(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動源からの駆動力によって走行して汚泥を搬送するベルトと、前記ベルトの上面に対向配置され、該上面を搬送される汚泥を該上面との間で加圧する加圧ローラとを備え、汚泥を脱水して固液分離する固液分離装置であって、
前記加圧ローラは、前記ベルトによる汚泥の搬送方向と直交する方向を軸中心として回転自由に設けられる回転軸と、該回転軸の外周側に配置され、当該加圧ローラの外周表面を弾性支持する弾性部材とを有し、前記ベルトの上面に汚泥が載置されていない状態で、前記外周表面の少なくとも一部が前記ベルトの上面に接触する位置に設置され、
前記加圧ローラは、前記回転軸の両端部に設けられた硬質部材を有し、該両端部の硬質部材の間に前記弾性部材を設け、
前記硬質部材の外周面に第2弾性部材を設けたことを特徴とする固液分離装置。
駆動源からの駆動力によって走行することで汚泥を搬送するベルトの上面に対向配置され、該上面を搬送される汚泥を該上面との間で加圧することで脱水する加圧ローラであって、
回転軸と、該回転軸の外周側に配置され、当該加圧ローラの外周面を弾性支持する弾性部材とを有し、
前記回転軸の両端部に設けられた硬質部材を有し、該両端部の硬質部材の間に前記弾性部材を設け、前記硬質部材の外周面に第2弾性部材を設けたことを特徴とする加圧ローラ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る加圧ローラを備えた固液分離装置について、この装置を適用した汚泥脱水システムとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
1.汚泥脱水システムの全体構成の説明
図1は、本発明の一実施形態に係る固液分離装置12を備えた汚泥脱水システム10の全体構成を示す側面図であり、
図2は、
図1に示す固液分離装置12の平面図である。
図1に示す汚泥脱水システム10は、上段の固液分離装置(濃縮装置)12で汚泥(例えば、下水汚泥)を重力ろ過して濃縮した後、下段の脱水装置14で加圧脱水することにより脱水ケーキとして排出する汚泥処理設備である。固液分離装置12は、このように脱水装置14と組み合わされたシステム以外にも適用可能であり、固液分離装置12を単独で使用しても勿論よい。
【0014】
汚泥脱水システム10は、無端軌道で走行するろ布ベルト(ろ過体、ベルト)16の上面16aで汚泥を重力ろ過(重力濃縮)するろ過部18を備えた固液分離装置12と、固液分離装置12で固液分離されて濃縮された汚泥を一対のろ布ベルト20,22間で挟持しながら搬送し、加圧脱水する脱水装置14とを備える。固液分離装置12の直前には、当該汚泥脱水システム10の前段設備から搬送された汚泥中に高分子凝集剤(第1の薬剤)F1を混合するための凝集混和槽24が設けられている。高分子凝集剤F1としては、一般に公知のものを用いればよく、例えば、アニオン性高分子凝集剤やカチオン性高分子凝集剤が挙げられる。
【0015】
1.1 固液分離装置の説明
先ず、固液分離装置12について説明する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る固液分離装置12は、凝集混和槽24からろ布ベルト16の上面16aに投入された汚泥を重力ろ過するろ過部18と、ろ過部18で重力ろ過された汚泥を加圧ローラ(脱水用ローラ)26によって加圧脱水して下段の脱水装置14へと排出する加圧部28とを備える。ろ過部18の途中には、ろ布ベルト16による搬送方向と交差(
図2では直交)する方向に汚泥を移動させる移動機構30が設けられている。
【0017】
ろ過部18は、複数のローラ19a,19b,19c,19d,19eに巻き掛けられ、一方向に周回駆動される無端状のろ布ベルト16の上面(外周面)16aで構成され、ローラ19a,19e間に張られたろ布ベルト16の上面16aに汚泥が載置されることで、該汚泥に含まれる水分を重力によってろ過分離する手段である。
【0018】
ろ布ベルト16は、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布ベルト16は、十分な張力で各ローラ19a〜19eに巻き掛けられており、モータ等で構成された駆動源(回転駆動源)17からの駆動力により、
図1中に示す矢印の方向(
図1では反時計方向)に走行可能である。
図1及び
図2において、右側(上流側)から左側(下流側)に向かう方向が固液分離装置12での汚泥の搬送方向となる。例えば、駆動源17は、その回転軸17aと、所定の駆動ローラ(本実施形態ではローラ19a)の回転軸23との間に駆動ベルト17b(例えば、ベルトやチェーン)を巻き掛けることにより、図示しない減速機構等を介してろ布ベルト16を所望の速度で走行させる。
【0019】
従って、ろ過部18の上流位置に凝集混和槽24の出口ポート24aから投入・載置された汚泥は、ろ布ベルト16によって下流側へと搬送されつつ、水分のみが重力によってろ布ベルト16を透過してろ過脱水され、ろ過された水分(分離液、ろ液)は、ろ液受皿32a,32bによって回収される(
図1参照)。
【0020】
ろ過部18を構成するろ布ベルト16の上面16aには、複数本(
図2では、移動機構30の前後に合計12本の構成を例示)の棒体(プラウ)34が立設されている。棒体34は、その配置を適宜設定することにより、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥に当接して分散させ或いは寄せて集め、その水切りを促進するための障害物であり、その設置位置や本数、形状等は、適宜変更可能である。なお、スクリュー40a,40bの上流側に設置されている棒体34については、その一部を一般的な脱水用として用いられるに硬質のローラ(図示せず)に置き換えてもよい。その場合、該ローラとろ布ベルト16の間には若干の隙間を設けるとよく、これにより、該ローラは脱水用としてではなく簡易的な水切り用として用いられる。該ローラは複数あっても構わない。
【0021】
ろ過部18における移動機構30の上流側には、搬送される汚泥に対して鉄系の無機凝集剤(第2の薬剤)F2を添加する第2薬注装置(薬注装置、薬剤添加装置)36が設けられている。第2薬注装置36は、無機凝集剤F2を貯留する薬品タンク36aと、薬品タンク36aの出口から2方弁36bで分岐した第1ライン36c及び第2ライン36dとを備える。無機凝集剤F2としては、一般に公知のものを用いればよく、例えば、鉄系やアルミ系のものが挙げられる。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、第1ライン36aをさらに並列に2本に分岐させ、これら2本の第1ライン36c,36cを移動機構30の上流位置でろ布ベルト16の幅方向に渡って延在させ、ろ布ベルト16の両側部近傍にそれぞれ添加ノズル36eを設けている。勿論、第1ライン36aを分岐させずに1本のままで用いてもよい。
図1中に破線で示すように、第2ライン36dは、凝集混和槽24へと投入される汚泥に無機凝集剤F2を添加可能に配設されており、図示はしないが第1ライン36cの添加ノズル36eと同様な構成でよい。本実施形態の通常の運転状態では、図示しない制御装置の制御下に、2方弁36bは第1ライン36c側に切換制御されている。
【0023】
一方、上記した高分子凝集剤F1は、本実施形態の通常の運転状態では、第1薬注装置(薬剤添加装置)38によって凝集混和槽24に投入される直前の汚泥に添加される。第1薬注装置38は、高分子凝集剤F1を貯留する薬品タンク38aと、薬品タンク38aの出口から2方弁38bで分岐した第1ライン38c及び第2ライン38dとを備える。
【0024】
図1に示すように、第1ライン38cは、凝集混和槽24へと投入される汚泥に対し、第2薬注装置36の第2ライン36dの下流位置で高分子凝集剤F1を添加可能に配設されている。
図2中に破線で示すように、第2ライン38dは、第2薬注装置36の第1ライン36dの上流位置でろ布ベルト16の幅方向に渡って延在し、ろ布ベルト16の両側部近傍にそれぞれ添加ノズル38eが設けられている。本実施形態の通常の運転状態では、図示しない制御装置の制御下に、2方弁38bは第1ライン38c側に切換制御されている。
【0025】
通常の運転時、第1薬注装置38からの高分子凝集剤F1が添加された汚泥が導入される凝集混和槽24は、汚泥が貯留されるタンク24bと、タンク24b内の汚泥をモータ24cを駆動源として攪拌する攪拌羽根24dとを備える。攪拌羽根24dによってタンク24b内で高分子凝集剤F1が十分に混合された汚泥は、出口ポート24aからろ布ベルト16の上面16aに投入される。
【0026】
次に、このようなろ過部18の途中に設けられる移動機構30は、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥を交差方向に移動させつつ、その幅方向寸法を縮小すると同時に汚泥高さを高くすることで圧密し、第2薬注装置36によって添加された無機凝集剤F2を十分に混練する。これにより、固液分離装置12及び脱水装置14での汚泥のろ過効率を向上させ、汚泥濃度を高めることを可能とする。
【0027】
移動機構(スクリューコンベア)30は、ろ布ベルト16の上面16aの上流側全面に向かって開口して汚泥を受け入れ可能となっており、ろ布ベルト16による搬送方向と直交する方向に汚泥を移動させる一対のスクリュー40a,40bと、スクリュー40a,40bの下流側に近接配置され、ろ布ベルト16の幅方向両端側にそれぞれ起立配置された一対の案内板42a,42bとを備える。移動機構30では、案内板42a,42b間の隙間(各スクリュー40a,40b間の隙間と略同一)が、当該移動機構30から下流側へと汚泥を排出するための通路(汚泥通路43)となっている。
【0028】
スクリュー40a,40bは、ろ布ベルト16による汚泥の搬送方向と直交する方向に延びて該ろ布ベルト16を幅方向に渡るスクリュー軸44と、スクリュー軸44の中央付近を除く両側方の外周面にそれぞれらせん状に設けられたスクリュー羽根41a,41bとを有する。
【0029】
スクリュー軸44は、図示しない軸受によって両端部がろ布ベルト16の幅方向外側位置で軸支され、例えば、ろ布ベルト16を巻き掛けたローラ19aに対し、チェーンやベルト等の可撓性動力伝達部材39(
図1中の2点鎖線参照)によって連係されることで、ろ布ベルト16の走行に伴って回転可能である。ろ布ベルト16の走行動作とスクリュー軸44の回転動作とを同期させる構成とすると、可撓性動力伝達部材39を巻き掛ける各軸の径を適宜設計し又は図示しない減速装置等を搭載することにより、ろ布ベルト16による汚泥の搬送速度と、スクリュー軸44の回転速度(つまり、スクリュー40a,40bによる汚泥の移動速度)との関係を容易に設定・制御することができる。勿論、スクリュー軸44を独自に回転駆動するモータ等の駆動源を設けてもよい。
【0030】
各スクリュー40a,40bを構成するスクリュー羽根41a,41bは、ろ布ベルト16の幅方向両側方に寄った位置でスクリュー軸44の外周面にそれぞれ設けられ、互いの先端同士が案内板42a,42b間の隙間と同程度の隙間を介して対向している。各スクリュー羽根41a,41bのらせんの方向は、ろ布ベルト16の中心線で対照形状(逆向き)となっており、各スクリュー40a,40bによる汚泥の移動方向は、それぞれ反対方向に設定されている。このため、各スクリュー40a,40bは、互いにろ布ベルト16の幅方向で外側から内側(中央)に向かって汚泥を移動させ、その先端同士が前記隙間を介して離間した中央部では、両外側から移動された汚泥同士が互いに押し合って圧密され、無機凝集剤F2が汚泥中で十分に混練される(
図3も参照)。各スクリュー40a,40bは、共通のスクリュー軸44を用いた構成ではなく、それぞれ個別のスクリュー軸を用いた構成としてもよい。
【0031】
本実施形態の場合、スクリュー軸44の中央部、つまり各スクリュー40a,40b間で露出したスクリュー軸44の外周面に、ろ布ベルト16の幅方向中央側を搬送されてきた汚泥と、一対のスクリュー40a,40bによって中央に圧密された汚泥とを下流側へと円滑に排出するためのパドル45が複数枚設けられている。パドル45は、例えば、スクリュー軸44の外周面に周方向に沿って数枚一組で設けられた羽根車である。
【0032】
案内板42a,42bは、スクリュー40a,40bの下流側であって該スクリュー40a,40bと近接する位置で起立した壁部46と、壁部46の下端をろ布ベルト16による汚泥の搬送方向で上流側へと湾曲させて突出させることでスクリュー40a,40bの下方略半分を覆う底部47とを有する。各案内板42a,42bの中央側の端部には、ろ布ベルト16による汚泥の搬送方向に沿って下流側へと延びた一対の通路板48a,48bがそれぞれ設けられている。各案内板42a,42b間の隙間は、各スクリュー40a,40bによる汚泥の移動方向で前方側に位置しており、この隙間が下流側へと汚泥を排出するための汚泥通路43を形成している。
【0033】
壁部46は、スクリュー40a,40bの高さと同程度の高さに設定される板状部材であり、その高さは適宜変更可能である。底部47は、
図1に示すように、壁部46の下端から搬送方向で上流側に向かって、スクリュー40a,40bの略中心となる位置まで突出形成される板状部材であり、その長さは適宜変更可能である。案内板42a,42bを構成する壁部46や底部47には、微細な孔部を多数形成したスクリーン等を用いてもよい。
【0034】
各通路板48a,48bは、スクリュー羽根41a,41b間や案内板42a,42b間に形成される隙間と同幅の隙間を挟んで互いに対面するように起立設置されている。通路板48a,48bは、スクリュー40a,40bによってろ布ベルト16の中央付近に圧密された汚泥を、下流側への円滑に排出するための通路を形成する壁部材であり、壁部46と同程度の高さに設定される。なお、実際上、スクリュー40a,40bによって中央に圧密された汚泥は、ろ布ベルト16の走行により、一対の案内板42a,42b(壁部46)間に形成された汚泥通路43から下流側へと搬送されるため、通路板48a,48bは省略することもできるが、通路板48a,48bを設けると、中央に圧密され、高さを増した汚泥を下流側へとより円滑に搬送することができる。
【0035】
次に、加圧部28は、固液分離装置12の下方に配置された脱水装置14の前段脱水部(1次脱水部)を構成するものであり、ろ布ベルト16に対してその外周面が圧接配置される加圧ローラ26を備える。
【0036】
ろ過部18でろ過濃縮されると共に、移動機構30で無機凝集剤F2が十分に混練され、圧密によって厚みを増した汚泥は、加圧部28において加圧ローラ26とろ布ベルト16との間で加圧脱水された後、加圧部28の出口(固液分離装置12の出口)から排出・落下され、次工程の脱水装置14に投入される。加圧部28は、移動機構30で圧密されて中央に集合させられた汚泥を潰し、ろ布ベルト16の幅方向に再び広げた状態で脱水装置14に送り出すことにより、該脱水装置14に投入される汚泥の脱水面積を拡大させ、ここでの脱水効率を向上させる機能も有する。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係る加圧ローラ26の構成図であり、
図4(A)は、一部断面正面図であり、
図4(B)は、側面図である。
【0038】
図2、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、加圧ローラ26は、その軸中心に金属や樹脂等の硬質部材からなる回転軸60を有する。回転軸60は、例えば左右両端部がそれぞれ軸受ブラケット62,62によって軸支され、ろ布ベルト16による汚泥の搬送方向と直交する方向を軸中心として回転自由に設置される。回転軸60の外周面の両端側には、金属や樹脂等を円筒形状に形成した左右一対の硬質部材64,64が設けられ、これら両端側の硬質部材62,62間に、スポンジやゴム等を円筒形状に形成した弾性部材(弾性体)66が設けられている。
【0039】
左右の硬質部材64及び中央の弾性部材66で形成された外周面には、可撓性のシート状部材であるろ布68が巻回されており、このろ布68が加圧ローラ26の外周表面を形成している。ろ布68は、例えば、ろ布ベルト16と同一素材で構成される。ろ布68は、回転軸60の軸方向で両端部の内面が硬質部材64によって強固に支持される一方、その間となる中央部の内面が弾性部材66によって弾性支持されている。この弾性部材66により、加圧ローラ26は、その外周表面が弾性を有する弾性ローラとして構成される。
【0040】
図4(A)に示すように、加圧ローラ26は、ろ布ベルト16の上面16aに汚泥が載置されていない状態で、その外周表面(ろ布68の外面)の少なくとも軸方向一部(
図4では軸方向全部)がろ布ベルト16の上面16aに接触する位置に設置され、ろ布ベルト16の走行によって従動回転する。
【0041】
図1に戻り、加圧部28と、下段の脱水装置14との間には、傾斜板49が配設されている。傾斜板49は、固液分離装置12から排出・落下した汚泥を、脱水装置14の投入位置となるろ布ベルト22上へと円滑に導くためのガイドである。
【0042】
1.2 脱水装置の説明
次に、脱水装置14について説明する。
【0043】
図1に示すように、脱水装置14は、固液分離装置12の出口から傾斜板49を介して投入された汚泥を一対のろ布ベルト20,22間で搬送しながら加圧脱水する脱水部50と、脱水部50で脱水された汚泥をさらに加圧し圧搾する圧搾部52とを備え、一般的なベルトプレス型脱水機と略同様な構成である。
【0044】
下側のろ布ベルト20は、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布ベルト20は、十分な張力で複数のローラ21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h,21i,21j,21k,21l,21m,21n間に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、
図1中に示す矢印の方向(
図1では時計方向)に走行可能である。
【0045】
略同様に、上側のろ布ベルト22についても、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布ベルト22は、十分な張力で複数のローラ21o,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h,21i,21j,21p,21q間に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、
図1中に示す矢印の方向(
図1では反時計方向)に走行可能である。
【0046】
ローラ21b〜21i間での下のろ布ベルト20と上のろ布ベルト22との外周面(表面)同士を上下に蛇行させながら当接(又は近接)配置した部分が、脱水部50を構成しており、この間で汚泥は十分に加圧脱水される。また、ローラ21j,21p間での下のろ布ベルト20と上のろ布ベルト22との外周面(表面)同士を当接(又は近接)配置した部分が、圧搾部52を構成しており、圧搾ローラとなるローラ21j,21p間で汚泥はさらに加圧されて圧搾され、所望の水分率の脱水ケーキとなって外部に排出される。
【0047】
脱水装置14の入口付近には、固液分離装置12の出口からろ布ベルト20上へと落下・投入された汚泥の高さをある程度均一化させ、ろ布ベルト20,22間に形成された脱水部50の入口50aへと円滑に導入するための均し板51が設けられている。均し板51は、固液分離装置12からろ布ベルト20上への汚泥の落下位置のやや下流側上方に配置され、入口50aに向かって次第に下方に傾斜したプレート部材であり、汚泥を下方に押さえつける方向に付勢された板ばね部材で形成してもよい。
【0048】
脱水装置14の出口には、ローラ21jの外周面を走行するろ布ベルト20に近接するように、後端下がりの傾斜姿勢で排出トレイ54が設置されている。脱水ケーキは排出トレイ54上を滑りながら排出される。排出トレイ54の上方には、ローラ21pの外周面を走行するろ布ベルト22に近接するように、後端上がりの傾斜姿勢でスクレバ(掻き取り板)56が設置されている。ローラ21j,21p間から排出トレイ54へと排出されず、上のろ布ベルト22に付着したままの汚泥は、スクレバ56によって掻き取られて排出トレイ54へと排出される。なお、下のろ布ベルト20に付着したままの汚泥は、排出トレイ54によって掻き取られ、そのまま排出トレイ54上を滑り落ちる。
【0049】
このような脱水装置14では、固液分離装置12からろ布ベルト20上に投入された汚泥は、入口50aから脱水部50を構成するろ布ベルト20,22間に引き込まれて挟持・加圧された状態で下流側へと搬送される。この間、水分のみが両ろ布ベルト20,22による加圧力によってろ布ベルト20を透過してろ過脱水され、さらに圧搾部52で圧搾された後、脱水ケーキとして排出トレイ54上に排出される。これら脱水部50及び圧搾部52でろ過された水分は、ろ布ベルト20を透過して落下し、ろ液受皿58によって回収される。
【0050】
図1に示すように、本実施形態に係る汚泥脱水システム10では、従来より一般的に用いられているシステムと異なり、固液分離装置12のろ布ベルト16と脱水装置14のろ布ベルト20,22とを兼用とせず、それぞれを独立した無端軌道で走行させる構成としている。このため、前段の固液分離装置12のろ布ベルト16の走行速度と、後段の脱水装置14のろ布ベルト20,22の走行速度とを異なる速度に容易に制御することができる。この場合、固液分離装置12のろ布ベルト16の走行速度よりも、脱水装置14のろ布ベルト20,22の走行速度を遅く設定制御することが好ましい。すなわち、当該汚泥脱水システム10では、固液分離装置12に移動機構30を搭載しているため、従来の濃縮装置に比べて脱水率が大幅に高まっており、その結果、脱水装置14に投入される汚泥の量(ケーキ量)を大幅に減少させることができ、脱水装置14でのろ布ベルト20,22の走行速度を遅くしても、投入される汚泥全量を十分に脱水処理することが可能となっている。そして、脱水装置14でのろ布ベルト20,22の走行速度を遅くすることにより、その脱水時にろ布ベルト20,22間を通る時間を長くすることができ、脱水装置14をコンパクトな構成としつつも、高い脱水性能を得ることができる。
【0051】
2.汚泥脱水システムの動作及び作用効果の説明
次に、以上のように構成される汚泥脱水システム10の動作及び作用効果について説明する。
【0052】
先ず、当該汚泥脱水システム10で濃縮・脱水する処理対象物である汚泥は、第1薬注装置38の第1ライン38cによって所定の高分子凝集剤F1が添加された状態で凝集混和槽24に導入される。凝集混和槽24のタンク24b内に導入された汚泥は、攪拌羽根24dによって十分に攪拌・混合されてフロック化し、出口ポート24aからろ布ベルト16の上面16aの上流側、つまり固液分離装置12の入口へと投入される。
【0053】
固液分離装置12に投入された汚泥は、走行するろ布ベルト16によってろ過部18を搬送され、途中で棒体34による水切り促進作用を受けながら重力ろ過(重力脱水)される。この間、
図2及び
図3に示すように、ろ布ベルト16の幅方向で両側方を搬送される汚泥に対し、第2薬注装置36の添加ノズル36eから所定の無機凝集剤F2が滴下されつつ、該汚泥は移動機構30に到達する。
【0054】
図3に示すように、移動機構30では、ろ布ベルト16の幅方向で両側方を搬送され、無機凝集剤F2が搬送方向に連続する帯状に添加された汚泥は、各スクリュー40a,40bの回転に巻き込まれると、案内板42a,42bによって案内されつつ、中央部に向かって押し込まれながら移動する。この際、回転するスクリュー羽根41a,41bによって一定間隔で切断されつつ移動される小さな汚泥の各塊には、それぞれ無機凝集剤F2が付着している。
【0055】
無機凝集剤F2を伴いながらスクリュー40a,40bで移動された汚泥は、ろ布ベルト16の中央部(中心部)を搬送されてきた汚泥と混合される。同時に、各スクリュー40a,40bによる押出力によってろ布ベルト16の中央部で汚泥同士が押し潰され合って圧密される。これにより、汚泥は、その幅方向寸法が縮小して高さ(嵩)が増加した状態で、パドル45の回転力も付与されながら汚泥通路43を通って通路板48a,48b間から下流側へと排出され、この間にも、ろ布ベルト16による重力ろ過が継続されて所望の濃縮濃度まで濃縮される。なお、スクリュー40a,40bの前後位置においてもろ布ベルト16が走行しているため、パドル45を省略した構成としても、スクリュー40a,40bによって圧密された汚泥を、案内板42a,42b間の開口部である汚泥通路43から下流側へと円滑に排出することは勿論可能である。
【0056】
このような固液分離装置12による濃縮過程において、例えば、
図1及び
図2に示すように、ろ過部18の入口側にろ布ベルト16の幅方向で幅W1に広がって高さh1で投入された汚泥は、移動機構30から排出される際には、幅W1より狭い幅W2に縮小されるため、その平面視での表面積の低下分だけ高さ方向寸法が増して高さh2となり、十分に圧密された状態となっている。このため、汚泥の濃縮濃度は、一般的な濃縮装置で通常の重力ろ過のみを受けた場合に比べて大幅に高まる。また、移動機構30より下流側では汚泥高さが増しているため、その自重によって重力ろ過の効率が一層向上し、しかも無機凝集剤F2がスクリュー40a,40bによって十分に混練されている。従って、移動機構30までの時点で十分に脱水され濃縮された汚泥であっても、さらに重力ろ過による濃縮を促進することができる。さらに、スクリュー40a,40bで汚泥を中央部へと移動させる際に、案内板42a,42bとスクリュー羽根41a,41bの回転力とによって汚泥が移動しながら圧搾されるため、汚泥の濃縮がさらに高まることになる。この際、スクリュー40a,40bによって圧搾された汚泥の水分は、壁部46から底部47を伝って流れ、ろ布ベルト16によってろ過される。
【0057】
移動機構30によって圧密された汚泥は、その下流側の棒体34によって水切り促進作用を受けつつ、さらに下流側へと搬送されて加圧部28に導入される。加圧部28に導入された汚泥は、加圧ローラ26とろ布ベルト16との間で挟持加圧されることで幅W2から幅W3へと広がり、高さh2より低い高さh3となりながら加圧脱水されて排出・落下し、傾斜板49上を滑って脱水装置14に投入される。移動機構30で一旦圧密された汚泥を再び加圧部28で扁平に広げることにより、後工程である脱水装置14での汚泥の脱水面積を拡大し、その脱水効率を向上させることができる。
【0058】
この場合、加圧ローラ26は、ろ布ベルト16の上面16aに汚泥が載置されていない状態で、その外周表面が長手方向に渡ってろ布ベルト16の上面16aに接触する位置に設置され、ろ布ベルト16の走行によって従動回転可能である(
図4(A)及び
図4(B))。
図5に示すように、この加圧ローラ26とろ布ベルト16との間に移動機構30から排出され、ろ布ベルト16の中央付近に圧密された汚泥Sが巻き込まれると、硬質部材64で支持されたろ布68の両端部がろ布ベルト16に接触した状態のまま、弾性部材66で弾性支持されたろ布68の中央部が汚泥Sによって内側に弾性的に凹みつつ、該汚泥Sを平坦に押し潰して加圧脱水する。
【0059】
加圧部28を経て脱水装置14の入口側に落下・投入された汚泥は、走行するろ布ベルト22で搬送されつつ均し板51で均された後、先ず、入口50aから脱水部50へと導入される。脱水部50において、汚泥は、蛇行する上下一対のろ布ベルト20,22間で挟持・加圧されて効率よく脱水されながら搬送され、次に圧搾部52に導入される。圧搾部52において、汚泥は、一対のろ布ベルト20,22間に挟持されつつ、圧搾ローラとなるローラ21j,21p間で強く加圧されて圧搾されて所望の水分率の脱水ケーキとなり、排出トレイ54からシステム外部へと排出される。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る固液分離装置12は、駆動源17からの駆動力によって走行して汚泥を搬送するろ布ベルト16と、ろ布ベルト16の上面16aに対向配置され、該上面16aを搬送される汚泥を該上面16aとの間で加圧する加圧ローラ26とを備え、汚泥を脱水して固液分離する装置である。ここで、加圧ローラ26は、回転軸60と、該回転軸60の外周側に配置され、当該加圧ローラ26の外周面を弾性支持する弾性部材66とを有し、ろ布ベルト16の上面16aに汚泥が載置されていない状態で、前記外周表面の少なくとも一部がろ布ベルト16の上面に接触する位置に設置される。
【0061】
加圧ローラ26は、汚泥を加圧脱水する際には、弾性部材66が弾性変形して汚泥を受け入れることができるため、その外周表面の少なくとも一部(本実施形態では、両端部の硬質部材64で支持された部位及びその近接部位)のろ布ベルト16への接触状態が維持されることになり、汚泥の有無に関わらず常にろ布ベルト16によって安定して従動回転する(
図4及び
図5参照)。
【0062】
従って、従来技術のように、ろ布ベルト16との間に汚泥を挟み込んだことで加圧ローラ26がろ布ベルト16上で滑って空転することが回避され、当該加圧ローラ26に個別の駆動源を設けない簡素な構成としても、十分な脱水処理を施すことができ、ローラ手前での汚泥の滞留も防止できる。なお、加圧ローラ26のための個別の駆動源を設けた構成としてもよく、この場合にも、加圧ローラ26とろ布ベルト16との間の隙間を常に略一定に維持し、汚泥の濃縮濃度(含水率)を安定させることができる等の効果を得ることができる。
【0063】
さらに、加圧ローラ26は、汚泥を挟み込んだ際の圧力によって外周表面を弾性支持する弾性部材66が弾性変形するため、例えば、汚泥の重み等によってろ布ベルト16が撓んだ場合であっても、加圧ローラ26とろ布ベルト16との間の隙間が常に略一定に保たれ、汚泥の濃縮濃度(含水率)を安定させることができる。しかも、ろ布ベルト16と加圧ローラ26の外周表面を形成するろ布68とは、互いに同一素材で構成されるため、互いを損傷させることを可及的に防止できる。なお、ろ布68を設けず、加圧ローラ26の外周表面を弾性部材66及びその両端の硬質部材64で形成し、実質的に弾性部材66の外周面が直接的に当該加圧ローラ26の外周表面を弾性支持する構造としてもよく、以下で説明する加圧ローラ26a〜26cについても同様である。すなわち、ろ布68がない場合であっても、ろ布ベルト16と加圧ローラ26は同じ速度で回転するので、ろ布ベルト16の上に来る加圧ローラ26は常に固定された状態となり、ろ布ベルト16に対して摩擦等による損傷を与える事はない。
【0064】
図4及び
図5に示すように、加圧ローラ26は、回転軸60の両端部に設けられた硬質部材64を有し、該両端部の硬質部材64の間に弾性部材66を設けた構成となっている。このため、加圧ローラ26とろ布ベルト16との間に巻き込まれた汚泥により、中央部の弾性部材66で支持した外周表面は弾性的に凹む一方、その両脇の硬質部材64で支持した外周表面は安定してろ布ベルト16との接触状態を確実に維持するため、汚泥の挟み込みによる加圧ローラ26の空転等をより確実に防止できる。
【0065】
固液分離装置12では、加圧ローラ26の上流側に、前記ベルトによる汚泥の搬送方向と交差する方向に延び、その回転によって汚泥を前記ベルトによる搬送方向と交差する方向に移動させるスクリュー40a,40bを備える。このため、汚泥をスクリュー40a,40bによって移動させることで圧密し、その濃縮濃度を一層高めることができる。また、スクリュー40a,40bによって中央に集合させられた汚泥を加圧ローラ26を備えた加圧部28で扁平に広げることにより、後工程である脱水装置14での汚泥の脱水面積を拡大し、その脱水効率を向上させることができる。
【0066】
この際、固液分離装置12では、ろ布ベルト16による汚泥の搬送方向でスクリュー40a(40b)の下流側であって該スクリュー40a(40b)と近接する位置に、スクリュー40a(40b)による汚泥の移動を案内する案内板42a,42bを起立させている。従って、案内板42a,42bでせき止めながら汚泥をスクリュー40a,40bによって移動させることができるため、汚泥を一層均一に混練することができ、さらに、汚泥を圧搾することで、その濃縮濃度を一層高めることができる。
【0067】
また、このような固液分離装置12を備える汚泥脱水システム10では、固液分離装置12から排出される汚泥を加圧脱水する脱水装置14を備え、固液分離装置12には、第1の薬剤(例えば、高分子凝集剤F1)が添加された汚泥を重力ろ過するろ過部18と、ろ過部18を搬送される汚泥に第2の薬剤(例えば、無機凝集剤F2)を添加する第2薬注装置36と、第2の薬剤が添加された汚泥をろ布ベルト16による搬送方向と交差する方向に移動させる移動機構30とを設けている。
【0068】
従って、汚泥脱水システム10では、固液分離装置12において、第1の薬剤が添加され、ろ過部18で重力ろ過されることである程度濃縮された汚泥に第2の薬剤を添加した後、移動機構30でろ布ベルト16の搬送方向と交差する方向に汚泥を移動させることにより、この移動時に汚泥を第2の薬剤と十分に混練し、さらに圧密することができ、固液分離装置12での汚泥の濃縮・脱水率を向上させ、濃縮濃度を高めることができる。さらに、第1の薬剤を添加して濃縮した後に、第2の薬剤を添加する第2薬注装置36と、この第2の薬剤を混練する移動装置30と、汚泥を加圧脱水する弾性ローラである加圧ローラ26を備えた加圧部28とを固液分離装置12に設け、その後段に汚泥を加圧脱水する脱水装置14を設けたことにより、高分子凝集剤F1や無機凝集剤F2の使用量を少なくしながらも、コンパクトな構成で汚泥の含水率を大幅に低下させ、汚泥の濃縮濃度をさらに高めることが可能となっている。
【0069】
3.加圧ローラの変形例の説明
3.1 第1変形例に係る加圧ローラの説明
上記した加圧ローラ26は、その両端部に硬質部材64を配置してろ布ベルト16との接触状態をより確実に維持可能な構造としたが、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、硬質部材である回転軸60の外周面に直接的に又は図示しない硬質部材を介在させて、円筒状の弾性部材66を設けた構造の加圧ローラ26aとして構成してもよい。
【0070】
加圧ローラ26aは、
図4に示す加圧ローラ26と同様に、ろ布ベルト16の上面16aに汚泥が載置されていない状態で、その外周表面が長手方向に渡ってろ布ベルト16の上面16aに接触する位置に設置され、ろ布ベルト16の走行によって従動回転可能である(
図6(A)及び
図6(B))。そして、
図7に示すように、加圧ローラ26aとろ布ベルト16との間に汚泥Sが巻き込まれると、汚泥Sから離れた位置にあるろ布68の両端部がろ布ベルト16に接触した状態のまま、弾性部材66で弾性支持されたろ布68の中央部が汚泥Sによって内側に弾性的に凹みつつ、該汚泥Sを平坦に押し潰して加圧脱水する。
【0071】
このように、加圧ローラ26aは、その両端部に硬質部材64を配置せず、簡素な構造でありながらも、加圧ローラ26と略同等な作用を十分に果たすことができる。特に、加圧ローラ26aは、当該固液分離装置12のように、その上流側に移動機構30を設け、導入される汚泥が常にろ布ベルト16の中央に集合する構成の装置に適用すれば、その外周表面の一部をろ布ベルト16に常に安定して接触させておくことができるため、コスト面等の点で
図4に示す加圧ローラ26より有利である。なお、回転軸60の一端部にのみ加圧ローラ26のものと同様な硬質部材64を設けた構成としてもよいことは勿論である。
【0072】
3.2 第2変形例に係る加圧ローラの説明
上記した加圧ローラ26は、
図8に示すように、加圧ローラ26aと組み合わせたような構造からなる加圧ローラ26bとして構成してもよい。
【0073】
加圧ローラ26bは、
図4に示す加圧ローラ26の両端の硬質部材64,64の外径を小さくし、その外周面に円筒状の弾性部材(第2弾性部材)65,65を配置した構成となっている。これにより、加圧ローラ26bでは、その外周表面全体が
図6に示す加圧ローラ26aと同様に弾性部材65,66によって弾性支持される。従って、加圧ローラ26bは、ろ布ベルト16の上面16aに対し、その全面が弾性的に接触するため、
図6に示す加圧ローラ26aと同様、
図4に示す加圧ローラ26と比べて、ろ布ベルト16との接触をより強固なものとすることができる。これら加圧ローラ26,26a,26bの選択は、汚泥の性状や処理量、巻き込み位置等によって適宜選定すればよい。なお、弾性部材65は汚泥を押し潰すための弾性部材66とは異なる性状でも同じ性状でもよく、厚みが異なっても同じでも勿論よい。
【0074】
3.3 第3変形例に係る加圧ローラの説明
上記した加圧ローラ26(26a,26b)は、
図9に示すように、ろ布68で形成した外周表面の長手方向一部(又は全部)に凸部70を設けた加圧ローラ26cとして構成することもできる。
【0075】
図9に示すように、加圧ローラ26cは、加圧ローラ26(26a,26b)と比べて、その外周表面に周方向に並ぶ凸部70を設けた以外は、これら加圧ローラ26(26a,26b)と同様な構成である。凸部70は、例えば、回転軸60の軸方向に延びた短尺な角棒や丸棒からなる棒状部材72を、ろ布68の外面に周方向で等間隔に1周分固着させた構成である。凸部70を設けたことにより、加圧ローラ26cでは、ろ布ベルト16との間に汚泥を巻き込んだ際、回転する凸部70がろ布ベルト16や汚泥に食い込んで引っ掛かるため、その回転(従動回転)が一層確実なものとなり、空転を一層確実に防止できる。凸部70は横方向に複数あってもよく、千鳥状に配置されていてもよい。また、凸部70の形状、大きさ、長等がそれぞれ異なっていてもよい。
【0076】
4.加圧部の変形例の説明
図10は、変形例に係る加圧部28aの構成図であり、
図10(A)は、一部断面正面図であり、
図10(B)は、側面図である。また、
図11は、
図10に示す加圧部28aで汚泥Sを押し潰している状態を示す正面断面図である。
【0077】
上記のように、本実施形態に係る加圧ローラ26(26a〜26c)は、弾性部材66を内装しているため、その外周表面が弾性変形し、汚泥をろ布ベルト16の幅方向で均一に加圧することができる。ところで、加圧ローラ26(26a〜26c)と対向配置されるろ布ベルト16は可撓性部材で構成され、互いに離間して配設されたローラ19a,19e間に張設されている。このため、汚泥の性状や処理量等によっては、
図12に示すように、汚泥Sの自重や加圧ローラ26からの加圧力により、ろ布ベルト16が幅方向や走行方向に撓み、汚泥Sを均一に且つ平坦に押し潰すことができず、押し潰し後の汚泥Sの形状にばらつきを生じ、脱水性にむらを生じる可能性がある。
【0078】
そこで、
図10(A)及び
図10(B)に示すように、上記した加圧部28に代えて、加圧ローラ26(26a〜26c)と対向する位置のろ布ベルト16の下面側を、該ろ布ベルト16の幅方向に沿って延びた支持部材74で支持する構成とした加圧部28aを用いてもよい。
【0079】
支持部材74は、加圧ローラ26をその全幅に渡って受け止め可能な幅寸法(長さ)と、加圧ローラ26とろ布ベルト16との接触部を十分にカバーできる程度の厚さ(板厚)とを有する板状部材であり、その上端面74aでろ布ベルト16の下面を支持することができる。上端面74aの四辺の角部は、ろ布ベルト16の円滑な走行を考慮してR形状に形成してもよい。
【0080】
加圧部28aでは、ろ布ベルト16の下面に、その当て板となる支持部材74を設けたことにより、
図11に示すように、汚泥Sの自重や加圧ローラ26からの加圧力がろ布ベルト16に付与された場合であっても、該ろ布ベルト16が幅方向や走行方向に撓むことを防止でき、汚泥Sを均一に且つ平坦に押し潰すことができる。このため、加圧部28aを用いると、押し潰し後の汚泥Sの形状が安定し、その脱水性にむらを生じることを有効に回避することができる。
【0081】
5.固液分離装置の変形例の説明
5.1 第1変形例に係る固液分離装置の説明
図13は、第1変形例に係る固液分離装置12aの構成を示す側面図であり、
図14は、
図13に示す固液分離装置12aの平面図である。
図13では、汚泥脱水システム10のうち、固液分離装置12aのみを図示し、脱水装置14の図示を省略しており、
図15及び
図17についても同様としている。
【0082】
図13及び
図14に示すように、固液分離装置12aは、
図1及び
図2に示す固液分離装置12と比べて、移動機構30より下流側の構成が異なっている。固液分離装置12aは、移動機構30と加圧部28との間に、ろ布ベルト16の上面16aを搬送される汚泥を加圧して平坦化する1次加圧部80を備える。1次加圧部80は、スクリュー40a,40bによって中央に集合され、汚泥通路43から排出された汚泥を押し潰して平坦に均し、ろ布ベルト16の幅方向へと広げるものである。1次加圧部80は、例えば、上記した加圧部28(28a)と同様な構成とされ、その外周表面に弾性を有する加圧ローラ26(26a〜26c)を備える。
【0083】
固液分離装置12aでは、スクリュー40a,40bで中央に圧密集合されて塊状となった汚泥を、第1加圧ローラとなる1次加圧部80の加圧ローラ26で平板状に均した後、第2加圧ローラとなる加圧部28の加圧ローラ26で加圧脱水してから下段の脱水装置14へと排出する。固液分離装置12aによれば、スクリュー40a,40bで圧密した汚泥を、1次脱水部80及び加圧部28の2段の加圧ローラで押し潰して脱水することで汚泥の濃縮濃度を一層高めることができる。また、1次加圧部80を構成する加圧ローラを弾性ローラである加圧ローラ26(26a〜26c)としたことにより、その駆動源はろ布ベルト16の走行動力を利用することができ、新たな駆動源等を追加する必要がなく、コストを抑えつつ、装置の脱水性能を向上させることができる。
【0084】
図13及び
図14では、1次脱水部80及び加圧部28(28a)に共に弾性ローラである加圧ローラ26(26a〜26c)を用いた構成を例示したが、いずれか一方については、従来一般的に用いられているものと同様、その外周表面が樹脂や金属で硬質(非弾性)に構成され、専用の駆動源等が付設されるローラを用いてもよい。
【0085】
なお、固液分離装置12aについて、
図13では、
図1に示す構成と比べて、ろ布ベルト16を支持するローラ19aの上流側にローラ19fを増設し、このローラ19fより下流側でろ布ベルト16を下方に向けて傾斜させた構成を例示している。ろ布ベルト16を傾斜させたことにより、汚泥を加圧部28へと一層円滑に導入することができ、さらに1次加圧部80から排出された平坦な汚泥を斜面を転がる衝撃で再び嵩上げしてから加圧部28に導入し、加圧部28での脱水性能を向上させることもできる。ローラ19fを設けて加圧部28を一段下げる構成は、
図1に示す固液分離装置12に適用しても勿論よい。
【0086】
5.2 第2変形例に係る固液分離装置の説明
図15は、第2変形例に係る固液分離装置12bの構成を示す側面図であり、
図16は、
図15に示す固液分離装置12bの平面図である。
【0087】
図15及び
図16に示すように、固液分離装置12bは、ろ布ベルト16がローラ19fから下流側に向かって傾斜する部分より上流側であって1次加圧部80の下流側となる位置に棒体34を立設させた以外は、
図13及び
図14に示す固液分離装置12aと同様な構成である。棒体34は、例えば、1次加圧部80を構成する加圧ローラ26(26a〜26c)の幅方向に沿って3個設けられる。
【0088】
固液分離装置12bでは、スクリュー40a,40bで中央に圧密集合されて塊状となった汚泥を、第1加圧ローラとなる1次加圧部80の加圧ローラ26で平板状に均した後、各棒体34で再び寄せて集めることができる。そして、棒体34で寄せて集められた汚泥は、ローラ19fから下方へと傾斜したろ布ベルト16上を滑り落ちながら落下する過程でその向きや塊の形状が変化し、より厚みのある汚泥となって第2加圧ローラとなる加圧部28(28a)の加圧ローラ26(26a〜26c)に導入されて加圧脱水される。このように、スクリュー40a,40bで圧密した汚泥を1次加圧部80及び加圧部28の2段の加圧ローラで押し潰して脱水すると共に、これら2段の加圧ローラの間で一旦平坦化された汚泥を再び寄せ集める棒体34を設けたことにより、汚泥の濃縮濃度をより一層高めることができる。しかも、棒体34の下流側のろ布ベルト16を下方へと傾斜させたことにより、棒体34で集めた汚泥の厚みを傾斜面を落下させながら一層増加させることができ、加圧部28での脱水性能を一層高めることができる。
【0089】
固液分離装置12bにおいても、1次加圧部80及び加圧部28(28a)のうちのいずれか一方の加圧ローラ26(26a〜26c)を、従来一般的に用いられているものと同様に硬質のローラで構成しても勿論よい。
【0090】
5.3 第3変形例に係る固液分離装置の説明
図17は、第3変形例に係る固液分離装置12cの構成を示す側面図であり、
図18は、
図17に示す固液分離装置12cの平面図である。
【0091】
図17及び
図18に示すように、固液分離装置12cは、移動機構30の上流側に前加圧部82を設けた以外は、
図15及び
図16に示す固液分離装置12bと同様な構成である。前加圧部82は、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥を平坦に押し潰して均し、ろ布ベルト16の幅方向に広げてから移動機構30へと導入するものであり、汚泥に無機凝集剤F2を添加する添加ノズル36eより上流側に配設されることが好ましい。前加圧部82は、上記した加圧部28(28a)や1次脱水部80と同様な構成とされ、その外周表面に弾性を有する加圧ローラ26(26a〜26c)を備える。
【0092】
前加圧部82の直前には棒体(第2棒体)34が立設される。棒体34は、例えば、3本設けられ、ろ布ベルト16の幅方向中央に1本設けられた棒体34の下流側に2本が所定間隔を介して配置されることにより、
図18に示す平面視で3本の棒体34が略三角形状に配置される。これにより、前加圧部82に導入される汚泥を円滑に寄せ集めて嵩上げすることができる。
【0093】
固液分離装置12cでは、上記のように、スクリュー40a,40bの上流側に棒体34を起立配置し、該棒体34とスクリュー40a,40bとの間に、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥を加圧して脱水する第3加圧ローラ(前加圧ローラ)となる加圧ローラ26(26a〜26c)を備える前加圧部82を設けている。このため、汚泥を棒体34で集めた後、前加圧部82で平坦化させてからスクリュー40a,40bに導入でき、汚泥の濃縮濃度をより一層高めることができる。すなわち、棒体34で整列されて集められた汚泥は、前加圧部82の加圧ローラ26で平板状に均され、無機凝集剤F2が添加された後、スクリュー40a,40bで混練されつつ中央に圧密集合され、塊状となる。続いて、この塊状の汚泥は、第1加圧ローラとなる1次加圧部80の加圧ローラ26(26a〜26c)で再び平板状に均された後、各棒体34で再び寄せ集められ、ローラ19fから下方へと傾斜したろ布ベルト16上を滑り落ちて、第2加圧ローラとなる加圧部28(28a)の加圧ローラ26(26a〜26c)に導入されて加圧脱水される。
【0094】
固液分離装置12cにおいても、前加圧部82、1次加圧部80及び加圧部28(28a)のうちのいずれか1つの加圧ローラ26(26a〜26c)を、従来一般的に用いられているものと同様に硬質のローラで構成しても勿論よい。
【0095】
5.4 第4変形例に係る固液分離装置の説明
図19は、第4変形例に係る固液分離装置12dの構成を示す側面説明図であり、ローラ19b,19c、ろ液受皿32a,32b、凝集混和槽24、第1薬注装置38及び第2薬注装置36等を省略して図示しており、
図20についても同様である。
【0096】
図19に示すように、固液分離装置12dは、前加圧部82の上流側の棒体34に代えて初期加圧部84を設けた以外は、
図17及び
図18に示す固液分離装置12cと略同様な構成である。なお、固液分離装置12dでは、固液分離装置12c等と比べて、下流側の加圧部28及びローラ19aの配置が多少異なり、加圧部28を構成する加圧ローラ26より下流側にローラ19aを配置している。
【0097】
初期加圧部84は、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥を平坦に押し潰して均し、ろ布ベルト16の幅方向に広げてから前加圧部82へと導入するものであり、上記した加圧部28(28a)、1次脱水部80及び前加圧部82と同様な構成とされ、その外周表面に弾性を有する加圧ローラ26(26a〜26c)を備える。
【0098】
固液分離装置12dでは、前加圧部82の上流側に、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥を加圧して脱水する第4加圧ローラ(初期加圧ローラ)となる加圧ローラ26(26a〜26c)を備える初期加圧部84を設けている。このため、汚泥を初期加圧部84である程度平坦化させた後、前加圧部82でさらに平坦化させてからスクリュー40a,40bに導入できるため、汚泥の濃縮濃度をより一層高めることができる。
【0099】
固液分離装置12dにおいても、初期加圧部84、前加圧部82、1次加圧部80及び加圧部28(28a)のうちのいずれか1つの加圧ローラ26(26a〜26c)を、従来一般的に用いられているものと同様に硬質なローラで構成しても勿論よい。
【0100】
5.5 第5変形例に係る固液分離装置の説明
図20は、第5変形例に係る固液分離装置12eの構成を示す側面説明図である。
【0101】
図20に示すように、固液分離装置12eは、前加圧部82の上流側の初期加圧部84に代えて、前移動機構86を設けた以外は、
図19に示す固液分離装置12dと略同様な構成である。前移動機構86は、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥をその搬送方向と交差する方向に移動させ、中央に圧密してから前加圧部82へと導入するものであり、上記した移動機構30と同様な構成とされ、スクリュー40a,40bを備える。
【0102】
固液分離装置12eでは、前加圧部82の上流側に、ろ布ベルト16上を搬送される汚泥を移動させて圧密するスクリュー40a,40bを備える前移動機構86を設けることにより、スクリュー40a,40bと弾性ローラ(加圧ローラ26)の組み合わせを複数(
図20では2組)設けている。これにより、汚泥を前移動機構86で圧密した後、前加圧部82でさらに平坦化させてからスクリュー40a,40bに導入できるため、汚泥の濃縮濃度をより一層高めることができる。
【0103】
ところで、
図19及び
図20中に矢印を用いた説明図で図示しているように、固液分離装置12d,12eにおいて、ろ布ベルト16の走行方向で上流側では、汚泥の含水率が高いため汚泥量(容積)が多く、下流側に向かって次第に汚泥量が少なくなり、他の固液分離装置12,12a〜12cでも同様である。
【0104】
そこで、このような搬送方向での汚泥量の変化を考慮して、
図13〜
図20に示す固液分離装置12a〜12eのように、弾性ローラとなる加圧ローラ26(26a〜26c)をろ布ベルト16の走行方向で複数並べた構成の場合、各加圧ローラ26毎に外周表面の弾性(弾性部材66の弾性率又はローラ外面全体としての弾性率)を変えてもよく、例えば、上流側より下流側のものの弾性率を大きくし、その弾性を硬くするとよい。汚泥量が多い上流側の加圧ローラ26、例えば、
図19に示す固液分離装置12dにおける初期加圧部84の加圧ローラ26では、弾性率を小さくし弾性を柔らかくすることにより、その外周表面を十分に弾性変形させながら汚泥を受け入れ、確実に潰すことができる。一方、汚泥量が少ない下流側の加圧ローラ26、例えば
図19に示す固液分離装置12dにおける加圧部28の加圧ローラ26では、弾性率を大きくし弾性を硬くすることにより、少ない量の汚泥であっても十分な加圧力を持って潰すことができる。
【0105】
略同様に、
図13〜
図20に示す固液分離装置12a〜12eのように、弾性ローラとなる加圧ローラ26(26a〜26c)を複数並べた構成の場合、各加圧ローラ26毎にローラ径(外径)を変えてもよく、例えば、上流側より下流側のもののローラ径を小さくするとよい。汚泥量が多くて潰すために大きな加圧力が必要な上流側の加圧ローラ26、例えば、
図19に示す固液分離装置12dにおける初期加圧部84の加圧ローラ26では、外径を大きくすることにより、大きなトルクによる十分な加圧力を持って汚泥を潰すことができる。一方、汚泥量が少なくなり潰すための加圧力が小さくてよい下流側の加圧ローラ26、例えば
図19に示す固液分離装置12dにおける加圧部28の加圧ローラ26では、外径を小さくすることにより、ろ布ベルト16による従動回転時に該ろ布ベルト16の駆動源17に与える負荷を小さくしつつ、汚泥を十分に潰すことができ、駆動源17を小型化することができる。
【0106】
さらに、
図13〜
図20に示す固液分離装置12a〜12eのように、弾性ローラとなる加圧ローラ26(26a〜26c)を複数並べた構成の場合、各加圧ローラ26毎に加圧ローラ26とろ布ベルト16との間の隙間を変えてもよく、例えば、上流側より下流側のものの隙間を小さくするとよい。すなわち、汚泥量が多い上流側の加圧ローラ26、例えば、
図19に示す固液分離装置12dにおける初期加圧部84の加圧ローラ26では、ろ布ベルト16の上面16aとの間の隙間を大きくすることにより、多い量の汚泥であっても確実に受け入れて潰すことができる。一方、汚泥量が少ない下流側の加圧ローラ26、例えば
図19に示す固液分離装置12dにおける加圧部28の加圧ローラ26では、ろ布ベルト16の上面16aとの間の隙間を小さくすることにより、少ない量の汚泥であっても十分な加圧力を持って潰すことができる。
【0107】
このような各弾性ローラでの弾性、ローラ径及び隙間の設定は、それぞれを組み合わせても用いてもよく、例えば、上流側より下流側の加圧ローラ26(26a〜26c)の弾性を硬くし、ローラ径を小さくし且つ隙間を小さくした構成としてもよい。
【0108】
また、
図13〜
図20に示す固液分離装置12a〜12eのように、弾性ローラである加圧ローラ26(26a〜26c)と、汚泥の混合装置となる移動機構30(スクリュー40a,40b及び案内板42a,42b)と、棒体34とを交互に並べた構成とし、この構成で、上流側の加圧ローラ26より下流側の加圧ローラ26の弾性を硬くし、ローラ径を小さくし且つ隙間を小さくした構成とすると、汚泥の濃縮濃度を一層効率よく高めることができる。
【0109】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0110】
例えば、
図2では、移動機構30を構成するスクリュー40a,40b及び案内板42a,42bをろ布ベルト16による汚泥の搬送方向に直交する方向に設置した構成を例示したが、これらスクリュー40a,40b及び案内板42a,42bは汚泥の搬送方向に対して傾斜させた姿勢としてもよい。また、移動機構30は、ろ布ベルト16の幅方向に渡った1本のスクリューによって構成しても勿論よい。