(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出部が、自電子機器本体の一部に固定された圧電素子と圧電素子が外部から受けた衝撃に応じて発生した起電圧を検出し、検出した前記起電圧を表す検出信号を出力する検出手順と、
制御部が、前記検出手順により出力された前記検出信号が、第1の検知信号であるか第2の検知信号であるかを、前記検出信号に含まれる周波数成分の違いに基づいて判別し、前記判別した結果に応じて所定の処理を行う制御手順と、
を含む電子機器の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。また、以下の例では、電子機器の一例として、電子時計を例に説明する。
図1は、本実施形態における電子時計1の概略断面図である。
図1に示すように、電子時計1は、ケース10、ガラス20、基盤30、電池40、電極50、圧電素子60、裏蓋70、およびベルト80を備えている。
【0020】
ケース10の内部には、基盤30、電池40、電極50、および圧電素子60が組み込まれている。ケース10には、ガラス20、裏蓋70、およびベルト80が取り付けられている。ケース10は、例えば樹脂またはゴムであり、ガラス20より柔らかい素材である。
【0021】
ガラス20は、基盤30の上に取り付けられている。ガラス20は、
図2に示すように、表示部90を保護している。
図2は、本実施形態における電子時計1の概略上面図である。
図2に示すように、電子時計1は、側面にボタンA〜Dを備えている。例えばボタンAは、ストップウォッチ計測を開始する、またはストップウォッチ計測を終了するボタンである。ボタンBは、動作モードを切り替えるボタンである。ボタンCは、バックライトを所定時間、点灯させるボタンである。ボタンDは、表示の切り替えを行うボタンである。
図2において、表示部90は、時刻、動作モード、ストップウォッチの計測時間、ラップデータ、タイマー時刻等を表示する表示部である。表示部90は、一例として液晶表示装置(LCD)である。
【0022】
基盤30には、
図3を用いて後述する電気回路が取り付けられている。また、基盤30には、電池40から電力が供給されている。
電池40は、基盤30の各回路、圧電素子60に電極50を介して電力を供給する。電池40は、一例としてボタン型電池である。
電極50は、電池40からの電力を基盤30および圧電素子60に供給する。
【0023】
圧電素子60は、裏蓋70に固着されている。圧電素子60は、基盤30の制御部102の制御に応じて、時報等の報知音を発する。また、圧電素子60は、ケース10およびガラス20に加えられた衝撃により発生した信号を、基盤30の検出部に出力する。
裏蓋70は、電子時計1の裏面を保護する蓋である。裏蓋70は、圧電素子60が報知音を発するときに、共振部の役割を果たす。裏蓋70は、一例として樹脂、金属である。
ベルト80は、利用者の手首(腕)に装着されるために使用される。
電極50は、電池40の電力を基盤30および圧電素子60に供給する。
【0024】
図3は、本実施形態に係る電子時計1の構成を示したブロック図である。
図3に示すように、電子時計1は、発振部101、制御部102、入力部103、表示制御部104、表示部90、検出部105、および記憶部106を備える。
【0025】
発振部101は、制御部102の動作用の基準クロック信号を発生させ、発生させた基準クロック信号を制御部102に出力する。なお、発振部101が生成した基準クロック信号は、時計動作、タイマー動作、ストップウォッチ計時動作等に使用される。
制御部102は、入力部103および検出部105から入力された検出結果に応じて、電子時計1の動作モードの切り替え、各動作モードにおける動作の選択を行う。制御部102は、各動作モードの制御に応じて、及び電子時計1を構成する各電子回路要素の制御等を行う。
【0026】
入力部103は、利用者からの操作による入力を受け付ける、例えば、
図2に示したボタンA〜ボタンDを含む。入力部103は、利用者からの指示の入力を検出し、検出した検出結果を制御部102に出力する。
表示制御部104は、制御部102からの制御信号に応じて、表示部90にストップウォッチ計時時刻、タイマー計時時刻、及び時刻等を表示させる。
【0027】
検出部105は、圧電素子60から入力された信号を検出し、検出した検出結果を制御部102に出力する。
【0028】
記憶部106には、制御部102が実行するプログラム、タイマー設定情報等が記憶されている。ここで、タイマー設定情報とは、タイマーが計時するタイマー時刻である。記憶部106は、例えばRAM(ランダム・アクセス・メモリ)である。
【0029】
図4は、本実施形態に係る検出部105の構成例を説明する図である。
図4に示すように、検出部105は、コンパレータ201を備えている。コンパレータ201は、正入力端子IN+が圧電素子60の一端に接続され、負入力端子IN−が閾値電圧Vthに接続され、出力端子OUTが制御部102に接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVSとする。また、圧電素子60は、他端が接地されている。
【0030】
図5は、ガラス20を利用者が指と爪で叩いた場合の圧電素子60が発生する起電圧の一例である。
図6は、
図5の時間軸を拡大した図である。
図5および
図6において、横軸は時間を表し、縦軸は起電圧のレベルを表している。
図5における曲線g1、および
図6における曲線g11は利用者がガラス20を指の腹で叩いたときに、圧電素子60が発生する起電圧を表している。
図5における曲線g2、および
図6における曲線g12は、利用者がガラス20を爪で叩いたときに、圧電素子60が発生する起電圧を表している。
図5および
図6に示すように、爪でガラス20を叩いた場合、約1[msec]以内では、起電圧のレベルが大きいが、その後、急激に減衰する。指の腹でガラス20を叩いた場合、約1[msec]以降の起電圧のレベルは、爪で叩いた場合より大きい。本実施形態では、このような起電圧のレベル差をコンパレータ201によって判別することで、ガラス20が指の腹で叩かれたのか爪で叩かれたのかを判別する。
【0031】
図7は、本実施形態に係る判別処理のフローチャートである。
(ステップS1)制御部102は、検出部105からの検出信号VSが入力されたか否かを判別する。制御部102は、検出部105からの検出信号VSが入力されたと判別した場合(ステップS1;Yes)、ステップS2に進み、検出部105からの検出信号VSが入力されていないと判別した場合(ステップS1;No)、ステップS1の判別を繰り返す。
(ステップS2)ステップS1において検出部105からの検出信号VSが入力されたと判別した場合、制御部102は、所定の時間、次の検出を待機させる。ここで、所定の時間とは、例えば1[msec]である。このように所定の時間だけ検出を待機させることで、制御部102は、後述するように400[Hz]以下の低域成分が多い指の腹で叩かれたことによって発生する起電圧の検出信号を分離する。すなわち、制御部102は、1[kHz]以上の高域成分が多い爪で叩かれたことによって発生する起電圧の検出信号を分離している。これにより、制御部102は、所定の時間だけ検出を待機することで、検出信号の周波数の違いを検出する。制御部102は、ステップS2終了後、処理をステップS3に進める。
【0032】
(ステップS3)制御部102は、検出部105から閾値Vth以上の検出信号VSが入力されたか否かを判別する。制御部102は、検出部105から閾値Vth以上の検出信号VSが入力されたと判別した場合(ステップS3;Yes)、ステップS4に進み、検出部105から閾値Vth以上の検出信号VSが入力されていないと判別した場合(ステップS3;No)、ステップS5に進む。
(ステップS4)制御部102は、検出部105から閾値Vth以上の検出信号VSが入力されたと判別した場合、予め定められているSW1処理を行う。ここで、SW1処理とは、例えば、タイマー動作の開始処理である。
(ステップS5)制御部102は、検出部105から閾値Vth以上の検出信号VSが入力されていないと判別した場合、予め定められているSW2処理を行う。ここで、SW2処理とは、例えば、タイマー動作の停止処理である。
【0033】
以上のように、本実施形態の電子機器(電子時計1)は、自電子機器本体の一部に固定された圧電素子60と、圧電素子60が外部から受けた衝撃に応じて発生した起電圧を検出し、検出した起電圧を表す検出信号を出力する検出部105と、検出部105が出力した検出信号が、第1の検知信号であるか第2の検知信号であるかを、検出信号に含まれる周波数成分の違いに基づいて判別し、判別した結果に応じて所定の処理を行う制御部102と、を備える。
また、本実施形態の電子機器(電子時計1)において、制御部102は、検出部105から検出信号が入力された際、検出信号が継続して入力されている期間が所定の期間以上であるときに、第1の検知信号であると判別し、検出信号が継続して入力されている期間が所定の期間未満であるときに、第2の検知信号であると判別する。
【0034】
これにより、本実施形態の電子時計1では、圧電素子60から起電圧に応じた検出信号が入力されたことを検出した際、所定の時間後、閾値以上であるか閾値未満であるかに応じて2つの入力信号に分離する。これにより、ガラス20が指の腹で叩かれたか爪で叩かれたかを検出し、検出結果に応じて2つの異なる処理を行わせることができる。従って、本実施形態に係る電子時計1では、衝撃によるスイッチ操作により複数の機能を実現できる。
【0035】
なお、本実施形態では、ステップS2の待機時間1[msec]を例に説明したが、この待機時間は、電子時計1が備えるケース10、ガラス20、圧電素子60等の特性に応じて選択するようにしてもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、検出信号が入力された後、ステップS2で所定の時間、待機させる例を説明したが、これに限られない。例えば、制御部102が、検出部105から入力された検出信号の周波数成分を解析し、解析した結果に例えば400[Hz]以下の成分を多く含む場合にSW1処理を実行し、解析した結果に例えば1[kHz]以上の成分を多く含む場合にSW2処理を実行するようにしてもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、ガラス20を利用者が指の腹または爪で叩いたことを判別する例を説明したが、これに限られない。例えば、検出部105と制御部102とによって、ケース10またはガラス20のいずれかが叩かれたかを判別するようにしてもよい。このように検出部105と制御部102は、ケース10またはガラス20のいずれかが叩かれたことに応じて発生する起電圧の検出信号を上述したコンパレータ201の閾値と、判別する待機時間とにより判別することができる。
【0038】
また、ケース10に硬度の異なる領域を設けるようにしてもよい。
図8は、本実施形態に係る電子時計1のケース10の他の例を説明する図である。
図8に示した例では、ケース10は、第1硬度を有する領域301と、領域301より柔らかい第2硬度を有する領域302を備えている。利用者は、処理したい内容に応じて、領域1または領域2を叩く。検出部105と制御部102とは、領域1または領域2のいずれかが叩かれたことに応じて発生する起電圧の検出信号を上述したコンパレータ201の閾値と、判別する待機時間とにより判別することができる。なお、硬度の異なる領域は、ガラス20の上に設けるようにしてもよい。
また、ガラス20およびケースを叩くのは、利用者の指や爪に限らず、ペン等であってもよい。
【0039】
[第2実施形態]
第1実施形態では、検出部105のコンパレータと所定の待機時間を用いて、圧電素子60の検出信号を判別す例を説明した。本実施形態では、圧電素子60の検出信号をフィルタ回路を用いて分離する例を説明する。
図9は、本実施形態に係る電子時計1aの構成を示すブロック図である。
図3の電子時計1の概略構成と異なるのは制御部102aと検出部105aである。
【0040】
図10は、本実施形態に係る検出部105aの構成例を説明する図である。
図10に示すように、検出部105aは、LPF(ローパスフィルタ)211、コンパレータ212、HPF(ハイパスフィルタ)221、およびコンパレータ222を備えている。
【0041】
LPF211は、ケース10またはガラス20がタップされた(叩かれた)場合に、圧電素子60に発生する起電圧の周波数成分の低い方の検出信号を通過させるフィルタである。LPF211のカットオフ周波数は、例えば400[Hz]である。LPF211は、入力端子が圧電素子60の一端に接続され、出力端子がコンパレータ212の正入力端子IN+に接続されている。また、圧電素子60は、他端が接地されている。
コンパレータ212は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth1に接続され、出力端子OUTが制御部102aに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS1とする。
【0042】
HPF221は、ケース10またはガラス20をタップ(叩かれた)場合、圧電素子60に発生する起電圧の周波数成分の高い方の検出信号を通過させるフィルタである。HPF221のカットオフ周波数は、例えば1[kHz]である。HPF221は、入力端子が圧電素子60の一端に接続され、出力端子がコンパレータ222の正入力端子IN+に接続されている。
コンパレータ222は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth2に接続され、出力端子OUTが制御部102aに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS2とする。
【0043】
図11は、ガラス20を利用者が指と爪で叩いた場合の圧電素子60に発生する起電圧の周波数特性の一例である。
図11において、横軸は周波数を表し、縦軸は起電圧のレベルを表している。
図11における曲線g21は、利用者がガラス20を指の腹で叩いた時、圧電素子60に発生する起電圧を表している。
図11における曲線g22は、利用者がガラス20を爪で叩いた時、圧電素子60に発生する起電圧を表している。
図11に示すように、指の腹でガラス20を叩いた場合、約400[Hz]の低域成分が、爪で叩いた時の起電圧のレベルが大きい。一方、約1[kHz] 以上では、爪でガラス20を叩いた時の方が起電圧のレベルが大きい。本実施形態では、このような起電圧の周波数とレベル差をLPF211、HPF221、コンパレータ212およびコンパレータ222により判別することで、ガラス20が指の腹で叩かれたのか爪で叩かれたのかを判別する。
【0044】
図12は、本実施形態に係る判別処理のフローチャートである。
(ステップS101)制御部102aは、検出部105aのコンパレータ212からの検出信号VS1とコンパレータ222からの検出信号VS2が入力されたか否かを判別する。ここで、検出信号VS1は指の腹によるタップにより発生した起電圧とし、検出信号VS2は爪によるタップにより発生した起電圧とする。
制御部102aは、コンパレータ212からの検出信号VS1とコンパレータ222からの検出信号VS2とが入力されたと判別した場合(ステップS101;Yes)、ステップS102に進む。制御部102aは、コンパレータ212からの検出信号VS1とコンパレータ222からの検出信号VS2とが入力されていないと判別した場合(ステップS101;No)、ステップS101の判別を繰り返す。
【0045】
(ステップS102)制御部102aは、コンパレータ222から閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されたか否かを判別する。制御部102aは、コンパレータ222から閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されたと判別した場合(ステップS102;Yes)、ステップS104に進み、コンパレータ222から閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されていないと判別した場合(ステップ102;No)、ステップS103に進む。
【0046】
(ステップS103)ステップS2においてコンパレータ222から閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されていないと判別した場合、制御部102aは、予め定められているSW1処理を行う。
(ステップS104)コンパレータ222から閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されたと判別した場合、制御部102aは、予め定められているSW2処理を行う。
【0047】
なお、ステップS101では、制御部102aが検出信号VS1と検出信号VS2とが入力されたと判別する例を説明したが、制御部102aは、検出信号VS1と検出信号VS2とのうち、いずれか1つの検出信号が入力されたことを判別するようにしてもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態の電子機器(電子時計1a)において、検出部105aは、少なくとも1つのフィルタを用いて検出信号を任意の周波数成分に分離し、該分離したカットオフ周波数に応じた検出信号を出力する。
これにより、本実施形態の電子時計1aでは、圧電素子60から検出信号が入力されたことを検出した際、LPF211、HPF221、コンパレータ212、コンパレータ222を用いて2つの入力信号に分離する。これにより、ガラス20が指の腹で叩かれたか爪で叩かれたかを検出し、検出結果に応じて2つの異なる処理を行わせることができる。従って、本実施形態に係る電子時計1aでは、衝撃によるスイッチ操作により複数の機能を実現できる。
【0049】
なお、本実施形態では、LPF211のカットオフ周波数400[Hz]、HPF221のカットオフ周波数1[kHz]の例に説明したが、このカットオフ周波数は、電子時計1aが備えるケース10、ガラス20、圧電素子60等の特性に応じて選択するようにしてもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、ガラス20を利用者が指の腹または爪で叩いたことを判別する例を説明したが、これに限られない。検出部105と制御部102は、ケース10とガラス20が叩かれたことを判別するようにしてもよい。また
図8に示したように、ケース10に硬度の異なる領域を設け、叩かれた領域に基づく起電圧による検出信号を判別するようにしてもよい。この場合においても、検出部105aと制御部102aは、起電圧による検出信号を上述したLPF211、HPF221、コンパレータ212、コンパレータ222を用いて判別することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、
図10に示したように、制御部102aがLPF211とHPF221を備える例を説明したが、これに限られない。制御部102aは、ケース10またはガラス20が叩かれたとき、検出信号を2つの周波数成分に分離することで、指の腹で叩かれたのか爪で叩かれたのかを判別するようにしてもよい。このように検出信号を2つのしゅうは数に分離するため、制御部102aは、LPF221またはHPF221のいずれか1つのフィルタのみを備えるようにしてもよい。
【0052】
[第3実施形態]
第1および第2実施形態では、圧電素子60の検出信号を2つに分離する例を説明した。本実施形態では、圧電素子60に発生する起電圧の検出信号を3つに分離する例を説明する。
図13は、本実施形態に係る電子時計1bの構成を示すブロック図である。
図3の電子時計1の概略構成と異なるのは制御部102bと検出部105bである。
【0053】
図14は、本実施形態に係る検出部105bの構成例を説明する図である。
図14に示すように、検出部105bは、LPF231、コンパレータ232、LPF242、コンパレータ242、HPF251、およびコンパレータ252を備えている。
【0054】
LPF231は、ケース10またはガラス20をタップ(叩かれた)場合、周波数成分の第1の周波数を通過させるフィルタである。LPF231のカットオフ周波数は、例えば100[Hz]である。LPF231は、入力端子が圧電素子60の一端に接続され、出力端子がコンパレータ232の正入力端子IN+に接続されている。また、圧電素子60は、他端が接地されている。
コンパレータ232は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth1に接続され、出力端子OUTが制御部102bに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS1とする。
【0055】
LPF241は、ケース10またはガラス20をタップ(叩かれた)場合、周波数成分の第2の周波数を通過させるフィルタである。LPF241のカットオフ周波数は、例えば400[Hz]である。LPF241は、入力端子が圧電素子60の一端に接続され、出力端子がコンパレータ242の正入力端子IN+に接続されている。
コンパレータ242は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth2に接続され、出力端子OUTが制御部102bに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS2とする。
【0056】
HPF251は、ケース10またはガラス20をタップ(叩かれた)場合、周波数成分の第3の周波数を通過させるフィルタである。HPF251のカットオフ周波数は、例えば1[kHz]である。HPF251は、入力端子が圧電素子60の一端に接続され、出力端子がコンパレータ252の正入力端子IN+に接続されている。
コンパレータ252は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth3に接続され、出力端子OUTが制御部102bに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS3とする。
【0057】
図14の構成によって、LPF231、コンパレータ232により、例えば手の平で叩かれたことによって発生する起電圧の検出信号を検出することができる。LPF241、コンパレータ242により、例えば指の腹で叩かれたことによって発生する起電圧の検出信号を検出している。LPF251、コンパレータ252により、例えば指の腹で叩かれたことによって発生する起電圧の検出信号を検出している。
【0058】
図15は、ガラス20を利用者が手の平と指と爪で叩いた場合の圧電素子60に発生する起電圧の一例である。
図15において、横軸は時間を表し、縦軸は起電圧のレベルを表している。
図16は、ガラス20を利用者が手の平と指と爪で叩いた場合の圧電素子60に発生する起電圧の周波数特性の一例である。
図16において、横軸は周波数を表し、縦軸は起電圧のレベルを表している。
【0059】
図15における曲線g31は、利用者がガラス20を指の腹で叩いた時、圧電素子60に発生する起電圧を表している。曲線g32は、利用者がガラス20を爪で叩いた時、圧電素子60に発生する起電圧を表している。曲線g33は、利用者がガラス20を手の平で叩いた時、圧電素子60に発生する起電圧を表している。
図15に示すように、手の平で叩いた場合、起電圧のレベルが指の腹、爪で叩いた場合より大きい。また、
図16に示すように、手の平で叩いた時の起電圧のレベルは、周波数、約100[Hz]以下で、指の腹および爪で叩いた時より大きい。
本実施形態では、このような起電圧の周波数とレベル差をLPF231、LPF241、HPF251、コンパレータ232、242、252により判別することで、ガラス20が指の腹で叩かれたのか爪で叩かれたのかを判別する。
【0060】
図17は、本実施形態に係る判別処理のフローチャートである。
(ステップS201)制御部102bは、検出部105bのコンパレータ232からの検出信号VS1とコンパレータ242からの検出信号VS3とコンパレータ252からの検出信号VS3が入力されたか否かを判別する。ここで、検出信号VS1は手の平によるタップにより発生した起電圧であり、検出信号VS2は指の腹によるタップにより発生した起電圧であり、検出信号VS3は爪によるタップにより発生した起電圧である。
制御部102bは、検出信号VS1と検出信号VS2と検出信号VS3が入力されたと判別した場合(ステップS201;Yes)、ステップS202に進む。制御部102bは、検出信号VS1と検出信号VS2と検出信号VS3が入力されていないと判別した場合(ステップS201;No)、ステップS201の判別を繰り返す。
【0061】
(ステップS202)制御部102bは、コンパレータ232からの検出信号VS1が入力されたか否かを判別する。制御部102bは、検出信号VS1が入力されたと判別した場合(ステップS202;Yes)、ステップS203に進み、検出信号VS1が入力されていないと判別した場合(ステップS202;No)、ステップS204に進む。
(ステップS203)ステップS202において検出信号VS1が入力されたと判別した場合、制御部102bは、予め定められているSW1処理を行う。
【0062】
(ステップS204)制御部102bは、コンパレータ242から閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されたか否かを判別する。制御部102bは、閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されたと判別した場合(ステップS204;Yes)、ステップS206に進み、閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されていないと判別した場合(ステップS204;No)、ステップS205に進む。
(ステップS205)ステップS204において閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されていないと判別した場合、制御部102bは、予め定められているSW2処理を行う。
(ステップS206)ステップS204において閾値Vth2以上の検出信号VS2が入力されたと判別した場合、制御部102bは、予め定められているSW3処理を行う。
【0063】
なお、ステップS201では、制御部102bが検出信号VS1と検出信号VS2と検出信号VS3が入力されたと判別する例を説明したが、制御部102bは、検出信号VS1と検出信号VS2と検出信号VS3とのうち、少なくとも1つの検出信号が入力されたことを判別するようにしてもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態の電子機器(電子時計1b)では、圧電素子60から検出信号が入力されたことを検出した際、LPF231、LPF241、HPF251、コンパレータ232、242、252を用いて3つの入力信号に分離する。これにより、本実施形態の電子時計1bは、ガラス20が手の平で叩かれたか、指の腹で叩かれたか、爪で叩かれたかを検出し、検出結果に応じて3つの異なる処理を行わせることができる。従って、本実施形態に係る電子時計1bでは、衝撃によるスイッチ操作により複数の機能を実現できる。
【0065】
なお、本実施形態では、LPF231のカットオフ周波数100[Hz]、LPF241のカットオフ周波数400[Hz]、HPF251のカットオフ周波数1[kHz]の例に説明したが、このカットオフ周波数は、電子時計1bが備えるケース10、ガラス20、圧電素子60等の特性に応じて選択するようにしてもよい。
【0066】
なお、本実施形態では、ガラス20を利用者が手の平、指の腹または爪で叩いたことを判別する例を説明したが、これに限られない。検出部105と制御部102は、手の平で叩かれた場合、ケース10とガラス20が叩かれたことを判別するようにしてもよい。検出部105bと制御部102bは、起電圧を上述したLPF231、LPF241、HPF251、コンパレータ232、242、252を用いて判別することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、
図17のステップS204において、検出信号VS2を用いて判別する例を説明したが、検出信号VS3を用いて検出するようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、2つのLPF231、LPF241を用いる例を説明したが、LPFは1つであってもよい。
図18は、本実施形態に係る検出部105cの構成例の他の例を説明する図である。
図18に示すように、検出部105cは、LPF261、コンパレータ262、コンパレータ272、HPF281、コンパレータ282を備えている。
【0069】
LPF261は、ケース10またはガラス20をタップ(叩かれた)場合、周波数成分の低い方を通過させるフィルタである。LPF261のカットオフ周波数は、例えば400[Hz]である。LPF261は、入力端子が圧電素子60の一端に接続され、出力端子がコンパレータ262の正入力端子IN+およびコンパレータ272の正入力端子IN+に接続されている。また、圧電素子60は、他端が接地されている。
【0070】
コンパレータ262は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth1に接続され、出力端子OUTが制御部102bに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS1とする。
コンパレータ272は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth2に接続され、出力端子OUTが制御部102bに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS2とする。
【0071】
HPF281は、ケース10またはガラス20をタップ(叩かれた)場合、周波数成分の高い方を通過させるフィルタである。HPF281のカットオフ周波数は、例えば1[kHz]である。HPF281は、入力端子が圧電素子60の一端に接続され、出力端子がコンパレータ282の正入力端子IN+に接続されている。
コンパレータ282は、負入力端子IN−が閾値電圧Vth3に接続され、出力端子OUTが制御部102bに接続されている。出力端子OUTが出力する出力信号をVS3とする。
【0072】
図18において、LPF261、コンパレータ262により、手の平で叩かれたことによる起電圧に基づく検出信号を検出している。LPF261、コンパレータ272により、指の腹で叩かれたことによる起電圧に基づく検出信号を検出している。LPF281、コンパレータ282により、指の腹で叩かれたことによる起電圧に基づく検出信号を検出している。また、
図18において、閾値Vth1の電圧値は、閾値Vth2の電圧値より高い。
制御部102bによる検出手順は、
図17の処理手順と同様に行う。
【0073】
なお、第1〜第3実施形態においては、ケース10またはガラス20が利用者により、1回叩かれた場合を説明したが、これに限られない。検出部105(含む102a、102b、102c)と制御部102(含む102a、102b)は、複数回、ケース10またはガラス20が利用者により、複数回叩かれたことを検出し、検出した回数に予め定められている処理を行うようにしてもよい。また、検出部105(含む102a、102b、102c)と制御部102(含む102a、102b)は、手の平、指の腹、爪による組み合わせを検出し、検出した結果に応じて予め定められている処理を行うようにしてもよい。これにより、第1〜第3実施形態の電子時計1(含む1a、1b)は、圧電素子60が検出した起電圧に基づく検出信号を用いて、多数の処理を行うことが可能になる。
ここで、複数の処理は、例えば、ストップウォッチの動作開始、ストップウォッチの動作停止、ラップ操作、タイマー動作開始、タイマー動作終了、バックライトの点灯、バックライトの消灯等の処理である。
【0074】
このように、第1〜第3実施形態においては、圧電素子が検出した起電圧に基づく検出信号を、上述したように利用者がケース10またはガラス20の叩き方に応じて判別する。そして、判別した結果に応じて、叩き方毎に予め定められている処理を行う。これにより、第1〜第3実施形態の電子時計1(含む1a、1b)では、電子時計1(含む1a、1b)のボタンを削減することができるので、電子時計1(含む1a、1b)のコストの削減、ボタン削減による防水性の向上、利用者にとっての操作性を向上する効果が得られる。
【0075】
なお、第1〜第3実施形態においては、検出部105(含む105a、105b、105c)がコンパレータを備える例を説明したが、コンパレータは制御部102(含む102a、102b)が備えるようにしてもよい。あるいは、制御部102(含む102a、102b)は、入力された検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、検出信号のレベルを制御部102(含む102a、102b)に予め記憶されている閾値と比較するようにしてもよい。
【0076】
なお、第1〜第3実施形態においては、ケース10に硬度の異なる2つの領域を設ける例を説明したが、これに限られない。例えば、ケース10の表面に複数の硬度が異なる領域を設けるようにしてもよい。この場合、硬度が異なることを、利用者が識別しやすくするように、各領域の色を変えるようにしてもよい。複数の硬度の異なる領域を設けた場合、検出部105(含む105a、105b、102c)は、領域に応じたカットオフ周波数を有するフィルタと、領域に応じた閾値のコンパレータを備えるようにしてもよい。
【0077】
また、第1〜第3実施形態の電子時計1(含む1a、1b)は、ケース10の上面から叩かれたことによる起電圧による検出信号のみではなく、ケース10が横から叩かれたことにより発生した起電圧による検出信号を検出するようにしてもよい。このようにケース10の横から叩かれた場合の起電圧のレベルは、ケース10の上面から叩かれた場合の起電圧のレベルより低い。このように、検出部105(含む105a、105b、105c)と制御部102(含む102a、102b)は、起電圧のレベルにより、ケース10の上面が叩かれたのか、ケース10の横が叩かれたのかを判別し、判別した結果に応じて処理を行うようにしてもよい。
【0078】
なお、第1〜第3実施形態においては、圧電素子60の起電圧に基づく検出信号毎に、予め処理を定めてく例を示したが、これに限られない。利用者が、用途に応じて、検出信号と処理を関連づけて記憶部106に記憶させるようにしてもよい。
【0079】
なお、第1〜第3実施形態においては、表示部90が液晶等の例を説明したが、これに限られない。表示部90は、機械式の長針、短針による時刻表示であってもよい。さらには、表示部90は、液晶と機械式の長針、短針による時刻表示の両方を備えていてもよい。
【0080】
なお、第2〜第3実施形態においては、LPF、HPFを備える例を説明したが、制御部102b(含む102c)が、入力された検出信号の周波数成分を分析し、分析した結果に応じて、各信号を分離するようにしてもよい。
【0081】
なお、第1〜第3実施形態においては、電子機器の一例として電子時計1(含む1a、1b)に適用した例を説明したが、これに限られない。圧電素子60、制御部102(含む102a、102b)、検出部105(含む105a、105b、105c)は、例えば車載用のナビゲーションシステム、TV(テレビ)など固定されている機器に適用することも可能である。
【0082】
なお、本発明における制御部102(含む102a、102b)および検出部105(含む105a、105b、105c)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより制御部102(含む102a、102b)および検出部105(含む105a、105b、105c)の動作および制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0083】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。