がないので、大型の変圧器であっても簡単に作業することができる。
【0024】
また、前記した浄化システムにおいて、前記加熱装置は、前記変圧器内の油を前記所定温度まで加熱した後、前記変圧器内の油を当該所定温度に保つように構成されていることが望ましい。
【0025】
このように構成された浄化システムによれば、高い熱交換機能を有するラジエータを加熱して保温することで、保温の効率が向上する。
【0026】
また、前記した浄化システムは、前記ラジエータを被覆する断熱部材を備えることが望ましい。
【0027】
このように構成された浄化システムによれば、より油の加熱効率および保温効率が向上する。
【0028】
そして、前記した浄化システムにおいて、前記所定温度は、80℃以上である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、加熱装置が、高い熱交換機能を有するラジエータを加熱することで油を加熱するので、変圧器内の油の加熱効率がよい。また、従来のように、ラジエータから油の熱が外部へ逃げないので、変圧器内の油の加熱効率がよい。さらに、ラジエータに加熱装置を取り付けるだけで油を加熱することができ、変圧器を移動させる必要がないので、大型の変圧器であっても簡単に作業することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、本発明の浄化システム1および浄化方法により浄化される変圧器100の構成について簡単に説明した後、本発明の特徴部分について詳しく説明する。
【0032】
<変圧器の概略構成>
図1に示すように、変圧器100は、筐体110およびラジエータ120を主に備えている。
【0033】
筐体110は、容器本体111と、容器本体111に溶接される蓋112を有し、内部に金属や紙などから構成された変圧器本体(図示省略)が収容されている。また、筐体110には、変圧器本体全体が浸る程度の量の絶縁油(油)が収容されている。
【0034】
また、筐体110には、筐体110内の絶縁油を排出するための排出口113および筐体110内に絶縁油を注入するための注入口114が設けられている。
【0035】
ラジエータ120は、公知の高い熱交換機能を有する装置であり、筐体110内の絶縁油が、このラジエータ120と筐体110の間を循環するように構成されている。例えば、ラジエータ120は、筐体110内の絶縁油が一旦筐体110外を通った後、再び筐体110内へ戻るような流路をつくる配管である。そして、ラジエータ120は、変圧器100を使用しているときには、筐体110内の絶縁油を速やかに冷却するようになっている。
【0036】
このように構成された変圧器100は、筐体110内に収容されている絶縁油が、PCBで汚染されていた場合、筐体110や変圧器本体もPCBに汚染されるため、PCB汚染されたものとして取り扱わなければならない。
【0037】
<浄化システムの構成>
浄化システム1は、PCBに汚染された変圧器100を浄化するためのシステムであり、汚染油タンク2、浄化装置の一例としての脱塩素化処理装置3、浄化油タンク4、加熱装置5および断熱部材6を主に備えて構成されている。
【0038】
汚染油タンク2は、PCBに汚染された油を貯留するタンクである。汚染油タンク2は、第1バルブV1と第1ポンプP1が接続された第1配管L1により、変圧器100に接続可能となっている。また、汚染油タンク2は、第2バルブV2と第2ポンプP2が接続された第2配管L2により、脱塩素化処理装置3に接続されている。
【0039】
第1ポンプP1は、変圧器100から汚染油タンク2に向けて油を移送可能に設けられている。また、第1配管L1は、変圧器100の排出口113に着脱可能に構成されている。
【0040】
第2ポンプP2は、汚染油タンク2から脱塩素化処理装置3に向けて油を移送可能に設けられている。
【0041】
脱塩素化処理装置3は、PCBに汚染された油を浄化して、PCBに汚染されていない油にするように構成された公知の装置である。脱塩素化処理装置3は、例えば、金属ナトリウムにより、PCBの脱塩素化を行い、浄化された油のPCB濃度が、0.1mg/kg以下となるように構成されている。
【0042】
浄化油タンク4は、PCBに汚染されていない油を貯留するタンクである。浄化油タンク4は、第3バルブV3と第3ポンプP3が接続された第3配管L3により、脱塩素化処理装置3に接続されている。また、浄化油タンク4は、第4ポンプP4が接続された第4配管L4により、変圧器100に接続可能となっている。
【0043】
第3ポンプP3は、脱塩素化処理装置3から浄化油タンク4に向けて油を移送可能に設けられている。
【0044】
第4ポンプP4は、浄化油タンク4から変圧器100に向けて油を移送可能に設けられている。また、第4配管L4は、変圧器100の注入口114に着脱可能に構成されている。
【0045】
加熱装置5は、ラジエータ120を加熱することで、変圧器100内の油を所定温度に加熱し、その後は、変圧器100内の油を当該所定温度に保つように構成されている。
【0046】
具体的に、加熱装置5は、電気ヒータ51、サーミスタ52および油温制御器53を主に備えて構成されている。
【0047】
電気ヒータ51は、ラジエータ120を加熱するための発熱体であり、ラジエータ120の外面に取り付け可能になっている。電気ヒータ51は、後述する油温制御器53に接続されており、この油温制御器53によりON・OFFを制御されている。
【0048】
サーミスタ52は、変圧器100内の油の温度を検知するセンサである。サーミスタ52は、例えば、ラジエータ120の表面に配置され、または、変圧器100に設けられた適宜な穴から変圧器100内に挿入される。サーミスタ52は、後述する油温制御器53に接続されており、検知結果を油温制御器53に出力する。
【0049】
油温制御器53は、サーミスタ52の検知結果に基づいて、電気ヒータ51のON・OFFを制御するように構成されている。例えば、油温制御器53は、変圧器100内の油が所定温度になるまで電気ヒータ51をONにし、油が所定温度に加熱された後は、変圧器100内の油の温度が所定温度に保たれるように、電気ヒータ51のON・OFFを適宜切り替えるようになっている。
【0050】
なお、本実施形態において、所定温度は、80℃以上であるのが望ましい。このように、油の温度を80℃以上にすることにより、変圧器100内のPCBが効率よく油に溶け込むことができることが知られており、これにより、浄化作業にかかる時間を短縮することが可能となっている。
【0051】
断熱部材6は、ガラスウールや発泡体等からなり、ラジエータ120の外周面に巻き付けることができるように構成されている。より詳細には、断熱部材6は、ラジエータ120の全体を被覆するとともに、ラジエータ120に取り付けられている電気ヒータ51も覆うようになっている。このように、高い熱交換機能を有するラジエータ120と、ラジエータ120を加熱する電気ヒータ51を断熱部材6で覆うことにより、加熱効率と保温効率を向上させることができるようになっている。
【0052】
なお、断熱部材6は、電気ヒータ51とは別個の部材であってもよいし、電気ヒータ51を内蔵したジャケット状やマット状のヒータであってもよい。
【0053】
以上のように構成された浄化システム1は、トレーラーなどに積み込んで持ち運ぶことができ、浄化対象となる変圧器100が保管されている場所まで運んで使用することが可能となっている。
【0054】
<浄化方法>
次に、上述したように構成された浄化システム1を利用した変圧器100の浄化方法について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
まず、浄化作業を開始する前に、浄化すべき変圧器100内の絶縁油を少量採取し、この絶縁油のPCB濃度を測定しておく(S11)。その後、変圧器100に、第1配管L1と第4配管L4を接続し、さらに、加熱装置5および断熱部材6をラジエータ120に取り付けることで、変圧器100を浄化システム1に接続する。変圧器100に浄化システム1が接続されたら、第1〜第3ポンプP1〜P3をONにする。
【0056】
そして、第1バルブV1を開き、変圧器100内の絶縁油をすべて汚染油タンク2に移送する(S12)。これにより、変圧器100からPCBに汚染された絶縁油が抜き取られる(第1抜油工程)。変圧器100から絶縁油がすべて抜き取られたら、第1バルブV1を閉じる。なお、第1バルブV1を閉じた後、第1配管L1を変圧器100から取り外し、排出口113を閉じておいてもよい。
【0057】
次に、第2バルブV2を開き、汚染油タンク2に貯留されていた絶縁油を脱塩素化処理装置3に移送する。これにより、脱塩素化処理装置3に注入された絶縁油が浄化処理され(S13)、第1抜油工程において変圧器100から抜き取った絶縁油が浄化されてPCBに汚染されていない絶縁油になる(浄化工程)。
【0058】
なお、第2バルブV2を開くタイミングは、変圧器100の絶縁油をすべて汚染油タンク2へ移送し終わって第1バルブV1を閉じた後であってもよいし、変圧器100の絶縁油を汚染油タンク2へ移送している段階であってもよい。また、汚染油タンク2内の絶縁油がすべて脱塩素化処理装置3へ移送されたら、第2バルブV2は閉じておく。
【0059】
次に、第3バルブV3を開き、脱塩素化処理装置3により浄化された絶縁油を、浄化油タンク4に移送する(S14)。さらに、第4ポンプP4をONにして、絶縁油が抜き取られた変圧器100に、浄化油タンク4に貯留されているPCBに汚染されていない絶縁油を注入する(S15,注入工程)。
【0060】
ここで、第3バルブV3を開くタイミングは、脱塩素化処理装置3に注入された絶縁油が十分に浄化された後であることが望ましい。そして、脱塩素化処理装置3内の絶縁油をすべて浄化油タンク4へ移送し終わったら、第3バルブV3を閉じ、変圧器100に絶縁油が十分に注入されたら、第4ポンプP4をOFFにする。また、第4ポンプP4をOFFにした後は、第4配管L4を変圧器100から取り外して注入口114を閉じておいてもよい。
【0061】
そして、変圧器100に絶縁油が注入されたら、加熱装置5により、ラジエータ120を加熱して、注入工程で変圧器100に注入された絶縁油を80℃(所定温度)に加熱する(加熱工程)。変圧器100内の絶縁油が80℃になったら、この加熱工程により加熱された変圧器100内の絶縁油を加熱装置5により80℃以上に保ちながら、変圧器100を放置する(S16,放置工程)。
【0062】
この放置工程においては、例えば、変圧器100の中に超音波振動子を入れるなどして、変圧器100に染みこんだPCBが絶縁油に溶出するのを促進してもよい。
【0063】
このように、温めた絶縁油が注入された変圧器100を放置しておくと、変圧器100内のPCBが、PCBに汚染されていない絶縁油に溶け出していき、しばらくすると、飽和状態になるか変圧器100内のPCBが十分に溶け出した状態になる。つまり、変圧器100内の絶縁油のPCB濃度は、放置工程を開始した直後は上昇していき、次第に、PCB濃度が一定になる。
【0064】
そこで、放置工程を開始してから所定時間(例えば、6時間)毎に、変圧器100内の絶縁油を少量取り出し、この絶縁油のPCB濃度を測定して(S17,濃度測定工程)、測定毎にPCB濃度を記録し、PCB濃度の上昇が収束しているかどうかを判断する(S18)。
【0065】
そして、絶縁油のPCB濃度が上昇していっていると判断したときには(S18,No)、ステップS16に戻り、放置工程を続行する。
【0066】
また、ステップS18において、絶縁油のPCB濃度の上昇が収束し、略一定になったと判断したときには(S18,Yes)、放置工程を終了する。次に、放置工程を終了する直前に測定した変圧器100内の絶縁油のPCB濃度が、0.15mg/kg未満であるかどうか判定する(S19)。このときの絶縁油のPCB濃度「0.15mg/kg未満」は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第1条の2第4項」において規定されている廃油がPCBにより汚染されていないと判断される濃度(0.5mg/kg)以下に設定されている。
【0067】
そして、ステップS19において、絶縁油のPCB濃度が0.15mg/kg以上であった場合(S19,No)、ステップS12に戻り、第1抜油工程からやり直す。つまり、放置工程を終了する直前の変圧器100内の絶縁油のPCB濃度が0.15mg/kg未満となるまで、第1抜油工程から放置工程までを繰り返して行う。
【0068】
そして、ステップS19において、絶縁油のPCB濃度が0.15mg/kg未満であった場合(Yes)、第1ポンプP1をONにして、第1バルブV1を開き、変圧器100内の絶縁油を汚染油タンク2に移送する(S20,第2抜油工程)。このとき、第2ポンプP2および第3ポンプP3もONにし、第2バルブV2および第3バルブV3を開き、汚染油タンク2内の絶縁油を浄化して浄化油タンク4に貯留しておく。
【0069】
次に、第1抜油工程から第2抜油工程までを一通り終えた変圧器100がPCB汚染されているかどうかの検定を行う(S21)。具体的に、この検定では、変圧器100を構成している筐体110や、筐体110内に収容されている変圧器本体を構成する部材に対して、「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」(平成4年厚生省公示第192号、第3号)に示されている検定を行い、各部材にどの程度のPCBが付着しているかを測定し、その付着量が、同検定方法に示されている判定基準を満たすかどうかを判定する。
【0070】
そして、この検定において、変圧器100がPCB汚染されていない(判定基準を満たす)場合(S21,OK)、この変圧器100に対する浄化作業を終了する。なお、浄化がされた変圧器100は、一般の廃棄物と同様に解体・焼却処分してもよいし、再利用してもよい。
【0071】
また、ステップS21の検定において、変圧器100がPCB汚染されている(判定基準を満たさない)場合(S21,NG)、ステップS15に戻り、浄化作業を継続する。
【0072】
以上のような浄化システム1を利用した変圧器100の浄化方法を行うことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
加熱工程において、電気ヒータ51(加熱装置5)により高い熱交換機能を有するラジエータ120を加熱することで、変圧器100内の油を加熱するので、変圧器100内の油の加熱効率がよい。また、ラジエータ120から油の熱が外部へ逃げないので、変圧器100内の油の加熱効率がよい。さらに、ラジエータ120に加熱装置5を取り付けるだけで油を加熱することができ、変圧器100を移動させる必要がないので、大型の変圧器であっても、簡単に作業をすることができる。
【0073】
そして、放置工程では、加熱装置5により、高い熱交換機能を有するラジエータ120を加熱して変圧器100内の絶縁油を保温するので、保温の効率が向上する。
【0074】
また、加熱工程中および放置工程中には、ラジエータ120が断熱部材6で被覆されているので、より変圧器100内の油の加熱効率および保温効率が向上する。
【0075】
そして、放置工程中に行われる濃度測定工程において、変圧器100内のPCB濃度が略一定となったときに、放置工程を終了するので、変圧器100内のPCBを絶縁油に十分に溶出させた後、油を抜き取ることができる。
【0076】
また、放置工程を終了する直前の変圧器100内の油のPCB濃度が0.15mg/kg未満となるまで、第1抜油工程から放置工程までを繰り返して行うので、変圧器100内のPCBを十分に除去した状態で浄化作業を終了することができる。
【0077】
そして、第1抜油工程において変圧器100から抜き取った絶縁油は、脱塩素化処理装置3により浄化されてから、PCBに汚染されていない油として、再び変圧器100に注入されるようになっているので、PCBに汚染された絶縁油を再利用して、廃棄する油を減らすことができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0079】
前記実施形態では、電気ヒータ51を油温制御器53によって制御することで、変圧器100内の油の温度を80℃以上に保っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、加熱装置5により変圧器100内の油の温度が80℃以上に加熱された後は、電気ヒータ51をOFFにして放置してもよい。このとき、前記実施形態のように、ラジエータ120を断熱してあれば、変圧器100内の油の温度低下は最小限に抑えられる。
【0080】
そして、前記実施形態では、断熱部材6は、ラジエータ120のみを被覆していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、断熱部材は、変圧器100全体を被覆していてもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、断熱部材6は、浄化システム1で浄化作業をしている間、ラジエータ120を被覆していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、加熱工程および放置工程のときのみ、または、放置工程のときのみ、断熱部材6によってラジエータ120を被覆していてもよい。
【0082】
また、前記実施形態では、第1抜油工程で変圧器100から抜き取った絶縁油を脱塩素化処理装置3によって浄化して、浄化作業(注入工程から第2抜油工程までの間)に利用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、浄化作業に利用するのは、洗浄用に用意した油(例えば、天然油、鉱油または合成油)であってもよい。
【0083】
そして、前記実施形態では、放置工程において、変圧器100に課電していなかったが、本発明はこれに限定されず、少なくとも放置工程中に、変圧器100に課電してもよい。これによれば、変圧器本体が振動するので、変圧器100内に染みこんでいるPCBを効率よく溶出させることができる。また、変圧器100に負荷をかけて課電した場合には、変圧器本体が発熱するので、この熱を利用して、加熱装置5による加熱とあわせて変圧器100内の油を温めることができる。これにより、加熱効率がさらに向上する。