【実施例】
【0014】
図1、
図4および
図5に示すように、実施例に係る車両用収納装置10は、物品が収納される収納部14を有する本体部12と、この本体部12の上部に配設されて、収納部14の開口14aを開閉可能に塞ぐリッド16とを備えている。本体部12には、収納部14における左右の上縁部に、前後方向に延在する溝部13,13が設けられている(
図1参照)。リッド16は、左右の側縁下部に外方へ向けて夫々延出形成された支持部18(
図1、
図2参照)が、対応する側の溝部13に支持されて、本体部12に対して上下または左右に移動規制される一方、前後方向にスライド移動可能に配設されている。そして、リッド16は、上方に開放した収納部14の開口14a全体を覆う閉成位置(
図1参照)と、収納部14の開口14aを開放する開放位置(
図4参照)との間で、本体部12に対してスライド移動可能になっている。なお、実施例では、リッド16を閉成位置から前方へスライド移動して、収納部14が開放される。
【0015】
(付勢手段)
実施例の車両用収納装置10は、
図1に示すように、リッド16を開放位置から閉成位置へ向けて付勢して、その付勢力によってリッド16を閉成位置で保持する付勢手段20を備えている。車両用収納装置10は、溝部13の後端に支持部18が引っ掛かるなどにより閉成位置を越えた後方への移動が規制されたもとで、リッド16の後縁を収納部14の後側開口縁に突き合わせて(
図1、
図4参照)、付勢手段20の付勢力により収納部14を塞いだ状態で保持される。すなわち、車両用収納装置10は、リッド16を閉成位置に保持するための保持装置を備えておらず、保持装置を解除するなどの手間をかけることなく、リッド16を開放移動させることができる。ここで実施例では、付勢手段20として、帯状の金属薄板20aをドラム20bにコイル状に巻いた定荷重ばねが採用されている。ドラム20bは、本体部12において収納部14の前側に延在する部位(以下、前側部位という)12aの略中央に配設され(
図1参照)、ドラム20bから引き出された金属薄板20aがリッド16の前端に接続されている。そして、付勢手段20は、リッド16が閉成位置から開放位置に向かうにつれてドラム20bから金属薄板20aが引き出され、後方へ向けた一定荷重の付勢力をリッド16に付与するようになっている。なお、本体部12とリッド16との間にロータリーダンパー等の制動手段を設けて、リッド16の操作荷重を調節するようにしてもよい。
【0016】
(規制手段)
実施例の車両用収納装置10は、
図1〜
図5に示すように、車両の急制動や衝突などの異常時において、閉成位置にあるリッド16に対して開放位置へ向けた開放方向の慣性力が作用した場合に、該リッド16の開放方向の移動を規制する規制手段30を備えている。規制手段30は、本体部12における前側部位12aの右側に、下方へ凹むと共に上方へ開口するように設けられた収容部15に配設されている。この規制手段30は、通常時、すなわち閉成位置にあるリッド16を開放位置へ向けて移動させる慣性力が作用しない場合には、収容部15へ収容されてリッド16の移動経路から退避した退避姿勢(
図4参照)に保持される。そして、規制手段30は、リッド16に対して付勢手段20による後方への付勢力を越える慣性力が前方(リッド16の開放方向)に作用した場合、すなわち閉成位置にあるリッド16を開放位置へ向けて移動させる慣性力が作用した場合には、収容部15からリッド16の移動経路に突出して交差する規制姿勢(
図5参照)に回動するよう構成されている。
【0017】
規制手段30は、
図2〜
図4に示すように、略矩形のブロック状に形成されたベース部31と、このベース部31における左右の側縁から下方に延出する一対の支持片部32,32とを備え、各支持片部32,32の下端部が、本体部12に対して左右に延在する軸線回りで回動可能に軸支されている。すなわち、各支持片部32,32の下端には、左右に突出した支持ボス33,33が形成されており、本体部12に設けられた支持孔(図示せず)に各支持ボス33,33が側方から嵌合することで、規制手段30は、該支持ボス33,33を中心として、ベース部31が略水平状態(
図4参照)から後上がりの傾斜状態(
図5参照)となるように回動する。また、規制手段30におけるベース部31の後端面は、該規制手段30の規制姿勢においてリッド16の前端が当接する当接面34となっている。また、ベース部31の上部には、
図1および
図3に示すように、後述するロック手段45を案内するガイド部40と、リッド16の開放位置において該ロック手段45が引っ掛かることが可能な係止凹部(係止部)42が形成されている。なお、規制手段30におけるベース部31の前端部には、規制手段30の規制姿勢において本体部12に形成された突部12bに当接する回転規制部35が形成され(
図5参照)、当該規制手段30が規制姿勢を越えて回転することが規制されるようになっている。
【0018】
規制手段30の各支持片部32,32間には、
図2および
図3に示すように、トーションバネ43が配設されている。このトーションバネ43は、その一方の脚部がベース部31の裏面に掛止され、他方の脚部が本体部12に掛止されており、通常時においては該規制手段30を退避姿勢に保持する。ここで、トーションバネ43の付勢力は、通常時において発生する車体振動や慣性力が規制手段30に作用した場合においては、該規制手段30を退避姿勢に保持すると共に、異常時(急制動や衝突)において閉成位置にあるリッド16に対して開放位置へ向けて開放方向へ移動させる慣性力が規制手段30に作用した場合には、該規制手段30が退避姿勢から規制姿勢に回動するのを許容する強さに設定されている。
【0019】
(ロック手段)
実施例の車両用収納装置10は、
図1〜
図5に示すように、リッド16の下面に配設され、該リッド16を開放位置で保持するロック手段45を備えている。リッド16の下面には、上方へ凹となると共に下方へ開口した前後に長い略矩形の設置部21が形成され、ロック手段45は、該設置部21に回動可能に配設されている。設置部21の上面における略中央には、ロック手段45を回動可能に支持する枢支孔22が、該上板の厚み方向に貫通して形成されている。枢支孔22は、開口端における左部および右部に、左右方向へ延長した幅広部22a,22aが形成されている。
【0020】
ロック手段45は、
図2〜
図4に示すように、リッド16の設置部21に対して該ロック手段45の略中央部が支持され、該リッド16の下面に対して垂直に延在する軸周りで回動可能となっている。すなわち、ロック手段45は、前後に長く、前後方向の略中間部分が左右に幅広に形成された板状に形成されると共に、該ロック手段45の上面略中央には上方へ延出した支持軸46が形成されており、該支持軸46が枢支孔22に下方から挿入して嵌合することでリッド16に対して水平方向へ回動可能に支持されている。なお、支持軸46には、その外周面の前部および後部に、径方向外方へ突出した掛止突部46a,46aが形成されている。従って、ロック手段45は、その長手が左右となる向きにしたもとで、支持軸46の各掛止突部46a,46aを枢支孔22の幅広部22a,22aに整合させることでリッド16への装着が許容され、支持軸46が枢支孔22に挿通した状態で長手が前後となる向きに回転させると各掛止突部46a,46aがリッド16に掛止される。そしてロック手段45は、
図2に1点鎖線および2点鎖線で示すように、設置部21の下面に下方へ突出するように形成されたストッパ23,23に当接する範囲内で回動が自在になっている。
【0021】
(係止軸)
ロック手段45には、
図2〜
図5に示すように、その前端部に、下方へ突出したピン状の係止軸47が配設されている。この係止軸47は、リッド16の開閉操作に伴い、規制手段30のベース部31の上面に溝状に設けられたガイド部40に挿入された状態で案内されると共に、リッド16の開放位置において、該ベース部31の上面に設けられた係止凹部(係止部)42に引っ掛かることが可能となっている(
図4参照)。そして、係止軸47が係止凹部42に引っ掛かることで、リッド16が開放位置に保持されるようになっている。
【0022】
(ガイド部および係止凹部)
規制手段30におけるベース部31の上面に設けられた前記ガイド部40は、
図1および
図3に示すように、規制手段30のベース部31の上面において、該ベース部31の後端から該ベース部31の前端近傍に形成された係止凹部42まで前後方向に延在し、ベース部31の後方(リッド16の閉成位置側)および上方(リッド16側)へ開口した溝状に形成されている。ガイド部40は、規制手段30のベース部31の後端に開口すると共に係止凹部42の後方まで延在する第1ガイド溝40aと、該第1ガイド溝40aの前部から係止凹部42の左側を通過して該係止凹部42の前部まで延在する第2ガイド溝40bと、係止凹部42の前部から該係止凹部42の右側を通過して第1ガイド溝40aの前部まで延在する第3ガイド溝40cとを備えている。第1ガイド溝40aは、前後方向の略中間から後側部分が、後方にいくにつれて左右に拡開するように形成されており、ベース部31の後端に形成されて係止軸47が出入りする出入口41は、ロック手段45の回動変位に伴う係止軸47の左右方向での移動幅より幅広に形成されている。すなわち、ガイド部40の出入口41は、ロック手段45が
図3に1点鎖線で示す姿勢および2点鎖線で示す姿勢の間で回動変位して係止軸47が左右方向でどのような位置にあっても、リッド16を閉成位置から開放位置へ向けて移動する際には該係止軸47を受け入れ可能となっている。
【0023】
第2ガイド溝40bは、閉成位置から開放位置へ向けたリッド16の移動に伴って第1ガイド溝40aから移動した係止軸47を案内し、開放位置まで移動させたリッド16が付勢手段20の付勢により閉成位置へ移動し始める際に、係止軸47が第1ガイド溝40a方向へ移動するのを規制して、該係止軸47を係止凹部42方向へ案内して該係止凹部42に引っ掛かるように構成されている。また、第3ガイド溝40cは、開放位置にあるリッド16を前方へ押すことに伴って係止凹部42から外れた係止軸47を案内し、前方へ押されたリッド16が付勢手段20の付勢により閉成位置へ移動し始める際に、係止軸47が係止凹部42方向へ移動するのを規制して、該係止軸47を第1ガイド溝40a方向へ案内するように構成されている。すなわち、ロック手段45は、リッド16の開放操作に伴ってガイド部40に案内される係止軸47が、該ロック手段45の回動変位により左右方向(リッド16のスライド移動方向と交差する方向)に変位されることで、第1ガイド溝40aから第2ガイド溝40bに移動した後に係止凹部42に引っ掛かり、リッド16を開放位置に保持する。また、ロック手段45は、リッド16の閉成操作に伴ってガイド部40に案内される係止軸47が、該ロック手段45の回動変位により左右方向に変位されることで第3ガイド溝40cへ移動して係止凹部42から外れ、付勢手段20の付勢によるリッド16の閉成位置への移動を許容する。
【0024】
なお、実施例の車両用収納装置10は、本体部12の前側部位12aがインストルメントパネル50の内側に隠れた状態で乗員室に配設される(
図4、
図5参照)。従って、規制手段30は、リッド16が閉成位置にあってもインストルメントパネル50で覆われて乗員室内に露出しない。
【0025】
(実施例の作用)
次に、実施例に係る車両用収納装置10の作用について説明する。実施例の車両用収納装置10は、
図4に示すように、通常時には規制手段30が退避姿勢に保持されており、該規制手段30のベース部31が略水平となっている。従って、リッド16を、付勢手段20の付勢力に抗して閉成位置から開放位置へ向けて移動させることができ、該リッド16の移動によって、係止軸47が出入口41を通過してガイド部40の第1ガイド溝40aおよび第2ガイド溝40bに沿って移動する。そして、リッド16が開放位置に移動したら、該リッド16を前方へ押すことを解除することで、第2ガイド溝40bに案内された係止軸47が係止凹部42に引っ掛かって係止され、リッド16が開放位置に保持される。また、開放位置にあるリッド16を前方へ押すと、第3ガイド溝40cに案内されて支持軸46が係止凹部42から外れて係止が解除され、該リッド16を前方へ押すことを解除することで、付勢手段20の付勢によりリッド16が閉成位置へ向けて移動する。
【0026】
一方、実施例の車両用収納装置10は、車両が急制動したり衝突した異常時には、付勢手段20により後方へ付勢されて閉成位置に保持されているリッド16に対して、開放位置に向けて開放方向へ移動する慣性力が作用する。このとき、慣性力が付勢手段20による後方への付勢力を越えると、リッド16が前方へスライド移動し始める。また、前記慣性力が作用すると、規制手段30が、トーションバネ43の付勢力に抗して支持ボス33,33を中心として回動して、規制手段30は退避姿勢から規制姿勢に変位し、該規制手段30の当接面34がリッド16の移動経路に交差するように突出する(
図5参照)。そして、規制手段30の当接面34にリッド16の前端が当接することで、閉成位置にある該リッド16の開放位置への移動を規制する。なお、規制手段30は、前記慣性力が作用した際に、リッド16が前方へ動き出すのと略同時に退避姿勢から規制姿勢へ変位するようになっており、規制手段30の当接面34にリッド16の前端が後方から当接する。
【0027】
このように、実施例の車両用収納装置10によれば、通常時にリッド16の開閉操作を行なう場合には、リッド16に回動可能に配設されたロック手段45の係止軸47が、本体部12に配設された規制手段30に設けられたガイド部40に案内されて該係止凹部42に引っ掛かるようになるから、リッド16を開放位置で適切に保持することが可能である。そして、実施例の車両用収納装置10は、ロック手段45をリッド16の下面に配設すると共に、該ロック手段45を係止凹部42へ案内するガイド部40を、閉成位置にあるリッド16に対して開放位置へ向けた開放方向の慣性力が作用した際に該リッド16の開放方向の移動を規制する規制手段30に設けたから、本体部12にロック手段45およびガイド部40を設けるスペースを確保する必要がなくなり、リッド16を開閉規制する手段の省スペース化を図り得る。これにより、本体部12に形成する収納部14の収納容積を大きくしたり、本体部12の外形サイズを小さくすることが可能である。また、
図1に示す実施例の車両用収納装置10では、前側部位12aの左側に、別の部品や部材を追加で配設することが可能である。
【0028】
また、実施例の車両用収納装置10は、ロック手段45の係止軸47が引っ掛かる係止凹部42も規制手段30に設けたから、本体部12に該係止凹部42を設けるスペースを確保する必要がなくなり、リッド16を開閉規制する手段の更なる省スペース化を図り得る。更に、ロック手段45は、リッド16の開閉操作に伴い、ガイド部40に案内された係止軸47が該ロック手段45の回動変位により左右方向へ変位することで、該係止軸47が係止凹部42に開放位置で引っ掛かって該リッド16の閉成位置へ向けた閉成方向への移動を規制すると共に、該係止軸47が係止凹部42から外れてリッド16の閉成方向への移動を許容するよう構成されているから、ロック手段45を操作することなくリッド16の開放位置での保持および保持解除を簡易に行なうことができる。
【0029】
また、ガイド部40の出入口41が、ロック手段45の回動変位に伴う係止軸47の左右方向での移動幅より幅広に形成されているから、リッド16を閉成位置から開放位置側に向けてスライド移動する際に係止軸47がどのような位置にあっても、該係止軸47は、出入口41を介してガイド部40に入って該ガイド部40で案内される。そして、リッド16を閉成位置から開放位置側に向けてスライド移動する際に、係止軸47が規制手段30のベース部31後端に引っ掛からないから、リッド16の開放位置側へのスライド移動に支障を来たさない。
【0030】
また、実施例の車両用収納装置10は、車両の急制動や衝突などの異常時に際して、閉成位置にあるリッド16に対して開放位置へ向けた開放方向の慣性力が作用した場合に、該慣性力により退避姿勢から規制姿勢に変位した規制手段30によりリッド16の開放方向の移動を規制し得るから、収納部14からの物品の飛散を防止できる。
【0031】
(変更例)
本願発明は、前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更可能である。
(1)本願の車両用収納装置は、コンソールボックスに限定されず、車両において物品の収納に用いられる各種収納装置に適用可能である。
(2)規制手段30は、本体部12に回動変位可能に設けられるものに限らず、該本体部12に対して上下方向や左右方向または斜め方向にスライド変位するものであってもよい。
(3)車両用収納装置10は、リッド16を閉成位置から後方へ移動することで収納部14を開放する構成であってもよい。この場合、規制手段30が本体部12において収納部14の後側に配設されると共に、ロック手段45は、実施例とは前後反対向きでリッド16の設置部21に配設される。この構成によれば、車両が追突されたり急発進した際に収納部14からの物品の飛散を防止し得る。
(4)係止凹部42は、規制手段30のベース部31上面ではなく、本体部12における規制手段30の前側部分(例えば、突部12b)に設けるようにしてもよい。この場合、規制手段30のベース部31の上面にはガイド部40の少なくとも一部が形成され、該ベース部31に形成された該ガイド部40は、該規制手段30の前端に開口した形態とされて、ロック手段45の係止軸47は、リッド16の移動に伴って該ガイド部40を前後に通過するようになる。
(5)車両用収納装置10は、リッド16を閉成位置に保持するための付勢手段20を省略した構成であってもよい。
【0032】
(6)リッドを開放位置に保持および保持解除する構成は、前述した実施例の構成に限定されず、本体部側に設けられた凹状の係止部と、リッド側に設けられ、該凹状の係止部に向け進退変位可能な凸状のロック手段とからなって、ロック手段が係止部に対して進退変位して係脱する構成であってもよい。例えば、
図6(a)および
図7(b)は、リッド16の下面にロック手段としての係止ピン54が昇降移動可能に配設されると共に、規制手段30のベース部31に係止部としての係止凹部42が上方へ開口して設けられ、係止ピン54が係止凹部42に対して進退変位して係脱することで、リッド16を開放位置に保持および保持解除する構成を例示している。ここで係止ピン54は、
図6(c)に示すように、下端が球面状に形成され、付勢手段としての圧縮コイルバネ55によりベース部31から下方へ突出した状態に付勢されると共に、下端に対し上方に向けた外力が加わると圧縮コイルバネ55の圧縮変形により上方へ移動可能となっている。そして、規制手段30のベース部31の上面には、リッド16のスライド移動方向に延在する溝状のガイド部56が設けられ、係止ピン54は、リッド16の閉成位置から開放位置へのスライド移動時にガイド部56に当接して押し上げられ、リッド16が開放位置となると圧縮コイルバネ55の付勢により押し下げられて該係止凹部42に係止する(
図6(d))。また係止ピン54は、開放位置にあるリッド16を閉成位置側へ引っ張るとガイド部56により押し上げられ、該係止ピン54と係止凹部42との係止が解除されて閉成位置に向けたリッド16のスライド移動が許容される。すなわち、
図6に示した構成では、係止ピン54と係止凹部42とが上下方向で係脱するから、該係止ピン54は左右に移動可能に配設されていない。