特許第6017345号(P6017345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017345
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】固定具および医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   A61B17/34
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-37082(P2013-37082)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-161610(P2014-161610A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(72)【発明者】
【氏名】澤田 龍治
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−290327(JP,A)
【文献】 特表2005−524491(JP,A)
【文献】 特表2000−501978(JP,A)
【文献】 米国特許第05366478(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0078302(US,A1)
【文献】 米国特許第05836913(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される細長い医療器具を前記体内の組織に対して固定するために前記医療器具に装着される固定具であって、
前記医療器具が挿入され該医療器具の外周面に取り付けられる筒状の本体であって、長手方向の少なくとも一部が、半径方向外方に広がった複数のひだ部が前記長手方向に並ぶ蛇腹状に折り畳み可能に形成された本体と、
該本体の外周面に長手方向に間隔を空けて配置された前記ひだ部からなり、前記組織を前記長手方向に挟んで把持する2つの把持部材とを備え、
該2つの把持部材が、前記長手方向に接触する位置と互いに離間した位置との間で前記長手方向に相対移動可能な接触部を各々有し、
これら接触部が、前記本体の外周面から半径方向外方に間隔を空けた位置において互いに前記長手方向に接触する固定具。
【請求項2】
記接触部が、前記把持部材の互いに前記長手方向に対向する位置に設けられている請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記把持部材が、前記本体の前記外周面に沿った形状と、前記外周面から前記半径方向外方に広がった形状との間で変形可能である請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
記接触部は、前記本体が蛇腹状に折り畳まれたときに前記ひだ部の谷の位置から前記半径方向外方に間隔を空けて配される位置において、前記本体の外周面から半径方向外方に突出して設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の固定具。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれかに記載の固定具と、
該固定具の前記本体内に挿入されて前記固定具が外周面に取り付けられる医療器具とを備える医療装置。
【請求項6】
前記医療器具の先端に設けられ前記医療器具の外面から半径方向外方に突出する係止部を備える請求項5に記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具を組織に固定するための固定具およびこれを備える医療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カニューレのような医療器具を体内の組織に固定するために医療器具に装着される固定具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の固定具は、医療器具の外周面に装着されるスリーブと、該スリーブの周囲に位置する2つのバルーンとを備え、腹壁のような組織に貫通形成した孔内に医療器具を挿入し、拡張させた2つのバルーンによって組織を厚さ方向に挟むことによって、医療器具を組織に対して固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−524491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、組織の孔の周縁部分は、切開作業や医療器具の挿入作業の際に強く接触されたり擦られたりすることによって、組織の構造が乱れて脆くなっている。特許文献1に記載の固定具は、この脆くなった周縁部分にバルーンが強く接触するため、周縁部分の組織の構造がさらに乱れてさらに脆くなる。特に、腹膜のように比較的分厚くて頑丈な組織に比べて、心膜のように薄くて脆弱な組織の場合には、組織の形状を維持できなくなったり孔が広がったりしてしまうなど、組織への影響が顕著になるととともに、医療器具の十分な固定力を発揮することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、切開によって脆くなった組織の切縁部分を保護しつつ組織に医療器具を安定して固定することができる固定具およびこれを備える医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、体内に挿入される細長い医療器具を前記体内の組織に対して固定するために前記医療器具に装着される固定具であって、前記医療器具が挿入され該医療器具の外周面に取り付けられる筒状の本体であって、長手方向の少なくとも一部が、半径方向外方に広がった複数のひだ部が前記長手方向に並ぶ蛇腹状に折り畳み可能に形成された本体と、該本体の外周面に長手方向に間隔を空けて配置された前記ひだ部からなり、前記組織を前記長手方向に挟んで把持する2つの把持部材とを備え、該2つの把持部材が、前記長手方向に接触する位置と互いに離間した位置との間で前記長手方向に相対移動可能な接触部を各々有し、これら接触部が、前記本体の外周面から半径方向外方に間隔を空けた位置において互いに前記長手方向に接触する固定具を提供する。
【0007】
本発明によれば、本体を装着した医療器具を組織に貫通形成した孔に挿入して組織の両側に把持部材を配置し、2つの把持部材が有する接触部で組織を挟んで把持することによって、医療器具を組織に対して固定することができる。
この場合に、組織は、本体の外周面に隣接する孔の切縁部分ではなく、本体の外周面から離れた、穿孔時の切開作業や医療器具の挿入作業の影響を直接受けない位置において接触部によって把持される。これにより、切開によって脆くなった組織の切縁部分を保護しつつ組織に医療器具を安定して固定することができる。
【0008】
上記発明においては、前記2つの把持部材が、前記本体の外周面から前記半径方向外方に広がった形状を有し、前記接触部が、前記把持部材の互いに前記長手方向に対向する位置に設けられていてもよい。
このようにすることで、本体の外周面と2つの把持部材と接触部とによって囲まれる空間が、本体の外周面に隣接する領域に確保される。これにより、組織の切縁部分を周囲の部材との接触からより確実に保護することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記把持部材が、前記本体の前記外周面に沿った形状と、前記外周面から前記半径方向外方に広がった形状との間で変形可能であってもよい。
このようにすることで、本体を組織の孔に挿入するまでは把持部材を本体の外周面に沿った形状とすることにより、挿入性を向上することができる。
【0010】
また、上記発明の参考例においては、前記把持部材が、前記本体の前記外周面に設けられたバルーンであり、前記バルーンに流体を供給する流体供給手段を備えていてもよい。
このようにすることで、流体供給手段によってバルーンに流体を供給するだけの簡易な操作でバルーンを拡張させることができる。
【0011】
また、上記発明の参考例においては、両方の前記把持部材が、前記バルーンであり、これら2つの前記バルーンは、内部が互いに連通していてもよい。
このようにすることで、共通の流体供給手段を用いて2つのバルーンを同時に拡張させることができる。
【0012】
また、上記発明の参考例においては、前記接触部が、前記バルーンの外面に設けられ該外面から突出する凸部材を備えていてもよい。
このようにすることで、さらに堅固に組織を把持することができる。
【0013】
また、前記本体の長手方向の少なくとも一部が、前記半径方向外方に広がった複数のひだ部が前記長手方向に並ぶ蛇腹状に折り畳み可能に形成され、前記把持部材が、前記ひだ部からなる上記発明においては、前記接触部は、前記本体が蛇腹状に折り畳まれたときに前記ひだ部の谷の位置から前記半径方向外方に間隔を空けて配される位置において、前記本体の外周面から半径方向外方に突出して設けられていてもよい。
このようにすることで、本体の先端部を組織の孔に挿入した状態で本体を蛇腹状に変形することによって、本体の長手方向に隣接する2つのひだ部によって組織が挟まれ、ひだ部から組織に向かって突出する接触部によって組織が把持される。このように本体の一部を変形して把持部材を構成することにより、構成部材の数を減らして簡易かつ細径の構造にすることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記本体の先端に設けられ前記本体の内面から半径方向内方に突出する係止部を備えていてもよい。
このようにすることで、本体に医療器具の先端部を挿入して本体を医療器具に装着する際に、医療器具の先端が係止部に突き当たる位置まで医療器具を挿入することによって、医療器具と本体との長手方向の相対位置を容易に位置決めすることができる。
【0015】
また、本発明は、上記いずれかに記載の固定具と、該固定具の前記本体内に挿入されて前記固定具が外周面に取り付けられる医療器具とを備える医療装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、切開によって脆くなった組織の切縁を保護しつつ組織に固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の参考実施形態に係る固定具および医療装置の、バルーンの収縮状態における部分的な構成を示す(a)縦断面図および(b)先端側から見た正面図である。
図2図1の医療装置の、バルーンの拡張状態における構成を示す(a)縦断面図および(b)先端側から見た正面図である。
図3】(a),(b),(c)図1の医療装置の動作および使用方法を説明する図である。
図4図1の固定具の第1の変形例の構成を示す縦断面図である。
図5図1の固定具の第2の変形例の構成を示す縦断面図である。
図6図1の固定具の第3の変形例の構成を示す縦断面図である。
図7図1の固定具の第4の変形例の構成を示す縦断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る固定具および医療装置の部分的な構成を示す縦断面図である。
図9】(a)〜(d)図8の固定具の本体に形成された4種類の溝の位置および形状を示す断面図である。
図10】(a)〜(c)図8の医療装置の動作および使用方法を説明する図である。
図11】(a),(b)図8の医療装置の動作および使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
参考実施形態〕
以下に、本発明の参考実施形態に係る固定具1およびこれを備える医療装置100について図1から図7を参照して説明する。
本実施形態に係る医療装置100は、図1に示されるように、内視鏡や処置具のような他の医療器具が挿入されるシース(医療器具)50と、該シース50の先端部に装着される固定具1とを備えている。
【0019】
シース50は、両端が開口した細長い円筒状であり、生体内を組織形状に沿って挿入可能な可撓性を有している。
固定具1は、両端が開口した円筒状の本体2と、該本体2の外周面に設けられた2つのバルーン(把持部材)3,4と、これらバルーン3,4の内部に連通するチューブ(流体供給手段)5と、本体2の先端に設けられたストッパ(係止部)6とを備えている。本体2、バルーン3,4およびストッパ6は、シリコーンゴムのような生体適合性および可撓性を有する材料から構成されている。
【0020】
本体2は、シース50の外径寸法と略同一の内径寸法を有し、本体2の内部にシース50が挿入されたときにシース50の外周面に対して本体2の内周面が十分に密着することによって、本体2がシース50の外周面に十分に安定して装着されるようになっている。
【0021】
2つのバルーン3,4は、本体2の外周面の全周にわたって延びる環状である。2つのバルーン3,4は、本体2の長手方向に、シース5を固定する組織(後述する例では心膜X)の厚さ寸法よりも大きな間隔を空けて配置されている。本体2の先端側に位置する第1のバルーン3の外面には、全周にわたって延びる環状の部材からなり、第1のバルーン3の外面よりも突出する凸部材(接触部)7が設けられている。凸部材7は、Oリングのような、第1のバルーン3の膨張および収縮にしたがって周方向に伸縮可能な弾性材料からなる部材である。また、凸部材7は、後述するように両方のバルーン3,4が十分な径寸法まで膨張したときに、基端側に位置する第2のバルーン4の外面の一部(接触部)と本体2の長手方向に接触する位置に設けられている。
【0022】
第1のバルーン3および第2のバルーン4は、周方向の一部において互いに連通している。チューブ5の先端は、基端側に位置する第2のバルーン4に接続され、チューブ5の基端にはシリンジ11と接続可能なコネクタ5aが設けられている。このコネクタ5aにシリンジ11を接続してチューブ5内に流体を供給することによって、図2(a),(b)に示されるように、2つのバルーン3,4が同時に膨張するようになっている。符号5bは、チューブ5を開閉するバルブを示している。バルーン3,4へ流体を供給した後にこのバルブ5bを閉じることで、バルーン3,4を膨張した状態に維持することができる。
【0023】
このときに、十分な径寸法まで略球状に膨張した2つのバルーン3,4は、本体2の外周面から半径方向外方に離れた位置において、本体2の長手方向に凸部材7を介して互いに接触するようになっている。また、本体2の外周面に隣接する位置には、2つのバルーン3,4の外面と本体2の外周面とによって囲まれる空間Sが形成されるようになっている。
【0024】
ストッパ6は、本体2の内周面から半径方向内方に突出するフランジ状である。本体2内に挿入されたシース50の先端がストッパ6に突き当たることによって、本体2とシース50との長手方向の相対位置が位置決めされるようになっている。
【0025】
次に、このように構成された医療装置100の作用について、内視鏡や処置具などの他の医療器具を体外から心膜X内まで案内する場合を例に挙げて説明する。
まず、先端部に固定具1が装着されたシース50を、両方のバルーン3,4を収縮させた状態で生体内に挿入し、図3(a)に示されるように、シース50の先端を、心膜Xに予め貫通形成された孔Y内に挿入して心膜X内に配置する。このときに、第1のバルーン3が心膜X内に、第2のバルーン4が心膜X外にそれぞれ配置されるように、心膜Xに対してシース50を位置決めする。
【0026】
次に、シリンジ11を用いてチューブ5内に流体を供給することによって、図3(b)に示されるように、第1のバルーン3および第2のバルーン4を十分な径寸法まで膨張させる。これにより、図3(c)に示されるように、第2のバルーン4の外面と凸部材7とによって心膜Xが厚さ方向に挟まれて把持され、固定具1およびシース50の先端部が、心膜Xに対して固定される。
以上の手順により、体外から心膜X内まで組織から隔離されたルートがシース50内に確保される。術者は、シース50内を介して他の医療器具を体外と心膜X内との間で容易に挿脱することができる。
【0027】
この場合に、心膜Xに形成された孔Yの切縁部分は、切開作業および医療装置100の挿入作業によって組織の構造が乱れるために、脆くなっている。本実施形態によれば、この脆くなっている切縁部分は、2つのバルーン3,4の外面と本体2の外周面とによって囲まれた空間Sに位置するので、周囲の部材との接触や外力の作用から保護される。これにより、脆くなっている心膜Xの切縁部分がそれ以上影響を受けることを防ぐことができるという利点がある。また、心膜Xが、シース50の外周面から半径方向外方に離れた位置、すなわち、脆くなっている位置ではなく健常な位置において第2のバルーン4と凸部材7とによって把持されるので、十分な把持力を得ることができ、シース50を心膜Xに対して安定に固定することができるという利点がある。
【0028】
次に、本実施形態に係る固定具1の変形例について説明する。
(第1の変形例)
本実施形態の第1の変形例に係る固定具1−1は、図4に示されるように、凸部材7が、第1のバルーン3に代えて、第2のバルーン4の外面に設けられている。
このように心膜Xの外側に配置される位置に凸部材7を設けることによって、固定具1の体内への挿入性を向上することができる。
【0029】
(第2の変形例)
本実施形態の第2の変形例に係る固定具1−2は、図5に示されるように、凸部材7が省略され、十分な径寸法まで膨張した第1のバルーン3および第2のバルーン4の外面の、本体2の長手方向に接触する部分(接触部)によって心膜Xを把持するようになっている。
このようにすることで、固定具1の体内への挿入性をさらに向上することができる。
【0030】
(第3の変形例)
本実施形態の第3の変形例に係る固定具1−3は、図6に示されるように、第2のバルーン4に代えて、本体2の外周面から半径方向外方に突出するフランジ部(把持部材)12を備えている。第1のバルーン3が十分な径寸法まで膨張したときに、2点鎖線で示されるように、凸部材7と、フランジ部12の先端側の面の一部(接触部)とが接触するようになっている。
このようにすることで、バルーン3の膨張に必要な流体の供給量が少なくて済み、操作を楽にすることができる。
【0031】
(第4の変形例)
本実施形態の第4の変形例に係る固定具1−4は、図7に示されるように、本体2の先端に設けられたストッパ6が省略されている。
このようにすることで、本体2とシース50との長手方向の相対位置を任意に変更して、シース50に対するバルーン3,4の位置を任意に設定することができる。
【0032】
本発明の一実施形態〕
次に、本発明の実施形態に係る固定具20および医療装置200について、図8から図11を参照して説明する。なお、本実施形態においては、参考実施形態と異なる構成について主に説明し、参考実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る医療装置200は、固定具20の本体21が、外周面に形成された溝21a,21b,21c,21dによって蛇腹状に折り畳み可能に構成されている点において、参考実施形態と異なっている。
【0033】
本体21は、図8に示されるように、シース50の長手方向の寸法と略同一の長手方向の寸法を有し、シース50の先端から基端まで略全長にわたって装着される。また、本体21と該本体21内に挿入されたシース50とは、長手方向に相対移動可能に設けられている。
【0034】
本体21の先端部には、図9(a)〜図9(d)に示されるように、4種類の楔状の溝21a,21b,21c,21dが、長手方向に間隔を空けて形成されている。図8において、矢印A、矢印B、矢印Cおよび矢印Dはそれぞれ、図9(a),(b),(c)および(d)に示される溝21a,21b,21c,21dが形成される位置を示している。
【0035】
図9(a)に示される第1の溝21aは、本体21の内周面に全周にわたって形成された比較的深い溝である。図9(b)に示される第2の溝21bは、本体21の外周面に全周にわたって形成された比較的深い溝である。図9(c)に示される第3の溝21cは、本体21の内周面に全周にわたって形成された、第1の溝21aよりも浅い溝である。図9(d)に示される第4の溝21dは、本体21の外周面に全周にわたって形成された、第2の溝21bよりも浅い溝である。
【0036】
このような溝21a,21b,21c,21dが形成された本体21に長手方向の圧縮力が加えられると、図10(a)〜(c)および図11(a),(b)に示されるように、本体21の先端部分が蛇腹状に折り畳まれるようになっている。このときに、本体21が折り畳まれる過程において、まず、比較的深い第1の溝21aおよび第2の溝21bの位置において本体21が折れることによって、図10(c)に示されるように、本体21の半径方向外方に突出した爪部(接触部)9が形成される。さらに圧縮力が加えられると、次に、比較的浅い第3の溝21cおよび第4の溝21dの位置において本体21が折れることによって、図11(b)に示されるように、本体21の長手方向の一部が半径方向外方に突出してひだ部(把持部材)10が形成される。
【0037】
ここで、隣接するひだ部10の間隔に相当する、隣接する第4の溝21dの間隔は、心膜Xの厚さよりも大きく設定されている。また、蛇腹状に折り畳まれた状態において、ひだ部10の基端側の面に爪部9が配されるとともに、爪部9の先端と、この爪部9の基端側に隣接するひだ部10の先端側の面の一部(接触部)とが接触するように、4種類の溝21a,21b,21c,21dの位置が適切に設定されている。
【0038】
このような本体21は、ポリアセタールのような高い強度を有する材料からなる骨格を、シリコーンゴムのような軟性の材料によって被覆することによって構成されている。
シース50の先端には、外周面から半径方向外方に突出するフランジ状のストッパ61が設けられており、ストッパ61に本体21の先端を突き当てることによって、本体21とシース50との長手方向の相対位置が位置決めされるようになっている。
【0039】
次に、このように構成された医療装置200の作用について、参考実施形態と同様に、内視鏡や処置具などの他の医療器具を体外から心膜X内まで案内する場合を例に挙げて説明する。
まず、外周面に固定具20が装着されたシース50を生体内に挿入し、図10(a)に示されるように、シース50の先端を、心膜Xの孔Y内に挿入して心膜X内に配置する。このときに、少なくとも最も先端側の第1の溝21aの位置までが心膜X内に配置されるように、シース50を位置決めする。
【0040】
次に、体外に配置されている本体21の基端部を先端側へ押してシース50に対して移動させることによって、図10(b),(c)および図11(a),(b)に示されるように、本体21の先端部を蛇腹状に折り畳む。これにより、図11(b)に示されるように、心膜X内に配置された爪部9と、心膜Xの外側に配置されたひだ部10とによって心膜Xが厚さ方向に挟まれて把持され、固定具20およびシース50の先端部が、心膜Xに対して固定される。
以上の手順により、体外から心膜X内まで組織から隔離されたルートがシース50内に確保される。術者は、シース50内を介して他の医療器具を体外と心膜X内との間で容易に挿脱することができる。
【0041】
この場合に、本実施形態によれば、脆くなっている心膜Xの孔Yの切縁部分は、長手方向に隣接する2つのひだ部10と本体21の外周面と爪部9とによって囲まれた空間Sに位置するので、周囲の部材との接触や外力の作用から保護される。これにより、脆くなっている心膜Xの切縁部分がそれ以上影響を受けることを防ぐことができるという利点がある。また、心膜Xが、シース50の外周面から半径方向外方に離れた位置、すなわち、脆くなっている位置ではなく健常な位置において爪部9とひだ部10とによって把持されるので、十分な把持力を得ることができ、シース50を心膜Xに対して安定に固定することができるという利点がある。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、参考実施形態のバルーン3,4およびチューブ5のような、本体21の外側に配置される部材が不要であるので、細径かつ比較的外面が滑らかな構造にすることができ、体内への挿入性を良好にすることができるという利点がある。また、本体21の長手方向の複数の位置において心膜Xを把持可能であるため、心膜Xに対するシース50の長手方向の位置決め精度を緩和することができるという利点がある。
【0043】
なお、上述した参考実施形態および本発明の一実施形態においては、固定具1,20が装着される医療器具としてシース50を例に挙げて説明したが、固定具1,20は、体内に挿入される細長い挿入部分を有する内視鏡やその他の医療器具にも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,1−1,1−2,1−3,1−4,20 固定具
2,21 本体
3,4 バルーン(把持部材)
5 チューブ(流体供給手段)
5a コネクタ
5b バルブ
6,61 ストッパ(係止部)
7 凸部材(接触部)
9 爪部(接触部)
10 ひだ部(把持部材)
11 シリンジ
12 フランジ部(把持部材)
21a,21b,21c,21d 溝
50 シース(医療器具)
100,200 医療装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11