(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においては、例えば、下記特許文献1に記載されているように、車体の床台に駆動源としてのエンジンが吊り下げられていて、エンジンの駆動力が推進軸を介して台車の車輪に伝達されるものがある。この鉄道車両の推進軸では、
図5に示すように、一端部140aがエンジン側の部材(変速機111)に自在継手141を介して連結されていて、他端部140bが台車側の部材(減速機133)に自在継手142を介して連結されている。
【0003】
ここで、推進軸140の両端部140a,140bの連結では、ボルト締結や溶接が用いられている。このため、仮に推進軸140の一端部140aでボルト締結が緩み脱落したり、溶接部分が切れた場合には、
図5の仮想線で示したように、推進軸140の他端部140b側の自在継手142を基点として、推進軸140の一端部140aが落下することになる。この場合、もし落下した推進軸140の一端部140aが地面に接地すると、推進軸140の他端部140bは連結されたままであるため、推進軸140が棒高跳びのように跳ね上がる。この結果、推進軸140が車体120の床台122を突き上げて、非常に危険な状態になるおそれがあった。
【0004】
従って、従来から、
図5に示すように、推進軸140の一方の端部140a,140bが落下した場合に備え、推進軸140が地面に接地することを防止する落下防止枠150(落下防止装置)が設けられていた。この落下防止枠150は、
図6に示すように、推進軸140が延びる方向(レール方向)から見て、コ字状に形成された枠体である。
【0005】
そして、落下防止枠150は、上端が車体120の床台122に取付けられていて、推進軸140の中間部140cに対して下辺部150Aと左辺部150Bと右辺部150Cとで囲むようになっている。これにより、万一推進軸140の一方の端部140a,140bが落下しても、推進軸140の中間部140cが落下防止枠150の下辺部150Aに当接して受け止められ、推進軸140が地面に接地することを防止できるようになっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の鉄道車両においては、以下の問題点があった。即ち、鉄道車両が高速走行しているときに、推進軸140の一方の端部が落下すると、連結されたままの推進軸140の他方の端部は、慣性又は駆動力の伝達によって、しばらくの間回転し続ける。このため、落下した推進軸140は、落下防止枠150の下辺部150Aに衝突した後に、落下防止枠150の左辺部150B又は右辺部150Cにも衝突して、跳ね回る。跳ね回る推進軸140が落下防止枠150に衝突する際の衝撃力は非常に大きい。
【0008】
こうして、推進軸140が落下した後に、落下防止枠150が跳ね回る推進軸140によって変形又は破損する可能性を完全には否定できるものではなかった。また、推進軸140より上方には、落下防止枠150が配置されていないため、跳ね回る推進軸140が車体120の床台122に衝突して、推進軸140が車体120の床台122を突き破る可能性も完全には否定できるものではなかった。こうして、従来では、落下防止枠150が推進軸140の地面に対する接地を防止することを主目的として構成されていたため、推進軸140の一方の端部が落下した後の状況においても十分対応できる落下防止装置が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、万一推進軸の一方の端部が落下しても、推進軸が落下防止装置を破損すること及び車体の床台に衝突することを防止できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鉄道車両は、車体を支持していて走行可能な台車と、前記台車を走行させるための駆動力を発生する駆動源と、前記台車側の部材と前記駆動源側の部材とに両端部が連結されて駆動力を伝達する推進軸と、車体の下側に取付けられていて前記推進軸が地面に接地することを防止する落下防止装置とを備えたものであって、前記落下防止装置は、前記推進軸が延びる方向から見たとき、前記推進軸に対して上下左右に隙間を形成して前記推進軸を囲む環状部を有すること
、前記環状部は、環状の環状枠と、この環状枠の内側に取付けられていて変形により衝撃力を吸収可能な緩衝材とを有すること、前記緩衝材の内側には、前記緩衝材より摩擦係数が低い摺動材が取付けられていること、を特徴とする。
【0011】
この場合には、落下防止装置の環状部と推進軸との間の隙間は、鉄道車両の走行時に環状部と推進軸が当接しない範囲で、できるだけ小さくなるように設定される。このため、鉄道車両の高速走行中に、万一推進軸の一方の端部が落下して、推進軸が環状部の中で衝突しながら跳ね回っても、衝突から次の衝突までの間の推進軸の移動距離が小さくなる。即ち、衝突から次の衝突までの間に推進軸が溜め込む運動エネルギーが小さくなる。
【0012】
この結果、跳ね回る推進軸と環状部との衝撃力を小さくすることができ、落下防止装置の破損を防止できる。また、環状部は推進軸に対して上方も含めた四方で囲っているため、跳ね回る推進軸が車体の床台に衝突することを防止できる。
【0013】
この場合には、推進軸が環状部に衝突する際に、緩衝材が変形することによって衝撃力を吸収する。このため、環状部をより破損し難くすることができる。
【0014】
この場合には、回転し続ける推進軸が摺動材に対して滑りながら衝突する。このため、推進軸が緩衝材に直接衝突する場合に比べて、推進軸に作用する摩擦力を低減できて、推進軸の跳ね回りを抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記推進軸は、レール方向に延びていて、前記環状部は、前記推進軸が延びる方向から見たとき、左右方向の長さが上下方向の長さより長いものであることが好ましい。
この場合には、仮に環状部の左右方向の長さと環状部の上下方向の長さとを同じに設定すると、鉄道車両の走行時に推進軸は環状部に対して左右方向に大きく移動するため、推進軸と環状部とが当接しないという条件の下では、環状部の上下方向の長さが不必要に長くなる。従って、環状部の左右方向の長さを環状部の上下方向の長さより長くすることで、推進軸と環状部との当接を防止しつつ、環状部自体の大きさを小さくすることができて、環状部を軽量に構成することができる。
【0016】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記環状部は、長方形に形成されていて、四隅の内側に湾曲した曲面部分を有することが好ましい。
この場合には、環状部を板曲げ加工によって製造し易い。また、推進軸と環状部の四隅の内側とが衝突した際に、曲面部分によって衝撃力を緩和できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鉄道車両によれば、万一推進軸の一方の端部が落下しても、推進軸が落下防止装置を破損すること及び車体の床台に衝突することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態の鉄道車両1を模式的に示した図である。また、
図2は、
図1に示したA部分を拡大した図である。
【0020】
鉄道車両1は、ディーゼルエンジン10の回転出力を駆動力として走行する動車である。この鉄道車両1は、
図1に示すように、主に、ディーゼルエンジン10と、車体20と、2台の台車30,30と、推進軸40とを備えている。
【0021】
ディーゼルエンジン10は、台車30を走行させるための駆動力を発生するものである。このディーゼルエンジン10は、
図1及び
図2に示すように、車体20に吊り下げられていて、回転出力を液体変速機11で変速できるようになっている。このディーゼルエンジン10が本発明の「駆動源」に相当する。なお、「駆動源」は、ディーゼルエンジン10に限定されるものではなく、適宜変更可能であり、例えば電動モータであっても良い。
【0022】
液体変速機11には、
図2に示すように、自在継手41を介して推進軸40の一端部40aが連結されている。この液体変速機11が、本発明の「駆動源側の部材」に相当する。なお、「駆動源側の部材」は、駆動源と推進軸40の一端部40aとの間の部材であれば良く、液体変速機11に限定されるものではない。
【0023】
車体20は、
図1に示すように、レール方向に長く延びていて、2台の台車30によって空気バネ21を介して支持されている。このため、車体20と台車30とは、空気バネ21の伸縮によって上下方向に変位する。また、車体20と台車30とは、鉄道車両1がカーブするときに、枕木方向に大きく変位する。
【0024】
台車30は、鉄道車両1を走行させるためのものであり、
図1に示すように、前後左右に合計4つの車輪31と、各車輪31を組付けている台車枠32とを有している。そして、一方側(
図1の左側)の台車30には、減速した出力を各車輪31に伝達する減速機33(
図2参照)が設けられている。
【0025】
減速機33には、
図2に示すように、自在継手42を介して推進軸40の他端部40bが連結されている。この減速機33が、本発明の「台車側の部材」に相当する。なお、「台車側の部材」は、台車30と推進軸40の他端部40bとの間の部材であれば良く、減速機33に限定されるものではない。
【0026】
推進軸40は、回転することでディーゼルエンジン10が発生した駆動力を伝達するものである。この推進軸40は、
図2に示すように、レール方向に延びていて、車体20の床台22より下側に配置されている。また、推進軸40は、軽量化を図るために、中空状の鋼管である(
図3参照)。
【0027】
推進軸40の一端部40a及び他端部40bは、ボルト締結や溶接によって自在継手41,42に連結されていて、揺動可能になっている。こうして、ディーゼルエンジン10が発生した駆動力は、液体変速機11と推進軸と40と減速機33を介して、台車30の各車輪31に伝達されて、鉄道車両1が走行する。
【0028】
この鉄道車両1には、推進軸40が地面に接地することを防止する落下防止装置50が設けられていて、本実施形態では、落下防止装置50の構成に特徴がある。以下、落下防止装置50の構成について、詳細に説明する。
図3は、
図2に示したB−B線に沿った断面図である。
【0029】
落下防止装置50は、
図2及び
図3に示すように、車体20の床台22より下側に設けられていて、推進軸40の中間部40cに対応して配置されている。本実施形態では、落下防止装置50が1つ設けられているが、落下防止装置の50の個数は適宜変更可能であり、2つ又は3つであっても良い。この落下防止装置50は、
図3に示すように、取付部60と環状部70とを有している。
【0030】
取付部60は、鉛直方向に延びている鋼製の枠であり、上端が車体20の床台22に取付けられている。環状部70は、推進軸40が延びる方向から見たとき(
図3に示すように)、推進軸40の中間部40cに対して上下左右に隙間X1,Y1を形成して推進軸40の中間部40cを囲んでいる。そして、環状部70は、鉄道車両1の走行時に、推進軸40の中間部40cに当接しないようになっている。この環状部70は、環状枠71と、緩衝ゴム72と、ステンレス板73とを有している。
【0031】
環状枠71は、
図3に示すように、長方形で環状に形成されている。また、環状枠71は、取付部60の下端に支持されるように取付けられている。この環状枠71は、万一推進軸40が落下したときに推進軸40の中間部40cを受け止める際の自重に耐えることができるように、鋼で構成されている。
【0032】
なお、本実施形態では、環状枠71は、1部材で構成されているが、例えば、上方が空いているコ字状の枠体(従来の落下防止枠150(
図6参照)に対して、左辺部150Bと右辺部150Cとの間で水平方向に延びる不図示の棒体(ストッパ)を取付けることによって環状枠を構成しても良い。
【0033】
緩衝ゴム72は、弾性変形によって衝撃力を吸収可能なものである。この緩衝ゴム72は、
図3に示すように、長方形で環状に形成されていて、環状枠71の内側に取付けられている。この緩衝ゴム72が、本発明の「緩衝材」に相当する。なお、本実施形態では、緩衝ゴム72が環状であるが、形状は適宜変更可能であり、環状枠71の内側に部分的に取付けられていても良い。
【0034】
ステンレス板73は、推進軸40と接触したときに、推進軸40を滑らせるものである。このため、ステンレス板73の摩擦係数は、環状枠71の摩擦係数及び緩衝ゴム72の摩擦係数より低くなっている。このステンレス板73は、環状枠71及び緩衝ゴム72より薄いシート状のものである。また、ステンレス板73は、
図3に示すように、長方形で環状に形成されていて、緩衝ゴム72の内側、即ち環状部70の最も内側に取付けられている。このステンレス板73が、本発明の「摺動材」に相当する。なお、本実施形態では、ステンレス板73が環状であるが、形状は適宜変更可能であり、緩衝ゴム72の内側に部分的に取付けられていても良い。
【0035】
ところで、上述したように、推進軸40の両端部40a,40bの連結では、ボルト締結や溶接が用いられている。このため、仮に推進軸40の一端部40aでボルト締結が緩み脱落したり、溶接部分が切れた場合には、推進軸40の他端部40b側の自在継手42を基点として、推進軸40の一端部40aが落下することになる(
図5参照)。このとき、落下防止装置50の環状部70が、落下する推進軸40の中間部40cを受け止めて、推進軸40が地面に接地することを防止できる。
【0036】
ここで、鉄道車両1が高速走行しているときに、推進軸40の一端部40aが落下する場合について説明する。この場合には、台車30の各車輪31は緊急停止まで少なくとも600m進むため、推進軸40は慣性によってしばらくの間回転し続ける。このため、落下した推進軸40は、環状部70の下辺部70Aに衝突した後に、環状部70の左辺部70B、右辺部70C、上辺部70Dにも衝突して跳ね回る。
【0037】
この結果、跳ね回る推進軸40によって、落下防止装置50が破損するのではないかという問題がある。なお、推進軸40の他端部40bが落下した場合であっても、推進軸40は慣性及びディーゼルエンジン10からの駆動力の伝達によってしばらくの間回転し続けるため、同様の問題がある。
【0038】
この問題に対して、本実施形態の落下防止装置50は、以下のように対処している。即ち、環状部70と推進軸40との間の左右方向の隙間X1、及び上下方向の隙間Y1は、鉄道車両1の走行時に環状部70と推進軸40とが当接しない範囲で、できるだけ小さくなるように設定されている。言い換えると、上述した隙間X1,Y1は、従来の落下防止枠150と推進軸140との間の左右方向の隙間x1、上下方向の隙間y1、及び落下防止枠150と車体120の床台122との間の隙間y2より、小さくなるように設定されている(
図6参照)。
【0039】
具体的には、車体20と台車30の左右方向(旋回方向)の相対変位をXaとし、落下防止装置50及び推進軸40を取付ける際の左右方向の取付公差をXbとすると、上述した隙間X1は相対変位Xaと取付公差Xbとの和(X1=Xa+Xb)で設定される。ここで、取付公差Xbは、仮に落下防止装置50の各部材の左右方向の製作公差、及び推進軸40の左右方向の製作公差を積み上げると、その製作公差の合計値が大きくなるため、落下防止装置50の各部材及び推進軸40を取付けるときに調整して、左右方向の製作公差の影響を排除するために考慮される値である。
【0040】
同様に、車体20と台車30の上下方向の相対変位をYaとし、落下防止装置50及び推進軸40を取付ける際の上下方向の取付公差をYbとすると、上述した隙間Y1は相対変位Yaと取付公差Ybとの和(Y1=Ya+Yb)で設定される。そして、取付公差Ybは、仮に落下防止装置50の各部材の上下方向の製作公差、及び推進軸40の上下方向の製作公差を積み上げると、その製作公差の合計値が大きくなるため、落下防止装置50の各部材及び推進軸40を取付けるときに調整して、上下方向の製作公差の影響を排除するために考慮される値である。
【0041】
こうして、本実施形態では、上述した隙間X1,Yができるだけ小さく設定されているため、万一推進軸40の一端部40aが落下して、推進軸40が環状部70の中で衝突しながら跳ね回っても、衝突から次の衝突までの間の推進軸40の移動距離が小さくなる。即ち、衝突から次の衝突までの間に推進軸40が溜め込む運動エネルギーが小さくなる。この結果、跳ね回る推進軸40と環状部70との衝撃力を小さくすることができ、落下防止装置50の破損を防止できる。
【0042】
上述したことから明らかなように、本実施形態の落下防止装置50では、推進軸40が地面に接地することを防止するという技術的思想だけでなく、環状部70の中で跳ね回る推進軸40の衝突から衝突までの移動距離を小さくして、衝撃力を小さくするという技術的思想がある。一方、従来の落下防止枠150は、推進軸140の地面に対する接地を防止することを主目的として構成されていて、推進軸140が跳ね回る際に自由に動く範囲を最小に限定するように構成されたものではない。
【0043】
また、仮に、従来の落下防止枠150自体の強度を大きくすることで、落下防止枠150の破損を防止することが考えられる。しかし、この場合には、落下防止枠150が、大きく且つ非常に重いものになる。更に、推進軸140が落下防止枠150に衝突した際に、衝撃力が大きくなって、推進軸140の方が破損するおそれがある。これに対して、本実施形態の落下防止装置50(環状部70)では、推進軸40の通常の可動範囲に対して、できるだけ隙間X1,Y1を小さくすることで、落下防止装置50自体のコンパクト化及び軽量化を図りつつ、跳ね回る推進軸40の衝撃力を小さくするという考えに基づいている。
【0044】
次に、環状部70の形状について説明する。先ず、鉄道車両1は、走行中にカーブで枕木方向に大きく移動するため、推進軸40は、環状部70に対して上下方向に比べて左右方向(枕木方向)に大きく移動する。そこで、本実施形態では、鉄道車両1の走行時に環状部70と推進軸40とが当接しない範囲で、環状部70をできるだけ小さく構成するために、環状部70の左右方向の長さが環状部70の上下方向の長さより長くなっている。
【0045】
即ち、仮に環状部の左右方向の長さと環状部の上下方向の長さとが同じである場合(例えば環状部が円形である場合)、推進軸と環状部とが当接しないという条件の下では、環状部の上下方向の長さが不必要に長くなる。従って、本実施形態のように、環状部70の左右方向の長さを環状部70の上下方向の長さより長くすることで、推進軸40と環状部70との当接を防止しつつ、環状部70自体の大きさを小さくすることができ、環状部70を軽量に構成することができる。
【0046】
また、環状部70は、長方形に形成されているため、環状部70を板曲げ加工によって製造し易い。更に、環状部70は、四隅の内側に湾曲した曲面部分70Rを有しているため、推進軸40と環状部70の四隅の内側とが衝突した際に、衝撃力を緩和できる。
【0047】
本実施形態の鉄道車両1の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、
図3に示すように、環状部70が推進軸40の四方を囲んでいて、環状部70と推進軸40との間の隙間X1,Y1は、鉄道車両1の走行時に環状部70と推進軸40とが当接しない範囲で、できるだけ小さくなるように設定されている。このため、鉄道車両1の高速走行中に、万一推進軸40の一方の端部40a,40bが落下して、推進軸40が環状部70の中で衝突しながら跳ね回っても、衝突から次の衝突までの間の推進軸40の移動距離が小さくなる。この結果、跳ね回る推進軸40と環状部70との衝撃力を小さくすることができ、落下防止装置50の破損を防止できる。また、環状部70は推進軸40に対して上方も含めた四方で囲っているため、跳ね回る推進軸40が車体20の床台22に衝突することを防止できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、
図3に示すように、環状枠71の内側に緩衝ゴム72が取付けられている。このため、推進軸40が環状部70に衝突する際に、緩衝ゴム72が弾性変形する。これにより、推進軸40の力積(F×Δt)のうち、変形時間(Δt)が大きくなるため、衝撃力(F)が小さくなる。従って、環状部70をより破損し難くすることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、
図3に示すように、緩衝ゴム72の内側にステンレス板73が取付けられている。これにより、回転し続ける推進軸40がステンレス板73に対して滑りながら衝突する。このため、推進軸40が緩衝ゴム72に直接衝突する場合に比べて、推進軸40に作用する摩擦力を低減できて、推進軸40の跳ね回りを抑制することができる。即ち、推進軸40に作用する摩擦力が大きいと推進軸40の跳ね回りを助長するおそれがあるが、本実施形態では、その摩擦力を低減することで、推進軸40の跳ね回りを抑制できる。
【0050】
以上、本発明に係る鉄道車両の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
本実施形態では、
図3に示すように、環状部70が長方形に形成されているが、環状部の形状は長方形に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、
図4(A)に示すように、左右方向の寸法が上下方向の寸法より長い長円形の環状部170であっても良く、
図4(B)に示すように、左右方向の寸法が上下方向の寸法より長い楕円形の環状部270であっても良い。なお、
図4(A)(B)の環状部170,270のその他の構成は、本実施形態の環状部70の構成と同様であるため、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
また、本実施形態において、摺動材としてステンレス板73を用いたが、摺動材の構成は適宜変更可能である。例えば、摺動材としてテフロン(登録商標)、ナイロン、ニトリルゴム、シリコーンゴム等で構成された摩擦係数が低いシートを用いても良い。
【0052】
また、本実施形態において、緩衝材として弾性変形により衝撃を吸収可能な緩衝ゴム72を用いたが、緩衝材の構成は適宜変更可能である。例えば、緩衝材として塑性変形により衝撃を吸収可能なアルミニウムハニカム材、又は衝撃吸収ゲル等を用いても良い。