(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017360
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 3/00 20060101AFI20161013BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20161013BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
F24C3/00 J
F24C15/10 D
A47J37/06 366
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-70702(P2013-70702)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-194297(P2014-194297A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 彰浩
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭46−021672(JP,Y1)
【文献】
実開昭58−171643(JP,U)
【文献】
特開平11−028161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00
A47J 37/06
F24C 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する火炎を形成するバーナーと、
内部に前記バーナーを備えた筐体と、
前記バーナーの燃焼部を開放する開口部を有する天板と、
前記開口部において被加熱物を加熱するための加熱治具とを備え、
前記加熱治具は、前記筐体の底面に交換自在に配置され、
前記バーナーは、前記加熱治具の周囲に配置される燃焼部を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱治具は、前記筐体内に立設するための脚部を備えることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱治具は、被加熱物を載置する五徳であることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱治具は、被加熱物を調理する調理プレートを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱治具は、被加熱物を刺した串や被加熱物を載せた網を載置する台であることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記バーナーは、前方から後方に向けた燃焼ガスの流れを形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記バーナーは、前記筐体内の前方側に配備され混合ガスを後方に向けて出射する炎口を有する前方燃焼部と、前記筐体内の側方に配備され混合ガスを斜め後方に向けて出射する炎口を有する側方燃焼部を備えることを特徴とする請求項6記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーナーの火炎による加熱を利用した加熱調理器としては、コンロ、グリル(網焼き器)、グリドル(鉄板焼き器)などが知られている。これらは調理の仕方に応じて選択的に用いられるものであるが、多彩な料理を提供するためには、多様な調理に対応したこれら多種の加熱調理器を備えていることが必要になる。
【0003】
これ対しては、異なる種類の加熱調理器を複合化することが行われており、コンロとグリルの複合化はグリル付きコンロとして一般に普及している。また、下記特許文献1に記載されるように、コンロ部とグリル部とを備えた加熱調理器において、加熱調理器本体の上面にコンロ部とグリル部とを並列配置したものなども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−106854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多様な調理を行いたいという欲求を満たすために、コンロ,グリル,グリドルなどの異種加熱調理器を個別に備えようとすると、設置スペースや設備投資コストの問題があり、特に家庭での使用にはスペースや投資額に限界があるので実行性が難しい。
【0006】
これに対して、加熱調理器の複合化は、設置スペースの問題を解消することはできるが、コンロ部とグリル部の複合化が普及している程度であり、その他の異種加熱調理器との複合化はオーダーメードにならざるを得ず製品が高価になるので、やはり設備投資コストの問題は残る。また、コンロ部とグリル部のように2種類の機能であれば簡易に複合化が可能であるが、3種類又は4種類の機能を複合化するのは難しく、未だ普及製品にはなっていないのが現状である。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、多様な調理を行うことができる多機能の加熱調理器を、省スペース且つ安価に提供することができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による加熱調理器は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
被加熱物を加熱する火炎を形成するバーナーと、内部に前記バーナーを備えた筐体と、前記バーナーの燃焼部を開放する開口部を有する天板と、前記開口部において被加熱物を加熱するための加熱治具とを備え、
前記加熱治具は、前記筐体の底面に交換自在に配置され、前記バーナーは、前記加熱治具の周囲に配置される燃焼部を備えることを特徴とする加熱調理器。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明の加熱調理器によると、筐体内にバーナーの燃焼部を周囲に配置した設置スペースを設け、その設置スペースに各種機能を有する加熱治具を交換自在に設置することができるので、多機能の加熱調理器を省スペース且つ安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱調理器の全体構成を示した断面説明図である。
【
図2】バーナーの平面構成例を示している説明図である。
【
図3】
図3(a)に加熱治具の一形態を示し、
図3(b)にその加熱治具を設置した加熱調理器を示した説明図である。
【
図4】
図4(a)に加熱治具の一形態を示し、
図4(b)にその加熱治具を設置した加熱調理器を示した説明図である。
【
図5】
図5(a)に加熱治具の一形態を示し、
図5(b)にその加熱治具を設置した加熱調理器を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書,図面,特許請求の範囲における「前」又は「前方」とは、ガスコンロ1に対してガスコンロ1の使用者(調理者)が立つ側を指し、「後」又は「後方」とは、ガスコンロ1における「前」又は「前方」と対向する側を指す。また、「左」,「右」は使用者がガスコンロ1に向いた状態での左右を指している。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る加熱調理器の全体構成を示した断面説明図である。加熱調理器1は、筐体1A、天板1B、バーナー2、加熱治具3を備えている。筐体1Aは、被加熱物Wを加熱する火炎を形成するバーナー2を内部に備えている。天板1Bは、筐体1Aの上部に設けられ、バーナー2の燃焼部2Bを開放する開口部1Dを有する。加熱治具3は、開口部1Dにおいて被加熱物Wを加熱するための治具であり、筐体1A内に交換自在に配置される。
図1においては、筐体1A内に配置される加熱治具3を仮想線(一点破線)で示している。
【0014】
筐体1Aの内部には、加熱治具3を交換自在に設置する設置スペースSが設けられている。そして、この設置スペースSの周囲にバーナー2の燃焼部2Bが配置されている。このような加熱調理器1によると、筐体1A内にバーナー2の燃焼部2Bを周囲に配置した設置スペースSを設け、その設置スペースSに各種機能を有する加熱治具3を交換自在に設置することができる。これにより筐体1Aの占める1つのスペースで、加熱治具3を交換して得られる多機能の調理器を実現することができ、多機能の加熱調理器1を省スペース且つ安価に提供することができる。
【0015】
バーナー2の具体例を説明する。バーナー2は、筐体1A内の支持部1Cに支持されており、前方から後方に向けた燃焼ガスの流れを形成する。バーナー2は、ガスノズル4から噴射される燃料ガスと一次空気a1とを混合する混合ガス形成部2Aと、混合ガスを噴出する炎口5を備える燃焼部2Bを備え、全ての炎口5が後方又は斜め後方に向けて混合ガスを出射する構造になっている。このようなバーナー2によると、ガス供給バルブ4Aを開放してガス供給ライン4Bを介してガスノズル4から燃料ガスを噴射することで炎口5から混合ガスが噴出され、この混合ガスに点火することで炎口5に火炎又は燃焼ガスFが形成される。炎口5に形成された火炎又は燃焼ガスFは、例えば、加熱治具3に載置された被加熱物Wの底面に当たりながら前方から後方に向けた流れを形成する。
【0016】
図2は、バーナーの平面構成例を示している(
図1と共通部位には同一符号を付して重複説明を省略する)。バーナー2の燃焼部2Bは、加熱治具3の設置スペースSを囲むように、前方燃焼部2B1と側方燃焼部2B2を備えている。前方燃焼部2B1は、設置スペースSに対して前方側に配備され、混合ガスを後方に向けて出射する炎口5(5A)を有する。側方燃焼部2B2は、設置スペースSに対して側方に配備され、混合ガスを斜め後方に向けて出射する炎口5(5B)を有する。図示の例では、一対の側方燃焼部2B2を左右に延びた前方燃焼部2B1の両端に接続しているが、前方燃焼部2B1と側方燃焼部2B2とを独立して配備し、それぞれを混合ガス形成部2Aに個別に接続する形態であってもよい。このようなバーナー2は、従来の炎口を環状に配置したバーナー形態と比較すると、後方側が開放された形態になっており、炎口5(5A,5B)に形成される火炎や燃焼ガスが開放された後方側に流れやすい構造になっている。
【0017】
図3は、
図3(a)に加熱治具の一形態を示し、
図3(b)にその加熱治具を設置した加熱調理器を示した説明図である。
図3に示した例は、加熱治具3が被加熱物Wを載置する五徳3−1として機能するものであり、この五徳3−1が設置された加熱調理器1はコンロ1−1として機能する。
【0018】
五徳3−1は、その上面が被加熱物Wの載置面になっており、その側面3mがバーナー2によって形成される燃焼ガスの流れfに沿った面を有している。
図3(b)は、破線で示すバーナー2の平面形態に対する五徳3−1の平面形態を示している。五徳3−1は、左右一対の湾曲爪部3Aと直線爪部3Bを備えている。また、天板1B上における開口部1Dの前方側には被加熱物Wの前方部を部分的に載置する前方載置部1B1を設けており、この前方載置部1B1は、平面状の載置面を有している。左右一対の湾曲爪部3Aの側面3mは後方に行くに連れて互いの間隔が狭まる曲面を有している。
【0019】
図3(a)に示した例は、五徳3−1の爪部(湾曲爪部3Aと直線爪部3B)を筐体1Aの内部に配備しており、五徳3−1自身が設置スペースS内に立設するための脚部(鉛直脚部3L及び水平脚部3M)を備えている。
【0020】
一対の湾曲爪部3Aと直線爪部3Bを備えた五徳3−1は前方載置部1B1と協働して4箇所で被加熱物Wを支持する構造になっており、鍋などの大きさが異なる被加熱物W(W1,W2)をいずれの場合も十分に安定して支持することができるようになっている。
図3(b)に示した例では、比較的小径の被加熱物W1は、前端の一部分が前方載置部1B1の一部で支持され、中央部分及び後方部分が直線爪部3Bと湾曲爪部3Aの間隔が広がった一部で支持されている。また、比較的大径の被加熱物W2は、前端部分が前方載置部1B1の全体で支持され、中央部分及び後方部分が直線爪部3Bと湾曲爪部3Aの全体で支持されている。
【0021】
このような五徳3−1は、燃焼ガスの流れfに沿った側面3mを有することで、バーナー2が形成する燃焼ガスの後方に向けた流れを阻害しない形態になっている。また、五徳3−1上に被加熱物W(W1,W2)を載置した状態では、前方側に設けられた前方載置部1B1の載置面に被加熱物W(W1,W2)の底面が載せられることでバーナー2の燃焼部2Bの前方側が閉塞された状態になり、前方側へ向いた火炎又は燃焼ガスはほぼ確実に遮断される。更に、被加熱物W(W1,W2)の後方側に開口部1Dが開放されているので、この開口部1Dから燃焼排気e(
図1参照)を効果的に排出することができ、良好な燃焼排気の実現が可能になる。
【0022】
更には、一対の湾曲爪部3Aの側面3mにおける曲面形状によって、バーナー2によって形成された火炎及び燃焼ガスが五徳3−1上に載置された被加熱物W(W1,W2)の中央に集められるので、被加熱物W(W1,W2)を効率よく加熱することができる。
【0023】
コンロ1−1は、後方に向けた燃焼ガスの流れに対して、その流れを拘束すること無く、コンロ1−1後方の開口部1Dから燃焼排気を行うことができるので、良好な燃焼排気によって高い燃焼効率を得ることができる。また、コンロ1−1の前方側には遮熱板等の障害物を設ける必要が無いので、使い易く且つ快適性の高いガスコンロを実現することができる。
【0024】
図4は、
図4(a)に加熱治具の一形態を示し、
図4(b)にその加熱治具を設置した加熱調理器を示した説明図である(
図3に示した例と共通する部位には同一符号を付して重複説明を省略する。)。
図4に示した例は、加熱治具3が調理プレート3−2を備えるものであり、この調理プレート3−2が設置された加熱調理器1はグリドル1−2として機能する。
【0025】
調理プレート3−2は、金属等の熱伝導の高い材料からなる板材であり、バーナー2が形成する火炎及び燃焼ガスによって調理プレート3−2が加熱され、調理プレート3−2の熱で調理プレート3−2上の被加熱物を加熱する。調理プレート3−2は、設置スペースS内に立設するための脚部3Cを備えている。
【0026】
調理プレート3−2の脚部3Cは、燃焼ガスの流れfに沿った側面3mを有することで、バーナー2が形成する燃焼ガスの後方に向けた流れを阻害しない形態になっている。また、調理プレート3−2は、開口部1Dの前方側を覆うことでバーナー2の燃焼部2Bの前方側が閉塞された状態になり、前方側へ向いた火炎又は燃焼ガスはほぼ確実に遮断される。更に、調理プレート3−2の後方側では開口部1Dが開放されているので、この開放された開口部1Dから燃焼排気eを効果的に排出することができ、良好な燃焼排気の実現が可能になる。
【0027】
図5は、
図5(a)に加熱治具の一形態を示し、
図5(b)にその加熱治具を設置した加熱調理器を示した説明図である(
図3に示した例と共通する部位には同一符号を付して重複説明を省略する。)。
図5に示した例は、加熱治具3が被加熱物を刺した串や被加熱物を載せた網を載置する台3−3として機能し、この台3−3が設置された加熱調理器1はグリル1−3として機能する。
台3−3は、金属やセラミックス等の耐熱性の高い材料からなる棒材からなり、バーナー2が形成する火炎及び燃焼ガスによって台3−3に間接的に支持された被加熱物が直接加熱される。台3−3は、設置スペースS内に立設するための脚部3Dを備えている。台3−3は、設置スペースS内に一つ又は複数配置できるようになっている。
【0028】
本発明の実施形態に係る加熱調理器1は、筐体1A内に配備されるバーナー2の特異な形態によって、筐体1Aの内部に設置スペースSを設けることができ、この設置スペースSを利用して、各種機能の加熱治具3を交換可能に設置できるようにしている。本発明の実施形態に係る加熱調理器1は、加熱治具3を交換するだけで、コンロ1−1,グリドル1−2,グリル1−3として多機能に用いることができる。また、他の形態の加熱治具3を設置することでその他の機能として使用することもできる。このように、本発明の実施形態に係る加熱調理器1は、省スペース且つ低コストで、多様な調理に対応することができる多機能調理器を実現することができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1:加熱調理器,1−1:コンロ,1−2:グリドル,1−3:グリル,
1A:筐体,1B:天板,1B1:前方載置部,
1C:支持部,1D:開口部,
2:バーナー,2A:混合ガス形成部,2B:燃焼部,
2B1:前方燃焼部,2B2:側方燃焼部,
3:加熱治具,3−1:五徳,3−2:調理プレート,3−3:台,
3A:湾曲爪部,3B:直線爪部,3C,3D:脚部,3m:側面,
4:ガスノズル,4A:ガス供給バルブ,4B:ガス供給ライン,
5(5A,5B):炎口,W(W1,W2):被加熱物,F:燃焼ガス