(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一対の磁界形成部は、前記磁性素子の長さ方向一端側および他端側と前記円周とが重なった場合における交点である重合点のそれぞれに臨むように配置され、
前記各磁界形成部の前記円周の接線方向の寸法は、前記磁界検出部の長さ方向一端側の前記重合点と前記磁界形成部の前記円周の接線方向の中央部とが一致した場合において前記磁界形成部の前記中央部から前記第1の磁性部材の周方向一端部と同一位置までの距離の2倍となる長さ以上であり、前記第1の支持体の全周の1/2の円弧における弦の長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
前記各磁界形成部は、その径方向の寸法が前記円周の接線方向の中央部よりも両端部で小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転検出装置。
前記各磁界形成部は、その前記第2の支持体との離間距離が前記円周の接線方向の中央部よりも両端部で大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回転検出装置。
前記各磁界形成部は、ボンド磁石であり、前記円周の接線方向の中央部よりも両端部において磁力が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の回転検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の回転検出装置では、コギングトルクの低減に関しては考慮されていなかった。ここで、コギングトルクとは、磁性材料(ここでは歯車の歯部)と永久磁石との間に作用する力であり、磁性材料と永久磁石との相対位置(回転角)に対する磁気吸引力の変化によって生ずるトルク脈動(変動)である。なお、以降の説明では、コギングトルクによって生じる被検出物の回転速度変動等の現象をコギングと呼ぶこととする。
【0007】
具体的には、歯車の回転により、ある歯部が1つの永久磁石に接近してくると、この永久磁石の磁束の一部がこの歯部に向かい、さらに回転が進むと、この歯部はこの永久磁石に対面する位置まで回動する。その位置で歯部と永久磁石との間の磁気抵抗は最小となっており、歯部(歯車)はその位置に静止しようとする。その位置から歯部(歯車)を回転させるためには、磁気吸引力に打ち勝つだけのトルクが必要となる(コギングトルクの発生)。
【0008】
このコギングトルクの発生によって歯車の回転速度に変動が生じ(コギングの発生)、歯車の回転軸を伝わり振動や騒音の原因になると共に、静止トルクのように作用して歯車の始動トルクを増大させるという問題があった。このため、回転検出装置による被検出物の回転検出精度が悪化するという問題があった。
【0009】
本発明は上記した問題に鑑みなされたものであり、コギングを抑制することにより被検出物の回転を精度良く検出することができる回転検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の回転検出装置は、軸線の周囲に前記軸線方向に互いに離間して設けられ、いずれか一方が前記軸線を回転軸として回転する第1の支持体および第2の支持体と、前記第1の支持体に固定され、前記第2の支持体に臨み、前記軸線の周囲に周方向にそれぞれ離間して配置され、極性が互いに異なり、前記第1の支持体と前記第2の支持体との間の領域に磁界を形成する少なくとも一対の磁界形成部と、長さ方向において磁化の方向が変化する棒状、ワイヤ状または長板状の磁性素子にコイルを巻回することにより形成され、前記第2の支持体に固定され、前記第1の支持体に臨み、前記軸線上の点を中心とし前記少なくとも一対の磁界形成部のそれぞれと重なり合う円周の接線と前記磁性素子の長さ方向とが平行となるように配置され、前記磁界形成部により形成された磁界を検出する少なくとも1つの磁界検出部と、磁性材料により形成され、前記第2の支持体に固定され、前記磁界検出部の長さ方向一端部において前記第1の支持体に臨む部分を覆う第1の磁性部材と、磁性材料により形成され、前記第2の支持体に固定され、前記磁界検出部の長さ方向他端部において前記第1の支持体に臨む部分を覆う第2の磁性部材と、を備え、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材とは、前記磁界検出部の長さ方向中間部に向けて互いに接近する方向に伸長し、前記磁界検出部の長さ方向中間部において間隙を介して互いに対向しており、前記各磁界形成部の前記円周の接線方向の寸法は、前記各磁界形成部の径方向の寸法よりも大きく、且つ、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材との間隙の距離よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の回転検出装置において、例えば、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方の回転(以下、単に「支持体の回転」という。)により、1つの磁界形成部の全体が、第1の磁性部材に対面している場合、当該磁界形成部により形成される磁束の略全ては、対面する第1の磁性部材に向かっている。これは磁気的に安定した状態であり、支持体の回転にかかるトルクは一定となっている。
【0012】
ここで、磁界検出部の一端部から他端部に向かう方向に支持体の回転が進み、当該磁界形成部の他端部が、第1の磁性部材と第2の磁性部材との間隙に臨み始めると、当該磁界形成部により形成される磁束のうち、その他端部の磁束は、支持体の回転方向とは逆方向に位置する第1の磁性部材に向かうこととなる。この他端部の磁束は、通常、支持体の回転方向とは逆方向に戻ろうとする力(コギングトルク)として作用する。ところが、本発明の第1の回転検出装置において、各磁界形成部は、その円周の接線方向に長く形成されているため、相対的に見て、当該磁界形成部においてコギングトルクを発生させる部分(他端部)は非常に小さく、当該磁界形成部の大部分が第1の磁性部材に対面した状態となっている。すなわち、磁界形成部による磁束密度分布が周方向に均一化された状態となっている。これにより、磁気的に安定した状態を維持することができるため、相対的にコギングトルクを低減することができる。
【0013】
また、本発明の第1の回転検出装置において、各磁界形成部は、2つの磁性部材の間隙よりも長く形成されているため、支持体の回転が更に進むと、当該磁界形成部は、第1の磁性部材と第2の磁性部材との間隙を跨ぐように臨むこととなる。この状態で、当該磁界形成部により形成される磁束は、第1の磁性部材および第2の磁性部材に略均等に分散しているため、支持体の回転にかかるトルクを一定にすることができる。
【0014】
さらに、支持体の回転が進み、2つの磁性部材の間隙に臨む当該磁界形成部の一端部が、第2の磁性部材の一端部に接近し始めると、当該磁界形成部の一端部により形成される磁束は、支持体の回転方向に位置する第2の磁性部材に向かうこととなる。この一端部の磁束は、通常、支持体の回転方向に向かう力として作用する。ところが、上記したように各磁界形成部は、その円周の接線方向に長く形成されているため、相対的に見て、当該磁界形成部において支持体の回転方向に向かう力を発生させる部分(一端部)は非常に小さく、当該磁界形成部の大部分が第2の磁性部材に対面した状態となっている。したがって、磁界形成部による磁束密度分布は周方向に均一化しているため、支持体の回転にかかるトルク変動を低減することができる。
【0015】
よって、本発明の第1の回転検出装置によれば、支持体の回転にかかるトルク変動を低減することができ、コギングを抑制することで被検出物の回転を精度良く検出することができる。
【0016】
また、本発明の第2の回転検出装置は、上述した第1の回転検出装置において、前記少なくとも一対の磁界形成部は、前記磁性素子の長さ方向一端側および他端側と前記円周とが重なった場合における交点である重合点のそれぞれに臨むように配置され、前記各磁界形成部の前記円周の接線方向の寸法は、前記磁界検出部の長さ方向一端側の前記重合点と前記磁界形成部の前記円周の接線方向の中央部とが一致した場合において前記磁界形成部の前記中央部から前記第1の磁性部材の周方向一端部と同一位置までの距離の2倍となる長さ以上であり、前記第1の支持体の全周の1/2の円弧における弦の長さ以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の回転検出装置において、例えば、第1の支持体にN極の第1の磁界形成部とS極の第2の磁界形成部とが配置されている場合、支持体の回転により、相対的に見て、第1の磁界形成部は、第1の磁性部材を介して磁界検出部の一端側の重合点に接近し、且つ、第2の磁界形成部は第2の磁性部材を介して磁界検出部の他端側の重合点に接近する。このとき、一対の磁界形成部により形成される大部分の磁束は、第1の磁界形成部から第1の磁性部材に進入して他端側に向かって進行し、第1の磁性部材と第2の磁性部材との間隙において磁界検出部の中間部に進入する。磁界検出部に進入した磁束は、他端側に向かって進行し、第2の磁性部材の近傍において磁界検出部から離脱して第2の磁性部材に進入する。第2の磁性部材に進入した磁束は、第2の磁界形成部に向かって進行し、第2の磁性部材から第2の磁界形成部に到達する。このように、第1の磁界形成部から第2の磁界形成部に向かう磁界が誘導される。
【0018】
本発明の第2の回転検出装置によれば、各磁界形成部を重合点のそれぞれに臨むように配置すると共に、各磁界形成部の円周の接線方向の寸法を、磁界検出部の一端側の重合点と磁界形成部の中央部とを一致させた状態でこの中央部から第1の磁性部材の一端部位置までの距離の2倍の長さ以上とし、第1の支持体の1/2の円弧における弦の長さ以下としている。各磁界形成部をこのような配置および長さで形成することにより、上記したように、コギングの抑制が可能となると共に、磁界検出部の磁性素子を所定方向に磁化するために必要なエネルギー(磁束密度)を磁性素子に与えることができる。よって、磁性素子の磁化の方向の予測困難な変化を防止して被検出物の回転の検出精度を良くすることができる。
【0019】
また、本発明の第3の回転検出装置は、上述した第1または第2の回転検出装置において、前記各磁界形成部は、その径方向の寸法が前記円周の接線方向の中央部よりも両端部で小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第3の回転検出装置によれば、各磁界形成部の径方向の寸法が、円周の接線方向の中央部より両端部で小さく形成されている。すなわち、第2の支持体側から見て、各磁界形成部の円周の接線方向の中央部領域における面積よりも、両端部領域における面積の方が小さくなるように形成されている。磁力の強さは面積に比例するため、各磁界形成部は、その磁力が両端部において弱くなるように形成されている。したがって、例えば、磁界検出部の一端部から他端部に向かう方向に支持体の回転が進み、磁界形成部の他端部が、第1の磁性部材と第2の磁性部材との間隙に臨み始めた時に、支持体の回転方向とは逆方向に位置する第1の磁性部材に向かう当該磁界形成部の他端部の磁束密度を低くすることができる。これにより、コギングトルクの発生を有効に低減することができる。
【0021】
また、本発明の第4の回転検出装置は、上述した第1ないし第3のいずれかの回転検出装置において、前記各磁界形成部は、その前記第2の支持体との離間距離が前記円周の接線方向の中央部よりも両端部で大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の回転検出装置によれば、各磁界形成部の第2の支持体との離間距離が、円周の接線方向の中央部より両端部で大きく形成されている。磁力の強さは距離の2乗に反比例するため、各磁界形成部は、その磁力が両端部において弱くなるように形成されている。したがって、例えば、磁界検出部の一端部から他端部に向かう方向に支持体の回転が進み、磁界形成部の他端部が、第1の磁性部材と第2の磁性部材との間隙に臨み始めた時に、支持体の回転方向とは逆方向に位置する第1の磁性部材に向かう当該磁界形成部の他端部の磁束密度を低くすることができる。これにより、コギングトルクの発生を有効に抑制することができる。
【0023】
また、本発明の第5の回転検出装置は、上述した第1ないし第4のいずれかの回転検出装置において、前記各磁界形成部は、ボンド磁石であり、前記円周の接線方向の中央部よりも両端部において磁力が小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第5の回転検出装置によれば、円周の接線方向の中央部よりも両端部において磁力が小さくなるように形成されたボンド磁石を用いている。したがって、例えば、磁界検出部の一端部から他端部に向かう方向に支持体の回転が進み、磁界形成部の他端部が、第1の磁性部材と第2の磁性部材との間隙に臨み始めた時に、支持体の回転方向とは逆方向に位置する第1の磁性部材に向かう当該磁界形成部の他端部の磁束密度を低くすることができる。これにより、コギングトルクの発生を有効に抑制することができる。
【0025】
また、本発明の第6の回転検出装置は、上述した第1ないし第5のいずれかの回転検出装置において、前記第1の支持体には、前記軸線の全周を囲むようにして、周方向に等間隔で極性が交互に異なるように少なくとも2組の一対の磁界形成部が設けられ、前記第2の支持体には、前記軸線の全周を囲むようにして、周方向に等間隔に少なくとも3つの前記磁界検出部が設けられ、前記各磁界検出部に前記第1の磁性部材および前記第2の磁性部材が設けられ、前記複数の第1の磁性部材および前記複数の第2の磁性部材のうち周方向に互いに隣り合う各対の第1の磁性部材と第2の磁性部材とが互いに接近し、これにより形成された前記複数の第1の磁性部材および前記複数の第2の磁性部材の連続的な配列が、前記第2の支持体との間に前記各磁界検出部を介在させつつ、前記第2の支持体において前記第1の支持体に臨む部分内の外周側を略全周に亘って覆っていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第6の回転検出装置によれば、複数の第1の磁性部材および複数の第2の磁性部材の連続的な配列によって第2の支持体において第1の支持体に臨む部分の外周側を略全周に亘って覆うことにより、磁界形成部と磁界検出部との間に生じる磁力を抑え、または当該磁力を周方向に均一化することができる。これにより、支持体の回転に伴って発生するコギングを抑えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、コギングを抑制することにより被検出物の回転を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は本発明の実施形態による回転検出装置を示している。
図1において、本発明の実施形態による回転検出装置1は、被検出物の回転状態、例えば回転数および回転方向を検出することができる装置である。
【0031】
回転検出装置1のハウジング2内には、第1の支持体11および第2の支持体12が収容されている。例えば、ハウジング2は有蓋円筒状に形成され、第1の支持体11および第2の支持体12はそれぞれ円盤状に形成されている。ハウジング2内において、第1の支持体11および第2の支持体12は、軸線Aがそれぞれの中心を貫くようにして位置が定められ、軸線方向に互いに離間するように配置されている。第1の支持体11の面11Aは、軸線Aに対して垂直であり、第2の支持体12に臨んでいる。また、第2の支持体12の面12Aは、軸線Aに対して垂直であり、第1の支持体11に臨んでいる。また、第1の支持体11は軸線Aを回転軸として回転することができる。一方、第2の支持体12はハウジング2に固定されている。また、ハウジング2にはシャフト3が回転可能に支持されている。シャフト3は軸線Aを回転軸として回転することができる。シャフト3の一方の端部は図示しない被検出物に接続され、シャフト3の他方の端部はハウジング2内において第1の支持体11に接続されている。これにより、被検出物が回転すると、その回転がシャフト3を介して第1の支持体11に伝わり、第1の支持体11がハウジング2内で回転する。
【0032】
図2は、回転検出装置1の第1の支持体11および第1の支持体11に設けられた4つの磁石を
図1中の矢示II−II方向から見た図である。
図2に示すように、第1の支持体11には4つの磁界形成部としての磁石21、22、23、24が設けられている。各磁石21、22、23、24は、例えば矩形板状に焼結された永久磁石であり、第1の支持体11と第2の支持体12との間の領域に磁界を形成する。磁石21、22、23、24は、第1の支持体11の面11A上において、軸線Aの周囲に周方向にそれぞれ離間しており、例えば周方向に等しい間隔で固定されている。本実施形態では、磁石21、22、23、24は、軸線Aを中心として中心角90度ごとに配置されている。磁石21、22、23、24は、周方向に極性が交互に異なるように配置されている。例えば、磁石21、22、23、24は、第2の支持体12に臨む側の極性がそれぞれN極、S極、N極、S極となるように配置されている。また、
図2中の二点鎖線は、軸線A上の点を中心とし、4つの磁石21、22、23、24のそれぞれと重なり合う円周Rを示している。第1の支持体11が回転すると、磁石21、22、23、24の回転の軌跡が円周Rと一致する。
【0033】
また、
図2に示すように、磁石21の中心と重なり合う円周R上の点に接する接線の方向(以下、単に「接線方向」という。)における磁石21の寸法D1は所定の値に設定されている。同様に、各磁石22、23、24の接線方向の寸法も、磁石21の寸法D1と同じ値に設定されている。なお、各磁石21ないし24の寸法の詳細については後述する。
【0034】
図3は、回転検出装置1の第2の支持体12、第2の支持体12に設けられた3つの磁界検出部、および各磁界検出部の各端部を覆う磁性部材を
図1中の矢示III−III方向から見た図である。
図4は、
図3に示す構造体から磁性部材を取り除いた状態を示している。
図5は、
図3中の第2の支持体12の一部、1つの磁界検出部、当該磁界検出部を覆う一対の磁性部材等を拡大して示している。
【0035】
図4に示すように、第2の支持体12には3つの磁界検出部31、32、33が設けられている。各磁界検出部31、32、33は、ワイヤ状、棒状または長板状の磁性素子35の周囲にコイル36を巻回することにより形成されており、磁石21、22、23、24により形成された磁界を検出する。磁界検出部31、32、33は、第2の支持体12の面12A上において、軸線Aの周囲に周方向にそれぞれ離間しており、例えば周方向に等しい間隔で固定されている。本実施形態では、磁界検出部31、32、33は、軸線Aを中心として中心角120度ごとに配置されている。また、磁界検出部31は、磁性素子35の長さ方向が円周Rの接線(軸線A上の点および磁性素子35の長さ方向中間の点を通る直線と円周Rとが交わる点に接する接線)と平行となるように位置が定められている。同様に、各磁界検出部32、33も、磁性素子35の長さ方向が円周Rの接線と平行となるように位置が定められている。さらに、各磁界検出部31、32、33は、磁性素子35の一端部および他端部が円周Rと重なるように位置が定められている。また、各磁界検出部31、32、33は、磁性素子35の一端と軸線Aとの間の距離と、磁性素子35の他端と軸線Aとの間の距離とが互いに等しくなるように配置されている。
【0036】
各磁界検出部31、32、33は磁性素子35として複合磁気ワイヤを採用している。一般に、複合磁気ワイヤは、細いワイヤ状の強磁性体である。複合磁気ワイヤは、その外周部は比較的小さな外部磁界の付与によって磁化の方向が変化するのに対し、中心部は比較的大きな外部磁界を付与しなければ磁化の方向が変化しないといった独特な磁気特性を有する一軸異方性の複合磁性体である。複合磁気ワイヤの長さ方向と平行な一の方向に、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向を反転させるのに十分な比較的大きな外部磁界を付与すると、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向と外周部の磁化の方向とが同じ方向に揃う。その後、複合磁気ワイヤの長さ方向と平行であり、上記一の方向とは逆である他の方向に、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向だけを反転させることができる程度の比較的小さな外部磁界を付与すると、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向は変化せず、外周部の磁化の方向だけが反転する。この結果、複合磁気ワイヤは、その中心部と外周部とで磁化の方向が異なる状態となり、この状態は外部磁界を取り除いても維持される。
【0037】
ここで、中心部が上記一の方向に磁化され、外周部が上記他の方向に磁化された状態の複合磁気ワイヤに、上記一の方向に外部磁界を付与する。このとき、外部磁界の強さを始めは小さくし、その後、外部磁界の強さを徐々に増加させる。すると、外部磁界の強さがある強度を超えたときに、大バルクハウゼン効果が生じ、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向が上記他の方向から上記一の方向へ急激に反転する。そして、複合磁気ワイヤの磁化方向の急激な反転により生じる起電力により、例えば正の方向に鋭く立ち上がるパルス状の電気信号が、複合磁気ワイヤに巻回されたコイルから出力される。
【0038】
また、中心部および外周部がいずれも上記一の方向に磁化された状態の複合磁気ワイヤに、上記他の方向に外部磁界を付与する。このときも、外部磁界の強さを始めは小さくし、その後、外部磁界の強さを徐々に増加させる。すると、外部磁界の強さがある強度を超えたときに、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向が上記一の方向から上記他の方向へ急激に反転する。そして、複合磁気ワイヤの磁化方向の急激な反転により生じる起電力により、例えば負の方向に鋭く立ち上がるパルス状の電気信号が、複合磁気ワイヤに巻回されたコイルから出力される。
【0039】
このような複合磁気ワイヤを磁性素子35として採用している各磁界検出部31、32、33において、磁性素子35に外部磁界が付与され、これにより磁性素子35の外周部の磁化方向が変化すると、当該磁性素子35に巻回されたコイル36からパルス状の電気信号である検出信号が出力される。回転検出装置1において、磁性素子35に付与される外部磁界に相当するものは、磁石21と磁石22とにより形成される磁界、磁石22と磁石23とにより形成される磁界、磁石23と磁石24とにより形成される磁界、および磁石24と磁石21とにより形成される磁界である。いずれか1つの磁性素子35に着目すると、第1の支持体11が回転することにより、これら4つの磁界が当該磁性素子35に順次付与される。また、これら4つの磁界は、磁性素子35の中心部および外周部の双方の磁化方向を変化させることができるような大きな磁界ではなく、磁性素子35の外周部の磁化方向のみを変化させることができる程度の大きさの磁界である。当該磁性素子35と磁石21、22、23、24との位置関係から、当該磁性素子35に付与される磁界が切り替わるごとに、当該磁性素子35の外周部の磁化方向が変化し、これに伴い当該磁性素子35に巻回されたコイル36から検出信号が出力される。
【0040】
また、上記したように、磁石21、22、23、24は90度間隔で配置されているのに対し、磁界検出部31、32、33は120度間隔で配置されている。したがって、第1の支持体11が回転する間に、磁界検出部31、32、33から検出信号が出力されるタイミングが重なり合うことがない。磁界検出部31、32、33からそれぞれ異なるタイミングで出力される検出信号を用いて所定の処理を行うことにより、被検出物の回転数および回転方向を検出することができる。
【0041】
また、
図3に示すように、磁界検出部31の一端部および他端部は磁性部材41、42によりそれぞれ覆われている。また、磁界検出部32の一端部および他端部は磁性部材43、44によりそれぞれ覆われている。さらに、磁界検出部33の一端部および他端部は磁性部材45、46によりそれぞれ覆われている。
【0042】
ここで、磁性部材41、42について具体的に説明する。
図5に示すように、磁性部材41、42は、例えば鉄等の磁性材料により形成され、第2の支持体12の面12A上に配置され、第2の支持体12に固定されている。また、磁界検出部31と磁性部材41、42とは互いに接触していない。また、磁性部材41は他の磁性部材42ないし46のいずれとも接触しておらず、磁性部材42は他の磁性部材41および43ないし46のいずれとも接触していない。
【0043】
磁性部材41は平板部41Aと側板部41Bとから形成されている。平板部41Aは磁界検出部31の一端部の上方において、第1の支持体11の面11Aまたは第2の支持体12の面12Aと平行に拡がっている。平板部41Aは、磁界検出部31の長さ方向一端部において第1の支持体11に臨む部分を覆っている。さらに、平板部41Aは磁界検出部31の長さ方向一端部に対応する位置から第2の支持体12の内周側および外周側に向けてそれぞれ拡がり、第2の支持体12において磁界検出部31の長さ方向一端部よりも内周側および外周側の領域をもそれぞれ広く覆っている。
【0044】
側板部41Bは、平板部41Aの周方向一端部を第2の支持体12に向けて折り曲げることにより形成されている。側板部41Bは、第2の支持体12の面12Aおよび平板部41Aに対して垂直に形成され、磁界検出部31の長さ方向一端部の端面(
図5中の左端面)を覆っている。また、側板部41Bの下端部が第2の支持体12に固定されており、これにより磁性部材41全体が第2の支持体12に固定されている。
【0045】
磁性部材42は、基準線Bを基準に磁性部材41と線対称の形状を有している。磁性部材42は、磁性部材41と同様に、平板部42Aと側板部42Bとから形成されている。平板部42Aは、磁界検出部31の長さ方向他端部において第1の支持体11に臨む部分を覆っている。さらに、平板部42Aは磁界検出部31の長さ方向他端部に対応する位置から第2の支持体12の内周側および外周側に向けてそれぞれ拡がり、第2の支持体12において磁界検出部31の長さ方向他端部よりも内周側および外周側の領域をもそれぞれ広く覆っている。側板部42Bは、磁界検出部31の長さ方向他端部の端面(
図5中の右端面)を覆っている。また、側板部42Bの下端部が第2の支持体12に固定されており、これにより磁性部材42全体が第2の支持体12に固定されている。
【0046】
また、磁性部材41と磁性部材42とは、磁界検出部31の長さ方向中間部に向けて互いに接近する方向に伸長し、磁性部材41の対向端面41Cと磁性部材42の対向端面42Cとは、磁界検出部31の長さ方向中間部において間隙S1を介して互いに対向している。対向端面41C、42Cは、軸線Aに対して垂直でかつ磁界検出部31の長さ方向に対して垂直な方向にそれぞれ伸長している。また、対向端面41C、42Cは、第2の支持体12の内周側から磁界検出部31の長さ方向中間部に対応する位置を通過して第2の支持体12の外周側へ互いの離間距離を一定に保ちつつ伸長している。詳細は後述するが、
図5に示すように、対向端面41Cと対向端面42Cとの間隙S1の距離D2は所定の値に設定されている。
【0047】
また、磁性部材41において軸線A側に向いた内周側端面41Dは、磁界検出部31の長さ方向と平行な方向に伸長している。同様に、磁性部材42において軸線A側に向いた内周側端面42Dは、磁界検出部31の長さ方向と平行な方向に伸長している。一方、磁性部材41の外周側端面41Eおよび磁性部材42の外周側端面42Eは、第2の支持体12の周縁に沿って円弧状に伸張している。
【0048】
また、
図5に示すように、磁界検出部31において第1の支持体11に臨む部分のうち、大部分が磁性部材41、42により覆われており、第1の支持体11に向かって露出している部分はわずかである。磁界検出部31において第1の支持体11に臨む部分のうち、磁性部材41および磁性部材42により覆われている部分の面積の方が露出している部分の面積よりも大きい。
【0049】
磁性部材43、44の構成および磁性部材43、44と磁界検出部32との位置関係等は、磁性部材41、42の構成および磁性部材41、42と磁界検出部31との位置関係等と同じである。また、磁性部材45、46の構成および磁性部材45、46と磁界検出部33との位置関係等も、磁性部材41、42の構成および磁性部材41、42と磁界検出部31との位置関係等と同じである。なお、例えば、周方向に互いに隣り合う磁性部材41の側板部41Bと、磁性部材46の側板部46Bとの間隙S2の距離D3は、上述した距離D2より小さく設定されている。なお、互いに隣り合う他の側板部(42Bと43B、44Bと45B)についても同様である。
【0050】
また、
図3に示すように、磁性部材41ないし46のうち周方向に互いに隣り合う各対の磁性部材(41と42、42と43、43と44、44と45、45と46、46と41)は互いに接近し、これにより形成された磁性部材41ないし46の連続的な配列が、第2の支持体12との間に磁界検出部31、32、33を介在させつつ、第2の支持体12の面12A内の外周側上方を略全周に亘って覆っている。すなわち、磁性部材41ないし46の平板部41Aないし46Aの表面を含む平面において、磁性部材41ないし46のうち互いに隣り合う各対の磁性部材間の間隙S1、S2に対応する領域の面積は、各磁性部材41ないし46の平板部41Aないし46Aの表面の面積と比較して大幅に小さい。このような磁性部材41ないし46の連続的な配列により、磁石21、22、23、24と磁界検出部31、32、33との間に生じる磁力を制御し、また当該磁力を周方向に均一化することができ、これにより、第1の支持体11の回転に伴って発生するコギングを抑えることができる。
【0051】
次に、
図2および
図6を参照しながら、各磁石21、22、23、24の形状(寸法)について詳細に説明する。
図6は回転検出装置1の動作を示しており、
図1中の矢示VI−VI方向から見た回転検出装置1であるが、説明の便宜上、ハウジング2、シャフト3および第1の支持体11を図示していない。なお、各磁石21、22、23、24の形状(寸法)は、それぞれ同一であるため、ここでは、磁石21に着目して具体的に説明する。
【0052】
磁石21は、接線方向に長い直方体形状に形成されている。すなわち、磁石21は、第2の支持体12側から見て、接線方向に長い長方形状を成している。具体的には、磁石21の接線方向の寸法D1は、磁石21の径方向の寸法D4よりも大きく、且つ、隣り合う磁性部材41、42の対向端面41C、42C同士の間隙S1の距離D2よりも大きく設定されている。
【0053】
次に、磁石21の接線方向の寸法D1について、例えば磁界検出部31および磁性部材41との位置関係から更に詳細に説明する。上記したように、磁界検出部31、磁性素子35の長さ方向一端部および他端部が円周Rと重なるように位置が定められている。この磁性素子35の一端部および他端部と円周Rとが重なった交点を重合点P1と呼ぶこととする(
図4参照)。なお、必ずしも磁性素子35は、円周Rと重なる位置に設けられていなくてもよい。例えば、各磁界検出部31、32、33の磁性素子35が、円周Rの内側または外側に配置されていてもよい。すなわち、大バルクハウゼン効果を生じさせる外部磁界が円周R上を移動する各磁石21、22、23、24によって付与され得る位置に、各磁性素子35が配置されていればよい。このとき、仮想的に磁性素子35の一端部および他端部と円周Rとが重なった場合における交点が重合点P1となる。
【0054】
また、上記したように、第1の支持体11の回転に伴って各磁石21、22、23、24は円周R上を移動する。すなわち、各磁石21、22、23、24は、磁界検出部31の磁性素子35の一端側および他端側の重合点P1のそれぞれに臨むことが可能なように配置されている。
【0055】
磁石21の接線方向の寸法D1は、例えば、磁界検出部31の一端側の重合点P1と、磁石21の接線方向の中央部に含まれる中心点P2とが一致した場合において、この中心点P2から磁性部材41の側板部41Bの端面と同一位置までの距離の2倍となる長さとなるように形成されている。なお、より好ましくは、例えば、磁石21の接線方向の寸法D1を、上記のように重合点P1と中心点P2とを一致させ、この中心点P2から、磁性部材41の側板部41Bと磁性部材46の側板部46Bとの間隙S2の距離D3の円周方向中間部と同一位置までの距離の2倍となる長さとなるように形成する。なお、磁界検出部31の一端側の重合点P1と、磁石21の中心点P2とが一致しているときには、磁界検出部31の他端側の重合点P1と、磁石22の中心点P2とが一致している。
【0056】
なお、他の磁性部材42、43、44、45、46が有する各重合点P1を基準に各磁石21、22、23、24の接線方向の寸法D1を設定してもよい。また、第2の支持体12側から見たときの磁石21の面積は、磁界検出部31、32、33から検出信号を出力させるために必要な磁場強度を解析することで決定される。そして、この解析結果と、磁石21の接線方向の寸法D1とから、磁石21の径方向の寸法D4が決定される。
【0057】
次に、
図6および
図10を参照しながら、回転検出装置1の基本的な動作について説明する。ここでは、磁界検出部31に着目し、この動作について具体的に説明する。
図10は回転検出装置1の動作を示しており、
図1中の矢示VI−VI方向から見た回転検出装置1であるが、説明の便宜上、ハウジング2、シャフト3および第1の支持体11を図示していない。
【0058】
例えば磁界検出部31の磁性素子35がその他端部から一端部に向いた方向に磁化された状態であるときに、第1の支持体11が反時計回りに回転したとする。これにより、
図6に示すように、N極の磁石21が磁界検出部31の一端部に接近し、かつS極の磁石22が磁界検出部31の他端部に接近すると、磁石21から磁石22に向かう磁界により、磁界検出部31の磁性素子35の外周部の磁化方向が反転する。この結果、当該磁性素子35の磁化方向がその一端部から他端部に向いた方向となる。そして、当該磁性素子35の磁化方向の反転により、当該磁性素子35に巻回されたコイル36から例えば正の方向に鋭く立ち上がるパルス状の検出信号が出力される。
【0059】
引き続き、第1の支持体11の反時計回りの回転が継続し、
図10に示すように、S極の磁石24が磁界検出部31の一端部に接近し、かつN極の磁石21が磁界検出部31の他端部に接近すると、磁石21から磁石24に向かう磁界により、磁界検出部31の磁性素子35の外周部の磁化方向が反転する。この結果、当該磁性素子35の磁化方向がその他端部から一端部に向いた方向となる。そして、当該磁性素子35の磁化方向の反転により、当該磁性素子35に巻回されたコイル36から例えば負の方向に鋭く立ち上がるパルス状の検出信号が出力される。
【0060】
引き続き、第1の支持体11が回転を続け、N極の磁石23が磁界検出部31の一端側に接近し、かつS極の磁石24が磁界検出部31の他端部に接近したときには、磁石23から磁石24に向かう磁界により、磁界検出部31の磁性素子35の磁化方向がその一端部から他端部に向いた方向となり、コイル36から例えば正の方向に鋭く立ち上がるパルス状の検出信号が出力される。さらに、第1の支持体11が回転を続け、S極の磁石22が磁界検出部31の一端側に接近し、かつN極の磁石23が磁界検出部31の他端部に接近したときには、磁石23から磁石22に向かう磁界により、磁界検出部31の磁性素子35の磁化方向がその他端部から一端部に向いた方向となり、コイル36から例えば負の方向に鋭く立ち上がるパルス状の検出信号が出力される。磁界検出部32、33も磁界検出部31と同様に動作する。
【0061】
次に、
図6ないし
図10を参照しながら、磁性部材41、42の磁界検出部31に対する磁界誘導機能について具体的に説明する。
図7および
図9は回転検出装置1における磁界の経路を示している。
図8は回転検出装置1の動作を示しており、
図1中の矢示VI−VI方向から見た回転検出装置1であるが、説明の便宜上、ハウジング2、シャフト3および第1の支持体11を図示していない。
【0062】
図6に示すように、第1の支持体11が例えば反時計回りに回転し、N極の磁石21が磁界検出部31の一端部に接近し、かつS極の磁石22が磁界検出部31の他端部に接近したとする。このとき、
図7に示すように、磁石21から磁石22に向かう磁束の大部分は、まず、磁石21から、磁界検出部31の一端部ではなく、磁性部材41に進入する。磁性部材41に進入した磁束は、磁性部材42側に向かって磁性部材41の平板部41A中を進行し、磁性部材41と磁性部材42との間隙S1から、磁界検出部31の中間部においてやや一端部寄りの部分に進入する。磁界検出部31に進入した磁束は、磁界検出部31中をその他端側へ向かって進行し、磁界検出部31の中間部においてやや他端部寄りの部分に到達する。この部分に到達した磁束は、磁界検出部31から離脱して磁性部材42に進入する。磁性部材42に進入した磁束は、磁石22に向かって磁性部材42の平板部42A中を進行し、磁性部材42から磁石22に到達する。
【0063】
このように、磁石21から磁石22に向かう磁界が磁性部材41、42により誘導され、
図7中の黒い実線の矢示で示すような磁路が形成される。この結果、当該磁界の大部分が磁界検出部31の中間部に付与されるので、磁界検出部31の中間部の磁束密度が、磁界検出部31の一端部または他端部の磁束密度と比較して高くなる。
【0064】
また、磁界検出部31の一端部および他端部において第1の支持体11に臨む部分を含む広い領域が磁性部材41、42の平板部41A、42Aにより覆われており、さらに、磁界検出部31の一端面(左端面)および他端面(右端面)が磁性部材41、42の側板部41B、42Bにより覆われている。これにより、磁界検出部31の周囲であって磁性部材41、42により覆われた内側の空間には、
図7中の黒い破線の矢印で示すように、磁界検出部31の一端側から他端側に向かう磁界が形成される。なお、磁石21から磁石22に向かう磁束のうち、その大部分は
図7中の黒い実線の矢印で示す磁路を進行するので、
図7中の黒い破線の矢印で示した磁界の強度は、
図7中の黒い実線の矢印で示した磁界の強度よりも小さい。したがって、
図7中の黒い破線の矢印で示した磁界が磁界検出部31に付与されることにより、磁界検出部31の中間部の磁束密度が一端部または他端部の磁束密度よりも高い状態が保持されたまま、磁界検出部31の磁束密度が全体的に増加する。
【0065】
以上のような磁界が磁界検出部31に付与されることにより、磁界検出部31の磁性素子35の外周部は、
図7中の白い矢印が示す方向、すなわち磁性素子35の一端部から他端部に向かう方向に磁化される。したがって、当該磁性素子35の外周部の磁化方向が当該磁性素子35の他端部から一端部に向いた方向であった場合には、当該磁性素子35の外周部の磁化方向が反転し、当該磁性素子35に巻回されたコイル36から例えば正の方向に鋭く立ち上がったパルス状の検出信号が出力される。
【0066】
続いて、
図8に示すように、第1の支持体11が反時計回りにさらに45度回転し、N極の磁石21が磁界検出部31の中間部に接近したときには、
図9に示すように、磁石21から磁石24に向かう磁束の大部分は、磁石21から磁性部材41に進入し、磁石21から磁石22に向かう磁束の大部分は、磁石21から磁性部材42に進入する。磁性部材41に進入した磁束は、磁石24側に向かって磁性部材41中を進行し、磁性部材42に進入した磁束は、磁石22側に向かって磁性部材42中を進行する。これにより、磁束が磁界検出部31に進入することを抑制することができる。また、
図8に示すように、磁性部材41と磁性部材46とは間隙S2を介して互いに離間しているので、磁性部材41を進行した磁束の大部分は磁性部材46へ進入しない。同様に、磁性部材42と磁性部材43とは間隙S2を介して互いに離間しているので、磁性部材42を進行した磁束の大部分は磁性部材43へ進入しない。
【0067】
ここで、磁石21の接線方向の寸法D1は、磁性部材41と磁性部材42との間の距離D2よりも大きくなるように設定されている。したがって、磁石21が磁界検出部31の中間部に接近したときには、磁石21と各磁性部材41、42との間の距離のそれぞれが、磁石21と磁界検出部31との間の距離よりも確実に短くなり、磁石21から磁石24、22にそれぞれ向かう磁束の大部分が磁性部材41、42に進入することが保証される。また、磁界検出部31の一端部および他端部において第1の支持体11に臨む部分を含む広い領域が磁性部材41、42の平板部41A、42Aにより覆われており、さらに、磁界検出部31の一端面(左端面)および他端面(右端面)が磁性部材41、42の側板部41B、42Bにより覆われている。これにより、磁石21が磁界検出部31の中間部に接近したときには、磁石21から磁石24、22に向かう磁界が、磁性部材41、42により、磁界検出部31を避けるように誘導される。この結果、当該磁界における磁束の大部分は磁界検出部31には進入せず、磁界検出部31の磁性素子35の外周部の磁化方向は変化しない。
図9中の白い矢印が示す方向は、
図7中の白い矢印が示す方向と同じであり、これは磁性素子35の磁化方向が変化していないことを示している。よって、当該磁性素子35に巻回されたコイル36からパルス状の検出信号が出力されることはない。
【0068】
続いて、
図10に示すように、第1の支持体11が反時計回りにさらに45度回転し、S極の磁石24が磁界検出部31の一端部に接近し、かつN極の磁石21が磁界検出部31の他端部に接近したときには、磁石21から磁石24に向かう磁界は、磁性部材41、42により誘導され、
図7中の黒い実線の矢印および黒い破線の矢印で示す磁界の経路と同様の経路を逆方向に辿る。
【0069】
このような磁界が磁界検出部31に付与されることにより、磁界検出部31の磁性素子35の外周部は、磁性素子35の他端部から一端部に向かう方向に磁化される。したがって、当該磁性素子35の外周部の磁化方向が当該磁性素子35の一端部から他端部に向いた方向であった場合には、当該磁性素子35の外周部の磁化方向が反転し、当該磁性素子35に巻回されたコイル36から例えば負の方向に鋭く立ち上がったパルス状の検出信号が出力される。
【0070】
以上より、磁性部材41、42の磁界誘導機能によれば、互いに極性の異なる磁石が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したときには、これらの磁石により形成される磁束が、磁界検出部31の一端部および他端部よりも中間部を通過するように磁界を誘導することができる。また、磁石が磁界検出部31の中間部に接近したときには、この磁石により形成される磁束が磁界検出部31に進入するのを抑制することができる。
【0071】
これにより、互いに極性の異なる一対の磁石が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したときには、磁界検出部31の磁性素子35の主に中間部の磁束密度を高くすることができる。一方、磁石が磁界検出部31の中間部に接近したときには、磁界検出部31の磁性素子35の磁束密度をその全体に亘って低くすることができる。したがって、互いに極性の異なる磁石が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したときに限り、磁界検出部31の磁性素子35の磁束密度を高くすることができる。それゆえ、互いに極性の異なる磁石が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したときに限り、磁性素子35の磁化方向を変化させることができる。すなわち、互いに極性の異なる磁石が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近していない期間に、磁界検出部31の磁性素子35の磁化方向が変化するのを防止することができる。
【0072】
さらに、磁性部材41、42は磁界誘導機能の性能を高めることができる構成的特徴をいくつか備えている。これらについて
図11を参照しながら説明する。
図11中の矢印は、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したときの磁性部材41、42に形成される磁界を模式的に示している。
【0073】
まず、磁性部材41、42において軸線A側に向いた内周側端面41D、42Dは、磁界検出部31の長さ方向と平行な方向にそれぞれ伸長している。これにより、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したとき、磁性部材41、42中をそれぞれ進行する磁束は、磁界検出部31の長さ方向とほぼ平行な方向に進行する。これにより、磁性部材41、42中をそれぞれ進行する磁束が進行途中に磁界検出部31から離れる方向(特に、内周側端面41D、42Dから磁性部材41、42の外部に向かう方向)に拡散するのを抑制することができる。
【0074】
次に、磁性部材41、42の対向端面41C、42Cは、軸線Aに対して垂直でかつ磁界検出部31の長さ方向に対して垂直な方向にそれぞれ伸長している。これにより、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したとき、磁性部材41、42中をそれぞれ進行する磁束は、磁界検出部31の長さ方向とほぼ平行な方向に進行する。これにより、磁性部材41、42中をそれぞれ進行する磁束が進行途中に磁界検出部31から離れる方向(特に、対向端面41Cから磁性部材41の外部に向かう方向)に拡散するのを抑制することができる。
【0075】
これらの構成的特徴によれば、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部にそれぞれ接近したときに、磁石21から磁石22に向かう磁界を磁性部材41、42により磁界検出部31へ誘導する効果を高めることができ、磁界検出部31を磁束密度の高い安定した状態にすることができる。
【0076】
以上、磁性部材41、42の磁界検出部31に対する磁界誘導機能について説明したが、磁性部材43、44の磁界検出部32に対する磁界誘導機能、および磁性部材45、46の磁界検出部33に対する磁界誘導機能も、磁性部材41、42の磁界検出部31に対する磁界誘導機能と同様である。磁性部材41ないし46の磁界誘導機能により、磁界検出部31、32、33がそれぞれ有する磁性素子35の磁化方向の予測困難な変化を防止し、被検出物の回転の検出精度を良くすることができる。
【0077】
次に、
図12ないし
図15を参照しながら、本実施形態に係る回転検出装置1によるコギングの抑制作用について説明する。
図12ないし
図15は回転検出装置1において磁石21と磁性部材41、42(間隙S1)との位置関係を示している。ここでは、磁石21、磁界検出部31および磁性部材41、42に着目して具体的に説明する。また、第1の支持体11は、磁界検出部31の一端部から他端部に向かう方向に回転するものとする(
図6において反時計回り)。
【0078】
図12に示すように、第1の支持体11の回転により、磁石21の全体が、磁性部材41の平板部41Aに対面する位置に臨んでいる場合、磁石21により形成される磁束の略全ては、対面する磁性部材41に向かっている(
図12中の矢印参照)。すなわち、磁石21により形成される磁力線は、回転方向(または接線方向)において同一方向に向いた線形状態となっている。これは磁気的に安定した状態であり、第1の支持体11の回転にかかるトルクは一定となっている。
【0079】
続いて、
図13に示すように、第1の支持体11の回転が進み、磁石21の他端部が、磁性部材41と磁性部材42との間隙S1に臨み始めると、磁石21により形成される磁束のうち、その他端部の磁束は、第1の支持体11の回転方向とは逆方向(一端側に向かう方向)に位置する磁性部材41に向かうこととなる(
図13中の矢印参照)。すなわち、間隙S1上を通過し始めの磁石21の他端部は、第1の支持体11の回転方向とは逆向きの非線形な磁力線を形成する。この非線形な磁力線(磁石21の他端部の磁束)は、通常、第1の支持体11を回転方向とは逆方向に戻そうとする力(コギングトルク)として作用する。ところが、磁石21は、接線方向に長く形成されているため、相対的に見て、磁石21においてコギングトルクを発生させる部分(他端部)は非常に小さく、磁石21の大部分が磁性部材41の平板部41Aに対面した状態となっている。したがって、磁石21による磁束密度分布が周方向に均一化された状態となっている。すなわち、磁石21により形成される磁力線は略線形状態を維持している。これにより、磁気的に安定した状態を維持することができるため、相対的にコギングトルクを低減することができる。
【0080】
磁石21は、磁性部材41と磁性部材42との間隙S1よりも長く形成されているため、第1の支持体11が反時計回りにさらに回転すると、
図14に示すように、磁石21は、磁性部材41と磁性部材42との間隙S1を跨ぐように臨むこととなる。この状態で、磁石21により形成される磁束は、磁性部材41および磁性部材42に略均等に分散している(
図14中の矢印参照)。すなわち、磁石21により形成される磁力線は略線形状態を維持している。これにより、第1の支持体11の回転にかかるトルクを一定にすることができるため、コギングの発生が抑制される。なお、この状態で、磁性部材41、42をそれぞれ進行する磁束は左右対称となるため、磁性部材41、42により覆われた磁界検出部31の周囲において、磁石21から磁石22へ向かう磁界と、磁石21から磁石24へ向かう磁界とが互いに打ち消し合い、磁界が略零になる。
【0081】
図15に示すように、さらに第1の支持体11の回転が進み、磁性部材41と磁性部材42との間隙S1に臨む磁石21の一端部が、第2の磁性部材の一端部に接近し始めると、磁石21の一端部により形成される磁束は、第1の支持体11の回転方向(他端側に向かう方向)に位置する磁性部材42に向かうこととなる(
図15中の矢印参照)。すなわち、間隙S1上を通過する磁石21の一端部は、第1の支持体11の回転方向と同じ向きの非線形な磁力線を形成する。この非線形な磁力線(磁石21の一端部の磁束)は、通常、第1の支持体11を回転方向に送ろうとする力として作用する。ところが、上記したように磁石21は、接線方向に長く形成されているため、相対的に見て、磁石21において第1の支持体11の回転方向に向かう力を発生させる部分は非常に小さく、磁石21の大部分が磁性部材42の平板部42Aに対面した状態となっている。したがって、磁石21による磁束密度分布は周方向に均一化された状態となっている。すなわち、磁石21により形成される磁力線は略線形状態を維持している。これにより、第1の支持体11の回転にかかるトルク変動を低減することができる。
【0082】
なお、他の磁性部材43、44、45、46に対する他の磁石22、23、24のコギングトルクの低減作用についても同様である。
【0083】
以上の実施形態に係る回転検出装置1によれば、例えば、磁石214は、その接線方向の寸法D1が径方向の寸法D4よりも大きく、且つ、磁性部材41と磁性部材42の間隙S1の距離D2よりも大きく設定されている。このため、例えば、磁石21が間隙S1に臨む際にコギングトルクを発生させる部分は非常に小さく、磁石21の大部分が磁性部材41に上に臨んでいる。したがって、相対的に見ると、磁石21による磁束密度分布が周方向に均一化されており、磁気的に安定した状態となっている。これにより、相対的に、第1の支持体11の回転にかかるトルク変動、すなわちコギングトルクを低減することができ、コギングが抑制されることで被検出物の回転を精度良く検出することができる。
【0084】
また、上述した実施形態に係る各磁石21、22、23、24の接線方向の寸法D1は、最小の寸法であり、各磁石21、22、23、24の接線方向の寸法D1は、上述した実施形態に係る長さ以上、第1の支持体11の全周(全円周)の1/4の円弧における弦の長さ以下の範囲で任意に設定することができる。
【0085】
例えば、
図16に示すように、第1の支持体70自体を、軸線Aを中心として中心角90度に分割した4つの磁片70a、70b、70c、70dから成る円盤状の磁石により形成してもよい。また、例えば、
図17に示すように、第1の支持体71自体を、軸線Aを中心として中心角90度に分割した4つの磁片71a、71b、71c、71dから成るリング状の磁石により形成してもよい。また、磁石を電磁石により形成することも可能である。
【0086】
各磁石21、22、23、24の接線方向の長さを、以上のような範囲内で設定することにより、コギングの抑制が可能となると共に、各磁界検出部31、32、33の磁性素子35を所定方向に磁化するために必要なエネルギー(磁束密度)を磁性素子35に与えることができる。よって、磁性素子35の磁化の方向の予測困難な変化を防止して被検出物の回転の検出精度を良くすることができる。
【0087】
なお、上述した実施形態に係る回転検出装置1では、各磁性部材41ないし46に側板部41Bないし46Bを形成する場合を例にあげたが、
図18に示す回転検出装置50のように、側板部を省略した磁性部材51、52を有する構成を採用することもできる。この場合、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部に接近したときに、磁界検出部31の一端面から進入する磁界、または磁界検出部31の他端面から進出する磁界が形成されにくい。この結果、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部に接近したときには、磁性素子35の一端部および他端部の磁束密度が増加せず、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部に接近していない場合と同程度である。
【0088】
磁性素子35の磁化方向の反転を確実に生じさせ、出力レベルが高く安定した検出信号を得るためには、磁石21、22が磁界検出部31の一端部および他端部に接近したときに磁性素子35の磁束密度が全体的に高くなることが望ましい。この観点から、各磁性部材に側板部を設けることが好ましい。
【0089】
また、上述した実施形態に係る回転検出装置1では、第1の支持体11には90度間隔に4つの磁石21、22、23、24を設け、第2の支持体12には120度間隔に3つの磁界検出部を設けたが本発明はこれに限らない。磁石の個数は2個以上であればよく、磁石の配置間隔は限定されず、磁界検出部の個数は限定されず、磁界検出部の配置間隔も限定されない。もっとも、上述したように、第1の支持体が回転する間に各磁界検出部から検出信号が出力されるタイミングが重なり合うことのないように、磁石の配置間隔および磁界検出部の配置間隔を設定することが望ましい。
図19は、本発明の回転検出装置の他の実施形態として、第1の支持体に2つの磁石61、62を設け、第2の支持体63に1つの磁界検出部64を設け、磁界検出部64の一端部および他端部を磁性部材65、66でそれぞれ覆った回転検出装置60を示している。
【0090】
この場合、各磁石21、22、23、24の接線方向の寸法D1は、上述した実施形態に係る長さ以上、第1の支持体11の全周(全円周)の1/2の円弧における弦の長さ以下の範囲で任意に設定することができる。例えば、
図20に示すように、第1の支持体72自体を、軸線Aを中心として中心角180度に分割した2つの磁片72a、72bから成る円盤状(またはリング状(図示せず))の磁石により形成してもよい。
【0091】
また、上述した実施形態に係る回転検出装置1では、各磁界検出部31、32、33の磁性素子35として複合磁性ワイヤを採用する場合を例にあげたが、他のバルクハウゼン素子を採用することも可能である。
【0092】
また、上述した実施形態に係る回転検出装置1では、磁性部材41ないし46等を形成する磁性材料として鉄を例にあげたが、本発明はこれに限らず、他の磁性体ないし強磁性体、例えば、パーマロイ、電磁鋼板等を用いてもよい。
【0093】
また、各磁性部材41ないし46の形状は、種々の変形が可能である。例えば、
図21に示す磁性部材101、102のように、対向端面101C(102C)と内周側端面101D(102D)とが交わる角部を一部取り除き、対向端面101C(102C)と内周側端面101D(102D)との間に傾斜面101F(102F)を形成してもよい。また、
図22に示す磁性部材111、112のように、対向端面111C、112Cに段部111F、112Fをそれぞれ形成し、対向端面111Cと対向端面112Cとの間の距離を部分的に変化させてもよい。具体的には、磁界検出部31の中間部と対応する部分では、対向端面111Cと対向端面112Cとの間を大きくする。一方、磁石21、22、23、24が通過する領域に対応する部分(円周Rに対応する部分)では、対向端面111Cと対向端面112Cとの間を小さくする。また、
図23に示す磁性部材121、122のように、磁界検出部31の中間部に対応する部分において対向端面121Cと対向端面122Cとが最も接近するように、対向端面121Cおよび対向端面122Cとをそれぞれ円弧状に形成してもよい。また、
図24に示す磁性部材131、132のように、対向端面131Cおよび対向端面132Cにおいて、磁石21、22、23、24が通過する領域に対応する部分(円周Rに対応する部分)に、クランク状に屈曲したクランク部131F、132Fをそれぞれ形成してもよい。
【0094】
また、上述した実施形態に係る回転検出装置1では、第1の支持体11およびこれに設けられた磁石21、22、23、24を回転させる場合を例にあげたが、第2の支持体12とこれに設けられた磁界検出部31、32、33を回転させる構成を採用することもできる。
【0095】
(第1の変形例)
次に、
図25ないし
図31を参照しながら、上述した実施形態に係る回転検出装置1の第1の変形例について説明する。
図25ないし
図30は本実施形態の第1の変形例による回転検出装置1において、各磁石の平面形状の例を示している。
図31は本実施形態の第1の変形例による回転検出装置1において磁石の他端部が間隙S1に臨み始めた状態を示している。なお、上述した実施形態に係る回転検出装置1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0096】
本実施形態の第1の変形例では、第2の支持体12に臨む側の面(以下、「平面」という。)において、各磁石の径方向の寸法が、円周Rの接線方向の中央部よりも一端部および他端部(以下、「両端部」という。)で小さくなるように形成されている。各磁石の平面形状は、種々の変形が可能である。
【0097】
例えば、
図25に示すように、各磁石73a、73b、73c、73dの平面形状が、接線方向に向かって長径を有する楕円形状に形成されていてもよい。また、
図26に示すように、各磁石74a、74b、74c、74dの平面形状が、接線方向の両端部がそれぞれ鋭角に形成された略楕円形状に形成されていてもよい。また、
図27に示すように、各磁石75a、75b、75c、75dの平面形状が、接線方向に細長い菱形状に形成されていてもよい。また、
図28に示すように、各磁石76a、76b、76c、76dの平面形状が、接線方向に細長く、両端部にそれぞれ鋭角が位置するような六角形状に形成されていてもよい。さらに、
図29に示すように、各磁石77a、77b、77c、77dの平面形状が、接線方向に細長く、両端部にそれぞれ鋭角が位置するような台形状に形成されていてもよい。また、例えば、
図30に示すように、各磁石78a、78b、78c、78dの平面形状が、接線方向に細長い矩形状の本体部79と、本体部79より径方向の寸法が小さく本体部79の接線方向両端面からそれぞれ突出する狭幅部80と、から構成されていてもよい。
【0098】
以上の実施形態の第1の変形例に係る回転検出装置1によれば、第2の支持体12に臨む側の面において(または第2の支持体12側から見て)、各磁石73a〜78a、73b〜78b、73c〜78c、73d〜78dの円周Rの接線方向の中央部領域における面積よりも、接線方向の両端部領域における面積の方が小さくなるように形成されている。磁力の強さは面積に比例するため、各磁石73a〜78a、73b〜78b、73c〜78c、73d〜78dは、その磁力が両端部において弱くなるように形成されている。したがって、
図31に示すように、例えば、磁界検出部31の一端部から他端部に向かう方向に第1の支持体11の回転が進み、磁石73aの他端部が、磁性部材41と磁性部材42との間隙S1に臨み始めた時に、第1の支持体11の回転方向とは逆方向に位置する磁性部材41に向かう磁石73aの他端部の磁束密度を低くすることができる。なお、
図31では、磁石21の両端部の磁束密度が、磁石21の中央部の磁束密度よりも低い状態であることを破線の矢印で示している。これにより、コギングトルクの発生を有効に抑制することができる。
【0099】
なお、他の磁性部材43、44、45、46に対する他の磁石のコギングトルクの低減作用についても同様である。
【0100】
(第2の変形例)
次に、
図32を参照しながら、上述した実施形態に係る回転検出装置1の第2の変形例について説明する。
図32は本実施形態の第2の変形例による回転検出装置1において磁石の他端部が間隙S1に臨み始めた状態を示している。なお、上述した実施形態に係る回転検出装置1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
本実施形態の第2の変形例に係る回転検出装置1では、上述した実施形態と同様に、4つの磁石81a、81b、81c、81dが第1の支持体11上に配設されている。各磁石81a、81b、81c、81dの形状は、それぞれ同一であるため、ここでは、磁石81aに着目して具体的に説明する。
図32に示すように、磁石81aは、その第2の支持体12との離間距離が円周Rの接線方向の中央部よりも両端部で大きくなるように形成されている。すなわち、例えば、磁石81aは、第2の支持体12に臨む側から第1の支持体11に向かって傾斜(一端側および他端側に向かってそれぞれ上傾)し、台形状に形成されている。
【0102】
以上の実施形態の第2の変形例に係る回転検出装置1によれば、磁力の強さは距離の2乗に反比例するため、各磁石81a、81b、81c、81dは、その磁力が両端部において弱くなるように形成されている。したがって、
図32に示すように、例えば、磁界検出部31の一端部から他端部に向かう方向に第1の支持体11の回転が進み、磁石21の他端部が、磁性部材41と磁性部材42との間隙S1に臨み始めた時に、第1の支持体11の回転方向とは逆方向に位置する磁性部材41に向かう磁石81aの他端部の磁束密度を低くすることができる。なお、
図32では、磁石81aの両端部の磁束密度が、その中央部の磁束密度よりも低い状態であることを破線の矢印で示している。これにより、コギングトルクの発生を有効に抑制することができる。
【0103】
なお、他の磁性部材43、44、45、46に対する他の磁石81b、81c、81dのコギングトルクの低減作用についても同様である。また、本実施形態の第2の変形例の構成を、上述した第1の変形例に適用してもよい。
【0104】
なお、上述した実施形態および各変形例に係る各磁石21、22、23、24等は、焼結磁石を用いたが、砕いた磁石(磁石粉)をゴムやプラスチックに練り込んで形成したボンド磁石を用いてもよい。この場合、ボンド磁石の円周Rの接線方向の中央部において磁石粉濃度を高くし、接線方向の両端部において磁石粉濃度を低くするように形成してもよい。すなわち、各ボンド磁石は、円周Rの接線方向の中央部よりも両端部において磁力が小さくなっている。これにより、磁束密度分布を周方向に均一化した状態を維持することができるため、コギングトルクの発生を有効に抑制することができる。
【0105】
なお、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。